説明

円筒濾過体用支持体、支持体用ユニット材、及び、円筒濾過カートリッジ

【課題】濾過−逆洗サイクルを繰り返した場合であっても、円筒濾過体の表面にしわが発生せず、このしわによる、信頼性の低下を防止するとともに、濾過円筒体の長寿命化を可能とすると共に、メンテナンス作業での、円筒濾過体の損傷の発生防止や作業困難性の解消を可能とする円筒濾過体用支持体を提供する。
【解決手段】
柔軟な濾過部を有する円筒濾過体内部に挿入されて、該内部より該円筒濾過体を支持するための略円筒状の円筒濾過体用支持体において、該円筒濾過体用支持体の外側面に該円筒濾過体用支持体の軸方向に垂直な断面での外周の長さを該外周に外接する円の円周より長くするための凹部が設けられている円筒濾過体用支持体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体、特に、液体を濾過するための円筒濾過体用支持体、そのような円筒濾過体用支持体のためのユニット材、及び、このような円筒濾過体用支持体を有する円筒濾過カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
精密ろ過が可能で、工業用途に好適に用いられる濾過体として、熱融着性複合繊維を含む一定巾の繊維集合層を、予め熱融着温度に冷却し、巻き芯に巻きつけてまずシート支持層を形成させた後、この繊維集合層と同じ巾を有し、かつ所望の孔径を持つシート、例えば濾紙、スパンボンド紙、メンブレンフィルタ等のシートを前記繊維集合層とともに巻き込んで精密濾過層を形成させ、引続いて前記繊維集合層を巻き取って前濾過層を形成せしめた後、冷却し、巻き芯を抜き取って製造した精密濾過用カートリッジフィルターが知られている(特公昭56−49605号公報(特許文献1))。
【0003】
しかしながら、上記従来技術では、精密濾過層は渦巻き状に巻き取られるため、特に、使用開始直後には用いるメンブレンフィルタの孔径での濾過が保証されず、例えば滅菌処理のための濾過工程に応用した場合、フィルター下流側にわずかにリークしたバクテリアが問題になる(半導体製造技術)場合が想定され、あるいは、リークしたバクテリアが多量に繁殖し、その結果、濾過の効果が全く損なわれてしまうなどの問題が生じる可能性が否定できなかった。
【0004】
このため、最近、フェルト状の基布を支持層として、その表面(少なくとも一方の面)にメンブレンフィルタを精密濾過層として積層・接合した上に、一部(2cm程度)が重なるようにして円筒状(例えば7cm程度の円筒)とし、さらに、前記重なった部分付近をシーズ材でシールし、円筒の一方の端を円盤状の密封材によって密閉してなる円筒濾過体が用いられるようになった。
【0005】
このような円筒濾過体は、通常、円筒外側面に精密濾過層が位置するように製作され、濾過時には被濾過流体が円筒外側から内側に流れるように用いられる。このとき、濾過時の流体の圧力により円筒濾過体がつぶれるのを防止するために、円筒濾過体内部には支持体が挿入された円筒濾過カートリッジとして用いられる。
【0006】
ここで、円筒濾過カートリッジの長さは様々なニーズに応えるため、少なくとも数種類が準備される必要があり、このため支持体としては、たとえば、図5に示す有孔円盤状の支持体用ユニット材を互いに、例えば10個、あるいは150個など連結させて形成する。
【0007】
図中A1’は貫通孔1c’を有する中空円盤部を有し、貫通孔1c’は中空円盤部の両底面を貫通している。この中空円盤部の一方の側面にはスペーサ2a’及び2b’が、本例では3つずつ、側面より突出して設けられており、支持体用ユニット材A1’同士を積層したときに、円筒濾過体(図示しない)を該円筒濾過体外側面から内側面へ通過した流体が貫通孔1c’に達するための流体通路が確保されるようになっている。
【0008】
