説明

冗長的に送出され、あるシステムのパラメータを表す2進情報の値を判断する装置および方法

本発明は、異なる2つの判定手段(2、3)から冗長的に送出され、あるシステム(4)のパラメータを表す2進情報(IB)の値を判断する装置(1)において、前記2進情報が、前記パラメータが第1の値範囲(範囲0)に含まれるときには第1の値をとり、第2の値範囲(範囲1)に含まれるときには第2の値をとり、前記第1の値範囲(範囲0)および第2の値範囲(範囲1)が、前記判定手段(2、3)からそれぞれ発信される2進情報(IB1、IB2)の値の移行がその中で行われる移行範囲(範囲3)によって分離される装置であって、前記判定手段のうちの一方が動作不良のため値の移行を欠く2進情報(IB1、IB2)を送出したとき、パラメータが前記第1および第2の値範囲に含まれるときに正常に動作する他方の判定手段から送出される前記所定の第1または第2の値を割り当てるように適合された状態マシン(6)を備える判断手段(5)を含むことを特徴とする装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、冗長的に送出され、あるシステムのパラメータを表す2進情報の値を判断する装置および方法に関する。
【0002】
例えばペダルの「踏み込み」位置または「解放」位置など、あるシステムのパラメータを表す2進情報の値を判断することが要求される場合、システムの状態を示す「オンオフ」タイプの測定センサなどの判定要素を使用することが可能である。
【0003】
したがって、2進情報はシステムの状態を表す。その場合、センサ自体、あるいはセンサからのデータ取得チャンネルの故障により、2進情報が無くなったり、誤った2進情報が送出されたりすることがある。
【0004】
例えば、類似の第2センサのような独立した第2の判定要素を追加することにより、判定要素が故障した場合に、第2の判定要素から送信される正しい2進情報を得ることができる。
【0005】
しかしながら、2つの判定要素から送信される2つの2進情報が矛盾するとき、どちらが正しいかを知ることは不可能である。例えば、判定要素が動作不良状態にあり、一定の2進情報を送信し続けるときにこのような状態が発生することがある。
【0006】
例えば、第3センサのような第3の判定要素を追加することにより、この矛盾をなくすことができる。しかしながら、第3の判定要素を追加すると、2つの判定要素による解決策に比べて余分のコストがかかる。
【0007】
2つの判定要素によって送信される2進情報の冗長性を管理するシステムが、存在する。
【0008】
米国特許US5016587は、時間的相関を利用して、インコヒーレンスを検出し、複雑で高価な処理手段の使用後に欠陥センサを同定できるようにしている。
【0009】
本発明の目的は、2進情報の冗長性を効率的に安いコストで管理することである。
【0010】
また本発明の一態様によれば、異なる2つの判定手段から冗長的に送出され、あるシステムのパラメータを表す2進情報の値を判断する装置が提案される。前記2進情報は、前記パラメータが第1の値範囲に含まれるときには第1の値をとり、第2の値範囲に含まれるときには第2の値をとる。前記第1の値範囲および第2の値範囲は、前記判定手段からそれぞれ発信された2進情報の値の移行がその中で行われる移行範囲によって分離される。本装置は、前記判定手段のうちの一方が動作不良のため値の移行を欠く2進情報を送出したとき、パラメータが前記第1の値範囲および第2の値範囲内に含まれるときに正常に動作する他方の判定手段から送出される前記所定の第1または第2の値を割り当てる状態マシンを備える判断手段を含む。
【0011】
したがって、2つの判定手段のうちの一方に障害があるときでも、すなわち同手段が送出する2進情報がもはや移行を含んでいないときでも、障害のない判定要素の移行に基づいて、システムのパラメータを表す2進情報は、正しく判定され続ける。
【0012】
そのうえ、このような装置はコストが安く複雑ではない。
【0013】
好適には、前記判断手段は、判定手段が正常に動作し、前記パラメータが前記第1の値範囲内に含まれるときに前記第1の値を送出したときは、前記第1の値を前記2進情報に割り当て、判定手段が正常に動作し、前記パラメータが前記第2の値範囲に含まれるときに前記第2の値を送出したときは、前記第2の値を前記2進情報に割り当てるように適合されている。
【0014】
したがって、2つの判定手段が、その表すパラメータに関して移行範囲外で正常に動作しているときには、2進情報は正しく判定される。
【0015】
第1の実施形態においては、前記判断手段は2状態マシンを備え、第1状態および第2状態は、それぞれ前記第1の値および前記第2の値をとる2進情報に対応する。前記2状態マシンは、前記判定手段のうちの一方から送出された前記2進情報について前記第1の値から前記第2の値への移行が生じたとき、第1状態から第2状態への状態の変更を行い、前記判定手段のうちの一方から送出された前記2進情報について前記第2の値から前記第1の値への移行が生じたとき、第2状態から第1状態への状態の変更を行うように適合されている。
