説明

再剥離型巻芯

【課題】 より簡単に繰り返し再利用可能で、環境への影響が少なく、時間とコストを節約可能な巻芯を提供することを目的とする。
【解決手段】 巻芯の表面に架橋剤としてポリイソシアネート系を使用した架橋反応型のウレタン系樹脂を用いて粘着層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、布、ガラスクロス、プラスチックフィルム、金属箔等のシート状物を巻き取る巻芯に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状物を巻回した製品に使われている従来の巻芯は、図2に示すように、紙管等の巻芯4の一部または全面に粘着テープを貼り付けるか、接着剤を塗布した後、シート状物3の端部を、前記粘着テープまたは接着剤の塗布された粘着部分5に貼りつけて巻き取っていく方法で用いられてきた。
【0003】
上述の方法で使用された従来の巻芯は、使い捨ての巻芯であればそのまま廃棄処分となるが、再利用する場合は、前記粘着テープおよび接着剤がそのままの状態では巻芯として再利用できないので、粘着部分を一度除去し、再度粘着テープを貼るか、接着剤を塗布する必要がある。
【0004】
粘着テープ及び接着剤を除去するには、ヘラを利用して剥がしたり、有機溶剤等による洗浄を行うことが必要であり、簡単に除去することはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の巻芯では、特に再利用する場合、粘着テープの貼り付け、接着剤の塗布等により、粘着部分を毎回新しく施工しなければならなく、そのためには、人手または装置が必要となり、そのために時間とコストが掛かるといった問題点があった。
【0006】
また、巻芯の再利用のためには、粘着テープ、接着剤等の粘着層の除去が必ず必要となり、そのためにさらに、時間とコストがかかる上に、粘着層の除去に有機溶剤を使用して洗浄する場合は、換気等の作業環境上の対策が必要となり、さらに廃液処理の問題も生じてくる。
【0007】
本発明は、上記のような従来の巻芯が再利用の際に有する課題を解決するために、より簡単に繰り返し利用可能で、環境への影響が少なく、時間とコストを節約可能な巻芯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の再剥離型巻芯は、粘着層が表面に形成された巻芯であって、該粘着層にシート状物の端部を貼りつけて、シート状物を巻き取り、該粘着層が架橋反応型のウレタン系樹脂からなる層であることを特徴とする。
【0009】
本発明の再剥離型巻芯は、前記架橋反応型のウレタン系樹脂の架橋剤としてポリイソシアネート系を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の再剥離型巻芯は、粘着層が表面に形成された巻芯であって、該粘着層にシート状物の端部を貼りつけて、シート状物を巻き取り、該粘着層が架橋反応型のウレタン系樹脂からなる層であることにより、粘着層はシート状物を貼りつけ、巻き取るための粘着力を有しながら、シート状物の貼り付けと剥離を繰り返しても、粘着力が無くなることがなく、何度も繰り返し使用可能であるので、本発明の再剥離型巻芯は、再利用の際の粘着層の除去および粘着層の再施工が不要であり、たとえ粘着層が汚れて粘着力が落ちても水洗等の簡単な作業で粘着力が回復し再利用可能となるので、低コストで簡単に再利用可能な再剥離型巻芯の実現が可能となる。
【0011】
さらに、前記架橋反応型のウレタン系樹脂の架橋剤が、ポリイソシアネート系であることにより、繰り返し使用される粘着層に必要な性質がより強化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図を用いて本発明の再剥離型巻芯について説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の再剥離型巻芯は、巻芯1の表面に(図では表面全面に)架橋反応型のウレタン系樹脂の粘着層2を形成し、図1のようにシート状物3の端部を粘着層2に貼り付けた後、シート状物3を巻き取り、製品として使用する。製品が使用されてシート状物3が巻戻されると、最後にシート状物3の端部は破れることなく巻芯2から取り外すことができる。
【0014】
本発明の巻芯1の材料としては、特に限定するものではなく、従来の巻芯に使用されている、紙管、熱可塑性および熱硬化性樹脂製のプラスチック管、ガラス繊維または炭素繊維等で強化されたプラスチック管、金属管等、種々の材質が利用可能である。また、異種材料を積層して製造された複合管等でも良い。
【0015】
また、本発明の巻芯の粘着層2の形成は、巻芯の表面全面に形成しても良く、表面の一部だけに形成しても良い。また。粘着層2の形成方法としては、刷毛やローラー、スプレー等を使用して塗布後、乾燥し形成するがこれについても特に限定するものではない。
【0016】
前記粘着層2の材料としては、架橋反応型のウレタン系樹脂を使用し、架橋剤としてはポリイソシアネート系を使用することが好ましい。
【0017】
本発明の再剥離型巻芯は、表面に形成された架橋反応型のウレタン系樹脂を使用した粘着層2により、初めにシート状物3を粘着層2に貼りつけ、シート状物3を巻き取る時には、シート状物3が巻芯1から剥がれることなく巻き取ることができるだけの粘着力を確保しながら、再利用の際には、再びシート状物3を貼りつけることのできる粘着力を失うことが無く再利用可能であり、再利用の際に粘着層2に埃やごみ等が付着し粘着力が低下した場合でも、粘着層2を水洗等により清掃すれば再び粘着力が回復し、再度シート状物3を貼りつけ巻き取りが可能となる。
