説明

写真プリント装置および搬送装置

【課題】搬送ローラ対の挟持状態の解除による印画紙の振動を抑制して、高精度な搬送を実施する。
【解決手段】印画紙を所定の方向へ搬送しながら露光処理を行う写真プリント装置1であって、印画紙Pを挟持した状態で所定の方向へ搬送する第1搬送ローラ対と、この第1搬送ローラ対の下流側に配置されており、第1搬送ローラ対によって搬送される印画紙Pを受け取って所定の方向へ搬送する第2搬送ローラ対と、この第2搬送ローラ対の下流側に配置された露光処理位置において、印画紙に対して露光処理を行う露光部Gpと、第1搬送ローラ対から第2搬送ローラ対に対して印画紙Pを受け渡す際に、第1搬送ローラ対における印画紙Pの挟持状態を、所定時間以上かけて解除する第1カム74と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光処理位置近傍に配置された2組の搬送ローラ対を含む写真プリント装置および同じく2組の搬送ローラ対を含む搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
写真プリント装置は、ロール状に巻かれた長尺の印画紙を、順次搬送しながら種々の処理を施して個々の写真とする。この種々の処理には、印画紙をカッターでプリントサイズに切断する処理(切断処理)や、光を照射して所望の画像を焼き付ける処理(露光処理)、現像液中を通過させる処理(現像処理)、現像液を乾燥させる処理(乾燥処理)などが含まれる。
【0003】
写真プリント装置においては、これらの種々の処理を、順次、効率よくかつ精度よく行われることが望まれる。このため、これらの処理位置や処理間の印画紙の搬送も効率よくかつ精度よく行われる必要がある。現在では、この必要性に応える搬送手段として、印画紙を挟持(圧着)して搬送するローラ対が一般的に用いられている。
ここで、上記の処理の中でも、特に、搬送の精密性が必要とされるのは露光処理である。これは、露光処理における照射光の走査が、印画紙の搬送速度と同期しているためである。したがって、露光処理位置での印画紙の搬送は、高い精度で速度管理を行う必要がある。換言すれば、露光中の印画紙の搬送に乱れが生じると、この乱れによる露光ムラが現れるため、露光処理位置付近のローラ対は、印画紙を、確実に挟持し、安定した速度で搬送する必要がある。
【0004】
ここで、露光処理は、例えば、光を出射する露光ヘッドと、この露光ヘッドの直上流と直下流とにそれぞれ設けられた搬送ローラ対(便宜的に、上流側を第2ローラ対、下流側を第3ローラ対とする)とによって行われる。また、露光処理部への印画紙の搬送は、この露光処理の上流側、例えば、切断処理部の下流側に設けられた導入ローラ対(第1ローラ対)によって搬送される。つまり、上流側から、第1ローラ対、第2ローラ対、第3ローラ対の順に配置されている。
【0005】
これらのローラ対は、挟持状態と挟持解除状態とに切り替え自在なものとなっている。詳細には、切断処理位置からの印画紙の先端を第1ローラ対で挟持して搬送を開始した後には、その印画紙の先端が第2ローラ対の部位に達したタイミングで、この第2ローラ対で印画紙の先端を挟持し、かつ、第1ローラ対の挟持を解除して第2ローラ対での搬送を開始する。そして、この第2ローラ対で搬送される印画紙の先端が第3ローラ対の部位に達したタイミングで、この第3ローラ対で印画紙の先端を挟持し、かつ第2ローラ対の挟持を解除して第3ローラ対での搬送を開始する。
【0006】
ここで、第2ローラ対と第3ローラ対の印画紙の受け渡しの際に、第2ローラ対の挟持状態が解除されるが、この解除の際に、印画紙に振動を与えてしまい、この振動によって露光位置がずれることによる横縞(バンディング)が発生するという問題がある。
これに対し、第2ローラ対の解除を機械的に制御することでバンディングを軽減することを可能にした写真プリント装置について、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2007−58116号公報(平成19年3月8日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記公報に開示された写真プリント装置の構成では、第2ローラ対の解除の制御だけであり、バンディングの発生問題を完全に解決することは困難である。これは、露光処理位置の上流に設けられた他の処理位置から露光処理位置への印画紙の受け渡しのために設けられた搬送ローラ対(第1ローラ対)が、印画紙の挟持状態から解除状態になるときに、この解除の際に印画紙に振動を付与してしまうことが原因である。
【0008】
そこで、本発明による写真プリント装置は、搬送ローラ対(第1ローラ対)の挟持状態の解除による印画紙の振動を抑制して、高精度な搬送を実施することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る写真プリント装置は、印画紙を所定の方向へ搬送しながら露光処理を行う写真プリント装置であって、第1搬送ローラ対と、第2搬送ローラ対と、露光部と、挟持状態解除部と、を備えている。第1搬送ローラ対は、印画紙を挟持した状態で所定の方向へ搬送する。第2搬送ローラ対は、この第1搬送ローラ対の下流側に配置されており、第1搬送ローラ対によって搬送される印画紙を受け取って所定の方向へ搬送する。露光部は、所定の露光処理位置において、印画紙に対して露光処理を行う。挟持状態解除部は、第1搬送ローラ対から第2搬送ローラ対に対して印画紙を受け渡す際に、第1搬送ローラ対における印画紙の挟持状態を、所定時間以上かけて解除する。
【0010】
ここでは、印画紙を所定の方向へ搬送し、この搬送中に露光処理を行う写真プリント装置において、第1搬送ローラ対と、この第1搬送ローラ対の下流側に配置された第2搬送ローラ対と、露光部と、第1搬送ローラ対の挟持状態を解除する挟持状態解除部と、を備えている。
ここで、先ず、第1搬送ローラ対は、上流側から送られてきた印画紙を挟持した状態で回転することで、印画紙を第2搬送ローラ対に向けて送り出す。第2搬送ローラ対は、第1搬送ローラ対から送られてきた印画紙を挟持し、露光位置に向けて送り出す。そして、第2搬送ローラ対が印画紙を挟持した後、第1搬送ローラ対の挟持状態の解除が行われ、この挟持状態の解除が、所定時間以上かけて行われる。なお、露光処理位置は、例えば、第1搬送ローラ対と第2搬送ローラ対との間に設けられていてもよいし、第2搬送ローラ対の直下流側に設けられていてもよい。
