説明

冗長的な複数の経路を構成したイーサネットネットワークにおけるパケット転送方法、スイッチ装置、プログラム及びデータ構造

【課題】イーサネットネットワークに冗長的な複数の経路を構成することができるパケット転送方法等を提供する。
【解決手段】第1のスイッチ装置と第2のスイッチ装置との間が、イーサネットネットワークで冗長的に複数の経路で接続されている。第1のスイッチ装置が、第2のスイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットを、第2のスイッチ装置のMACアドレスを宛先MACアドレスとするOAMフレームにカプセル化し、そのOAMフレームパケットを、第2のスイッチ装置に向けて接続された所定ポートからイーサネットネットワークを介して第2のスイッチ装置へ送信する。第2のスイッチ装置が、第1のスイッチ装置から受信したOAMフレームパケットから、OAMフレームをデカプセル化し、そのレイヤ2パケットを、所定ポートから出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イーサネット(登録商標)ネットワークにおけるパケット転送方法、スイッチ装置、プログラム及びデータ構造に関する。特に、運用保守管理フレームを用いた技術に関する。
【背景技術】
【0002】
LAN(Local Area Network)用のレイヤ2ネットワークとして、イーサネット(登録商標)ネットワークが普及している。イーサネットネットワークは、バス接続型を基本にするLAN技術として開発されたものである。そのため、複数のレイヤ2スイッチ装置は、ツリー状(樹形図状)に接続される。
【0003】
近年、このイーサネット技術をFTTH(Fiber To The Home)に適用し、超高速のレイヤ2ネットワークが構築されてきている。このようなレイヤ2ネットワークは、通信事業者ネットワークで実運用されている。レイヤ2ネットワークに大量のスイッチ装置を接続し、コアネットワークやメトロネットワークも含めた通信ネットワークを大容量化している。
【0004】
図1は、従来技術におけるネットワーク構成図である。
【0005】
図1によれば、通信事業者ネットワークが、イーサネットネットワークによって構築されており、イーサネットネットワーク3では、複数のレイヤ2スイッチ装置1がツリー状に接続される。端末は、LAN(Local Area Network)及びアクセスネットワークを介して、通信事業者ネットワークのエッジスイッチとしてのレイヤ2スイッチ装置に接続する。
【0006】
イーサネットネットワークで構築された通信事業者ネットワークでは、加入者に対して常に安定したサービスを提供するために、遠隔から接続線路の運用・保守・管理(OAM:Operation Administration and Maintenance)をする必要がある。そのために、ITU−T Y.1731又はIEEE802.1agによって、イーサネットOAMフレームが規定されてきている。特に、ITU−T Y.1731は、イーサネット網にSONET(Synchronous Optical NETwork)とほぼ同等の運用保守管理機能を実現する規格である。イーサネットOAMフレームは、到達性管理(CFM: Connectivity Fault Management)や、エラー通知、リンク(回線)パフォーマンスモニタ等の機能やその情報を伝達する機能を有する。
【0007】
ネットワークにおける耐故障性を高めるために、冗長的に複数の経路を構築する技術もある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、現用回線と予備回線とを有し、通常不使用の予備回線に現用回線の制御情報を転送する。また、リンクアグリゲーションについて、複数の経路に対するトラヒックの分配を制御する技術もある(例えば特許文献2参照)。この技術によれば、複数の経路に対するトラヒックの流量が均等化される。更に、送信すべきパケットをコピーして、複数の経路に同じパケットを送信する技術もある(例えば特許文献3参照)。この技術によれば、異なる経路における遅延を小さくすることができると共に、パケットロスを低減することができる一方で、ネットワーク帯域の使用効率を犠牲にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−104144号公報
【特許文献2】特開2006−005437号公報
【特許文献3】WO2006/001060