【0016】
このような2状態マシンにより、例え、2つの判定手段のうちの一方が動作不良状態にあり、移行を欠く2進情報を送信する場合でも、正しい2進情報を送出することが可能である。
【0017】
好適には、本装置はさらに、前記状態マシンを、前記第1状態および第2状態のうちの所定の状態に初期化するように適合された初期化手段を備える。
【0018】
こうすることにより、ある状態をデフォルトで優先させることが可能である。
【0019】
別の実施形態においては、前記判断手段は6状態マシンを備え、3つの第1状態および3つの第2状態は、それぞれ第1の値および第2の値をとる前記2進情報に対応し、この6状態マシンは、前記判定手段から発信された前記2進情報の値の対に応じて状態の変更を行うように適合されている。
【0020】
このような状態マシンは、状態レベルで動作するので実装が容易である。
【0021】
好適には、本装置はさらに、前記状態マシンを所定の状態に初期化するように適合された初期化手段を備える。
【0022】
一実施形態においては、前記6状態マシンは、前記第1の値または前記第2の値に対応する追加の初期化段階を含む。
【0023】
好適には、1つの状態が3つの2進要素によって表され、第1の2進要素が前記判断手段によって判断された前記2進情報に等しく、第2の2進要素が前記判定手段のうちの1つから発信された2進情報の値に等しく、第3の2進要素が他方の判定手段から発信された2進情報の値に等しい。
【0024】
好適には、前記6状態マシンは、追加の初期化状態を含み、この追加の初期化状態は、前記第1の値に等しい第1の2進要素と、前記第2の値に等しい第2および第3の2進要素によって表され、または前記第2の値に等しい第1の2進要素と、前記第1の値に等しい前記第2および第3の2進要素によって表される。
【0025】
好ましい一実施形態においては、前記2進情報は情報処理上1ビットで符号化され、前記ビットは、0であるときには前記第1の値を表し、1であるときには前記第2の値を表す。
【0026】
好適には、前記状態マシンは、3つのフリップフロップと、1つの初期化モジュールと、1つのタイミングクロックと、1つの計算モジュールとを備える同期論理回路から作製される。
【0027】
このような実装は、容易で安価である。
【0028】
例えば、2進情報は、自動車のブレーキペダルの位置を表し、ブレーキペダルの2つの位置センサから冗長的に送出される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、異なる2つの判定手段から冗長的に送出され、あるシステムのパラメータを表す2進情報の値を判断する方法も提案される。前記2進情報は、前記パラメータが第1の値範囲に含まれるときには第1の値をとり、第2の値範囲に含まれるときには第2の値をとり、前記第1および第2の値範囲は、前記判定手段からそれぞれ発信された2進情報の値の移行がその中で行われる移行範囲によって分離される。状態マシンを使用し、前記判定手段のうちの一方が動作不良のため値の移行を欠く2進情報を送出したとき、パラメータが前記第1および第2の値範囲に含まれるときに正常に動作する他方の判定手段から送出される前記所定の第1または第2の値を割り当てる。
【0030】
本発明のその他の目的、特徴および長所は、添付の図を参照して行う非限定的ないくつかの例についての以下の説明を読めば明らかになるであろう。
【0031】
本発明は、冗長的に異なる2つの判定モジュールから送出される2進情報によって表されるシステムのあらゆるパラメータに適用される。
【0032】
判定モジュールは、たとえば評価モジュールまたはセンサとすることができる。
【0033】
2進情報は、それが表すパラメータが第1の値範囲に含まれるときには第1の値を、第2の値範囲に含まれるときには第2の値をとり、第1の値範囲と第2の値範囲とは、2つの判定モジュールからそれぞれ送信される2進情報の値の移行がその中で行われる移行範囲によって分離される。
【0034】
以下の説明では、第1の値は0であり、第2の値は1である。もちろん本発明は、第1の値と第2の値との他のあらゆる対にも適用される。
【0035】
さらに、例えば2進情報は、自動車のブレーキペダルのように、連続的なストロークを有するが、「踏み込まれている」か「解放されている」かだけを知ればよい、ペダルの状態を表すことができる。
【0036】
したがって、ブレーキペダルの場合、明確に定義されたストロークスタート範囲内の「解放」値を生成し、同じく明確に定義されたストロークエンド範囲内の「踏み込み」値を生成しなければならない。したがって、これら2つの値範囲は、「解放」値と「踏み込み」値との間の移行がその中で行われる、移行範囲によって分離される。
