説明

写真処理装置

【課題】 1枚目の感光材料を処理して出力するまでの待ち時間を短縮することができる写真処理技術を提供する。
【解決手段】 洗浄部33の処理槽33A〜33Cは、処理液の深部に該当する下部において、開口部680を通じて互いに連通している。開口部680は、筒状の支持部材681と弾性的な押圧力により互いに先端部分が密着した弾性体の一対のブレード682とによって閉塞されている。超音波振動子アレイ801,802が、ブレード682の互いに開いた側から先端部分へ向かって超音波を放射する。超音波はブレード682によって多重反射され、先端部分へ向かって収束し増幅される。印画紙シートR2は、ブレード682の先端部分を押しのけて通過する際に、先端部分によって拭われる同時に、増幅された超音波に晒されるので、付着したり染み込んだりしている処理液の置換が促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化銀を感光主体とした銀塩写真システムに適用される感光材料としての写真フィルム(以下、「フィルム」と称する)に現像処理を施したり、あるいは現像処理済みのフィルムを用いて感光材料としての印画紙に現像処理(焼付け処理)を施したりする写真処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印画紙等に写真処理を施す写真処理装置として、従来、特許文献1に記載されているものが知られている。この従来装置は、ロール状に巻回された長尺の印画紙ロールを引き出しながらその露光面に現像処理済みのフィルムの各コマ(一画面)を順次焼付けた後、現像槽において当該印画紙を所定の現像液中に浸漬し、これによって印画紙に現像処理を施すように構成されている。
【0003】
現像処理後の印画紙は、搬送ローラ等の搬送手段の駆動で定着槽に導入され、所定の定着液中に浸漬されることによって定着処理が施される。定着槽では、定着と同時に漂白処理が施される。定着処理の後、印画紙には洗浄槽における水洗処理が施され、それにより定着液が除去される。洗浄槽では、水洗と同時に、画質の経年変化を抑制するための安定化処理が施される。洗浄処理後の印画紙は、乾燥室に導入され、所定の熱源からの熱(温風の吹き付けを含む)による乾燥処理が施された後、写真処理装置の外部に排出される。
【特許文献1】特許第3478382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、特許文献1に開示される従来技術では、縦長に形成される現像・定着(漂白を含む)・洗浄(安定化を含む)の各処理槽を、印画紙が蛇行しながら順に搬送されてゆくことで、処理が施されてゆく。各槽では、各処理に必要とされる時間にわたって、印画紙を処理液に浸漬している必要があり、特に洗浄工程には長い時間を要する。その結果、上記従来技術では、1枚目のプリントを出力するまでの待ち時間が長いという問題点があった。1枚目のプリントを出力するまでの待ち時間が長いか短いかは、店内に写真処理装置を設置し、店頭に顧客を待たせて写真処理サービスを提供する店舗にとっては、顧客吸引力をも左右する重要な関心事となっている。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、1枚目の感光材料を処理して出力するまでの待ち時間を短縮することができる写真処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様に係るものは、複数の処理槽を備え、各処理槽に貯留された処理液の中に感光材料を順次通過させることにより、前記感光材料に各処理液による処理を順次施す写真処理装置であって、前記複数の処理槽のうち、処理の順序において連続する少なくとも2個の処理槽の間に処理液に浸る位置に互いに連通する連通路が設けられており、前記連通路の各々に設けられ、各連通路を挟む一方の処理槽から他方の処理槽へ向かって互いの間隔が狭まり、先端部分が自由で且つ密着するように弾性復元力をもって互いに押圧し合い、それによって、処理槽間の処理液の通過を阻止する一対のブレードと、前記連通路の各々に対応して設けられ、前記感光材料を前記一方の処理槽から前記一対のブレードの間を通過させて前記他方の処理槽へ移送する搬送部と、前記連通路の少なくとも一つに対応して設けられ、前記一対のブレードの互いに開いた側から前記先端部分へ向かって超音波を放射する超音波振動子と、を備えるものである。
【0007】
この構成によれば、処理の順序において連続する少なくとも2個の処理槽の間で、それらの間の連通路に設けられた一対のブレードによって処理液の通過が阻止されるとともに、搬送部の働きにより、感光材料が一方の処理槽から一対のブレードの間を通過することにより他方の処理槽へ移動する。それにより、感光材料に付着した一方の処理槽の処理液がブレードによって拭い取られるので、他方の処理槽への持ち込み量を抑えることができる。その結果、他方の処理槽における処理が促進されるので、他方の処理槽での処理に要する処理時間が短縮される。
【0008】
更に、少なくとも一つの連通路については、超音波振動子が一対のブレードの互いに開いた側から先端部分へ向かって超音波を放射する。この超音波が、一対のブレードによって先端部分に収束する。それにより、先端部分を通過する感光材料は、収束することにより強度が増幅された超音波に晒される。感光材料に染み込んでいる一方の処理槽の処理液が、他方の処理槽へ持ち込まれる際に、感光材料が超音波の照射を受けることにより、他方の処理槽の処理液へ速やかに置換する。その結果、他方の処理槽での処理に要する処理時間が、さらに短縮される。処理時間が短縮されることにより、1枚目の感光材料を処理して出力するまでの待ち時間が短縮される。
【0009】
なお、本発明において、感光材料とは、ハロゲン化銀を感光主体とした銀塩写真システムに適用されるフィルム、及び現像処理済みのフィルム或いはデジタル画像信号等を用いて現像処理(焼付け処理)が施される印画紙の双方を含む概念である。
【0010】
本発明のうち第2の態様に係るものは、第1の態様に係る写真処理装置であって、前記超音波振動子は、前記連通路の各々に対応して設けられているものである。
【0011】
この構成によれば、超音波振動子が各連通路に対応して設けられているので、感光材料に付着したり染み込んだりしている処理液の置換が、感光材料が連通路を通過する毎に促進される。その結果、処理時間が更に短縮されるので、1枚目の感光材料を処理して出力するまでの待ち時間が更に短縮される。
【0012】
本発明のうち第3の態様に係るものは、第2の態様に係る写真処理装置であって、前記少なくとも2個の処理槽の各々には、処理液の液面の高さを一定に保つために処理液を排出する排出口が設けられており、前記排出口は、前記処理の順序において連続する順に高さが上昇する位置に設けられているものである。
【0013】
