説明

再生装置、再生方法及び回収システム

【課題】有価物や有害物等の対象物を吸着した吸着材から容易に分離して吸着機能を再生する。
【解決手段】排水の対象物質を吸着材した吸着材から対象物質を分離して吸着材の吸着機能を再生する装置であり、通液管と、接続部と、回転機構とを備える。通液管は、対象物質を吸着した吸着材が存在する容器内に吸着材から対象物質を分離する洗浄液を注入し、当該容器から分離された対象物質及び使用後の洗浄液を排出する。接続部は、前記通液管が接続されるとともに、前記容器の内部に当該通液管の管口が位置するように当該容器と接続される。回転機構は、洗浄液の注入によって前記容器内で吸着材の層と対象物質を含む使用後の洗浄液の層とが形成されると、前記管口が前記吸着材の層よりも上に位置するように前記容器を傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、有価物や有害物等の対象物質を吸着した吸着材から対象物を分離して吸着機能を再生する再生装置及び再生方法と、吸着材を利用して排水中の対象物を回収する回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業排水や公共排水には、フッ素、ホウ素、リン、希少金属等の有価物や、油分、重金属等の有害物が含まれていることがある。これら排水の排水処理として、排水から有価物や有害物の分離は一般的に行われている。
【0003】
例えば、有価物や有害物の対象物質を分離するため、これらの対象物質を選択的に吸着する吸着材を使用して対象物質を回収することもある。具体的には、吸着材の再生方法にも様々あるが、対象物質を吸着した吸着材と洗浄液等の液体とを混合して吸着材から対象物質を剥離させて吸着材と対象物質を分離した後、対象物質を回収する。このような対象物質の回収には、複雑な装置や処理が利用されている。
【0004】
また、吸着材には様々な種類があるが、近年では、再利用可能な吸着材も注目されている。この際、対象物質と分離された吸着材を容易に回収することが望ましいが、吸着材の回収は、複雑な装置や処理が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−99575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、有価物や有害物等の対象物を吸着した吸着材から容易に分離して吸着機能を再生する再生装置及び再生方法と、吸着材を利用して排水中の対象物を容易に回収する回収システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の再生装置は、排水の対象物質を吸着材した吸着材から対象物質を分離して吸着材の吸着機能を再生する装置であり、通液管と、接続部と、回転機構とを備える。通液管は、対象物質を吸着した吸着材が存在する容器内に吸着材から対象物質を分離する洗浄液を注入し、当該容器から分離された対象物質及び使用後の洗浄液を排出する。接続部は、前記通液管が接続されるとともに、前記容器の内部に当該通液管の管口が位置するように当該容器と接続される。回転機構は、洗浄液の注入によって前記容器内で吸着材の層と対象物質を含む使用後の洗浄液の層とが形成されると、前記管口が前記吸着材の層よりも上に位置するように前記容器を傾斜させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る回収システムの概略図である。
【図2】第2実施形態に係る再生装置の概略図である。
【図3】図2の再生装置の動作を説明する図である。
【図4】図2の再生装置のL字管を説明する図である。
【図5】図2の再生装置における処理の一例を説明する図である。
【図6】変形例1に係る再生装置を説明する図である。
【図7】変形例2に係る再生装置を説明する図である。
【図8】変形例3に係る再生装置を説明する図である。
【図9】第3実施形態に係る再生装置の概略図である。
【図10】吸着材の洗浄回数と脱離率の関係を説明する図である。