さらに、スペーサ2a’には中空円盤部を含めて、中空円盤部の両底面方向を貫通する補助貫通孔2a1’が形成されている。また、スペーサ2b’のそれぞれの頂面には嵌合用凸部2b1’が設けられ、一方、中空円盤部の他方の面の支持体用ユニット材A1’同士を、それらの補助貫通孔2a1’の位置が一致するように重ね合わせたときに、これら嵌合用凸部2b1’に相当する位置に嵌合用凹部1b’が嵌合用凸部2b1’と嵌合可能な形状で設けられている。なお、図中、符号1d’を付して示した貫通孔は肉抜き孔であり、上記貫通孔1c’と同様に濾過された流体をカートリッジ外へ誘導する。
【0009】
このような支持体用ユニット材A1’を積層して円筒濾過体用支持体の主部を形成する場合には、上記補助貫通孔2a1’に適合する棒を例えば3本準備して、3箇所ある補助貫通孔2a1’に貫通させる作業を繰り返し、途中、ないし、最後に、支持体両底面方向から力を加えるなどして、これら複数の支持体用ユニット材A1’の嵌合用凸部2b1’と嵌合用凹部1b’とを嵌合させることで容易に行うことができる。
【0010】
このようにして複数の支持体用ユニット材A1’を積層して円筒濾過体用支持体の主部を形成したのち、この円筒濾過体用支持体の主部の他方の底面の嵌合用凹部1b’に適合する底部ユニット材A2(支持体用ユニット材A1’とほぼ同様の形状であるが、貫通孔1c’及び補助貫通孔2a1’が設けられていない)を装着することで円筒濾過体用支持体A’を得ていた。
【0011】
ここで、このように作製した円筒濾過体用支持体A’は円筒状の柔軟な濾過部B1と、この濾過部B1の円筒の一方の端を密閉する円盤状密封材B2とを有する円筒濾過体Bの内部に他端側から挿入して、円筒濾過体B1内部にセットされてカートリッジC’が形成される。このように円筒濾過体用支持体を円筒濾過体内部にセットした状態での側面から見た断面図と円筒濾過体の円筒の軸に対して垂直な方向での断面図を図6(a)及び図6(b)にそれぞれ示す。
【0012】
このようにして作製した円筒濾過カートリッジを濾過装置にセットして、濾過を行うと、その外表面に濾過残渣が付着し、その結果、充分な濾過流量が確保できなくなる。このため、濾過流量をチェックし、あるいは、定期的に、清澄な流体を濾過方向とは逆(円筒濾過体内部から外部に向かって)に流して、カートリッジ表面の濾過残渣を除去する逆洗を行う。
【0013】
このような、濾過−逆洗サイクルを繰り返すと、円筒濾過体の側面に、円筒の軸に略平行なしわ(以下、「縦皺」と云う)が、通常は、複数本、及び、円筒濾過体の側面の円盤状の密封材による密封部付近に、円筒の軸に略垂直なしわ(以下、「横皺」と云う)が、通常は、1本形成される。
【0014】
円筒濾過体の表面にしわができた状態で、さらに濾過−逆洗サイクルを繰り返すと、このしわ付近の円筒濾過体の表面層にクラックが生じることがあり、精密濾過に不安が生じる。
【0015】
さらに、濾過装置のメンテナンスのため、濾過装置からこの円筒濾過カートリッジを外す場合、濾過装置のカートリッジ上流側と下流側とを仕切る、円筒濾過カートリッジと嵌合するカートリッジ用孔が設けられた仕切り板のカートリッジ用孔から円筒濾過カートリッジを抜き去る、取り外し作業が行われるが、円筒濾過体の表面にしわが寄ったカートリッジの場合、特に、カートリッジ長さ(円筒軸方向の長さ)が1.5m程度ある場合など、この取り外し作業中に、しわ部分が仕切り板のカートリッジ用孔内壁にこすれてしまい、その円筒濾過体の表面層が破れたり、裂けたりして、使用不可能となるおそれや、しわにより取り外し作業自体が困難となる場合があった。
【特許文献1】特公昭56−49605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記した従来技術を改善する、すなわち、濾過−逆洗サイクルを繰り返した場合であっても、円筒濾過体の表面にしわが発生せず、このしわによる、信頼性の低下を防止するとともに、濾過円筒体の長寿命化を可能とすると共に、メンテナンス作業での、円筒濾過体の損傷の発生防止や作業困難性の解消を可能とする円筒濾過体用支持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を達成するために種々検討した結果、縦皺発生の原因は支持材と円筒濾過体内部とに設けられたクリアランス(隙間。図6(b)参照)にあることが判った。
