説明

再帰性反射塗装物

【課題】 再帰性反射塗装物は、反射層上に着色クリヤー層を介して再帰反射材を有することが記載されている。しかし、反射層上に着色クリヤー層が存在すると再帰反射材から出た光が着色クリヤー層内の色材で減光されるとともに、着色クリヤー層内(樹脂層)で屈折するために反射層上での反射光は、再帰反射材に戻らず、有効的な再帰反射現象が得られず目的にする意匠性が達成できない問題があった。
【解決手段】 非平面の再帰性反射塗装物において、少なくとも反射層上に微小球型再帰性反射体を含有するクリヤー塗膜層を有し、反射層と微小球型再帰性反射体との距離Tと微小球型再帰性反射体の平均粒子径rとの関係が、0(点接触)≦T/r≦0.23であることを特徴とする再帰性反射塗装物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再帰性反射塗装物に関するものである。
特に万年筆やボールペンやシャープペンシルなどの筆記具や、口紅やアイライナーなどの容器、釣り竿、ドアノブ、手摺りなどの非平面(筒状部材など)に形成された塗装物が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
近年、塗装物に意匠性を付与するために再帰反射を利用し、「奥行き感」や「深み感」などを発現させることが試みられている。再帰反射を利用した塗装物は、入射した光が再び入射した方向に帰る反射現象が得られるため特異的な意匠性が付与できるとされている。この再帰反射現象を得るためには、一般的に屈折率を制御した(高屈折率とした)微小球型再帰性反射体と反射層を用いることが知られている。
【0003】
文献1には、被塗装物の表面に反射層を形成し、着色クリヤー層を介して再帰反射材を敷き詰めた塗膜構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3191991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている再帰性反射塗装物は、反射層上に着色クリヤー層を介して再帰反射材を有することが記載されている。しかし、反射層上に着色クリヤー層が存在すると再帰反射材から出た光が着色クリヤー層内の色材で減光されるとともに、着色クリヤー層内(樹脂層)で屈折するために反射層上での反射光は、再帰反射材に戻らず、有効的な再帰反射現象が得られず目的にする意匠性が達成できない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は。非平面の再帰性反射塗装物において、少なくとも反射層上に微小球型再帰性反射体を含有するクリヤー塗膜層を有し、反射層と微小球型再帰性反射体との距離Tと微小球型再帰性反射体の平均粒子径rとの関係が、0(点接触)≦T/r≦0.23であることを第1の要旨とし、非平面の再帰性反射塗装物において、少なくとも反射層上に微小球型再帰性反射体と色材とを含有するカラークリヤー塗膜層を有し、反射層と微小球型再帰性反射体との距離Tと微小球型再帰性反射体の平均粒子径rとの関係が、T/r=0(点接触)であることを第2の要旨とし、前記反射層が、銀及び銀合金からなる金属層であることを第3の要旨とし、前記微小球型再帰性反射体の屈折率が、2.2以上であることを第4の要旨とし、前記非平面の再帰性反射塗装物を筒状部材に用いたことを第5の要旨とするものである。
【0007】
被塗物の材質は、反射層を形成できる材料であればよく特に限定されない。具体的には、アルミニウムまたはその合金、銅またはその合金、鉄またはその合金、亜鉛またはその合金、マグネシウムまたはその合金、チタンまたはその合金、金またはその合金、銀またはその合金、白金またはその合金、スズまたはその合金、ニッケルまたはその合金などの金属材料、塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリロニトリルスチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアミド、ナイロン、ポリアセタールなどの熱可塑性樹脂材料、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性エラストマー、シリコーン、スチレンブタジエン、ウレタン、ブタジエン、イソプレン、フッ素などの合成ゴムや天然ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂などの熱硬化樹脂材料、アルミナ、ジルコニア、陶磁器、ガラスなどのセラミック材料、木材、紙、石などの天然材料などを用いることができる。特に金属材料を用いることにより反射層を兼ねることもできる。
また、これらの材料は1種または2種以上の混合物であってもよい。さらに、これら材質には彫刻や、エッチング、印刷などで模様を形成してもよい。
【0008】
反射層は、湿式めっき法や乾式めっき法、塗装、印刷、化成処理などの公知の方法により、ニッケルやクロムや黒クロムなどの金属めっき層、あるいは金や銀やパラジウムなどの貴金属めっき層、塗膜層、印刷層、酸化物層などが用いることができる。特に、被塗物との密着性が得られる湿式めっき法による銀や銀合金の金属めっき層を用いることにより再帰反射現象を有効に発現できる。また、反射層上にクロメート処理などの酸化物層を施すことで、後述するクリヤー塗膜層またはカラークリヤー塗膜層との密着性が向上する。
【0009】
微小球型再帰性反射体は、再帰反射を発現できるものであればよく特に限定されない。具体的には、BaO−SiO−TiO系ガラスビーズ、BaO−ZnO−TiO系ガラスビーズなどを用いることができる。屈折率が2.2であるBaO−ZnO−TiO系ガラスビーズが良好な再帰反射特性が得られる。
【0010】
微小球型再帰性反射体を含有するクリヤー塗膜層は、反射層上に微小球型再帰性反射体とクリヤー塗膜を別々の工程で塗膜層を形成してもよいし、クリヤー塗料中に微小球型再帰性反射体を分散させて塗膜層を形成してもよい。これは、カラークリヤー塗膜層の場合も同様である。
【0011】
クリヤー塗膜層を形成する塗料は、少なくとも樹脂と液媒体を含んでいればよい。液媒体として有機溶剤を使用した有機溶剤系塗料や、水または水と有機溶剤を混合した溶液を使用した水系塗料であれば特に限定しない。しかし、クリヤー塗膜層には、色材を含有しないことが重要である。
また、クリヤー塗膜層を形成する塗料は、一般的に市販されている熱硬化型樹脂や熱可塑性樹脂を主成分とする塗料や、前記塗料に硬化剤などを添加した反応硬化型塗料などが使用できる。特に反射層との密着性を考慮すると接着性を有する熱可塑性樹脂を配合した塗料が好適に使用できる。具体的には、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよび共重合体、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はこれら樹脂を主成分とする混合物が挙げられ、これらは一種もしくは二種以上の混合物でもよい。また、これらにテルペン系樹脂やロジン系樹脂などの粘着性付与剤や、パラフィン系オイルなどの柔軟剤や、ポリイソシアネート樹脂などの硬化剤などを必要に応じて添加することもできる。特に吸水性が少ないポリエステル樹脂が好適に使用できる。
