説明

写真応用に適した組換えコラーゲンを有するハロゲン化銀乳剤及びその調製

【課題】 高い生産性の組換えコラーゲン様ポリペプチドの製造方法、並びに該ポリペプチド、及びそれを用いたより均一な写真用AgX乳剤材料の提供。
【解決手段】 平板状粒子が全粒子投影面積の75%以上を占める平板状ハロゲン化銀乳剤であって、該乳剤が核形成ペプタイザーの存在下で核化され、その後成長ペプタイザーの存在下で成長するハロゲン化銀粒子を有し、少なくとも一つのペプタイザーが遺伝子工学で調製された実質的に純粋なコラーゲン様材料であり、該ペプタイザーが4個を超える異なるアミノ酸を有するアミノ酸配列を有するハロゲン銀乳剤。該AgX乳剤の調製方法。組換えコラーゲン様ポリペプチドの製造方法であって、0.95グラム/リットルを超える程度まで微生物によるコラーゲン様ポリペプチドをコードする核酸配列の発現を有し、組換えコラーゲンがらせん構造を有さず、好ましくは該発現が大腸菌またはサッカロミセス・セレビシアエ以外の微生物で起こる上記製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された写真製品と、該製品の改良された生産方法に関する。特に、この改良は写真製品の成分の製造において組換えDNA技術を利用することによりなされた。この興味ある成分とはコラーゲンである。
【背景技術】
【0002】
写真製品の製造過程は、多くのことが開示され、特許された複雑な操作である。一般的に言えば、印画紙やトリアセテート・セルロースフィルム等の写真製品を製造する方法は、ラミネート紙又は透明なポリマー支持体上部に幾つかの層でコーティングすることからなる。これらの層は、最も重要な成分として放射線感受性ハロゲン化銀の結晶を含み得る乳剤層又はこれらの感光性成分を持たない中間層として知られている。本発明は感光層それ自体を向上させ、かつ写真層の製造方法を向上させることに関する。
【0003】
フィルムの製造方法においてゼラチンが使われる段階がいくつかある。ゼラチンの機能は各段階で異なるために各段階で必要とされる特性も異なり、コラーゲン様物質がそれぞれの特定の応用に合うように明確に適応させることが期待されることになる。
【0004】
写真応用のためのハロゲン化銀乳剤の製造方法に多くの注目が集められている。AgX核形成の過程およびその後の成熟過程に影響を与える、ハロゲン化銀の粒子構造の役割及び特徴に多くの注意が払われている。写真製品の乳剤層で最も重要な成分は、ハロゲン化銀粒子と普通呼ばれ、ヨウ化物を任意に含む放射線感受性臭化銀、放射線感受性塩化銀、または放射線感受性塩化臭化銀微結晶からなる。粒子の析出中にペプタイザーを導入して、制御できない凝集を避ける。さもなければ、その凝集は多くの欠点を示す。即ち、薄い中間物および高いアスペクト比の平板粒子乳剤の形成を制限して、その後の写真撮影に不利をもたらす。多様な形態のゼラチンはペプタイザーとして写真の製造方法で用いられてきた。高いアスペクト比を有する平板状粒子は、鮮明度の高さ、感度粒状性関係の向上、青色とマイナス青色(minus blue)との感度分離の増大、より速い現像能力およびより高い銀被覆力等の幾つかの写真上の利点を持つことがよく知られている(例えば、非特許文献1、特許文献1参照)。アスペクト比が高いだけではなく、粒子サイズ分布が狭い(これらは単分散あるいは均質拡散の要望として表される)平板状粒子を生産することも望まれている。
【0005】
現在まで、工業的な方法に用いられるゼラチンは一般に、単に動物の骨及び皮からの導出により動物源から得られている。この物質の欠点は、不純物の存在と、その組成の性質が明確に定められていないため再現性がないことである。どのような成分が存在し、どのような量であるのかも明らかでない。さらに、最適活性に、どの成分が実際に必要とされるのかも不明である。写真製造方法の種々の段階で使用されるゼラチン組成のばらつきがあるため写真製造方法の再現性は疑わしい。
【0006】
写真応用でのゼラチンの欠点は、長年にわたり詳細に取り組まれ、種々の特許出願の課題となってきた。これらの文献のほとんどは、修飾ゼラチンの特性に特別な改良を取り入れるために、動物源からの導出後の該修飾ゼラチンを改良する方法に取り組むことに向けられている。文献は、結晶の50%以上がアスペクト比8を越えることが望ましいと記載しているが、これによって青色の感度が高められるからである(特許文献2参照)。メチオニン含量が1グラムあたり30マイクロモル以下、好ましくは1グラムあたり5マイクロモル以下のゼラチンを使用して、台形、六角形および三角形の薄い平板状粒子を得ることが記載されている(特許文献3参照)。ゼラチン1グラムあたり30マイクロモル以下のメチオニンレベルを得るために酸化しておいた正常な骨由来のゼラチンが使用された。それよりも低いメチオニン含量は、析出条件中に広い範囲のpBrを提供するものとして記載されている(特許文献4)。多くの刊行物がゼラチンのメチオニン含量を減少させる方法を包含している。アルカリ次亜塩素酸塩またはH2 2 の酸化性試薬反応が記載されている(例えば、特許文献5、非特許文献2〜4参照)。1959年の初期でさえ、酸化が不純物を除去するための方法として示唆されていた。
【0007】
組換え核酸技術を用いてコラーゲンおよびコラーゲン様タンパク質自体になされた多くの研究も存在する。しかし、コラーゲンと組合わせて組換えDNA技術を用いることおよび写真応用においてそれを適用することは意外なことに欠如している。組換えコラーゲンの領域で発表された文献のほとんどはコラーゲンをコードする配列の発現を必要とさえしない染色体核酸のPCR技術を用いる診断応用に向けられていた。染色体中の該配列の単なる存在がこれらの実例での診断にとっては十分である。コラーゲンをコードする配列の発現を実際に示すそうした文献のいずれもが、確かに高レベルの発現を必要としなかった。もしくは、発現が示されていても、完全な配列ではなく、むしろコード配列の単なる部分が発現された。しばしば、これらの部分的な配列は、必要とされるタンパク質材料の量が最小となるように抗体を得るために用いられている。さらに、抗体がいったん得られたら、該配列は医薬応用のためにはそれ以上は必要とされない。したがって、これらの例では、低い発現は実際的な問題ではない。また、コード配列の小さい部分の発現は、コード配列の高い程度の繰返しが原因となる発現問題を排除することが期待できる。
【0008】
長い繰返し配列に関連する発現問題を克服する努力において、および新しいタイプのタンパク質、即ち合成タンパク質を設計する努力において合成核酸が設計されてきた。しかし、そのような合成ポリペプチドは生産に非常に費用がかかる。よって、写真フィルム生産の分野に必要とされるラージスケール生産を必要とする利用にそれを応用することはできない。
【0009】
よって、先行技術の多くの応用は工業的規模での生産に必要とされる高い程度の発現を必要としないし、実際に所望の結果も提供してはいない。その結果、これらの種類の応用を考察する文献は天然コラーゲン配列または対応する長さと構造の配列の高い発現を得る問題を扱ってもいないし解決もしていない。
【0010】
先行技術が天然の配列またはその部分を発現することを示唆する場合は一般に、一般用語が用いられ、さらに詳細を示すことなく一般的な形質転換法のハンドブックが照会される。生産用生物と発現程度は重要性が低く、注目されてこなかったために、提供されるどの具体例も大腸菌およびサッカロミセス・セレビシアエである。
【0011】
コラーゲン様タンパク質の発現問題を扱う場合、これは修飾大腸菌または高等動物細胞および昆虫細胞のいずれかを用いることにより生じている。後者の生物は、翻訳後プロセッシングについても修飾される。しかし、後者の種類の細胞利用は、細胞、培地および産物の単離の費用が高いために、大規模生産ではひどく費用がかさむ。大腸菌の欠点は、それが所望の産物を分泌できないことである。さらに、発現される核酸配列の繰返しは形質転換バクテリアの不安定性をもたらし、その結果、コラーゲン様コード配列の発現量が低下する。よって、写真フィルム生産の分野で要求される大規模生産を必要とする応用においてそのような生産(微)生物を適用することができない。
【0012】
多くの研究努力は、動物源に存在するコラーゲンの状態、すなわち工業的規模の写真応用で現在使用されているコラーゲンの状態である繊維原状または三重らせんを得るために必要とされる翻訳後修飾を行うことに向けられている。三重らせんを有するコラーゲンを達成するため、より具体的には繊維原コラーゲンを達成するためにコラーゲン様材料を発現させる場合、翻訳後プロセッシング装置それ自体を有するか、または翻訳後プロセシング酵素のコード配列を付加することにより該プロセッシング装置を有する宿主細胞を用いるべきであることは一般的に認められている。この形態のコラーゲンが応用に有用な形態であることが通常認められている。