【図11】洗浄液の使用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る回収システムは、フッ素、ホウ素、リン、希少金属等の有価物や油分、重金属等の有害物等の対象物質を含む排水から、この対象物質を吸着する吸着材を利用して対象物質を回収するシステムである。また、本発明の実施形態に係る再生装置は、この回収システムで対象物質を吸着した吸着材の機能を再生する装置である。さらに、本発明の実施形態に係る再生方法は、この回収システムで対象物質を吸着した吸着材の機能を再生する方法である。この以下の説明では、回収システムの対象物質は有価物であるものとして説明するが、有害物に代えても同様である。また、以下の説明において、同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
〈第1実施形態〉
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る回収システム1は、排水Bを送水する送水ポンプ10a,10bと、有価物Aと吸着材Cとを反応させる反応槽11と、反応槽11に吸着材Cを注入する注入装置13と、注入装置13を駆動する駆動装置14と、有価物Aを吸着した吸着材Cの分離に利用する遠心沈降装置15と、吸着材Cの吸着機能の再生に利用する再生装置2とを備えている。また、注入装置13と遠心沈降装置15とには、それぞれカートリッジ100が接続されている。
【0011】
反応槽11には、第1送水ポンプ10aによって、ラインL1を介して回収システム1の回収の対象物質である有価物Aを含む排水Bが流入する。また、反応槽11には、注入装置13によって、排水中の有価物Aを吸着する機能をもつ吸着材Cが注入される。反応槽11は、攪拌機12を有しており、この攪拌機12で攪拌することで、吸着材Cに排水B中の有価物Aを吸着させる。攪拌機12によって攪拌されて有価物Aを吸着した吸着材C(以下、「使用後吸着材C’」とする)を含む排水Bは、ラインL2に送出される。なお、攪拌機12は、反応槽11内に設置する方法の他、ラインミキサ等の攪拌方法を利用してもよい。
【0012】
注入装置13は、排水Bに注入する吸着材Cを貯留する容器であるカートリッジ100cと接続されている。駆動装置14に駆動された注入装置13により、カートリッジ100c内の吸着材Cが反応槽11に注入され、排水B中の有価物Aと反応する。
【0013】
ラインL2上には第2送水ポンプ10bが設置されており、反応槽11から送出された排水Bは、第2送水ポンプ10bによってラインL2と接続される遠心沈降装置15に流入する。この遠心沈降装置15は、流入した排水Bを内部で旋回し、遠心力を利用して水より比重差が大きい使用後吸着材C’を沈降させて処理水Dと使用後吸着材C’とに分離する。したがって、第2送水ポンプ10bは、遠心沈降装置15内で排水Bが旋回するような圧力にして排水Bを送水する必要がある。なお、遠心沈降装置15に限られず、排水Bを旋回させて使用後吸着材C’と処理水Dとに分離することができれば、サイクロン等他の形態であってもよい。
【0014】
この遠心沈降装置15には、沈降した使用後吸着材C’を排出する吸着材排出管16と、使用後吸着材C’が分離された後の処理水Dを排出する処理水排出管17とが接続されている。吸着材排出管16には、遠心沈降装置15から排出される使用後吸着材C’を回収する容器であるカートリッジ100と接続されている。一定量の使用後吸着材C’を貯留した場合等、所定の条件に適合するカートリッジ100は、再生装置2に移動される。
【0015】
再生装置2は、使用後吸着材C’から吸着している有価物Aを脱離して、吸着材Cの吸着機能を再生する装置である。再生装置2は、吸着材Cから有価物Aを脱離すると、有価物Aをカートリッジ100から排出させる。吸着材Cは、排水に含まれる対象物質に応じて異なるが、例えば、吸着材Cが、無機粒子等をコアとし、その表面がポリマーで被覆されているものを利用してもよい。このような機能性粒子の場合、このポリマーで捕捉した排水の対象物質を脱離することで、再利用可能となる。再生装置2は、薬品等の対象物質を脱離させる液体を利用して機能性粒子から排水中の対象物質を除去して、吸着材Cの機能を再生する。この再生装置2については、図2等を用いて後述する。
【0016】
吸着機能が再生された吸着材Cが内部に残ったカートリッジ100は、その後、注入装置13まで移動される。注入装置13では、このカートリッジ100から、吸着機能が再生された吸着材Cを排水Bに注入する。
【0017】
