説明

再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法、再生ポリプロピレン系樹脂及び粒状物、これらの成形物

【課題】 本発明は、簡単な方法で、回収したプロピレン系樹脂から流動性をコントロールした再生プロピレン系樹脂を製造する方法を提供することを目的とする。さらに射出成形が可能な高流動性を有する再生プロピレン系樹脂を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程、そして該加熱溶融物を固形粒状物に変換する工程を含む再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法であり、
回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程において、予めあるいは工程の途中から過酸化物を添加して混練することを特徴とする再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電、自動車などの市場より回収したプロピレン成形物の粉砕品並びにプロピレン成形工程内から発生した成形廃材及び成形ダンゴの粉砕品などを用いて、高流動性を有し、薄肉の大型成形品などの射出成形を可能にしたプロピレン樹脂粒状物の製造法、及びその成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、成形加工しやすく、剛性、耐熱性などに優れており、射出成形、押出成形などの種々の成形方法によって成形可能で、家電製品や自動車内装外層部材などに広く利用されている。
省資源の観点から市場で使用されたポリプロピレン製品を回収し、再利用する試みが行なわれている。
【0003】
特許文献1には、再生させるポリプロピレン系樹脂を溶融する工程において、予めあるいは工程の途中からイソプレン単量体およびラジカル重合開始剤を添加し、混練することを特徴とする再生ポリプロピレン系樹脂の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2000−119401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
家電、自動車などの市場より回収したプロピレン成形物の粉砕品並びにプロピレン成形工程内から発生した成型(成形)廃材及び成型(成形)ダンゴの粉砕品などを用いて、プロピレン樹脂を溶融し再生されたプロピレン樹脂は、得られる流動性が均一でないため、用いる用途が限られていた。
本発明は、簡単な方法で、回収したプロピレン系樹脂から流動性をコントロールした再生プロピレン系樹脂を製造する方法を提供することを目的とする。さらに射出成形が可能な高流動性を有する再生プロピレン系樹脂を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一は、回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程、そして該加熱溶融物を固形粒状物に変換する工程を含む再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法であり、
回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程において、予めあるいは工程の途中から過酸化物を添加して混練することを特徴とする再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法である。
好ましくは本発明の第一は、回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程、そして該加熱溶融物を固形粒状物に変換する工程を含む再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法であり、
回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程において、予めあるいは工程の途中から過酸化物を、回収ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、0.01〜1質量部の範囲で添加して混練することを特徴とする再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法である。
【0006】
本発明の再生ポリプロピレン系樹脂粒状物は、上記の本発明の第一の再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法より製造された再生ポリプロピレン系樹脂粒状物である。
さらに本発明の再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の成形物は、上記本発明の再生ポリプロピレン系樹脂粒状物を成形した成形物である。
【0007】
本発明の第一の好ましい態様を以下に示し、これら態様は複数組み合わせることが出来る。
1)再生ポリプロピレン系樹脂粒状物は、射出成形用再生ポリプロピレン系樹脂粒状物であること。
2)再生ポリプロピレン系樹脂粒状物のメルトフローレイトは、回収ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトに対して、1.3〜20倍であること。
3)回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程において、予めあるいは工程の途中から酸化防止剤を添加して混練すること。
4)回収ポリプロピレン系樹脂は、粉砕した回収ポリプロピレン系樹脂を用いること。
【0008】
本発明の第二は、回収ポリプロピレン系樹脂の粉砕品及び過酸化物とを溶融混練して得られる再生ポリプロピレン系樹脂である。