【0011】
従来、写真プリント装置では、露光のための光が照射される露光処理位置を、印画紙が所定の速度で通過するように、露光処理位置の上流と下流とのそれぞれに少なくとも一つずつの搬送ローラ対が設けられている。これらの搬送ローラ対は、それぞれ個々に、印画紙の挟持と解除とを行うことが可能なものである。具体的には、露光処理位置の上流側に設けられた他の処理位置(例えば、印画紙を所定長さに切断する切断処理位置)から露光処理位置へ搬送(受け渡し)する第1搬送ローラ対と、露光処理位置の直上流と直下流とにそれぞれ設けられた第2搬送ローラ対と第3搬送ローラ対とが設けられている。これにより、上流側の他の処理位置から露光処理位置への確実な受け渡し(第1搬送ローラ対と第2搬送ローラ対)と、露光処理位置の精密な所定速度搬送(第2搬送ローラ対と第3搬送ローラ対)と、を得ることができる。
【0012】
ここで、露光処理は、この種の写真プリント装置の露光ユニットでは、印画紙を所定の方向に所定速度で移動(搬送)させ、印画紙の搬送方向と直交する方向に、光を走査することによって行われるものである。この光の走査は、印画紙の搬送速度と同期しているため、露光処理位置での印画紙の搬送は、高い精度で速度管理を行う必要がある。したがって、露光中の印画紙の搬送に乱れが生じると、この乱れによる露光ムラが現れるため、露光処理位置付近のローラは、印画紙を、確実に挟持し、安定した速度で搬送する必要がある。
【0013】
しかしながら、上記のローラ対の回転速度を一定に保つことが可能であっても、それぞれのローラ間の受け渡し時におけるローラ対の挟持解除の瞬間に印画紙が振動するおそれがある。これにより、この振動が発生した時点で露光が行われた領域に横縞(バンディング)が発生してしまう。すなわち、例えば、露光処理位置の上流に設けられた他の処理位置から露光処理位置への印画紙の受け渡しのために設けられた搬送ローラ対(第1搬送ローラ対)が、印画紙の挟持状態から解除状態へと移行するときに、この解除によって印画紙に振動を付与してしまい、写真の品質が低下してしまう場合がある。
【0014】
そこで、本発明による写真プリント装置は、ローラの挟持解除時における印画紙の振動を防ぐために、第1搬送ローラ対の挟持解除が、挟持状態解除部によって所定時間以上かけて解除される。
このような構成によれば、第1搬送ローラ対の挟持状態が解除される際に、急激に解除されることが無く、従来と比較してゆっくり解除される。換言すれば、挟持状態と解除状態との二段階制御ではなく、この挟持状態と解除状態との間の状態(中間状態)を設けることができる。このため、印画紙は、第1搬送ローラ対に挟持された状態から完全に解除された状態になるまでの間において、印画紙が第2搬送ローラ対に引っ張られる力と、この第1搬送ローラ対の挟持面と印画紙との摩擦力と、のバランスが急激に変化してしまうことを回避することができる。したがって、第1搬送ローラ対の挟持解除によって生じる印画紙への外力の作用を、従来よりも軽減することが可能になる。
この結果、露光処理位置における印画紙の撓みや振動が軽減され、品質が高い写真をプリントすることが可能になる。
【0015】
第2の発明に係る写真プリント装置は、第1の発明に係る写真プリント装置であって、第1搬送ローラ対の挟持解除速度は、10mm/秒である。
ここでは、第1搬送ローラ対が10mm/秒以下の速度で挟持状態から完全な解除状態へと移行させることで、上述した所定時間以上かけて挟持状態から中間状態を経て解除状態へと移行させる。
【0016】
これにより、常に一定の挟持解除速度以下を維持することが可能になるため、第1・第2搬送ローラ対から印画紙への振動付与をより効果的に抑制しながら搬送を行うことができる。したがって、バンディングを軽減することが可能になり、常に品質が高い写真をプリントすることができる。
【0017】
第3の発明に係る写真プリント装置は、第1または第2の発明に係る写真プリント装置であって、第1搬送ローラ対の挟持解除速度と第1搬送ローラ対における印画紙の搬送速度との比は、0.1〜0.7である。
ここでは、第1搬送ローラ対の挟持解除速度をAとし、搬送速度をBとすると、A/Bが0.1〜0.7である。
これにより、第1搬送ローラ対の挟持解除速度に対する搬送速度の範囲が決定される。そして、搬送速度に対する挟持解除速度をこの範囲内に設定することで、第1・第2搬送ローラ対から印画紙への振動付与を抑制して、より確実にバンディングを抑えることが可能になる。
【0018】
第4の発明に係る写真プリント装置は、第1から第3の発明のいずれか一つに係る写真プリント装置であって、挟持状態解除部は、カムを含む。
ここでは、第1搬送ローラ対を挟持解除状態にするための機構として、第1搬送ローラ対のローラ間の距離を調整するカムを含んだ構成である。
これにより、例えば、回転運動を上下動運動に変換することが可能になるので、第1搬送ローラ対を含むローラを回転させるためのモータの動力を、この挟持状態解除に併用することが可能になる。また、カムの形状によって、機械的振動を与えずに、挟持状態、解除状態およびその中間状態を、精密かつ高い再現性を有して、機械的に作り出すことが可能になる。
この結果、サイズアップとコストアップとを最小限に抑えつつ、常に品質の高い写真をプリントすることが可能になる。
【0019】
第5の発明に係る写真プリント装置は、第1から第3の発明のいずれか一つに係る写真プリント装置であって、挟持状態解除部は、第1搬送ローラ対に含まれる2つのローラの間隔を調整する離間機構である。
ここでは、挟持状態解除部として、第1搬送ローラ対のローラ間隔を調整するための離間機構を用いている。なお、この離間機構は、例えば、第1搬送ローラ対の一方のローラを上下方向に変位させるステッピングモータなどを有し、このステッピングモータを制御する制御回路を含む機構を用いることができる。
【0020】
これにより、ローラ間の距離を自在に制御することが可能になる。また、制御回路のプログラムを変更するだけで、種々の設定が可能になり、印画紙の厚さやローラと印画紙の摩擦力が変更された場合においても、容易に対応することが可能になる。このため、常に最適な挟持解除速度を維持することが可能になり、バンディングを抑えることができる。
この結果、種々の印画紙を用いた場合においても、常に高い品質の写真をプリントすることが可能になる。
