説明

円筒状熱源を生成する方法

表面が被覆された少なくとも1つの長手方向の空気流チャンネルが貫通して延びる円筒状炭素質熱源の生成方法を提供する。内面がコーティング層(22)で覆われた長手方向の空気流チャンネルが通って延びる加熱喫煙物品のための円筒状炭素質熱源(4)の生成する方法は、a)空気流チャンネルを形成するためのマンドレル(10)が取り付けられたオリフィス(8)を含むダイ(6)を通した炭素質材料の押し出しによって円筒状熱源(4)を形成する段階、及び(b)マンドレル下流の空気流チャンネルの内面に流体コーティング化合物(16)を付加する段階を含む。コーティング化合物(16)は、マンドレル(10)を通って長手方向に延びて端部に出口を有する給送通路(12)を通じて給送される。コーティング化合物(16)は、コーティング化合物と内面との間の付着力の結果として長手方向流れチャンネルの内面を濡らし、それにより円筒状物品(4)が押し出される時にコーティング層(22)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が被覆された少なくとも1つの長手方向の空気流チャンネルが貫通して延びる円筒状炭素質熱源の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押し出しは、食品工業、金属工業、プラスチック工業、及び窯業を含む多くの産業において一定の断面を有する細長いロッド及びチューブの生成のために用いられている公知の製造方法である。押し出し方法では、プラスチックの原料が、押し出される物品の所望の形状と逆の幾何学的形状を有するダイを通して押し出されるか又は引き抜かれる。例えば、中実ロッドは、ダイオリフィスを通して原料を押し出すことによって生成される。1つ又はそれよりも多くの中空通路は、ダイオリフィス内に1つ又はそれよりも多くのピン又はマンドレルを取り付けることにより、押し出されるロッド内に生成することができる。
【0003】
押し出し方法を用いて基板にコーティング層を付加する方法も知られている。例えば、EP−A−0,914,239には、移動するウェブ上に1つ又はそれよりも多くの流体流を同時に押し出して、そこにコーティング層を形成するためのダイが開示されている。
コーティング層は、同じダイ内の異なるオリフィスを通して2つ又はそれよりも多くの異なる材料を押し出す共押し出しの方法において、押し出される物品の表面に直接付加することができる。オリフィスは、押し出される材料がダイを出るにつれて融合して互いに結合し、積層構造を成すように配列される。例えば、EP−A−0,662,385及びEP−A−0,491,093の両方には、2つ又はそれよりも多くの同心層を有するチューブを生成するための共押し出し方法が開示されている。しかし、共押し出しは、コーティングが押し出されるダイオリフィスが狭くなり過ぎた場合に問題が生じるために、厚さが約1mmよりも少ないコーティング層を付加するのには適さないことが分かっている。一般に、押し出し中又はその後の処理中に重力下で押し出し物品が変形しないように、機械的安定性を得るために高粘性の原料が押し出しに用いられる。しかし、高粘性の原料を狭いオリフィスに強制的に通すことによって、オリフィス内部に大きな剪断力が発生する。従って、高粘性の原料をダイに強制的に通すために及びダイオリフィスの閉塞を防止するために高い圧力が必要となる。更に、ダイの摩耗が大きく、これによってダイの寿命が著しく低下することになる。これは、原料がセラミック粒子のような硬質の研磨性粒子を含んでいる場合に特に問題となる。
【0004】
押し出しロッド又は押し出しチューブの1つ又はそれよりも多くの表面にコーティング層を付加するための幾つかの代替的方法が当業技術で提案されている。押し出し物品の外面へのコーティング層の付加は、吹き付け及び浸漬のような比較的簡単な従来の被覆技術を用いて行うことができる。しかし、押し出しチューブの内面へのコーティング層の付加は、より困難である。
DE−A−35,25,530及びDE−A−102,49,141の両方には、押し出しポリマーチューブの内面にコーティング層を付加する押し出し方法が開示されている。DE−A−35,25,530の方法では、コーティング材料の円筒状層が形成され、次いで、押し出しチューブの内面に直接付加され、その後、マンドレルを用いて当該表面に機械的に圧着される。DE−A−102,49,141の方法では、コーティング材料は、ダイオリフィス内部に取り付けられたマンドレル内の1つ又はそれよりも多くの給送チャンネルを通じてチューブの内面上に射出される。次いで、コーティング材料は、マンドレルの他の部分と比較して直径が大きいマンドレルの端部によって内面に機械的に圧着される。
【0005】