好ましくは本発明の第二は、回収ポリプロピレン系樹脂の粉砕品、過酸化物、及び酸化防止剤とを溶融混練して得られる再生ポリプロピレン系樹脂である。
【0009】
本発明の第ニの好ましい態様を以下に示す。
1)再生ポリプロピレン系樹脂が、射出成形用樹脂であること。
【発明の効果】
【0010】
本発明の再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法により、流動性のコントロールされた再生ポリプロピレン系樹脂を製造することができ、使用する用途広がり、リサイクル性が向上する。
本発明の再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法により、流動性がコントロールされ、高流動性を有する、射出成形に用いることができる再生ポリプロピレン系樹脂を製造することができる。
本発明の再生ポリプロピレン系樹脂は、回収ポリプロピレン系樹脂を用いて、高流動性を有する、射出成形に用いることができる再生ポリプロピレン系樹脂である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法は、回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程、そして該加熱溶融物を固形粒状物に変換する工程を含む再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法であり、
回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程において、予めあるいは工程の途中から過酸化物、さらに必要に応じて顔料、フィラー、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、増核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤などの添加剤や分散剤などを本発明の特性を損なわない範囲で添加して混練することを特徴とする再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法である。
なお、上記の本発明の再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法の回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程は、再生対象の回収ポリプロピレン系樹脂又はこれらの粉砕物に、過酸化物、さらに必要に応じて顔料、フィラー、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、増核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤などの添加剤や分散剤などを同時に或いは逐次に添加し、混合したのち、これらの混合物を加熱溶融する操作を含む方法により行なうことが好ましい。ただし、再生対象の回収ポリプロピレン系樹脂又はこれらの粉砕物を予め加熱溶融し、その加熱溶融の過程において、あるいは一旦加熱溶融を止めた後、その加熱溶融物に過酸化物、さらに必要に応じて顔料、フィラー、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、増核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤などの添加剤や分散剤などを同時に或いは逐次に添加し、再度加熱溶融を行なうこともできる。
加熱溶融物を固形粒状物に変換する工程は、加熱溶融物の粒状物を得て、これを冷却する操作、あるいは塊状の加熱溶融物を冷却し、これを粉砕する操作などを利用して実施することができる。
【0012】
樹脂再生に用いる回収ポリプロピレン系樹脂としては、家電、自動車などの市場より回収したプロピレン成形物及びこれらの粉砕品並びにプロピレン成形工程内から発生した成形部材(廃材)及び成形ダンゴ及びこれらの粉砕品などを用いることができる。
回収ポリプロピレン系樹脂としては、単一の種類のもの、流動性、密度、プロピレン含有量の異なる複数の樹脂成分の混合物などを用いることができ、特に単一の種類のもの並びに流動性や密度などの異なる複数の混合物からなる樹脂を用いることが機械特性を損なわないために好ましい。
回収ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレンからなっても、或いはプロピレンと他のオレフィン類やプロピレンと共重合可能なモノマー成分との共重合体、例えばランダム共重合、ブロック共重合など、からなっていてもよい。
他のオレフィン類としては、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、4−メチル−ペンテン−1などのα−オレフィン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニル化合物、酢酸ビニルなどのビニルエステル、無水マレイン酸などの不飽和有機酸またはその誘導体などを挙げることができる。
回収ポリプロピレン系樹脂としては、本発明の特性を損なわない範囲でポリプロピレン系樹脂以外の樹脂やゴム成分を含む回収物を用いることができ、ポリプロピレン系樹脂成分が、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であるものを用いることが好ましい。
【0013】
回収ポリプロピレン系樹脂のポリプロピレン系樹脂以外の樹脂としては、ポリエチレン、ポリブテン−1;エチレン又はブテン−1と、炭素数3、4〜10の上記の他のオレフィン類、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニル化合物、酢酸ビニルなどのビニルエステル、無水マレイン酸などの不飽和有機酸またはその誘導体などの2元又は3元以上の共重合体を挙げることができる。
