説明

円錐形の切込みを有する溝がついたシュープレス

複数の平行している縦方向の溝(3)が外側表面に形成されているシュープレスベルト(1)。各々の溝(3)には複数の円錐形の切込み(2)が形成されている。その切込み(2)は溝(3)の中心線と一致する中心を有するように、各々の溝(3)に沿って間隔を空けて配置されている。切込み(2)の位置は隣接する平行な溝(3)を斜めに横切るようにつけられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抄紙において使用されるベルト、より詳細には、抄紙機のプレス部において使用するための切込みを有する溝がついたベルトに向けられている。
【背景技術】
【0002】
抄紙過程の間に、セルロース繊維のウェブは繊維のスラリー、即ちセルロース繊維が水に分散したものを抄紙機の形成部における移動する形成布上に沈積させることによって、形成される。大量の水が形成布を通してスラリーから排出され、形成布の表面上のセルロース繊維のウェブから離れる。
【0003】
新しく形成されたセルロース繊維のウェブは形成部から、一連のプレスニップを含む、プレス部へと進む。セルロース繊維のウェブは一つのプレス布によって、又はしばしばあるように、二つのそのようなプレス布の間によって支持されるプレスニップを通過する。プレスニップにおいて、セルロース繊維のウェブは水を搾り出し、セルロース繊維のウェブを紙のシートへと変えるためにウェブの中でセルロース繊維を互いに付着し合わせる圧縮力にかけられる。水はプレス布又は布によって受け入れられ、理想的には紙シートへ戻らない。
【0004】
紙シートは最終的に、蒸気によって内部を加熱された、少なくとも一連の回転乾燥ドラム又はシリンダーを含む、乾燥部へと進む。新しく形成された紙シートは、ドラムの表面に密接するように紙シートを保持する乾燥布によって、一連のドラムにおいてその各々のドラムの周囲を連続的に蛇行する通路へと向けられる。加熱されたドラムは蒸発脱水を通して紙シートの水分含有量を望ましいレベルまで減少させる。
【0005】
形成布、プレス布及び乾燥布は全て抄紙機にエンドレスループの形で取り付けられ、コンベヤーという仕方で機能を果たすことは理解されるべきである。紙製造はかなりの速度で進行する連続した工程であることも更に理解されるべきである。即ち、繊維のスラリーが形成部における形成布の上に連続的に沈積させられ、その一方で新しく製造された紙シートは乾燥部を出た後にロールへと連続的に巻かれるのである。
【0006】
現在の抄紙布は、製造される紙の等級に合わせて抄紙機に取り付けられ、その抄紙機の要求を満たすように設計された広く様々な種類の様式で製造される。一般的に、それらは織られた基礎布から成る。基礎布はモノフィラメント糸、撚られたモノフィラメント糸、マルチフィラメント糸又は撚られたマルチフィラメント糸から織られてよく、及び単層、多層又はラミネートであってよい。糸は一般的に、ポリアミド及びポリエステル樹脂といった、抄紙クロージング技術における当業者によってこの目的のために使用される、合成重合体樹脂のどれか一つから押し出し形成される。
【0007】
織られた基礎布はそれ自体多くの異なる形をしている。例えば、それらは織られたエンドレス形、又は平らに織られ、続いて織られた縫い目を有するエンドレス形へとされてよい。別法では、それらは、基礎布の横の端部が縦方向(MD)糸を使用して縫い目の輪を設けられるという、修正エンドレス織りとして一般的に知られる工程によって製造されてよい。このやり方で製造された基礎布は、抄紙機に設置されている間にエンドレス形へと据えられ、そのためにオン−マシーン−シーマブル(on−machine−seamable)布として言及される。そのように布をエンドレス形へと据えることで、二つの横の端部は互いに組み合わされ、そして継ぎ合わせピン又はピントルは組み合わされた縫い目の輪によって形成される通路を通るように向けられる。
【0008】
更に、織られた基礎布はまた別のものによって形成されたエンドレスループの中に少なくとも一つの基礎布を配置することによって、そしてそれらを互いに結合させるためにそれら基礎布を通してステープルファイバーバットを打ち込むことによって、ラミネートにされてよい。一つ以上のそれら織られた基礎布はオン−マシーン−シーマブル型のものでもよい。これは現在、複式基礎支持構造を有するラミネートにされたプレス布としてよく知られている。
【0009】