【0021】
第6の発明に係る搬送装置は、2つのローラの間に挟持した状態でシート材を所定の方向へ搬送する第1搬送ローラ対と、この第1搬送ローラ対の下流側に配置されており、第1搬送ローラ対によって搬送されるシート材を受け取って所定の方向へ搬送する第2搬送ローラ対と、第1搬送ローラ対から第2搬送ローラ対に対してシート材を受け渡す際に、第1搬送ローラ対におけるシート材の挟持状態を、所定時間以上かけて解除する制御部と、を備えている。
【0022】
ここでは、シート材を所定の方向へ搬送するための搬送装置であって、第1搬送ローラ対と、この第1搬送ローラ対の下流側に配置された第2搬送ローラ対と、第1搬送ローラ対の挟持状態を解除する挟持状態解除部と、を備えている。
ここで、先ず、第1搬送ローラ対は、上流側から送られてきたシート材を挟持した状態で回転することで、シート材を第2搬送ローラ対に向けて送り出す。第2搬送ローラ対は、第1搬送ローラ対から送られてきたシート材を挟持した状態で回転することで、シート材を下流側に向けて送り出す。そして、第2搬送ローラ対がシート材を挟持した後、第1搬送ローラ対の挟持状態の解除が所定時間以上かけて行われる。なお、挟持状態解除部としては、第1搬送ローラ対のローラ間の距離を調整するカムや離間機構を用いることができる。
【0023】
一般的に、紙や薄い板状の金属などのシート材を搬送する場合には、このシート材を挟持して回転するローラ対が用いられる。ローラ対は、シート材の長さによらず、連続して搬送することが可能であり、また、搬送方向の変更も容易に行うことが可能である。このため、効率的な搬送手段として広く利用されている。またさらに、搬送されるシート材に所望の処理を施す場合などには、複数のローラ対の組み合わせによって、処理工程ごとに搬送速度を変更することなども可能である。
【0024】
ここで、搬送されるシート材が、所定の長さに分割された状態で上流側のローラ対から下流側のローラ対に受け渡される場合、個々のシート材の上流端部分が、上流側のローラ対から完全に送り出される前に、ローラ対の挟持自体を解除する搬送方法がある。これは、下流側のローラ対がシート材を挟持した後に、上流側のローラ対がシート材に対して不要な外力を加えないようにするためである。
【0025】
しかしながら、上流側のローラ対を解除する際に、この解除による振動が搬送するシート材に伝わり、このシート材の搬送に影響を与えてしまう。例えば、シート材が、この振動によって撓んでしまい、下流側で行われる処理が正常に行われなくなったり、または、振動によって撓んだままの状態で下流側のローラ対に搬送され、折り目ができてしまうような搬送エラーが発生してしまうおそれがある。
【0026】
そこで、本発明による搬送装置は、ローラ対の挟持解除によるシート材の振動を防ぐために、上流側のローラ対の挟持解除が、挟持状態解除部によって、所定時間以上かけて解除される。
このような構成によると、上流側のローラ対の挟持状態が解除される際に、急激に解除されることが無く、従来と比較してゆっくり解除されることができる。換言すれば、挟持状態と解除状態との二段階制御ではなく、この挟持状態と解除状態との間の状態(中間状態)を設けることができる。このようにすると、シート材は、上流側のローラ対に挟持された状態から完全に解除された状態になるまでの間において、シート材が下流側のローラ対に引っ張られる力と、この上流側ローラ対の挟持面とシート材との摩擦力と、のバランスが急激に変化することがなくなる。したがって、上流側のローラ対の挟持解除によって生じるシート材への外力の作用を軽減することが可能になる。
【0027】
この結果、下流側で行われる処理(例えば、露光処理等)が正常に行われ、また、下流側のローラ対における搬送エラーの発生を低減することができる。したがって、高い品質のシート材を、効率よく高精度に搬送することが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る写真プリント装置によれば、露光処理位置への印画紙の搬送ローラ対の挟持解除によって生じる印画紙への外力の作用を軽減することができる。したがって、第1・第2搬送ローラ対の近傍に設けられた露光処理位置における印画紙の撓みや振動が軽減され、品質が高い写真をプリントすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の一実施形態に係る写真プリントシステム(写真プリント装置)1について、図1から図10を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下の説明で用いる「上流」・「下流」とは、印画紙Pが搬送される方向に関するものであり、印画紙ロール側を上流、印画紙Pの搬出口100側を下流として説明する。
【0030】
[写真プリントシステム1の構成]
本発明の一実施形態に係る写真プリントシステム1は、図1に示すように、いわゆるデジタルミニラボと呼ばれる写真プリントシステム1である。
写真プリントシステム1は、操作部20と、プリント部50とを備えている。
操作部20は、現像された写真フィルムやデジタルカメラ等で撮影されたデジタル画像データが保存されたメモリカード等のメディアから画像データを取り込んでプリントデータを作成し、プリント部50に対して送信する。
【0031】
プリント部50は、操作部20から受信したプリントデータに基づいて、感光材料である印画紙P(シート材)に対して露光処理および現像処理を行って写真プリント画像を形成する。
[操作部20の構成]
操作部20は、図1に示すように、モニタ21と、キーボード22と、マウス23と、コンピュータユニット30と、メディアリーダ31と、フィルムスキャナ40と、を有している。
【0032】
コンピュータユニット30は、モニタ21、キーボード22、マウス23と接続されており、フィルムスキャナ40およびプリント部50に含まれる各部の動作や画像処理および画像データの入出力等の制御を行う。
モニタ21には、各種制御のためのGUI(Graphical User Interface)や処理対象の画像が表示される。
【0033】
メディアリーダ31は、本写真プリントシステム1のコントローラとして機能するコンピュータユニット30に搭載されており、デジタルカメラ等で撮影された画像のデジタルデータをメモリカードや各種半導体メモリ、CD−R等のメディアから取り込む。