【0013】
組換えコラーゲンが写真応用に利用できることを確定的でないにせよ、先行技術が実際に示唆している場合、コラーゲン材料の特別な形態の関連性は、応用のために特異な要件に対して通常は取り上げられなかった。ある特許出願は、組換えコラーゲンを写真フィルム用に用いることを見過ごしてきた一方で、他の特許出願は写真応用を具体的にさえ示している。しかし、そうした文献の教示は明らかに他の問題に関するもので、写真応用およびその特定の要件には具体的には向けられていない。さらに分析するならば、さまざまな理由から、それら出願で提供される具体例のいずれも写真フィルムへの応用に実際に適することを示してはいない。これら特許出願は組換えコラーゲンを写真製造方法に応用しようとするときには実施不能であり、単なる自然の推論とみなされる。そのような文献の具体例を以下に示す。
【0014】
特許文献6は、小さい繰返し配列を有する新規なポリマーの生産を記載し、具体的には絹等の繰返し基が開示されている。コラーゲンは繰返し単位を提供することのできる構造の一つとして示唆されている。「CLPの性質は高温で熱可逆的なゲル化を受け、ならびに免疫原性を有さないように設計される。らせんの高い安定性により、CLPから形成された繊維または膜が高い引張り強度をもたらすに違いない。これらの鎖性質により、硬質基体に塗布される場合に柔軟な被膜として働くに違いない水溶液中のハイドロゲルコロイドが生成されるべきである」ことが述べられている。次に、細胞レセプターのリガンドを有する柔軟な被膜材料が示唆されている。GLPGPKGDRGDAGPKGADGSPの配列がCLPモノマーに加えられるべきであって、大腸菌から発現される構築物の一例が提供されている。この組成物に関して、「本組成物は傷の包帯としての利用を見出し、血管新生、目への適用、人工器官のマトリックス等を可能とする」と開示されている。CLPと他の繰返しの機能単位との組合せにより機能を組み合せることも示唆されている。しかし、使用される配列の具体例は提供されていない。
【0015】
提供された唯一の具体例は、N末端およびC末端スペーサーを有する組換えで作られた合成CLPポリペプチド[[GAP(GPP)3]2[GPVGSP]nを示している。該スペーサーは長さがそれぞれ33アミノ酸および25アミノ酸である。例えば、長さが24アミノ酸のポリマーの繰返しGPP部分は33+25+6アミノ酸により分けられる。このようにして、大腸菌は760アミノ酸、すなわちMw63,800のCLPタンパク質を見かけ上うまく発現する。細胞結合性CLPは同一の基本的な構造を有するが、ヘキサマーが上記の細胞配列により置き換えられるために、814アミノ酸のアミノ酸長およびMw70,560をもたらす。発現される繰返しGXY部分は短く、長い非繰返し配列により分けられている。スペーサーDNAは2個のシステイン残基および3個のメチオニン残基もコードする。
【0016】
この挙げられた文献は、コラーゲンに関する導入部で「化学的に加水分解された天然コラーゲンを加熱と冷却により変成、再生させて、他の応用の中でも写真および医薬応用に用いられるゼラチンを作ることができる。この現象の原因となるコラーゲンの鎖性質は、三重らせんと呼ばれる高次構造を有する相互鎖凝集体を自発的に形成する能力である。」と述べている。よって、この先行技術の文献では、らせん構造が必要とされることが特に注目されている。その後の文章は写真応用については実際のところ何も示していなく、明らかに完全に他の事項に向けられている。その後の文章も大腸菌により得られた発現の実際の程度について何も示していない。繰返し構造は低い程度で存在しているので、写真応用に有用なように十分なコラーゲン様活性を保持することは起こりにくい。さらに、発現生成物中において、システインとメチオニン残基が実際に提供されるレベルで存在することにより、実際に写真応用にAgX乳剤中で使用するのを不適当なものとしている。さらに、ここで記載の繰返しの少ない配列の利用が大腸菌の向上レベルの発現を実際に提供したのかどうかが明らかでない。よって、写真応用の当業者らは写真応用におけるこの文献の教示を適用することを思いとどまるであろう。第一に、工業的な規模の生産が可能かどうか明らかでないからである。繰返し配列の不安定性を考慮すると、このことはありそうにもない。第二に、それは、写真応用のためのAgX乳剤における不所望なシステインおよびメチオニンの存在のためにありそうにもない。第三に、このことは、発現生成物のらせん構造がないためにありそうにもない。その影響は発現産物の安定性に対して、および現在のゼラチンの主要な構造的違いを鑑みて写真での利用可能性に対して完全には予測することはできない。
【0017】
前述の特許出願と同一の発明者らは、プロリン含量が減少した繰返し三つ組残基(repetitive triads)を有する高分子量コラーゲン様タンパク質ポリマーを開示する(特許文献7参照)。該ポリマーは、高分子量および高頻度で単細胞微生物において産生が可能なものとして述べられている。これらは、「コラーゲン繰返しトリペプチドの独自性は、配列中の高い繰返し性と組成中のアミノ酸であるグリシン及びプロリンの配列を頻繁に利用する観点から組換え技術に対する挑戦である。グリシンおよびプロリンを高レベルで有するタンパク質をコードする遺伝子は、必要により自己相補的配列中の高レベルのヌクレオチドであるグアニジン及びシチジンからなる。例えば、遺伝子を合成するにしたがって、ストランドがループから外れ、一本鎖DNAが切除され、組換えが起こって遺伝子セグメントの損失と非能率的な転写および/または翻訳をもたらしうる実質的な機会が存在する。よって、コラーゲンの有利な性質を提供しながら、同時に高分子量コラーゲン様タンパク質の安定な発現を可能とする技術および組成物の開発に実質的な興味がある。」ことを示している。さらに、「該ポリマーは、らせんを提供し、コラーゲンのように変成と再生が可能であり、ゲルを形成するなどの点でさらに特性付けられよう」と述べられている。分子量30〜150 kDが示唆され、グリシン間のアミノ酸の数の少なくとも45%がプロリンであり、三つ組残基の少なくとも80重量%が第一のアミノ酸としてグリシンを有し、三つ組残基の数の少なくとも40%は少なくとも一つのプロリンを有する。その具体例は、繰返しGXOをコードする配列およびN末端とC末端スペーサー配列の3タイプの使用を示している。前記特許出願と同じスペーサー配列が用いられた。繰返し配列の構造は[[GAHGPAGPK]2(GAPGPAGPP)24(GAHGPAGPK)2]2=[[C]2[A]24[C]2]2であった。作られたポリペプチドの長さは、Mw46.409ダルトンの 561アミノ酸であった。別の実施例において、繰り返し配列は、[[GAHGPAGPK]2(GAPGPAGPP)12(GAHGPAGPK)2]5=[[C]2[A]12[C]2]5であった。作られたポリペプチドの長さは、Mw64.094ダルトンの777 アミノ酸であり、100kDの観察されたタンパク質バンドを有した。第三の具体例において、その構造は[[GAHGPAGPK]2(GAPGPAGPPGSRDPGPP)12(GAHGPAGPK)2]4=[[C]2[AB]12[C]2]4であった。その具体例は1065アミノ酸およびMw91,966を有し、 135kDに見えるタンパク質バンドを有した。明らかに小さいバージョンも28kD、64kDおよび98kDのタンパク質バンド重量を有して作られた。発現に関して、提供される唯一の詳細は、抗血清を用いるウエスタンブロットによる検出が実施され、全長ポリマーの発現が遺伝子サイズとともに減少する一方で、全長mRNAの合成は等しいレベルにあったことである。二つの異なる繰返し単位を有するポリマーのもう一つのグループは、作られた[[C]2[DB]12[C]2]4、[[C]2[DB]6[C]2]4および[[C]2[D]24[C]2]4であり、ここでBとCは上記の通りであり、D=GAQGPAGPGである。これらの3つのタンパク質はそれぞれ、1065アミノ酸およびMw91,533D、 633アミノ酸およびMw55,228D、1065アミノ酸およびMw85,386Dを有し、140 kDに見えるタンパク質バンドを有した。これらの例のうち、産物の特性に関する唯一の情報はナンバー6について提供されている。この産物は非常に水溶性である。室温以上では、8%を超えるその水溶液は粘性があるが、流動性があり0℃に冷却すると固体のゲルを形成する。28℃以上の加熱で、ゲルは濃厚な溶液を形成する。液体とゲルとの熱的可逆性変移がこうして示される。最終的な具体例は、同一のスペーサーと1077アミノ酸およびMw91.266Dを有する構造(GAPSQGAPGLQ)68に関した。そのようなポリペプチドの利用に関して、これらの発明者らの前に挙げた出願以上のことは何も述べられていない。明らかに、繰返しGXO部分のブロックコポリマー構造を変えることにより、さらに長い繰返し配列の発現が起こることは可能となった。しかし、そのようなタンパク質が如何に効率的に発現されるかは明らかでない。さらにまた、繰返しによる発現の問題は解決されているものとしては示されていない。工業的規模の発現が達成できたことには疑問がある。具体的に写真応用に関する教示は提供されていない。特に、すべての具体例は写真応用で望まれないシステインとメチオニンを有するスペーサーを利用する。よって、写真応用の当業者はこの文献の教示を写真応用に適用することを思いとどまったであろう。