一方、カラークリヤー塗膜層を形成する塗料は、色材を添加すること以外は、前記のクリヤー塗膜層と同様である。添加する色材は、染料や着色顔料などが使用でき、カラークリヤー塗膜層が光透過性を有していればよい。
【0012】
本発明において最も重要な反射層と微小球型再帰性反射体(微小球型再帰性反射体を含有するクリヤー塗膜層)との位置関係を図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の断面模式図である。
被塗物1上に反射層2が形成され、さらに反射層2上に微小球型再帰性反射体を含有するクリヤー塗膜層5(またはカラークリヤー塗膜層)が形成されている。接触部6において反射層2と微小球型再帰性反射体3が点接触(T/r=0; T:反射層と微小球型再帰性反射体との距離,r:微小球型再帰性反射体の平均粒子径)していることが最も意匠性に有効な再帰反射特性が得られる。
また、クリヤー塗膜層に染料や顔料などの色材を含まない場合には、図2で示す位置関係においても再帰反射特性が得られるものである(図3は色材を含む場合であり、反射層2と微小球型再帰性反射体3が点接触(T/r=0; T:反射層と微小球型再帰性反射体との距離,r:微小球型再帰性反射体の平均粒子径)している)。
図2は、本発明の拡大断面模式図である。
接触部6(図中省略)において、反射層と微小球型再帰性反射体との距離Tと微小球型再帰性反射体の平均粒子径rとの関係が、0≦T/r≦0.23であれば意匠性に有効な再帰反射特性が得られる。具体的には、微小球型再帰性反射体の平均粒子径rによって反射層と微小球型再帰性反射体との距離Tは変化するが、微小球型再帰性反射体の平均粒子径を50μmとした場合、反射層と微小球型再帰性反射体との距離は、11.5μmとなる。さらに距離を短くし点接触(0μm)するまでの距離が有効であるが、反射層と微小球型再帰性反射体との距離が2.5μm以下(0≦T/r≦0.05)にすることで点接触(0μm)とほぼ同等な再帰反射特性が得られる。
また、T/rが0.23より大きくなると、微小球型再帰性反射体から出た光がクリヤー塗膜層で屈折し(複屈折し)、減光しながら反射層で反射するが、元の微小球型再帰性反射体には戻らず、乱反射光となってしまい再帰反射特性は得られない。この現象は、微小球型再帰性反射体とクリヤー塗膜層との屈折率の差(微小球型再帰性反射体の屈折率(2.2)、クリヤー塗膜層の屈折率(1.5))によって生じる現象であり、本発明においては、微小球型再帰性反射体の平均粒子径に対して、23%以下の反射層と微小球型再帰性反射体との距離が、複屈折を生じても再帰反射特性が得られるものである。
なお、本発明における平均粒子径とは、JIS R 6002(1998)に規定されている測定方法(沈殿試験)での累積高さ50%に相当する粒子径を示し、また、距離とは、反射層と微小球型再帰性反射体との最短での距離を示す。
【0013】
本発明においては、少なくとも被塗物上に反射層(被塗物が反射層を兼ねる場合を含む)と、微小球型再帰性反射体を含有するクリヤー塗膜層(またはカラークリヤー塗膜層)とを有していればよいが、それら上層にクリヤー塗膜、カラークリヤー塗膜、パールクリヤー塗膜、メタリック塗膜、薄膜蒸着膜などの光透過性層を全面及び/又は部分的に形成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、意匠性を有効的に発現させるために再帰反射現象を積極的に利用したものであるが、反射層上に微小球型再帰性反射体を反射層と微小球型再帰性反射体との距離Tと微小球型再帰性反射体の平均粒子径rとの関係を0(点接触)≦T/r≦0.23にすることで、非平面の再帰性反射塗装物の塗膜構造中で入射した光が反射(全反射や再帰反射など)と透過が発現するとともに、微小球型再帰性反射体の表面及び/又は内部での光の散乱とが加味され、特異的な「奥行き感」と「深み感」などが形成されることで神秘的な意匠性が得られるものである。
また、反射層が、銀及び銀合金からなる金属めっき層で、微小球型再帰性反射体の屈折率が、2.2以上とすることで、銀特有の淡い黄色みをおびた白色金属光沢と再帰反射の相乗効果により意匠性が向上する。
特に、筒状部材においては、側面部で色相の変化を伴わない明度差(濃淡差)が発生し、その結果、実際の塗膜厚さより厚く見える錯覚が加味される。
【0015】
さらに、本発明の効果を図を用いて具体的に説明する。
図4は、再帰性反射塗装物を筒状部材に形成した部分塗膜断面模式図である。
反射光7は、全反射光に加えて再帰反射光が再帰性反射塗装物の正面部付近で発現される。乱反射光8は、正面部付近から側面部付近にかけて発現され、側面部付近においては、複数の微小球型再帰性反射体の屈折を繰り返し、反射層に入射光が到達せず外にぬけていく(透過光9)ことで、入射した光が様々な特性を有することで特異的な「奥行き感」と「深み感」などが形成され神秘的な意匠性が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】再帰性反射塗装物の塗膜断面模式図。
【図2】再帰性反射塗装物の塗膜断面模式図。
【図3】再帰性反射塗装物の塗膜断面模式図。
【図4】再帰性反射塗装物を筒状部材に形成した部分塗膜断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、非平面の被塗物上に、反射層と微小球型再帰性反射体を含有するクリヤー塗膜層を形成したことを最も主要な特徴とし、反射層上に微小球型再帰性反射体が点接触することで再帰反射特性を利用した意匠性を発現し、さらに塗膜構造中で入射した光が反射(全反射や再帰反射など)と透過が発現するとともに、微小球型再帰性反射体の表面及び/又は内部での光の散乱とが加味され、特異的な「奥行き感」と「深み感」などが形成されることで神秘的な意匠性を実現した。
【0018】
(実施例1)
鉄製の、100mm×100mm×厚さ1mmである鋼板を湾曲状(曲率半径50mm)に加工し、バフ研磨にて表面を平滑にし、ジクロロメタンで脱脂処理し被塗物とした。次いで公知の電気めっき法により金属Ni層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にアクリルラッカー塗料(トアインクラック(クリヤー)、(株)トウペ製を専用シンナーで2倍希釈)と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0(点接触)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0019】
