説明

円筒形貯槽の基礎構造

【課題】アスファルトサンドを打設した円筒形貯槽の基礎コンクリートの外周部に堰を設けるにあたり、堰を設けるのに要する費用や労力を低減する。
【解決手段】底板4と基礎コンクリート部3との間にアスファルトサンド6を打設した気体または液体を貯蔵する円筒形貯槽1の基礎2は、基礎コンクリート部3の上面が平坦状に形成され、基礎コンクリート部3の上面であって円筒形貯槽1の底板4に対応する領域の外方の全周に亘って、鋼材により形成された堰5が設けられ、アスファルトサンド6が堰5の内側に打設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスや石油の貯槽の底板と基礎との間に打設されたアスファルトサンドの流出及び損傷を防止するための基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水、ガス、石油等を貯留する円筒形の貯槽では、貯槽本体及び貯槽の内容物の荷重が貯槽の底板に局所的にかかると底板がたわむ、更には損傷に至る恐れがあるため、底板には荷重が均等にかかるようにする必要がある。したがって従来は、例えば図5に示すように、基礎コンクリート101上に一定の厚みのアスファルトサンド102を打設し、当該アスファルトサンド102上に貯槽103の底板104を設置している。
【0003】
このような円筒形の貯槽においては、貯槽103の側板105を精度良く組み立てるために、アスファルトサンド102の外周部、すなわち貯槽103の側板105に対応する位置のアスファルトサンド102の高さが全周に亘って極力均一になるように施工される。しかしながら、貯槽103の底板104の外方では、アスファルトサンド102の外周部は空気中に露出しており、この露出した箇所は、貯槽103の荷重による損傷や雨などによる侵食のため欠損しやすい。そのため、欠損によりアスファルトサンド102に新たに露出面が生じ、その新たな露出面が再び欠損するということを繰り返すことにより、貯槽103の中心方向へのアスファルトサンド102の欠損がさらに進展してしまう可能性がある。欠損が進展した場合は、側板105の組み立て精度の確保及び貯槽103の底板104にかかる荷重の均一化、あるいは底板104の下面への雨水侵入による底板104の腐食の防止というアスファルトサンド102の機能が経時的に失われてしまうため、問題となる。
【0004】
このため、一般には例えば図6に示すように、基礎コンクリート101の外周縁部にコンクリートによる堰110を設けることで、アスファルトサンド102の欠損を防止するという方法が用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−102581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されるようなコンクリート製の堰110を設ける場合、基礎コンクリート101を打設した後に、基礎コンクリート101の外周部上面に再度堰110を打設する、いわゆるコンクリートの積み増し作業が行われる。この積み増し作業においては、所定の高さまで基礎コンクリート101を打設した後に、コンクリートが固化するまでの養生作業、次いで基礎コンクリート101とその上面に設けられる堰110のコンクリートとの密着性を向上させるために、基礎コンクリート101表面の目荒らしを行う作業、基礎コンクリート101の堰110に対応する箇所に鉄筋を形成する作業、鉄筋形成後基礎コンクリート101上にコンクリートを打設して堰110を形成する作業が行われる。このため、積み増しにより堰110を形成するにあたっては、施工に長期間を要し、多大な工事費用と労力がかかっていた。
【0007】
また、発明者らの知見によれば、積み増しにより堰110を設けても、堰110の高さが全周に亘って均一に形成されていない場合は、周辺より相対的に低くなっている箇所からアスファルトサンド102の流出が生じてしまうことが判明した。したがって、堰110を基礎コンクリート101の外周部全体に亘って極力均一な高さとする必要があり、堰110の施工にあたっては、全周に亘ってレベル測定器等で都度レベルを確認しながら高さの調整を行うため、より一層の労力が必要であった。