【0018】
また、ゼラチンに性質の類似する組換え材料を作ることが望ましいことが論じられている(特許文献8参照)。その利点は、再現性の問題を解決するさらに均質な製品およびその化学的機能を改良する機会であろう。その考えはオリゴペプチドをゼラチン代用物として作ることである。選択された微生物は大腸菌であり、大腸菌に共通するグリコシル化等の翻訳後修飾がないことは問題ではないことが述べられている。他の宿主が可能であることが述べられている。しかし、そうした可能な宿主の具体例は示されていない。適用される核酸配列は、選択を起こすためのMet−Cys−His−His−His−Leu−Metコドンに結合させた(Gly−X−Y)nのゼラチンペプチドをコードする配列を有さなければならない。具体的に挙げられた配列はGly−Pro−Ala−Gly−Glu−Arg−Gly−Pro−Lys−Gly−Trp−Metをコードする。当該発明者による後の論文で、発現度は実際にどのような種類の工業的な応用にも不十分であることが実際にわかったことが明らかとなった。さらに、作られたアミノ酸の回収方法は複雑であった。大腸菌は上記の宿主細胞であり、実際のところ、工業的な規模での生産に興味のある当業者のために上記で既に紹介された欠点、すなわち分泌の欠如、繰返し配列の不安定性、よって低い発現度を、事実として明らかに示していた。最終的に、この先行技術において提案されたコラーゲンの写真フィルムへの応用に関して実際には何も示されなかった。よって、そのような構造的に異なる材料の予想できない結果のために当業者はこの文献の教示を写真応用に適用することを思いとどまったであろう。
【0019】
最後に、具体的に改良されたコラーゲン様ポリペプチドおよび写真応用目的のためのその利用に関する1996年にイーストマンコダックに交付された米国特許は、銀結合力が50mV以下のコラーゲン様ペプタイザーが高度の薄い平板状粒子を導きうることを記載している(特許文献9参照)。この文献はこれを25アミノ酸の長さを有する多くの合成ポリペプチドを示している。この文献はコラーゲン様構造が組換え技術により作られたことも示している。この組換えポリペプチドは単に4つの異なるアミノ酸からなるブロックコポリマー構造の合成ポリペプチドである。実際の発現の詳細はこの組換えポリペプチドには提供されていなく、標準的な分子生物学生産方法およびサッカロミセス・セレビシアエの発現宿主としての利用が単に言及されているだけである。その分子量は約26kDaである。よって、それと同じ日およびそれ以降の他の文献に詳細に示された発現の問題に親しい分子生物学者がそうした生産に真摯に取り組んだかどうかは疑問がある。さらに、組換えで生産された産物の結合力に関して詳細が提供されていないので、写真応用の当業者が写真製品のためにハロゲン化銀乳剤にこの製品を用いることを真摯に考えるか、もしくはそれが、開示された短い合成ポリペプチドの特性を示すことを真摯に期待するかどうも疑問がある。また、当文献は、ヒスチジンおよびメチオニンを特定の部位、つまり下記式のXaaに有する開示された特定のポリペプチドが高い結合力を示し、非平板状粒子形成を示すことを示唆している。該化合物の式は、GlyProXaa1GlyLeuXaa2GlyProArgGlyProProGlyAlaSerGlyAlaProGlyPheGlnGlyである。イーストマンコダックにより研究された化合物の詳細を提供する表を分析すると、高い結合力を有する化合物は全て、25アミノ酸毎に少なくとも一つの還元アミノ酸(=ヒスチジンまたはメチオニン)を有することでポリペプチド1グラムあたりのメチオニン含量が 400マイクロモルを超えることとなる。そのような化合物は、写真応用の核形成/成長AgX−乳剤プロセスに有用ではないであろう。低い結合力と平板状粒子形成に利するものとして示されている合成化合物は、還元アミノ酸のMetもHisも有さない。多くの他の米国特許が関連する主題でイーストマンコダックに交付されている。これらの特許(特許文献10、11参照)は、平板状粒子形成のために有用であると主張された他の合成断片を明らかにしたが、同じ単一の組換え産物の実例が記載されているので、これらの特許は組換えコラーゲン発現およびAgE乳剤を用いた写真応用への組換えコラーゲンの利用に対して何の新しいことも提供していない。
【0020】
イーストマンコダックのこれらの記載から、サッカロミセス・セレビシアエに存在し、示された特定の配列の発現は実際のところ非常に低かったと推論することもできる。20リットルの培養物を用いて、単に約600 mgの生成物を単離することができただけであった。しかし、この記載におけるこの点には何の注意も払われていない。実際、これらの記載から推論できる情報は当業者がこのシステムをコラーゲンを作るために用いることを思いとどまったことであろう。既に扱ったように、この低い発現度は転写および/または翻訳される配列の繰返し、および/またはプロテアーゼの存在によるものであろう。特に、非らせんコラーゲンの開口構造のために、非らせんコラーゲン発現産物はプロテアーゼの攻撃を著しく受け易い。
【0021】
【非特許文献1】Research Disclosure Vol. 225 Jan. 1983, Item 22534
【非特許文献2】J. Phot. Sci., 40, 230-230(Nippi)
【非特許文献3】J. Photo. Sci., 37, 14-18(AGFA)
【非特許文献4】J. Imag. Sci., 33, 13-17
【特許文献1】欧州特許第0,610,796A号
【特許文献2】米国特許第4,439,520 号
【特許文献3】米国特許第4,713,320 号
【特許文献4】米国特許第4,914,014 号
【特許文献5】欧州特許第558,410号
【特許文献6】国際特許第90/05177 号
【特許文献7】国際特許第93/10154 号
【特許文献8】フランス特許第2685347 号
【特許文献9】米国特許第5,580,712 号
【特許文献10】米国特許第5,580,712 号
【特許文献11】米国特許第5,670,616 号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、組換えDNA技術の利用に向けられることで、今回最終的に大量の実質的に純粋なコラーゲン材料の生産を可能として上記の困難性を克服した。組換えコラーゲン産生方法を実行して、高価な培地、発現宿主または非分泌発現宿主を必要とせずに高レベルの発現を初めて提供する。さらに、現在までゼラチンを適用すべき写真製品の製造方法の特定の各段階での最適使用のために選択されるか、および/または適合させたコラーゲンを作ることが今回可能となった。それによりさらに向上を可能とする。また、改良AgX乳剤生産方法が現在可能であり生産費用の減少を導く。
本発明者らは、より均一な写真用AgX乳剤材料を得ることに興味を持ち、工業的写真紙およびフィルム生産方法で現在用いられている動物源由来のコラーゲンに匹敵するコラーゲンを作る可能性を研究する決心をした。本発明者らは、組換えで作られたコラーゲンを利用することにより、多数の不純物及び定義されていない性質とコラーゲンのタイプIを主要な成分として有する可変的な性質のコラーゲンタイプの混合物とを有する天然源に対してより均一な性質のためにハロゲン化銀乳剤生産に向上がもたらすことができることを予期した。この考えは、各ブロックコポリマー構造を多く有する新しく設計されたコラーゲン様ポリペプチドを使用するよりも、天然コラーゲンに近くなっている物質を用いることであった。この希望は、天然配列に対応する配列の発現問題が、先行技術に詳細に記載されているように、合成的に設計されたコラーゲン様ポリペプチド配列において遭遇する問題よりも小さいことであった。これは、発現される配列の低い繰返し性に基づいて予想することができた。一方、よりランダムな配列を利用することは、多様なプロテアーゼによる攻撃をさらに受け易くするだろう。