上述したように、回収システム1では、カートリッジ100を利用することで、カートリッジ100内の吸着材Cを排水Bに注入して有価物Aを吸着させ、使用後吸着材C’を空のカートリッジ100に回収する(吸着工程)。さらに、カートリッジ100内で使用後吸着材C’から有価物Aを分離して吸着材Cの吸着機能を再生するとともに分離した有価物Aをカートリッジ100から排出する(脱離・再生工程)。こうしてカートリッジ100内に吸着材Cのみが残ると、この吸着材Cを再び排水Bへの注入に利用する。
【0018】
このように、カートリッジ100を利用して吸着工程における吸着材Cの注入、脱離・再生工程における吸着材Cの回収及び再生を繰り返し、回収システム1の運転、すなわち吸着材Cの利用を容易にすることができる。また、有価物や有害物等の対象物質の回収に利用する吸着材Cを容易に再利用することができるために回収システム1で使用する吸着材Cの量を軽減することができる。さらに、回収システム1を容易に運転し、吸着材Cの使用量を軽減することで、回収システム1の運転コストを軽減することができる。
【0019】
〈第2実施形態〉
図2に示すように、第2実施形態に係る再生装置2は、架台21と、テーブル22と、接続部23と、回転軸24と、回転機構25と、通液管26と、センサ27と、攪拌機28と、移動機構29と、バルブ30と、捕捉装置31と、センサ32とを備えている。図2(a)は正面図を示し、図2(b)は側面図を示している。この再生装置2は、例えば、図1を用いて上述した回収システム1で使用される装置であり、回収システム1で有価物や有害物等の対象物質の回収に使用した使用後吸着材C’の吸着機能を再生する装置である。
【0020】
再生装置2では、通液管26、センサ27及び攪拌機28を備える接続部23が、回転軸24を介してテーブル22に支持されている。また、このテーブル22は、移動機構29を介して架台21に支持されている。
【0021】
接続部23は、固定具(図示せず)を利用して使用後吸着材C’を貯留する容器であるカートリッジ100と接続され、吸着材Cから脱離された有価物Aをカートリッジ100から排出するため、カートリッジ100を傾斜させる。例えば、図3(a)に示すように接続されるカートリッジ100を、図3(b)に示すように回転軸24(回転軸X1)を軸としてA1方向に回転させてカートリッジ100を傾斜させる。なお、図3に示す再生装置2では、架台21、テーブル22、接続部23、回転軸24及び移動機構29以外の構成は図示を省略している。なお、カートリッジ100の形状は特定されないが、円柱形や角柱形であることが考えられる。
【0022】
移動機構29は、テーブル22を架台21の長軸方向にスライド自在に設置されており、カートリッジ100の傾斜時等に、テーブル22をスライドさせる。例えば、図3(a)に示すようにカートリッジ100と接続された接続部23を支えるテーブル22を、図3(b)に示すようにB1方向に移動させる。
【0023】
通液管26は、カートリッジ100が接続部23に接続された状態で、カートリッジ100内に吸着材Cの吸着機能の再生に利用する洗浄液を注入したり、カートリッジ100から吸着材Cの再生で生じた脱離液を排出する。通液管26のカートリッジ100内に挿入される一端は、図4(a)に示すようなL字管33に形成されて、L字管33の管口33aは、カートリッジ100と対向していることが好ましい。図4に示す例では、L字管33は、通液管26に沿って駆動手段(図示せず)によってB2方向に移動させることができるとともに、回転軸X2を軸として、A2方向に回転させてL字管33の管口33aの位置を移動させることができる。例えば、図4(b)に示すように、排出対象の有価物Aが深さh1より浅くなった場合には回転軸X2を軸として駆動手段によってL字管33をα2°回転させて管口33aの位置を移動させると、有価物Aが深さh2になるまで排出可能となる。また、回転軸X2を軸として駆動手段によってL字管33をα3°回転させて管口33aの位置を移動させると、有価物Aが深さh3になるまで排出可能となる。
【0024】
図5を用いて再生装置2における再生処理について説明する。図5に示す再生装置2では、架台21、テーブル22、回転軸24、回転機構25及び移動機構29については図示を省略している。
【0025】
