説明

写真処理装置

【課題】 露光処理済みの感光材料を現像処理する現像処理部を備えた写真処理装置において、現像処理液の酸化が抑制された新規な構成の写真処理装置を提供する。
【解決手段】 感光材料Pが現像処理槽5c内に充填された泡状化または霧化された現像処理液によって現像処理される写真処理装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光処理済みの感光材料を現像処理する現像処理部を備えた写真処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の写真処理装置としては、本発明に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1にも記されている一般的な写真処理装置では、感光材料を処理液槽内の現像処理液中で搬送後、現像処理液から引き上げて、下流側の処理液槽へと移動させる処理ラックが各現像処理槽に配置されている。そして、各処理ラックは、搬送ローラが現像処理液中に浸漬された液中ラックと、液中ラックから現像処理液上に引き上げられた感光材料を下流側の次の液中ラックに手渡すためのターンラックとを有し、ターンラックには、感光材料の搬送方向に沿って互いに離間した少なくとも2組の搬送ローラ対を備えられている。したがって、感光材料は2組の搬送ローラ対のうち、上流側の処理液槽の上方に位置する搬送ローラ対の間を通過する間に、感光材料に付着した上流側の処理液の大半が絞り取られて、同上流側の処理液槽内に戻されるので、下流側に隣接する処理液槽の現像処理液が、感光材料が持ち込む上流側の現像処理液によって薄まる、或いは、劣化する、等の問題に対する対策として有効に作用している。
【0003】
【特許文献1】特開2000−275813号公報(段落番号0013、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記された写真処理装置では、特に現像処理液として安定化液が貯留された安定化槽の場合、感光材料がターンラックによって空気中に引き上げられている間に、感光材料の表面に膜状に付着している現像処理液(安定化液)が空気酸化されて、処理力が低下するために、処理液槽(安定化槽)で長い処理時間が必要となってしまうという問題があった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、上に例示した従来技術による写真処理装置の持つ前述した欠点に鑑み、現像処理液の酸化が抑制された新規な構成の写真処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、露光処理済みの感光材料を現像処理する現像処理部を備えた写真処理装置であって、
前記感光材料が現像処理槽内に充填された泡状化または霧化された現像処理液によって現像処理される点にある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成による写真処理装置では、感光材料が泡状化または霧化された現像処理液の中を通過し、感光材料に付着した現像処理液(特に安定化液)と空気との接触が抑制されるので、現像処理液の空気酸化が防止される。その結果、現像処理液の処理力が長期に渡って高く保持されるために、処理液槽での処理時間を短縮化できるという効果が得られる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記現像処理液は非酸化性ガスによって泡状化または霧化されている点にある。
【0009】
請求項1の現像処理槽が泡状化または霧化された現像処理液によって充填された構成であるだけでも現像処理槽の気相中における酸素分圧は空気中より低くなり現像処理液の空気酸化が防止されるが、本構成であれば現像処理液の泡の内部や霧状粒子の周辺が実質的に無酸素状態となり、現像処理液の空気酸化が効果的に抑制される。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記現像処理槽内における前記泡状化または霧化された現像処理液の存否または密度を検出する検出機構と、前記検出機構による検出結果に基づいて前記現像処理液を前記現像処理槽に補充する補充機構とが設けられている点にある。
【0011】
本構成であれば、現像処理槽内を常に泡状化または霧化された現像処理液で満たされた状態にしておくことができる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記現像処理槽が前記感光材料の通過を許す遮蔽手段によって閉鎖されている点にある。
【0013】
本構成であれば、現像処理槽を泡状化または霧化された現像処理液で飽和した状態に保ち易いので、現像処理液と感光面の間の反応を効率的に進ませることができる。また、乾燥部に向けて送り出される感光材料と共に連れ出される泡状化または霧化される現像処理液の量を最小化できる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、前記遮蔽手段が、吸水性で弾性を備えたブレードと、前記ブレードの内部に液体を補充する手段とからなる点にある。
