説明

再生可能な炭酸飲料及び炭酸飲料の再生方法

【課題】炭酸飲料につきものである飲用に提供されてからの寿命の短さという問題に着眼し、この問題に対して一つの解決策を提供する。
【解決手段】炭酸飲料として例えば炭酸ジュースが入っている器に、二酸化炭素ガスをゲストガスとするガスハイドレート104を氷105で覆って形成した炭酸補充媒体103を、当該炭酸補充媒体103を収納した状態で炭酸ジュースよりも比重が大きく設定されている媒体収納部に収納した状態で入れることで、炭酸補充媒体に含まれているガスハイドレートが分解して二酸化炭素ガスを放出し、気が抜けぬるくなってしまった炭酸飲料を再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素ガス(Carbon Dioxide Hydrate)をゲストガスとするガスハイドレートを利用して再生される再生可能な炭酸飲料、このような炭酸飲料の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原料ガスと水とを接触させて生成したガスハイドレートの研究が進められている。ハイドレートは、水分子が構成するクラスター(かご構造)の中に原料ガスの分子(ゲスト)が取り込まれた包接水和物である。例えば、天然ガスハイドレートは、メタンとエタンとプロパンを主成分として構成された天然ガスをゲストとしてこれを水分子が構成するクラスターの中に取り込んだ構造物である。このようなガスハイドレートは、天然ガスハイドレートの他にも、原料ガスを代えることで種々のガスハイドレートとして構成することができる。例えば、原料ガスとして二酸化炭素を用いれば、二酸化炭素ハイドレートを生成することができる。
【0003】
特許文献1には、二酸化炭素ガスをゲストガスとするガスハイドレートを利用し、炭酸飲料を製造するようにした炭酸飲料の製造方法及び炭酸飲料製造装置が開示されている。同公報には、炭酸ガスハイドレートを製造する製造設備を設けておき、この製造設備で製造された炭酸ガスハイドレートを貯蔵タンクに貯蔵された飲料と混ぜ合わせる等の工程をもって炭酸飲料を製造することが示されている。また、特許文献1には、ペレット状に形成した炭酸ガスハイドレートを容器(器)に供給し、この容器(器)に注入される飲料と混合して炭酸飲料とすることも記載されている(段落0014、0036参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−224146公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭酸飲料は、時間の経過と共に気が抜け、ぬるくもなり、結果的に味が落ちる。味が落ちるまでの時間は、飲用に供されてから数分ないし数十分程度という比較的短い時間である。つまり、炭酸飲料は、飲用に供されてから比較的短時間で劣化してしまい、その寿命が短い。
【0006】
これに対して、特許文献1には、炭酸ガスハイドレートを利用して飲料を炭酸飲料にする技術が開示されているものの、一旦製造された後の炭酸飲料は、他の方法で製造した炭酸飲料と特段の相違がみられず、特に寿命という面での優位性は見出せない。このため、時間の経過と共に気が抜け、ぬるくもなり、結果的に味が落ちることに変わりはない。
【0007】
本発明の目的は、炭酸飲料につきものである飲用に提供されてからの寿命の短さという問題に着眼し、この問題に対して一つの解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の再生可能な炭酸飲料は、器に入れられた炭酸飲料と、二酸化炭素ガスをゲストガスとするガスハイドレートを氷で覆って形成した炭酸補充媒体と、前記炭酸補充媒体を収納可能であり、当該炭酸補充媒体を収納した状態で前記炭酸飲料よりも比重が大きく設定されている媒体収納部と、を備え、前記炭酸補充媒体は、前記媒体収納部に収納されて前記器内の炭酸飲料に入れられている。
【0009】
