説明

再利用可能遠位リングのためのポケットを含む創傷保護体

【課題】密閉係留部材と共に利用可能な切開または開口保護デバイスと、その使用のためのシステムの提供。
【解決手段】開口保護デバイス100は、組織における切開の中への挿入のために適合されている、近位端部112および遠位端部114を規定する、ハウジング110と、ハウジング110上に配置され、近位端部112から遠位端部114まで遠位方向に延在している、ハウジングの遠位端部をさらに周回する管130と、管130の中に挿入可能であることによって、さらなる硬さを管130に提供する細長い部材140とを含み、ハウジング110は、細長い部材140の挿入前の第一の状態と、細長い部材の挿入後の第二の状態とを有しており、ハウジングの遠位端部114は、第一の状態の場合に、へこみ可能であることによって、切開の中への挿入を容易にし、第二の状態の場合に、さらなる硬さを有することによって、ハウジングを切開内に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2011年3月23日に出願された米国仮特許出願第61/466,567号の利益および優先権を主張する。その全内容は、本明細書において参照することによって援用される。
【0002】
(背景)
(技術分野)
本開示は、概して、密閉係留部材と共に使用するための外科用器具に関する。より具体的には、本開示は、密閉係留部材と共に利用可能な切開または開口保護装置に関する。密閉係留部材は、低侵襲外科処置中に、さらなる保護を切開または他の自然な開口に提供し、さまざまなサイズの切開を通して、標準的なサイズの外科用アクセスポータルを使用することを可能にする。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
ますます多くの外科処置が皮膚における小さな切開を通して行われている。伝統的な処置において一般的に必要とされる、より大きな切開と比較して、より小さい切開は患者に対する外傷を結果として減らす。患者に対する外傷を減少させることによって、回復に必要とされる時間も減少する。一般的に、皮膚における小さい切開を通して行われる外科処置は、内視鏡処置と呼ばれる。処置が患者の腹に対して行われる場合には、処置は腹腔鏡処置と呼ばれる。本開示を通して、低侵襲という用語は、内視鏡処置と腹腔鏡処置との両方を包含するものとして理解されたい。
【0004】
一般的な低侵襲処置中には、外科用アクセスデバイス(例えば、トロカールおよびカニューレアセンブリ)または内視鏡のような外科用物体が組織の切開を通して、患者の身体の中に挿入される。一般的に、外科用物体を患者の身体の中に導入する前に、目標外科部位の周りの範囲を拡大するために、吹き込みガスが用いられ、より大きく、よりアクセス可能な作業範囲を作る。そのため、実質的に流体密な密閉を維持することが、吹き込みガスの流出を阻止し、拡大された外科部位の収縮またはへこみを阻止するために望ましい。このことに応答して、密閉特徴を有しているさまざまなアクセスデバイスが低侵襲処置の過程中に用いられ、外科用物体が患者の身体に入るためのアクセスを提供する。これらのデバイスの各々は、単一の切開、または自然に生じた開口(つまり、口、肛門または膣)を通した使用のために構成されており、複数の器具がこのデバイスを通して挿入されることを可能にし、このデバイスを超えた作業空間にアクセスする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、外科処置中に、切開または自然に生じた開口への損傷を最小化する保護システムと、さまざまなサイズの切開または開口を通した標準的なサイズの外科用アクセスポータルの使用も可能にする保護システムとに対する継続的な必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(概要)
ハウジングと、ハウジング上に配置された管と、細長い部材とを含む外科用デバイスが開示される。ハウジングは、組織の切開の中への挿入のために適合されており、近位端部および遠位端部を規定する。管は、ハウジングの近位端部からハウジングの遠位端部まで遠位方向に延在しており、ハウジングの遠位端部をさらに周回する。細長い部材は、管の中に挿入可能であることによって、さらなる硬さを管に提供する。ハウジングは、細長い部材の挿入前の第一の状態と、細長い部材の挿入後の第二の状態とを有している。ハウジングの遠位端部は、第一の状態にある場合にへこみ可能であることによって、切開の中への挿入を容易にし、第二の状態にある場合に、ハウジングを切開内に固定するためにさらなる硬さを有する。
【0007】