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、アスファルトサンドを打設した円筒形貯槽の基礎コンクリートの外周部に堰を設けるにあたり、堰を設けるのに要する費用や労力を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための本発明は、気体または液体を貯蔵する円筒形貯槽の底板と基礎コンクリートとの間にアスファルトサンドを打設した円筒形貯槽の基礎構造において、前記基礎コンクリートは上面が平坦状に形成され、前記基礎コンクリートの上面であって前記円筒形貯槽の底板に対応する領域の外方の全周に亘って鋼材により形成された堰が設けられ、前記アスファルトサンドは前記堰の内側に打設されていることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、平坦状な基礎コンクリートの上面であって円筒形貯槽の底板の外方に、鋼材により形成された堰を設けるので、従来行われていた基礎コンクリートの外周部の積み増し作業が不要となる。また、本発明者らは、堰の高さが全周に亘って均一に形成されていない場合は、周辺より相対的に低くなっている箇所からアスファルトサンドの流出が生じてしまうという知見を得た。本発明はこの知見を利用したものであり、堰を鋼材により形成することで、例えばグラインダー等により容易にレベル調節が可能となり、均一な高さの堰を容易に設けることができる。このため、堰を設けるのに要する費用と労力及び時間を低減することが可能である。
【0011】
なお、前記堰の高さは、前記基礎コンクリート上に打設されるアスファルトサンドの高さに等しくてもよい。
【0012】
また、前記堰は、アンカーボルトにより前記基礎コンクリートに固定された断面形状がL字状の形鋼であってもよく、その上端が前記基礎コンクリートから突出するように当該基礎コンクリートに埋設された帯鋼であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アスファルトサンドを打設した円筒形貯槽の基礎コンクリートの外周部に堰を設けるにあたり、堰を設けるのに要する費用や労力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態にかかる基礎構造の概略を示す縦断面図である。
【図2】堰近傍の構成の概略を示す縦断面図である。
【図3】本実施の形態にかかる基礎構造の構成を示す平面図である。
【図4】他の実施の形態にかかる基礎構造の概略を示す縦断面図である。
【図5】従来の基礎構造を示す縦断面図である。
【図6】従来の基礎構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は本実施の形態にかかる、円筒形貯槽の基礎構造の概略を示す縦断面図である。
【0016】
円筒形貯槽1の基礎2は、平坦状に形成された基礎コンクリート部3と、基礎コンクリート部3上面であって円筒形貯槽1の底板4に対応する領域の外方に、全周に亘って設けられた堰5と、堰5の内側であって基礎コンクリート部3の上面に打設されたアスファルトサンド6と、により構成されている。
【0017】
堰5は、例えば図2及び図3に示すように、円筒形貯槽1の外周に沿って曲げられた複数のL字状の形鋼7により形成されており、アンカーボルト10により基礎コンクリート部3に固定されている。堰5の高さは、基礎コンクリート部3上面に打設されるアスファルトサンド6の上面と同じ高さになるように調整されている。
【0018】
このような構成の基礎2を形成するにあたっては、先ず基礎コンクリート部3が平坦状に打設される。次いで、打設された基礎コンクリート部3上に、円筒形貯槽1の外周の形状に沿って複数の孔11を穿孔により形成する。その後、孔11にアンカーボルト10を埋め込み、埋め込まれたアンカーボルト10により、予め円筒形貯槽1の外周の形状に沿って曲げられた複数の形鋼7を固定し、堰5を形成する。この際、例えば形鋼7の下面にシムプレートを挿入したり、形鋼7の上端部をグラインダーで削るなどして、堰5の高さが全周に亘って均一となるように調整される。なお、アンカーボルト10は、例えば基礎コンクリート部3を打設する際に予め埋設されたアンカーボルトであってもよい。
【0019】
全ての形鋼7の設定作業及び高さ調整が終了した後は、堰5内にアスファルトサンド6が流し込まれる。堰5内に流し込まれたアスファルトサンド6のうち、貯槽1の側板8の下部に対応する位置のアスファルトサンド6は、その上面が極力均一な高さとなるように均される。この際、堰5の高さはアスファルトサンド6の設定高さHに調整されているので、例えば堰5の上端に複数の水糸を張設し、その水糸を基準高さとして利用することで、レベル測定器等で逐一アスファルトサンド6の高さを測定することなく、均し作業を行うことができる。