DE−A−35,25,530及びDE−A−102,49,141に説明された方法では、共押し出しに必要な粘性よりも低い粘性を有するコーティング化合物を付加することが可能である。しかし、共押し出しの場合と同様に、ダイ及び特にダイオリフィス及びマンドレル内の流れチャンネルの寸法は、押し出される物品の寸法及び所望されるコーティングの厚さによって判断される。必要なダイオリフィス及び流れチャンネルが小さいほど、ダイを製造しかつ操作することが困難となり、押し出し中に摩耗及び閉塞が生じる可能性がより高くなる。
【0006】
加熱シガレットのような加熱喫煙物品は、一般に、可燃性の燃料要素又は熱源を組み込んでいる。エーロゾルが、熱源の内部、周囲、又は下流に位置することができる物理的に分離されたエーロゾル形成材料への熱源からの熱の伝達によって発生する。熱源は、押し出しによって形成することができ、有利な態様においては、熱源の全長に沿って延びる少なくとも1つの長手方向の空気流チャンネルを含む。少なくとも1つの空気流チャンネルは、エーロゾル発生物質の対流加熱の制御された量を供給する。空気流チャンネルの内面は、対流熱伝達を低減することが所望される場合、部分的又は全体的に被覆することができる。コーティングは、有利な態様においては、可燃性熱源から1つ又は複数の空気流チャンネル内への燃焼副産物の流入を低減又は実質的に防止することができる。コーティングはまた、有利な態様においては、吸煙中の熱源の燃焼のアクティブ化を低減又は防止することができる。
【0007】
US−A−5,040,551には、加熱喫煙物品のための炭素質燃料要素の生成方法が説明されている。燃料要素は、表面が固体粒子材料の微孔質層で被覆された1つ又はそれよりも多くの長手方向に延びる通路を有する。コーティングは、吹き付け、浸漬により、又は燃料要素を通じてコーティングの懸濁液を流すことにより、事前に形成された燃料要素の通路の表面に付加される。次いで、コーティングは、懸濁液から溶媒を除去するために乾燥される。
【0008】
幾つかの理由により、通路の表面上に均一で均質なコーティング層を設けることは困難であることが分かっている。燃料要素の通路は、約3mmよりも小さく、時には1mmよりも小さい直径を有することがあり、そのために、極めて薄いコーティング層が必要である。上記に示したように、特にコーティング材料の粘性が低いか又は硬質の研磨性材料を含んでいる場合、既存の技法を用いてそのような薄いコーティング層を設けることは困難である。更に、燃料要素は、一般に多孔質の炭素質材料で形成されており、既存のコーティング技法では、コーティング材料が通路の表面で細孔内に吸収されることが分かっている。このことが、コーティングの形成を制御するのを困難にし、また、コーティング層が不均一になり、炭素質材料とコーティング層の間の界面の形成が不明瞭となる結果も招いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP−A−0,914,239
【特許文献2】EP−A−0,662,385
【特許文献3】EP−A−0,491,093
【特許文献4】DE−A−35,25,530
【特許文献5】DE−A−102,49,141
【特許文献6】US−A−5,040,551
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「表面及びコロイド科学百科事典」、第2版、2006年、1528−9頁(シーアールシー・プレスにより出版)
【非特許文献2】D.Quere、「流体力学の年次報告」、第31巻(1999年)、347頁−384頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
空気流チャンネルの一部又は全部の表面に均一なコーティングが付加された1つ又はそれよりも多くの長手方向空気流チャンネルが通って延びる加熱喫煙物品のための円筒状炭素質熱源を生成するための簡素化されてより効率的な方法を提供することが望ましいと考えられる。
上に論じた従来技術の方法で生じる問題を最小限に抑えるか又は実質的に排除しながら、円筒状熱源の長手方向空気流チャンネルに薄いコーティングを付加するための有効な方法を提供することも望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により、内面がコーティング層で覆われた長手方向の空気流チャンネルが通って延びる加熱喫煙物品のための円筒状炭素質熱源の生成方法を提供し、本方法は、(a)空気流チャンネルを形成するためのマンドレルが取り付けられたオリフィスを含むダイを通した炭素質材料の押し出しによって円筒状熱源を形成する段階と、(b)マンドレルを通って長手方向に延びてマンドレルの端部に出口を有する給送通路を通じてコーティング化合物を給送することにより、マンドレル下流の空気流チャンネルの内面に流体コーティング化合物を付加する段階とを含み、コーティング化合物は、コーティング化合物と内面との間の付着力の結果として空気流チャンネルの内面を濡らし、それにより円筒状熱源が押し出される時にコーティング層を形成する。
【0013】
用語「円筒状」は、本明細書全体を通して、全長に沿って実質的に一定の断面を有する押し出し熱源を説明するために用いられ、例えば、円形、楕円形、又は矩形の断面を有する円筒を含む。