ハウジングは、また、近位端部を周回するリングを含み得る。リングは、ハウジングを組織の外面に対して固定するために、さらなる硬さをハウジングの近位端部に提供するように適合されている。ハウジングおよびリングは、また、一体的に形成され得る。ハウジングは、また、ハウジングを通って長手方向に延在している管腔を含み得る。管腔は、外科用物体を実質的に流体密な態様で受け取るために適合されている。管腔は、また、外科用アクセスポータルを実質的に流体密な態様で受け取るために適合され得る。ハウジングは、組織の切開と実質的に流体密な密閉を規定し得る。管は、代替的にハウジング内に配置され得る。管およびハウジングも一体的に形成され得る。細長い部材は、また、先細な部分を遠位端部に含み得ることによって、管の中への挿入を容易にする。
【0008】
外科用デバイスの使用方法も開示され、方法は、ハウジングと、ハウジング上に配置された管と、細長い部材とを含む外科用デバイスを提供することを含む。ハウジングは、組織の切開の中への挿入のために適合されており、近位端部および遠位端部を規定する。管は、ハウジングの近位端部からハウジングの遠位端部まで遠位方向に延在しており、ハウジングの遠位端部を周回する。細長い部材は、管の中に挿入可能であることによって、さらなる硬さを管に提供する。ハウジングは、細長い部材の挿入前の第一の状態と、細長い部材の挿入後の第二の状態とを有している。ハウジングの遠位端部は、第一の状態にある場合にへこみ可能であることによって、切開の中への挿入を容易にし、第二の状態にある場合に、ハウジングを切開内に固定するためにさらなる硬さを有する。方法は、また、ハウジングの遠位端部をへこませることと、ハウジングを組織の切開の中に挿入することと、細長い部材を管の中に挿入し、それによって、さらなる硬さをハウジングの遠位端部に提供することと、ハウジングを組織の切開に固定することとを含む。
【0009】
ハウジングは、ハウジングを通って長手方向に延在している管腔を含み得る。管腔は、外科用物体または外科用アクセスポータルを実質的に流体密な態様で受け取るために適合されている。方法は、外科用物体または外科用アクセスポータルを管腔を通して挿入することを含み得る。
【0010】
細長い部材を管の中に挿入することは、細長い部材が少なくとも部分的にハウジングの遠位端部を周回するまで、細長い部材を管の中に挿入することを含み得る。細長い部材が完全にハウジングの遠位端部を周回し得ることが想定され、さらに、細長い部材が管の端部において底に到達し得ることも想定される。細長い部材は、先細な部分を遠位端部に含み得る。細長い部材を管の中に挿入する工程は、先細な部分を管の中に挿入することを含み得る。
【0011】
方法は、細長い部材を管から取り除き、それによって、ハウジングの遠位端部がへこみ可能となることを可能にすることをさらに含み得る。方法は、ハウジングを切開から取り除くことも含み得る。
【0012】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
外科用デバイスであって、
該外科用デバイスは、
組織における切開の中への挿入のために適合されているハウジングであって、該ハウジングは、近位端部および遠位端部を規定する、ハウジングと、
該ハウジング上に配置され、該近位端部から該遠位端部まで遠位方向に延在している管であって、該管は、該ハウジングの遠位端部をさらに周回する、管と、
該管の中に挿入可能であることによって、さらなる硬さを該管に提供する細長い部材と
を含み、該ハウジングは、該細長い部材の挿入前の第一の状態と、該細長い部材の挿入後の第二の状態とを有しており、該ハウジングの遠位端部は、第一の状態の場合に、へこみ可能であることによって、該切開の中への挿入を容易にし、第二の状態の場合に、さらなる硬さを有することによって、該ハウジングを該切開内に固定する、外科用デバイス。
(項目2)
前記ハウジングは、前記近位端部を周回するリングをさらに含み、該リングは、該ハウジングを組織の外面に対して固定するために、さらなる硬さを該ハウジングの近位端部に提供するように適合されている、上記項目のうちのいずれかの外科用デバイス。
(項目3)
前記ハウジングおよび前記リングは、一体的に形成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の外科用デバイス。
(項目4)
前記ハウジングは、該ハウジングを通って長手方向に延在している管腔をさらに含み、該管腔は、外科用物体を実質的に流体密な態様で受け取るように適合されている、上記項目のうちのいずれかに記載の外科用デバイス。
(項目5)
前記ハウジングは、該ハウジングを通って長手方向に延在している管腔をさらに含み、該管腔は、外科用アクセスポータルを実質的に流体密な態様で受け取るために適合されている、上記項目のうちのいずれかに記載の外科用デバイス。
(項目6)
前記管は、前記ハウジング内に配置されている、上記項目のうちのいずれかに記載の外科用デバイス。