この構成によれば、洗浄処理槽のうちの少なくとも2個の処理槽の各々に設けられた排出口により、処理液の液面の高さが、処理の順序において連続する順に上昇する。このため、一対のブレードの先端部分が超音波の照射を受けて振動することにより、一対のブレードの間をわずかに処理液が移動することがあっても、処理液の移動が、処理の順序とは逆の方向に制限される。すなわち、洗浄処理のより浅い側にあって汚濁の多い洗浄液が、洗浄処理の進んだ側にある汚濁の少ない洗浄液へ侵入することを防ぐことができ、それにより洗浄処理を効率よく遂行することができる。
【0014】
本発明のうち第4の態様に係るものは、第3の態様に係る写真処理装置であって、前記少なくとも2個の処理槽の各々は、前記処理の順序の逆順に、前記排出口を通じて一つの処理槽から排出された処理液を、連続する別の処理槽へ導入するものである。
【0015】
この構成によれば、洗浄処理槽のうち、一対のブレードが介在する処理槽の間では、処理の順序における後段から前段へと順に、排出口を通じて処理液が導入されるので、後段の処理槽ほど新鮮で汚濁の少ない処理液が供給されると共に、後段で使用済みの処理液を前段で無駄なく使用することができる。すなわち、洗浄処理の効果を損なうことなく処理液の使用量を抑えることができる。
【0016】
本発明のうち第5の態様に係るものは、第1ないし第4の態様に係る写真処理装置であって、前記複数の処理槽が、現像処理を施す現像処理槽と、定着処理を施す定着処理槽と、洗浄処理を施す2槽以上の洗浄処理槽とを有しており、
前記超音波振動子は、前記2槽以上の洗浄処理槽のうちの、処理の順序において連続する少なくとも2個の処理槽の間に設けられているものである。
【0017】
この構成によれば、複数の処理槽が現像処理槽と、定着処理槽と、洗浄処理槽とを有するので、感光材料への現像から洗浄までの処理を連続して遂行することができる。更に、洗浄処理槽が2槽以上であり、そのうちの、処理の順序において連続する少なくとも2個の処理槽の間に、一対のブレードに向かって超音波を放射する超音波振動子が設けられているので、これら少なくとも2個の処理槽の間で、処理液の持ち込みが節減され、且つ、持ち込まれる処理液の置換が促進される。従って、写真処理装置において最も長い洗浄処理の処理時間が短縮されるので、1枚目の感光材料を処理して出力するまでの待ち時間が、効果的に短縮される。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、1枚目の感光材料を処理して出力するまでの待ち時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(全体構成)
図1は、本発明の実施の一形態に係る写真処理装置10の全体構成の概要を説明するための説明図である。この写真処理装置10は、大略的に、印画紙ロールRから引き出された長尺印画紙R1に対してコマ毎に露光処理を施す露光処理部20と、この露光処理部20で露光処理の施された長尺印画紙R1に対して現像処理を施す現像処理部30と、この現像処理部30で現像処理の施された長尺印画紙R1に対して乾燥処理を施す乾燥処理部40とを備えている。すなわち、写真処理装置10は、写真店の店頭などに設置される、いわゆるミニラボと称される装置である。
【0020】
露光処理部20は、基本構成として、画像データを記憶するディスク等の記録媒体を着脱可能に装填するとともに装填された記録媒体から所望の画像データを読み込むディスクドライブ21と、フィルムや印画紙上に形成された画像を直接読み込むスキャナ22と、読み込んだ画像データを画像としてモニタ表示するディスプレイ23と、写真処理装置10の状態をテストするためのテストプリント搬入ユニット24と、読み込んだ画像に対して濃度や色等に対する所定の処理の指示およびプリントの指示等の各種指示を行うための図略の操作部(後述する図13の操作部851)と、プリント予定の画像データに所定の処理を行うとともに処理画像を出力する画像処理部、及び露光処理等の制御を行う各種制御部を含む制御装置25とを備えている。
【0021】
かかる露光処理部20には、ハウジング201の内部適所に巻回された長尺印画紙R1を収納するマガジン26(第1マガジン261および第2マガジン262)が交換可能に搭載されている。第1および第2マガジン261,262の適所には、所定個数の遮光部材が配列されているとともに、第1および第2マガジン261,262が装着される露光処理部20の筐体には、複数のフォトインタラプタからなるセンサ263,264が設けられ、いずれのセンサ263,264が前記遮光部材により遮光されたかを検知することでマガジンの種類すなわちサイズ等を含む印画紙の種別を認識可能にしている。
【0022】
長尺印画紙R1は、図6に例示するように、樹脂又は紙などで形成される薄層の支持体846とその一方面側に、樹脂層845を挟んで乳剤層840が形成され、さらに図略のコーティング層が形成されているものである。乳剤層840は、露光されることにより後述の現像液によって各色に発色する発色剤を含むシアン層841、マゼンタ層842、イェロー層843が、層状に形成されているものである。すなわち、長尺印画紙R1として、写真焼付用の印画紙として一般的なものが採用されている。なお、長尺印画紙R1の乳剤層840が形成されている側の主面、すなわち図6の上面を「乳剤面」と称し、その反対側の主面を「支持体面」と称する。
【0023】
図1に戻って、ハウジング201内には、第1および第2マガジン261,262に装着された印画紙ロールRから選択的に繰り出された長尺印画紙R1を合流位置から下流側へ向けて移送する搬送路が形成されるとともに、この搬送路に沿って、モータ等からなる図略の駆動機構により回転駆動される搬送ローラ対265,266(後述するカッター27より上流側にあるものを第1搬送ローラ対265、同下流側にあるものを第2搬送ローラ対266)が所定ピッチで配設されている。第1および第2マガジン261,262の各搬送路の合流位置から下流側に向かう搬送路上には、当該搬送路に対面する姿勢を有して帯状の長尺印画紙R1から所定サイズの印画紙シートR2を作成する印画紙切断装置としてのカッター27と、露光処理部20から入力された画像データを光学的に、例えばライン露光によって印画紙シートR2面に露光する露光装置28とが設けられている。
【0024】
カッター27は、本実施形態においては、露光装置28の上流位置に配置されている。カッター27は帯状の長尺印画紙R1を所定サイズの印画紙シートR2に切断するものであり、例えばスキャナ22からの写真サイズ情報と、印画紙の移送量を検出するセンサ(例えば図略の駆動機構(モータ)への駆動パルス数等)からの出力情報とによって、所定寸法分移送される毎に切断動作を行うように構成されている。なお、カッター27によって、長尺印画紙R1を、写真サイズに切断する代わりに、長尺のままで現像処理部30を通過させ、乾燥処理部40に至って、カッター44により写真サイズに切断することも可能である。
【0025】