フィルムスキャナ40は、写真フィルムFに現像された撮影コマに対応する画像をデジタル画像データとして取り込む。
【0034】
[プリント部50の構成]
プリント部50は、操作部20から受信したプリントデータに基づいて、印画紙Pを搬送しながら印画紙Pに対して露光処理や現像処理などを行って写真プリント画像を形成する。
具体的には、プリント部50は、図2に示すように、印画紙Pの搬送方向の上流から順に、このプリント部50の内部に印画紙マガジン51と、シートカッター52と、バックプリント部53と、チャッカー式搬送ユニット58と、露光ユニット54と、処理槽ユニット55と、乾燥部60と、コンベア56と、ソータ(図示せず)と、それぞれの部材間において印画紙Pを搬送するための搬送ローラ対57と、を備えている。
【0035】
印画紙マガジン51は、プリント部50の内部においてロール状の印画紙Pを1個収納しており、搬送ローラ対57によって適宜必要な量の印画紙Pが引き出される。
シートカッター52は、印画紙マガジン51から印画紙Pを引き出す複数の搬送ローラ対57の下流側に配置されており、印画紙マガジン51から引き出された印画紙Pを所望のサイズに切断する。
【0036】
バックプリント部53は、シートカッター52の下流側に配置されており、プリントサイズ等所望のサイズに切断された印画紙Pの裏面側に、色補正情報やコマ番号等のプリント処理情報を印刷する。
チャッカー式搬送ユニット58は、図3および図4に示すように、プリントサイズ等に切断された印画紙Pの下流側(先端側)の端部を搬送方向における両側からつまむようにして下流側へと搬送する。
【0037】
露光ユニット54は、図3および図4に示すように、チャッカー式搬送ユニット58の下流側に隣接するように配置されており、プリントサイズやテストプリントサイズに切断された印画紙Pの表面に対して、プリントする撮影画像の露光を行う。この露光ユニット54は、光を出射する露光ヘッドGhを含む露光部Gpと印画紙Pを搬送する搬送部Gc(搬送装置)と、を有している。そして、搬送部Gcは、チャッカー式搬送ユニット58から搬送された印画紙Pを露光処理位置に導入する露光導入搬送部102と、露光処理位置での印画紙Pの搬送を行う露光搬送部103とを備えている。なお、露光部Gpおよび搬送部Gc(露光導入搬送部102、露光搬送部103)の構成については、後段にて詳述する。
【0038】
処理槽ユニット55は、露光ユニット54の下流側における複数の搬送ローラ対57に隣接するように配置されており、発色現像処理液を貯留する発色現像槽55a、漂白定着処理液を貯留する漂白定着槽55bおよび安定処理液を貯留する安定処理槽55cを有している。そして、露光後の印画紙Pが、これらの各処理槽55a〜55cをこの順で経由しながら搬送されることで、所望の写真プリント画像が印画紙Pの表面に形成される。
【0039】
乾燥部60は、処理槽ユニット55の下流側に配置されており、現像処理された印画紙Pを乾燥させるために設けられている。したがって、ブロワ(図示せず)等の温風を吹き出すための装置が設けられており、現像処理された印画紙Pを搬送しながら乾燥させる。
コンベア56は、プリント部50の上部に露出しており、写真プリント画像が表面に形成されて乾燥処理後に排出された印画紙Pをソータの方向へ搬送する。
【0040】
ソータは、プリント部50の前面側に対して鉛直方向に複数のトレイを並べた状態で配置されており、コンベア56によって搬送されるプリント済の印画紙Pを、例えば、オーダー単位で各トレイに振り分ける。
なお、搬送ローラ対57は、プリント部50の内部において、印画紙マガジン51に収容されたロール状の印画紙Pを引き出すとともに、プリントサイズ等に切断された印画紙Pを、印画紙Pに対して行われる様々な処理に対応した搬送速度で搬送する。そして、搬送ローラ対57は、少なくとも2つのローラが組み合わされて構成されており、この2つのローラの間の隙間に印画紙Pを圧着(挟持)して回転することで印画紙Pを下流側へと搬送する。
【0041】
[露光ユニット54の構成]
露光ユニット54は、上述のように、露光部Gpと、搬送部Gcと、を有している。
(露光部Gpの構成)
露光部Gpは、図3および図4に示すように、印画紙Pの主走査方向に沿ってライン露光を行う露光ヘッドGhを有している。この露光ヘッドGhとしては、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に対応した3種の真空ケースの内部に多数のドット状となる蛍光体をライン状に配置し、蛍光体を独立して発光させるように構成したものを用いている。また、この露光ヘッドGhとして、このような構成のものに代えて、光源からの光線の照射を画素単位で制御する液晶型等のシャッターから印画紙Pの感光面に導くことにより主走査方向に沿うライン状の領域に対する露光を行うように構成したものであってもよい。または、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に対応した3種のレーザビームを、音響光学式の変調器から回転作動を行うポリゴンミラーに導き、このポリゴンミラーで反射させたレーザビームを更に、ミラー等の光学系を介して印画紙の感光面に導くことでライン露光を行うように構成したものであってもよい。
【0042】
(搬送部Gcの構成)
搬送部Gcは、上述のように、露光導入搬送部102と、露光搬送部103と、を含んでいる。
(露光導入搬送部102の構成)
露光導入搬送部102は、図3および図4に示すように、第1駆動ローラ71と、この第1駆動ローラ71に対して圧着状態と圧着解除状態とを切り替え自在な第1従動ローラ71Aとを備えている。そして、この第1駆動ローラ71と第1従動ローラ71Aとを合わせて第1搬送ローラ対を構成している。この第1駆動ローラ71の端部には、プーリ(滑車)に巻回される無端ベルトV1を介して、この第1駆動ローラ71を駆動する第1搬送モータM1が設けられている。
【0043】
第1従動ローラ71Aは、圧着方向に向けてバネによって付勢されており、揺動自在な支持体71Bに両端が支承されることで圧着状態と圧着解除状態とを切り替え自在とする。また、この第1従動ローラ71Aの一方の端部には、第1カムフォロア71Cが設けられている。また、この従動ローラ近傍位置には、第1カムフォロア71Cに当接することで第1従動ローラ71Aの圧着状態と圧着解除状態とを切り替える第1カム74(挟持状態解除部)と、この第1カム74を駆動する第1カムモータM74と、が設けられている。