【0037】
もちろん、本発明は、2つの値を持つことができ、その状態を知りたいと望まれるシステムの他のあらゆるパラメータに適用される。
【0038】
したがって、以下の説明では、2進情報がそれぞれ0(第1の値)、移行範囲において0または1(第1の値または第2の値)、および1(第2の値)の値をとるパラメータの値の範囲にそれぞれ対応する3つの値の範囲を、範囲0、範囲3、範囲1と称することにする。
【0039】
図1に示すように、判断装置1は、2つの判定モジュール2、3からそれぞれ発信された冗長2進情報IB1、IB2を受信する。
【0040】
冗長的に供給される2進情報IB1、IB2は、システム4のパラメータを表す。
【0041】
2進情報IB1および2進情報IB2は、装置1の判断モジュール5によって直接処理される。
【0042】
2進情報IB1および2進情報IB2の冗長処理は、判定モジュール2、3の一方が動作不良のため値の移行を欠いた2進情報を送出したときに2進情報IBの値を正しく判断することができる、判断手段5の状態マシン6を用いて行われる。
【0043】
このように、本装置により、例え2つの判定モジュールのうちの一方が動作不良をきたすか故障したときでも、2進情報の値を正しく判断することができる。
【0044】
図2は、2つの判定モジュール2および3が平常動作または正常動作しているときの図1の装置の動作を示す図である。
【0045】
第1の折れ線IB1は、第1の判定モジュール2から発信された2進情報の値を表し、これは、値Aと値Bとの間に含まれる図示のパラメータに対応する第1の値範囲、すなわち範囲0内で0をとる。第1の判定モジュールから発信される2進情報IB1の値は、値Bより大きい値Cと値Dとの間に含まれる図示のパラメータに対応する第2の値範囲、すなわち範囲1に含まれるとき1をとる。
【0046】
2進情報IB1の値0(第1の値)から値1(第2の値)への移行は、値Bと値Cとの間に含まれる図示のパラメータの値に対応する移行範囲内で行われる。この移行は、値Bと値Cとの間に含まれる図示のパラメータの任意の値に対して行われる。
【0047】
システム4の平常動作モードの場合も、第2判定モジュール3から送信される2進情報IB2の折れ線の挙動は同様である。
【0048】
2進情報IB2の値0から値1への移行は、2進情報IB1の移行値とは無関係に、値Bと値Cとの間に含まれる図示のパラメータの任意の値に対して行われる。
【0049】
2つの2進情報IB1、IB2の冗長性から導かれ、判断モジュール5によって装置1の出力部に送出される2進情報IBは、範囲0内では0の値をとり、範囲1内では1の値をとる。
【0050】
網掛け部分は、値Bと値Cとの間に含まれる2進情報によって表されるパラメータ値に対応しており、移行範囲すなわち範囲3に含まれるパラメータの任意の値に対して、値0から値1への移行が行われ得ることを示している。
【0051】
以降の図は、動作不良のとき、判定モジュール2、3のうちの一方が移行を欠いた2進情報を供給した場合でも、正しい2進信号IBを出力部に送出することができる、図1による装置の動作を示す。
【0052】
図3には、判定モジュール2、3から供給される2進情報IB1、IB2の移行条件に基づく状態変更を有する2状態マシン6が示してある。
【0053】
2状態マシン6は、0の値(第1の値)をとる2進情報IBに対応する第1の2進状態20と、1の値(第2の値)をとる2進情報IBに対応する第2の2進状態21とを含む。
【0054】
状態マシン6が、0の値をとる2進情報IBに対応する状態20にあるとき、2進情報IB1または2進情報IB2について0から1への移行が行われる場合には、状態マシン6は1の値をとる2進情報IBに対応する状態21になり、そうでない場合には、状態マシン6は0の値をとる2進情報IBに対応する状態20のままである。
【0055】
さらに、状態マシン6が、1の値をとる2進情報IBに対応する第2状態21にあるとき、2進情報IB1または2進情報IB2について1から0への移行が行われる場合には、状態マシン6は0の値をとる2進情報IBに対応する状態20になる。
【0056】
この実施形態では、状態マシン6の移行条件は、冗長2進情報IB1およびIB2の値の移行に関するものである。
【0057】
図4は、6つの状態を含む状態マシン6の一実施形態を示す。これは、図3の状態マシンから、2進情報IB1およびIB2の移行に基づくのではなく2進情報IB1およびIB2の値に基づく状態変化条件を有する状態マシンへの転換である。
【0058】
3つの状態24、25、26は0の値をとる状態マシン6から送出される2進情報IBに対応し、3つの状態27、28、29は1の値をとる状態マシン6から送出される2進情報IBに対応する。
【0059】