【0018】
以下に、実施例を用いて更に詳しく本発明の再剥離型巻芯について説明する。
【実施例1】
【0019】
本実施例では巻芯の接着層として、以下の配合で混合したウレタン系樹脂粘着剤を使用する。
バインゾールU−250(ウレタンプレポリマー:一方社油脂工業(株)社製):100重量部
B−45(ポリイソシアネート系架橋剤:一方社油脂工業(株)社製):3重量部
トルエン:70重量部
メチルエチルケトン:70重量部
【0020】
上記配合のウレタン系樹脂粘着剤を、外径80mm、長さ1300mmの紙基材フェノール樹脂積層管の表面に、スプレーにて塗布した後、80℃で5分間乾燥させた。乾燥後、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを1000m巻き取った。
【0021】
巻き取り前に、PETフィルムの端部を巻芯の粘着層に軽く押えつけるだけでPETフィルムを巻芯に固定することができ、巻き取り開始後も問題無く最後まで巻き取り可能であった。
【0022】
巻き取り完了後、PETフィルムを巻初めの端部まで巻戻した。その時、粘着層に貼りつけたPETフィルム端部は、簡単に剥離し、PETフィルムへの粘着剤の付着も無く、粘着層にも剥離や変形等の異常は見られなかった。
【0023】
その後、再び巻芯の粘着層にPETフィルムの端部を軽く押えつけると、容易に貼りつけることができ、再びPETフィルムを巻き取っていっても、問題なく最後まで巻き取ることができた。これにより、本実施例の巻芯は、一度使用後もそのまま連続して使用可能であることが確認できた。
【0024】
次に、本発明の再剥離型巻芯の粘着層に、埃やごみ等が付着し粘着力が弱くなった場合、水洗等の清掃により粘着力が回復し、巻芯として再利用可能であるかを確認するための実験を行った。
【0025】
本実験では、埃やごみの代りとしてポリエステル繊維(3デニール×5mm)片を使用し実験を行った。前記ポリエステル繊維片を本実施例の巻芯表面の粘着層全面に均一に振りまき、巻芯を平坦な面上で数回、回転させポリエステル繊維片を巻芯表面に付着させた。
【0026】
この状態で、前記PETフィルムの端部を巻芯の粘着層に貼りつけ、PETフィルムを押えつけたが、ポリエステル繊維片の付着により粘着層の粘着力が低下しているので、PETフィルムを巻き取ることはできなかった。
【0027】
次に、この粘着力が低下した巻芯の表面を流水で軽くこすると、付着したポリエステル繊維片は簡単に粘着層から剥がれ落ち、粘着層の表面は元の状態に戻った。この巻芯を水切りを行い乾燥させ、前記手順と同様に、PETフィルムの端部を粘着層に貼りつけ、PETフィルムを巻芯に押さえつけたところ、容易に貼りつけることができ、引き続きのPETフィルムの巻き取りも、最後まで問題無く行う事ができた。
【0028】
この実験により、本発明の再剥離型巻芯は、埃やごみ等が付着し粘着力が弱くなった場合でも、水洗により粘着力が回復し、再び巻芯として利用可能であることが確認された。
【実施例2】
【0029】
本実施例では、実施例1で使用した紙基材フェノール樹脂積層管の替わりにガラス繊維強化エポキシ樹脂積層管を使用し、積層管のサイズ、粘着層およびPETフィルムは実施例1と同じ条件で、実施例1と同様の手順で再剥離型巻芯を作成し、各実験を行った。
【0030】
実験の結果、初期の巻き取り、再剥離後の巻き取りも問題が無く、水洗い後の巻き取り性も良好であり、全て実施例1と同様の結果が得られた。
【実施例3】
【0031】
実施例1で使用した25μm厚のPETフィルムの替わりに、25μm厚のポリプロピレンフィルムを用い、巻芯は実施例1と同じ巻芯を使用し、実施例1と同じ条件で、同様の手順で再剥離型巻芯を作成し、各実験を行った。
【0032】
実験の結果、初期の巻き取り、再剥離後の巻き取りも問題が無く、水洗い後の巻き取り性も良好であり、全て実施例1と同様の結果が得られた。
【0033】
このように、本発明の再剥離型巻芯は、従来と同様の巻芯としても巻き取り性を有しながらも、より簡単な再利用を実現している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の再剥離型巻芯の斜視図である。
【図2】従来の巻芯の斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 巻芯
2 粘着層
3 シート状物
4 巻芯
5 粘着部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層が表面に形成された巻芯であって、該粘着層にシート状物の端部を貼りつけて、シート状物を巻き取る巻芯であり、該粘着層が架橋反応型のウレタン系樹脂からなる層であることを特徴とする再剥離型巻芯。
【請求項2】
前記架橋反応型のウレタン系樹脂の架橋剤としてポリイソシアネート系を用いることを特徴とする請求項1に記載の再剥離型巻芯

【図1】
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【図2】
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