【0023】
コラーゲンの天然の条件とはどんなに異なっても、我々は組換え技術を用いるらせん様構造を作る試みを放棄することを決定した。「適当な数のy位プロリル残基がプロリル4ヒドロキラーゼにより4-ヒドロキシプロリンにヒドロキシル化されていない場合、新しく合成された鎖は、37℃で三重らせん立体配置に折りたたむことができない。ヒドロキシル化が起こらない場合、ポリペプチドは非らせんのままであり、細胞から十分には分泌されず、コラーゲン繊維原に自己集合することはできない」と述べられているWO93/07889 の1ページを参考にして、分泌を確実とするために分泌細胞を用いる際に問題が起こることが予想することができた。また、プロテアーゼ攻撃の潜在性は、得られたオープンな非折りたたみ構造のためにかなり高いものであろう。よって、我々の組換え配列が、発現宿主により高い量でかなり容易に分泌される発現産物をもたらすことは驚くべきことである。また、組換えコラーゲン化合物が、写真応用に現在用いられている天然コラーゲンに特徴的な繊維原構造または三重らせん構造を形成できないような条件下で組換えコラーゲンを産生することは、写真応用自体に対して疑問のある効果も有しえた。現在の市販されている製品とのこの違いを鑑みて、得られた組換え化合物が、現在使用されている化合物を有するらせんと同じように写真応用に適するかどうかも勿論疑問があった。
【0024】
しかし、コラーゲンタイプのIおよびIIIのゲノム配列をクローニングする際の、十分な量を作ってそれを写真応用に利用するための発現の問題を克服する多くの難しい研究後の結果は、すべての有り得る失敗にもかかわらず、思いかけなかったことに良好であった。第一に、発現速度は意外に高く、0.95グラム/リットルより高く、実際には全体として3グラム/リットルより高かった。これは、コラーゲンまたはコラーゲン様材料を発現しようとする試みがあったとしても1リットルあたり数ミリグラムより多くは産生できなかった先行技術とは顕著な対照である。よって、この驚くべき高い発現速度は、先行技術に記載された全ての問題を鑑みて当初はまったく予想されないと思われた。しかし、発現速度は、他のタンパク質に関しての発現宿主ピヒア・パストリスにより得られた生産速度をかなり上回りさえした。かなり具体的には、コラーゲンのような高い量で作ることは難しいとは予想されなかったタンパク質の生産速度さえも上回った。遂には、組換えコラーゲンの形態が経済的に興味のある量で経済的に興味のある発現宿主により作ることができると今や考えられている。発現が多い他の宿主は、真菌タイプの微生物中に見出すことができる。特に高い発現酵母および最も具体的には低いタンパク質分解活性を有するプロテアーゼ陰性株が望ましい。適切に使用することができる酵母は、かなり特異的にメチルトローフである酵母(methylotropic yeasts)である。特に適切な例は酵母のピヒア・パストリスである。コラーゲンの発現のために関連があるものとして達成された基準に基づいて、十分に高い程度までおよび経済的に実施可能な条件下で発現が可能な適当な宿主細胞が発見され使用できる。
【0025】
大規模生産が本発明者らにより可能とされたことは、写真応用分野での実際の試験を最終的に実施可能とさえもした。写真応用のための試験は、十分な組換えコラーゲンが比較的大量に作られた後にのみ可能であり、これは先行技術で詳細に記載された医薬応用のために必要とされる少量とは対照的である。写真応用に関するこれらの試験を行った後、平板状粒子形成が高いことがわかった(表IIを参照されたい)。実質的に純粋なコラーゲンタイプIIIの利用がペプタイザーとして写真乳剤に初めて利用された。その結果は傑出したものであった。しかし、我々は、平板状粒子形成が80%を超えるものであることを思いもかけずに発見した。これは低い結合力を有するポリペプチドのイーストマンコダックポリペプチド性能よりもまさり、これは、69.5mVの結合力がこの生成物に関して見出されたので、イーストマンコダック教示にしたがえば非平板状粒子形成を予想しなければならなかったことを鑑みれば最も驚くべきものと思われた。よって、80%の平板状粒子形成を得るためには結合力が50mV以下でなければならないとする要件に関するイーストマンコダックによって仮定された理論が覆された。よって、80%を超えるレベルでの平板状粒子を必要とするハロゲン化銀乳剤における応用のために適当であると先行技術に述べられているものよりもさらに高い銀結合力を有する多くのペプタイザーを開発するための経路が開かれた。この経路は、写真乳剤におけるペプタイザーの主要コラーゲン成分としてタイプIII以外のコラーゲンのタイプを適用するためにも開かれた。種々の天然コラーゲン間の相同性の程度が40〜50%であることを考慮すれば、わずかに操作された天然配列からも良好な結果を期待することができる。天然コラーゲンアミノ酸配列に対して50%を超える相同性を示すアミノ酸配列が良好な結果を提供すると期待することができる。天然配列の変異は、天然配列に対する挿入、欠損および置換を有してもよい。それ以外に、天然DNA配列に対してある程度の相同性を有する合成DNA配列を使用することができる。しかし、本発明に有用な配列は、それらのコードする核酸配列の発現の問題を防止するために、最小程度の可変性を保持しなければならない。例えば、変異は4個を超えて異なるアミノ酸を有するアミノ酸配列を常にもたらさななければならない。GXY部分はブロックコポリマーの形態であってはならず、多くのGXY部分間のスペーサー配列を有してはならない。好ましくは、8個を超え、さらには9個を超えて異なるアミノ酸が存在しなければならない。実施例において、19個もの多くの異なるアミノ酸を有するタンパク質が用いられる。天然に存在するのは僅かに20アミノ酸である。適切には、10〜20アミノ酸または10〜19アミノ酸を用いることができる(しかし好ましくはシステインは避けられる)。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、コラーゲン様ポリペプチドをコードする核酸配列の高い発現を含む組換えコラーゲン様ポリペプチドの高い生産性の製造方法、並びに該ポリペプチド、及びそれを用いたより均一な写真用AgX乳剤材料を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0027】
よって、本発明は、平板状粒子が全粒子投影面積の75%以上を占める平板状ハロゲン化銀乳剤を有し、該乳剤が核形成ペプタイザーの存在下で核化され、その後成長ペプタイザーの存在下で成長するハロゲン化銀粒子を有し、少なくとも一つのペプタイザーが遺伝子工学で調製された実質的に純粋なコラーゲン様材料であり、該ペプタイザーが4個を超える異なるアミノ酸を有するアミノ酸配列を有する。このような乳剤は、適切には天然コラーゲンに対して50%を超え、好ましくは60%を超える相同性を示すアミノ酸配列を有するペプタイザーを有することができる。適切には、ペプタイザーは少なくとも10kDaのサイズを有する。実施例から明らかであるように、20〜80kDaのサイズが写真応用に有用である。約 600アミノ酸のペプタイザーを示す。
乳剤は、コラーゲンに関して自然に存在するものと同等のアミノ酸を有することができる。ここで同等であるとは天然に存在するものとアミノ酸同一性が少なくとも80%、好ましくは90%であることを意味する。
【0028】
乳剤は、天然に存在するものと実質的に同一のアミノ酸配列を有するペプタイザーを有することができる。ここで実質的とは、アミノ酸の変異が5個未満、好ましくは3個未満であることを意味する。適切な種類のコラーゲンはI、IIおよびIIIである。活性を確保し、且つ発現問題を避けるために、配列は天然配列に近いことが好ましい。ペプタイザーのアミノ酸配列をコードするDNAは、天然であっても合成であってもよい。本発明によるコラーゲンタイプIIIアミノ酸配列は、適切には図3の配列を有するか、またはそれである。本発明によるコラーゲンタイプIアミノ酸配列は、図8、10 または12の配列を有するか、またはそれである。コラーゲンタイプIIIは実施例1の参考文献5に定められたアミノ酸を有する。この文献は、参照により本明細書に含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