状態マシン6が状態25にあるとき、2進情報IB1が0、IB2が1の値をとる場合には、状態マシン6は遷移30を経て状態27になり、2進情報IB1およびIB2の双方が1の値をとる場合には、状態マシン6は遷移31を経て状態28になり、2進情報IB1が1、IB2が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移32を経て状態29になる。さらに、2進情報IB1およびIB2の双方が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移33を介して状態25のままである。
【0060】
状態マシン6が状態24にあるとき、2進情報IB1およびIB2の双方が1の値をとる場合には、状態マシン6は遷移34を経て状態28になり、2進情報IB1およびIB2の双方が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移35を経て状態25になる。2進情報IB1が1、IB2が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移36を経て状態29になり、2進情報IB1が0、IB2が1の値をとる場合には、状態マシン6は遷移37を介して状態24のままである。
【0061】
状態マシン6が状態26にあるとき、2進情報IB1およびIB2の双方が1に等しい場合には、状態マシン6は遷移38を経て状態28になり、2進情報IB1およびIB2の双方が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移39を経て状態25になる。2進情報IB1が0、IB2が1の値をとる場合には、状態マシン6は遷移40を経て状態27になり、2進情報IB1が1、IB2が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移41を経て状態26のままである。
【0062】
状態マシン6が状態28にあるとき、2進情報IB1が0、IB2が1の値をとる場合には、状態マシン6は遷移42を経て状態24になり、2進情報IB1が1、IB2が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移43を経て状態26になる。2進情報IB1およびIB2の双方が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移44を経て状態25になり、2進情報IB1およびIB2の双方が1の値をとる場合には、状態マシン6は遷移45を経て状態28のままである。
【0063】
状態マシン6が状態27にあるとき、2進情報IB1およびIB2の双方が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移46を経て状態25になり、2進情報IB1およびIB2の双方が1の値をとる場合には、状態マシン6は遷移47を経て状態28になる。2進情報IB1が1、IB2が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移48を経て状態26になり、2進情報IB1が0、IB2が1の値をとる場合には、状態マシン6は遷移49を経て状態27のままである。
【0064】
状態マシン6が状態29にあるとき、2進情報IB1およびIB2の双方が1の値をとる場合には、状態マシン6は遷移50を経て状態28になり、2進情報IB1およびIB2の双方が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移51を経て状態25になる。2進情報IB1が0、IB2が1の値をとる場合には、状態マシン6は遷移52を経て状態24になり、2進情報IB1が1、IB2が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移53を経て状態29のままである。
【0065】
図5は、0の値をとる2進情報IBに対応する状態への状態マシン6の移行を優先させるために、初期化状態として状態28が選択されている、図4に記載の状態マシン6を示す図である。実際、初期化状態として状態28が選択されるとき、判定モジュール2または3のいずれか一方が、0に等しい2進情報IB1またはIB2を発信するとすぐに、状態マシン6は、それぞれ遷移42、44または43を経て、出力部に送出される0に等しい2進情報IBに対応する状態24、25または26になる。
【0066】
図6は、初期化状態として状態25が選択されている、図4に記載の状態マシン6を示す図である。この実施形態の場合、出力部に送出される1に等しい2進情報IBに対応する状態への状態マシン6の移行が優先される。
【0067】
実際、状態マシン6が状態25にあるとき、判定モジュール2または3のいずれか一方が、1に等しい2進情報IB1またはIB2を発信するとすぐに、状態マシン6は、それぞれ遷移30、31または32を経て、出力部に送出される1に等しい2進情報IBに対応する状態27、28または29になる。