いずれにせよ、織られた基礎布はエンドレスループという形を成している、又はそのような形に縫い合わされるのであり、その周りを縦に測ると特定の長さを、それを横に測ると特定の幅を有している。
【0010】
伝統的なプレス部は組になった隣接するシリンダー状のプレスロールによって形成される、一連のニップを含む。最近では、ロングプレスニップを使用することが、組になった隣接するロールによって形成されるニップを使用する以上に有利であると見なされている。ウェブがニップにおいて圧力をかけられる時間が長くなるほど、より多くの水がそこから取り除かれ得、そして続いて、乾燥部における蒸発脱水を通して取り除かれるために、水がウェブに残る量はより少なくなるであろう。
【0011】
シュー型という種類のロングニッププレスでは、ニップはシリンダー状のプレスロールとアーチ状のプレッシャーシューの間によって形成される。後者はシリンダー状のプレスロールと近い曲率半径を持つ、シリンダー状に窪んだ表面を有している。ロール及びシューが物理的に近接するように配置されるとき、そのようにして形成されるニップは二つのプレスロールの間によって形成されるものよりも、縦方向において5から10倍長い。このことは、二つのロールによるプレスにおいて用いられる圧縮力である、1平方インチあたりのものと同じレベルの圧力を維持する一方、ロングニップにおいて繊維のウェブの所謂滞在時間を増加させる。こういったロングニップの技術を用いることによって、その結果、抄紙機の通常のロールニップと比較して、ロングニップにおいては繊維のウェブからの脱水量が劇的に増加している。
【0012】
シュー型のロングニッププレスは特別なベルトを必要とする。このベルトは、静止しているプレッシャーシュー上を直接的に滑って接触することにより、結果として生じるであろう加速度的な磨耗から、繊維のウェブを支持、運搬及び脱水を行うプレス布を保護するために設計される。そのようなベルトは、油の潤滑層上にある静止しているシューの上に乗る、又は滑る、滑らかな不浸透性の表面を有するように作られなければならない。ベルトは、プレス布とほぼ同じ速度でニップを通過する。
【0013】
そのような種類のベルトは、例えば、エンドレスループの形をしている、織られた基礎布に、合成重合体樹脂を含浸させることによって作られる。好ましくは、樹脂はベルトの内側表面上にある予め決められた厚さのコーティングを形成するので、基礎布が織られている糸はロングニッププレスのアーチ状のプレッシャーシュー部分との直接的な接触から保護されるだろう。
【0014】
ベルトの内側表面と同様にその外側表面上にもある予め決められた厚さの樹脂コーティングを設けることは、しばしば望ましい。更に、ベルトの外側表面がある予め決められた厚さの樹脂コーティングを有しているとき、それは溝、貫通していない穴、又は他の窪みが、織られた基礎布のいかなる場所も露出することがないようにその表面上に形成されることを可能とする。これらの特徴はプレスニップにウェブから押し出された水の一時的な貯蔵所を与える。事実、幾つかのロングニッププレスの構成として、ベルトの外側表面上に溝、貫通していない穴、又は同様のものによって設けられた隙間容積が存在することが必要である。
【特許文献1】米国特許第6029570号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第4411621号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は外側表面上にある樹脂コーティングにある、縦方向の複数ある溝及び切込みを有する、シュープレスベルトに関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は複数の平行する縦方向の溝が外側表面上に形成されているシュープレスベルトに関する。各々の溝は複数の円錐形の切込みが中に形成されている。その切込みは溝の中心線と一致する中心を有するように各々の溝に沿って間隔を空けられている。切込みの位置は平行する溝を斜めに横切るようにつけられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の好ましい実施様態は抄紙機用シュープレスベルトに関する文脈において記述されるであろう。しかし、発明は抄紙機の他の部において使用されるベルトを、また同様に脱水を容易にするベルトを有することが利益となる、他の工業用装置において使用されるベルトを加工するのに適用が可能であることは注意されるべきである。
