説明

再生粒子の製造方法

【課題】硬質物質の含有量が低く、スラリー化するに容易で、白色度が高い再生粒子を安定して得ることができ、エネルギー効率に優れる再生粒子の製造方法とする。
【解決手段】被処理物10を、脱水及び熱処理して再生粒子を製造する方法であって、熱処理を、脱水後の被処理物10を乾燥する乾燥手段60と、乾燥された被処理物10を熱処理する第1の熱処理手段42と、第1の熱処理をされた被処理物10を第1の熱処理温度を超える温度で熱処理する第2の熱処理手段14と、第2の熱処理をされた被処理物10を第2の熱処理温度を超える温度で熱処理する第3の熱処理手段32とに分けて行う。また、第1の熱処理手段42は、炉本体の外表面上に外熱ジャケット43が設けられ、この外熱ジャケット43内に熱風が供給される外熱炉とし、外熱ジャケット43から排出された排ガスG7は、炉本体内に吹き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理して再生粒子を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、製紙スラッジから再生粒子を製造する方法として、様々な方法が提案されており、例えば、製紙スラッジを炭化し、燃焼する方法、炭化せず特定の条件で燃焼する方法等が存在する。また、これらの方法は、製紙スラッジを乾式酸化(いわゆる燃焼)するものであるが、乾式酸化と湿式酸化とを組み合せた方法も提案されている。さらに、過剰空気雰囲気下、燃焼温度650℃以下で製紙スラッジ中の易燃焼性有機物を燃焼除去する一次燃焼工程と、過剰空気雰囲気下、燃焼温度700℃〜850℃で製紙スラッジ中の難燃焼性有機物を燃焼除去する二次燃焼工程との2段階の燃焼工程を経ることで、効率的に白色度が高く高品位の燃焼灰を得ることができるとする提案もある(特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、これら従来の製造方法は、次のような問題を有する。
(1)高温燃焼により原料が黄変化し白色度の低下を招く。(2)原料の溶融によりゲーレナイト等の硬質物質(例えば、特許文献2参照。)が生成されやすく、抄紙設備でのワイヤー摩耗度が上昇する。(3)原料の溶融により凝集体を形成するため、後の微粉砕工程における粉砕エネルギーが増加し、処理効率が低下する。(4)原料の表面が高温に晒されて溶融されるため、原料内部まで燃焼反応(酸化反応)が進まず、有機物(カーボン)が残留する。結果として白色度の低下を招く。(5)得られた再生粒子をスラリー化したときに固まる。
【0004】
また、様々な工程から排出されたスラッジが混在する製紙スラッジは、再生粒子の原料となる微細な無機微粒子を含有するほか、古紙パルプとしては利用が困難な微細繊維や塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分を多く含むため、燃焼処理において製紙スラッジそのものが自ら燃焼(酸化)してしまう。したがって、製紙スラッジ一般を原料として再生粒子を製造すると、熱処理以上の発熱が生じ、原料の過燃焼を引き起こす。したがって、当該発熱による過燃焼を防止し、好ましくは、当該発熱をエネルギーとして有効利用することができないかが模索される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008‐207173号公報
【特許文献2】特開2008‐190049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする主たる課題は、製紙用填料又は塗工用顔料とするに好適な硬質物質の含有量が低く、スラリー化するに容易で、白色度の高い再生粒子を、安定して得ることができ、エネルギー効率に優れる再生粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決した本発明は、次の通りである。
〔請求項1記載の発明〕
製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理して再生粒子を製造する方法であって、
前記熱処理を、前記脱水後の被処理物を乾燥する乾燥手段と、この乾燥手段で乾燥された被処理物を熱処理する第1の熱処理手段と、この第1の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第1の熱処理温度を超える温度で熱処理する第2の熱処理手段と、この第2の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第2の熱処理温度を超える温度で熱処理する第3の熱処理手段と、を含む少なくとも4つの手段に分けて行い、
前記第1の熱処理手段及び前記第2の熱処理手段の少なくとも一方を、炉本体の外表面上に外熱ジャケットが設けられ、この外熱ジャケット内に熱風が供給される外熱炉とし、
前記外熱ジャケットから排出された排ガスを前記炉本体内に吹き込む、
ことを特徴とする再生粒子の製造方法。
【0008】
(作用効果)
第1及び第2の熱処理手段においては、被処理物が高発熱量成分を含み、発火のリスクが高いため、低酸素濃度であるのが好ましく、外熱炉が好適である。また、排ガスを炉本体内に吹き込むと、炉本体の内表面上と軸心部との間に生じる温度差が解消され、しかも、発火の原因となる熱分解ガスの排気が促進される。さらに、当該排ガスは、外熱ジャケットから排出されたものであり、外熱源としても利用されているため、熱エネルギーの有効利用となる。なお、炉本体内に供給するガスが高温であると被処理物が発火するおそれがあるが、外熱源として利用した後の排ガスを利用すると、当該発火のおそれが防止される。
【0009】
〔請求項2記載の発明〕
前記炉本体内又は他の熱処理手段の炉本体内から排出された排ガスを、前記外熱ジャケット内に供給する熱風として利用する、請求項1記載の再生粒子の製造方法。
【0010】
(作用効果)
炉本体内から排出された排ガスは酸素濃度が低下している。したがって、当該排ガスを外熱ジャケット内に供給し、この外熱ジャケットから排出された排ガスを炉本体内に供給すると、炉本体内に供給するガス中の酸素を原因として被処理物が発火するのが防止される。
【0011】
〔請求項3記載の発明〕
前記第1の熱処理手段及び前記第2の熱処理手段の両方を炉本体の外表面上に外熱ジャケットが設けられ、この外熱ジャケット内に熱風が供給される外熱炉とし、前記第3の熱処理手段を炉本体内に熱風が吹き込まれる内熱炉とするとともに、
前記第3の熱処理手段の炉本体内から排出された排ガスを、前記第2の熱処理手段の外熱ジャケット内に供給し、
当該第2の熱処理手段の炉本体内から排出された排ガスの一部を前記第1の熱処理手段の外熱ジャケット内に供給し、
当該第1の熱処理手段の炉本体内から排出された排ガス、前記第2の熱処理手段の炉本体内から排出された排ガスの残部、及び、前記第2の熱処理手段の外熱ジャケットから排出された排ガスを、前記乾燥手段の熱源として利用し、
前記第1の熱処理手段の外熱ジャケットから排出された排ガスを、当該第1の熱処理手段の炉本体内に吹き込む、
請求項1又は請求項2記載の再生粒子の製造方法。
【0012】
(作用効果)
第2の熱処理手段の炉本体内から排出された排ガスの一部を第1の熱処理手段の外熱ジャケット内に供給し、この外熱ジャケットから排出された排ガスを第1の熱処理手段の炉本体内に吹き込むと、第1の熱処理手段において請求項1又は請求項2記載の発明と同様の作用効果が得られる。しかも、第2の熱処理手段においては第1の熱処理手段における熱処理温度を超える温度で熱処理がされるため、第1の熱処理手段の外熱ジャケット内に供給する排ガスを第2の熱処理手段の炉本体内から排出された排ガスとする構成によると、第1の熱処理手段の外熱ジャケット内に供給する排ガスを加熱する必要がなくなり、あるいは加熱を弱いものとすることができ、熱エネルギー効率が向上する。
【0013】
〔請求項4記載の発明〕
前記第2の熱処理手段の外熱ジャケットから排出された排ガスを、当該第2の熱処理手段の炉本体内に吹き込むとともに、
前記第1の熱処理手段の炉本体外表面の温度が250〜400℃、前記第2の熱処理手段の炉本体外表面の温度が360〜550℃、前記第3の熱処理手段の炉本体内の温度が550〜780℃となり、かつ、前記第1熱処理手段の炉本体内に吹き込む排ガスの温度が150〜350℃、前記第2熱処理手段の炉本体内に吹き込む排ガスの温度が260〜450℃となるように制御する、
請求項3記載の再生粒子の製造方法。
【0014】
(作用効果)
第2の熱処理手段の外熱ジャケットから排出された排ガスを、当該第2の熱処理手段の炉本体内に吹き込むと、第2の熱処理手段においても、請求項1又は請求項2記載の発明と同様の作用効果が得られる。そして、この際、温度範囲が上記範囲となるように制御すると、製紙用填料又は塗工用顔料とするに好適な再生粒子が、より確実に、かつより効率的に得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、製紙用填料又は塗工用顔料とするに好適な硬質物質の含有量が低く、スラリー化するに容易で、白色度の高い再生粒子を、安定して得ることができ、エネルギー効率に優れる再生粒子の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】再生粒子の製造設備フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