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】瀬戸 康一郎、「802.1/802.3の標準化動向(3)」、[online]、2006年9月25日、WBBフォーラム、[平成21年3月16日検索]、インターネット<URL:http://wbb.forum.impressrd.jp/report/list/29>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、イーサネットネットワークは、スイッチ装置をツリー状に接続しなければならず、リング状に接続することはできない。スイッチ装置同士は、1つのパスによって接続されており、そのパスのいずれか1つのリンクに障害が発生した場合、通信不可能となる。
【0011】
イーサネットフレームのヘッダ部は、TTL(Time To Live)フィールドを有しない。そのために、スイッチ装置をリング状に接続すると、無限にループに陥る場合もある。このような問題に対応するために、Resilient Packet Ring 技術(IEEE 802.17-2004)やイーサネットベースのプロテクション関連プロトコル (ITU-T G.8031, G.8032)、ベンダ独自の冗長プロトコル技術も考案されている。
【0012】
しかし、このようなプロトコル技術を用いるには、専用の経路切替装置を備える必要がある。これは、高コスト化につながると共に、既存のイーサネットネットワークでは利用できないという課題もある。また、一方の経路を現用ルートとして、他方の経路を予備ルートとして利用した場合、ネットワークの利用効率を高めることができない。
【0013】
そこで、本発明は、イーサネットネットワークに冗長的な複数の経路を構成することができるパケット転送方法、スイッチ装置、プログラム及びデータ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、運用保守管理フレームを送受信可能なレイヤ2スイッチ装置を用いたパケット転送方法において、
第1のスイッチ装置及び第2のスイッチ装置が、イーサネットネットワークにおける分岐点となって冗長的に複数の経路を構成しており、
第1のスイッチ装置は、レイヤ2パケットにおける宛先MACアドレス及び送信元MACアドレスに対して、第2のスイッチ装置に接続されるポートの出力ポート番号と、対向先となる第2のスイッチ装置のMACアドレスとを対応付けた経路テーブルを有し、
第1のスイッチ装置が、経路テーブルを参照し、第2のスイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットを、第2のスイッチ装置のMACアドレスを宛先MACアドレスとする運用保守管理ヘッダでカプセル化し、運用保守管理フレームパケットを生成する第1のステップと、
第1のスイッチ装置が、経路テーブルを参照し、運用保守管理フレームパケットを、出力ポート番号のポートから、イーサネットネットワークを介して第2のスイッチ装置へ送信する第2のステップと、
第2のスイッチ装置が、第1のスイッチ装置から受信した運用保守管理フレームパケットから、運用保守管理ヘッダをデカプセル化する第3のステップと、
第2のスイッチ装置が、経路テーブルを参照し、デカプセル化されたレイヤ2パケットを、出力ポート番号のポートから出力する第4のステップと
を有することを特徴とする。
【0015】
本発明のパケット転送方法における他の実施形態によれば、運用保守管理ヘッダは、イーサネットOAMヘッダであることも好ましい。
【0016】
本発明のパケット転送方法における他の実施形態によれば、イーサネットOAMヘッダは、OpCodeによって確保されたベンダ規定メッセージ(VSM)領域に、シーケンス番号及びTTL(Time To Live)を含むことも好ましい。
【0017】
本発明によれば、運用保守管理フレームを送受信可能なレイヤ2スイッチ装置において、
対向先スイッチ装置との間で、イーサネットネットワークにおける分岐点となって冗長的に複数の経路を構成しており、
レイヤ2パケットにおける宛先MACアドレス及び送信元MACアドレスに対して、対向先スイッチ装置に接続されるポートの出力ポート番号と、対向先スイッチ装置のMACアドレスとを対応付けた経路テーブルと、
経路テーブルを参照し、対向先スイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットを、対向先スイッチ装置のMACアドレスを宛先MACアドレスとする運用保守管理ヘッダでカプセル化し、運用保守管理フレームパケットを生成するカプセル化手段と、
対向先スイッチ装置から受信した運用保守管理フレームパケットから、運用保守管理ヘッダをデカプセル化するデカプセル化手段と、