本発明の炭酸飲料の再生方法は、器に注ぎ込まれた炭酸飲料が当該器に収納保持される工程と、二酸化炭素ガスをゲストガスとするガスハイドレートを氷で覆って形成した炭酸補充媒体が当該炭酸補充媒体を収納した状態で前記炭酸飲料よりも比重が大きく設定されている媒体収納部に収納された状態で前記器に投げ込まれて当該器に収納保持される工程と、前記器に収納保持されている前記ガスハイドレートが分解して前記器に収納保持されている前記炭酸飲料内に二酸化炭素ガスを放出する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、時間の経過と共に気が抜け、ぬるくもなり、結果的に味が落ちてしまった炭酸飲料であっても、炭酸飲料に接するように器に入れられている炭酸補充媒体が分解することにより二酸化炭素ガスが生成されることから、気が抜けた炭酸飲料に再度炭酸を注入することができ、また、ガスハイドレートを含む炭酸補充媒体によって冷やすこともでき、その結果、気が抜けてぬるくなった炭酸飲料を再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】概要を説明する概念図である。
【図2】実施の一形態として、炭酸ジュース(再生可能な炭酸飲料)への適用例を示す斜視図である。
【図3】別の実施の一形態として、炭酸入りカクテル(再生可能な炭酸飲料)への適用例を示す斜視図である。
【図4】更に別の実施の一形態として、スパークリングワイン(再生可能な炭酸飲料)への適用例を示す斜視図である。
【図5】炭酸補充媒体を収納保持するカーゴ(媒体収納部)の一例を示す側面図である。
【図6】炭酸補充媒体を収納保持するオブジェ(媒体収納部)の一例を示す側面図である。
【図7】炭酸補充媒体の各種適用例を示す模式図である。
【図8】炭酸補充媒体を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、概要を説明する概念図である。本実施の形態では、二酸化炭素ガスをゲストガスとするガスハイドレートを含む炭酸補充媒体を炭酸飲料に投入する。結果的に、ガスハイドレートを含む炭酸補充媒体は炭酸飲料のための氷として使用される。
【0013】
二酸化炭素ガスを含む炭酸飲料は、時間の経過とともに二酸化炭素ガスが空気中へ拡散するため、口の中ではじけるような本来の食感が失われていく。また、炭酸飲料は夏場になるほど需要が増えるが、夏場は気温が高いため、せっかく炭酸飲料を冷やしていても、飲み終わるまでに温度が上がってしまい、喉越しの冷たさを感じさせる爽快感も味わえなくなる。
【0014】
そこで、一例として、炭酸飲料が飲用に供されて後、しばらく時間が経過したときに、前述した二酸化炭素ガスをゲストガスとするガスハイドレートを含む炭酸補充媒体を炭酸飲料に添加する。これにより、ガスハイドレートがぬるくなった飲料の温度を低下させ、また、ガスハイドレートが分解されることで放出される二酸化炭素ガスが炭酸飲料中に溶け込むことで気が抜けた炭酸飲料に二酸化炭素ガスが補充される。これにより、炭酸飲料本来の爽快感を蘇らせることができる。
【0015】
また、別の一例として、炭酸飲料を器に投入するに際して、あるいは、炭酸飲料が飲用に供されて後すぐに、前述した二酸化炭素ガスをゲストガスとするガスハイドレートを含む炭酸補充媒体を添加する。これにより、炭酸飲料本来の爽快感を比較的長時間にわたって持続させることができる。
【0016】
図2は、実施の一形態であって、再生可能な炭酸飲料101として炭酸ジュース101aへの適用例を示す斜視図である。炭酸ジュース101aを入れる器102は、釣鐘を逆さにしたような形状の器本体102aを有している。この器本体102aは、細長い脚102bを介して台座102cに支えられている。ガラス製の器102には、炭酸ジュース101aの他に、炭酸ジュース101aに完全に浸かるようにして炭酸補充媒体103も入れられている。炭酸補充媒体103は、二酸化炭素ガスをゲストガスとするガスハイドレート104を含む媒体である。このガスハイドレート104は、規定圧力(例えば20気圧)で加圧した規定温度(例えば−5℃)下で二酸化炭素ガスを水に混入させ、当該水を攪拌してスラリー状とし、これを脱水して固めて生成したペレット状のガスハイドレート104である。