本発明による方法では、コーティング化合物は、空気流チャンネルの内面を「濡らす」。これは、熱力学的駆動力の結果として、具体的にはコーティング化合物と空気流チャンネルの内面との間の付着力の結果として、コーティング化合物が空気流チャンネルの表面全体におのずから広がることを意味する。流体が固体表面を濡らす度合いは、固体−液体界面及び液体−気体界面の界面張力に依存する熱力学変数である。
【0014】
液滴の界面とその液滴が配置された水平表面との間の接触角を測定する公知の「液滴」試験を行うことにより、所与の液体が表面を濡らすことになる度合いを判断することが可能である。液体による表面の濡れの度合いが高いほど、液体は表面上により広がり、接触角はより低くなる。接触角は、一般に、カメラ及びソフトウェアを用いて液滴のプロフィールを捕らえて解析するゴニオメータを用いて測定される。液滴試験については、例えば、「表面及びコロイド科学百科事典」、第2版、2006年、1528−9頁(シーアールシー・プレスにより出版)に説明されている。
本発明の方法では、押し出し熱源を形成する材料の表面を高度に濡らすコーティング化合物を選択することが好ましい。
【0015】
コーティング層を形成する方法の結果として、単に押し出し中にコーティング化合物を表面と接触させることにより、表面にコーティング化合物の均質層を設けることが可能となる。次いで、コーティング化合物は、円筒状熱源が押し出される時に、空気流チャンネルの表面全体におのずから広がることになる。この効果は、コーティング化合物が空気流チャンネル内に供給される位置に関係なく生じることになり、従って、コーティング化合物を空気流チャンネルの内面に隣接して注入する必要はない。代わりに、マンドレルの中心を通って延びる給送通路を通じて、空気流チャンネルの内面から離れた空気流チャンネルの中心にコーティング化合物を給送してもよい。この構成により、従来技術の方法と比較して、コーティング方法に必要な装置が簡素化され、コーティング層の付加に必要な精度レベルが大幅に低下される。
有利な態様においては、本発明の方法では、上述の従来技術の方法におけるようにコーティング層を予め形成する必要も、機械的接触圧を印加して空気流チャンネルの内面にコーティング化合物を圧着する必要もない。更に、比較的低粘性のコーティング化合物を用いることができ、それによってより大きな柔軟性が得られる。
【0016】
本発明の方法で付加されるコーティング層は、長手方向空気流チャンネルの内面全体にわたって、組成、構造、及び厚さが実質的に均一であり、かつコーティング層の表面が実質的に滑らかである。更に、空気流チャンネルの内面における表面変形は、コーティングによって平滑化されることが見出されている。従って、他の方法ではこのような変形の結果として引き起こされるコーティング層の脆弱性は、実質的に排除される。これらの有利な表面特性は、圧力の機械的印加によるのではなく、熱力学的な力によって形成されるコーティング層の成果である。本発明とは対照的に、マンドレルを用いてコーティング層を押し出し物品の表面に圧着する従来技術の方法では、マンドレルの表面及び押し出し物品の不可避の欠陥がコーティング層の表面に欠陥を生じさせるので、コーティング層は滑らかとはならない。
【0017】
驚くべきことに、本発明の方法を用いると、炭素質材料が高い空隙率を有し、かつ比較的低粘性のコーティング化合物が用いられている場合でさえも、コーティング化合物が熱源の炭素質材料内に有意には吸収されないことが見出されている。予想外にも、その結果、コーティング層は、均一かつ十分に定められ、空気流チャンネルの表面とコーティング層との間に明確な界面及び良好な付着性を有している。これらの有利な特性は、最終熱源に欠陥が生じる可能性を低減し、熱源が組み込まれた加熱喫煙物品の使用中の熱源の性能を最適化する。
【0018】
本発明の方法を用いると、従来技術の方法に必要であるよりもはるかに簡素な装置を用いて、押し出し工程中に押し出される円筒状熱源の長手方向空気流チャンネルの内面にコーティングを付加することが可能である。押し出し段階と被覆段階は、実質的に同時に行われることが好ましい。従って、本発明の方法は、要する時間が単純な押し出し方法と実質的に同一の効率的な単一段階方法である。本方法は、比較的高速での熱源の工業規模の生成にも適している。
【0019】
本発明の方法により形成された被覆熱源は、電気加熱シガレットのような種々の電気加熱喫煙物品に用いるのに適している。喫煙中、熱源の空気流チャンネル内のコーティングは、限定するものではないが、喫煙中の熱源内壁の減少及び安定化、主流煙中への固体粒子状物質の放出防止及び主流煙中への一酸化炭素の放出防止を含む1つ又はそれよりも多くの機能を果たすことができる。
有利な態様においては、本発明の方法は、用いられる材料の特性に合うように方法のパラメータを適応化及び制御することができるので、多種多様のコーティング化合物と共に用いるのに適している。段階(b)で形成されるコーティング層の厚さも予測可能に制御することができる。