【0044】
(露光搬送部103の構成)
露光搬送部103は、図3および図4に示すように、第2駆動ローラ72と、第2駆動ローラ72に対して圧着状態と圧着解除状態とを切り替え自在な第2従動ローラ72Aと、第3駆動ローラ73と、第3駆動ローラ73に対して圧着状態と圧着解除状態とを切り替え自在な第3従動ローラ73Aを備えている。そして、この第2駆動ローラ72と第2従動ローラ72Aとを合わせて第2搬送ローラ対を構成し、第3駆動ローラ73と第3従動ローラ73Aとを合わせて第3搬送ローラ対を構成している。
【0045】
また、第2駆動ローラ72と第3駆動ローラ73との端部に備えたプーリ(滑車)と中間プーリの小径部にわたって無端ベルトV2が巻回されている。さらに、第2搬送モータM2が、この中間プーリの大径部に巻回する無端ベルトV3を駆動して、第2駆動ローラ72と第3駆動ローラ73とを駆動する。
また、第2・第3従動ローラ72A,73Aは、圧着方向に向けてバネ(図示せず)で付勢されており、揺動自在な支持体72B,73Bにそれぞれの両端が支承されることで圧着状態と圧着解除状態とを切り替え自在となっている。
【0046】
また、第2・第3従動ローラ72A,73Aのそれぞれの一方の端部には、カムフォロア72C,73Cが設けられている。第2・第3従動ローラ72A,73Aのそれぞれの近傍位置には、第2・第3カムフォロア72C,73Cに当接することで第2・第3従動ローラ72A,73Aの位置を変更して、圧着状態と圧着解除状態とを切り替える第2・第3カム75,76と、第2・第3カム75,76を同軸で駆動する第2・第3カムモータM76と、が設けられている。
【0047】
<露光ユニット54における印画紙Pの搬送>
ここでは、露光ユニット54における印画紙Pの搬送について、第1カム74、第2カム75、および第3カム76の構成とともに説明する。
第1カム74は、図5に示すように、中心部位104を中心に小径部分105と大径部分106とが滑らかに連続している外周面107を有している。この外周面107と上述の第1カムフォロア71Cとが当接して回転する。なお、図5に示した第1カム74の回転方向は、矢印108で示すように、紙面に向かって反時計回り方向である。
【0048】
ここで、図5に示すように、第1カム74の外周面107において、部位A〜Hについて説明する。部位Aは、第1カム74において最も中心部位104からの距離が長い部位である。部位B〜Hは、中心部位104から部位Aを通過する直線を基準線として、中心部位104を中心に45度間隔でこの基準線を回転させた場合の、外周面107との交点をそれぞれ示している。そして、部位Dが第1カムフォロア71Cに当接した状態が、圧着状態の開始点(圧着状態開始位置)となる。また、部位Hが第1カムフォロア71Cに当接した状態が、圧着解除状態の開始点(圧着解除状態開始位置)となる(図10参照)。
【0049】
第2カム75、第3カム76は、図6に示すように、同じ軸(図示しない)の中心部位110を中心に小径部分111,112と大径部分113,114とが滑らかに連続している外周面115,116をそれぞれ有している。この外周面115と上述の第2カムフォロア72Cとが当接し、外周面116と上述の第3カムフォロア73Cとが当接して回転する。また、外周面115と外周面116とは、それぞれ平面部位117,118を有している。そして、第2カム75と第3カム76は同じ形状であるが、中心部位110を一致させ、表裏を入れ替えた状態で同じ軸に固定されている。また、それぞれの固定角度は、それぞれの平面部位117,118が同一の平面内に含まれるように固定されている。なお、図6に示した第2カム75、第3カム76の回転方向は、矢印119で示すように、紙面に向かって時計回り方向である。
【0050】
ここでまず、第1搬送ローラ対の圧着状態と圧着解除状態と中間状態とを、図5および図8(a)から図8(c)を用いて説明する。
圧着状態は、図8(a)に示すように、第1カム74の小径部分105が第1カムフォロア71Cに当接した状態である。圧着解除状態は、図8(b)に示すように、第1カム74の大径部分106が第1カムフォロア71Cに当接した状態である。そして、中間状態は、図8(c)に示すように、第1カム74の外周面107の中間部位Tが第1カムフォロア71Cに当接している状態である。
【0051】
なお、これらの圧着状態から圧着解除状態を含めた第1搬送ローラの印画紙Pを圧着する力(圧着力)を、第1カム74の外周面107の各部位A〜Hが第1カムフォロア71Cに当接した状態を基準に、図10にチャート図として示す。
次に、第2・第3搬送ローラ対のそれぞれの圧着状態と圧着解除状態とを、図9(a)から図9(d)を用いて説明する。
【0052】
第2・第3搬送ローラ対との両方が圧着解除状態では、図9(a)に示すように、第2・第3カム75,76の大径部分113,114がそれぞれ、第2・第3カムフォロア72C、73Cに当接している。第2搬送ローラ対が圧着状態で第3搬送ローラ対が圧着解除状態では、図9(b)に示すように、第2カム75は第2カムフォロア72Cに当接しておらず、第3カム76の大径部分114は第3カムフォロア73Cに当接している。第2・第3搬送ローラ対との両方が圧着状態では、図9(c)に示すように、第2・第3カム75,76ともに第2・第3カムフォロア72C,73Cには当接していない。第2搬送ローラ対が圧着解除状態で第3搬送ローラ対が圧着状態では、図9(d)に示すように、第2カム75の大径部分113が第2カムフォロア72Cに当接しており、第3カム76は第3カムフォロア73Cに当接していない。
【0053】
上記を踏まえて、以下に、印画紙Pの搬送状態について、図7(a)から図10を用いて説明する。
まず、印画紙Pは、チャッカー式搬送ユニット58によって搬送されてきて、その先端部分が、第1駆動ローラ71と第1従動ローラ71Aとの間に挿入される。このとき、第1搬送ローラ対は解除状態となっている。すなわち、第1カムフォロア71Cに第1カム74の外周面107の大径部分106が当接した状態であって、第1従動ローラ71Aが第1駆動ローラ71に対し離間するため、完全な圧着解除状態となっている(図7(a)、図8(b)参照)。
【0054】