ペプタイザーが実質的に純粋な形で存在する本発明の乳剤とは、ペプタイザーが、核酸、多糖類および他のタンパク質を実質的に含まないことを意味する。本実施例は、これが実際に可能であることを具体的に示している。糖および核酸の存在が微量でさえ、結晶形成に対して幾分かの影響を持つことができ、具体的な写真応用のための十分に純粋な組換え材料が作ることができるかどうかを実際に疑ってみなければならなかった。
【0030】
ピヒア・パストリスを発現宿主として用いるとき、MGPRの配列がコラーゲンIの天然配列には存在していたとしても、それを持たないアミノ酸配列をコードする核酸配列を用いるのが有利である。なぜならばこの配列は、一部のコラーゲンタイプが受けるピヒア・パストリスに存在するプロテアーゼの新しい認識部位であることを我々が思いもかけずに発見したからである。プロテアーゼはKex−2様プロテアーゼであり、Kex−2様プロテアーゼのネガティブ宿主株が適当な宿主細胞であろうと予想されている。宿主としてピヒア・パストリスを用いるときの一般条件において、対応するアミノ酸配列が[Leu−Ile−Val−Met]−Xaa−Yaa−Arg(式中、XaaおよびYaaはGlyおよびProまたは他のアミノ酸に対応しており、括弧内のアミノ酸の少なくとも一つが変えられる)のないコラーゲンをコードする核酸配列を用いるのが有利であろう。非らせんコラーゲンのオープン構造はタンパク質分解を受け易いので、宿主が選択され、および/または発現しようとする配列が宿主および発現配列の特定の組合せについてタンパク質分解が最小化されるように好ましくは変異されるか、選択されなければならない。共通する一般的知識、および挙げられた文献の内容を含めた本開示に基づいて、これを実現するために当業者に開かれた多数のオプションが存在する。
【0031】
発現を増加させるための別の方法は、配列が発現のために導入されている宿主細胞のために最適化されたコドン利用に存在するであろう。マルチコピー形質転換体の利用は、発現の増大が達成できる方法でもある。最大レベルのタンパク質分泌が小胞体のタンパク質折り畳み能力により最終的に決定されることが、ウシ膵臓トリプシンインヒビターのサッカロミセス・セレビシアエ発現の技術で示唆されている。マルチコピー形質転換体を利用することによりこの能力を超えることは、小胞体での折り畳まれていないタンパク質の蓄積および生理学的不安定性による発現レベルでの付随的な莫大な減少をもたらすと考えられている。これは1995年Parekh(Protein Expr. Purif. 6, 537-545 )および1997年Parekh及びWittrup (Biotechnol. Prog. 13, 117-122 )に記載されている。折りたたまれていない分子として発現されている我々の組換えコラーゲンの場合、このネガティブな特徴が打ち消されるか、および/またはこの現象が他の発現宿主で、特に他の酵母宿主であまり関連がないようである。酵母宿主および細菌宿主において、プロリルヒドロキシル化機構が存在せず、それ自体ではコラーゲンのそれら宿主内での発現は折りたたまれていないコラーゲンをもたらすであろう。コラーゲンが折りたたまれていない場合、それは小胞体の折りたたみ能力を消耗させないだろう。また、顕著な可溶性のために、折りたたまれておらず、かつヒドロキシル化されていないコラーゲンは、小胞体中で凝集も蓄積もしないだろう。発現の程度に関連するようになる、そうした折り畳みの危険を除くために、コラーゲンはヒドロキシル化されず、またはできるだけ低い程度まで少なくともヒドロキシル化されているのが望ましい。
【0032】
サッカロミセス・セレビシアエおよびピヒア・パストリス等の酵母細胞中で、不均一プロリル−4-ヒドロキシラーゼの共発現によりヒドロキシル化を行うことができることが最近わかった。これは1997年にVuorela ら(EMBO J. 16, 6702-6712 )および1998年にVaughan ら(DNA cell Biol. 17, 511-518)により記載されている。ゼラチンのゲル化温度がヒドロキシル化度に依存するので、現在、種々のゲル化温度を有する発現産物をもたらす方法でヒドロキシル化度を変えることができるであろう。これは、コラーゲンの経済的利用を以前に禁止した特異的温度要件を有する方法、すなわち所望とされないゲル化を妨げるために室温以上の温度を必要とする方法に特別な興味を有するだろう。
【0033】
ペプタイザーは、それが、天然コラーゲンをコードする配列由来の一定の長さおよび組成の断片であり、該断片がコラーゲンに特徴的なGXY部分を有し、アミノ酸ベースで該断片の重さが少なくとも 2.5kDaであるような長さである点で、天然配列と同一である必要はない。適切には、重量は 2.5〜 100kDaであってよい。多様な大きさの断片が適切である。5〜50kDa、さらには20〜50kDaが適用される適切な態様である。該ペプタイザーは、合成核酸配列から新たに(de novo)で作ることができる。
【0034】
らせん構造の非存在を確保する多様な方法が利用可能である。例えば、ペプタイザーにヒドロキシプロリンが存在しないこと、および/またはプロコラーゲンおよびテロペプチドが存在しないことを確保することである。好ましくは、写真応用のために、ペプタイザーはシステインが存在すべきではない。ペプタイザーが脱アミン化されていない本発明によるAgX乳剤は、等電点が7〜10のペプタイザーである本発明の興味あるさらなる態様である。
【0035】
さらに、他のどのパラメーターを用いてその結果を向上させることができるかを定義するために他に何を発見することができるかを確認するために、さらに研究が行われた。これを行うために、我々は多数の修飾コラーゲン、すなわち非組換え産生コラーゲンを我々の組換えコラーゲンで試験に用いて分析し、関連するパラメーターを決定した。次に我々は、平板状粒子形成に必要とされる程度のハロゲン化銀を作成するのに適切なものとして種々のカテゴリーの化合物を定めた。
【0036】
さらに、該ペプタイザー1グラムあたりのメチオニンの還元力 0.1〜 200マイクロモルに等しいレベルで存在する程度に酸化された還元性アミノ酸を有するペプタイザーを有する、既に示された他の態様のいずれかにおける本発明の乳剤が適切な態様である。好ましくは、該ペプタイザー1グラムあたりのメチオニンが 160マイクロモル未満、好ましくは120 マイクロモル未満で存在するのがよい。還元力は低いレベルが好ましいので、本発明による好ましい乳剤は、還元性アミノ酸が該ペプタイザー1グラムあたりのメチオニンの還元力 0.1〜80マイクロモルに等しいレベルで存在する程度に酸化された還元性アミノ酸を有するペプタイザーを含有するのがよい。該ペプタイザー1グラムあたりのメチオニンの還元力30〜80マイクロモルに等しいレベルで還元性アミノ酸が存在する程度のかなり高いレベルの還元性アミノ酸も十分な結果を提供することができる。これは、多くの先行技術刊行物における平板状粒子形成のための要件、低い還元力値という要件に関する以前の教示を考慮すれば、かなり驚くべきことである。本発明は、80μmole以下のレベルのメチオニンを有するそれら修飾コラーゲン、例えば修飾タイプIも包含する。例えばタイプIコラーゲンへの修飾は、必ずしも酸化によるものではなく、還元性アミノ酸が非還元アミノ酸により必要とされる程度まで置換されたコード配列の変異の結果であってもよい。このことは、ハロゲン化銀乳剤中における使用前のコラーゲンの化学処置工程を省略することができ、付随的に生産工程に対する時間と費用の利点をもたらす。明らかに、80μmoleを超える還元アミノ酸を有さない天然コラーゲン、例えば修飾タイプIIIも適用できる。
【0037】
さらに、最初に示され、1996年に発表されたイーストマンコダックの教示とは対照的に、示された他の実施態様のいずれかにおいても本発明の乳剤は50mVを超える銀の結合力を有するペプタイザーを有し、平板状粒子の高い形成レベルを有す乳剤としてかなりよく機能できる。適切なペプタイザーは、銀への結合力100 mV以下を有する。先行技術の教示とは対照的に、ペプタイザーは銀への結合力50〜100 mVを有することができ、優れた平板状粒子パーセントを有する乳剤を提供する。
【0038】