【0018】
図1は本発明の一つの実施様態に従う、溝をつけられたシュープレスベルト1の平面図である。図2A及び図2Bは縦方向に見たベルト1の断面図である。しかし、更に詳細にベルト1について記述する前に、ある一般的な説明をする。伸長したニッププレスにおいて脱水を容易にするために、一般的な先行技術によるシューニッププレスベルトは、ニップを通過するように空気及び水をシート及びプレス布から排出するために、その表面に縦方向の溝が形成されている。しかし、この通常のベルトは何もない状態から完全に溝が閉塞している状態まで幅はあるが、ある程度に渡って溝が閉塞するという欠点を有しており、それはベルトの基盤材が溝のいずれかの側にある二つの陸地部が接触する原因となるニップの負荷の下で曲げられ、排出を妨げてベルトの性能に重大な影響を与えることによって生じる。
【0019】
本発明のベルト1は各々の溝3に円錐形の切込み2の配列を付加することによって、この問題を解決する。有利なことに、切込み2は、図2Bにおいて示されているように、ベルト1がプレスニップに留まっている間に、ベルトの溝3の中に水が流れ込むことを可能とするために、ベルト1につけられた付加的な隙間である。更に図3に図示されているように、切込み2は溝3の中へ隙間6を設けることによって、圧力のために溝が完全に閉塞してしまうことを防ぎ、従って脱水性を向上させる。即ち、隙間6は、ベルト1がプレスニップに留まっている間にベルトの溝3の中に水を流すことを可能とする。切込み2は、好ましくは、MD溝の中心線と一致する中心を有する縦方向(MD)の溝3に沿って間隔をおいて配置される。切込み2の位置は例えば、局所的な陸地の領域4という弱点を最小化するために、隣接する平行している溝を斜めに横切るようにつけられている。
【0020】
切込み2の断面はその上部において溝3の開口部よりわずかに大きいが、最終的には少なくとも溝3の底部の断面と一致するように、徐々に小さくなるということを図2Bにおいて注意する。切込み2は溝3より深く伸張しないことも更に注意する。最適には、切込み2は必ず溝3上に中心がくるよう配置され、中心線からはずしては置かれない。最後に、切込み2は、切込み2の特定の位置にあるものを除いて、溝3の一般的な形を変化させることはないことを注意する。
【0021】
本発明に従うベルト1の更なる実施様態において、一つ以上の円錐形の切込みの形は修正されてよい。例として、円錐形の切込みの形が溝の縦方向に沿って伸ばされてよい。しかし、円錐形の切込みを形作る際の他の型に関しても熟慮はされる。このように円錐形の切込みを形作ることは、例えば、(改善された脱水性といった)特定の応用において発明のベルト1の以前に記述された利点を更に高めてよい。
【0022】
図4はベルト1の製造において使用される切込みを入れる過程を例示している。切込み2は配列を確実にし、加工時間を最小にするために、溝3と同時に作られる。切込み2及び溝3の双方はカッティングによって作られ得る。しかし、切込み2及び溝3を作るという目的に適合する他の手段も、当業者によって利用されてよい。
【0023】
切込みカッター7は溝カッター(示されていない)と共に並べられており、要求された間隔を与えるために進行中に往復運動を行う。切込み2の正確な寸法及び断面は各々の特定の応用に依存するであろう。このことと関連して、例えば、上述したような伸ばされた形を有する円錐形の切込み2が、僅かな瞬間だけそれらの往復の底部におけるカッター7の速度を単に遅くすることによって形成されてもよいということを注意する。これは切込み2に、例えば、純粋な円錐と対極にある、楕円形又は伸ばされた形を与えるだろう。
【0024】
本発明と参考文献1で教示されていることの間には重要な違いが存在する。参考文献1は溝及び貫通していない穴の双方を有するベルトを教示している。しかし貫通していない穴は少なくとも一つの溝と一致するのみであることを注意する。参考文献1は“溝は貫通していない穴の中心を通って組にされている”(第2欄,55〜56行)と教示しているのであるが、参考文献1はまた貫通していない穴は主となる水の貯蔵容積であり、溝はほとんど必要ではないと述べていることも注意する。それ故に、その穴は水が負荷の下に溝の中に移動するための導管としての機能はない。更に、貫通していない穴はシリンダー状の形をしており、溝よりも深く伸長することが可能である。更に重要なことには、溝に対する穴のパターンが参考文献1においては機能として重要視されていないということである。