そして、印画紙Pは、その先端部分が第1駆動ローラ71と第1従動ローラ71Aとの間に挿入され、第1搬送ローラ対によって圧着される。すなわち、第1カムフォロア71Cに第1カム74の外周面107の圧着開始部位(部位D)が当接する状態を経て、小径部分105が当接した状態になる。これにより、第1従動ローラ71Aと第1駆動ローラ71とによって、印画紙Pが挟持され、第1駆動ローラ71の搬送力(摩擦力)が印画紙Pに伝わる状態となる(図7(b)、図8(a)参照)。
【0055】
次に、印画紙Pは、第1カム74の上述した状態において、第1搬送ローラ対によって搬送され、その先端部分が第2駆動ローラ72と第2従動ローラ72Aとの間に挿入される。このとき、第2搬送ローラ対は解除状態となっている。すなわち、第2カムフォロア72Cに第2カム75の外周面115における大径部分113が当接した状態であって、第2従動ローラ72Aが第2駆動ローラ72に対して離間して圧着解除状態となっている(図7(c)、図9(a)参照)。
【0056】
そして、印画紙Pの先端部分が第2駆動ローラ72と第2従動ローラ72Aとの間に挿入された後、第2搬送ローラ対は印画紙Pを圧着する。すなわち、第2カムフォロア72Cに第2カム75の外周面115が当接していない状態であって、第2従動ローラ72Aと第2駆動ローラ72とによって、印画紙Pが挟持され、第2駆動ローラ72の搬送力(摩擦力)が印画紙Pに伝わる状態となる(図7(d)、図9(b)参照)。
【0057】
この状態において、印画紙Pは、第2搬送ローラ対によって搬送が開始されるため、第1搬送ローラ対が解除状態へと移行し始める。ここでは、第1カムが回転して、第1搬送ローラ対の圧着力が図10に示す、部位Eが当接した状態から部位Fが当接した状態へと移行する。すなわち、第1カム74の中間状態開始部位(部位G)が第1カムフォロア71Cに当接してから、圧着解除状態開始部位(部位H)が当接する状態まで移行するように回転する。この状態は、印画紙Pを挟持する力が徐々に減少していく過渡状態である(図7(e)、図8(c)参照)。
【0058】
本実施形態における、この過渡状態の第1カムフォロア71Cの移動速度すなわち第1従動ローラ71Aの圧着解除方向への移動速度(挟持解除速度)は、5mm/秒である。また、このときの印画紙Pの搬送速度は、10mm/秒とする(挟持解除速度/搬送速度=0.5)。
この状態を経て印画紙Pを第1・第2搬送ローラ対の間で受け渡しを行うことにより、第1搬送ローラ対が印画紙Pを解除する瞬間に、印画紙Pに対して振動が付与されることを回避することができる。
【0059】
上記の過渡状態を経た後、第1カムフォロア71Cに第1カム74の外周面107の大径部分106が当接する状態に移行し、第1従動ローラ71Aは第1駆動ローラ71に対し完全に離間された状態となる(図7(f)参照)。
一方、第2搬送ローラ対によって搬送された印画紙Pは、圧着解除状態の第3搬送ローラ対に送られる。そして、第3駆動ローラ73と第3従動ローラ73Aの間に到達すると、第3駆動ローラ73と第3従動ローラ73Aとが印画紙Pを挟持する(図7(g)参照)。このとき、第2カム75および第3カム76は、図9(c)に示すように、第2カムフォロア72C、第3カムフォロア73Cとは接触していない状態になる。すなわち、第2搬送ローラ対と第3搬送ローラ対とが同時に印画紙Pを挟持している。
【0060】
その後、図9(d)に示すように、第2カム75の大径部分113が第2カムフォロア72Cに当接した状態となり、第2搬送ローラ対は圧着解除状態となる。そして、印画紙Pは第3搬送ローラ対のみによって搬送される状態になる(図7(h)参照)。
以上のように、印画紙Pは、第1搬送ローラ対、第2搬送ローラ対、第3搬送ローラ対によって露光ユニット54において搬送される。ここで、印画紙Pは、上述のシートカッターによって有限の長さに分離される。したがって、複数枚の写真を連続してプリントするときは、第1搬送ローラ対、第2搬送ローラ対、第3搬送ローラ対が、上記の動作を印画紙の長さに同期して周期的に繰り返される。
【0061】
なお、第1カム74、第2カム75、第3カム76は、それぞれ初期状態位置が予め決められている。この初期状態位置は、第1カム74と第2カム75および第3カム76とのそれぞれの近傍に、図5、図6に示すように、センサS74,S110が個別に設けられており、また、このセンサが出射する光を、遮蔽するための遮蔽板(図示しない)がそれぞれのカムに設けられている。そして、この遮蔽板がセンサの光を遮蔽する位置を初期状態としている。
【0062】
[写真プリントシステム1の特徴]
(1)
本実施形態の写真プリントシステム1は、印画紙Pを所定の方向へ搬送しながら露光処理等の写真処理を行うシステムであって、図3および図4に示すように、第1搬送ローラ対(第1駆動ローラ71および第1従動ローラ71A)と、第2搬送ローラ対(第2駆動ローラ72および第2従動ローラ72A)と、第2搬送ローラ対の下流側に配置された露光部Gpと、第1搬送ローラ対の挟持解除部としてのカム74と、を備えている。そして、挟持解除部としてのカム74は、第1・第2搬送ローラ対間において印画紙Pを受け渡す際には、所定時間以上かけて挟持解除するように第1搬送ローラ対を駆動する。
【0063】
これにより、第1搬送ローラ対の挟持状態が解除される際に、急激に解除されることが無く、従来と比較してゆっくり解除される。換言すれば、挟持状態と解除状態との二段階制御ではなく、この挟持状態と解除状態との間の状態(中間状態)を設けることができる。このため、印画紙Pは、第1搬送ローラに挟持された状態から完全に解除された状態になるまでの間において、印画紙Pが第2搬送ローラ対に引っ張られる力と、この第1搬送ローラ対の挟持面と印画紙Pとの摩擦力と、のバランスが急激に変化してしまうことを回避することができる。したがって、第1搬送ローラ対の挟持解除によって生じる印画紙Pへの外力の作用を、従来よりも軽減することが可能になる。
【0064】
この結果、第2搬送ローラ対の下流側に設けられた露光処理位置における印画紙Pの撓みや振動が軽減され、品質が高い写真をプリントすることが可能になる。
(2)
本実施形態の写真プリントシステム1では、第1搬送ローラ対(第1駆動ローラ71および第1従動ローラ71A)における印画紙Pの挟持解除速度が、5mm/秒となるように設定されている。
【0065】