【0018】
すなわち、円筒濾過体の濾過部B1は上述のようにフェルト状の基布表面にメンブランフィルタを配したものであるため柔軟で形状保持性に乏しく、さらにカートリッジは、1m程度の長さのものは一般的で、さらに1.5mの長さのものも希ではない。このため、支持材A’を内部に挿入する際の作業を容易にするために、円筒濾過体Bの濾過部B1の内径は支持材A’の外径よりもわずかに太くして、両者間にはクリアランス(通常1mm程度)が設けられている。
【0019】
ここで、図7(a)にモデル的に示すような濾過時の濾過部B1の状態と図7(b)にモデル的に示すような逆洗時の濾過部B1の状態との遷移のサイクルを繰り返すと、円筒濾過体の濾過部B1に、図8にモデル的に示すようにしわB3が不可逆的に形成されてしまうことが判った。
【0020】
このようにクリアランス部分による、円筒濾過体の濾過部内側面の円周長と支持材外周の円周長の差が縦皺発生の原因であると結論づけられたものの、しかし、このクリアランスは上記のようにカートリッジ作製上の必要から設けられたもので、なくすことは困難であった。
【0021】
一方、横皺発生の原因は支持材長さ(円筒軸方向長さ)と円筒濾過体長さ(円筒軸方向長さ)との違いにあることが判った。
【0022】
支持材の長さは無孔円盤状の有孔円盤状の支持ユニット材の単位厚さ(通常8mm程度)と積層数の積と底部ユニット材の厚さ(通常8mm程度)との和により決定されるが、そのため、支持材の長さは、円筒濾過体の長さに適合した長さとすることが可能な場合もあるが、通常は短くなり、その差は最大で7mm程度である。
【0023】
また、両者の長さが一致した場合であっても、使用により濾過−逆洗サイクルを繰り返すうちに長さが1〜1.5mある円筒濾過体がさらに数mm程度伸びる場合もある。
【0024】
このような仕様上の、および、使用による、支持材と円筒濾過体との長さの不適合が原因で、濾過時の状態(その状態をモデル的に図9(a)に示す)と逆洗時の状態(その状態をモデル的に図9(b)に示す)との間の繰り返しにより、円筒濾過体の側面の円盤状の密封材による密封部付近に、円筒の軸に略垂直なしわ(横皺)B3がやはり不可逆的に形成されることが判った。
【0025】
本発明はこのような知見を基に相当されたものであり、本発明の円筒濾過体用支持体は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、柔軟な濾過部を有する円筒濾過体内部に挿入されて、内部より該円筒濾過体を支持するための略円筒状の円筒濾過体用支持体において、該円筒濾過体用支持体の外側面に該円筒濾過体用支持体の軸方向に垂直な断面での外周の長さを該外周に外接する円の円周より長くするための凹部が設けられていることを特徴とする。
【0026】
本発明の支持体用ユニット材は請求項2に記載の通り、請求項1に記載の円筒濾過体用支持体の主部を形成するための支持体用ユニット材であって、軸ないし軸付近に軸方向を貫通する貫通孔を有する略円盤状であり、同型の支持体用ユニット材と積層時には円筒濾過体を該円筒濾過体外側面から内側面へ通過した流体が該貫通孔に達するための流体通路が形成され、かつ、該支持体用ユニット材の外側面に該支持体用ユニット材の軸方向に垂直な断面での外周長さを該外周に外接する円の円周より長くするための凹部が設けられていることを特徴とする。
【0027】
さらに、本発明の支持体用ユニット材は請求項3に記載の通り、請求項2に記載の支持体用ユニット材において、上記支持体用ユニット材が同型の支持体用ユニット材と上記略円盤軸方向に連結可能な連結部を有していることを特徴とする。
【0028】