(実施例2)
アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体製(ABS製)の、長径10mm、短径5mm、長さ100mmである横断面外形状が楕円形の成型品を、イソプロピレンで脱脂処理し被塗物とした。次いで公知の真空蒸着法により金属Al層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にアクリルラッカー塗料(トアインクラック(クリヤー)、(株)トウペ製を専用シンナーで2倍希釈)と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0(点接触)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0020】
(実施例3)
真鍮製の、外径10mm、長さ100mmである横断面外形状が円形の材料をバフ研磨し、表面を平滑にし、ジクロロメタンで脱脂処理し被塗物とした。次いで公知の電気めっき法により金属Ni層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にアクリルラッカー塗料(トアインクラック(クリヤー)、(株)トウペ製を専用シンナーで2倍希釈)と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0(点接触)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0021】
(実施例4)
実施例3と同様の被塗物を用いた。
次いで前記反射層上に熱硬化型アクリル系塗料(マジクロン1000(クリヤー)、関西ペイント(株)製を専用シンナーで2倍希釈)と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0(点接触)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0022】
(実施例5)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加したポリエステル系塗料と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0(点接触)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0023】
(実施例6)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加したポリエステル系塗料と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0(点接触)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0024】
(実施例7)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加したポリエステル系塗料と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0.02(T=1.0μm)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0025】
(実施例8)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加したポリエステル系塗料と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0.04(T=2.1μm)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0026】
(実施例9)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加したポリエステル系塗料と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0.10(T=5.3μm)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0027】
(実施例10)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加したポリエステル系塗料と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0.13(T=7.0μm)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0028】
(実施例11)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加したポリエステル系塗料と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0.22(T=11.4μm)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0029】
(実施例12)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加したポリエステル系塗料と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0.25(T=13.0μm)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0030】
(実施例13)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル系塗料(フランボヤンNo.140(N)(ワインレッドクリヤー)、大橋化学工業(株)製を専用シンナーで2倍希釈)と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0(点接触)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたカラークリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0031】
(実施例14)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加したポリエステル系塗料と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−052NH(平均粒子径35.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0(点接触)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0032】