【0020】
本発明の方法を用いて形成される特定のコーティング化合物の厚さは、D.Quere、「流体力学の年次報告」、第31巻(1999年)、347頁−384頁により説明されているような公知の熱力学原理の応用を通して、熟練者によって容易に予測することができる。本発明の方法では、コーティング層の厚さは、コーティング化合物の粘性、押し出し速度、又は両方を変更することによって変えることができる。
【0021】
上述の従来技術の方法における場合と異なり、空気流チャンネルの表面に付加されるコーティング層の厚さは、コーティング化合物が給送されるマンドレル内の給送通路の直径の影響を受けない。従って、有利な態様においては、マンドレル内の給送通路の直径を変えることによらず、粘性及び押し出し速度のような方法パラメータを変えることによって、堆積されるコーティングの厚さを変えることが可能である。その結果、従来技術の方法におけるよりもはるかに簡素なマンドレル設計を採用することができる。加えて、これまで達成されてきたものよりはるかに薄いコーティングを得ることが可能である。
有利な態様においては、マンドレル内の流れチャンネルの直径を縮小することなく、本発明の方法によって薄いコーティングを得ることができるので、高い剪断応力及び摩耗のような従来技術の方法に付随する問題は、本発明の方法においてはそれほど生じない。
【0022】
本発明の方法は、従来技術の方法における場合と異なり、硬質粒子による閉塞及び有意な摩耗を防止するのに十分な直径を流れチャンネルが有することができるので、硬質粒子を含むコーティング化合物を付加することが可能であるという利点も有する。コーティング化合物は、液体溶媒中の粒子懸濁液であることが好ましい。一般に、そのような懸濁液は、粒子の含有量が少なくかつ低粘性となり、このことが、既存の技法を用いてそれらの懸濁液を空気流チャンネルの表面に付加するのを困難にしている。しかし、本発明による方法で懸濁液を用いると、結果として均一性及び安定性に優れたコーティング層がもたらされることが見出されている。
【0023】
本方法は、押し出された熱源を乾燥させる段階を更に含むことが好ましい。乾燥段階は、周囲温度で行ってもよく、熱、圧力、又は両方の組み合わせを加えることによって助長してもよい。一般に、押し出された円筒状熱源及びコーティング化合物の両方からの溶媒の除去は、乾燥段階中が望ましいことになる。乾燥段階は、通常、懸濁液の液相を除去するために、コーティング化合物が懸濁液である時が望ましいことになる。乾燥後、懸濁液の粒子は、均一で密度の高い層を形成する。一般に、溶媒の除去により、乾燥段階及びあらゆる加熱段階中のコーティング層の収縮が大きくなることになり、それによりコーティングの厚さを尚一層低減することが可能となる。一般に、コーティング層の収縮率は、乾燥及び加熱中の炭素質材料のそれとは異なることになり、コーティング層に亀裂が入るか又は炭素質材料から分離する可能性がある。しかし、本発明の方法を用いれば、これらの現象を実質的に排除することができる、十分に安定かつ均一で炭素質材料への十分に良好な付着性を示すコーティング層を形成することが可能である。
【0024】
代替的に又は乾燥段階に加えて、最終製品を達成するために、押し出された熱源を何らかの方法で処理することが望ましい場合がある。例えば、コーティングを安定化するために又はコーティング化合物の濡れ特性又は流動的特性を調節するために、コーティング化合物に添加された有機添加剤の完全燃焼又は熱分解を生じさせるように押し出された熱源を熱処理にかけることが望ましいであろう。本方法は、焼結又は熱分解を生じさせるために、好ましくは不活性雰囲気下で少なくとも750℃の温度まで熱源を加熱する段階を更に含むことが好ましい。
【0025】
本方法は、押し出された円筒状熱源を切断して個々の部分にする切断段階を更に組み込むことができる。切断段階は、乾燥段階及びあらゆる他の付加的な処理段階の前に実行することができ、又は後に実行してもよい。各熱源は、好ましくは約7mmから約17mmの長さ、より好ましくは約11mmから約15mmの長さ、最も好ましくは約11mmの長さを有する。
【0026】
好ましい方法では、単一の実質的に中心又は軸線方向に位置する空気流チャンネルを有する熱源が形成される。空気流チャンネルの直径は、約1.5mmから約3mmであることが好ましく、約2mmから約2.5mmであることがより好ましい。
コーティング層は、約10ミクロンから約200ミクロンの厚さを有することが好ましく、約10ミクロンから約100ミクロンの厚さを有することがより好ましい。
空気流チャンネルの内面に形成されるコーティング層の厚さは、段階(b)で少なくともある程度マンドレルの給送通路を通るコーティング化合物の流速の制御を通じて制御されることが好ましい。流速は、逆に、コーティング化合物の圧力及び容積の少なくとも一方の制御を通じて制御することができる。
【0027】