そのようなコラーゲン様材料の適用から得られるハロゲン化銀乳剤は、適切には80%を超える平板状粒子、好ましくは90%を超える平板状粒子を示すだろう。95%を超える平板状粒子パーセントが最も好ましい。粒子は、実施例記載の反応条件下の単一噴流法を用いて測定した場合、平均アスペクト比が5を超える値を示すだろう。これらの反応条件は最大のアスペクト比を得るための実際の写真乳剤方法に用いられる最適化反応条件ではなく、そのような最適化条件が使用されるときに高いアスペクト比を達成するのに適切かどうかを示すことを単に提供していることに注意されたい。例えば二重噴流法および付加的な成熟法を用いる通常のコラーゲンに現在用いられている最適化条件を適用すると、本発明の化合物はさらに高いアスペクト比を示すと予想される。使用される試験は高いアスペクト比形成能の迅速な単なる指標であり、当業者はその結果をさらに高めるためにどのような対策を取ることができるかを理解しよう。
【0039】
我々の試験において、成熟プロセスを、ペプタイザーまたは余分な銀をさらに添加することなしに行う。明らかに、本発明の方法において、成熟工程は、そのような、さらに添加することを有することができる。ペプタイザーは核形成および成熟段階の双方で同一の材料とすることができる。成熟段階でさらに添加することは、この段階での立体安定性の増大のために有利でありえよう。
【0040】
本発明による好ましいAgX乳剤は、pH4〜8でハロゲン化銀平板状粒子形成に対して安定なペプタイザーを有する。石灰骨およびヒドロキシル化ゼラチン由来の従来のゼラチンは、pH 5.5を超えた値で、そのような平板状粒子形成の結果を示さない。本発明によるペプタイザー、例えば天然組換えコラーゲンIIIはそのような特徴を示さず、乳剤生産保存と適用中の厳密なpH調節を不要にする。天然組換えコラーゲンはメチオニンの酸化を受け、向上した挙動を示すこともできる。適切には、メチオニンレベルは1グラムあたり80マイクロモル未満である。よって、本発明による乳剤は、平板状粒子形成に否定的な影響を与えずにpH4〜8で核形成および成長することができる。乳剤生産の工程において、pHの変化は、写真生産に関して得られる乳剤をさらに処理する際に、否定的な影響をその結果に与えることはないであろう。
【0041】
本発明による乳剤は、ハロゲン化銀乳剤を有する従来のコラーゲンよりも、ペプタイザーが均質分散性を有するとの利点を提供する。このために結晶化法はすべての上記利点によりさらに均質でもある。ハロゲン化銀の核形成および成長の多様な段階で、明確に定義され、実質的に純粋なさらに均質なペプタイザーを添加することで、コスト効果性と組合わせて、かつコラーゲン様ペプタイザーによっては以前には可能ではなかった調節された方法で結晶化性質を調節することができる。多くのタイプのコラーゲンが自然に存在するので、これらは本発明による写真ハロゲン化乳剤に適用することもできる。
【0042】
現在まで発見された23コラーゲン遺伝子が存在する。これらの多くが部分的または全体として配列決定されている。データバンクはそのための多様な配列を有している。例えばGenbank は寄託番号Genbank U08020でcolI配列を有しており、colIII配列が実施例1の参考文献5で示されている。これらの天然コラーゲン遺伝子は、それら自体と比較して40〜50%の相同性を示す。配列データに関して挙げられた参考文献の関連情報は、本明細書で参考として含まれる。例えばWO95/31473 の5ページを参照のこと。上述のように、本発明のコラーゲン様化合物(この化合物はその後写真応用のためにハロゲン化銀乳剤で使用される)を作るために、天然源からの単離または化学合成により得られた、これらの天然配列それ自体または修飾しての利用が本発明に包含される。適切には、これら配列が利用され、すなわち天然アミノ酸配列または天然アミノ酸配列に類似したポリペプチドをコードする配列は、コードされたポリペプチドが上記のパラメーターに入る限り利用される。ハロゲン化銀乳剤ゼラチンの源は動物の骨であり、そのうちタイプIコラーゲンが最も主要に存在するコラーゲンタイプであるために、タイプIがハロゲン化銀乳剤で最も多く適用されるタイプであった。現在、ハロゲン化銀乳剤での適性のために他のコラーゲンタイプも試験し、適用することもできる。他のコラーゲンタイプは、写真応用での先行技術ではそれ自体として適用されず、ハロゲン化乳剤中ではそれ自体では確かに適用されていない。当然、多くのコラーゲンタイプは現在まで使用されてきた動物組織中に存在している。現在、これらのコラーゲンタイプは、以前に認識されなかった写真製品に対するさらに有利な性質に実際にもたらしているのかどうか、または寄与しているのかどうかを理解することもできるようになっている。コラーゲン様成分としてタイプI以外の組換えコラーゲン様ポリペプチドを有する写真感光性乳剤も、上記の特定要件が満足される限り、本発明の適切な態様を形成するとみなされる。具体的には、ハロゲン化銀中の利用が包含される。ハロゲン化乳剤の場合、コラーゲンの100 %の均一な源は、結晶形成の最大均質分散性を提供することが予想される。均質分散性の要件およびその値が本発明の説明のいずれかで扱われている。ペプタイザーは全長コラーゲンを有することは必要でなく、その断片を有してもよい。しかし、適切には、そのような断片は少なくとも2.5 kDa、好ましくは10kDa以上の長さで、ペプタイザーに必要とされるコラーゲン特徴を保持しながら、発現の十分なランダム性を確保する。
【0043】
上記の乳剤以外に、本発明は、平板状粒子が全粒子投影面積の75%以上を占める平板状ハロゲン化銀乳剤の調製方法も関する。該方法は、核形成ペプタイザーの存在下でハロゲン化銀粒子を核化し、その後成長ペプタイザーの存在下でハロゲン化銀粒子を成長させることを有し、双方のペプタイザーが所定の量で存在し、少なくとも一つのペプタイザーが遺伝子工学で調製されたコラーゲン様材料であり、該ペプタイザーが4個を超える異なるアミノ酸を有するアミノ酸配列を有する。本発明のそのような方法は、核形成工程において、および/または粒子成長工程中で、ペプタイザーを添加することを有することができ、該ペプタイザーが上記態様のいずれかまたは請求の範囲から選択できる。ある特別の態様において、本方法は、核角形成工程において、及び粒子成長工程中の双方において、ペプタイザーを添加することを有することができる。両工程が取られる場合に用いられるペプタイザーは、その場合の環境によるが、同一であっても異なってもよい。
【0044】
本発明にしたがってAgX乳剤を調製した後、AgX乳剤は、写真要素を調製する標準的操作を受けることができる。該乳剤は、写真材料上にハロゲン化銀乳剤層を得るためにそれ自体公知の方法で塗布することができ、該層のハロゲン化銀結晶は5以上のアスペクト比を有する。
【0045】
該写真要素は、適切には、光、レーザーまたはX線照射に感光性のある材料であり、該要素は白黒リバーサルフィルム、白黒ネガフィルム、カラーネガフィルム、カラーリバーサルフィルム、感光性写真成分がデジタルスキャンされたフィルム、白黒反転紙、白黒紙、カラー紙、反転カラー紙、感光性写真成分がデジタルデータベースからのレーザー照射により感光された紙から選択される。そのような方法にしたがって得られる写真要素、ならびに内部感光化ハロゲン化銀乳剤を用いる直接ポジプロセスおよび熱現像を用いる要素も本発明に包含される。
【0046】
本発明のもう一つの特徴は、0.95グラム/リットルを超える程度までの微生物によるコラーゲン様ポリペプチドをコードする核酸配列の発現を有する組換えコラーゲン様ポリペプチドの製造方法にある。該組換えコラーゲンはらせん構造が存在しない。発現は、高い発現および好ましくは分泌を確実とするように大腸菌またはサッカロミセス・セレビシアエ以外の微生物中で起こるのが好ましい。本方法は、真菌細胞、好ましくは酵母細胞を用いて適切に実施することができる。適切には、宿主細胞は、ハンセヌラ属、トリコデルマ属、アスペルギルス属およびピヒア属のような高い発現宿主細胞からなる群から選択される。真菌および特に酵母細胞は、繰り返し配列の悪い発現をあまり受けないので、バクテリアよりも好ましい。最も好ましくは、宿主は、発現されるコラーゲン構造を攻撃する高いレベルのプロテアーゼを有さないのがよい。この点で、ピヒア属は非常に適切な発現システムの具体例を提供する。好ましくは、該微生物は、コラーゲン様配列を繊維原へと処理する活性のある翻訳後プロセッシング機構がないことにより、発現産物中にらせん構造の欠如を確実とする。また、そうしたプロセスは、微生物が、コラーゲン様配列を三重らせんに処理する活性のある翻訳後プロセッシング機構を持たないとき、および/または発現される核酸配列がプロコラーゲンおよびテロペプチドをコードする配列を持たないときに起こりうる。使用される宿主は、コラーゲン生産に関して当分野での以前の示唆とは対照的に、コラーゲン三重らせん構築物に必要とされる酵素であるプロリル−4-ヒドロキシラーゼの発現のために遺伝子の存在を必要としない。本発明の組換えコラーゲンの発現に適する宿主細胞を、発現される配列と宿主細胞に関する知識との組合せにおける写真技術に適するようにするために、本明細書に記載される必要なパラメーターに基づいて、公知の工業的な酵素産生真菌宿主細胞、具体的には酵母細胞からの適切な宿主細胞の選択は当業者には可能であろう。
