説明

再生されたセルロース繊維の使用

難燃性製品において、カルボキシメチルセルロースが一体化されている再生されたセルロース繊維の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ビスコース法によって得られた、難燃性製品において再生されたセルロース繊維の使用に関する。
【0002】
難燃性のビスコース繊維は、一般的安全性および保護のために広く用いられており、例えば、安全服、マットレスの充填材、内装に使用される布地などに用いられている。
【0003】
難燃性のビスコース繊維としては様々な種類のものが既に知られている。
【0004】
ポリケイ酸を一体化することによって、難燃性を有するビスコース繊維を提供することが一面で知られている、しかしながら、ポリケイ酸を一体化すると、布地用途よりもフリースの繊維製品に適した強固で脆い繊維を形成することに繋がる。
【0005】
Lenzing FR(登録商標)の商品名が付された市販のビスコース繊維がある。これらの繊維は、リンを含有する添加剤を一体化することによって得られる。リンを含有する添加剤を用いて十分な難燃性を得るためには、高水準の一体化を行う必要がある。これは高コストであるため、むしろ繊維の最終価格の高騰を招くこととなる。
【0006】
引き続いてセルロース繊維に難燃性を付与する案が多く存在する。これは、Probane(THPC)(登録商標)およびPyrovatex(登録商標)CPのような、すでに製造された繊維に係る出願である。
【0007】
しかしながら、そのような方法で前処理された布地/繊維は、洗浄に対する耐性が限られている。化学的な架橋を用いることによって、健康上の危険のあるホルムアルデヒドの残量を改善できる。さらに、架橋反応により、布地/繊維に脆化および硬化が生じる。
【0008】
US 3 734 683公報には、カルボキシセルロースの製造を背景として、カルボキシ基の割合が高いセルロース繊維の難燃性効果が示されている。この公報によれば、ビスコース繊維は、複雑な手法にて酸化され、後処理がなされる。繊維の製造に係る経済的な音響処理において、この手法を実施することはできない。さらに、上述の酸化によって繊維構造に損傷を招く可能性があり、当該酸化は欠陥のある処理だといえる。
【0009】
本発明の目的は、従来の繊維処理にて処理し易く、コスト効率に優れると共に優れた難燃性繊維を提供することにある。
【0010】
この目的は、難燃性製品において、カルボキシメチルセルロースが一体化されている再生されたセルロース繊維を使用することよって解決される。
【0011】
好ましい形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
〔発明の詳細な説明〕
カルボキシメチルセルロース(CMC)が一体化されている再生されたセルロース繊維が、難燃剤として作用し、優れているだけでなく、比較的低コストで処理可能であることは驚くべきことである。
【0013】
セルロース繊維に一体化されたカルボキシメチルセルロースが存在するため、専門家は、CMCが(繊維の再生において)無置換のセルロースのマトリックスに一体化されることを知っている。すでに製造された繊維にCMCを処理することとは対称的に、例えば、ビスコースドープに添加されたCMCを紡績することによって、上記一体化が可能である。
【0014】
カルボキシメチルセルロース(CMC)を含むビスコース繊維が知られている。ビスコース繊維は、ビスコースドープに添加されたカルボキシメチルセルロースを紡績することによって得られる混合繊維である。このような繊維は、商業レベルでも製造されている(US 4,199,367 A, US 4,289,824 A)。
【0015】
ビスコースドープは、例えば、従来手法に従って製造される。無置換のセルロースに対して所望の一体化量となるように、紡績直前、8重量%以上、12重量%以下のカルボキシメチルセルロース(CMC)溶液をビスコースドープに添加する。後処理および乾燥は、従来手法に従って行われる。
【0016】
再生されたセルロース繊維に一体化されているカルボキシメチルセルロースの割合は、無置換のセルロースに対して、好ましくは5重量%以上、50重量%以下、特に好ましくは15重量%以上、40重量%以下、最も好ましくは20重量%以上、30重量%以下である。
【0017】
カルボキシメチルセルロースは、置換度が0.6以上、12以下、好ましくは0.65以上、0.85以下、30〜800mPasの粘度(2%溶液;25℃)、好ましくは50〜100mPasの粘度の市販品を使用してもよい。
【0018】
本発明に従って使用される再生されたセルロース繊維を含有するCMCも、以下のように“ビスコース−CMC混合繊維”として表される。
【0019】
上記ビスコース−CMC混合繊維の繊度は、好ましくは0.5デシテックス以上、8デシテックス以下、特に好ましくは1.3デシテックス以上、6デシテックス以下である。
【0020】
本発明に係るビスコース−CMC混合繊維の繊維長さは、2mm以上、80mm以下であってもよく、具体的には利用分野に依存する。湿式法の場合、適切な繊維長さは20mm以上、80mm以下である。
【0021】
ビスコース−CMC混合繊維は他の難燃性の添加剤を含んでいることが好ましい。この難燃性の添加剤は、特に、ハロゲンを含有する添加剤、リンを含有する添加剤、アルミニウムを含有する添加剤、アルミニウムマグネシウム塩およびポリケイ酸からなる群から選ばれた添加剤であってもよい。上記添加剤は、ビスコースドープを紡ぐ公知の手法により繊維に一体化され(例えば、Exolit(登録商標) 5060などのリンを含有する添加剤の場合)、または、その後、上記繊維に塗布されればよい(アルミニウム塩のアルカリ溶液の場合)。
【0022】
発火が進行する、ビスコース繊維、または、未処理のビスコース繊維を原料とする製品に比較して、本発明に従って使用され、それぞれ燃え難いビスコース−CMC混合繊維、布地衣料またはフリース衣料はこれらを含む。炎はすぐに消え、繊維はただ煙を出し続けるだけである。無置換のセルロースに対して20重量%のCMCを含む場合、特に効果が顕著となる。
【0023】