本発明のある一定の実施形態では、コーティング化合物の流速は、出口が設けられたマンドレルの端部に直接隣接してコーティング層が形成されるように制御される。この場合、コーティング化合物の流速は、形成されるコーティング層の厚さに直接影響を与える。押し出し中、押し出される熱源とコーティング化合物の相対運動の結果として、マンドレルの端部で負の静水圧が蓄積される。給送通路内の静水圧は、1つ又はそれよりも多くの圧力センサを用いてモニタすることができ、圧力の測定値に応じて流れ圧力を調節し、圧力が確実に所望のレベルに留まるようにすることができる。
【0028】
代替的実施形態では、マンドレル内の給送通路を通るコーティング化合物の流れは、マンドレルの端部に直接隣接する空気流チャンネルの一部にコーティング化合物のリザーバが形成されるように制御される。コーティング層は、リザーバのすぐ下流に形成される。コーティング化合物の流れは、炭素質材料のための流れシステムから独立して作動するポンプによって制御することができる。マンドレルの端部に直接隣接する空気流チャンネルの一部を完全に満たすコーティング化合物のリザーバは、押し出しの最初の段階中にマンドレル内に増大した容積の化合物をポンプ注入することによって生成することができる。その後、熱源の空気流チャンネル内部でコーティング化合物が除去されるのと同じ速度でリザーバ内のコーティング化合物が入れ替えられるように流量を調節することができる。これは、有利な態様においては、押し出し方法全体を通して、リザーバのメニスカスがマンドレルの端部に対して実質的に同じ位置に留まることを意味する。マンドレル内部へのメニスカスの後方への移動は、コーティング層の形成を阻害する可能性がある。マンドレルから更に遠ざかろうとするメニスカスの移動は、空気流チャンネルのより長い部分が必要以上に満たされる結果を招くことになる。
【0029】
リザーバの位置をモニタ及び制御するために、X線吸収又はベータ線後方散乱のような適切な非破壊的方法を用いて、リザーバのメニスカスの位置を測定することができる。ある一定のコーティング化合物に対しては、容量センサのような電磁法も採用することができる。リザーバの有無は、コーティング化合物の流れチャンネルに沿った2つ又はそれよりも多くの位置で検出される。それに応じて、メニスカスが確実に所望の位置に留まるように、化合物の流速がポンプによって制御される。
マンドレル端部の給送通路の出口において、有利な態様においては、コーティングがマンドレルの縁部の上で引っ張られる際の大きな引張応力及び剥離を回避するために、マンドレル壁の縁部に傾斜を設けることができる。
【0030】
本発明の方法は、ダイオリフィス内に取り付けられた各々が空気流チャンネルのうちの1つを形成する複数のマンドレルを有するダイを押し出し段階で用いることにより、複数の長手方向空気流チャンネルを有する円筒状熱源を生成するために用いることもできる。好ましくは、1つから3つの空気流チャンネルが熱源に形成される。空気流チャンネルは、互いに対して同一又は異なる直径を有することができる。
【0031】
複数の長手方向空気流チャンネルを有する熱源を生成する場合、1つ又はそれよりも多くの空気流チャンネルの内面を被覆することができる。各流れチャンネルは、その流れチャンネルを作成しているマンドレル内の流れ通路を通じてコーティング化合物を給送することにより、上述の方法で被覆することができる。空気流チャンネルの全ての内面が被覆されることが好ましい。各空気流チャンネルを被覆するのに用いるコーティング化合物は、他の空気流チャンネルを被覆するのに用いられるコーティング化合物と同一であるか又は異なっていてもよい。
【0032】
本発明の方法は、水平方向又は垂直方向に行われる押し出しで実施することができる。水平方向の押し出しの場合、コーティング化合物が空気流チャンネルの内面に形成された後に、重力によりコーティング化合物の下方流出が生じる恐れがある。従って、この影響を防止するために、高い粘性及び大きな降伏力を有するコーティング化合物が好ましい。しかし、マンドレル内の給送チャンネルを通じたコーティング化合物の供給中は、流れチャンネル内での大きな応力及び摩耗を回避するために、コーティング化合物の粘性はできるだけ低いことが好ましい。従って、チキソトロピー挙動を示すコーティングが好ましい。チキソトロピー材料は、剪断力が加えられると粘性が低下し、剪断力が再度除去されると当初のより高い粘性に戻る比較的高粘性の材料である。チキソトロピー特性は、コーティング化合物への適切な添加剤の添加によって得ることができる。この目的に適する添加剤は、当業技術で公知である。例えば、細長い高分子又はプレートレット状粒子のような異方性成分を用いることができる。
【0033】