〔本発明の位置付け等〕
製紙スラッジに含有される有機物は、出所の違いや製紙工場内での抄造品種、定期修理や生産変動などにより多様に変化し、その品質変動が製紙スラッジの熱量変動を招き、燃焼温度・時間の変動を来たし、最終的に得られる再生粒子の品質が低下する問題、例えば、硬質物質の含有量が増えて抄紙設備が磨耗し易くなる、均質にスラリー化するのが困難になる、白色度が不均一となる等の問題が生じる。
【0018】
そこで、本発明者らは、種々の検討を重ね、結果、製紙スラッジを主原料とする被処理物の熱処理を、脱水後の被処理物を乾燥する乾燥手段と、乾燥された被処理物を熱処理する第1の熱処理手段と、この第1の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第1の熱処理温度を超える温度で熱処理する第2の熱処理手段と、この第2の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第2の熱処理温度を超える温度で熱処理する第3の熱処理手段とに分けて行うことで、再生粒子の品質低下の問題を解決できることを見出した。
【0019】
また、このことを前提に、第1の熱処理手段や第2の熱処理手段を、炉本体の外表面上に外熱ジャケットが設けられ、この外熱ジャケット内に熱風が供給される外熱炉とし、外熱ジャケットから排出された排ガスを炉本体内に吹き込むことで、再生粒子の品質低下の問題をより確実に解決することでき、しかも、エネルギー効率に優れることを見出した。
【0020】
この点、熱処理を、乾燥のほか、第1〜第3の熱処理に分ける利点は、次のとおりである。すなわち、製紙スラッジは、各種有機物を含有し、この有機物のなかには、紙由来の220℃近傍で発熱量のピークをもつアクリル系有機物、320℃近傍で発熱量のピークをもつセルロース、420℃近傍で発熱量のピークをもつスチレン系有機分が含まれ、例えば、1000〜2000cal/gの発熱量を有する。従来の再生粒子の製造方法においては、これらの有機分を他の有機分と一緒に燃焼除去する方策がとられていた。しかしながら、本発明者等は、以上の各有機物が上記温度の近傍で発熱量のピークをもつ発熱量が高い物質であること、200〜300℃で熱分解される有機分を燃焼させる際に発火・過燃焼が生じ、燃焼制御が困難となり、白色度の低下のみならず、硬質物質の生成をまねくことを見出し、まず、第1の熱処理において、所定の高発熱量成分(アクリル系有機物及びセルロース)を被処理物中から熱処理除去することで、過燃焼を抑え、硬質物質の生成を抑制できることを見出した。
【0021】
また、従来の再生粒子の製造方法においては、被処理物中の微細繊維や有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分等を効率よく燃焼させるために、水分率を40%未満に脱水及び乾燥させ、高温で熱処理する方策がとられていた。これに対し、第1の熱処理において被処理物中の200〜300℃で熱分解・揮発蒸散する有機物を熱分解ガス化してしまうと、第2の熱処理においては、安定的に被処理物中のスチレン系有機物を熱分解ガス化することができ、被処理物の過燃焼や微粉化が抑制される。しかも、第3の熱処理においては、被処理物中の残カーボン等を含む有機物を、効率良く熱処理除去することができ、また、過燃焼によって生じる硬質物質の生成を抑えることができる。さらに、セルロースの熱分解ガスの発火温度はスチレンの熱分解温度を下回るため、第1の熱処理においてセルロースを熱分解除去してしまい、スチレンは第2の熱処理において熱分解するのが好適である。
【0022】
一方、本発明においては、乾燥手段を除く各熱処理手段において、キルン炉を用いるのが好適である。この理由は、次のとおりである。
ストーカー炉(固定床)は、燃焼度合い調整が困難であり、再生粒子が不均一となるうえ、火格子間のクリアランスから落塵を生じる。火格子を通し被処理物の下から空気を吹き上げ、燃焼させるため、炭酸カルシウム等が飛灰となり排ガスとともに排ガス設備へ送られ、歩留りが低下する。ストーカ(階段状)を、所定幅で被処理物を通過させながら熱処理するため、撹拌が不十分で幅方向で熱処理にばらつきが生じる。
流動床炉は、珪砂等の流動媒体が被処理物中に混入するため、品質の低下をまねく、均一な撹拌ができないとの問題を有する。硅砂等と被処理物とを分離し、硅砂等は炉内へ戻し被処理物のみを取り出すが、被処理物も硅砂等と同程度の粒径であるため分離が困難である。浮遊した状態で熱処理するため、熱処理の度合い調整が困難で、品質のばらつきが生じる。硬度の高い珪砂等との摩擦、衝突により被処理物が微粉化され飛灰となって系外へ排出されるため、歩留りが低下する。
サイクロン炉は、被処理物が炉内を一瞬で通過するため、有機物を十分に熱処理することができず、白色度が低下する。また、風送によるため、細かい粒子がサイクロンで分離されず、排ガスと一緒に排ガス処理工程に回り、歩留りが低下する。
以上から、乾燥手段を除く各熱処理手段においては、キルン炉が好適な熱処理手段として選択された。
【0023】
〔本発明の形態例〕
次に、本発明の実施の形態を、再生粒子の製造設備フローの構成例を示した図1を参照しながら説明する。なお、本形態は、排ガスの熱源としての利用にも特徴が存在するが、この点については、最後に連続して説明する。
【0024】
(被処理物)
本形態の被処理物10は、製紙スラッジを主原料(50質量%以上)とする。当該製紙スラッジは、例えば、パルプ等の繊維成分、澱粉や合成樹脂接着剤等の有機物、填料や塗工用顔料等の無機物などが利用されずに廃水中へ移行したもの、パルプ化工程等で発生するリグニンや微細繊維、古紙由来の填料や印刷インキ、生物廃水処理工程から生じる余剰汚泥などからなる。また、例えば、古紙パルプ製造工程において印刷インキ等を除去する脱墨工程や製紙用原料を回収して洗浄する洗浄工程に由来する固形成分等を含有していてもよい。
【0025】
ただし、古紙パルプ製造工程においては、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産するために、選定、選別を行った一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類や比率、量等は、基本的に一定になる。しかも、未燃率の変動要因となるビニールやフィルム等のプラスチック類が古紙中に含まれていても、これらは脱墨フロスが生成される脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で除去される。したがって、工場排水工程や製紙原料調成工程等の他の工程で発生する製紙スラッジと比べて、脱墨フロスは、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための被処理物10の原料となる。
【0026】
(脱水工程)
被処理物10は、例えば、公知の脱水装置を用いて、脱水する。本形態においては、被処理物10を、例えば、スクリーンによって水分率65〜90%まで脱水し、次いで、スクリュープレスによって水分率30〜60%まで、好ましくは30〜50%まで、より好ましくは35〜45%まで脱水する。ここで水分率は、定温乾燥機を用い、乾燥機内に試料(被処理物)を静置し、約105℃で6時間以上保持することで質量変動を認めなくなった時点を乾燥後質量とし、下記式にて乾燥前後の質量測定結果より算出した値である。
水分率(%)=(乾燥前質量−乾燥後質量)÷乾燥前質量×100
【0027】
脱水後の被処理物10の水分率が60%を超えると、乾燥装置60における乾燥のためのエネルギーロスが大きくなる。しかも、乾燥装置60における乾燥温度の変動が大きくなるため、乾燥ムラが生じるおそれがある。特に、乾燥装置60に気流乾燥装置を用いる場合は、乾燥が十分に進む前に被処理物10が乾燥装置60から排出されてしまうため、被処理物10が十分に解れないおそれや、第1の熱処理炉42におけるエネルギーロスの原因、熱処理変動の原因などとなるおそれがある。他方、脱水後の被処理物10の水分率が30%未満となるまで脱水をすると、被処理物10が高圧縮により、いわば固まった状態となるため、特に乾燥装置60として気流乾燥装置を用いたとしても被処理物10が解れないおそれがある。また、本形態のように被処理物10の脱水を多段で行い、急激な脱水を避けると、無機物の流出を抑制することができ、しかも、被処理物10のフロックが硬くなり過ぎるのを抑制することができる。
【0028】
(解し工程)