まず、使用後吸着材C’が貯留されているカートリッジ100が、図5(a)に示すように、接続部23に接続される。その後、この再生装置2では、バルブ30を開にして通液管26を介してカートリッジ100内に洗浄液Eを注入する。洗浄液Eは、使用後吸着材C’から有価物Aを脱離させる機能を有する液体である。再生装置2では、洗浄液Eをカートリッジ100に注入しながら又は注入後に、攪拌機28によって使用後吸着材C’と洗浄液Eとを攪拌する。これにより、吸着材Cから有価物Aを脱離することができる。なお、バルブ30は、洗浄液Eの注入が終了すると、閉にされる。
【0026】
ここで、吸着材Cは有価物Aや洗浄液Eよりも重い。そのため、洗浄液Eの効果によって吸着材Cから有価物Aが脱離されて攪拌によるカートリッジ100内で液体の動きが収まると、図5(b)に示すように、カートリッジ100内では吸着材Cの層と吸着材Cの層上に位置する有価物Aを含む洗浄液E(以下、「脱離液E’」とする)の層とができる。
【0027】
洗浄液Eによって有価物Aが吸着材Cから脱離されてカートリッジ100内で吸着材Cの層と洗浄液Eの層とに分離されると、再生装置2は、図5(c)に示すように、回転機構25によってカートリッジ100を傾斜させる。傾斜されたカートリッジ100内でも、吸着材Cの層の上に脱離液E’の層ができる。したがって、再生装置2では、L字管33の管口33aを吸着材Cの深さよりも上に位置するようにすることで、脱離液E’のみをカートリッジ100内から排出することができる。すなわち、傾斜されたカートリッジ100内で液体の動きが収まると、再生装置2は、図5(d)に示すように、回転軸X2を軸としてL字管33の管口33aが吸着材Cと脱離液E’の境界である深さh2になるまで、A2の方向にL字管33を傾斜させる。その後、再生装置2は、バルブ30を開にし、通液管26を介してカートリッジ100から脱離液E’を排出する。これにより、再生装置2では、吸着材Cのみをカートリッジ100内に残留させることができる。なお、図5(d)では、カートリッジ100及びL字管33以外の構成については、図示を省略している。
【0028】
このとき、吸着材Cと脱離液E’との境界は、センサ27によって測定することができるため、このセンサ27の測定結果に応じてL字管33を調整すればよい。なお、例えば、カートリッジ100が透明や半透明で内部の状態が視認可能な場合には、センサ27を使用せずに目視により判断させることもできる。
【0029】
また、センサ32は、濁度計等であって、通液管26を流れる脱離液E’に吸着材Cが含まれるか否かを検出する。センサ32によって、脱離液E’に吸着材Cが含まれると検出された場合にはバルブ30を閉にする。これにより、カートリッジ100からの吸着材Cの流出を防止することができる。
【0030】
さらに、再生装置2では、捕捉装置31を利用して通液管26を流れる吸着材Cの流出を防止するようにしてもよい。例えば、吸着材Cが磁性体である場合には、捕捉装置31として磁石を利用することができる。また、吸着材Cのサイズが有価物Aのサイズよりも大きい場合には、有価物Aを通すことができるが、吸着材Cを通すことのできないフィルタを捕捉装置31として利用することができる。捕捉装置31によって捕捉された吸着材Cは、次に別のカートリッジ100が接続部23に接続されて洗浄液Eが注入される際に、洗浄液Eとともにカートリッジ100内に投入されるため、吸着材Cを有効に利用することができる。
【0031】
上述したように、再生装置2では、再生対象の使用後吸着材C’を貯留するカートリッジ100内に再生に使用する洗浄液Eを注入し、カートリッジ100を傾斜させて再生処理で得られた脱離液E’のみをカートリッジ100から排出する。これにより、再生装置2では、容易な構成で吸着材Cの吸着効果を再生することができる。
【0032】
《変形例1》
吸着材Cや脱離液E’の性状やカートリッジ100の傾斜等により、図6(a)に示すように吸着材Cと脱離液E’の境界が傾斜をなすことがある。このような場合には、吸着材Cと脱離液E’との境界の高さが浅いB2の方向にL字管33をスライドさせる。また、L字管33をスライドさせた後、図6(b)に示すように、回転軸X2を軸としてL字管33の管口33aを吸着材Cと脱離液E’の境界である高さh4になるまで傾斜させて脱離液E’を排出する。このように、L字管33をスライドすることで、より多くの脱離液E’をカートリッジ100から排出することができる。