炭素質熱源は、可燃性であることが好ましく、炭素に加えて、限定するものではないが、アルミニウム、マグネシウム、カーバイド、窒化物、及びそれらの混合物を含む1つ又はそれよりも多くの追加の可燃燃料を含むことができる。好ましいのは、不完全燃焼の副産物の量が極めて少なく、可燃性熱源に十分な機械的強度をもたらす高い発熱能力を有する可燃燃料である。本発明の方法によって形成される炭素質熱源は、通常、多孔質であり、それらの空隙率が、それらの燃焼率にかなりの影響を与える。燃焼が進行するにつれて、燃焼を維持するのに十分な割合で、酸素は、大部分の熱源内に拡散することができる。
【0034】
本発明の方法によって生成される熱源は円筒状であり、直径が実質的に均一であることが好ましい。熱源は、例えば、断面が実質的に円形の円筒であってもよく、断面が実質的に楕円形の円筒であってもよい。熱源の断面は、熱源材料が押し出されるダイ内のオリフィスの断面を変えることによって変えることができる。
【0035】
必要に応じて、有機結合剤を熱源に組み込むことができる。添加剤には、例えば、可燃性熱源の強化を促進する添加剤(例えば焼結助剤)、熱源の燃焼を促進する添加剤(例えばカリウム)、及び熱源の燃焼によって発生する1つ又はそれよりも多くの気体の分解を促進する添加剤(例えば触媒)を含めてもよい。一般に、添加剤は、押し出しの前に炭素質材料に添加される。しかし、酸化剤は、熱源の燃焼特性及び点火特性を向上させるためにあらゆる熱処理後に添加してもよい。
【0036】
コーティング化合物の組成及び特性は、コーティング化合物による空気流チャンネルの内面の濡れを最適化するために、熱源を形成するのに用いられている炭素質材料に合わせて調節する必要がある。
有利な態様においては、熱源のコーティング層は、中実の粒子状物質の層を含んでおり、実質的に非通気性である。一般に、この種類の粒子状コーティングは、上述したように、懸濁液の形で付加される。コーティングは、実質的に熱的に安定でかつ熱源の燃焼温度で不燃性の1つ又はそれよりも多くの適する材料から形成することができる。適する材料は当業技術で公知であり、例えば、カオリン、ベントナイト、白雲母のような粘土、酸化鉄、アルミナ、チタニア、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア・セリア、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、グラファイト、ガラス、及び他のセラミック材料、又はそれらの組み合わせのような金属酸化物が含まれる。好ましいコーティング材料には、粘土及び雲母状酸化鉄のような無機化合物が含まれる。コーティング化合物は、好ましくは約5体積%から約35体積%、より好ましくは約容積10%から約25体積%の1つ又はそれよりも多くの無機物を含有する。コーティング化合物中の無機物の粒径は、約50nmから約20ミクロンであることが好ましい。
【0037】
特に好ましい実施形態では、コーティング化合物は、セラミック粒子の懸濁液である。
必要に応じて、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化を促進する成分のような触媒成分をコーティング化合物に組み込むことができる。適する触媒材料には、例えば、プラチナ、パラジウム、遷移金属、及びそれらの酸化物が含まれる。
コーティング化合物は、1つ又はそれよりも多くの結合剤を含むことができる。コーティング化合物は、約0.5重量%から約3重量%の結合剤又は結合剤の組み合わせを含むことが好ましい。適する結合剤の一例は、Methocel(登録商標)(メチルセルロース、ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能)である。
【0038】
コーティング化合物は、浮遊状態の粒子の凝塊形成を防止するために、1つ又はそれよりも多くの分散剤も含むことができる。コーティング化合物は、約0.1重量%から約10重量%の1種類の分散剤、又は2種類又はそれよりも多くの分散剤の組み合わせを含有することが好ましく、約0.1%から約3%を含有することがより好ましい。適する分散剤の一例は、Bentone(登録商標)LT(有機修飾された特殊なスメクチック粘土、エレメンティス・スペシャルティーズ・インコーポレーテッドから入手可能)である。
消泡剤も、コーティング化合物に添加することができる。適する消泡剤の一例は、Agitan(登録商標)731(非イオン性アルコキシル化化合物を伴う修飾有機ポリシロキサン、「Munzing Chemie」から入手可能)である。
【0039】
他の適する結合剤、分散剤、並びに消泡剤、及びそれらが添加された懸濁液の流動へのそれらの効果は、当業者に公知である。
好ましくは、コーティング化合物の粘性は、100s-1及び25℃で8mPa.sから1700mPa.sであり、より好ましくは、100s-1及び25℃で100mPa.sから800mPa.sである(1Pa.s=1kgm-1-1)。
ここで、添付の図面を参照して単に一例として本発明を以下に更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】加熱喫煙物品のための熱源を作製するための本発明の第1の実施例による方法で使用中のダイの一部を通る長手方向の断面を示す図である。