(項目7)
前記管および前記ハウジングは、一体的に形成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の外科用デバイス。
(項目8)
前記ハウジングは、組織における前記切開と実質的に流体密な密閉を規定する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科用デバイス。
(項目9)
前記細長い部材は、前記管の中への挿入を容易にするために、先細な部分を遠位端部にさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科用デバイス。
(項目10)
外科用デバイスを用いるためのシステムであって、
該システムは、
外科用デバイスであって、該外科用デバイスは、
組織における切開の中への挿入のために適合されているハウジングであって、該ハウジングは、近位端部および遠位端部を規定する、ハウジングと、
該ハウジング上に配置され、該近位端部から該遠位端部まで遠位方向に延在している管であって、該管は、該遠位端部をさらに周回する、管と、
該管の中に挿入可能であることによって、さらなる硬さを該管に提供する細長い部材であって、該ハウジングは、該細長い部材の挿入前の第一の状態と、該細長い部材の挿入後の第二の状態とを有しており、該ハウジングの遠位端部は、第一の状態の場合にへこみ可能であることによって、該切開の中への挿入を容易にし、第二の状態の場合に、該ハウジングを該切開内に固定するために、さらなる硬さを有する、細長い部材と
を含む外科用デバイスと、
該ハウジングの遠位端部をへこませる手段と、
該ハウジングを組織における切開の中に挿入する手段と、
該細長い部材を該管の中に挿入する手段であって、それによって、さらなる硬さを該ハウジングの遠位端部に提供し、該ハウジングを組織における該切開に固定する、手段と
を含む、システム。
(項目11)
前記ハウジングは、該ハウジングを通って長手方向に延在している管腔をさらに含み、該管腔は、外科用アクセスポータルを実質的に流体密な態様で受け取るために適合されている、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目12)
前記外科用アクセスポータルを前記管腔を通して挿入する手段をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目13)
前記ハウジングは、該ハウジングを通り長手方向に延在している管腔をさらに含み、該管腔は、外科用物体を実質的に流体密な態様で受け取るために適合されている、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目14)
前記外科用物体を前記管腔を通して挿入する手段をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目15)
前記細長い部材を前記管の中に挿入する前記手段は、該細長い部材が少なくとも部分的に前記ハウジングの遠位端部を周回するまで、該細長い部材を該管の中に挿入する手段を含む、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目16)
前記細長い部材を前記管の中に挿入する前記手段は、該細長い部材が完全に前記ハウジングの遠位端部を周回するまで、該細長い部材を該管の中に挿入する手段を含む、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目17)
前記細長い部材を前記管の中に挿入する手段は、該細長い部材が該管の端部において底に到達するまで、該細長い部材を該管の中に挿入する手段を含む、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目18)
前記細長い部材は、先細な部分を遠位端部にさらに含み、前記細長い部材を前記管の中に挿入する手段は、該先細な部分を該管の中に挿入する手段を含む、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目19)
前記細長い部材を前記管から取り除くことによって、前記ハウジングの遠位端部がへこみ可能になることが可能になる手段をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目20)
前記ハウジングを前記切開から取り除く手段をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載のシステム。
(項目10−A)
外科用デバイスを用いるための方法であって、
該方法は、
外科用デバイスを提供する工程であって、該外科用デバイスは、