【0025】
本発明はまた、参考文献2におけるものとも異なる。その文献は、所謂“表面の隙間”を有する溝をつけられたベルトを教示している。しかし、参考文献2のベルトは、実質的に、圧力の下で完璧にふさがるように故意に設計された涙形をした溝を有しており、従ってプレスニップにおいて水を吸収することはなく、それはむしろ紙シートが再び水に濡れないようにコントロールしてニップを離すという試みである。更に、参考文献2は“貫通していない”穴はあるが、溝の上に中心をおくような切込みは有していない。それらの“穴”はベルトの表面から図3−5及び8−10において見られる特別に設計された溝の上部へとのみ伸長する。更に、それらの“穴”は請求項2に“ベルト(20)の表面で始まる最初の領域(28)”として記述される。同じ請求項において、その溝は“最初の領域(28)より大きな断面を有している二番目の領域(30)”として記載されている。
【0026】
上記に関する修正形態は当業者にとって明らかなものであろうが、本発明の範囲を越えて修正される発明をもたらしはしないであろう。付随する請求項はそのような状況を包含すると解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は本発明に従うシュープレスベルトの平面図である。
【図2A】図2Aは切込み入れの前の図1におけるベルトの縦方向における断面図である。
【図2B】図2Bは切込みが実施された後の縦方向における断面図である。
【図3】溝が閉塞している状態において開いている穴を有する本発明の平面図である。
【図4】発明に従う切込みを入れる過程の断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 溝をつけられたシュープレスベルト
2 円錐形の切込み
3 溝
4 陸地の領域
6 隙間
7 切込みカッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュープレスベルトがその表面上に形成された複数の縦方向の溝を有し、その各々の溝はその溝に形成された複数の円錐形の切込みを有している、上記シュープレスベルト。
【請求項2】
切込みは溝の中心線と一致する中心を有して各々の溝に沿って間隔を空けて配置されている、請求項1のベルト。
【請求項3】
切込みの位置は隣接する平行している溝を斜めに横切るようにつけられている、請求項1のベルト。
【請求項4】
切込みは水が溝へと排出されるように、圧力の下で溝が閉塞することを防ぎ、それによってシートの脱水性が向上する、請求項1のベルト。
【請求項5】
切込みの断面は(i)隣接する溝を分離する陸地の領域へと伸長するように、切込みの開口部が溝の開口部より広く、(ii)溝の底部へ行くほどその幅は小さくなり、及び(iii)溝より浅い又は同じ深さを有している、請求項1のベルト。
【請求項6】
一つ以上の円錐形の切込みの形は溝の縦方向に沿って拡張される、請求項1のベルト。
【請求項7】
複数の縦の溝及び各々の溝に加えられた円錐形の切込みの配列を同時にカッティングすることによって、ベルトの表面上に溝及び切込みを形成するために使用される方法であり、;
切込みは各々の溝に沿って間隔を空けて配置され、及び溝の中心線と一致するよう整列させられている中心を有し;及び
切込みの位置は隣接する平行している溝を斜めに横切るようにつけられている;
上記の溝及び切込みを形成するために使用される方法。
【請求項8】
一つ以上の円錐形の切込みの形は溝の縦方向に沿って拡張される、請求項7の方法。
【請求項9】
拡張された形を有する切込みは、予め決められた期間だけカッティングの往復運動を遅らせることによって形成される、請求項8の方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−524766(P2007−524766A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509764(P2006−509764)
【出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/010647
【国際公開番号】WO2004/094720
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】