(実施例15)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加したポリエステル系塗料と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−45NH(平均粒子径69.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0(点接触)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0033】
(実施例16)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加したポリエステル系塗料と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−24M(平均粒子径54.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0(点接触)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0034】
(実施例17)
真鍮製の、外径10mm、長さ100mmである横断面外形状が円形の材料をバフ研磨し、表面を平滑にした後、公知の方法にて長手方向に線状の彫刻、所謂光線彫りを施し、ジクロロメタンで脱脂処理し被塗物とした。
次いで前記反射層上にポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加したポリエステル系塗料と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0(点接触)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、再帰性反射塗装物を得た。
【0035】
(比較例1)
鉄製の、100mm×100mm×厚さ1mmである板状鋼板を、バフ研磨にて表面を平滑にし、ジクロロメタンで脱脂処理し被塗物とした。次いで公知の電気めっき法により金属Ni層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にアクリルラッカー塗料(トアインクラック(クリヤー)、(株)トウペ製を専用シンナーで2倍希釈)と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0(点接触)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、塗装物を得た。
【0036】
(比較例2)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加したポリエステル系塗料と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0.29(T=15.3μm)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたクリヤー塗膜層を形成し、塗装物を得た。
【0037】
(比較例3)
実施例3と同様の被塗物を用いた。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。
次いで前記反射層上にポリエステル系塗料(フランボヤンNo.140(N)(ワインレッドクリヤー)、大橋化学工業(株)製を専用シンナーで2倍希釈)と微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2、(株)ユニオン製)を用いて、T/r=0.04(T=2.1μm)となるように、微小球型再帰性反射体を単層配列させたカラークリヤー塗膜層を形成し、塗装物を得た。
【0038】
<外観特性の評価>
JIS K 5600−4−3:1999「塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第3節:色の目視比較」に準じた色観察用照明(自然昼光照明)下で目視にて再帰性反射塗装物の外観特性(再帰反射性及び深み感)を評価した。
【0039】
<水に対する塗膜耐性評価(沸騰水試験)>
2級の純度の水(ISO3696)を沸騰状態にし、実施例及び比較例で得た光輝性塗装物を前記沸騰状態の水に25分間浸漬した後、塗装物を沸騰状態の水の中から取りだし常温に戻す。次にJIS K 5600−5−6「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」に規定されているクロスカット法(1mmの正方形を10×10コマ(計100コマ))にて密着性を評価する。尚評価は、100コマの碁盤目内で塗膜が残ったコマ数とした。
【0040】
各実施例、比較例をまとめたものを表1に、前記3項目による評価結果を表2に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【符号の説明】
【0043】
1 被塗物
2 反射層
3 微小球型再帰性反射体
4 クリヤー塗膜層
5 微小球型再帰性反射体を含有するクリヤー塗膜層
6 接触部
7 反射光
8 乱反射光
9 透過光
10 色材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非平面の再帰性反射塗装物において、少なくとも反射層上に微小球型再帰性反射体を含有するクリヤー塗膜層を有し、反射層と微小球型再帰性反射体との距離Tと微小球型再帰性反射体の平均粒子径rとの関係が、0(点接触)≦T/r≦0.23であることを特徴とする再帰性反射塗装物。
【請求項2】
非平面の再帰性反射塗装物において、少なくとも反射層上に微小球型再帰性反射体と色材とを含有するカラークリヤー塗膜層を有し、反射層と微小球型再帰性反射体との距離Tと微小球型再帰性反射体の平均粒子径rとの関係が、T/r=0(点接触)であることを特徴とする再帰性反射塗装物。
【請求項3】
前記反射層が、銀及び銀合金からなる金属層であることを特徴とする請求項1乃至2記載の再帰性反射塗装物。
【請求項4】
前記微小球型再帰性反射体の屈折率が、2.2以上であることを特徴とする請求項1乃至3の再帰性反射塗装物。
【請求項5】
前記非平面の再帰性反射塗装物を筒状部材に用いたことを特徴とする請求項1乃至4記載の再帰性反射塗装物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−110536(P2011−110536A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272265(P2009−272265)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】