【0017】
図3は、別の実施の一形態であって、再生可能な炭酸飲料101として炭酸入りカクテル101bへの適用例を示す斜視図である。炭酸入りカクテル101bを入れる器102は、三角錐を逆さにしたような形状の器本体102aを有している。この器本体102aは、細長い脚102bを介して台座102cに支えられている。ガラス製の器102には、炭酸入りカクテル101bの他に、カクテル101bに完全に浸かるようにして炭酸補充媒体103も入れられている。
【0018】
図4は、更に別の実施の一形態であって、再生可能な炭酸飲料101としてスパークリングワイン101cへの適用例を示す斜視図である。スパークリングワイン101cを入れる器102は、中央部が膨らんだ鼓形状の器本体102aを有している。この器本体102aは、細長い脚102bを介して台座102cに支えられている。ガラス製の器102には、スパークリングワイン101cの他に、スパークリングワイン101cに完全に浸かるようにして炭酸補充媒体103も入れられている。
【0019】
別の実施の形態として、ガスハイドレート104に対して、対象となる炭酸飲料101、例えば図2〜図4に例示する炭酸ジュース101a、炭酸入りカクテル101b、スパークリングワイン101cと異なる味覚をもつ成分を添加しておいても良い。これにより、炭酸補充媒体103の添加前と添加後とで異なる味覚を楽しむことができる。
【0020】
ここで、本実施の形態において重要なことは、炭酸補充媒体103が炭酸飲料101、例えば図2〜図4に例示した炭酸ジュース101a、炭酸入りカクテル101b、スパークリングワイン101cに完全に浸けられているということである。ガスハイドレート104は比重が小さく水を溶媒とする液体に浮くため、炭酸飲料101に単に添加するだけでは、充分に二酸化炭素ガスを液体中に溶かし込むことができない場合があるからである。これに対して、炭酸補充媒体103を炭酸飲料101に完全に浸けることによって、ガスハイドレート104に由来する二酸化炭素ガスを炭酸飲料101の液体中に溶かし込むことが可能となる。そのための方策として、本実施の形態では、二種類の方策を紹介する。
【0021】
一つ目の方策は、炭酸補充媒体103を収納可能であり、当該炭酸補充媒体103を収納した状態で炭酸飲料101よりも比重が大きく設定されている媒体収納部201を設け、この媒体収納部201に収納した状態で炭酸補充媒体103を炭酸飲料101に入れるという方策である。この方策について、図5ないし図7を参照して説明する。
【0022】
図5は、炭酸補充媒体103を収納保持する媒体収納部201としてカーゴ201aを用いた一例を示す側面図である。カーゴ201aは、金網によって形成された上面開口の筐体202にその上方に向けて延出するフック203が取り付けられ、更に筐体202の上面開口部分に蓋204が開閉自在に取り付けられて形成されている。フック203は、器102の縁に引っ掛けることができるような形状に形成されている。蓋204は、例えばクリック留め等の手法で閉状態に維持可能になっている。そこで、蓋204を開けて炭酸補充媒体103を収納した後、蓋204を閉めて炭酸飲料101に投入する。この場合、カーゴ201aは、複数個の炭酸補充媒体103を収納できる大きさに形成されているが、炭酸補充媒体103を最大収納個数分だけ収納したとしても、その状態で炭酸飲料101よりも比重が大きく設定されている。したがって、カーゴ201aを炭酸飲料101に投入することにより、炭酸補充媒体103を炭酸飲料101に完全に浸け込むことが可能である。炭酸飲料101に完全に浸け込まれた炭酸補充媒体103が二酸化炭素ガスと水とに分解すると、二酸化炭素ガスの気泡がカーゴ201aを構成する金網を抜け、炭酸飲料101の液体中に効果的に溶かし込まれる。