【0014】
回収ポリプロピレン系樹脂のポリプロピレン系樹脂以外のゴム成分としては、熱可塑性エラストマー、ゴム状エラストマーなどを挙げることが出来る。
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等を挙げることが出来、例えば、ポリオレフィン系エラストマーとしては、非晶性叉は低結晶性ポリオレフィン−α−オレフィン共重合体、ポリオレフィン樹脂とオレフィン系ゴムとの混合物、ポリオレフィン樹脂とオレフィン系ゴムの部分架橋体との混合物、ポリオレフィン樹脂とオレフィン系ゴムの完全架橋体との混合物等を、スチレン系エラストマーとしては、ブタジエン−スチレン共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等の全てを含む)及びその水添物、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、水添スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、イソプレン−スチレン共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等の全てを含む)及びその水添物、水添スチレン−イソプレン共重合体、水添スチレン−ビニルイソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、水添スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、水添スチレン−ブタジエン−オレフィン結晶ブロック共重合体等を、ポリエステル系エラストマーとしては、ポリエステル−ポリエーテル共重合体、ポリエステル−ポリエステル共重合体等からなるエラストマーを、ポリアミド系エラストマーとしては、ポリアミド−ポリエステル共重合体、ポリアミド−ポリエーテル共重合体等からなる熱可塑性エラストマー等を挙げることが出来る。
【0015】
また、ゴム状エラストマーとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、合成イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマ、クロロプレン、ハロブチルゴム、ブチルゴム、ニトリル・クロロプレンゴム、ニトリル・イソプレンゴム、アクリレート・ブタジエンゴム、ビニルピリジン・ブタジエンゴム、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・クロロプレンゴム、スチレン・イソプレンゴム、カルボキシル化スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシル化アクリロニトリル・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・イソプレンブロック共重合体、カルボキシル化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、カルボキシル化スチレン・イソプレンブロック共重合体等のジエン系ゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体、エチレン・ブテンゴム、エチレン・ブテン・ジエン三元共重合体等のポリオレフィン系ゴム、ポリ塩化三フッ素化エチレン、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、フッ素ゴム、水素添加NBR等の、ポリメチレン型の主鎖を有するゴム、エピクロロヒドリン重合体、エチレンオキシド・エピクロロヒドリン・アリルグリシジルエーテル共重合体、プロピレンオキシド・アリルグリシジルエーテル共重合体等、主鎖に酸素原子を有するゴム、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルブチルシロキサン等のシリコーンゴム、ニトロソゴム、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン等、主鎖に炭素原子の他窒素原子及び酸素原子を有するゴムなどのゴム成分およびこれらの混合物が好ましい。又、これらのゴムをエポキシ変性したものや、シラン変性、或いはマレイン化したものも用いることが出来る。
【0016】
過酸化物としては、ラジカルを発生する物、さらに熱によりラジカルを発生するものであればどのような物でも用いることが出来る。
過酸化物の具体的な例としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチロニトリルなどのアゾ化合物などの公知の過酸化物を挙げることができる。
中でも、1分間の半減期温度が、溶融混練温度ないしこの温度より30℃程高い温度の範囲であるもの、具体的には1分間の半減期温度が80〜260℃程度のものが好ましく用いられる。
【0017】
過酸化物の使用量は、用いる回収ポリプロピレン系樹脂の粉砕品の種類により適宜選択すればよいが、好ましくは回収ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、好ましくは0.001〜1質量部、さらに好ましくは0.005〜0.7質量部、より好ましくは0.01〜0.5質量部、特に好ましくは0.01〜0.3質量部の範囲が好ましい。
【0018】
顔料としては、二酸化チタン(酸化チタン)、チタンイエロー、カーボンブラックなどの公知の顔料を単独で又は二種類以上を併用して使用することができる
【0019】