【0068】
図5および図6の装置により、2進情報IB1またはIB2のいずれか一方について移行が生じる前に、装置の決定的な初期化が可能になる。
【0069】
したがって、判定モジュール2または3から発信された2進情報IB1およびIB2の初回受信時に、2進情報IB1およびIB2が矛盾する値を有するとき、2進情報IBが0の値をとる状態マシン6の状態を優先させることが可能である。
【0070】
そのような場合は、初期化サイクル時間中に、矛盾があった場合に優先される状態ではない状態マシン6の状態を宣言するが、初期化サイクル時間は概して充分に短くて問題が生じないので、大部分の適用例では、そのことが重大になることはない。
【0071】
図7は、2進情報IBが0の値をとる追加の初期化状態55をさらに含む、図4に記載の状態マシン6を示す図である。
【0072】
状態マシン6が追加の初期化状態55にあるとき、受信した2進情報IB1およびIB2の双方が1に等しい場合、状態マシン6は遷移56を経て状態28になる。
【0073】
2進情報IB1が0、IB2が1の値をとるとき、状態マシン6は遷移57を経て状態24になる。2進情報IB1およびIB2の双方が0の値をとるとき、状態マシン6は遷移58を経て状態25になり、2進情報IB1が1、IB2が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移59を経て状態26になる。
【0074】
したがって、図5の実施形態の場合と同様に、出力部に送出される0の値をとる2進情報IBに対応する状態への状態マシン6の移行が優先される。
【0075】
さらに、初期化されると状態マシン6は2進情報IBが0の値をとる状態にあるので、そのような装置により初期化サイクル時間中の望ましくない移行状態を避けることができる。
【0076】
同様に、図8は、出力部に送出される2進情報IBが1の値をとる追加の初期化状態60が状態マシン6に追加されている、図4に記載の実施形態を表す図である。
【0077】
状態マシン6が状態60にあるとき、供給された2進情報IB1およびIB2の双方が0に等しい場合には、状態マシン6は遷移61を経て状態25になる。2進情報IB1が1、IB2が0の値をとる場合には、状態マシン6は遷移62を経て状態29になり、2進情報IB1およびIB2の双方が1の値をとる場合には、状態マシン6は遷移63を経て状態28になり、2進情報IB1が0、IB2が1の値をとる場合には、状態マシン6は遷移64を経て状態27になる。
【0078】
このような装置により、状態マシン6の初期化状態を、出力される2進情報が1の値をとり、初期化サイクル時間中に望ましくない移行状態がみられることもないという有利な状態にすることができる。
【0079】
図9および図10は、それぞれ図7および図8に記載の装置の実施形態を示す図である。状態マシン6の状態は3つの2進要素で表され、第1の2進要素は出力部に送出される2進情報IBに等しく、第2の2進要素は2進情報IB1の値に等しく、第3の2進要素は2進情報IB2に等しい。
【0080】
これらの例において2進情報は0の値(第1の値)または1の値(第2の値)をとることができる。もちろん、これらの実施形態は第1の値および第2の値の他のあらゆる対にも有効である。
【0081】
追加の初期化状態55および60は、3ビットコード011および100で示してある。
【0082】
したがって、状態マシン6が現在おかれている状態を表す3つの2進要素のうちの最初の要素がそのまま、状態マシン6から送出すべき2進情報の値となるので、状態マシン6は簡単に実装することができる。
【0083】
また、第1の値が0で第2の値が1のときは、状態マシンの1つの状態を3ビットだけでコード化することができる。
【0084】
前述したすべての実施形態について、一般的に、2進情報IB1、IB2およびIBの第1の値および第2の値として0および1を採用するのが好適である。というのは、そのような2進情報をコード化するのに1ビットで足りるからである。
【0085】
図11および図12は、図9および図10に記載の状態マシン6の同期論理回路の形での実装を表す図である。
【0086】
もちろん、前述した状態マシン6は、特に、状態マシン6の状態を最適化してコード化するなど、ソフトウェアの形で作製することができる。
【0087】
図11および図12の実施形態は、3つのフリップフロップB1、B2およびB3と、1つの初期化モジュールMIと、そのまま出力部に送出される2進情報IBの値である、状態マシン6の1つの状態のコード化の第1の2進要素を表す第1ビットを生成するように適合された計算モジュールMCとを備える。
【0088】
これら2つの実施形態は、状態マシン6のある状態のコード化の最下位の2つの2進要素を表す最下位の2ビットを生成するための計算モジュールを必要としない。