【図2】加熱喫煙物品のための熱源を作製するための本発明の第2の実施例による方法で使用中のダイの一部を通る長手方向の断面を示す図である。
【実施例1】
【0041】
水中で粉末状炭素をカリウム含有燃焼添加剤及び有機結合剤システムと混合することにより、従来の方法で原料が最初に生成され、炭素質のドウが形成される。
コーティング化合物も、下記の表1に示す材料から調製される。
【0042】
(表1)

【0043】
コーティング化合物を形成するために、脱塩水とAgitan(登録商標)731の混合物からエマルジョンが最初に調製され、次いで、少量ずつのBentone(登録商標)LTがエマルジョン中に漸進的に分散される。エチレングリコール、次いで雲母状酸化鉄、最後にMethocel(登録商標)が、少量ずつ分散液中に添加される。最終コーティング化合物中の固形物の割合は、体積で約10%であり、コーティング化合物は、約0.65Pa.s(100s-1及び25℃で)の粘性を有する。
【0044】
図1に示すように、炭素質ドウ2が矢印の方向にダイ6を通して押し出され、ロッド4が形成される。押し出しの速度は、約12mms-1である。ダイ6は、マンドレル10が内部に取り付けられた円形断面の中心ダイオリフィス8を含む。マンドレル10は、ダイオリフィス8内の中心に取り付けられており、マンドレル(10)も、外径が約3mmの円形断面を有する。従って、得られる押し出しロッド4は、円形の断面及び中心長手方向空気流チャンネルを有する円筒状である。長手方向空気流チャンネルは、マンドレル10の断面及び直径に対応する円形の断面及び約3mmの直径を有する。
【0045】
給送通路12は、マンドレル10の中心を通り、マンドレル10端面の中心に位置する出口14まで延びる。出口において、マンドレル壁には、出口での給送通路の直径がわずかに増大するように傾斜が設けられている。コーティング化合物16は、ポンプシステム(図示せず)を用いて給送通路12内に導入され、この通路を通じて給送され、次いで、出口14から出て押し出しロッド4内の長手方向空気流チャンネルに入る。押し出し方法の最初の段階で、コーティング化合物16のリザーバ18がロッド4の長手方向空気流チャンネルの内部でマンドレル10端部に直接隣接して生じるように、コーティング化合物16が、マンドレル10を通じて給送通路12内にポンプ注入される。リザーバ18が形成され、リザーバのメニスカス20がマンドレル10の端部に対して所望の位置にある状態で、コーティング化合物16が出る速度と同じ速度でコーティング化合物16がリザーバ18に給送されるように、コーティング化合物の流速がポンプシステムによって制御される。リザーバのメニスカス20は、それにより押し出し方法全体を通して実質的に同じ位置に保持される。
【0046】
炭素質ドウがダイ6を通って押し出される時に、リザーバ18内のコーティング化合物16が、長手方向空気流チャンネルの内面に約250ミクロンの厚さを有するコーティング層22を形成する。
次いで、ロッド4が周囲温度で乾燥され、不活性雰囲気下において約750℃で熱分解される。乾燥されたコーティングは、約50ミクロンの厚さ及び約50%の空隙率を有する。最後に、ロッド4が切断され、加熱シガレットへの組み込みのための幾つかの円筒状熱源が得られる。
【実施例2】
【0047】
原料及びコーティング化合物が、上述したように調製される。図2に示すように、炭素質ドウ2は、図1に示して上述したものと同一の構成を有するダイ6を通り、矢印の方向に押し出される。しかし、実施例1の場合と異なり、コーティング化合物のリザーバがなく、代わりに、コーティング化合物16の流れは、押し出された円筒4がマンドレル10の端部を離れるとすぐに長手方向空気流チャンネルの内面にコーティング層22が形成されるように制御される。リザーバに給送されるコーティング化合物の容積が制御される実施例1の場合と異なり、実施例2の方法では、安定した工程を達成するためにコーティング化合物の圧力が制御される。コーティング層の崩壊を回避するために、圧力は、数パーセント以内のところまで安定に保たれなければならない。コーティング層22の厚さは、コーティング化合物16の流速を変更するための圧力の変化を通じて変えることができる。
【符号の説明】
【0048】
4 円筒状物品、円筒状炭素質熱源
6 ダイ
8 オリフィス
10 マンドレル
12 給送通路
16 流体コーティング化合物
22 コーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面がコーティング層(22)で覆われた長手方向の空気流チャンネルが通って延びる加熱喫煙物品のための円筒状炭素質熱源(4)を生成する方法であって、
(a)空気流チャンネルを形成するためのマンドレル(10)が取り付けられたオリフィス(8)を含むダイ(6)を通した炭素質材料の押し出しによって円筒状熱源(4)を形成する段階、及び