フィラーとしては、顔料を除く、有機系フィラー及び無機系フィラーを用いることができる。無機系フィラーとしては、タルク、クレー、マイカ、シリカ、ケイソウ土、モスハイジ、ティスモ、ワラストナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、ドロマイト、ドーソナイト、ケイ酸塩類、炭素繊維、ガラス(ガラス繊維を含む)、バリウムフェライト、酸化ベリリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫化モリブテン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなど、あるいは亜鉛、銅、鉄、鉛、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、マンガン、スズ、白金、タングステン、金、マグネシウム、コバルト、ストロンチウムなどの金属及びこれらの金属酸化物、ステンレス鋼、ハンダ、真鍮などの合金、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、窒化アルミニウム、炭化チタンなどの金属系セラミックスなどの粉末、繊維状ウィスカ及び繊維などを用いることが出来る。繊維又は繊維状ウィスカとしては、L/Dが好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上の物を用いることが出来る。繊維としては、繊維長が好ましくは0.1〜5mm、さらに好ましくは1〜5mmのものを用いることができ、繊維径が好ましくは30μm以下、さらに好ましくは1〜30μm、特に好ましくは1〜15μmのものを用いることが出来る。特に炭素繊維としては、繊維長が好ましくは0.1〜5mm、さらに好ましくは1〜5mmのものを用いることができ、繊維径が好ましくは30μm以下、さらに好ましくは1〜30μm、特に好ましくは1〜15μmのものを用いることが出来る。
フィラーは、無機フィラーが好ましく、タルクが特に好ましい。
【0020】
本発明の回収ポリプロピレン系樹脂の再生に際しては、必要に応じて、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、増核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤などの添加剤や分散剤などを加えることが出来る。
分散剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、金属石鹸、グリセリンエステル、ハイドロタルサイト、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどを挙げることが出来る。
添加剤としては、フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、HALS等の紫外線吸収剤、リン系、ハロゲン系等の難燃剤などを挙げることが出来る。
【0021】
本発明に従って、回収ポリプロピレン系樹脂から再生ポリプロピレン系樹脂を製造する場合には、まず、原料の回収ポリプロピレン系樹脂或いはこれらの粉砕物に適量と推定される過酸化物を添加し、そして必要に応じて、 等を添加して、溶融混練し、次いで、直接あるいは再生樹脂粒状物を介して試験片を製造し、その試験片の流動性を測定し、また必要に応じて、各種物性を測定して、過酸化物の添加量の適否を判断する。そして、その判断に基づいて、必要に応じて、改めて、添加物の添加量や添加物の種類を変えて同様な操作を行なう方法を利用して、所望の流動性や物性を有する種々の成形に用いることのできる再生ポリプロピレン系樹脂を得ることができる。
【0022】
本発明では、原料の回収ポリプロピレン系樹脂或いはこれらの粉砕物と、各成分との混合方法、混合装置、混合設備については特に制限はなく、公知の単軸押出機(混練機)、二軸押出機(混練機)、二軸押出機と単軸押出機(混練機)を直列に接続したタンデム型混練装置、カレンダー、バンバリーミキサー、混練ロール、ブラベンダー、プラストグラフ、ニーダーなどの混合及び/又は混練装置などを用いることが出来る。
【0023】
本発明で得られた再生ポリプロピレン系樹脂又は再生ポリプロピレン系樹脂粒状物は、押出成形、シート成形、射出成形、射出圧縮成形、ガス注入射出成形、ブロー成形、真空成型など公知の成形や成型方法を用いて、モール、ドアトリム、インストルメントパネル、トリム、コンソールボックスなどの自動車用内外装部品、バッテリー、ファンシュラウドなどのエンジンルーム内部品などの自動車部材、家電製品の内外装部材、住宅建材の内外装部材、緩衝部材、包装部材などに用いられる成形物として再使用することができる。
本発明で得られた再生ポリプロピレン系樹脂又は再生ポリプロピレン系樹脂粒状物は、特に高流動性を有するために、一般雑貨、家電、自動車などの薄肉化や大型化に成形又は成型することができ、特に射出成形用に好適に用いることができる。
【0024】
本発明の再生ポリプロピレン系樹脂或いはこれらの粒状物より得られる成形物は、光沢面を有する成形物、絞などの凹凸や模様を有する成形物や滑らかな凹凸や模様を有する成形物などを得ることが出来る。
【実施例】
【0025】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
特性値は次のようにして測定した。
1)メルトフローレイト(MFR)(g/10分):ASTM・D1238(温度230℃、荷重2.16kg)に準拠して、測定した。
2)スパイラルフロー長(cm):金型:スパイラル 幅10mm、厚み3mm、射出成型機:型締圧力100t、成型温度:180℃、190℃、190℃、190℃、射出圧力:67MPa、スクリュウ背圧:フリー、スクリュウ回転数:140rpm、金型温度:40℃、サイクル:射出10秒冷却20秒の射出成型条件で流動長が安定したところの長さを測定した。
3)機械特性
以下の機械的特性は、温度23±2℃、湿度50±5%の条件下で、48時間以上状態調整後、試料数5、で行なった。(測定結果は平均値とする。)
・引張り強度(MPa):ASTM・D638に準拠して測定した。
・引張り伸び(%):ASTM・D638に準拠して測定した。