【0047】
非切断配列の生産を確実とするために、組換えコラーゲン様材料を作るための本発明の方法は、発現宿主細胞でプロテアーゼ活性のあるプロテアーゼ切断部位が実質的に存在しない組換えコラーゲンアミノ酸配列をコードする核酸配列を用いることを有する。例えばピヒア・パストリスの場合、およびおそらく他の宿主細胞にも関しても、対応するアミノ酸が[Leu−Ile−Val−Met]−Xaa−Yaa−Arg(ここで、XaaおよびYaaはGlyおよびProまたは他のアミノ酸に対応しており、括弧内のアミノ酸の少なくとも一つが変えられる)を有さないコラーゲンをコードする核酸配列が望ましいであろう。本発明の好ましい方法は、発現宿主として微生物ピヒア・パストリスを用いることを有する。
【0048】
本方法は、3グラム/リットルを超えるペプチド収穫をもたらす発現を適切に提供する。本方法は、本発明の乳剤に対して上記で定義した組換えコラーゲン様ペプタイザーのいずれかを用いて適切に実施することができる。そこに記載の環境下の実施例から明らかであるように、マルチコピー形質転換体は、バイオマス湿潤重量 435g/リットルで、清澄化ブロス1リットルあたり14gを超えるゼラチンを提供する。最も適切には、他のタンパク質、多糖類および核酸が実質的に存在しなくなるまで、微生物発現から得られる生成物を単離し、精製する。実施例から明らかなように、多くの方法がこれを達成するために当業者に利用できる。本発明による方法は、核酸含量 100ppm未満、多糖類含量5%未満、他のタンパク質が市販製品中の含量未満の程度まで少なくとも単離され精製された発現生成物を提供することができる。より好ましくは、DNA含量1ppm未満、RNA含量10ppm未満、さらには5ppm未満、および多糖類含量1%未満を得ることができる。
【0049】
本発明のもう一つの特徴は、新規な組換えコラーゲン様ペプチドを包含する。特に、本発明は、コラーゲンをコードする核酸の遺伝子工学により調製された実質的に純粋なコラーゲン様材料を包含し、該ペプタイザーが天然コラーゲンに対して40%を超える相同性を示すアミノ酸配列を有し、4個を超える異なるアミノ酸タイプを有する。核酸配列は天然配列に由来するか、または新たに(de novo)合成された合成核酸であってよい。他の適切な態様は、本発明による乳剤の態様に記載したペプタイザーである。相同性が50%を超える、好ましくは80%のオーダー、さらに80〜100 %が好ましいので、できるだけ近い相同性が望ましい。具体的には、産物はGXY部分配列内にブロックコポリマー構造がないのが好ましい。
【0050】
本発明の好ましい態様として、コラーゲン様材料はシステイン残基を有さない。写真製品にシステインが存在することにより、製品製造方法が妨げられるであろう。よって、システインはできるだけ少量で存在するのが好ましい。これは、組換え産物の化学的修飾によるか、またはシステインがもはやコードされない程度にシステインをコードする配列の変異または削除による産物をコードする核酸配列の変異により達成することができる。適切には、写真応用は、システインを 0.1%未満で有する材料を用いる。
【0051】
特に、最適なハロゲン化銀乳剤のために、コラーゲン材料の相同性が最も重要性を持つ。それは、改良を提供する不純物がないという単なる問題ではなく、結晶化の非常に感受性のある方法の良好なコントロールを可能とし、均一な結晶成長をも可能とする正確に同一の組成と長さの分子を提供する可能性である。このため、組換えコラーゲン様材料は、写真製造法のこの部分に価値を持ちうるだろう。さらに、現在まで完全に見過ごされてきた特徴である、繊維原形成と三重らせんの形成がないことが写真製造方法におけるこの特別な利用に必要とされる。写真材料における還元基の数の関連性における洞察も大きな重要性を有する。これは平板状粒子形成に必要とされる先行技術に示唆された厳密な低い量ではない。よって、適用されるコラーゲン様材料において、システイン、ヒスチジンおよびメチオニンレベルを低減することにより、本発明の好ましい態様が形成される。
【0052】
本発明による化合物はさらに別の利点も明らかにした。公知のコラーゲン材料、例えば、骨および皮等の動物源からの規則的で加水分解されたコラーゲンは、pH5.5 を超えるpHで写真フィルム乳剤の低い平板状粒子形成をもたらす。組換えコラーゲンの新しいグループは、pH5.5 だけでなく、より高いpH、例えばpH7以上でも、同一で目覚しく高い平板状粒子形成程度をもたらすことがわかった。これにより、新しい化合物が非組換えコラーゲンよりも明らかに低いpH依存性を有するので、厳密性を低くして調整したpHを有するハロゲン化銀乳剤を調製する可能性がもたらされる。よって、本発明は、高い平板状粒子パーセント、すなわち50%を超え、好ましくは80%を超えるパーセントに到達しながらpH4〜8でハロゲン化銀乳剤の生産に用いることのできる組換えコラーゲン様化合物にも関する。有用であると考えることのできる組換えコラーゲンの付加的な特徴は、等電点が、酸性IEPを有する1996年に記載されたイーストマンコダック組換えポリペプチドとは反対に塩基性である。本発明による組換えコラーゲンが、4個を超えるアミノ酸が存在するアミノ酸組成物を有することは、コード配列において可変性の増大がもたらされ、よって高い発現度を可能とすることが予期される。全GXY配列中で33%プロリン未満のGXY部分を有する配列を用いることにより、付加的な変化が導入される。この良好な発現は、GXY配列におけるブロックコポリマーアミノ酸配列構造を用いることなく達成される。
【実施例】
【0053】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0054】
[実施例1]
組換えDNA技術による写真応用のための酵母、真菌等の発現宿主生物中で組換え異種タンパク質として発現されたゼラチン、コラーゲンまたはコラーゲン断片は幾つかの利点を有している。(i)例えば慣用のゼラチンとは対照的に、組換え分子が厳密に非架橋物として作ることができる。(ii)分子組成が正確に定められる。(iii)作られる分子は単一種類(またはわずかに数個の分子の明確な混合物)を有し、他のタンパク質性分子または非タンパク質性分子による汚染が少量であるかまたは無視できる。分子量分布は非常に狭く、単分散(単一成分ゼラチン)または多分散(oligo-disperse)である。(iv)生成物は高い再現性のある方法で、すなわち一定の品質をもって産生することができる。特に、酵母は、繰り返し性の高いグリシンに富んだ配列及びプロリンに富んだ配列を有するポリペプチドのためによく適した産生生物である。
【0055】
これらの分子的特徴が細菌システム中で遺伝的不安定性(例えば遺伝子の一部の組換えおよびシャフリング(shuffling))をしばしば引き起こす一方で、これは酵母中では大きな問題ではないように思えた[1, 2]。それらは真核細胞であり、該細胞中ではヒドロキシル化等の翻訳後修飾が引き起こされうるが、効率的な分泌または細胞内発現のいずれかのための選択を可能とさせる。幾つかの種は、動物細胞培養とは対照的にメタノール等の安い基質で効率的に生育する。分泌産生は(植物とは対照的に)培養中または培養後の産物の十分な回収を可能とする。幾つかの強くしっかりと調節された誘導性プロモーターが酵母システムに利用可能であり、効率の良い発現が可能となり、宿主細胞の生存と成長に対する起こりうる否定的な効果を最小限にする。利用可能な幾つかのよく適合させたシステムの一つとして、我々はメチロトローフである(methylotropic)酵母ピヒア・パストリスによる分泌産生のために選択した。我々の発現レベルは組換えタンパク質についてこれまで報告された最大のものの中にあり、遺伝子(DNA、RNA)およびタンパク質レベルでのゼラチン/コラーゲン構造の上述のものを処理することのできるこの発現宿主の能力を示している。宿主の形質転換後、統合物は酵母の染色体中に取り込まれ、形質転換体の遺伝的安定性をもたらす(プラスミドの損失は、その後は重要性ではない)。組換え遺伝子がHIS4座またはAOX1座のいずれかに導入されている形質転換体(例えばアルコールオキシダーゼ(AOX)プロモーターの調節下に外来標的遺伝子を有するもの)を作ることができる。後者の場合、統合のタイプにしたがって、AOX1遺伝子が壊され、メタノールの遅い利用およびメタノールによる遅い成長をもたらす(MutS 表現型)。機能的AOX1遺伝子がなおも存在する場合、表現型はMut+ である。両表現型を用いることができるが、我々は一般的には迅速な成長を好むので、我々のプロトコールは主にMut+ 形質転換体の生成と選択に向けられた。P.パストリス発現系以外の酵母または真菌発現系が、原則として、産生される分子の正確な種類および品質、意図される産生規模、並びに生産コスト及び適用可能な市場価格に依存するが、組換えゼラチンの効率的な産生に同じくよく用いることができることは自明である。ピヒア属系がパイロット生産および比較的容易な産物回収のための迅速で効率的なシステムとして用いられた。