脱水後の被処理物10は、貯槽12から切り出し、乾燥工程に送り、乾燥する。ただし、この乾燥をするに先立って、例えば、撹拌機や機械式ロール等によって、粒子径50mm以上の割合が、30〜70質量%となるように、好ましくは40〜70質量%となるように、より好ましくは50〜70質量%となるように解して(ほぐして)おくと好適である。ここで「粒子径50mm以上の割合」は、被処理物全体の質量を100とした場合に、目穴50mmの篩を通過しなかった被処理物の質量割合である。この測定に際しては、JIS Z 8801‐2:2000に基づき、金属製の板ふるいを用いる。
【0029】
乾燥する際の被処理物10には、大きな粒子径の被処理物が存在しない方が好ましく、具体的には粒子径50mm以上の割合が70質量%以下であるのが好ましい。もっとも、本形態においては、特に好ましい形態として乾燥工程でロータリーキルン等を用いず、気流乾燥装置を用いるため、被処理物10を過度に解す必要はなく、粒子径50mm以上の割合が30質量%未満となるまで解さなくとも、均質な製品を得ることができる。
【0030】
なお、被処理物10が、脱水後において既に「粒子径50mm以上の割合が70質量%以下」となっている場合は、解し工程を省略することもできる。この場合は、脱水後の被処理物10を、そのままの状態で「粒子径50mm以上の割合が70%以下」の被処理物10として、乾燥工程に送ることができる。
【0031】
(乾燥工程)
脱水後の被処理物10は、適宜解す等した後、乾燥手段たる乾燥装置60に供給する。この乾燥装置60の形態は特に限定されず、例えば、ストーカー炉、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉等の公知の乾燥装置を用いることができる。ただし、本形態においては、乾燥装置60として、被処理物10を熱気流に同伴させて乾燥する「気流乾燥装置」を用いる。気流乾燥装置を用いると、被処理物10が、乾燥されるのと同時に、圧縮力が加えられることなく大きな分散力のもとで均一に解されるため、後段で行う熱処理、特に第1の熱処理が均一かつ確実に行われるようになり、品質が均一化した再生粒子を安定的に製造することができるようになる。
【0032】
この点、乾燥に先立って後段の熱処理に好適な状態となるまで被処理物を均一に解すのは、困難な場合がある。また、乾燥に先立って被処理物を解すのであれば、脱水率を高めておく必要があるが、脱水率を高めると被処理物が高圧縮化され、被処理物の乾燥効率が部分的に低下するおそれがあり、乾燥処理の不均一化、ひいては製品の不均一化をまねくおそれがある。他方、乾燥後に被処理物を解すのでは、不均一な状態にある被処理物を乾燥することになるため、乾燥が均一に行われなくなり、熱処理も均一に行われなくなるおそれがある。
【0033】
気流乾燥装置としては、例えば、新日本海重工業社製の商品名:クダケラ等の公知の装置のほか、これらを改良した装置等も用いることができる。
【0034】
気流式の乾燥装置60は、貯槽12から脱水後の被処理物10が供給されるととともに、後述する第1の排ガス流路R1から排ガス(混合ガス)Gが熱源として吹き込まれ、この吹き込まれた排ガスGによって生じる熱気流に供給された被処理物10が同伴するように構成されている。したがって、例えば、当該排ガスGの温度や流量、流速等を調節して熱気流を制御することにより、被処理物10の乾燥状態や解れ状態を調節することができる。
【0035】
排ガスGの制御等は、粒子径50mm以上の被処理物10が存在しなくなるように、かつ被処理物10の平均粒子径が1〜7mmとなるように、好ましくは1〜5mmとなるように、より好ましくは1〜3mmとなるように行うと好適である。ここで、被処理物10の「平均粒子径」は、目穴の異なる篩で篩い分けを行い、各篩い分けを行った被処理物の質量を測定し、この測定値の合計値が全体の50質量%に相当する段階における篩の目穴の大きさであり、JIS Z 8801‐2:2000に基づき、金属製の板ふるいを用いて測定した値である。なお、被処理物10の「粒子径50mm以上の割合」は、前述したとおりである。
【0036】
被処理物10の平均粒子径が1mm未満であると、第1の熱処理において過剰な熱処理が生じ易くなる。他方、被処理物10の平均粒子径が7mmを超え、あるいは粒子径50mm以上の被処理物10が存在すると、被処理物10を表面部から芯部まで均一に熱処理するのが困難になる。
【0037】
本形態において、熱気流の温度は、特に限定されるものではないが、排ガスGの温度(乾燥装置60に排ガスGとは別に熱風や希釈空気等を吹き込む場合は、全ガスの平均温度。以下、「流入ガスGの温度」ともいう。)を200〜600℃とし、かつ乾燥装置60からの流出ガス(排ガス)G6の温度が500℃以下となるように制御するのが好ましく、流入ガスGの温度を300〜500℃とし、かつ乾燥装置60からの流出ガスG6の温度が400℃以下となるように制御するのがより好ましく、流入ガスGの温度を300〜400℃とし、かつ乾燥装置60からの流出ガスG6の温度が300℃以下となるように制御するのが特に好ましい。この形態によると、わずか1〜3秒で被処理物10の水分率が、好ましくは0〜5%になるまで、より好ましくは0〜3%になるまで、特に好ましくは0〜1%になるまで乾燥することができる。しかも、この乾燥は、熱気流によって被処理物10が解されながら行われるため、被処理物10全体にわたって均一な水分率である。加えて、被処理物10は、水分が蒸発した次の瞬間には乾燥装置60から排出されているため、意図しない有機物の熱分解・燃焼等の熱処理が生じるおそれもない。
【0038】
乾燥装置60から排出された流出ガスG6は、サイクロン等の集塵手段により排ガスG6中に混入した被処理物10を回収した後、脱臭装置、バグフィルター等のガス処理装置を適宜組み合わせて構成したガス処理設備22を通過させ、煙突30から排出する。乾燥装置60における被処理物10からの水分の蒸発により排ガスG6の温度は低下しているので、通常の排ガス処理設備に設ける熱交換器を設けないこともできる。また、乾燥装置60に供給する排ガスGは、後述するように、有機物の熱分解ガスを十分に高温で燃焼させたものが主であるため、再燃焼炉等のガス処理装置を設けなくとも排ガスG中の有害物質を十分に除去することができる。なお、再燃焼炉を設けたとしても、再燃焼炉で燃焼された被処理物10は過燃焼により硬質かつ低白色度となっているため、原料として利用することができない。
【0039】
(第1の熱処理工程)
乾燥後の被処理物10は、第1の熱処理工程に送られ、図示しない装入機等によって第1の熱処理手段たる第1の熱処理炉42に装入される。この第1の熱処理炉42としては、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉を用いる。第1の熱処理炉42に供給される被処理物10は、アクリル系有機物やセルロース等の高発熱量成分を含有しているため、被処理物10の発火防止という観点から、炉本体内を低酸素濃度とするのが好ましく、外熱炉を用いる。また、被処理物10の乾燥(水分の蒸発)及び熱分解・燃焼等を同一の装置(炉)で行う場合は、異質な熱処理を連続して行うことになり、熱処理温度の制御が複雑になる。しかしながら、第1の熱処理に先立って被処理物10を乾燥していると、熱処理温度の制御が容易である。
【0040】
第1の熱処理炉42においては、炉本体の外表面上に、外熱ジャケット43が設けられている。この外熱ジャケット43には、後述する第2の排ガス流路R2から排ガスG2が供給され、この排ガスG2による間接加熱により、炉本体の内表面上に堆積した被処理物10が間接的に加熱される(外熱式)。再生粒子の製造のみを目的とするのであれば、排ガスG2の供給に変えて、電気ヒーター等を用いることもできるが、排ガスG2(エネルギー)の有効利用という観点からは、本形態による構成が好適である。
【0041】
熱処理を少なくとも4つの熱処理手段に分けて行うこととの関係において、第1の熱処理炉42においては、炉本体外表面の温度が250〜400℃となるように加熱するのが好ましく、300〜360℃となるように加熱するのがより好ましく、310〜350℃となるように加熱するのが特に好ましい。炉本体外表面の温度が250℃以上であると、被処理物10中のアクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われる。また、アクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われることで、第2の熱処理炉14及び第3の熱処理炉32における熱処理制御が容易となり、白色度低下の原因となる炭化物の生成や、過燃焼による硬質物質の生成を抑制することができる。さらに、アクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われることで、第2の熱処理炉14や第3の熱処理炉32において、スチレン系有機物や残カーボン等の有機物を緩やかに熱処理することができ、残カーボンの生成を抑制することができる。もっとも、炉本体外表面の温度が400℃を超えると、炉本体内の熱分解ガスが発火するおそれがあり、また、第2の熱処理炉14における熱処理エネルギーが増加し、さらに、難燃性カーボンが生成し易くなり、製紙用の填料や顔料等として必要な特性を備えた再生粒子を安定して得ることができなくなるおそれがある。なお、第1の熱処理工程の前段に乾燥工程を設けない場合においては、本熱処理工程において被処理物10を乾燥させるために、熱処理温度をより高く設定する必要があり、以上のようなリスクを伴うことになる。