経路テーブルを参照し、対向先スイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットをカプセル化手段へ転送し、該カプセル化手段から出力された運用保守管理フレームパケットを、出力ポート番号のポートへ出力すると共に、対向先スイッチ装置から受信した運用保守管理フレームパケットをデカプセル化手段へ転送し、該デカプセル化手段から出力されたレイヤ2パケットを、出力ポート番号のポートへ出力するMACスイッチ手段と
を有することを特徴とする。
【0018】
本発明のレイヤ2スイッチ装置における他の実施形態によれば、運用保守管理ヘッダは、イーサネットOAMヘッダであることも好ましい。
【0019】
本発明のレイヤ2スイッチ装置における他の実施形態によれば、イーサネットOAMヘッダは、OpCodeによって確保されたベンダ規定メッセージ(VSM)領域に、シーケンス番号及びTTLを含むことも好ましい。
【0020】
本発明によれば、運用保守管理フレームを送受信可能なレイヤ2スイッチ装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
対向先スイッチ装置との間で、イーサネットネットワークにおける分岐点となって冗長的に複数の経路を構成しており、
レイヤ2パケットにおける宛先MACアドレス及び送信元MACアドレスに対して、対向先スイッチ装置に接続されるポートの出力ポート番号と、対向先スイッチ装置のMACアドレスとを対応付けた経路テーブルと、
経路テーブルを参照し、対向先スイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットを、対向先スイッチ装置のMACアドレスを宛先MACアドレスとする運用保守管理ヘッダでカプセル化し、運用保守管理フレームパケットを生成するカプセル化手段と、
対向先スイッチ装置から受信した運用保守管理フレームパケットから、運用保守管理ヘッダをデカプセル化するデカプセル化手段と、
経路テーブルを参照し、対向先スイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットをカプセル化手段へ転送し、該カプセル化手段から出力された運用保守管理フレームパケットを、出力ポート番号のポートへ出力すると共に、対向先スイッチ装置から受信した運用保守管理フレームパケットをデカプセル化手段へ転送し、該デカプセル化手段から出力されたレイヤ2パケットを、出力ポート番号のポートへ出力するMACスイッチ手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、運用保守管理フレームを送受信可能なレイヤ2スイッチ装置について、第1のスイッチ装置及び第2のスイッチ装置が、イーサネットネットワークにおける分岐点となって冗長的に複数の経路を構成しており、該経路に転送されるデータパケットのデータ構造であって、
第1のスイッチ装置から第2のスイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットは、第2のスイッチ装置のMACアドレスを宛先MACアドレスとするイーサネットOAMヘッダでカプセル化されており、
イーサネットOAMヘッダは、OpCodeによって確保されたベンダ規定メッセージ(VSM)領域に、シーケンス番号及びTTLを含む
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のパケット転送方法、スイッチ装置、プログラム及びデータ構造によれば、転送すべきパケットをOAMヘッダでカプセル化することによって、イーサネットネットワークに冗長的な複数の経路を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来技術におけるネットワーク構成図である。
【図2】本発明における第1のネットワーク構成図である。
【図3】本発明における第2のネットワーク構成図である。
【図4】本発明におけるスイッチ装置の機能構成図である。
【図5】本発明におけるフレーム構成図である。
【図6】本発明におけるパケットのフローを表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0025】
図2は、本発明における第1のネットワーク構成図である。
【0026】
図2によれば、通信事業者ネットワークのイーサネットネットワーク3では、複数のレイヤ2スイッチ装置1がツリー状に接続される。端末2は、LAN5及びアクセスネットワーク4を介して、通信事業者ネットワークのエッジスイッチとしてのレイヤ2スイッチ装置1に接続する。対向する2つのスイッチ装置の間は、冗長的に2つの経路で接続される。
【0027】