【0015】
本構成であれば、ブレードを吸水性で弾性のある材料で構成したことから、空間を遮断する目的でブレードの縁が感光材料に押し付けられる構成にした場合でも感光材料を傷付けないように空間を遮断することができる。しかも、ブレードの多孔質の内部組織に常に液体が満たすことができるので、ブレードの実質的な通気率を限りなく小さく保持でき、ブレードによる確実な空間遮断が可能となる。さらに、感光材料は感光材料の面に付着した現像処理液をブレードによって拭き取られた後で乾燥部に送られることになるので、残留した現像処理液によって乾燥部で感光材料に斑点状の欠点が生じることを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明による最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に概略構成を示す写真処理装置1は、ロール状の印画紙Pを収納する印画紙マガジン2、印画紙マガジン2から引き出され、カッタ3で切断された矩形の印画紙Pにレーザエンジン4aなどで画像を露光処理する露光部4、露光処理された印画紙Pを現像処理するための複数の処理タンクを備えた現像処理部5、及び、現像処理済みの印画紙Pを乾燥させる乾燥処理部6を備える。
【0017】
現像処理部5は、印画紙Pを発色現像剤で処理する発色現像槽5a、印画紙Pを漂白定着液で処理する漂白定着槽5b、及び、印画紙Pを安定化剤で処理する安定化槽5cからなり、各槽には印画紙Pを各処理液内で搬送ローラによって搬送する搬送ラック10が設置されている。
乾燥処理部6は、印画紙Pを上方の出口に向けて搬送するための複数の搬送ローラ7を備えた乾燥ラック6、及び、乾燥ラック6に温風を送り込むブロワ8などを備える。搬送ローラ7の少なくとも幾つかは、印画紙Pの表面や表層部に残留している液体を、印画紙Pに傷を付けずに吸収するように、柔軟性と弾力性を有し且つ吸水性の高いパイル布状の外周面を備えたパイルローラ7となっている。
【0018】
現像処理部5の詳細な構成を述べると、発色現像槽5aおよび漂白定着槽5bについては、それぞれ発色現像剤および漂白定着剤を溶液状にした処理液が貯留されている。そして、搬送ラック10の下方部位を構成する液中ラック10aは、その略全体が処理液中に浸漬され、他方、搬送ラック10の上方部位を構成するオーバーヘッドラック10bは各処理液の水平な液面より上方に位置して、印画紙Pを下流側の液中ラック10aに手渡す構成となっている。
これと対照的に、現像処理部5の最終部位である安定化槽5cについては、水平な液面を形成するような状態で貯留された処理液は無く、安定化剤の溶液を窒素やLPG等の非酸化性ガスによって霧化した状態の処理ミストが、安定化槽5cの底面から天井面まで充填されており、印画紙Pはこのような気相中に浮遊した微細な液滴状の安定化液によって濡らされて処理される。安定化槽5cは連続的に3槽が配置されているが、隣接する安定化槽5cどうしの下方領域を分割する隔壁は排除され、一つの広い閉鎖空間Vが形成されている。印画紙Pを閉鎖空間V内で搬送する手段としては、発色現像槽5aおよび漂白定着槽5bと同様の液中ラック10aとオーバーヘッドラック10bを流用可能である。
【0019】
処理ミストを生成して安定化槽5cに充填するミスト供給機構は、圧縮ガスを用いたアトマイザ12などで構成されている。アトマイザ12は、安定化槽5cの底部裏面に配置されたブロック状の混合体12aを有する。混合体12aには、圧縮した窒素やLPG等の非酸化性ガスGを蓄積した高圧容器13、及び、安定化剤の溶液Lを貯蔵した薬液容器20が配管によって接続されている。混合体12aには、高圧容器13から配管14で導かれた高圧の非酸化性ガスGを高速ジェット化するオリフィス16、オリフィス16の出口部を安定化槽5cの底面に連通させる気体導入路17a、及び、薬液容器20から配管で導かれた安定化液を気体導入路17aの中間位置まで案内する液体導入路17bが形成されている。また、配管14には経路を開閉操作可能なバルブ15が配置されている。バルブ15が開かれると、非酸化性ガスGが気体導入路17aをジェット状に上方に向かい、それによって発生する負圧で安定化液が液体導入路17b内を気体導入路17aに向かって吸引され、気体導入路17aにて高速ジェット状の非酸化性ガスGと出合い、常温の処理ミストとなって安定化槽5c内に供給される。
【0020】
安定化槽5cの底面には、処理ミストの存否または濃度を検出する検出機構22が設置されている。検出機構22は、前後に並置された搬送ラック10の間の空間に向けて音波を発生する音波発生器22aと、印画紙Pや処理ミストによって反射された音波を受け取るマイクロフォン22bとからなる。写真処理装置1に備えられた制御部50には、マイクロフォン22bが受け取った音波の波形から、ミストの濃度などを判定する判定部50aが設けてあり、ミストの濃度が不足の場合、制御部50のバルブドライバ50bを介してバルブ15が開放され、安定化剤の処理ミストが補充される。