【0042】
以上のように第1の熱処理炉42は外熱炉とするが、本形態においては、外熱ジャケット43から排出された排ガスG7を、排ガス流路R7を通して当該第1の熱処理炉42の炉本体内に吹き込む。この吹き込みによって、炉本体の内表面上と軸心部との間に生じる温度差が解消され、しかも、発火の原因となる熱分解ガスの炉本体内からの排気が促進される。さらに、当該排ガスG7は、外熱ジャケット43から排出された排ガスであり、外熱源として利用されたものであるため、エネルギーの有効利用となる。
【0043】
当該排ガスG7は、炉本体外表面の温度よりも低い温度、好ましくは150〜350℃、より好ましくは175〜325℃、特に好ましくは200〜300℃として、炉本体内に吹き込む。排ガスG7の温度が350℃を上回ると、炉本体内の被処理物10が発火するおそれがある。他方、排ガスG7の温度が150℃を下回ると、炉本体の内表面上と軸心部との間に生じる温度差が解消されず、かえって広がるおそれがある。
【0044】
排ガスG7の酸素濃度を1.0〜20.0%、好ましくは2.0〜18.0%、より好ましくは4.0〜18.0%に調節し、第1の熱処理炉42の炉本体内から排出される排ガス(流出ガス)G1の酸素濃度が0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは3.0〜15.0%となるように管理すると好適である。ここで、酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした測定試料の酸素濃度を測定した値である。
【0045】
被処理物10の発火等を原因とする過剰な熱処理の防止という観点からは、低酸素濃度であるのが好ましく、排ガスG7の酸素濃度を20.0%以下に調節し、かつ流出ガスG1の酸素濃度も20.0%以下となるように管理するのが好ましい。もっとも、排ガスの酸素濃度が1.0%未満、あるいは流出ガスG1の酸素濃度が0.1%未満であると、有機物の炭化が促進されるため、後工程である第3の熱処理工程において白色度が得難くなるおそれがある。しかも、アクリル系有機物やセルロース等の熱処理が充分に進まず、発熱量の減少率を所定の範囲に調節することが困難となるおそれもある。なお、炭化物はいったん燃え始めると高温となって温度制御ができなくなるという特性を有するため、有機物の炭化が促進されると、いずれかの熱処理において温度制御が困難になる。
【0046】
なお、第1の熱処理炉42の炉本体内の酸素濃度は、アクリル系有機物やセルロース等の熱処理に際して酸素消費され変動する可能性があるため、本形態のように、排ガスG7の酸素濃度の調節及び流出ガスG1の酸素濃度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において酸素濃度が、通常0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは3.0〜15.0%に調節される。
【0047】
第1の熱処理炉42においては、被処理物10の発熱量が20〜90%減少するように、好ましくは50〜80%減少するように、より好ましくは50〜70%減少するように熱処理する。発熱量の減少率が90%以下であると、過剰な熱処理が抑えられ、硬質物質の生成が抑制される。この点、90%を超える発熱量の減少は、被処理物10中のスチレン系有機物までもが熱分解していることを意味し、したがって炉本体内がセルロース等の熱分解ガスが発火しうる状態(つまり、高温状態)になっていることを意味する。他方、発熱量の減少率が20%未満であると、被処理物10中の高発熱量成分であるアクリル系有機物が残留し、第2の熱処理炉14における熱処理温度の変動が大きなものとなるおそれがある。ここで、発熱量の減少率は、第1の熱処理炉42に供給される被処理物10の発熱量と、第1の熱処理炉42から排出される被処理物10の発熱量とを比較した値である。この発熱量は、熱量計(燃研式デジタル熱量計、吉田製作所製)を用いて測定した値である。
【0048】
第1の熱処理炉42において、発熱量を20〜90%減少するとともに、発熱量が1000cal/g未満、好ましくは300〜500cal/gとなるように熱処理すると、第2の熱処理炉14における炉本体内温度の変動幅を10〜40℃の範囲に抑制し易くなり、得られる再生粒子を均質化するに有用である。この点、当該炉本体内温度の変動幅が40℃を超えると、得られる再生粒子が硬い・柔らかい等のばらつきや白色度のばらつきを有するものとなるおそれがある。他方、当該炉本体内温度の変動幅を10℃未満にまで抑制するのは、現実的ではない。
【0049】
第1の熱処理炉42においては、被処理物10の未燃率が13〜30質量%となるように、好ましくは14〜26質量%となるように、より好ましくは15〜23質量%となるように熱処理を行うと好適である。ここで、未燃率は、約600℃に温度調整した電気炉で,2時間燃焼した際の減量割合を測定した値である。未燃率が30質量%以下となるように熱処理を行うことにより、第2の熱処理炉14における熱処理を緩慢に行うことができるようになる。もっとも、未燃率が13質量%未満となるまで熱処理を行うと、第1の熱処理炉42におけるエネルギーコストが高くなる。
【0050】
第1の熱処理炉42においては、被処理物10の滞留時間を30〜120分、好ましくは45〜105分、より好ましくは60〜90分とすると好適である。滞留時間を30分以上とすることにより、被処理物10に含まれるアクリル系有機物、セルロースが緩慢に熱分解され、残カーボンの生成が抑制される。この点、滞留時間を30分未満とすると、十分な熱処理が行われず、残カーボンの割合が多くなる。他方、滞留時間が120分を超えると、過剰な熱処理によって難燃性カーボンが生成され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。ここで、滞留時間は、色で識別できる金属片を被処理物10の供給口から炉本体内に投入し、被処理物10の排出口から排出されるまでの実測時間である。
【0051】
(第2の熱処理工程)
被処理物10は、第2の熱処理工程に送るに先立って、平均粒子径を1〜7mm、好ましくは1〜5mm、より好ましくは1〜3mmに調節しておくと好適である。ただし、本形態においては、第1の熱処理工程に先立って乾燥工程を設けており、この乾燥工程において被処理物10が解れるように構成されている。したがって、被処理物10の平均粒子径は、通常上記の範囲内にあり、本粒子径の調節を省略することができる。
【0052】
第2の熱処理工程においては、被処理物10が第2の熱処理手段たる第2の熱処理炉14に装入される。この第2の熱処理炉14としては、得られる再生粒子の品質や後述する排ガスG3(エネルギー)の有効利用という観点から、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉を用いる。また、第2の熱処理炉14は、本形態のように第1の熱処理炉42と同形状のものを用いることもできるが、例えば、軸方向の長さが異なるキルン炉を用いて、被処理物10の滞留時間を異なるものとすることなどもできる。
【0053】
本形態の第2の熱処理炉14は、炉本体の外表面上に、外熱ジャケット15が設けられている。この外熱ジャケット15には、後述する第3の排ガス流路R3から排ガスG3が供給され、この排ガスG3による間接加熱により、炉本体の内表面上に堆積した被処理物10が間接的に加熱される(外熱式)。再生粒子の製造のみを目的とするのであれば、排ガスG3の供給に変えて、電気ヒーター等を用いることもできるが、排ガスG3(エネルギー)の有効利用という観点からは、本形態による構成が好適である。
【0054】
なお、排ガスG3は第3の熱処理炉32の排ガスであるため、瞬間的に(一時的に)温度変動が生じる可能性がある。そして、第3の熱処理炉32は高温で熱処理を行うため、その分、当該温度変動の幅が大きなものとなる可能性がある。しかしながら、排ガスG3が外熱ジャケット15内に供給され、被処理物10が間接加熱される形態によれば、当該温度変動が緩和される。また、外熱炉を用いると、炉本体内の酸素濃度を低く保つことができるため、被処理物10の発火を可及的に防止することができる。なお、長期的な温度低下等に対しては、補助熱源等を設けておくことにより、対応することができる。
【0055】