露光装置28は、例えばRGB各色のレーザ発生器からのレーザビームを画像濃度情報によって各色毎に光変調するとともに、各変調ビームをポリゴンミラー等を介して印画紙シートR2面上で幅方向にライン走査させるもので、印画紙シートR2の移送に伴ってシート面上に2次元のカラー画像を露光するものである。
【0026】
現像処理部30は、露光処理部20から送り込まれた印画紙シートR2に対して現像処理を施すものであり、印画紙シートR2を連続的に所定の現像液に浸漬することにより露光の強弱に応じた画像を現出させる現像部31と、この現像部31で現像処理が完了した印画紙シートR2に対して所定の定着液に浸漬することにより定着処理を施す定着部32と、この定着部32で定着処理の完了した印画紙シートR2に対し洗浄液に連続的に浸漬することにより洗浄処理を施す洗浄部33とを備えている。
【0027】
現像部31、定着部32には、同一構成の浸漬処理装置50が適用されている。洗浄部33には、現像部31及び定着部32に用いられるものよりも、幾分背丈が低く、搬送ローラの本数の少ない浸漬処理装置50が用いられ、かつ一部の部材が除去されている。浸漬処理装置50は、現像部31および定着部32において各1槽が、洗浄部33において処理槽33A〜33Cの3槽が採用されている。なお、かかる浸漬処理装置50については後に詳述する。
【0028】
定着液には、銀画像などの銀をハロゲン化銀などの銀塩に変えるための漂白液が混合される。また、洗浄液には、洗浄を目的とする洗浄水に色画像を安定化させるための安定液が混合される。したがって、定着部32では、印画紙シートR2に対して漂白と定着とが同時に施され、洗浄部33では、洗浄と安定化とが同時に施される。
【0029】
乾燥処理部40は、洗浄部33で洗浄処理(安定化処理を含む)が完了した印画紙シートR2に対し乾燥処理を施すものであり、洗浄部33の上方位置に設けられている。かかる乾燥処理部40は、上下方向に直列で設けられた複数の搬送ローラ対41と、これらの搬送ローラ対41と対向配置された乾燥用の熱を印画紙シートR2に供給する通電発熱体42と、この通電発熱体42により乾燥処理の施された印画紙シートR2を次工程に向けて払い出す払出しコンベヤ43とを備えて構成されている。
【0030】
通電発熱体42は、上方に向かって搬送される印画紙シートR2の現像された主面、すなわち乳剤面と対向するように配設され、これによって印画紙シートR2の乳剤面に対し優先的に乾燥処理が施されるようになっている。
【0031】
図2および図3は、現像部31及び定着部32に属する浸漬処理装置50の一実施形態を示す斜視図であり、図2は、オーバーヘッドラックの外された処理ラックが処理槽から引き出された状態、図3は、オーバーヘッドラックの装着された処理ラックが処理槽に装着された状態をそれぞれ示している。また、図4は、図3のA−A線断面図である。なお、図2〜図4において、X−X方向を左右方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
【0032】
まず、図2に示すように、浸漬処理装置50は、内部に処理液が装填される処理槽51と、この処理槽51内に着脱自在に装着される処理ラック60と、この処理ラック60の頂部に着脱自在に冠設されるオーバーヘッドラック70とを備えている。なお、処理液は、浸漬処理装置50が現像部31用のものであるときは現像液であり、浸漬処理装置50が定着部32用のものであるときは定着液であり、浸漬処理装置50が洗浄部33用のものであるときは洗浄液である。
【0033】
前記処理槽51は、上面に着脱開口511を備えた有底で縦長の直方体状を呈する合成樹脂製の容器によって形成されている。かかる処理槽51は、処理ラック60が当該処理槽51内に装着された状態で、両者間に予め設定された所定量の処理液を充填し得る空間が確保されるように寸法設定されている。
【0034】
前記処理ラック60は、前記処理槽51内に挿入される挿入部61と、この挿入部61の上端から上方に向かって延設された露出部62とを備えている。挿入部61と露出部62との間には、処理ラック60の全周に亘って環状に形成されたシール機能を有するフランジ601が設けられている。そして、挿入部61を着脱開口511を介して処理槽51内に挿入することにより、フランジ601が処理槽51の上縁部に全周に亘って当止し、これによって処理槽51内が密閉状態になるようになされている。
【0035】
前記挿入部61は、左右方向一対の側板部材63を有し、これら一対の側板部材63間には、前記フランジ601が設けられた位置に架設された上下を分断する水平仕切壁602が架設されている。この水平仕切壁602より下位における一対の側板部材63間には、前後方向の中央位置に多段で上下方向に向けて等ピッチで配設された複数の大径搬送ローラ64が架設されているとともに、各大径搬送ローラ64を挟持するように2列で小径搬送ローラ65が架設されている。
【0036】
前記大径搬送ローラ64は、一対の側板部材63間に架設された大径ローラ軸641回りに回転自在に軸支されているとともに、前記小径搬送ローラ65は、一対の側板部材63間に架設された小径ローラ軸650回りに回転自在に軸支されている。そして、露出部62を介して挿入部61へ導入された印画紙シートR2は、先端が最上位に位置した大径搬送ローラ64と前方側の小径搬送ローラ65との間に差し込まれ、これら大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65の各ローラ軸(大径ローラ軸641および小径ローラ軸650)回りの駆動回転によって下降し、順次下段の大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65間に差し通されていくようになっている。
【0037】
因みに、図2〜図4に示す例では、大径搬送ローラ64は軸心回りに反時計方向に向けて回転される一方、前方の列の小径搬送ローラ65は軸心回りに時計方向に回転され、これによって大径搬送ローラ64より前方位置で大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65間に挟持された印画紙シートR2は下降するようになっている。
【0038】
そして、印画紙シートR2の先端が最下段の大径搬送ローラ64に到達すると、当該先端は、最下段の大径搬送ローラ64の回転と、最下段の前後の小径搬送ローラ65間に張設された無端ベルト651(図4)の周回とに誘導されて上方へ向かって折り返され、以後は、各大径搬送ローラ64および後方側の各小径搬送ローラ65との間を通過しつつこれらの回転に誘導されて上昇し、露出部62を介して外部へ導出されるようになっている。
【0039】
因みに、各小径搬送ローラ65は、図略の付勢手段の付勢力によって対向した大径搬送ローラ64に向けて付勢されて各周面が互いに押圧当接した状態とされており、これによって大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65に挟持された印画紙シートR2は、両者の駆動回転によって確実に搬送され得るようになっている。