【0089】
上記のことを説明するために、2進情報が、ブレーキペダルの2つの位置センサから冗長的に送出される、自動車のブレーキペダルの位置を表す場合について詳細に説明する。
【0090】
位置センサはブレーキペダルのストローク開始部の2つの接点であり、ペダルが踏まれていないときには0の値をとる2進情報を供給し、ブレーキが作動するまでペダルが充分に踏まれたときには1の値をとる2進情報を供給するように設計され調整される。
【0091】
ブレーキペダルのストローク上には移行範囲が存在し、それは、ペダルの休止位置と、実際にブレーキを作動させ始めるブレーキペダル位置との間にある。
【0092】
状態マシン6は完全に対称であり、本発明はセンサの切換えの順序がどうであろうと動作するので、2進情報IB1を発信する接点および2進情報IB2を発信する接点は任意に選択される。
【0093】
初期化状態は、ブレーキペダルの動作に関する要件に従って選択される。動作の安全性の調査によれば、デフォルトとして、実際にはそうではなくともペダルが「解放された」状態にあることを知らせるよりも、実際にはそうでなくともブレーキペダルが「踏み込まれた」状態にあることを知らせる方が好ましいので、「踏み込まれた」状態への初期化が行われる。
【0094】
実際、車両の乗客の安全のために、状態マシン6から送出される、ブレーキペダルが「踏み込まれた」状態をもたらす2進情報を優先させることが好ましい。
【0095】
したがって、送信された2進情報の値がフリーズするような機械的または電気的障害が接点のうちの一方で発生した場合でも、状態マシン6は動作し続け、ブレーキペダルの「踏み込まれた」状態または「解放された」状態に対応する正しい2進情報IBを出力部に供給し続ける。何らかの低下動作モードを管理することは不要である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一態様による装置を示す図である。
【図2】本発明の一態様による、情報を表すパラメータの値の範囲に応じて、判定手段から供給され、正常に動作する判断手段から送出される2進情報の値を示す図である。
【図3】本発明の一態様による装置の判断手段の2状態マシンを示す図である。
【図4】本発明の別の態様による装置の判断手段の6状態マシンを示す図である。
【図5】本発明の一態様による、図4による装置の初期化を示す図である。
【図6】本発明の一態様による、図4による装置の初期化を示す図である。
【図7】本発明の一態様による、追加の初期化状態が付加された図4の装置の改良形態を示す図である。
【図8】本発明の一態様による、追加の初期化状態が付加された図4の装置の改良形態を示す図である。
【図9】マシンの状態のコード化による図7に記載の装置の最適化を示す図である。
【図10】マシンの状態のコード化による図8に記載の装置の最適化を示す図である。
【図11】本発明の一態様による、図9の装置の同期論理回路による実装の例を示す図である。
【図12】本発明の一態様による、図10の装置の同期論理回路による実装の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる2つの判定手段(2、3)から冗長的に送出され、あるシステム(4)のパラメータを表す2進情報(IB)の値を判断する装置(1)において、前記2進情報が、前記パラメータが第1の値範囲(範囲0)に含まれるときには第1の値をとり、第2の値範囲(範囲1)に含まれているときには第2の値をとり、前記第1の値範囲(範囲0)および第2の値範囲(範囲1)が、前記判定手段(2、3)からそれぞれ発信される2進情報(IB1、IB2)の値の移行がその中で行われる移行範囲(範囲3)によって分離される装置であって、前記判定手段のうちの一方が動作不良のため値の移行を欠く2進情報(IB1、IB2)を送出したとき、パラメータが前記第1および第2の値範囲に含まれるときに正常に動作する他方の判定手段から送出される前記所定の第1または第2の値を割り当てるように適合された状態マシン(6)を備える判断手段(5)を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記判断手段(5)が、さらに、前記判定手段(2、3)が正常に動作し、前記パラメータが前記第1の値範囲(範囲0)に含まれるときに前記第1の値を送出したときは、前記第1の値を前記2進情報(IB)に割り当て、判定手段(2、3)が正常に動作し、前記パラメータが前記第2の値範囲(範囲1)に含まれるときに前記第2の値を送出したときは、前記第2の値を前記2進情報に割り当てるように適合されている請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記判断手段(5)が2状態(20、21)マシン(6)を備え、第1状態(20)および第2状態(21)が、それぞれ前記第1の値および第2の値をとる2進情報(