【0023】
ここで、図5に例示するカーゴ201aは、図2に例示する器102及び図4に例示する器102への適用に適した形状及び大きさに形成されている。これに対して、実施に際しては、カーゴ201aの形状及び大きさを工夫することで、例えば図3に例示する器102やその他の形状の各種の図示しない各種の器への適用に適したものとすることができる。
【0024】
図6は、炭酸補充媒体103を収納保持する媒体収納部201としてオブジェ201bを用いた一例を示す側面図である。オブジェ201bは、下ケース211と上ケース212とが接合固定され、全体が平べったい円筒形状をした構造体である。その故に、下ケース211と上ケース212との間には空間が形成される。このような下ケース211と上ケース212とは、一例としてネジ構造、別の一例として圧入構造等によって開閉が可能なように形成されている。そして、上ケース212には、複数個の気泡穴213が形成されている。これらの気泡穴213は、炭酸補充媒体103の直径よりも小径に形成されている。そこで、下ケース211から上ケース212を離反させて互いに内部を開放し、下ケース211の内部空間に炭酸補充媒体103を入れた上で上ケース212を下ケース211に取り付けて炭酸補充媒体103を収納した後、炭酸飲料101に投入する。この場合、オブジェ201bは、複数個の炭酸補充媒体103を収納できる大きさに形成されているが、炭酸補充媒体103を最大収納個数分だけ収納したとしても、その状態で炭酸飲料101よりも比重が大きく設定されている。したがって、オブジェ201bを炭酸飲料101に投入することにより、炭酸補充媒体103を炭酸飲料101に完全に浸け込むことが可能である。炭酸飲料101に完全に浸け込まれた炭酸補充媒体103が二酸化炭素ガスと水とに分解すると、二酸化炭素ガスの気泡がオブジェ201bに形成された気泡穴213を抜け、炭酸飲料101の液体中に効果的に溶かし込まれる。
【0025】
ここで、図6に例示するオブジェ201bは、チーズをモチーフとして用いた形状に形成されている。これに対して、実施に際しては、貝殻や珊瑚をモチーフにしたもの、イルカやクジラをモチーフにしたもの等、オブジェ201bを各種の形状に形成することも可能である。これにより、炭酸飲料101、例えば図2ないし図4に例示する炭酸ジュース101a、炭酸入りカクテル101b、スパークリングワイン101c等を飲むに際して、視覚的な楽しさを増すことができる。
【0026】
以上説明した媒体収納部201、つまり、図5に示すカーゴ201a又は図6に示すオブジェ201bを用いた炭酸飲料101の再生方法は、次の各工程を経て実行される。つまり、
(1)器102に注ぎ込まれた炭酸飲料101がこの器102に収納保持される工程
(2)二酸化炭素ガスをゲストガスとするガスハイドレート104を含む炭酸補充媒体103がこの炭酸補充媒体103を収納した状態で炭酸飲料101よりも比重が大きく設定されている媒体収納部201(カーゴ201a、オブジェ201b)に収納された状態で器102に投げ込まれてこの器102に収納保持される工程
(3)器102に収納保持されているガスハイドレート104が分解して器102に収納保持されている炭酸飲料101内に二酸化炭素ガスを放出する工程
という各工程である。このような各工程を経ることで、炭酸補充媒体103を炭酸飲料101に完全に浸け込むことが可能となる。その結果、炭酸補充媒体103に含まれているガスハイドレート104がぬるくなった飲料の温度を低下させることができる。また、ガスハイドレート104が分解されることで放出される二酸化炭素ガスが炭酸飲料101中に溶け込むことで、気が抜けた炭酸飲料101に二酸化炭素ガスを補充することができる。そこで、気が抜けてぬるくなった炭酸飲料101に対して媒体収納部201(カーゴ201a、オブジェ201b)に収納した炭酸補充媒体103を投入すれば、炭酸飲料101が持つ本来の爽快感を蘇らせることができる。あるいは、炭酸飲料101を器102に投入するに際して、あるいは、炭酸飲料101が飲用に供されて後すぐに、媒体収納部201(カーゴ201a、オブジェ201b)に収納した炭酸補充媒体103を投入すれば、炭酸飲料101が持つ本来の爽快感を比較的長時間にわたって持続させることができる。