【0040】
前記オーバーヘッドラック70は、処理ラック60の頂部に装着された状態で、前方から送り込まれた印画紙シートR2を処理槽51内に案内するためのものであり、処理ラック60の水平仕切壁602より上方位置における一対の側板部材63間に嵌め込まれ得るように寸法設定されている。
【0041】
かかるオーバーヘッドラック70は、筐体71と、この筐体71の前方側に装着される一対の入口側スポンジローラ(入口側案内ローラ対)72と、同後方側に装着される一対の出口側スポンジローラ(出口側案内ローラ対)73とを備えている。
【0042】
筐体71は、底板711(図4)と、この底板711の前縁部に固定された前面板712と、前記底板711の後縁部に固定された後方板713と、これら前面板712と後方板713との間に架設された左右方向一対の側板714とを備えている。前記底板711には、前後方向の中央部が上方に向かって膨出されることによって形成された断面視で逆U字状を呈する逆U字壁715(図4参照)が設けられている。この逆U字壁715の下面は開放端になっている。因みに、かかる逆U字壁715は、処理ラック60を処理槽51に対して着脱操作するときの把手としての機能を備えている。
【0043】
一方、前記処理ラック60の水平仕切壁602には、前後方向の中央位置に左右方向に延びる衝立壁603が設けられている。この衝立壁603は、前記オーバーヘッドラック70の逆U字壁715に内嵌され得るように寸法設定されている。従って、逆U字壁715を衝立壁603に嵌め込むようにしてオーバーヘッドラック70を処理ラック60に装着することにより、当該オーバーヘッドラック70は、位置決め状態でオーバーヘッドラック70の頂部における一対の側板部材63間に装着されるようになっている。
【0044】
このようなオーバーヘッドラック70において、前面板712には、印画紙シートR2をオーバーヘッドラック70内に受入れるための左右方向に延びた受入開口74が設けられているとともに、後方板713には処理済みの印画紙シートR2を外部に払い出すための払出開口75(図4)が設けられている。前記受入開口74は、前記一対の入口側スポンジローラ72の当接位置と対向する位置に設けられているとともに、前記払出開口75は、前記一対の出口側スポンジローラ73の当接位置と対向する位置に設けられている。
【0045】
また、処理ラック60の水平仕切壁602には、前方側に入口側スポンジローラ72の駆動でオーバーヘッドラック70内に引き入れられた印画紙シートR2を処理槽51内に導入するための左右方向に延びた導入開口604が設けられているとともに、後方側に処理済みの印画紙シートR2を出口側スポンジローラ73へ向けて導出する導出開口605(図4)が設けられている。
【0046】
そして、本実施形態においては、処理ラック60に前記大径搬送ローラ64、前記小径搬送ローラ65、前記一対の入口側スポンジローラ72および前記一対の出口側スポンジローラ73を駆動回転させるための駆動力伝達機構66が装着されている。以下、図5を基に必要に応じて図2〜図4を参照しながら駆動力伝達機構66について説明する。図5は、駆動力伝達機構66の一実施形態を示す浸漬処理装置50の上部の正面視の断面図である。なお、図5におけるXによる方向表示は、図2の場合と同様(−X:左方、+X:右方)である。
【0047】
図5に示すように、前記駆動力伝達機構66は、外部から図略のギヤを介して所定の駆動源からの駆動力が伝達される軸心が左右方向に延びた駆動ギヤ661と、この駆動ギヤ661と同心で一体回転する第1ベベルギヤ662および第1伝達ギヤ663と、下部で第1伝達ギヤ663に噛合する第2伝達ギヤ664と、この第2伝達ギヤ664と同心で一体回転する第3伝達ギヤ665と、第1ベベルギヤ662に噛合して上下方向に延びた軸心回りに回転する第2ベベルギヤ666と、この第2ベベルギヤ666と同心で一体回転する第3ベベルギヤ667と、この第3ベベルギヤ667に噛合して左右方向に延びた軸心 回りに回転する第4ベベルギヤ668とを備えている。
【0048】
駆動ギヤ661は、処理ラック60の露出部62における右方の側板部材63の前後方向(図5の紙面に直行する方向)中央部外方に設けられ、衝立壁603を貫通して左右の側板部材63間に架設された入力軸671回りに一体回転可能に軸支されている。
【0049】
第1ベベルギヤ662は、右側の側板部材63内のギヤ室631においてギヤ面を左方に向けて同心で入力軸671に外嵌固定され、入力軸671回りに一体回転可能になっている。
【0050】
第1伝達ギヤ663は、右側の側板部材63のギヤ室631内における第1ベベルギヤ662の左側で入力軸671に同心で外嵌固定され、入力軸671回りに一体回転可能になっている。
【0051】
第2伝達ギヤ664は、ギヤ室631内における第1伝達ギヤ663の直下位置において第1伝達ギヤ663と噛合した状態でギヤ室631の左側の壁面を貫通した入力軸671と平行な中継軸672に同心で外嵌固定され、これによって中継軸672回りに一体回転可能とされている。
【0052】
第3伝達ギヤ665は、各一対の入口側スポンジローラ72および出口側スポンジローラ73(図2)を従動回転させるものであり、ギヤ室631の左壁面の左側において中継軸672に同心で一体回転可能に外嵌され、第2伝達ギヤ664と中継軸672を介して一体回転し得るようになっている。
【0053】
一方、前記一対の入口側スポンジローラ72は、それぞれが同心で軸支されているローラ軸721の右端部に同心で一体回転可能に外嵌され、かつ、互いに噛合したスポンジローラ用ギヤ722を有している。また、前記一対の出口側スポンジローラ73は、それぞれが同心で軸支されているローラ軸731の右端部に同心で一体回転可能に外嵌され、かつ、互いに噛合したスポンジローラ用ギヤ732を有している。そして、各一対のスポンジローラ用ギヤ722,732の上方のものが、図3に示すように、それぞれ第3伝達ギヤ665に噛合されている。
【0054】
従って、第3伝達ギヤ665が中継軸672回りに図3における時計方向に向けて回転すると、この回転は、各スポンジローラ用ギヤ722,732の上のものに伝達され、これら上の各スポンジローラ用ギヤ722,732に噛合している下の各スポンジローラ用ギヤ722,732が逆回転するため、結局、一対の入口側スポンジローラ72は、印画紙シートR2をオーバーヘッドラック70内に引き入れるように互いに逆回転するとともに、一対の出口側スポンジローラ73は、印画紙シートR2をオーバーヘッドラック70から排出するように互いに逆回転することになる。
【0055】