熱処理を少なくとも4つの手段に分けて行うこととの関係において、炉本体外表面の温度が360〜550℃となるように加熱するのが好ましく、360〜500℃となるように加熱するのがより好ましく、400〜500℃となるように加熱するのが特に好ましい。炉本体外表面の温度が360℃以上であると、被処理物10中のスチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われる。また、スチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われることで、第3の熱処理炉32における熱処理制御が容易となり、白色度低下の原因となる炭化物の生成や、過燃焼による硬質物質の生成を抑制することができる。さらに、スチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われることで、第3の熱処理炉32において、残カーボン等の有機物を緩やかに燃焼することができ、残カーボンの生成を抑制することができる。他方、炉本体外表面の温度が550℃以下であると、本工程における残カーボンの生成を抑制することができるほか、有機物の熱処理が緩慢に行われ、被処理物10の微粉化が抑制され、また、凝集体を形成し、あるいは硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する被処理物10の熱処理度合いや粒揃えを容易に、かつ安定的に制御することができる。これに対し、炉本体外表面の温度が360℃を下回ると、被処理物10中のスチレン系有機物を十分に熱処理(熱分解等)することができなくなるおそれがある。他方、炉本体外表面の温度が550℃を上回ると、被処理物10の過剰な熱処理が行われてしまうおそれがある。また、被処理物10の粒揃えが進行するよりも早くに燃焼が局部的に進むため、粒子表面と芯部との未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。
【0056】
後述するように、本形態では、外熱ジャケット15から排出された排ガスG5を前述乾燥手段60の熱源として利用するが、第1の熱処理炉43におけるのと同様に、第2の熱処理炉14の炉本体内に吹き込むこともできる(このための排ガス流路R8を図中に一点鎖線で示している。)。この吹き込みによって、炉本体の内表面上と軸心部との間に生じる温度差が解消され、しかも、発火の原因となる熱分解ガスの炉本体内からの排出が促進される。さらに、当該排ガスG5は、外熱ジャケット15から排出された排ガスであり、外熱源として利用されたものであるため、エネルギーの有効利用となる。
【0057】
この場合、当該排ガスG5は、炉本体外表面の温度よりも低い温度、好ましくは260〜450℃、より好ましくは300〜420℃、特に好ましくは360〜400℃として、炉本体内に供給すると好適である。炉本体内に供給する排ガスG5の温度が450℃を上回ると、被処理物10が発火するおそれがある。他方、排ガスG5の温度が260℃を下回ると、炉本体の内表面上と軸心部との間に生じる熱処理温度差が解消されず、かえって広がるおそれがある。
【0058】
第2の熱処理炉14の炉本体内に排ガスG5を吹き込む場合、当該排ガスG5の酸素濃度を5.0〜20.0%、好ましくは6.0〜18.0%、より好ましくは7.0〜18.0%に調節しつつ、第2の熱処理炉14の炉本体内から流出される排ガス(流出ガス)G2の酸素濃度が0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは3.0〜15.0%となるように管理すると好適である。ここで、酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした測定試料の酸素濃度を測定した値である。
【0059】
被処理物10の発火等を原因とする過剰な熱処理の防止という観点からは、低酸素濃度であるのが好ましく、排ガスG5の酸素濃度を20.0%以下に調節し、かつ流出ガスG2の酸素濃度も20.0%以下となるように管理するのがより好ましい。もっとも、排ガスG5の酸素濃度が5.0%未満、あるいは流出ガスG2の酸素濃度が0.1%未満であると、スチレン系有機物等の熱処理が充分に進まず、発熱量の減少率を所定の範囲に調整するのが困難で白色化が進まないおそれがある。
【0060】
なお、第2の熱処理炉14の炉本体内の酸素濃度は、スチレン系有機物等の熱処理に際して酸素消費され、変動を生じる可能性がある。したがって、本形態のように、排ガスG5の酸素濃度の調節及び流出ガスG2の酸素濃度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において酸素濃度が、通常0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは4.0〜15.0%に調節される。
【0061】
第2の熱処理炉14においては、被処理物10の滞留時間を30〜120分、好ましくは40〜100分、より好ましくは40〜80分とすると好適である。滞留時間を30分以上とすることにより、被処理物10に含まれるスチレン等由来の有機物が緩慢に熱処理され、残カーボンの生成が抑制される。この点、滞留時間を30分未満とすると、十分な熱処理が行われず、残カーボンの割合が多くなる。他方、滞留時間が120分を超えると、過剰な熱処理によって難燃性カーボンが生成され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。
【0062】
第2の熱処理炉14においては、被処理物10の未燃率が2〜20質量%となるように、好ましくは5〜17質量%となるように、より好ましくは7〜12質量%となるように熱処理を行うと好適である。ここで、未燃率は、約600℃に温度調整した電気炉で,2時間燃焼した際の減量割合を測定した値である。未燃率が20質量%以下となるように熱処理を行うことにより、第3の熱処理炉32における熱処理(燃焼等)を短時間で効率よく行うことができるようになり、得られる再生粒子の白色度を70%以上、好ましくは80%以上の高白色度とすることができる。もっとも、未燃率が2質量%未満となるまで熱処理を行うと、第2の熱処理炉14におけるエネルギーコストが高くなり、また、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬度が高くなるなど、再生粒子の品質低下につながるおそれがある。
【0063】
(第3の熱処理工程)
被処理物10は、第3の熱処理工程に送るに先立って、平均粒子径を5mm以下、好ましくは1〜4mm、より好ましくは1〜3mmに調節しておくと好適である。平均粒子径が1mm未満であると、第3の熱処理炉32において被処理物10が過燃焼するおそれがある。他方、平均粒子径が5mmを超えると、残カーボンの熱処理(燃焼等)が困難となり、芯部まで熱処理が進まず、得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがある。また、この被処理物10の粒揃えは、粒子径1〜5mmの割合が、70質量%以上となるように、好ましくは75〜95質量%となるように、より好ましくは80〜95質量%となるように行うと好適である。ただし、本形態においては、第1の熱処理工程に先立って乾燥工程を設けており、この乾燥工程において被処理物10が解れるように構成されている。したがって、被処理物10の平均粒子径や粒揃えは、各熱処理工程を経ることにより、通常上記の範囲内となり、本平均粒子径や粒揃えの調節を省略することができる。
【0064】
第3の熱処理工程においては、被処理物10が図示しない装入機等によって第3の熱処理手段たる第3の熱処理炉32に装入される。この第3の熱処理炉32としては、エネルギーの有効利用という観点から、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉を用いる。
【0065】
第3の熱処理炉32としては、外熱キルン炉を用いることも考えられ、外熱キルン炉は熱処理温度の制御が容易であるとの利点を有する。しかしながら、外熱キルン炉は、被処理物10を間接的に熱処理するものであり、熱処理効率は内熱キルン炉に及ばない。したがって、熱処理温度を相対的に高温とする第3の熱処理工程においては、熱処理効率や生産性の観点から、本形態のように、内熱キルン炉を用いる方が好ましい。この点、内熱キルン炉を用いると、炉本体内の酸素濃度が高まるが、第3の熱処理炉32に装入される被処理物10は、アクリル系有機物、セルロース、スチレン系有機物等の高発熱量成分が熱分解・除去されているため、被処理物10が発火するおそれは少ない。
【0066】
第3の熱処理炉32の炉本体内には、酸素含有ガスたる熱風が吹き込まれ、当該熱風によって、供給口から供給され、炉本体の回転に伴って排出口側に順次移送される被処理物10の熱処理が行われる。この熱風の発生方法は特に限定されないが、本形態のように、熱風源たるLPG(液化石油ガス)バーナーL1を利用すると好適である。従来は、キルン炉のバーナーとして、重油バーナーが使用されていた。しかしながら、重油バーナーを使用すると、重油バーナーからの重油燃焼残カーボンや硫黄酸化物等による被処理物10の汚染が生じ、得られる再生粒子の白色度低下やバラツキの要因となる。LPGの利用は、CO2の排出量を削減することができる、温度制御が容易である、空燃比制御が容易である、被処理物10が着色しない等の利点を有する。なお、重油を使用する場合は、硫黄分の少ないA重油の方が好ましいが、LPGには以上のようにA重油を使用する以上の利点がある。