また、冗長的な経路(親経路)で構築されている2つのスイッチ装置の間で、更に、冗長的な経路(子経路)が構築されていてもよい。本発明の特徴あるスイッチ装置は、冗長的な経路における対向する分岐点に配置される。
【0028】
図3は、本発明における第2のネットワーク構成図である。
【0029】
図3によれば、本発明におけるレイヤ2スイッチ装置の機能構成が、ホームゲートウェイ(ルータ)に搭載されている。本発明におけるホームゲートウェイは、2つのWAN側インタフェースを有し、異なる通信事業者ネットワークに接続される。第1のアプリケーションのデータパケットを第1の通信事業者ネットワークを介して通信すると共に、第2のアプリケーションのデータパケットを第2の通信事業者ネットワークを介して通信する。例えば、第1の通信事業者ネットワークに障害が発生した場合、そのデータパケットを第2の通信事業者ネットワークを介して通信するべく切り替えることができる。
【0030】
図4は、本発明におけるスイッチ装置の機能構成図である。
【0031】
対向する2つのスイッチ装置は、イーサネットネットワークで冗長的に複数の経路で接続されている。図4によれば、第1のスイッチ装置のポート1と第2のスイッチ装置のポート1とが接続された第1の経路と、第1のスイッチ装置のポート2と第2のスイッチ装置のポート2とが接続された第2の経路とを有する。また、第1のスイッチ装置のポート3は、第1のLANを介して第1の端末に接続され、第2のスイッチ装置のポート3は、第2のLANを介して第2の端末に接続される。
【0032】
スイッチ装置1は、複数のポート10と、MAC(Media Access Control)スイッチ部11と、経路テーブル12と、OAMフレームカプセル化部13と、OAMフレームデカプセル化部14とを有する。ポート以外のこれら機能構成部は、スイッチ装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0033】
経路テーブル12は、ユーザパケットにおける「宛先MACアドレス」及び「送信元MACアドレス」に対して、対向先スイッチ装置に接続されるポートの「出力ポート番号」と、「対向先スイッチ装置のMACアドレス」とを対応付けている。この経路テーブル12によれば、データパケットの「宛先MACアドレス」及び「送信元MACアドレス」によって、「出力ポート番号」が一意に決定されるので、経路も決定する。使用中の経路に障害が発生した場合、経路テーブル12の「出力ポート番号」を切り替えるだけで、経路を切り替えることができる。尚、「どのような条件が発生した場合に、経路を切り替えるか否か」及び「どのような条件のときに、いずれの経路を選択するか」の制御ポリシは、本発明の想定するところではない。
【0034】
OAMフレームカプセル化部13は、MACスイッチ部11から、対向先スイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットを入力する。OAMフレームカプセル化部13は、経路テーブル12を参照し、対向先スイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットを、「対向先スイッチ装置のMACアドレス」を宛先MACアドレスとするOAMヘッダでカプセル化し、OAMフレームパケットを生成する。そのOAMフレームパケットは、MACスイッチ部11へ出力される。
【0035】
OAMフレームデカプセル化部14は、MACスイッチ部11から、対向先スイッチ装置から受信したレイヤ2パケットを入力する。OAMフレームデカプセル化部14は、OAMフレームパケットから、OAMヘッダをデカプセル化する。デカプセル化されたレイヤ2パケットは、MACスイッチ部11へ出力される。
【0036】
MACスイッチ部11は、対向先スイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットをポートから受信したとする。このとき、経路テーブル12について、そのレイヤ2パケットの「宛先MACアドレス」及び「送信元MACアドレス」に対応する項目を参照する。ここで、「対向先スイッチ装置のMACアドレス」が登録されている場合、冗長的な複数の経路が設定されていると判断する。この場合、MACスイッチ部11は、そのレイヤ2パケットを、カプセル化部13へ出力する。
【0037】
これに対し、MACスイッチ部11は、カプセル化部13から、OAMフレームパケットを入力する。このとき、経路テーブル12について、そのOAMフレームパケットのユーザパケット部分の「宛先MACアドレス」及び「送信元MACアドレス」に対応する「出力ポート番号」を参照する。そして、MACスイッチ部11は、そのOAMフレームパケットを、その出力ポート番号のポートへ出力する。