前記第2ベベルギヤ666および第3ベベルギヤ667は、前記大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65を従動回転させるべく設けられるものである。そして、第2ベベルギヤ666は、側板部材63のギヤ室631内において入力軸671の直下位置で駆動ギヤ661と噛合している。かかる第2ベベルギヤ666は、ギヤ室631から水平仕切壁602を貫通して下方にむけて延設されたベベルギヤ軸673の頂部に同心で軸心回りに一体回転可能に軸支されている。
【0056】
これに対し第3ベベルギヤ667は、処理ラック60の挿入部61に設けられた大径搬送ローラ64の段数に応じて各大径搬送ローラ64の右端部に対応した位置に複数設けられている。かかる各第3ベベルギヤ667は、ギヤ面を下に向けた状態で前記ベベルギヤ軸673に同心で一体回転可能に軸支されている。
【0057】
第4ベベルギヤ668は、第3ベベルギヤ667の回転を大径搬送ローラ64に伝達するためのものであり、ギヤ面を右方に向けて第3ベベルギヤ667に噛合した状態で大径ローラ軸641の右端部に同心で一体回転可能に軸支されている。
【0058】
そして、大径搬送ローラ64の回転を小径搬送ローラ65に伝達するために、大径ローラ軸641には挿入部61における右側の側板部材63の左壁部直左方位置において大径搬送ローラ64に同心で一体回転可能に外嵌された大径ギヤ642が設けられている一方、大径搬送ローラ64に対向した各一対の小径搬送ローラ65の小径ローラ軸650には、それぞれ大径ギヤ642と噛合する小径ギヤ652が同心で一体回転可能に設けられている。前記大径ギヤ642は、有効径寸法(摩擦円の径寸法)が大径搬送ローラ64の外形寸法と同一に設定されているとともに、小径ギヤ652の有効径寸法は、小径搬送ローラ65の外形寸法と同一に設定され、これによって大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65の各周速度が同一になるようにしている。
【0059】
このように構成された駆動力伝達機構66によれば、所定の駆動源からの駆動力が駆動ギヤ661に伝達されると、この駆動ギヤ661の駆動回転は入力軸671を介して露出部62および第1伝達ギヤ663に伝達される。そして、第1伝達ギヤ663が回転すると、この回転は第2伝達ギヤ664および中継軸672を介して第3伝達ギヤ665に伝達されて当該第3伝達ギヤ665が中継軸672回りに回転する。
【0060】
この第3伝達ギヤ665の回転は、一対の入口側スポンジローラ72(図2)の上方のスポンジローラ用ギヤ722およびこれに噛合している下方のスポンジローラ用ギヤ722に伝達されるとともに、一対の出口側スポンジローラ73の上方のスポンジローラ用ギヤ732およびこれに噛合している下方のスポンジローラ用ギヤ732にも伝達され、これによって一対の入口側スポンジローラ72は互いに反対方向に向けてローラ軸721回りに回転するとともに、一対の出口側スポンジローラ73も互いに反対方向に向けてローラ軸731回りに回転することになる。
【0061】
一方、第1ベベルギヤ662に噛合している第1ベベルギヤ662の回転は、ベベルギヤ軸673を介して各第3ベベルギヤ667に伝達され、これによって各第3ベベルギヤ667はベベルギヤ軸673回りに一体回転する。この各第3ベベルギヤ667の一体回転は、当該第3ベベルギヤ667に噛合している第4ベベルギヤ668を介して各大径搬送ローラ64の大径ギヤ642に伝達され、これによって各大径搬送ローラ64は大径ローラ軸641回りに回転する。この回転によって大径搬送ローラ64が大径ギヤ642と一体回転することになる。
【0062】
各大径ギヤ642の回転は、これに噛合している各一対の小径ギヤ652に伝達され、これによる小径ギヤ652の回転によって小径搬送ローラ65が大径搬送ローラ64と反対方向に向けて同一周速度で回転する。
【0063】
従って、駆動力伝達機構66の各ギヤが上記のようにそれぞれ回転することにより、入口側スポンジローラ72、出口側スポンジローラ73、大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65がそれぞれ所定の方向に駆動回転した状態で、露光処理部20から受入開口74(図4)を介して浸漬処理装置50内に受け入れられた印画紙シートR2は、まず、一対の入口側スポンジローラ72によって挟持されつつ下方に向かわされ、導入開口604を通って処理槽51内に導入される。
【0064】
そして、処理槽51内に導入された印画紙シートR2は、まず同一の周速度で互いに反対方向に回転している最上位の大径搬送ローラ64と、上流側(図4における前方)の最上位の小径搬送ローラ65(図4に示す例では大径搬送ローラ64が反時計方向に向けて回転しているとともに、小径搬送ローラ65がと径方向に回転している)との間に挟持された状態で下方に向けて搬送され、最下位の大径搬送ローラ64に到達したのち上方に向けて折り返され、今度は、大径搬送ローラ64と下流側(図4における後方)の小径搬送ローラ65とによって挟持されつつ上昇する。かかる昇降の間に印画紙シートR2は、処理槽51に装填されている処理液によって所定の処理が施される。
【0065】
そして、最上位の大径搬送ローラ64と小径搬送ローラ65との間を通過した印画紙シートR2は、一対の出口側スポンジローラ73に挟持され、処理液が吸着されつつ、これらの駆動回転に誘導され、払出開口75を通って次工程へ向けて送り出される。
【0066】
(洗浄部)
図7は、洗浄部33の断面図である。洗浄部33は、処理槽51として3個の処理槽33A〜33Cを有している。処理槽33A〜33Cは、互いに密着すると共に、処理液の深部に該当する下部において、開口部680を通じて互いに連通している。開口部680は、本発明の連通路の具体例に該当する。当該開口部680の周囲には、処理槽33A及び33Bにそれぞれ連結した筒状の支持部材681が設けられている。更に支持部材681の一方開口端には、一対のブレード682の根本部分が固定されている。
【0067】
一対のブレード682は、一例としては、ゴムや柔軟な樹脂などの柔軟に弾性変形する材料で構成され、この場合には好ましくは、根本が厚く、先端部分が薄くなるように形成されている。更に好ましくは、一対のブレード682は、根本から先端部分に至る前の中途まで、金属等の超音波を反射し易い材料で構成され、それより先端部分に至る部分が、ゴムなどの柔軟な材料で構成される。この場合には、双方の材料は、その継ぎ目が液密を保つように、互いに密着して固定される。全体の厚さは、必ずしも、根本から先端部部へ向けて減少するものでなくてもよい。この場合にも、「ブレード」という名称を用いる。
【0068】
一対のブレード682は、処理の順序に沿った1つの処理槽から次の処理槽、例えば処理槽33Aから処理槽33Bへ向かって、互いの間隔が狭まるように取り付けられている。一対のブレード682は、更に、先端部分が弾性復元力をもって互いに押圧し合うように取り付けられている。その結果、一対のブレード682は、先端部分が互いに密着しており、それによって開口部680を閉塞している。すなわち、一対のブレード682及び支持部材681は、開口部680を仕切って処理液の通過を阻止する仕切部材68を構成する。