【0033】
なお、図6に示すようにL字管33をスライドさせるのではなく、吸着材Cと脱離液E’の境界面が傾斜する場合には、傾斜しないようにカートリッジ100を傾斜するようにしても良い。
【0034】
《変形例2》
吸着材Cと脱離液E’の性状やカートリッジ100の傾斜等により、吸着材Cと脱離液E’の境界が傾斜をなす場合には、図7に示すように、カートリッジ100内に堰34を設置しておいてもよい。このように堰34を設けることで、吸着材Cの脱離液E’への混入を防止し、吸着材Cのカートリッジ100からの流出を防止することができる。
【0035】
《変形例3》
また、L字管33の傾きを傾斜させるのではなく、図8に示すように、カートリッジ100を接続する接続部23を、カートリッジ100の中心を通る回転軸X3を軸として回転可能にし、L字管33の管口33aが吸着材Cと脱離液E’の境界面の高さh5になるようにカートリッジ100を回転させてもよい。図8(b)に示すように、L字管33の管口33aよりも境界面の高さh5が高く、十分に脱離液E’を排出できないとする。この場合、図8(c)に示すように、回転軸X3を軸として、駆動装置(図示せず)によって接続部23をカートリッジ100をA3の方向にα5°回転させる。これにより、接続部23と通水管26の位置関係は固定であるため、L字管33の管口33aを境界面の高さh5に合わせて、脱離液E’を排出することができる。
【0036】
〈第3実施形態〉
図9に示すように、第3実施形態に係る再生装置3は、接続部23と、通液管26と、攪拌機28と、バルブ30と、捕捉装置31と、センサ32と、加圧装置36と、直管37とを備えている。この再生装置3も、第2実施形態に係る再生装置2と同様に、図1を用いて上述した回収システム1で使用することができる装置であり、回収システム1で対象物の回収に使用した使用後吸着剤C’の吸着機能を再生する装置である。
【0037】
加圧装置36は、接続部23と接続されているカートリッジ100内に空気圧を与える装置である。また、直管37は、B3の方向にスライド可能に通液管26に接続されている。
【0038】
この再生装置3では、接続部23に使用後吸着材C’が貯留されているカートリッジ100が接続され、バルブ30が開のとき、図3(a)に示すように、通液管26を介して使用後吸着材C’に洗浄液Eを注入する。また、再生装置3では、洗浄液Eをカートリッジ100に注入しながら又は注入後に、攪拌機28によって使用後吸着材C’と洗浄液Eとを攪拌する。
【0039】
使用後吸着材C’と洗浄液Eとが攪拌された後にカートリッジ100内で液体の動きが収まると、図9(b)に示すように、カートリッジ100内では、吸着材Cの層と吸着材Cの層上に位置する脱離液E’の層とができる。
【0040】
図9(b)に示すようにカートリッジ100内で吸着材Cの層と脱離液E’の層とに分離されると、再生装置3は、加圧装置36でカートリッジ100内に圧力をかける。このとき、バルブ30は開にされている。再生装置3では、カートリッジ100内に圧力がかけられたことにより、通液管26から脱離液E’が排出される。すなわち、再生装置2と異なり、再生装置3では、脱離液E’の排出時にカートリッジ100を傾斜させる必要がない。
【0041】
ここで、再生装置3では、排出する前又は排出しながら、駆動手段(図示せず)によって、吸着材Cと脱離液E’との境界面付近に直管37の管口37aが位置するように直管37をB3の方向にスライドさせる。これにより、カートリッジ100内からの脱離液E’の排出率を向上させることができる。
【0042】
また、再生装置3でも、捕捉装置31やセンサ32を使用してカートリッジ100からの吸着材Cの排出を防止する。
【0043】
上述したように、再生装置3では、再生対象の使用後吸着材C’を貯留するカートリッジ100内に再生に使用する洗浄液Eを注入し、カートリッジ100内に圧力をかけて再生処理で得られた脱離液E’のみをカートリッジ100から排出する。これにより、再生装置3では、容易な構成で吸着材Cの吸着効果を再生することができる。
【0044】
〈第4実施形態〉