【0067】
第3の熱処理炉32においては、LPGバーナーL1を利用して発生させられる熱風の酸素濃度(第3の熱処理炉32に熱風とは別に他の熱風や希釈空気等を吹き込む場合は、全ガスの平均酸素濃度。以下、「流入ガスの酸素濃度」ともいう。)を5.0〜20.0%、好ましくは6.0〜18.0%、より好ましくは7.0〜18.0%に調節しつつ、第3の熱処理炉32の炉本体内から排出される排ガス(流出ガス)G3の酸素濃度が0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは3.0〜15.0%となるように管理すると好適である。ここで、酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした測定試料の酸素濃度を測定した値である。
【0068】
被処理物10の過剰な熱処理の防止という観点から、低酸素濃度であるのが好ましく、流入ガス(酸素含有ガス)及び流出ガスG3の酸素濃度が低くなるように管理するのがより好ましい。もっとも、流入ガス(酸素含有ガス)や流出ガスG3の酸素濃度が低すぎると、残カーボンや残留有機物の熱処理が充分に進まず、また、白色化が進まないおそれがある。他方、流入ガス(酸素含有ガス)や流出ガスG3の酸素濃度が高すぎると、圧縮空気及びその付加設備が必要になると共に、エネルギーコストが上昇し、また、被処理物10の燃焼や硬質化が進むおそれがある。また、流出ガスG3の酸素濃度を高くするためには、過剰の空気を炉本体内に吹き込む必要があり、炉内温度の低下や炉内温度制御が困難になる等の問題を生じるおそれがある。
【0069】
炉本体内の酸素濃度は、残カーボンや残留有機物の熱処理に際して酸素消費され変動を生じるため、本形態のように、流入ガス(酸素含有ガス)の酸素濃度の調節及び流出ガスG3の酸素濃度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において酸素濃度が、通常0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは4.0〜15.0%に調節される。
【0070】
また、第3の熱処理炉32は、LPGバーナーL1を利用して発生させられる熱風の温度(第3の熱処理炉32に熱風とは別に他の熱風や希釈空気等を吹き込む場合は、全ガスの平均温度。以下、「流入ガスの温度」ともいう。)を550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃に調節しつつ、第3の熱処理炉32の炉本体内から排出される排ガス(流出ガス)G3の温度が550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃となるように管理すると好適である。ここで、流出ガスG3の温度は、流出ガスG3の煙道(第3の排ガス流路R3)に設置した熱電対にて温度を実測した値である。また、流入ガスの温度は、当該流入ガスの煙道において熱電対にて温度を実測した値である。なお、流入ガスが複数の場合は、各煙道において、熱電対にて温度を実測した値と流量とから算出した値である。
【0071】
流入ガスの温度が550℃以上で、かつ流出ガスG3の温度も550℃以上であると、被処理物10中の残カーボンや第2の熱処理炉14で熱処理しきれなかったスチレン‐アクリルやスチレン等の残留有機物の熱処理が確実に行われる。他方、流入ガスの温度が780℃以下で、かつ流出ガスG3の温度も780℃以下であると、残カーボンの生成を抑制することができるほか、有機物の熱処理が緩慢に行われ、被処理物10の微粉化が抑制され、また、凝集体を形成し、あるいは硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する被処理物10の熱処理度合いや粒揃えを容易に、かつ安定的に制御することができる。この点、流入ガスの温度が780℃を超え、あるいは流出ガスG3の温度が780℃を超えると、被処理物10の粒揃えが進行するよりも早くに燃焼が局部的に進むため、粒子表面と芯部との未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。しかも、得られた再生粒子をスラリー化したときに、固まるおそれがある。
【0072】
炉本体内の温度は、温度勾配を有し、一様ではないため、本形態のように、流入ガスの温度の調節及び流出ガスG3の温度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において温度が、上記調節・管理と同様、つまり、通常550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値である。
【0073】
第3の熱処理炉32においては、被処理物10の滞留時間を60〜240分、好ましくは90〜150分、より好ましくは120〜150分とすると好適である。滞留時間を60分以上とすることにより、被処理物10に含まれる残留有機物や残カーボンが確実に熱処理され、また、再生粒子を安定して生産することができるようになる。他方、滞留時間が240分を超えると、炭酸カルシウムの分解が促進され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。この点、第1の熱処理炉42において被処理物10の発熱量が20〜90%減少し、アクリル系有機物及びセルロースが熱分解するように熱処理され、また、第2の熱処理炉14において被処理物10のスチレン系有機物が熱分解するように熱処理されていると、第3の熱処理炉32における被処理物10の滞留時間を短くすることができ、過燃焼、白色度の低下、硬質物質の増加等のリスクを低減することができる。
【0074】
第3の熱処理炉32から排出された被処理物10は、好適には凝集体であり、適宜粉砕等を行った後、冷却機34において冷却し、振動篩機等の粒径選別機36により選別をし、再生粒子としてサイロ38に一時貯留し、適宜填料や顔料等の用途先に仕向ける。
【0075】
(再生粒子)
本形態の再生粒子の製造方法によって得られる再生粒子は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合とされている。カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合とされていると、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑制されるため、脱水性が良好である。
【0076】
ところで、被処理物10の原材料ともいえる古紙は、近年の中性抄紙化、ビジュアル化の進展にともなう印刷見栄えの良い塗工紙使用量の増加にともない、填料・顔料としての炭酸カルシウムの使用量増加により、製紙スラッジ中の炭酸カルシウムの含有量増加につながり、結果としてゲーレナイトやアノーサイトの生成量増加に繋がるため、再生粒子に含有されるゲーレナイトやアノーサイト、いわゆる硬質物質の含有量をできる限り減少させる必要が大きくなっている。したがって、硬質物質の含有量を減らすことができる上記再生粒子の製造方法は、極めて有用であり、この製造方法によって製造された本形態の再生粒子は、ゲーレナイト及びアノーサイトの合計含有量が1.5質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下とされている。
【0077】
なお、硬質物質たるゲーレナイト(Ca2Al2SiO7)や、アノーサイト(CaAl2Si28)は、製紙用に供される填料や顔料と比べて極めて硬質であり、微量の存在で、製紙用具の摩耗・毀損や抄紙系内の汚れが生じ、塗工用顔料として使用した場合には、ドクター等の塗工設備の摩耗・毀損、ストリークの発生要因となる。また、ゲーレナイト及びアノーサイトの合計含有量は、下記の方法によって測定した値である。
【0078】
(測定方法)
X線回析法(理学電気製、RAD2X)によって測定する。測定条件は、Cu‐Kα‐湾曲モノクロメーター:40KV‐40mA、発散スリット:1mm、SS:1mm、RS:0.3mm、走査速度:0.8度/分、走査範囲:2シータ=7〜85度、サンプリング:0.02度とする。
【0079】
(エネルギーの有効化)
本形態の再生粒子の製造方法は、被処理物10から加熱処理以上の発熱が生じ、この発熱が過燃焼の要因となることを、逆に、熱源として有効利用し、もってエネルギー効率を極めて高めたものである。以下、詳細に説明する。
【0080】
本形態においては、主たる熱発生装置(熱風源)として、前述LPGバーナーL1のみが備えられている。このLPGバーナーL1を利用して発生させられた熱風は、第3の熱処理炉32の炉本体内に吹き込まれ(供給され)、内熱源として利用される。
【0081】