【0069】
なお、写真処理装置の処理槽間の仕切りとして用いられるブレード682それ自体については、特開平5−11422号公報、及び特開2004−310061号公報をはじめ、多数の公報に掲載されているところであり、当分野における技術常識に属する。そのため、その詳細な構成についての説明は略する。
【0070】
処理ラック60のうち、処理槽33Aに挿入されるものについては、印画紙シートR2を上端部から受け入れてのち、下方へ向けて搬送し、下端部において折り返すまでの搬送経路のみが残されており、折り返した後に上方へ向けて搬送する搬送経路、及び上端部から排出する搬送経路が除去されている。このため、折り返しのための無端ベルト651は、2個の小径搬送ローラ65の間にのみ張設されている。
【0071】
一方、処理ラック60のうち、処理槽33Bに挿入されるものについては、印画紙シートR2を下端部において水平に搬送する経路のみが残されている。すなわち、搬送ローラとしては、下端部に位置する大径搬送ローラ64及びその下方に当接する小径搬送ローラ65のみが設けられている。また、無端ベルト651も除去されている。
【0072】
これに対して、処理槽33Cに挿入されるものについては、印画紙シートR2を、下端部の折り返し点から上方へ向けて搬送する搬送経路、及び上端部から排出する搬送経路のみが残され、上端部から受け入れてのち、下方へ向けて搬送し、下端部の折り返し点までの搬送経路が除去されている。このため、折り返しのための無端ベルト651は、2個の小径搬送ローラ65の間にのみ張設されている。処理槽33A及び33Cにおける折り返し点の位置、及び処理槽33Bにおける大径搬送ローラ64及び小径搬送ローラ65が当接する位置は、ブレード682の先端部分が密着する位置と同じ高さに設定されている。
【0073】
処理槽33A〜33Cの製造を容易にするために、処理槽33A〜33Cはそれぞれ、例えば、仕切部材68の直上部付近で結合される2部材からなる(図略)。すなわち、筒状の上部と有底筒状の下部とからなり、下部に仕切部材68が連結している。上部と下部は、結合部分にフランジを有し、例えばパッキンを挟んでネジ等により締結される。処理槽33A〜33Cに挿入される処理ラック60は、挿入及び引き上げの際に、仕切部材68に干渉しないように、その下端部が切り欠かれている。
【0074】
処理槽33A〜33Cに挿入される処理ラック60は、以上のように構成されているので、印画紙シートR2は、処理槽33Aに属する処理ラック60の上端部から供給された後、下方へ向けて搬送され、更に下端部において水平方向にまで進路が曲げられ、ブレード682の先端部分を押しのけて処理槽33Bへ送り出される。処理槽33Bへ侵入した印画紙シートR2は、処理槽33B内の大径搬送ローラ64及び小径搬送ローラ65に挟持されることにより、ブレード682の先端部分を押しのけて処理槽33Cへ送り出される。処理槽33Cへ侵入した印画紙シートR2は、下端部において垂直方向にまで進路が曲げられた後、上方へ向けて搬送され、更に上端部から排出される。
【0075】
一対のブレード682は、自由な先端部分が弾性復元力によって互いに密着しているものであるので、ラック60が有する搬送機構によって、印画紙シートR2は容易に一対のブレード682の先端部分を押し開いて、次の処理槽へ移動することができる。一対のブレード682は、印画紙シートR2の進行方向に沿って互いの間隔が狭くなっているので、印画紙シートR2を自身の先端部へと案内する役目をも果たす。印画紙シートR2が一対のブレード682の間を通過するとき、一対のブレード682は、弾性復元力による押圧力をもって印画紙シートR2の両主面に密着するので、印画紙シートR2に付着している処理液をぬぐい取る。それにより、次の処理槽への処理液の持ち込みを抑えることができる。
【0076】
印画紙シートR2が、一対のブレード682の間を通過するときには、印画紙シートR2の両端部において、一対のブレード682の間にわずかな隙間が形成される。この隙間を通じて、わずかながら処理液が行き来する。しかしながら、仕切部材68によって仕切られている処理槽33A〜33Cに貯留される処理液は、洗浄と安定化とを兼ねる同質の処理液であるので、多少の行き来があっても支障はない。
【0077】
洗浄部33について更に注目すべきは、一対のブレード682の互いに開いた側から先端部分へ向かって超音波を放射する超音波振動子アレイ801,802が配置されていることである。図7では、超音波振動子アレイ801,802は、印画紙シートR2の搬送路の下方に、すなわち印画紙シートR2の乳剤面の側に配置されている。これに対して、超音波振動子アレイ801,802は、印画紙シートR2の搬送路の上方に、すなわち印画紙シートR2の支持体面の側に配置されていてもよい。すなわち、振動子アレイ801,802は、移動する印画紙シートR2に干渉しないように配置されておればよい。但し、超音波が印画紙シートR2の乳剤面に直接照射され、後述する処理液の置換がより早まる点では、前者の配置が有利である一方、超音波の発生に伴う気泡が印画紙シートR2の乳剤面に触れないために、印画紙シートR2への処理むらが発生し難い点では、後者の配置が有利である。
【0078】
図8に、超音波振動子アレイ801及び802を代表した超音波振動子アレイ801とブレード682との位置関係を斜視図で示す。超音波振動子アレイ801は、長尺形状をなしており、その長手方向両端は、処理ラック60の一対の側板部材63(図2参照)に固定されている。超音波振動子アレイ801が超音波周波数で振動すると、処理液内にボイドが発生し、それが破裂するときに衝撃波が発生する。この衝撃波を含む超音波が印画紙シートR2に伝わると同時に、一対のブレード682にも伝わる。一対のブレード682は、超音波振動子アレイ801に向かって開いているので、超音波が一対のブレード682によって多重反射され、先端部分へ向かって収束する。
【0079】
その結果、一対のブレード682の先端部分では、超音波の強度が増幅されるので、一対のブレード682の先端部分を通過する印画紙シートR2は、強度が増幅された超音波に晒されることとなる。特に、一対のブレード682の根本側が金属などの硬質の材料で構成され、先端側がゴムなどの柔軟に弾性変形する材料で構成される場合には、硬質の材料による超音波の反射効果が高く、先端側のゴム等の材料に、強く増幅された超音波振動が伝わる。すなわち、印画紙シートR2に付着したり染み込んだりしたままの処理液が、印画紙シートR2とともに処理槽33Aから処理槽33Bへ持ち込まれる際に、印画紙シートR2が増強された超音波の照射を受けることなる。その結果、持ち込まれた処理液が、新たに移行した処理槽33Bの処理液へ速やかに置換する。それにより、新たな処理槽33Bでの処理に要する処理時間が短縮される。同様のことは、印画紙シートR2が処理槽33Cへ移行した後においても起こる。処理槽33B及び33Cにおける処理時間が短縮されることにより、1枚目の印画紙シートR2を処理して出力するまでの待ち時間を短縮することができるとともに、写真処理装置10を小型化することもできる。