【0020】
その後、表面が極力平坦になるように均されたアスファルトサンド6上に底板4が逐次設置され、円筒形貯槽1の据付作業が引き続き行われる。
【0021】
以上の実施の形態によれば、平坦状の基礎コンクリート部3の上面であって円筒形貯槽1の底板4の外方に、形鋼7により形成された堰5を設けるので、従来図6に示すようにコンクリートの堰110を積み増す際に行われていた、養生後に固化した基礎コンクリート101の外周部を目荒らしする作業、基礎コンクリート101の堰110に対応する箇所に鉄筋を形成する作業、鉄筋形成後に基礎コンクリート101上にコンクリートを打設してコンクリートの堰110を形成する作業が不要となる。このため、堰5を設けるのに要する費用や労力を低減することができる。また、従来の積み増しにおいては、基礎コンクリート101打設後の養生に加え、鉄筋形成後に打設するコンクリートの堰110の養生を再度行う必要があった。このため、基礎コンクリート101の打設開始から堰110の養生が完了するまで、即ちアスファルトサンド6の打設を開始できるようになるまでに、長期間が必要であった。それに対して、以上の実施の形態によれば、基礎コンクリート部3の養生が終了した後に直ちに堰5の設定作業を行うことが可能であるため、円筒形貯槽1の据付に要する工期を短縮することが可能である。
【0022】
また、鋼材により形成された堰は、例えばグラインダー等によりレベル調節が可能なため、均一な高さの堰を容易に設けることができる。このため、堰5を設けるのに要する費用と労力をさらに低減することができる。
【0023】
なお、以上の実施の形態においては、堰5はL字状の形鋼7をアンカーボルト10により基礎コンクリート部3に固定して形成したが、例えば図4に示すように、円筒形貯槽1の外周の形状に沿って曲げられた帯鋼20を、基礎コンクリート部3の上面からアスファルトサンド6と同じ高さ突出するように基礎コンクリート部3に埋設することで形成してもよい。かかる場合、基礎コンクリート部3のコンクリート打設前の鉄筋組み作業と平行して帯鋼20の設定を行うことが可能となり、また、基礎コンクリート3を打設した時点で堰5が形成されるので、さらに工期を短縮することが可能となる。
【0024】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、アスファルトサンドを打設した円筒形貯槽の基礎コンクリートの外周部に堰を設ける際に有用である。
【符号の説明】
【0026】
1 円筒形貯槽
2 基礎
3 基礎コンクリート部
4 底板
5 堰
6 アスファルトサンド
7 形鋼
8 側板
10 アンカーボルト
11 孔
20 帯鋼



【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体または液体を貯蔵する円筒形貯槽の底板と基礎コンクリートとの間にアスファルトサンドを打設した円筒形貯槽の基礎構造において、
前記基礎コンクリートは上面が平坦状に形成され、
前記基礎コンクリートの上面であって前記円筒形貯槽の底板に対応する領域の外方の全周に亘って鋼材により形成された堰が設けられ、
前記アスファルトサンドは前記堰の内側に打設されていることを特徴とする、円筒形貯槽の基礎構造。
【請求項2】
前記堰の高さは、前記基礎コンクリート上に打設されるアスファルトサンドの高さに等しいことを特徴とする、請求項1に記載の円筒形貯槽の基礎構造。
【請求項3】
前記堰は、アンカーボルトにより前記基礎コンクリートに固定された断面形状がL字状の形鋼であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の円筒形貯槽の基礎構造
【請求項4】
前記堰は、その上端が前記基礎コンクリートから突出するように当該基礎コンクリートに埋設された帯鋼であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の円筒形貯槽の基礎構造


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−281181(P2010−281181A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137609(P2009−137609)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】