続いて、図10及び図11を用いて第4実施形態に係る再生方法について説明する。図10は、再生装置2又は再生装置3における洗浄液Eを用いた使用後吸着材C’の洗浄回数と、各洗浄における使用後吸着材C’からの有価物Aの脱離率の関係を示している。図10は、1つのカートリッジ100内の使用後吸着材C’について4回の洗浄を行った場合の一例である。図10に示す例では、1回目の洗浄では、使用後吸着材C’からの有価物Aの脱離は65%程度であったのに対し、洗浄を4回した後には、100%に近い有価物Aを脱離することができたことが分かる。
【0045】
これは、使用後吸着材C’を洗浄液Eで洗浄する場合、使用後吸着材C’と洗浄液Eの境界面での有価物Aの濃度が平衡になる点で、使用後吸着材C’からの有価物Aの脱離が見かけ上停止(脱離量と吸収量がつりあう)し、それ以上は攪拌を続けても有価物Aを脱離することができなくなるためである。したがって、使用後吸着材C’からの有価物Aの脱離率を向上させるためには、図10に示すように、洗浄を複数回繰り返すことが望ましい。
【0046】
再生装置2又は再生装置3において洗浄を複数回繰り返す場合、毎回新しい洗浄液Eを用いる場合には洗浄液の使用量が多くなるため、同一の洗浄液を複数回繰り返し使用することが望ましい。図11に、使用後吸着材C’に対して洗浄を4回繰り返す場合の洗浄液Eの使用例を示す。
【0047】
1回目に洗浄される使用後吸着材C’の洗浄で得られた脱離液E’には、多量の有価物Aが含まれることとなる(重汚濁)。したがって、重汚濁の脱離液E’を次に洗浄液Eとして使用するためには、脱離液E’から有価物Aを分離する再生処理を行ない、再生後に新たに使用する。この脱離液E’の再生方法は、沸点の差を利用した蒸留方法など、一般に使用している方法でよい。なお、再生することができない場合には、新たな洗浄液Eを利用してもよい。
【0048】
また、1回洗浄された使用後吸着材C’は、1回も洗浄されていない使用後吸着材C’よりも吸着している有価物Aの量が少ないため、2回目に洗浄される使用後吸着材C’の洗浄で得られる脱離液E’は、1回目の洗浄で得られた脱離液E’よりも含有する有価物Aの量は少ない(中汚濁)。したがって、この脱離液E’は、今回洗浄した使用後吸着材C’よりも多量の有価物Aを吸着している使用後吸着材C’の洗浄に使用することができる。すなわち、中汚濁の脱離液E’は、まだ洗浄処理が一度も施されていない使用後吸着材C’の洗浄液Eとして使用することができる。
【0049】
さらに、2回洗浄された使用後吸着材C’は、1回洗浄された使用後吸着材C’よりもさらに吸着している有価物Aの量が少ないため、3回目に洗浄される使用後吸着材C’の洗浄で得られる脱離液E’は、2回目の洗浄で得られた脱離液E’よりも含有する有価物Aの量は少ない(軽汚濁)。したがって、この脱離液E’は、今回洗浄した使用後吸着材C’よりも多量の有価物Aを吸着している使用後吸着材C’の洗浄に使用することができる。すなわち、軽汚濁の脱離液E’は、1回洗浄された使用後吸着材C’の洗浄液Eとして使用することができる。
【0050】
また、3回洗浄された使用後吸着材C’は、2回洗浄された使用後吸着材C’よりもさらに吸着している有価物Aの量が少ないため、4回目に洗浄される使用後吸着材C’の洗浄で得られる脱離液E’は、3回目の洗浄で得られた脱離液E’よりも含有する有価物Aの量は少ない(微汚濁)。したがって、この脱離液E’は、今回洗浄した使用後吸着材C’よりも多量の有価物Aを吸着している使用後吸着材C’の洗浄に使用することができる。すなわち、微汚濁の脱離液E’は、2回洗浄された使用後吸着材C’の洗浄液Eとして使用することができる。
【0051】
このように、洗浄を複数回繰り返す際には、最終回の洗浄に新しい洗浄液を使用すればよく、それより前の段階では、前回の洗浄より有価物Aの吸着量が少ない使用後吸着材C’の洗浄に使用することができる。すなわち、図11に示すように1つのカートリッジ100内の使用後吸着材C’の洗浄に4回の洗浄を繰り返す場合、4回目の洗浄で得られた脱離液E’を3回目の洗浄液Eとし、3回目の洗浄で得られた脱離液E’を2回目の洗浄液Eとし、2回目の洗浄で得られた脱離液E’を1回目の洗浄液Eとし、1回目の洗浄で得られた脱離液E’は再生処理の後に1回目の洗浄液Eとする。このようにすることで、脱離液E’の再生回数を軽減することができるとともに、洗浄液Eの使用量も低減して有効利用することができる。
【0052】