また、安定化槽5cの上端には安定化槽5c内の気相を対流によって撹拌するファン25が配置されており、他方、安定化槽5cの下流側の下端には、安定化槽5cの底部に液状の安定化液が溜まりかけた時に、これを安定化槽5c外に排出させるためのドレン28が設置されている。
さらに、安定化槽5cの下流側の底面には、処理ミストの温度を一定の範囲に制御する温調手段として、遠赤外線ヒータ30が設けられている。
【0021】
印画紙Pの閉鎖空間Vに対する出入口は、印画紙Pの通過を許す遮蔽手段32によって閉鎖されている。図2には出口に設けられた遮蔽手段32を示す。漂白定着槽5bから送り込まれた印画紙Pは、このような上下一対のブレード32aの水平な境界を介して安定化槽5cの閉鎖空間Vに進入し、処理ミストで処理された印画紙Pも、上下一対のブレード32aの水平な境界を介して安定化槽5cから排出され、乾燥処理部6に供給される。遮蔽手段は、発泡ポリウレタンなどの多孔質弾性材料からなる上下一対のブレード32aと、ブレード32aの内部組織に蒸留水などの液体を一定速度で補充することで、ブレード32aの実質的な通気性をゼロに維持する液補充機構32bとからなる。
【0022】
従来の写真処理装置では、乾燥処理部6に向かって送り出される印画紙Pから処理液を絞り取るためのスクイズローラが現像処理部5と乾燥処理部6の間に通常設けてあるが、上記の写真処理装置1では、ブレード機構32によって安定化剤の成分を印画紙Pの表裏面から効果的に剥ぎ取ることができるので、スクイズローラを省略することができる。
以上の構成により、安定化槽5c内は常に一定以上の濃度の処理ミストによって満たされ、実質的に酸素分圧がゼロに近い状態が実現され、安定化槽5cでは印画紙Pは専ら気相内の処理ミストによって処理される。
【0023】
〔別実施形態〕
<1>前述のアトマイザ12の代わりに超音波発生子によって安定化液を霧化するミスト発生器を用いても良い。また、ミスト供給機構に、常温ではなく100℃未満の温度に加熱された処理ミストを安定化槽5c内に供給させるための加熱装置を設置すれば、処理効率が向上するので、安定化槽5cの容積を縮小することができる。
【0024】
<2>安定化槽5cの閉鎖空間Vには、処理ミストの代わりに、安定化液をLPGなどの非酸化性のガスによって泡状化またはムース状化した処理ムースを充填しても同様の効果が得られる。ムース供給装置としては、安定化剤の溶液と非イオン性界面活性剤などからなる発泡剤とを混合した水溶液と、発泡に必要な非酸化性の液化ガス(LPGなど)とが一緒に収納された耐圧容器と、耐圧容器の内部と閉鎖空間とを連結する配管と、配管の一部を開閉操作するバルブ手段とで構成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による写真処理装置を示す概略構成図
【図2】ブレード機構を拡大して示す概略構成図
【符号の説明】
【0026】
P 印画紙
V 閉鎖空間
G 非酸化性ガス
L 安定化剤の溶液
4 露光部
5 現像処理部
5a 発色現像槽
5b 漂白定着槽
5c 安定化槽
6 乾燥処理部
10 搬送ラック
12 アトマイザ
12a 混合体
13 高圧容器
15 バルブ
16 オリフィス
17a 気体導入路
17b 液体導入路
20 薬液容器
22 検出機構
28 ドレン
30 遠赤外線ヒータ
32 ブレード機構
32a ブレード
32b 液補充機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光処理済みの感光材料を現像処理する現像処理部を備えた写真処理装置であって、
前記感光材料が現像処理槽内に充填された泡状化または霧化された現像処理液によって現像処理される写真処理装置。
【請求項2】
前記現像処理液は非酸化性ガスによって泡状化または霧化されている請求項1に記載の写真処理装置。
【請求項3】
前記現像処理槽内における前記泡状化または霧化された現像処理液の存否または密度を検出する検出機構と、前記検出機構による検出結果に基づいて前記現像処理液を前記現像処理槽に補充する補充機構とが設けられている請求項1または2に記載の写真処理装置。
【請求項4】
前記現像処理槽が前記感光材料の通過を許す遮蔽手段によって閉鎖されている請求項1から3のいずれか一項に記載の写真処理装置。
【請求項5】
前記遮蔽手段が吸水性のブレードと、前記ブレードの内部に液体を補充する手段とからなる請求項4に記載の写真処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−41039(P2007−41039A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222007(P2005−222007)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】