組織における切開の中への挿入のために適合されているハウジングであって、該ハウジングは、近位端部および遠位端部を規定する、ハウジングと、
該ハウジング上に配置され、該近位端部から該遠位端部まで遠位方向に延在している管であって、該管は、該遠位端部をさらに周回する、管と、
該管の中に挿入可能であることによって、さらなる硬さを該管に提供する細長い部材であって、該ハウジングは、該細長い部材の挿入前の第一の状態と、該細長い部材の挿入後の第二の状態とを有しており、該ハウジングの遠位端部は、第一の状態の場合にへこみ可能であることによって、該切開の中への挿入を容易にし、第二の状態の場合に、該ハウジングを該切開内に固定するために、さらなる硬さを有する、外科用デバイスを含む、工程と、
該ハウジングの遠位端部をへこませる工程と、
該ハウジングを組織における切開の中に挿入する工程と、
該細長い部材を該管の中に挿入する工程であって、それによって、さらなる硬さを該ハウジングの遠位端部に提供し、該ハウジングを組織における該切開に固定する、工程と
を含む、方法。
(項目11−A)
前記ハウジングは、該ハウジングを通って長手方向に延在している管腔をさらに含み、該管腔は、外科用アクセスポータルを実質的に流体密な態様で受け取るために適合されている、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目12−A)
前記外科用アクセスポータルを前記管腔を通して挿入する工程をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目13−A)
前記ハウジングは、該ハウジングを通り長手方向に延在している管腔をさらに含み、該管腔は、外科用物体を実質的に流体密な態様で受け取るために適合されている、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目14−A)
前記外科用物体を前記管腔を通して挿入する工程をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目15−A)
前記細長い部材を前記管の中に挿入する工程は、該細長い部材が少なくとも部分的に前記ハウジングの遠位端部を周回するまで、該細長い部材を該管の中に挿入することを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目16−A)
前記細長い部材を前記管の中に挿入する工程は、該細長い部材が完全に前記ハウジングの遠位端部を周回するまで、該細長い部材を該管の中に挿入する工程を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目17−A)
前記細長い部材を前記管の中に挿入する工程は、該細長い部材が該管の端部において底に到達するまで、該細長い部材を該管の中に挿入する工程を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目18−A)
前記細長い部材は、先細な部分を遠位端部にさらに含み、該細長い部材を前記管の中に挿入する工程は、該先細な部分を該管の中に挿入することを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目19−A)
前記細長い部材を前記管から取り除き、それによって、前記ハウジングの遠位端部がへこみ可能になることが可能になる工程をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目20−A)
前記ハウジングを前記切開から取り除く工程をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0013】
(摘要)
ハウジングと、ハウジング上に配置された管と、細長い部材とを含む外科用デバイスが開示される。ハウジングは、組織の切開の中への挿入のために適合されており、近位端部および遠位端部を規定する。管は、ハウジングの近位端部からハウジングの遠位端部まで遠位方向に延在しており、ハウジングの遠位端部をさらに周回する。細長い部材は、管の中に挿入可能であることによって、さらなる硬さを管に提供する。ハウジングは、細長い部材の挿入前の第一の状態と、細長い部材の挿入後の第二の状態とを有している。ハウジングの遠位端部は、第一の状態にある場合にへこみ可能であることによって、切開の中への挿入を容易にし、第二の状態にある場合に、ハウジングを切開内に固定するためにさらなる硬さを有する。
【0014】
この明細書の一部に組み込まれ、この明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の外科用デバイスの実施形態を例示し、上に付与された本開示の外科用デバイスの一般的な説明および下に付与される実施形態の詳細な説明と共に、本開示の外科用デバイスの原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本開示に従う外科用デバイスの透視図である。