本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…回収システム
10a,10b…送水ポンプ
11…反応槽
12…攪拌機
13…注入装置
14…駆動装置
15…遠心沈降装置
16…吸着材排出管
17…処理水排出管
100,100c…カートリッジ
L1,L2…ライン
2,3…再生装置
21…架台
22…テーブル
23…接続部
24…回転軸
25…回転機構
26…通液管
27…センサ
28…攪拌機
29…移動機構
30…バルブ
31…捕捉装置
32…センサ
33…L字管
34…堰
36…加圧装置
37…直管
A…有価物
B…排水
C…吸着材
C’…使用後吸着材
D…処理水
E…洗浄液
E’…脱離液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水の対象物質を吸着材した吸着材から対象物質を分離して吸着材の吸着機能を再生する再生装置であって、
対象物質を吸着した吸着材が存在する容器内に吸着材から対象物質を分離する洗浄液を注入し、当該容器から分離された対象物質及び使用後の洗浄液を排出する通液管と、
前記通液管が接続されるとともに、前記容器の内部に当該通液管の管口が位置するように当該容器と接続される接続部と、
洗浄液の注入によって前記容器内で吸着材の層と対象物質を含む使用後の洗浄液の層とが形成されると、前記管口が前記吸着材の層よりも上に位置するように前記容器を傾斜させる回転機構と、
を備えることを特徴とする再生装置。
【請求項2】
前記通水管は、前記管口が前記容器の側面に対向するようなL字形に形成されるとともに、対象物質及び使用後の洗浄液の排出時に当該管口が使用後の洗浄液の層の底面に合わせて傾斜されることを特徴とする請求項1に記載の再生装置。
【請求項3】
前記接続部は、対象物質及び使用後の洗浄液の排出時には、前記管口が使用後の洗浄液の層の底面に合うように、傾斜された前記容器を回転することを特徴とする請求項1に記載の再生装置。
【請求項4】
排水の対象物質を吸着材した吸着材から対象物質を分離して吸着材の吸着機能を再生する再生装置であって、
対象物質を吸着した吸着材が存在する容器内に吸着材から対象物質を分離する洗浄液を注入し、当該容器から分離された対象物質及び使用後の洗浄液を排出する通液管と、
洗浄液の注入によって前記容器内で吸着材の層と対象物質を含む使用後の洗浄液の層とが形成されると、前記容器内に圧力をかけて圧力によって対象物質を含む使用後の洗浄液を排出させる加圧装置と、
を備えることを特徴とする再生装置。
【請求項5】
排水の対象物質を吸着材した吸着材から対象物質を分離して吸着材の吸着機能を再生する再生方法であって、
対象物質を吸着した吸着材が存在する容器内に吸着材から対象物質を分離する洗浄液を注入するステップと、
当該容器から分離された対象物質及び使用後の洗浄液を排出するステップとを備え、
前記容器に洗浄液を複数回繰り返し、
当該容器内で貯留している吸着材が吸着する対象物質量より少ない量の対象物質を含む使用後の洗浄液を再利用可能であることを特徴とする再生方法。
【請求項6】
排水に注入された吸着材で排水中の有価物を吸着して回収する回収システムであって、
移動可能な容器内に貯留される吸着材を排水に注入する注入装置と、
吸着材が注入された排水を、処理水と吸着材で吸着された有価物とに分離し、移動可能な容器内に分離された吸着材及び有価物を排出する分離装置と、
前記分離装置から排出された吸着材及び有価物が貯留される容器内の吸着材の吸着機能を再生する請求項1乃至4のいずれか1に記載の再生装置とを備える、
ことを特徴とする回収システム。
【請求項7】
前記容器は、
前記注入装置で吸着材を注入後に空になると、前記分離装置と接続されて吸着材及び有価物の排出に使用され、
前記再生装置で吸着材再生されると、前記注入装置に接続されて吸着材の注入に使用される
ことを特徴とする請求項6に記載の回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−192314(P2012−192314A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56695(P2011−56695)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】