LPGバーナーL1を利用して発生させられた熱風が、第3の熱処理炉32のどの部位から吹き込まれるかは特に限定されない。第3の熱処理炉32が「炉本体の一方端部側32Aに被処理物10の供給口が設けられ、炉本体の他方端部側32Bに被処理物10の排出口が設けられた横型回転キルン炉」である本形態においては、例えば、図示はしないが、当該熱風が一方端部側(以下、「供給口側」ともいう。)32Aから吹き込まれ、炉本体内の排ガスG3が他方端部側(以下、「排出口側」ともいう。)32Bから排出される形態とすることもできる(並流方式)。なお、当該熱風によって加熱される被処理物10は、供給口側32Aから供給され、炉本体の回転に伴って排出口側32Bに順次移送される。このように熱風の供給方式を並流方式にすると、相対的に低温の状態にある被処理物10が直ちに残カーボン等の熱処理に好適な温度まで昇温される。しかも、供給口側32Aから排出口側32Bに向けて低温化する温度勾配が生じるため、被処理物10の過剰な熱処理が防止される。
【0082】
ただし、本形態においては、前記主たる熱風が排出口側32Bから吹き込まれ、炉本体内の排ガスG3が供給口側32Aから排出され形態とされている(向流方式)。向流方式とされていることにより、排ガスG3中の煤塵が被処理物10中に混入して得られる再生粒子の品質が低下するのが確実に防止される。すなわち、第3の熱処理炉32においては、供給された被処理物10中の残カーボン等が直ちに燃焼等の熱処理をされるため、向流方式とされていると、残カーボン等の燃焼に伴って発生する煤塵が、供給口側32Aから排ガスG3とともに速やかに炉本体外に排出され、被処理物10に混入してしまうのが防止される。
【0083】
第3の熱処理炉32の炉本体内から排出された排ガスG3は、第3の排ガス流路R3を通して第2の熱処理炉14に備わる外熱ジャケット15内に供給され、第2の熱処理炉14の外熱源として利用される。第3の排ガス流路R3内を通される排ガスG3は、当該流路R3の途中に備えられたバーナーB1等によって、必要に応じて加温され、もって第2の熱処理炉14における熱処理温度が調節される。
【0084】
本形態の第2の熱処理炉14も、外熱ジャケット15の有無を除いて第3の熱処理炉32と同様に、炉本体の一方端部側14Aに被処理物10の供給口が設けられ、炉本体の他方端部側14Bに被処理物10の排出口が設けられた横型回転キルン炉とされている。
【0085】
第2の熱処理炉14の炉本体内の排ガスG2は、例えば、図示はしないが、他方端部側(以下、「排出口側」ともいう。)14Bから排出される形態とすることもできる。ただし、本形態においては、排ガスG2が一方端部側(以下、「供給口側」ともいう。)14Aから排出される形態とされている。排ガスG2が供給口側14Aから排出されることにより、前述第3の熱処理手段32の場合と同様、排ガスG2中の煤塵が被処理物10中に混入して得られる再生粒子の品質が低下するのが確実に防止される。もっとも、本形態においては、被処理物10の熱処理が4つの手段に分けて行われ、第2の熱処理炉14における熱処理が可及的に低温で行われるように構成されている。したがって、第2の熱処理炉14における熱処理は、有機物の燃焼ではなく、スチレン系有機物の熱分解が主となり、煤塵が発生するおそれがほとんどない。しかも、熱処理温度が低温であると、当該スチレン系有機物の熱分解によって発生した熱分解ガス(可燃性ガス)は、炉本体内において発火(燃焼)するおそれが低く、そのまま排ガスG2として炉本体内から排出される。したがって、被処理物10の過燃焼が生じるおそれもない。
【0086】
以上のように、排ガスG2の主たる成分はスチレン系有機物の熱分解ガスであるため、排ガスG2は、極めて大きな熱量を有する。そこで、本形態においては、排ガスG2が第2の排ガス流路R2を通して第1の熱処理炉42に備わる外熱ジャケット43内に供給され、第1の熱処理炉42の外熱源などとして有効利用されるように構成されている。より詳細には、まず、第2の排ガス流路R2内を通る排ガスG2は、当該流路R2の途中に備わるバーナーB2等によって着火され、高温の燃焼ガスとされる。そして、第2の排ガス流路R2は、その途中から第4の排ガス流路R4が分岐しており、排ガスG2の一部が第1の熱処理炉42に備わる外熱ジャケット43内に供給されて外熱源として利用され、排ガスG2の残部が第4の排ガス流路R4に分流される。
【0087】
図示はしないが、第2の排ガス流路R2の第1の熱処理炉42側に、排ガスG2の一部にエア等を混入するエア混入手段を備えることができる。このエア混入手段からのエア混入量を調節することにより、第1の熱処理炉42における熱処理温度を調節することができる。また、この熱処理温度の調節は、上記第4の排ガス流路R4に分流させる排ガスG2の割合を調節することによることもできる。
【0088】
この点、この排ガスG2は、バーナーB2等による着火によって燃焼され、低酸素濃度とされており、また、外熱ジャケット43内を通った後、第1の熱処理炉42の炉本体内に吹き込まれる。したがって、エアの混入は、排ガスG2の酸素濃度が必要以上に高くならないよう留意して行うのが好ましい。
【0089】
本形態の第1の熱処理炉42も、外熱ジャケット43の有無を除いて第3の熱処理炉32と同様に、炉本体の一方端部側42Aに被処理物10の供給口が設けられ、炉本体の他方端部側42Bに被処理物10の排出口が設けられた横型回転キルン炉とされている。
【0090】
第1の熱処理炉42の炉本体内の排ガスG1は、例えば、図示はしないが、他方端部側(以下、「排出口側」ともいう。)42Bから排出される形態とすることもできる。ただし、本形態においては、排ガスG1が一方端部側(以下、「供給口側」ともいう。)42Aから排出される形態とされている。排ガスG1が供給口側42Aから排出されることにより、前述第3の熱処理手段32の場合と同様、排ガスG1中の煤塵が被処理物10中に混入して得られる再生粒子の品質が低下するのが確実に防止される。もっとも、本形態においては、被処理物10の熱処理が4つの手段に分けて行われ、第1の熱処理炉42における熱処理が可及的に低温で行われるように構成されている。したがって、第1の熱処理炉42における熱処理は、有機物の燃焼ではなく、アクリル系有機物及びセルロースの熱分解が主となり、煤塵が発生するおそれがほとんどない。しかも、熱処理温度が低温であると、当該アクリル系有機物及びセルロースの熱分解によって発生した熱分解ガス(可燃性ガス)は、炉本体内において発火(燃焼)するおそれが少なく、被処理物10の過燃焼が生じるおそれも少ない。
【0091】
以上のように、排ガスG1の主たる成分はアクリル系有機物及びセルロースの熱分解ガスであるため、排ガスG1は、極めて大きな熱量を有する。そこで、本形態においては、排ガスG1が第1の排ガス流路R1を通して乾燥装置60に送られ、乾燥装置60の熱源などとして有効利用されるように構成されている。より詳細には、まず、第1の排ガス流路R1内を流れる排ガスG1は、当該流路R1の途中に備わるバーナーB3等によって着火され、高温の燃焼ガスとされる。また、第1の排ガス流路R1は、その途中に第5の排ガス流路R5が接続されている。この第5の排ガス流路R5は、他端が前述第2の熱処理炉14の外熱ジャケット15に接続されており、第2の熱処理炉14において外熱源として利用された後の排ガスG5が流される。さらに、第5の排ガス流路R5は、その途中に、前述第4の排ガス流路R4が接続されており、第5の排ガス流路R5内を流れる排ガスG5に第4の排ガス流路R4内を流れる前述排ガスG2の残部G4が混入される。したがって、第1の排ガス流路R1内を流れる排ガスG1には排ガス流路R5内を流れる排ガスG5、及びこの排ガスG5に混入された排ガスG2の残部G4が混入される。このようにしてなる排ガスG1,G4,G5等からなる混合ガスGは、排ガス流路R1を通して乾燥装置60に送られ、乾燥装置60の熱源として有効利用される。また、第1の排ガス流路R1の乾燥装置60側には、当該混合ガスに希釈エアA2を混入するエア混入手段が備えられている。したがって、当該希釈エアA2の混入量を調節することにより、乾燥装置60における熱処理(乾燥)温度や熱気流の流速・流量等を調節することができる。
【0092】
一方、第1の熱処理炉42の外熱ジャケット43から排出された排ガスG7は、排ガス流路R7を通して第1の熱処理炉42の炉本体内に吹き込まれ、熱エネルギーが有効利用される。また、図示例においては、第2の熱処理炉14の外熱ジャケット15から排出された排ガスG5を、乾燥装置60の熱源として利用しているが、その一部又は全部を排ガス流路R8を通して第2の熱処理炉14の炉本体内に吹き込むこともできる。いずれの方法においても、熱エネルギーの有効利用となるが、第2の熱処理炉14の炉本体内に吹き込んだ場合は、炉本体の内表面上と軸心部との間に生じる熱処理温度差が解消され、しかも、発火の原因となる熱分解ガスの炉本体内からの排出が促進される。
【0093】
本形態において、各流路R1〜R7の形状、素材等は特に限定されず、公知の排ガス等を通すダクトや管等を用いることができる。
【実施例1】
【0094】