しかしながら、すでに公知の、難燃性のビスコース繊維の数種とは対照的に、本発明で使用されるビスコース−CMC混合繊維は、弾性と同様に、引っ張り強度の値および伸び値において、大幅にではないが、公知のビスコース繊維と異なっており、公知のビスコース繊維と同様の処理がなされていてもよい。
【0024】
本発明に係る繊維に使用される上記添加剤(CMC)には健康上の危険がなく、食品添加剤としても用いられる。繊維の脆化および硬化は生じない。難燃性効果は、ほとんどの洗浄に対して耐性がある。
【0025】
したがって、本発明は、カルボキシメチルセルロースが一体化されている再生されたセルロース繊維を含む難燃性製品に関する。
【0026】
本発明に係る難燃性製品は、上記セルロース繊維において一体化されているカルボキシメチルセルロースの割合が、無置換のセルロースに対して、5重量%以上、50重量%以下、好ましくは15重量%以上、40重量%以下、特に好ましくは20重量%以上、30重量%以下であるものと好ましく特徴付けられる。
【0027】
本発明に係る難燃性製品は、10%以上、100%以下のビスコース−CMC混合繊維を好ましく含んでいてもよい。
【0028】
本発明に係る難燃性製品は、衣服、特に安全服、家庭用布地、特にマットレス、自動車用布地、フィルター材料、および建設分野および自動車分野用の絶縁材料からなる群から選ばれたものであることが好ましい。
【0029】
〔実施例〕
従来の手法にて、無置換のセルロースに対して、0重量%(ゼロサンプル)、12重量%、20重量%、および30質量%の割合のCMCにてビスコース−CMC混合繊維を処理した。これらの繊維は、40mmの短繊維に切断されたものであった。
【0030】
上記繊維サンプルから各10グラムの回転環を作製した。その後、回転環を綿状(tampon)カレンダーで広げ、プレスする。一群の作製物は、約5mmの厚さで単位面積当たりの重量が約238g/m(206〜260g/m)であった。
【0031】
燃焼試験のためにカットした8cm×2cmの大きさの試験サンプルを用意した。上記試験サンプルは、水平または垂直にクランプで固定され、サンプルの固定されていない一端をブンゼンバーナーで所定時間、加熱した。
【0032】
結果:
従来のビスコース繊維(CMC 0%):
1秒の点火でサンプルはすでに発火しており、その後、完全燃焼するまで力強い様相で燃えた。
【0033】
CMCがそれぞれ12%または20%のビスコース繊維(本発明に係る繊維):
試験サンプルはバーナーの炎に直接接触して、焼却された。しかし、炎が移動すると、試験サンプルにより即座に消火される(“自消性”)。
【0034】
あるケースでは、試験サンプルから突出した個々の繊維が移動した炎に接して燃え続けることもあった。
【0035】
燃焼時間を1秒から10秒に変えたところ、全サンプルにおいて、移動する炎はすぐに消えた。バーナーの炎の接触時間を長くすると燃焼した箇所が広がるのみだった。
【0036】
全サンプルは消火により煙を出しており、全ての場合で、試験サンプルはゆっくりと完全に灰化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性製品において、カルボキシメチルセルロースが一体化されている再生されたセルロース繊維の使用。
【請求項2】
上記セルロース繊維において一体化されているカルボキシメチルセルロースの割合が、無置換のセルロースに対して、5重量%以上、50重量%以下、好ましくは15重量%以上、40重量%以下、特に好ましくは20重量%以上、30重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の再生されたセルロース繊維の使用。
【請求項3】
セルロース繊維の繊度が0.5デシテックス以上、8デシテックス以下、好ましくは1.3デシテックス以上、6デシテックス以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の再生されたセルロース繊維の使用。
【請求項4】
セルロース繊維の繊維長さが、2mm以上、80mm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の再生されたセルロース繊維の使用。
【請求項5】
上記セルロース繊維が、さらに難燃性の添加剤を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の再生されたセルロース繊維の使用。
【請求項6】
上記難燃性の添加剤は、ハロゲンを含有する添加剤、リンを含有する添加剤、アルミニウムを含有する添加剤、アルミニウムマグネシウム塩およびポリケイ酸からなる群から選ばれた添加剤であることを特徴とする請求項5に記載の再生されたセルロース繊維の使用。
【請求項7】
カルボキシメチルセルロースが一体化されている再生されたセルロース繊維を含む難燃性製品。
【請求項8】
上記セルロース繊維において一体化されているカルボキシメチルセルロースの割合が、無置換のセルロースに対して、5重量%以上、50重量%以下、好ましくは15重量%以上、40重量%以下、特に好ましくは20重量%以上、30重量%以下であることを特徴とする請求項7に記載の難燃性製品。
【請求項9】
再生されたセルロース繊維の割合が、10%以上、100%以下であることを特徴とする請求項7または8に記載の難燃性製品。
【請求項10】
衣服、特に安全服、家庭用布地、特にマットレス、自動車用布地、フィルター材料、および建設分野および自動車分野用の絶縁材料からなる群から選ばれた請求項7〜9の何れか1項に記載の難燃性製品。

【公表番号】特表2013−501150(P2013−501150A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522073(P2012−522073)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059867
【国際公開番号】WO2011/012422
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(504455609)ケルハイム フィブレス ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】