【0027】
図7は、炭酸補充媒体103の各種適用例を示す模式図である。
【0028】
図7(a)に示す炭酸補充媒体103は、規定圧力(例えば20気圧)で加圧した規定温度(例えば−5℃)下で二酸化炭素ガスを水に混入させ、当該水を攪拌してスラリー状とし、これを脱水して固めて生成したペレット状のガスハイドレート104をそのまま炭酸補充媒体103とした一例である。
【0029】
これに対して、図7(b)に示す炭酸補充媒体103は、ガスハイドレート104を氷105の中に分散させた一例である。このような構造の炭酸補充媒体103を製造するには、まず、圧力容器(図示せず)の中に水をはり、二酸化炭素をバブリングさせる。10〜20気圧、−4〜−5℃程度の条件で撹拌を行なうことで、シャーベット状の物体が生じる。つまり、規定圧力(例えば10〜20気圧)で加圧した規定温度(例えば−4〜−5℃)下で二酸化炭素ガスを水に混入させ、当該水を攪拌してスラリー状とするわけである。一般的なガスハイドレート104では、このシャーベット状の物体を脱水して冷却することで、ペレット状にするのに対して、図7(b)に例示する炭酸補充媒体103を製造するには、脱水を行なわずに冷却する。これにより、氷105の中にガスハイドレート104を点在させることができる。
【0030】
炭酸飲料101に浸す炭酸補充媒体103として図7(a)に示す構造のものを用いた場合、炭酸補充媒体103を構成するガスハイドレート104は、投入する炭酸飲料101のその時点での温度にもよるが、比較的早期に分解して器102に収納保持されている炭酸飲料101内に二酸化炭素ガスを放出する。したがって、図7(a)に示す炭酸補充媒体103は、気が抜けてぬるくなった炭酸飲料101に投入するに際して用いるのに適している。
【0031】
これに対して、炭酸飲料101に浸す炭酸補充媒体103として図7(b)に示す構造のものを用いた場合、炭酸補充媒体103に含まれているガスハイドレート104は、氷105が溶けるまで分解しにくくなり、氷105が溶け出した頃から分解が進む。このため、分解が進むまでの間にある程度のタイムラグが生じ、分解が進みだせば器102に収納保持されている炭酸飲料101内に二酸化炭素ガスを放出する。したがって、図7(b)に示す炭酸補充媒体103は、炭酸飲料101を器102に投入するに際して炭酸飲料101に投入するか、あるいは、炭酸飲料101が飲用に供されて後すぐに炭酸飲料101に投入するような用いられ方が適している。
【0032】
炭酸補充媒体103を炭酸飲料101に完全に浸けるためのもう一つの方策は、炭酸補充媒体103それ自体に工夫を凝らす方策である。つまり、炭酸補充媒体103を、錘106と当該錘106の周囲を覆うように固化しているガスハイドレート104とによって構成し、全体として炭酸飲料101よりも比重を大きく設定するという方策である。この方策について、図8を参照して説明する。
【0033】
図8は、炭酸補充媒体103を示す模式図である。炭酸補充媒体103は、錘106を備え、この錘106の周囲を覆うようにガスハイドレート104を形成することによって形成されている。そして、ここで重要なことは、炭酸補充媒体103は、全体として投入される炭酸飲料101よりも比重が大きく設定されているということである。
【0034】