・曲げ強度(MPa):ASTM・D790に準拠して測定した。
・アイゾット23℃(ノッチ付)(J/m):ASTM・D256に準拠して測定した。
【0027】
[実施例1〜5、比較例1]
(1)再生対象の回収ポリプロピレン系樹脂
廃プラスチックとして、家電用として使用済みのポリプロピレン部材(プロピレン−エチレンブロック共重合体、ゴム成分約10質量%含有)を5〜10mmに粉砕して用いた。
(2)添加配合材料
1)過酸化物:過酸化物マスターバッチ(商品:パーヘキサ25B−40)。
2)酸化防止剤:Irgnox1010。
3)酸化防止剤:Irgfos168。
4)酸化チタン(顔料):平均粒子径0.22μmのもの。
(3)表1に示す各成分をプラテック社製タンブラーミキサーを用いてドライブレンドを行った後、宇部興産(株)製二軸混練機(UME40−48T)を用いて、L/D=47.7、バレル温度:200℃、40メッシュスクリーンパック、処理量:60kg/時の条件で溶融混練し、ペレットを得た。
得られたペレットのメルトフローレイト(MFR)及びスパイラルフロー長を測定し、結果を表1に示す。
【0028】
ペレットは、射出成形機として型締力150tを用い、金型:ASTM、成形温度:190,200,210,210,210(℃)、一次圧力:42(MPa)、二次圧力:31(MPa)、射出速度:40(%)、スクリュウ背圧:7(MPa)、スクリュウ回転数:70%、金型温度:40℃、サイクル:一次5秒、二次10秒、冷却30秒の射出成形条件で成形物(試験片)を採取した。
得られた試験片の機械的特性を測定し、結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例1〜5より、回収ポリプロピレン系樹脂から再生ポリプロピレン系樹脂を製造する場合には、原料の回収ポリプロピレン系樹脂の粉砕物に適量と推定される過酸化物を添加し、溶融混練し、次いで、再生樹脂粒状物(ペレット)を製造し、その再生樹脂粒状物(ペレット)の流動性を測定し、また必要に応じて再生樹脂粒状物(ペレット)より試験片を作成し、各種物性を測定して、過酸化物の添加量の適否を判断する。そして、その判断に基づいて、必要に応じて、改めて、添加物の添加量や添加物の種類を変えて同様な操作を行なう方法を利用して、所望の流動性や物性を有する種々の成形に用いることのできる再生ポリプロピレン系樹脂を得ることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程、そして該加熱溶融物を固形粒状物に変換する工程を含む再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法であり、
回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程において、予めあるいは工程の途中から過酸化物を添加して混練することを特徴とする再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法。
【請求項2】
回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程、そして該加熱溶融物を固形粒状物に変換する工程を含む再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法であり、
回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程において、予めあるいは工程の途中から過酸化物を、回収ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、0.01〜1質量部の範囲で添加して混練することを特徴とする再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法。
【請求項3】
再生ポリプロピレン系樹脂粒状物は、射出成形用再生ポリプロピレン系樹脂粒状物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法。
【請求項4】
再生ポリプロピレン系樹脂粒状物のメルトフローレイトは、回収ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトに対して、1.3〜20倍であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法。
【請求項5】
回収ポリプロピレン系樹脂を加熱溶融、混練して流動性を調整した加熱溶融物を得る工程において、予めあるいは工程の途中から酸化防止剤を添加して混練することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項の再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の製造方法より製造された再生ポリプロピレン系樹脂粒状物。
【請求項7】
請求項6に記載の再生ポリプロピレン系樹脂粒状物の成形物。
【請求項8】
回収ポリプロピレン系樹脂の粉砕品及び過酸化物とを溶融混練して得られる再生ポリプロピレン系樹脂。
【請求項9】
回収ポリプロピレン系樹脂の粉砕品、過酸化物、及び酸化防止剤とを溶融混練して得られる再生ポリプロピレン系樹脂。
【請求項10】
再生ポリプロピレン系樹脂が、射出成形用樹脂であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の再生ポリプロピレン系樹脂。


【公開番号】特開2007−277366(P2007−277366A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103949(P2006−103949)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】