【図2】図2は、組織の切開の中への挿入前の図1の外科用デバイスの透視図である。
【図3】図3は、組織の切開の中への挿入中の図1の外科用デバイスの透視図である。
【図4】図4は、組織の切開の中への挿入後であるが、管の中へ細長い部材を挿入する前の図1の外科用デバイスの透視図である。
【図5】図5は、細長い部材が管の中に挿入された後の図4の外科用デバイスの透視図である。
【図6】図6は、図5の外科用デバイスの一部をズームした図であり、管内の細長い部材を示す。
【図7】図7は、外科用アクセスポータルが図4の外科用デバイスを通して挿入されている、外科用デバイスの側面切り取り図である。
【図8】図8は、代替の外科用アクセスポータルが図7の外科用デバイスを通して挿入されている、外科用デバイスの側面切り取り図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(詳細な説明)
組織における切開または自然な開口を低侵襲外科手術中に保護する外科用デバイスが本明細書において開示される。より具体的には、身体の単一の切開または開口の中に挿入可能であり、切開または開口と、それを通して挿入される外科用物体またはアクセスポータルとの間に保護的な層を提供する能力を有している外科用デバイスが開示される。また、外科用デバイスによって、さまざまなサイズの切開または自然な開口を通して、標準的なサイズの外科用アクセスポータルを用いることが可能となり、特に、外科用アクセスポータルよりも大きい切開または自然な開口を通して外科用アクセスポータルを用いることが可能になる。
【0017】
本開示の外科用デバイスの特定の実施形態が、図面を参照して詳細に説明される。類似の参照数字は、類似または同一の要素を同定する。本明細書において用いられた場合は、「遠位」という用語は、ユーザーからより遠い部分を指し、「近位」という用語は、ユーザーまたは外科医に、より近い部分を指す。「切開」という用語は、開示される外科用デバイスが挿入される、組織の開口部を説明するために用いられるが、開口部は、代替的に、例えば、肛門または膣のような任意の自然な開口でもあり得ることが想定される。
【0018】
ここで、図1および図7を参照すると、ハウジング110と、ハウジング110に配置された管130と、管130の中に挿入可能な細長い部材140とを含む外科用デバイス100が開示されている。ハウジング110は、組織「T」の自然な開口または切開の中に実質的に流体密な態様で挿入されるために適合されており、近位端部112および遠位端部114を規定する。ハウジング110は、可撓性またはへこみ可能(collapsible)である生体適合性材料から作られ得る。ハウジング110は、ハウジング110を通して挿入された器具または外科用アクセスポータルの動きに起因する切開または開口に対する裂け、または損傷を妨げる一方で、挿入中に可撓性またはへこみ可能であるように設計され得る。ハウジング110の遠位部分120のみが可撓性またはへこみ可能な材料から作られており、残りの部分は、硬質または半硬質であるということも代替的に想定される。ハウジング110は、近位端部112を周回するリング122を含み得、さらなる硬さを近位端部112に提供し、ハウジング110が、挿入後に組織「T」の外面に対して固定されることを可能にする。ハウジング110およびリング112が一体的に形成され得ることが想定される。ハウジング110は、また、管腔116を規定し得る。管腔116は、外科用物体または外科用アクセスポータル「S」を流体密に受け取るために、ハウジング110を通り、長手方向に延在している。ハウジング110は、外科用物体、器具およびアクセスポータルに対して密閉し、および/または外科用物体、器具または外科用アクセスポータル「S」が取り除かれた場合に、吹き込み流体が外科部位から損失されることを妨げる1つ以上のバルブ(示されていない)を含み得る。外科用アクセスポータル「S」は、近位および遠位フランジ付部分と、外科用物体または外科用器具を密閉して受け取るために、近位および遠位フランジ付部分を通り延在している管腔とを含む。適切なアクセスポータル「S」は、米国特許出願第12/244,024号に開示されている。その内容が、ここで、本明細書において参照することによって援用される。図8においてみられ得るように、近位フランジのみを有する外科用アクセスポータル「S2」が代わりに用いられ得ることも想定される。
【0019】