これにより、第1搬送ローラ対から第2搬送ローラ対に印画紙Pを受け渡す際における第1搬送ローラ対における挟持解除状態への移行を、所定時間以上かけて行うことができる。この結果、第1・第2搬送ローラ対における印画紙Pの受け渡し時における印画紙Pへの振動や衝撃の付与を低減して、高精度な搬送を行うことができる。よって、露光ユニット54における露光処理を精度よく実施することができる。
【0066】
(3)
本実施形態の写真プリントシステム1では、第1搬送ローラ対(第1駆動ローラ71および第1従動ローラ71A)における印画紙Pの挟持解除速度と、印画紙Pの搬送速度との比を、0.5になるように設定している。
これにより、第1搬送ローラ対から第2搬送ローラ対に印画紙Pを受け渡す際における第1搬送ローラ対における挟持解除状態への移行を、所定時間以上かけて行うことができる。この結果、第1・第2搬送ローラ対における印画紙Pの受け渡し時における印画紙Pへの振動や衝撃の付与を低減して、高精度な搬送を行うことができる。よって、露光ユニット54における露光処理を精度よく実施することができる。
【0067】
(4)
本実施形態の写真プリントシステム1では、第1搬送ローラ対における印画紙Pの挟持解除を行う機構として、第1従動ローラ71A側に設けられた第1カム74を用いている。
これにより、所定の形状を有する第1カム74を所定の回転速度で回転させることで、第1搬送ローラ対における挟持解除を容易に行うことができる。
【0068】
[他の実施形態]
(A)
上記実施形態では、第1従動ローラ71Aの圧着解除方向への移動速度(挟持解除速度)が5mm/秒に設定されている例を挙げて説明した。しかし、本発明については、これに限定されるものではない。
【0069】
例えば、印画紙の挟持解除速度としては、5mm/秒未満であってもよいし、5mm/秒よりも大きくてもよい。
ただし、搬送中の印画紙の受け渡し時における振動や衝撃力の低減等を考慮すれば、10mm/秒以下であることが好ましい。
この場合でも、印画紙の挟持解除を所定時間以上かけて行うことができるため、搬送ローラ対間における印画紙の受け渡しを、振動や衝撃を低減した状態で実施することができる。
【0070】
(B)
上記実施形態では、第1従動ローラ71Aの圧着解除方向への移動速度(挟持解除速度)と、印画紙Pの搬送速度との比(挟持解除速度/搬送速度)が、0.5である例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上述した挟持解除速度を所定の速度以下とする条件化においては、上記比の大きさについては、0.1〜0.7の範囲内であればよい。
【0071】
この場合でも、印画紙の挟持解除を所定時間以上かけて行うことができるため、搬送ローラ対間における印画紙の受け渡しを、振動や衝撃を低減した状態で実施することができる。
(C)
上記実施形態では、挟持状態解除部として、図5に示すような形状の第1カム74を用いた例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0072】
例えば、図11に示すように、カム301の外周形状が、略三角形状であってもよい。この場合は、カム301を回転させるカムモータM301の回転を精密に制御することが可能な制御部302を設け、この制御部302によって、カム301の回転角度を調整する。
このような構成でも、第1搬送ローラ対の圧着解除を所定時間以上かけて行うことができるため、搬送ローラ対間における印画紙の受け渡しを、振動や衝撃を低減した状態で実施することができる。
【0073】
(D)
上記実施形態では、挟持状態解除部として第1カム74を用いた例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図12に示すように、第1従動ローラ201に対し、この第1従動ローラ201の端部に一方の端部202aが固定され、圧着解除方向に伸びた棒部材202と、ギア203と、ステッピングモータM203と、このステッピングモータM203を制御する制御部204と、を備えた離間機構を用いてもよい。より詳細には、棒部材202の一側面202bには、鋸歯部202cが設けられており、ギア203は、鋸歯部202cと互いに噛み合う形状である。そして、ギア203は、中心部に軸203aを有し、この軸203aはステッピングモータM203の回転軸と共用である。
【0074】
このような構成によると、制御部204が、ステッピングモータM203の動作角度を制御することによって、第1従動ローラ201を圧着解除方向に自在に変位させることが可能になる。この結果、印画紙Pが他の印画紙に変更された場合における、印画紙の厚さや弾力性、摩擦力などが変化した場合においても、第1搬送ローラ対の圧着解除を所定時間以上かけて行うことできるため、搬送ローラ対間における印画紙の受け渡しを、振動や衝撃を低減した状態で実施することができる。
【0075】
(E)
上記実施形態では、露光ユニット54の上流側に配置された2組の搬送ローラ対(第1搬送ローラ対、第2搬送ローラ対)に対して、本発明を適用した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、露光部を挟み込むように配置された2組の搬送ローラ対(第2搬送ローラ対、第3搬送ローラ対)に対して、本発明を適用することもできる。
【0076】
(F)
上記実施形態では、第1搬送ローラ対(第1駆動ローラ71および第1従動ローラ71A)を挟持解除した後に、第3搬送ローラ対(第3駆動ローラ73および第3従動ローラ73A)を挟持状態にする例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
例えば、第3搬送ローラ対(第3駆動ローラ73および第3従動ローラ73A)を挟持状態にした後に、第1搬送ローラ対(第1駆動ローラ71および第1従動ローラ71A)を解除状態としてもよい。
このような構成でも、搬送ローラ対間における印画紙の受け渡しを、振動や衝撃を低減した状態で実施することができるという、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0078】
(G)
上記実施形態では、写真プリントシステム1に含まれる露光ユニット54に対して本発明を適用した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、2組の搬送ローラ対を含んでおり、露光部を含まない搬送装置に対しても、本発明の適用は可能である。