このような構造の炭酸補充媒体103を製造するには、まず、圧力容器(図示せず)の中に水をはり、二酸化炭素をバブリングさせる。10〜20気圧、−4〜−5℃程度の条件で撹拌を行なうことで、シャーベット状の物体が生じる。つまり、規定圧力(例えば10〜20気圧)で加圧した規定温度(例えば−4〜−5℃)下で二酸化炭素ガスを水に混入させ、当該水を攪拌してスラリー状とするわけである。その後、このスラリー中に錘106を付加し、脱水して冷却することによって、錘106を備えた炭酸補充媒体103を得ることができる。この場合に用いる錘106としては、水より比重が大きく、炭酸飲料101に溶けることなく生体にとって危険なものでなければ、特に制限されることなく各種のものを用いることができる。例えば、タルク・マグネシウム等からなる石、チタンやガラス等を錘106として用いることが可能である。
【0035】
以上説明した図8に示す錘106が付加された炭酸補充媒体103を用いた炭酸飲料101の再生方法は、次の各工程を経て実行される。つまり、
(1)器102に注ぎ込まれた炭酸飲料101がこの器102に収納保持される工程
(2)錘106とこの錘106の周囲を覆うように固化している二酸化炭素ガスをゲストガスとするガスハイドレート104とを含み、炭酸飲料101よりも比重が大きく設定されている炭酸補充媒体103が器102に投げ込まれてこの器102に収納保持される工程
(3)器102に収納保持されているガスハイドレート104が分解して器102に収納保持されている炭酸飲料101内に二酸化炭素ガスを放出する工程
という各工程である。このような各工程を経ることで、炭酸補充媒体103を炭酸飲料101に完全に浸け込むことが可能となる。その結果、炭酸補充媒体103に含まれているガスハイドレート104がぬるくなった飲料の温度を低下させることができる。また、ガスハイドレート104が分解されることで放出される二酸化炭素ガスが炭酸飲料101中に溶け込むことで、気が抜けた炭酸飲料101に二酸化炭素ガスを補充することができる。そこで、気が抜けてぬるくなった炭酸飲料101に対して図8に示す錘106が付加された炭酸補充媒体103を投入すれば、炭酸飲料101が持つ本来の爽快感を蘇らせることができる。あるいは、炭酸飲料101を器102に投入するに際して、あるいは、炭酸飲料101が飲用に供されて後すぐに、図8に示す錘106が付加された炭酸補充媒体103を投入すれば、炭酸飲料101が持つ本来の爽快感を比較的長時間にわたって持続させることができる。
【符号の説明】
【0036】
101 炭酸飲料
102 器
103 炭酸補充媒体
104 ガスハイドレート
105 氷
201 媒体収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器に入れられた炭酸飲料と、
二酸化炭素ガスをゲストガスとするガスハイドレートを氷で覆って形成した炭酸補充媒体と、
前記炭酸補充媒体を収納可能であり、当該炭酸補充媒体を収納した状態で前記炭酸飲料よりも比重が大きく設定されている媒体収納部と、
を備え、前記炭酸補充媒体は、前記媒体収納部に収納されて前記器内の炭酸飲料に入れられている、再生可能な炭酸飲料。
【請求項2】
器に注ぎ込まれた炭酸飲料が当該器に収納保持される工程と、
二酸化炭素ガスをゲストガスとするガスハイドレートを氷で覆って形成した炭酸補充媒体が当該炭酸補充媒体を収納した状態で前記炭酸飲料よりも比重が大きく設定されている媒体収納部に収納された状態で前記器に投げ込まれて当該器に収納保持される工程と、
前記器に収納保持されている前記ガスハイドレートが分解して前記器に収納保持されている前記炭酸飲料内に二酸化炭素ガスを放出する工程と、
を備える炭酸飲料の再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−50398(P2011−50398A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280077(P2010−280077)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【分割の表示】特願2006−150331(P2006−150331)の分割
【原出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】