管130は、ハウジング110の外面118に沿って配置され、長手方向部分132およびリング部分134を規定する。長手方向部分132は、近位端部112から遠位端部114まで延在している。リング部分134は、長手方向部分132の遠位端部から延在しており、ハウジング110の遠位端部114を周回する。管130は、長手方向部分132の近位端部における、細長い部材140を受け取るための開口部136と、リング部分134の周回された端部に配置された密閉端部138とをさらに規定する。管130が代わりにハウジング110の側部管腔(示されていない)を通り延び得ることか、またはハウジング110および管130が代わりに一体的に形成され得ることが想定される。
【0020】
ここで、図1および図5〜図7を参照すると、細長い部材140は遠位先端142を含む。細長い部材140は、開口部136を通り、管130の中に挿入可能である。細長い部材140は、半硬質の材料から作られており、密閉端部138に到達するまで、長手方向部分132を通して、リング部分134の中に挿入され得る。細長い部材140は、挿入された場合に、さらなる硬さを管130、特に細長い部材140の遠位端部114に提供する。このことによって、ハウジング110の遠位端部114が組織「T」の内面に対して固定されることを可能にする。細長い部材140は、半硬質の材料から作られるが、細長い部材140は、長手方向部分132およびリング部分134の長さを移動するのに十分可撓性であり、それによって、ハウジング110の遠位端部114にリングに類似する形状が形成される。ハウジングが切開内に位置決めされた後に、細長い部材140を挿入できるということによって、ハウジング110の遠位端部を切開を通して最初に挿入することがより容易になり得るという利点が提供され得る。なぜなら、例えば、ハウジング110の遠位端部は、例えば、一体的遠位リングまたは他の構造を有している場合に遠位端部が有しているであろう硬さおよび量よりも比較的低い硬さおよび小さい量を有しているからであり、体腔が吹き込まれた場合にも、切開内にハウジング110の十分な保持を依然として提供するからである。
【0021】
ここで、図1〜図7を参照すると、ハウジング110および管130は、細長い部材140の挿入前の第一の状態(図2〜図4)と、細長い部材140の挿入後の第二の状態とを有している。第一の状態において、ハウジング110の遠位部分120は、変形可能および/または可撓性であり、管130は、空である。第二の状態において、ハウジング110の遠位端部114には、細長い部材140が管130を満たし、管130内の遠位端部114を周回することによって、さらなる硬さが提供される(図5〜図7)。第二の状態における硬さの程度は、ハウジング110を組織「T」の開口または切開内に固定するのに十分な程度であり、その結果、最初に細長い部材140を管130から取り除くことなく、ハウジング110は、引き出されない。遠位端部114の硬さの程度が、どのくらい深く細長い部材140が管130の中に挿入されているかということと、どのくらい管130は満たされずに残っているかということとに依存する場合には、複数の状態があり得ることがさらに想定される。例えば、細長い部材140が長手方向部分132を満たすまでしか管130の中に挿入されない場合には、ハウジング110の遠位端部114は、依然として、少なくとも部分的にへこみ可能または可撓性のままである。さらに、細長い部材140が部分的にのみリング部分134を満たすように、管130の中に挿入された場合には、ハウジング110の遠位端部114の硬さは増加するが、依然として、細長い部材140が完全に管130の中に挿入された場合の硬さよりも程度が低い。細長い部材140が管130の中に完全に挿入された場合には、細長い部材140は、リング部分134を満たし、遠位先端142は、密閉端部138に対して底に到達する。さらに、遠位端部114の硬さは、細長い部材140の構造体の材料によって制御され得ることが想定される。例えば、構造体の材料が第一の硬い材料である場合に、ハウジング110の遠位端部114は、第二のより高い硬さの構造の材料と比較して、挿入の各レベルにおいて硬さが低い。
【0022】
ここで、図2〜図7を参照すると、使用中に、細長い部材140を取り除いて、内科医または外科医がハウジング110の遠位部分120をへこませ、ハウジング110を組織の開口または切開の中に挿入する。ハウジング110が組織「T」の開口または切開の中に挿入されて、その結果、ハウジング110の近位端部112(リング122も含まれる場合がある)は、組織「T」の外面に隣接するか、または近接すると、内科医は、細長い部材140の遠位先端142を管130の近位開口部136の中に挿入する。次いで、遠位先端142が密閉端部138に対して底に到達するまで、細長い部材140は、長手方向部分132を通して、リング部分134の中に挿入される。