以上の方法によって再生粒子を製造する場合における各設備(乾燥装置、熱処理炉、排ガス流路等)での熱量を、表1に示した。本熱量は、乾燥装置60に20℃の被処理物10が8.93t/hの供給速度で供給され、熱風を発生させるためのLPGを65kg/hの割合で使用した場合を例示したものである。なお、この例は、本形態の方法を、このような熱量になる場合のみに限定する趣旨ではない。
【0095】
本例の方法によると、被処理物10は、乾燥装置60において100℃に加温され、5.35t/hの割合で第1の熱処理炉42に送られ、第1の熱処理炉42において370℃に加温され、4.23t/hの割合で第2の熱処理炉14に送られ、第2の熱処理炉14において410℃に加温され、3.75t/hの割合で第3の熱処理炉32に送られ、第3の熱処理炉32において680℃に加温され、3.75t/hの割合で後の工程に送られる。また、第3の熱処理炉32に供給される熱風の温度は700℃、第2の熱処理炉14から排出される排ガスG2の温度は410℃、第1の熱処理炉42から排出される排ガスG1の温度は340℃、乾燥装置60に供給される混合ガスGの温度は450℃になるものと推定される。なお、表1中の符号は、図1中の符号と対応している。
【0096】
【表1】

【実施例2】
【0097】
次に、本発明の作用効果をより明確にするための実施例及び比較例を示す。
製紙スラッジ一般又は脱墨フロスからなる被処理物(試料)を、脱水、熱処理及び湿式粉砕して再生粒子を製造した。各工程における処理条件は、表2〜5に示した。なお、装置形式の「気流乾燥」とは、脱水後の被処理物を熱気流に同伴させて乾燥することができる装置を用いた場合を意味し、具体的には気流乾燥装置(型番:クダケラ、新日本海重工業社製)を使用して乾燥した場合である。また、炉形式の「キルン」とは、本体が横置きで中心軸周りに回転する横型回転キルン炉(ロータリーキルン炉)を用いた場合を意味する。さらに、湿式粉砕工程においては、セラミックボールミルを用いた。なお、特に断りのない限り、下記の測定方法、評価方法等は、本明細書全体にわたって同様である。
【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【0100】
【表4】

【0101】
【表5】

【0102】
以上のようにして得られた再生粒子について、その品質を調べ、結果を表6に示した。
【0103】
【表6】

【0104】
本実施例及び比較例における測定手段、評価方法は、次の通りである。
(水分率)
定温乾燥機内に試料を静置し、約105℃で6時間以上保持することで質量変動を認めなくなった時点を乾燥後質量とし、下記式により水分率を算出した。
水分率(%)=(乾燥前質量−乾燥後質量)÷乾燥前質量×100
【0105】
(平均粒子径)
目穴の異なる篩で篩い分けを行い、各篩い分けを行った被処理物の質量を測定し、この測定値の合計値が全体の50質量%に相当する段階における篩の目穴の大きさであり、JIS Z 8801‐2:2000に基づき、金属製の板ふるいを用いて測定した値である。
【0106】
(粒子径50mm以上の割合)
試料全体の質量を100とした場合に、目穴50mmの篩を通過しなかった試料の質量割合である。この測定に際しては、JIS Z 8801‐2:2000に基づき、金属製の板ふるいを用いた。
【0107】
(酸素濃度)
自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした試料の酸素濃度の測定値である。
【0108】
(温度)
各領域(排ガス流路(煙道)、炉本体内、炉本体の外表面等)の温度を、熱電対にて実測した値である。
【0109】
(滞留時間)
色で識別できる金属片を炉本体内に投入し、当該金属片が被処理物の排出口から排出されるまでの時間を実測した値である。
【0110】
(発熱量減少率)
熱量計(燃研式デジタル熱量計、吉田製作所製)を用いて、熱処理前の試料と熱処理後の試料との発熱量を測定し、減少割合から算出した値である。
【0111】
(未燃率)
電気マッフル炉をあらかじめ600℃に昇温後、ルツボに試料を入れ、約2時間で完全燃焼させ、燃焼前後の質量変化から算出した値である。
【0112】
(硬質物質)
得られた各再生粒子に含まれるゲーレナイト及びアノーサイトの合計質量を、X線回析法(理学電気製:RAD2X)によって測定した値である。測定条件は、Cu‐Kα‐湾曲モノクロメーター:40KV‐40mA、発散スリット:1mm、SS:1mm、RS:0.3mm、走査速度:0.8度/分、走査範囲:2シータ=7〜85度、サンプリング:0.02度とした。
【0113】
((ワイヤー)摩耗度)
得られた各再生粒子について、プラスチックワイヤー摩耗度計(日本フィルコン製、3時間)を用い、スラリー濃度2質量%で測定した値である。
【0114】
(分散性)
粉砕後の再生粒子スラリー(60%濃度)について、B型粘度計を用いてローター回転数6rpmでの粘度を測定した値である。なお、粘度(mPa・s)が低いほど分散性が良好であると判定した。
【0115】
(見た目)
目視で再生粒子の色を比較判断し、高白色、白色、灰色、濃灰色、黒色に区分した。
【0116】
(安定性)
得られた各再生粒子の白色度及び平均粒子径について変動割合を測定し、変動が少ない順にランクを付け、上位5位までを◎、6〜19位を〇、20〜23位を△、それ以下を×とした。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理して再生粒子を製造する方法として、適用可能である。
【符号の説明】
【0118】
10…原料、12…貯槽、14,32,42…熱処理炉、15,43…外熱ジャケット、22…排ガス処理設備、30…煙突、34…冷却機、36…粒径選別機、38…サイロ、B1〜B3…バーナー、G〜G7…ガス、R1〜R7…流路、60…乾燥装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理して再生粒子を製造する方法であって、
前記熱処理を、前記脱水後の被処理物を乾燥する乾燥手段と、この乾燥手段で乾燥された被処理物を熱処理する第1の熱処理手段と、この第1の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第1の熱処理温度を超える温度で熱処理する第2の熱処理手段と、この第2の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第2の熱処理温度を超える温度で熱処理する第3の熱処理手段と、を含む少なくとも4つの手段に分けて行い、
前記第1の熱処理手段及び前記第2の熱処理手段の少なくとも一方を、炉本体の外表面上に外熱ジャケットが設けられ、この外熱ジャケット内に熱風が供給される外熱炉とし、
前記外熱ジャケットから排出された排ガスを前記炉本体内に吹き込む、
ことを特徴とする再生粒子の製造方法。
【請求項2】
前記炉本体内又は他の熱処理手段の炉本体内から排出された排ガスを、前記外熱ジャケット内に供給する熱風として利用する、請求項1記載の再生粒子の製造方法。
【請求項3】
前記第1の熱処理手段及び前記第2の熱処理手段の両方を炉本体の外表面上に外熱ジャケットが設けられ、この外熱ジャケット内に熱風が供給される外熱炉とし、前記第3の熱処理手段を炉本体内に熱風が吹き込まれる内熱炉とするとともに、
前記第3の熱処理手段の炉本体内から排出された排ガスを、前記第2の熱処理手段の外熱ジャケット内に供給し、
当該第2の熱処理手段の炉本体内から排出された排ガスの一部を前記第1の熱処理手段の外熱ジャケット内に供給し、
当該第1の熱処理手段の炉本体内から排出された排ガス、前記第2の熱処理手段の炉本体内から排出された排ガスの残部、及び、前記第2の熱処理手段の外熱ジャケットから排出された排ガスを、前記乾燥手段の熱源として利用し、
前記第1の熱処理手段の外熱ジャケットから排出された排ガスを、当該第1の熱処理手段の炉本体内に吹き込む、
請求項1又は請求項2記載の再生粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第2の熱処理手段の外熱ジャケットから排出された排ガスを、当該第2の熱処理手段の炉本体内に吹き込むとともに、
前記第1の熱処理手段の炉本体外表面の温度が250〜400℃、前記第2の熱処理手段の炉本体外表面の温度が360〜550℃、前記第3の熱処理手段の炉本体内の温度が550〜780℃となり、かつ、前記第1熱処理手段の炉本体内に吹き込む排ガスの温度が150〜350℃、前記第2熱処理手段の炉本体内に吹き込む排ガスの温度が260〜450℃となるように制御する、
請求項3記載の再生粒子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−24706(P2012−24706A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166360(P2010−166360)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】