本発明の円筒濾過カートリッジは請求項4に記載の通り、請求項1に記載の円筒濾過体用支持体が円筒濾過体用支持体として円筒濾過体内部に挿入されていることを特徴とする。
【0029】
本発明の濾過装置は請求項5に記載の通り、請求項4に記載の円筒濾過カートリッジを備えたことを特徴とする。
【0030】
本発明の円筒濾過カートリッジは請求項6に記載の通り、円筒状の柔軟な濾過部と、該濾過部の円筒の一方の端を密閉する円盤状密封材とを有する円筒濾過体と、該円筒濾過体の他方の端から該円筒濾過体の内部に挿入されて該内部より該円筒濾過体を支持するための略円筒状の円筒濾過体用支持体とを有する円筒濾過カートリッジにおいて、前記円筒濾過体の円盤状密封材が円筒濾過体用支持体に固定されていることを特徴とする。
【0031】
本発明の濾過装置は請求項7に記載の通り、請求項6に記載の円筒濾過カートリッジを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に係る本発明の円筒濾過体用支持体によれば、濾過−逆洗サイクルを繰り返した場合であっても、円筒濾過体の表面にしわ(縦皺)が発生せず、その結果、このしわによる、信頼性の低下を防止するとともに、濾過円筒体の長寿命化を可能とすると共に、メンテナンス作業での、円筒濾過体の損傷の発生が防止されるとともに作業困難性が解消する。
【0033】
請求項6に係る本発明の円筒濾過カートリッジによれば、濾過−逆洗サイクルを繰り返した場合であっても、円筒濾過体の表面にしわ(横皺)が発生せず、その結果、このしわによる、信頼性の低下を防止するとともに、濾過円筒体の長寿命化を可能とすると共に、メンテナンス作業での、円筒濾過体の損傷の発生が防止されるとともに作業困難性が解消する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に本発明の円筒濾過体用支持体の実施の形態について図面を用いて具体的に説明する。
【0035】
図1は本発明に係る円筒濾過体用支持体の一例Aの断面(略円筒状の円筒濾過体用支持体の軸方向に垂直な断面)を示したモデル図である。
【0036】
この円筒濾過体用支持体Aにおいて、その断面に凹部Aaが、この例では2箇所形成されており、その結果、その断面の外周の長さは外周に外接する外接円(この図における符号B)の円周長さよりも長くなっている。
【0037】
このような、円筒濾過体用支持体Aを支持体として内部に挿入して用いることができる円筒濾過体はその断面の内周の長さが上記外接円Bの円周長さ(L2)と同じ程度(凹部の存在により、その端部間が本来は外接円Bに沿った弧となるべき部分が弦となるため、断面の内周の長さが上記L2よりも短い円筒濾過体へ挿入可能となる)であるが、実際上は挿入作業を容易にするためにクリアランスが必要となるため、上記L2よりも、円筒濾過体の直径にもよるが、例えば数mm程度長い、内周の長さを有する円筒濾過体を用いる。
【0038】
なお、本発明では円筒濾過体用支持体は略円筒状であることが必要である。略円筒状でないと、円筒濾過体の内部からの支持が不完全となって、その結果、精密濾過や後述するような濾過助剤を用いる濾過における円筒濾過体がその濾過面での差圧に耐えられなくなり、破けるおそれもあり、また、伸びて表面の精密濾過層が破壊されたり、あるいは、部分的に圧力損失が少ない部分が形成されて濾過精度が保たれないなどの問題が生じるおそれがある。
【0039】
図2(a)及び図2(b)に、このような円筒濾過体用支持体Aを、適合する内径を有する円筒濾過体B内部に挿入・セットし、濾過(図2(a))及び逆洗(図2(b))を行った状態の、円筒濾過体Bの柔軟な、濾過に寄与する素材からなる濾過部B1が存在する部分での、モデル断面図をそれぞれ示す。
【0040】
これらの図により理解できるように図2(b)に示されるクリアランス部分は、濾過時には凹部に吸収されるので、しわ(縦皺)が形成されない。
【0041】