ここで、細長い部材140は、ハウジング110の遠位端部114を周回する。これによって、細長い部材140は、ハウジング110の遠位端部114を組織「T」の内面に対して固定するためのリング122に類似するリングを作る。ここで、外科用物体または外科用アクセスポータル「S」が管腔116を通して挿入され、外科手術が行われ得る。このようにして、本開示の外科用デバイスを用いることによって、外科用アクセスポータルが切開または開口よりも小さい場合ですら、標準的なサイズの外科用アクセスポータルが外科手術に対して効果的に使用され得る。外科用アクセスポータル「S」は、ハウジング110が切開の中に挿入される前、または細長い部材140が管130の中に挿入される前に、管腔116を通して挿入され得ることが想定される。外科手術中に、外科医は、外科用器具を外科用アクセスポータル「S」の管腔を通して挿入し、その下にある外科部位にアクセスする。外科手術中に、外科用アクセスポータル「S」は、外科医によって取り除かれ得ることによって、より大きな外科用器具または物体のアクセスを可能にする。さらに、細長い部材140が完全または部分的に管130から取り除かれ得ることによっても、より大きな外科用器具または物体が外科空間をアクセスさせることが可能になる。細長い部材140と、外科用アクセスポータル「S」は共に、外科手術中に再挿入もされ得る。外科手術が完了すると、外科医は、外科用アクセスポータル「S」を管腔116から取り除き、細長い部材140を管130から引き出す。それによって、ハウジング110の遠位部分120が、もう一度、再びへこみ可能または可撓性になることが可能になる。次いで、ハウジング110が組織「T」の開口または切開から取り除かれ得る。細長い部材140も、外科用アクセスポータル「S」が管腔116から取り除かれる前に、管130から取り除かれ得ることとが想定され、ハウジング110は、外科用アクセスポータル「S」が管腔116から取り除かれる前に、開口または切開から取り除かれ得ることも想定される。
【0023】
本開示は、好ましい実施形態に関して説明されたが、当業者には、それらに対して、主題の装置の精神または範囲から逸脱することなしに、変更および改変がなされ得ることが容易に明らかとなる。
【符号の説明】
【0024】
100 外科用デバイス
110 ハウジング
112 近位端部
114 遠位端部
116 管腔
118 外面
120 遠位部分
122 リング
130 管
132 長手方向部分
134 リング部分
136 開口部
138 密閉端部
140 細長い部材
142 遠位先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用デバイスであって、
該外科用デバイスは、
組織における切開の中への挿入のために適合されているハウジングであって、該ハウジングは、近位端部および遠位端部を規定する、ハウジングと、
該ハウジング上に配置され、該近位端部から該遠位端部まで遠位方向に延在している管であって、該管は、該ハウジングの遠位端部をさらに周回する、管と、
該管の中に挿入可能であることによって、さらなる硬さを該管に提供する細長い部材と
を含み、該ハウジングは、該細長い部材の挿入前の第一の状態と、該細長い部材の挿入後の第二の状態とを有しており、該ハウジングの遠位端部は、第一の状態の場合に、へこみ可能であることによって、該切開の中への挿入を容易にし、第二の状態の場合に、さらなる硬さを有することによって、該ハウジングを該切開内に固定する、外科用デバイス。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記近位端部を周回するリングをさらに含み、該リングは、該ハウジングを組織の外面に対して固定するために、さらなる硬さを該ハウジングの近位端部に提供するように適合されている、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項3】
前記ハウジングおよび前記リングは、一体的に形成されている、請求項2に記載の外科用デバイス。
【請求項4】
前記ハウジングは、該ハウジングを通って長手方向に延在している管腔をさらに含み、該管腔は、外科用物体を実質的に流体密な態様で受け取るように適合されている、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項5】
前記ハウジングは、該ハウジングを通って長手方向に延在している管腔をさらに含み、該管腔は、外科用アクセスポータルを実質的に流体密な態様で受け取るために適合されている、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項6】
前記管は、前記ハウジング内に配置されている、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項7】