【0038】
MACスイッチ部11は、対向先スイッチ装置から受信したOAMフレームパケットをポートから受信したとする。このとき、MACスイッチ部11は、OAMヘッダの「宛先MACアドレス」が当該スイッチ装置のMACアドレスである場合、そのOAMフレームパケットをデカプセル化部14へ出力する。
【0039】
これに対し、MACスイッチ部11は、デカプセル化部14から、レイヤ2パケットを入力する。このとき、経路テーブル12について、そのレイヤ2パケットの「宛先MACアドレス」及び「送信元MACアドレス」に対応する「出力ポート番号」を参照する。そして、MACスイッチ部11は、そのレイヤ2パケットを、その出力ポート番号のポートへ出力する。
【0040】
図5は、本発明におけるフレーム構成図である。
【0041】
図5(a)は、イーサネットフレームである。イーサネットフレームのヘッダには、宛先MACアドレスと、送信元MACアドレスと、Typeコードとが含まれる。MACアドレスは、運用保守管理対象となるレイヤ2スイッチ装置固有の、又はネットワークインタフェースカード固有の、48ビットの識別番号である。レイヤ2スイッチ装置は、その装置自体を特定する1つの装置MACアドレス(CPU−MACアドレス)を有する。端末から送信されたイーサネットフレームは、レイヤ2スイッチ装置によって受信される。
【0042】
図5(b)は、Y.1731で規定される標準イーサネットOAMフレームである。イーサネットOAMフレームは、宛先MACアドレスと、送信元MACアドレスと、Ethernet OAM TLV(Type Length Value)と、FCS(Frame Check Sequence)とを含む。
【0043】
図5(b)によれば、TypeとしてVLAN(Virtual LAN)が指定され、VLANタグが含まれている。VLANとは、仮想的な接続形態とは独立に、仮想的に構成されたグループである。イーサネットネットワークにおける第1の経路及び第2の経路には、異なるVLANタグを付与するのが好ましい。但し、第1の経路及び第2の経路が、全く異なる通信事業者ネットワークにおける異なるイーサネットネットワークを介する場合、同じVLANタグであってもよい。
【0044】
また、図5(b)によれば、TypeとしてEtherOAMが指定されており、OpCodeによってspecific fieldsが特定される。
【0045】
図5(c)は、本発明によって拡張されたイーサネットOAMフレームである。OpCodeフィールドに0x33を記述することにより、VSM(Vender Specific Message)フレームとして規定する。これによって、後続フィールドを、独自に拡張することができる。既存イーサネットスイッチにとっては、通常のフレーム処理プロセスと変わらず、最外郭の宛先MACアドレスによって転送が制御される。またイーサネットスイッチはEtherTypeフィールドの「0x8902」とOpCodeフィールドを参照し、自スイッチでのプロセスが不要と判定した場合には透過的に転送を行うため既存のイーサネットネットワークへのフレーム送出と転送に関しては互換性を有する。
【0046】
図6は、本発明におけるパケットのフローを表す説明図である。
【0047】
図6によれば、送信元端末が、パケット1を宛先端末Aへ送信し、パケット2及びパケット3を宛先端末Bへ送信している。パケット1は、宛先端末Aを示す宛先MACアドレス[00:A0:12:19:8E:10]と、送信元端末を示す送信元MACアドレス[50:7B:66:34:5E:20]とを含む。パケット2及びパケット3は、宛先端末Bを示す宛先MACアドレス[00:A0:12:19:8E:11]と、送信元端末を示す送信元MACアドレス[50:7B:66:34:5E:20]とを含む。
【0048】
レイヤ2スイッチ装置1は、LAN側のポート2からパケット1〜3を受信する。レイヤ2スイッチ装置1は、経路テーブルを参照し、パケット1のOAMヘッダの宛先MACアドレスに、宛先スイッチ装置のMACアドレス[20:4A:32:22:6B:40]を含め、送信元MACアドレスに、送信元スイッチ装置のMACアドレス[20:53:28:7B:3A:60]を含める。そして、OAMヘッダが付加されたパケット1を、ポート1から出力する。
【0049】
また、レイヤ2スイッチ装置1は、経路テーブルを参照し、パケット2のOAMヘッダの宛先MACアドレスに、宛先スイッチ装置のMACアドレス[20:4A:32:22:6B:40]を含め、送信元MACアドレスに、送信元スイッチ装置のMACアドレス[20:53:28:7B:3A:60]を含める。そして、OAMヘッダが付加されたパケット2を、ポート2から出力する。