ここで、円筒濾過体用支持体の凹部形成に当たっては、濾過・逆洗時のいずれであっても円筒濾過体の濾過部を折る、あるいは急激に曲げるような部分を形成しないように配慮することが重要である。このような部分が形成されると、濾過部にメンブランフィルタからなる精密濾過層を有する場合、クラックや破れの発生の原因になるおそれがある。また、凹部の大きさは用いる円筒濾過体とのクリアランスの大きさに応じて適宜調整するが、小さすぎると本発明の効果が得られにくくなり、大きすぎると、支持体としての機能が果たせなくなる場合があることを考慮して決定する。好ましくは支持体の断面の外周の長さが用いる円筒濾過体の内周の長さと一致あるいはほぼ一致するように後述する凹部の数とともに凹部の大きさを決定する。
【0042】
また、円筒濾過体用支持体の凹部は、支持体の太さにもよるが、1個以上、通常は2つ、支持体が太い場合にはより多くするなどして適宜調整する必要がある。
【0043】
ここで、このような円筒濾過体用支持体Aを可能とする支持体用ユニット材A1について図3を用いて説明する。
【0044】
図中符号1は貫通孔1cを有する中空円盤部であり、貫通孔1cは中空円盤部1の両底面を貫通している。中空円盤部1の側面に、凹部1aが2箇所設けられていて、この凹部1aにより支持体用ユニット材A1の外側面に支持体用ユニット材A1の軸方向に垂直な断面での外周長さを外周に外接する円の円周より長くなっている。
【0045】
この中空円盤部1の一方の側面にはスペーサ2a及び2bが、本例では3つずつ、側面より突出して設けられており、支持体用ユニット材A1同士を積層したときに、円筒濾過体(図示しない)を該円筒濾過体外側面から内側面へ通過した流体が貫通孔1cに達するための流体通路が確保されるようになっている。
【0046】
なお、この例で支持ユニット材の単位厚さは8mmであり、スペーサの厚さは5mmである。このとき円筒濾過体の濾過面は支持ユニット材により内部より支持されていない部分が8mmにつき5mmずつ存在する。このため円筒濾過体の素材は濾過面に濾過時に加わる圧力を勘案して、充分な強度が保たれるよう選択する必要がある。なお、特に圧力損失の高い濾過を行う場合には、ベース層としてフェルトではなく布などのより強度の高い補強層素材を用いる。あるいは、上記スペーサの厚さの薄い支持ユニット材を用いる等で対応可能である。
【0047】
さらに、スペーサ2aには中空円盤部1を含めて、中空円盤部1両底面方向を貫通する補助貫通孔2a1が形成されている。また、スペーサ2bのそれぞれの頂面には嵌合用凸部2b1が設けられ、一方、中空円盤部1の他方の面の支持体用ユニット材A1同士を、それらの補助貫通孔2a1の位置が一致するように重ね合わせたときに、これら嵌合用凸部2b1に相当する位置に嵌合用凹部1bが嵌合用凸部2b1と嵌合可能な形状で設けられている。なお、図中、符号1dを付して示した貫通孔は肉抜き孔であり、貫通孔1cと同様に、その補助的働きを果たす。
【0048】
このような支持体用ユニット材A1を積層して円筒濾過体用支持体の主部を形成する場合には、上記補助貫通孔2a1に適合する棒を例えば3本準備して、3箇所ある補助貫通孔2a1に貫通させる作業を繰り返し、途中、ないし、最後に、支持体両底面方向から力を加えるなどして、これら複数の支持体用ユニット材A1の嵌合用凸部2b1と嵌合用凹部1bとを嵌合させることで容易に行うことができ、他の手段なしに一体化させることができる。
【0049】
このようにして複数の支持体用ユニット材A1を積層して円筒濾過体用支持体の主部を形成したのち、円筒濾過体用支持体の主部の他方の底面の嵌合用凹部1bに適合する底部ユニット材A2(従来技術で用いられてきた円盤状のものと同形状。支持体用ユニット材A1’とほぼ同様の形状であるが、貫通孔1c’及び補助貫通孔2a1’が設けられていない)を装着することで円筒濾過体用支持体を得ることができる。
【0050】