前記管および前記ハウジングは、一体的に形成されている、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項8】
前記ハウジングは、組織における前記切開と実質的に流体密な密閉を規定する、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項9】
前記細長い部材は、前記管の中への挿入を容易にするために、先細な部分を遠位端部にさらに含む、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項10】
外科用デバイスを用いるためのシステムであって、
該システムは、
外科用デバイスであって、該外科用デバイスは、
組織における切開の中への挿入のために適合されているハウジングであって、該ハウジングは、近位端部および遠位端部を規定する、ハウジングと、
該ハウジング上に配置され、該近位端部から該遠位端部まで遠位方向に延在している管であって、該管は、該遠位端部をさらに周回する、管と、
該管の中に挿入可能であることによって、さらなる硬さを該管に提供する細長い部材であって、該ハウジングは、該細長い部材の挿入前の第一の状態と、該細長い部材の挿入後の第二の状態とを有しており、該ハウジングの遠位端部は、第一の状態の場合にへこみ可能であることによって、該切開の中への挿入を容易にし、第二の状態の場合に、該ハウジングを該切開内に固定するために、さらなる硬さを有する、細長い部材と
を含む外科用デバイスと、
該ハウジングの遠位端部をへこませる手段と、
該ハウジングを組織における切開の中に挿入する手段と、
該細長い部材を該管の中に挿入する手段であって、それによって、さらなる硬さを該ハウジングの遠位端部に提供し、該ハウジングを組織における該切開に固定する、手段と
を含む、システム。
【請求項11】
前記ハウジングは、該ハウジングを通って長手方向に延在している管腔をさらに含み、該管腔は、外科用アクセスポータルを実質的に流体密な態様で受け取るために適合されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記外科用アクセスポータルを前記管腔を通して挿入する手段をさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ハウジングは、該ハウジングを通り長手方向に延在している管腔をさらに含み、該管腔は、外科用物体を実質的に流体密な態様で受け取るために適合されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記外科用物体を前記管腔を通して挿入する手段をさらに含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記細長い部材を前記管の中に挿入する前記手段は、該細長い部材が少なくとも部分的に前記ハウジングの遠位端部を周回するまで、該細長い部材を該管の中に挿入する手段を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記細長い部材を前記管の中に挿入する前記手段は、該細長い部材が完全に前記ハウジングの遠位端部を周回するまで、該細長い部材を該管の中に挿入する手段を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記細長い部材を前記管の中に挿入する手段は、該細長い部材が該管の端部において底に到達するまで、該細長い部材を該管の中に挿入する手段を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記細長い部材は、先細な部分を遠位端部にさらに含み、前記細長い部材を前記管の中に挿入する手段は、該先細な部分を該管の中に挿入する手段を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
前記細長い部材を前記管から取り除くことによって、前記ハウジングの遠位端部がへこみ可能になることが可能になる手段をさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項20】
前記ハウジングを前記切開から取り除く手段をさらに含む、請求項19に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−200602(P2012−200602A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−64025(P2012−64025)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】