【0050】
更に、レイヤ2スイッチ装置1は、経路テーブルを参照し、パケット2と同様に、OAMヘッダが付加されたパケット3を、ポート2から出力する。
【0051】
これにより、パケット1〜3は、送信元スイッチ装置から2つの経路を経由して宛先スイッチ装置へ転送される。宛先スイッチ装置は、受信したパケット1〜3からOAMヘッダを除去し、経路テーブルを参照して、これらパケット1〜3を所定ポートから出力する。
【0052】
以上、詳細に説明したように、本発明のパケット転送方法、スイッチ装置、プログラム及びデータ構造によれば、転送すべきパケットをOAMヘッダでカプセル化することによって、イーサネットネットワークにループが生じることなく、冗長的な複数の経路を構成することができる。
【0053】
本発明によれば、専用の経路切替装置を備える必要がなく、イーサネットネットワークに低コストで冗長的に複数の経路を構成することができる。また、複数の経路について、通常時は、現用ルート又は予備ルートの区別なく利用できるために、無駄な予備ルートを確保する必要がない。本発明によれば、イーサネットネットワークに配置された既存のスイッチ装置に何ら影響を与えない。
【0054】
更に、本発明によれば、イーサネットネットワークの規格に適用することができ、複数の経路における帯域幅やメディアを問わない。例えば、一方の経路がADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)であり、他方の経路がPON(Passive Optical Network)であってもよい。また、一方の経路が有線ネットワークであり、他方の経路が無線アクセスネットワークであってもよい。即ち、イーサネットネットワークの規格に適合する限り、冗長的に複数の経路を構成することができる。
【0055】
本発明のパケット転送方法等は、既存のイーサネットネットワーク、特に企業向けプライベートネットワークにおける高信頼化に適用できる。
【0056】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0057】
1 スイッチ装置、レイヤ2スイッチ装置
10 ポート
11 MACスイッチ部
12 経路テーブル
13 OAMフレームカプセル化部
14 OAMフレームデカプセル化部
2 端末
3 イーサネットネットワーク
4 アクセスネットワーク
5 LAN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運用保守管理フレームを送受信可能なレイヤ2スイッチ装置を用いたパケット転送方法において、
第1のスイッチ装置及び第2のスイッチ装置が、イーサネットネットワークにおける分岐点となって冗長的に複数の経路を構成しており、
第1のスイッチ装置は、レイヤ2パケットにおける宛先MACアドレス及び送信元MACアドレスに対して、第2のスイッチ装置に接続されるポートの出力ポート番号と、対向先となる第2のスイッチ装置のMACアドレスとを対応付けた経路テーブルを有し、
第1のスイッチ装置が、前記経路テーブルを参照し、第2のスイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットを、第2のスイッチ装置のMACアドレスを宛先MACアドレスとする運用保守管理ヘッダでカプセル化し、運用保守管理フレームパケットを生成する第1のステップと、
第1のスイッチ装置が、前記経路テーブルを参照し、前記運用保守管理フレームパケットを、前記出力ポート番号のポートから、前記イーサネットネットワークを介して第2のスイッチ装置へ送信する第2のステップと、
第2のスイッチ装置が、第1のスイッチ装置から受信した前記運用保守管理フレームパケットから、前記運用保守管理ヘッダをデカプセル化する第3のステップと、
第2のスイッチ装置が、前記経路テーブルを参照し、デカプセル化された前記レイヤ2パケットを、前記出力ポート番号のポートから出力する第4のステップと
を有することを特徴とするパケット転送方法。
【請求項2】
前記運用保守管理ヘッダは、イーサネットOAM(Operation Administration and Maintenance)ヘッダであることを特徴とする請求項1に記載のパケット転送方法。
【請求項3】
前記イーサネットOAMヘッダは、OpCodeによって確保されたベンダ規定メッセージ(VSM)領域に、シーケンス番号及びTTL(Time To Live)を含むことを特徴とする請求項2に記載のパケット転送方法。
【請求項4】
運用保守管理フレームを送受信可能なレイヤ2スイッチ装置において、
対向先スイッチ装置との間で、前記イーサネットネットワークにおける分岐点となって冗長的に複数の経路を構成しており、