【0080】
なお、フィルムの現像工程の不要なデジタルカメラでは、印画紙シートR2への処理(いわゆるプリント処理)のみが必要とされるので、銀塩カメラの場合に比べて、本来的に待ち時間が短い。すなわち、写真処理サービスを提供する店舗の顧客の立場からすれば、店頭を一旦離れることなく、店頭に待ち合わせたまま、写真プリントの仕上がりを待つことのできる時間である。それだけに、デジタルカメラのユーザにとっては、待ち時間の短縮によって受ける利益が大きく、店舗にとってはより多くの顧客を獲得する上で、受ける利益が大きい。写真処理装置10は、デジタルカメラにも対応した写真処理装置であるので、待ち時間の短縮化がもたらす利益が大きい。
【0081】
図9は、互いに同一に構成される超音波振動子アレイ801,802を代表して超音波振動子アレイ801の構造を示す斜視図である。この超音波振動子アレイ801は、帯状の基台800上に、複数の超音波振動子810が設けて構成されている。各超音波振動子810は、図10に断面構造を示すように、圧電材料812を電極材料811,813で挟んで構成されている。前記圧電材料812は、例えば酸化チタンや酸化バリウムなどの粉体を焼結して成る圧電セラミックスに分極処理を施すことで形成されている。
【0082】
前記圧電材料812は円盤状に形成され、図11に断面構造を示すように、超音波振動子810の中央に形成された孔823を通して、基台800から遠い側の電極材料811にリード線820が接続されている。基台800に接触する側の電極材料813にも、孔823を通じてリード線820が接続されている。リード線820は、基台800に形成された孔824を通して、超音波振動子810とは反対側に引出され、超音波の交番電流を作成する発振器に接続される。超音波振動子810は、基台800に取付けられた後に、必要に応じて、超音波の吸収が少ない封止材料821、例えばエポキシ樹脂によって気密に封止される。
【0083】
本発明で用いる超音波振動子としては、上述の超音波振動子アレイ801のように複数の超音波振動子810が基台800上に一直線状に設けられていなくてもよく、千鳥状など他の形状に配置されていてもよい。すなわち、複数の超音波振動子810が、印画紙シートR2の搬送方向と交差するように配列されておればよい。更には、複数の超音波振動子810が配列する代わりに、単一の細長い超音波振動子が一対のブレード682に対向するように配置されていても良い。すなわち、一対のブレード682に向けて超音波を照射可能なように超音波振動子が配置されておればよい。
【0084】
なお、超音波振動子810は、写真処理装置10の電源が投入されている間は駆動され続けてもよく、あるいは露光処理部20からの信号や、現像処理部30に設けられるセンサの検出信号に応答して、対象となる一対のブレード682を通過している間だけ駆動されるようにしてもよい。
【0085】
図12は、洗浄部33に属する処理槽33A〜33Cのより望ましい概略構成を示す図である。処理槽33Cの底部又は下方に、処理液880を供給するための流入口870が形成されている。また、処理槽33A,33B,33Cの各々の上部には、処理液880を排出するための排出口873,872,871が形成されている。排出口871〜873のうち、排出口873が最も低く、排出口873,872及び871の順に高さが上昇している。そして、排出口871から排出された処理液880は、処理槽33Bへ流入し、排出口872から排出された処理液880は、処理槽33Aへ流入する。図12には、排出口871から排出された処理液880は、処理槽33Bへ直接に導入され、排出口872から排出された処理液880は、処理槽33Aへ直接に導入される例を示している。これに対して、排出口871から排出された処理液880を管又は樋等の部材を用いて処理槽33Bへ導入しても良く、排出口872から排出された処理液880を、同様の手段で処理槽33Aへ導入しても良い。
【0086】
例えば図略の補助タンク及びポンプを通じて供給される新鮮な処理液880が、流入口870を通じて、先ず処理槽33Cへ流入する。処理槽33Cからあふれた処理液880は、排出口871を通じて処理槽33Bへ流入する。処理槽33Bからあふれた処理液880は、排出口872を通じて処理槽33Aへ流入する。処理槽33Aからあふれた処理液880は、排出口873を通じて、例えば図略の回収タンクに回収される。
【0087】
印画紙シートR2への処理が継続する期間にわたって、図略のポンプを駆動し続けることにより、処理液880を供給し続けることができる。それにより、処理槽33A〜33Cでは、排出口871〜873を通じてオーバーフローが生じるために、処理液880の液面が一定高さに保持される。しかも、処理液880の液面の高さは処理槽33A〜33Cの順に上昇している。このため、一対のブレード682を印画紙シートR2が通過する際に、処理液880の行き来があっても、処理液880の移動が、処理の順序とは逆の方向に制限される。すなわち、洗浄処理のより浅い側にあって汚濁の多い処理液880が、洗浄処理の進んだ側にある汚濁の少ない処理液880へ逆流することを防ぐことができ、それにより洗浄処理を効率よく遂行することができる。
【0088】
特に、超音波振動子アレイ801,802が発生する超音波が強い場合には、一対のブレード682の先端部分が振動することにより、一対のブレード682が本来有する密着性が弱まり、一対のブレード682の先端部分からの処理液880の漏れが幾分増える恐れがある。この場合においても、汚濁の多い処理液880の逆流を防ぐことができる。
【0089】
また、後段の処理槽ほど新鮮で汚濁の少ない処理液880が供給されると共に、後段で使用済みの処理液880を前段で無駄なく使用することができる。すなわち、洗浄処理の効果を損なうことなく処理液880の使用量を抑えることができる。
【0090】
図13は、制御装置25の構成を示すブロック図である。制御装置25は、受信部852、プリント情報記憶部853、及び各種制御部859を備えている。制御装置25は、図略のCPU(Central Processing Unit;中央演算装置)、当該CPUが処理すべきプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、計算データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等のメモリ、その他の周辺回路を備えたコンピュータとして構成されている。CPUがプログラムに従って動作することにより、制御装置25は、各装置要素の機能を実現する。
【0091】