ここで、このような本発明に係る複数の支持体用ユニット材A1を積層して円筒濾過体用支持体の主部を形成したのち、円筒濾過体用支持体の主部の他方の底面の嵌合用凹部1bに適合する底部ユニット材A2を装着してなる本発明に係る円筒濾過体用支持体が円筒濾過体内部に挿入されている円筒濾過カートリッジの一例Cのモデル断面図(底部ユニット材A2付近)を図4(a)に示す。
【0051】
このカートリッジCでは、円筒状の柔軟な濾過部B1と、この濾過部B1の円筒の一方の端を密閉する円盤状密封材B2とを有する円筒濾過体Bと、この円筒濾過体Bの他方の端からこの円筒濾過体Bの内部に挿入されてその内部よりこの円筒濾過体Bの濾過部B1を支持するための略円筒状の円筒濾過体用支持体Aとを有する円筒濾過カートリッジであり、円筒濾過体Bの円盤状密封材B2が円筒濾過体用支持体AにねじB3で固定されている。このため、円筒濾過体用支持体Aの長さがこの円筒濾過体Bに適した長さより若干長くても、あるいは、この円筒濾過体Bの濾過部B1が使用の結果、若干長くなった場合であっても、円筒濾過体Bの円盤状密封材B2が円筒濾過体用支持体Aに固定されているために、これら長さの不適合による濾過部B1の余分な長さは濾過部B1全体にある程度均一に分散し、その結果、従来技術で生じていた、円盤状密封材B2付近の濾過部B1における横皺の発生が効果的に防止される。
【0052】
なお、カートリッジC上部は図4(b)に示すように最上層の支持体用ユニット材A1に支持体用ヘッド材A3が連結され、この支持体用ヘッド材A3に円筒濾過体Bの開放端が水密に保持されており、濾過時に円筒濾過体Bにより濾過された濾液は全量、支持体用ヘッド材A3の頂部A31からカートリッジCによる濾液として排出される。
【0053】
なお、カートリッジCは濾過装置に付属する有孔仕切り板DにパッキンEを介して嵌合しており、濾過液と濾過前液とはこの有孔仕切り板D及びパッキンEによって仕切られるため、混合することはない。
【0054】
また、実際に図4に示す本発明に係るカートリッジを試験的に、複数のカートリッジを同時に取り付けて利用するタイプの濾過器に取り付け、従来技術に係るカートリッジと共に用いたところ、従来技術に係るカートリッジではその濾過部に横皺、縦皺がともに発生したが、本発明に係るカートリッジでは両者とも発生しないことが確認された。
【0055】
なお、上述において、主として、濾過部表面にメンブレンフィルタ層を有する濾過部を有する円筒濾過体によって説明したが、このようなメンブレンフィルタ層を有しない、濾布からなる濾過部を有する円筒濾過体を用いる分野の場合であっても、濾過部に部分的なしわの発生が防止できるために、濾過部破れを防止し、寿命を延ばすことが可能となり、また、珪藻土濾過など、濾過部表面に濾過助剤からなる層を形成する、濾過助剤を併用して円筒濾過体を用いる分野であっても、濾布表面にしわの発生が防止されるために、円筒濾過体の寿命を長くすることができる上、しわが生じない結果として、円筒濾過体表面に均一な濾過助剤からなる層を形成することができるので、より確実な精密濾過が可能となる、あるいは、濾過助剤の使用量を減らしても精度が維持された精密濾過が可能となるなどの本発明特有の効果が得られ、そのため、メンブレンフィルタ層を有しない、濾布からなる濾過部を有する円筒濾過体を用いる分野であっても本発明の構成を有すれば本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、柔軟な濾過部を有する円筒濾過体を用いる、流体の濾過分野で利用でき、円筒濾過体の寿命を長くすると共に、濾過体の破れや破損事故を防止し、確実な濾過を可能とすることができる。
【0057】
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る円筒濾過体用支持体の一例Aの断面(略円筒状の円筒濾過体用支持体の軸方向に垂直な断面)を示したモデル図である。
【図2】本発明の原理を説明するためのモデル断面図である。(a)濾過時の状態を示す図である。(b)逆洗時の状態を示す図である。