レイヤ2パケットにおける宛先MACアドレス及び送信元MACアドレスに対して、対向先スイッチ装置に接続されるポートの出力ポート番号と、対向先スイッチ装置のMACアドレスとを対応付けた経路テーブルと、
前記経路テーブルを参照し、対向先スイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットを、対向先スイッチ装置のMACアドレスを宛先MACアドレスとする運用保守管理ヘッダでカプセル化し、運用保守管理フレームパケットを生成するカプセル化手段と、
対向先スイッチ装置から受信した運用保守管理フレームパケットから、前記運用保守管理ヘッダをデカプセル化するデカプセル化手段と、
前記経路テーブルを参照し、前記対向先スイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットを前記カプセル化手段へ転送し、該カプセル化手段から出力された前記運用保守管理フレームパケットを、前記出力ポート番号のポートへ出力すると共に、前記対向先スイッチ装置から受信した運用保守管理フレームパケットを前記デカプセル化手段へ転送し、該デカプセル化手段から出力されたレイヤ2パケットを、前記出力ポート番号のポートへ出力するMACスイッチ手段と
を有することを特徴とするレイヤ2スイッチ装置。
【請求項5】
前記運用保守管理ヘッダは、イーサネットOAMヘッダであることを特徴とする請求項4に記載のレイヤ2スイッチ装置。
【請求項6】
前記イーサネットOAMヘッダは、OpCodeによって確保されたベンダ規定メッセージ(VSM)領域に、シーケンス番号及びTTL(Time To Live)を含むことを特徴とする請求項5に記載のレイヤ2スイッチ装置。
【請求項7】
運用保守管理フレームを送受信可能なレイヤ2スイッチ装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
対向先スイッチ装置との間で、前記イーサネットネットワークにおける分岐点となって冗長的に複数の経路を構成しており、
レイヤ2パケットにおける宛先MACアドレス及び送信元MACアドレスに対して、対向先スイッチ装置に接続されるポートの出力ポート番号と、対向先スイッチ装置のMACアドレスとを対応付けた経路テーブルと、
前記経路テーブルを参照し、対向先スイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットを、対向先スイッチ装置のMACアドレスを宛先MACアドレスとする運用保守管理ヘッダでカプセル化し、運用保守管理フレームパケットを生成するカプセル化手段と、
対向先スイッチ装置から受信した運用保守管理フレームパケットから、前記運用保守管理ヘッダをデカプセル化するデカプセル化手段と、
前記経路テーブルを参照し、前記対向先スイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットを前記カプセル化手段へ転送し、該カプセル化手段から出力された前記運用保守管理フレームパケットを、前記出力ポート番号のポートへ出力すると共に、前記対向先スイッチ装置から受信した運用保守管理フレームパケットを前記デカプセル化手段へ転送し、該デカプセル化手段から出力されたレイヤ2パケットを、前記出力ポート番号のポートへ出力するMACスイッチ手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするレイヤ2スイッチ装置用のプログラム。
【請求項8】
運用保守管理フレームを送受信可能なレイヤ2スイッチ装置について、第1のスイッチ装置及び第2のスイッチ装置が、前記イーサネットネットワークにおける分岐点となって冗長的に複数の経路を構成しており、該経路に転送されるデータパケットのデータ構造であって、
第1のスイッチ装置から第2のスイッチ装置へ転送すべきレイヤ2パケットは、第2のスイッチ装置のMACアドレスを宛先MACアドレスとするイーサネットOAMヘッダでカプセル化されており、
前記イーサネットOAMヘッダは、OpCodeによって確保されたベンダ規定メッセージ(VSM)領域に、シーケンス番号及びTTLを含む
ことを特徴とするデータパケットのデータ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−232996(P2010−232996A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78966(P2009−78966)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】