【0079】
この場合には、2組の搬送ローラ対間におけるシート材の受け渡し時において、シート材に付与される振動等を低減できるため、シート材の搬送を高精度に実施することができるという、上記と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の写真プリントシステムに搭載された搬送装置は、搬送ローラ対間における印画紙の受け渡しを、振動や衝撃を低減した状態で実施することができることから、種々のシート材を搬送する搬送装置として広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施形態に係る写真プリントシステムの外観図。
【図2】図1の写真プリントシステムの内部構成を示す断面図。
【図3】図1に含まれるチャッカー式搬送ユニットと露光ユニットとの内部構成を示す側面視断面図。
【図4】図3のチャッカー式搬送ユニットと露光ユニットとの内部構成を示す上面視断面図。
【図5】第1カムと第1搬送ローラ対との構成を示す側面透視図。
【図6】第2カムと第2搬送ローラ対および第3カムと第3搬送ローラ対との構成を示す側面透視図。
【図7】(a)〜(h)は、図1の写真プリントシステムに含まれる搬送部における印画紙搬送動作を動作順に示す側面図。
【図8】(a)は、第1搬送ローラ対の圧着状態を示す第1カムと第1搬送ローラ対との側面図。(b)は、第1搬送ローラ対の圧着解除状態を示す第1カムと第1搬送ローラ対との側面図。(c)は、第1搬送ローラ対の中間状態を示す第1カムと第1搬送ローラ対との側面図。
【図9】(a)〜(d)は、第2・第3搬送ローラ対のそれぞれの圧着状態と圧着解除状態とを示す側面図。
【図10】第1カムの動作角度に対する、第1搬送ローラ対の圧着力および第1従動ローラの変位量を示すチャート図。
【図11】本発明の他の実施形態に係る写真プリントシステムにおける、挟持状態解除部を示す側面図。
【図12】本発明の他の実施形態に係る写真プリントシステムにおける、離間機構を示す側面図。
【符号の説明】
【0082】
1 写真プリントシステム(写真プリント装置)
20 操作部
21 モニタ
22 キーボード
23 マウス
30 コンピュータユニット
31 メディアリーダ
40 フィルムスキャナ
50 プリント部
51 印画紙マガジン
52 シートカッター
53 バックプリント部
54 露光ユニット
55 処理槽ユニット
55a 発色現像槽
55b 漂白定着槽
55c 安定処理槽
56 コンベア
57 搬送ローラ対
58 チャッカー式搬送ユニット
60 乾燥部
71 第1駆動ローラ
71A 第1従動ローラ
71B 支持体
71C 第1カムフォロア
72 第2駆動ローラ
72A 第2従動ローラ
72B 支持体
72C 第2カムフォロア
73 第3駆動ローラ
73A 第3従動ローラ
73C 第3カムフォロア
74 第1カム(挟持解除部)
75 第2カム
76 第3カム
100 搬出口
102 露光導入搬送部
103 露光搬送部
104 中心部位
105 小径部分
106 大径部分
107 外周面
108 矢印
110 中心部位
111 小径部分
112 小径部分
113 大径部分
114 大径部分
115 外周面
116 外周面
117 平面部位
118 平面部位
119 矢印
201 第1従動ローラ
202 棒部材
202a 端部
202b 一側面
202c 鋸歯部
203 ギア
203a 軸
204 制御部
301 カム
302 制御部
M1 第1搬送モータ
V1 無端ベルト
M2 第2搬送モータ
V2 無端ベルト
V3 無端ベルト
M74 第1カムモータ
M76 第2・第3カムモータ
S74 センサ
S110 センサ
M203 ステッピングモータ
M301 カムモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印画紙を所定の方向へ搬送しながら露光処理を行う写真プリント装置であって、
前記印画紙を挟持した状態で前記所定の方向へ搬送する第1搬送ローラ対と、
前記第1搬送ローラ対の下流側に配置されており、前記第1搬送ローラ対によって搬送される前記印画紙を受け取って前記所定の方向へ搬送する第2搬送ローラ対と、
所定の露光処理位置において、前記印画紙に対して露光処理を行う露光部と、
前記第1搬送ローラ対から前記第2搬送ローラ対に対して前記印画紙を受け渡す際に、前記第1搬送ローラ対における前記印画紙の挟持状態を、所定時間以上かけて解除する挟持状態解除部と、
を備えている写真プリント装置。
【請求項2】
前記第1搬送ローラ対の挟持解除速度は、10mm/s以下である、
請求項1に記載の写真プリント装置。
【請求項3】
前記第1搬送ローラ対の前記挟持解除速度と前記第1搬送ローラ対における前記印画紙の搬送速度との比は、0.1〜0.7である、
請求項1または2に記載の写真プリント装置。
【請求項4】
前記挟持状態解除部は、前記第1搬送ローラ対に設けられたカムを含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の写真プリント装置。
【請求項5】
前記挟持状態解除部は、前記第1搬送ローラ対に含まれる2つのローラの間隔を調整する離間機構である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の写真プリント装置。
【請求項6】
2つのローラの間に挟持した状態でシート材を所定の方向へ搬送する第1搬送ローラ対と、
前記第1搬送ローラ対の下流側に配置されており、前記第1搬送ローラ対によって搬送される前記シート材を受け取って前記所定の方向へ搬送する第2搬送ローラ対と、
前記第1搬送ローラ対から前記第2搬送ローラ対に対して前記シート材を受け渡す際に、前記第1搬送ローラ対における前記シート材の挟持状態を、所定時間以上かけて解除する挟持状態解除部と、
を備えている搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−3018(P2009−3018A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161602(P2007−161602)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】