IB)に対応し、前記2状態マシン(6)が、前記判定手段(2、3)のうちの一方から送出された前記2進情報(IB1、IB2)について前記第1の値から前記第2の値への移行が生じたとき、第1状態(20)から第2状態(21)への状態の変更を行い、前記判定手段(2、3)のうちの一方から送出された前記2進情報(IB1、IB2)について前記第2の値から前記第1の値への移行が生じたとき、第2状態(21)から第1状態(20)への状態の変更を行うように適合されている請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記状態マシン(6)を、前記第1状態(20)および第2状態(21)のうちの所定の状態に初期化するように適合された初期化手段をさらに備える請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記判断手段が6状態(24、25、26、27、28、29)マシンを備え、3つの第1状態(24、25、26)および3つの第2状態(27、28、29)が、それぞれ前記第1の値および第2の値をとる前記2進情報に対応し、前記6状態マシン(6)が、前記送信手段(2、3)から発信された前記2進情報の値の対(IB1、IB2)に応じて状態の変更を行うように適合されている請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記状態マシンを所定の状態に初期化するように適合された初期化手段をさらに備える請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記6状態マシン(6)が、前記第1の値または前記第2の値に対応する追加の初期化状態(55、60)を含む請求項5に記載の装置。
【請求項8】
1つの状態が3つの2進要素によって表され、第1の2進要素が前記判断手段(5)によって判断された前記2進情報に等しく、第2の2進要素が前記判定手段のうちの一方から発信された2進情報の値に等しく、第3の2進要素が他方の判定手段から発信された2進情報の値に等しい請求項5から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記6状態マシン(6)が、追加の初期化状態(55、60)を含み、前記追加の初期化状態が、前記第1の値に等しい第1の2進要素と、前記第2の値に等しい前記第2および第3の2進要素によって表され、あるいは前記第2の値に等しい第1の2進要素と、前記第1の値に等しい第2および第3の2進要素によって表される請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記2進情報および前記2進要素が情報処理上1ビットで符号化され、前記ビットは、0であるときは前記第1の値を表し、1であるときは前記第2の値を表す請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記状態マシンが、3つのフリップフロップ(B1、B2、B3)と、1つの初期化モジュール(MI)と、1つのタイミングクロック(H)と、1つの計算モジュール(MC)とを備える同期論理回路で作製される請求項10に記載の装置。
【請求項12】
2進情報(IB)が、ブレーキペダルの2つの位置センサから冗長的に送出され、自動車のブレーキペダルの位置を表す請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
異なる2つの判定手段(2、3)から冗長的に送出され、あるシステムのパラメータを表す2進情報の値を判断する方法において、前記2進情報が、前記パラメータが第1の値範囲(範囲0)に含まれるときには第1の値をとり、第2の値範囲(範囲1)に含まれるときには第2の値をとり、前記第1および第2の値範囲が、前記判定手段(2、3)からそれぞれ発信された2進情報の値の移行がその中で行われる移行範囲(範囲3)によって分離される方法であって、状態マシン(6)を使用し、前記判定手段のうちの一方が動作不良のため値の移行を欠く2進情報を送出したとき、パラメータが前記第1および第2の値範囲に含まれるときに正常に動作する他方の判定手段から送出される前記所定の第1または第2の値を割り当てることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−521034(P2009−521034A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546533(P2008−546533)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/FR2006/051207
【国際公開番号】WO2007/071857
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】