【図3】本発明に係る円筒濾過体用支持体Aを可能とする支持体用ユニット材A1についての説明図である。
【図4】本発明に係る円筒濾過体用支持体が円筒濾過体内部に挿入されている円筒濾過カートリッジの一例Cのモデル断面図である。(a)底部ユニット材A2付近の断面図である。(b)支持体用ヘッド材A3付近の断面図である。
【図5】従来技術に係る支持体用ユニット材を示すモデル図である。
【図6】従来技術に係るカートリッジを説明するためのモデル図である。(a)円筒濾過体用支持体を円筒濾過体内部にセットした状態での側面から見た断面図である。(b)円筒濾過体の円筒の軸に対して垂直な方向での断面図である。
【図7】(a)濾過時の濾過部の状態をモデル的に示す図である。(b)逆洗時の濾過部の状態をモデル的に示す図である。
【図8】しわ(縦皺)が不可逆的に形成された状態を示すモデル図である。
【図9】しわ(横皺)が形成される原因を示すモデル図である。(a)濾過時の濾過部の状態をモデル的に示す図である。(b)逆洗時の濾過部の状態をモデル的に示す図である。
【符号の説明】
【0059】
A 円筒濾過体用支持体
Aa 凹部
A1 支持体用ユニット材
A2 底部ユニット材
A3 支持体用ヘッド材
B 円筒濾過体
B1 濾過部
1 中空円盤部
1c 貫通孔
1a 凹部
1b 嵌合用凹部
1c 肉抜き孔
2a スペーサ
2b スペーサ
2a1 補助貫通孔
2b1 嵌合用凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な濾過部を有する円筒濾過体内部に挿入されて、該内部より該円筒濾過体を支持するための略円筒状の円筒濾過体用支持体において、該円筒濾過体用支持体の外側面に該円筒濾過体用支持体の軸方向に垂直な断面での外周の長さを該外周に外接する円の円周より長くするための凹部が設けられていることを特徴とする円筒濾過体用支持体。
【請求項2】
請求項1に記載の円筒濾過体用支持体の主部を形成するための支持体用ユニット材であって、軸ないし軸付近に軸方向を貫通する貫通孔を有する略円盤状であり、同型の支持体用ユニット材と積層時には円筒濾過体を該円筒濾過体外側面から内側面へ通過した流体が該貫通孔に達するための流体通路が形成され、かつ、該支持体用ユニット材の外側面に該支持体用ユニット材の軸方向に垂直な断面での外周長さを該外周に外接する円の円周より長くするための凹部が設けられていることを特徴とする支持体用ユニット材。
【請求項3】
上記支持体用ユニット材が同型の支持体用ユニット材と上記略円盤軸方向に連結可能な連結部を有していることを特徴とする請求項2に記載の支持体用ユニット材。
【請求項4】
請求項1に記載の円筒濾過体用支持体が円筒濾過体用支持体として円筒濾過体内部に挿入されていることを特徴とする円筒濾過カートリッジ。
【請求項5】
請求項4に記載の円筒濾過カートリッジを備えたことを特徴とする濾過装置。
【請求項6】
円筒状の柔軟な濾過部と、該濾過部の円筒の一方の端を密閉する円盤状密封材とを有する円筒濾過体と、該円筒濾過体の他方の端から該円筒濾過体の内部に挿入されて該内部より該円筒濾過体を支持するための略円筒状の円筒濾過体用支持体とを有する円筒濾過カートリッジにおいて、
前記円筒濾過体の円盤状密封材が円筒濾過体用支持体に固定されていることを特徴とする円筒濾過カートリッジ。
【請求項7】
請求項6に記載の円筒濾過カートリッジを備えたことを特徴とする濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−218379(P2006−218379A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33132(P2005−33132)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000144418)株式会社三進製作所 (5)
【Fターム(参考)】