(b)前記マンドレル(10)を通って長手方向に延び、かつ端部に出口を有する給送通路(12)を通じて流体コーティング化合物(16)を給送することにより、該マンドレル下流の前記空気流チャンネルの内面に該コーティング化合物(16)を付加する段階、
を含み、
前記コーティング化合物は、前記空気流チャンネルの前記内面を該コーティング化合物と該内面の間の付着力の結果として濡らし、それにより前記円筒状熱源(4)が押し出される時に前記コーティング層(22)を形成する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記コーティング化合物は、セラミック粒子を含有する懸濁液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(b)の前に前記懸濁液を脱気する段階を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング層(22)の厚さが、段階(b)における前記給送通路(12)を通る前記コーティング化合物(16)の流速の制御を通じて制御されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記給送通路(12)を通る前記コーティング化合物の前記流速は、前記コーティング層(22)が前記マンドレル(10)の前記端部に直接隣接して形成されるように制御されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記マンドレル(10)内の前記給送通路(12)を通る前記コーティング化合物(16)の流れが、該マンドレル(10)の前記端部に直接隣接する前記空気流チャンネルの部分に該コーティング化合物(16)のリザーバ(18)を形成するように制御され、
前記コーティング層(22)は、前記リザーバ(18)の下流に形成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記リザーバ(18)の位置が測定され、前記コーティング化合物(16)の前記流速は、該リザーバ(18)を前記マンドレル(10)の前記端部に対して実質的に同じ位置に維持するように制御されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
段階(a)で用いられる前記ダイは、各マンドレルが前記長手方向空気流チャンネルの1つを形成する複数のマンドレルが取り付けられたオリフィスを含むことを特徴とする複数の長手方向空気流チャンネルを有する熱源を生成するための請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
2つ又はそれよりも多くの長手方向空気流チャンネルの前記内面は、コーティング層で覆われ、
段階(b)は、流体コーティング化合物を前記2つ又はそれよりも多くの長手方向空気流チャンネル内に該2つ又はそれよりも多くのチャンネルを形成する前記マンドレルを通って延びる給送通路を通じて給送する段階を含み、
前記コーティング化合物は、前記空気流チャンネルの前記表面を濡らし、それにより円筒状物品が押し出される時に各空気流チャンネルの該内面上に前記コーティング層を形成する、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
10ミクロンから100ミクロンの間の厚さを有するコーティング層(22)が、段階(b)で形成されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
段階(b)で形成された前記熱源を乾燥させる段階を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
段階(b)で形成された前記熱源を少なくとも750℃の温度まで加熱する段階を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記給送通路(12)は、前記マンドレル(10)の中心を通って延びることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法によって形成された熱源。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−505823(P2011−505823A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537537(P2010−537537)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003691
【国際公開番号】WO2009/074870
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(596060424)フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム (222)
【Fターム(参考)】