受信部852は、オペレータ或いはユーザが操作部851を通じて入力した情報を受信する。例えば、操作部851からは、出力すべき写真サイズ、枚数、使用する印画紙シートR2の種類、動作、停止等の命令等が入力される。受信部852は、センサ263,264が出力する情報をも受信する。プリント情報記憶部853は、受信部852が受信した情報のうち、処理の条件に関する情報を、プリント情報として記憶する。各種制御部859は、プリント情報記憶部853が記憶するプリント情報、或いは受信部852が受信した情報に基づいて、写真処理装置10の各部を制御する。例えば、露光制御部854は露光装置28を制御し、搬送制御部855は印画紙シートR2を搬送するための駆動用モータをオンオフ制御し、カッター制御部856はカッター27を制御する。その他にも、図略の制御部が存在する。
【0092】
また、超音波洗浄制御部857は、超音波振動子アレイ801、802が有する多数の超音波振動子810に交番電圧を供給する発振器830をオンオフ制御する。全ての超音波振動子810は、互いに並列となるようにリード線820に接続され、当該リード線820が発振器830の図略の出力端子に接続されている。従って、超音波洗浄制御部857が発振器830をオンオフ制御すると、それに応じて、全ての超音波振動子810がオンオフする。
【0093】
(その他の実施の形態)
(1)上記の実施形態においては、写真処理を施すべき感光材料として印画紙(印画紙ロールR、長尺印画紙R1および印画紙シートR2)を例に挙げて説明したが、本発明は、感光材料が印画紙であることに限定されるものではなく、銀塩写真システムにおける写真撮影に供されたフィルムであってもよい。
【0094】
(2) 超音波振動子アレイは、処理槽33A,33Bのうちの1つにのみ設けられていても、相応の効果が得られる。
【0095】
(3) 仕切部材68で仕切られる処理槽は、処理槽33A〜33Cの3槽である代わりに、処理槽33A及び33Cの2槽とすることも可能であり、処理槽3Bを複数個並べることにより、4槽以上とすることも可能である。また、処理槽33Aと33Cのペアを、2つ以上並べることにより4層以上とすることも可能である。
【0096】
(4) 仕切部材68で仕切られる処理槽は、洗浄部33に設ける代わりに、現像部31及び定着部32に設けることも可能である。但し、写真処理においては、洗浄処理に要する処理時間が他の処理に要する処理時間に比べてはるかに長い。このため、仕切部材68で仕切られる処理槽を洗浄部33に設ける形態では、最も長い処理時間が短縮されるので、1枚目の感光材料を処理して出力するまでの待ち時間が、効果的に短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係る写真処理装置の一実施形態の全体構成を示す説明図である。
【図2】浸漬処理装置の一実施形態を示す斜視図であり、オーバーヘッドラックの外された処理ラックが処理槽から引き出された状態を示している。
【図3】浸漬処理装置の一実施形態を示す斜視図であり、オーバーヘッドラックの装着された処理ラックが処理槽に装着された状態を示している。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】駆動力伝達機構の一実施形態を示す浸漬処理装置の上部の正面視の断面図である。
【図6】印画紙の基本的な断面構造を示す概略図である。
【図7】図1の洗浄部の断面図である。
【図8】図7のブレード周辺の部材の斜視図である。
【図9】超音波振動子アレイの構造を示す斜視図である。
【図10】超音波振動子の構造を説明するために前記超音波振動子アレイを一部切り欠いて示す斜視図である。
【図11】超音波振動子の構造を示す断面図である。
【図12】図1の洗浄部のより望ましい形態を示す概略構成図である。
【図13】制御装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0098】
10 写真処理装置 20 露光処理部
25 制御部 30 現像処理部
31 現像部 32 定着部
33 洗浄部
33A〜33C 処理槽(洗浄処理槽)
50 浸漬処理装置 51 処理槽
60 処理ラック
64 大径搬送ローラ(搬送部)
65 小径搬送ローラ(搬送部)
682 ブレード
801〜804 超音波振動子アレイ
810 超音波振動子
858 温度制御部
873,872,871 排出口
880 処理液
R1 長尺印画紙(感光材料)
R2 印画紙シート(感光材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理槽を備え、各処理槽に貯留された処理液の中に感光材料を順次通過させることにより、前記感光材料に各処理液による処理を順次施す写真処理装置であって、
前記複数の処理槽のうち、処理の順序において連続する少なくとも2個の処理槽の間に処理液に浸る位置に互いに連通する連通路が設けられており、
前記連通路の各々に設けられ、各連通路を挟む一方の処理槽から他方の処理槽へ向かって互いの間隔が狭まり、先端部分が自由で且つ密着するように弾性復元力をもって互いに押圧し合い、それによって、処理槽間の処理液の通過を阻止する一対のブレードと、
前記連通路の各々に対応して設けられ、前記感光材料を前記一方の処理槽から前記一対のブレードの間を通過させて前記他方の処理槽へ移送する搬送部と、
前記連通路の少なくとも一つに対応して設けられ、前記一対のブレードの互いに開いた側から前記先端部分へ向かって超音波を放射する超音波振動子と、を備える写真処理装置。
【請求項2】
前記超音波振動子は、前記連通路の各々に対応して設けられている請求項1記載の写真処理装置。
【請求項3】
前記少なくとも2個の処理槽の各々には、処理液の液面の高さを一定に保つために処理液を排出する排出口が設けられており、前記排出口は、前記処理の順序において連続する順に高さが上昇する位置に設けられている請求項2記載の写真処理装置。
【請求項4】
前記少なくとも2個の処理槽の各々は、前記処理の順序の逆順に、前記排出口を通じて一つの処理槽から排出された処理液を、連続する別の処理槽へ導入する請求項3記載の写真処理装置。
【請求項5】
前記複数の処理槽が、現像処理を施す現像処理槽と、定着処理を施す定着処理槽と、洗浄処理を施す2槽以上の洗浄処理槽とを有しており、
前記超音波振動子は、前記2槽以上の洗浄処理槽のうちの、処理の順序において連続する少なくとも2個の処理槽の間に設けられている請求項1ないし4の何れかに記載の写真処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−41062(P2007−41062A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222137(P2005−222137)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】