【0056】
材料、方法および分析
一般的な分子生物学的技術
クローニング操作は基本的にはManiatisら[3]にしたがって行った。ウィザードプラスSVミニプレプ(Wizard Plus SV miniprep)、またはキアゲン(Qiagen)ミジプレプシステム(midiprep systems)を用いてDNAを単離した。DNAをQIAクイックゲル抽出キット(QIAquick Gel Extraction Kit)(キアゲン)を用いてアガロースゲルから単離した。用いられる酵素はすべて、特記しない限り、ファルマシア(Pharmacia)からのものであり、製造業者の推薦にしたがって用いた。大腸菌の形質転換を、バイオラッド(BioRad)のジーンパルサー(GenePulser)を用いる標準的な泳動により行った。ピヒア・パストリスの扱いと形質転換を伴なうすべての操作およびこの宿主微生物におけるタンパク質の発現は、ピヒア発現キット(インビトロゲン(Invitrogen))のマニュアルにしたがって行った[4]。
【0057】
ラットCOL3A1 cDNA断片の酵母(ピヒア・パストリス)発現ベクターへの挿入
部分的ラットプロα1(III)コラーゲンcDNAを含むプラスミドpRGR5は、Vuorio博士より贈呈されたものである[5]。それをPstIで消化し、らせん領域の約0.7kb断片を得た。T4 DNAポリメラーゼの3'−5'エキソヌクレアーゼ活性を用いて、該断片を平滑末端化し、次にSnaBI消化されたCIP脱リン酸化pPIC9ピヒア・パストリス発現ベクター(インビトロゲン)にT4 DNAリガーゼを用いて連結した。次に、この連結反応物を用いて大腸菌JM109を形質転換した。
【0058】
可能で適当なベクターの選択はpPIC9に限定されないことは理解されよう。当業者であれば誰でもpHIL−S1等の多くの他の可能なベクターを使用し、適合させることができ、ここで、サッカロマイセスセレビシアエ由来のα接合因子(alpha-mating factor)(αMF)プレプロ(prepro)シグナルのかわりにピヒア・パストリス酸性ホスファターゼ1(Pho1)−シグナルが用いられるか、または細胞内発現のためにpHIL−D1および多くの他のものが用いられる。
【0059】
プラスミドDNAを単離し、こうして作られたpCOL3A1構築物の配列(図1)を、自動化シーケンサー(ALF DNAシーケンサー、ファルマシア)およびピヒア・パストリス発現キットで示唆された5'AOX1、3'AOX1およびα−因子(αMF)配列決定プライマーを用いてサンガー(Sanger)の方法[6]による配列決定で確認した(図2を参照のこと)。発現したタンパク質について予想されたタンパク質配列を図3に示す。
【0060】
pCOL3A1によるピヒア・パストリスの形質転換
ピヒア・パストリスの形質転換でMut+ 形質転換体を得るために、該構築物をSalIで一本鎖とした。MutS 形質転換体を得るために、構築物をBglIIで消化した。フェノール抽出およびエタノール析出後、次にこの構築物を用いて、バイオラッドジーンパルサー(1500V、25μFおよび 200Ωに設定し、 0.2cmキュベットを用いたもの)を用いて、BeckerおよびGuarente[7]によるエレクトロポレーションを用いて、ピヒア・パストリス株GS115(インビトロゲン)を形質転換した。His- 株GS115をHis+ に変換するベクターの存在について選択するために最小デキストロースプレート(MDプレート;1.34%YNB、4×10-5%ビオチン、1%デキストロースおよび1.5 %寒天)に形質転換混合物を塗布した。30℃で3日間の生育後、幾つかのコロニーがMut遺伝子型のPCR確認のために選択した。ゲノムDNAを Lee[8]の酵母ミニプレプ法にしたがって単離し、RNaseAで処理した。PCRを、全体積50μlに、ゲノムDNA 100ng、5'AOX1プライマー50pmol、3'AOX1プライマー50pmol、Taqポリメラーゼ1.25U(ファルマシア)、0.2 mM dNTPs(ファルマシア)および1×Taq緩衝液(ファルマシア)を用いて行った。94℃で5分間の最初の変成後、94℃で1分間、57℃で1分間および72℃で2分間からなるサイクルを30回行った。最終的な伸長は72℃で10分間であった。使用されたPCR装置はパーキンエルマー(Perkin-Elmer)GeneAmp 480 であった。アガロースゲル電気泳動により、Mut+ 形質転換体に関して 2.2kb内因性AOX1バンドを示すはずである。 2.2kbバンドのない形質転換体はMutS である。Mut+ およびMutS 遺伝子型の双方の確認済形質転換体を、50mlコニカルチューブ(角度をつけて置かれ、キャップをゆるく付けた)中、または100 mlもしくは1L(バッフル付き)フラスコ中での小規模発現について選択した。
【0061】
COL3A1断片の発現
基本的にはピヒア・パストリス発現キットマニュアルに記載のように発現を行った。簡単には、形質転換体を一晩BMG(100 mMリン酸カリウムpH6.0 、1.34%YNB、4×10-5%ビオチンおよび1%グリセロール)をOD600 =2〜6まで生育させた。次に培養物を遠心してBMM(グリセロールを 0.5%メタノール変えた以外はBMGと同じ)でOD600 が 1.0になるまで再懸濁した。細胞を4日間30℃および 250rpmで、毎日メタノールを 0.5%まで加えて生育させた。
【0062】
培養上清10μlをLaemmli [9]によるSDS−PAGEで、バイオラッドのミニPROTEAN IIシステムを用いて分析した。クーマシーブリリアントブルー染色から、幾つかのバンドが明らかになり、そのうちの最大のバンドは、見掛けの長さが約29kDという予想された値を有していた。ゼラチン、コラーゲンおよびコラーゲン断片は、見掛けのMwにより移動し、少なくとも部分的には比較的低い平均残基Mw[12]のため、真のMwよりも約 1.4倍高い見掛けのMwにより移動することに注意すべきである。
【0063】
それらを同定するために、アセトン分画されたCOL3A1発酵上清(分画操作については下記を参照のこと)をかけたSDS−PAGEゲルを、バイオラッドミニトランスブロットセルを用いてImmobilon PSQメンブレン(ミリポア)にブロットした。定量的な移動が、CAPS緩衝液(10%MeOH1リットルあたりCAPS2.2 g、pH11)を用いて、100 Vを1時間かけることにより得られた。クーマシーブリリアントブルーによる染色後、4本の最も主なバンドを切り出して、そのN末端配列をエドマン分解により決定した。29kDバンドは何のシグナルも示さなかったが、おそらくN末端がブロックされているためであろう。二つの小さい断片のうち一つは、配列決定するほどには純粋ではなかった。他の二つの小さいバンドは読み取り可能なシグナルを示し、図3で下線を付けている。バンドはタンパク質分解の一部の形により引き起こされていることは明らかである。これは、ゼラチンがランダムコイル立体配座中の非常にオープンなタンパク質であるためにタンパク質分解を非常に受け易いとのことにより説明することができる。
【0064】
プロテアーゼ活性
コラーゲンの分解は、pH5.0 での発酵中にコラーゲンタイプIおよびIIIで観察された。この分解をさらに特性付けるために試験を行った。この分解は、低いpHで発酵プロセスを実施するとき、顕著に減少した。具体的には、pH3.0 で良好な結果を得た。我々はカザミノ酸の添加の効果も調べた。この添加により、pH5.0 で両タイプのコラーゲンが保護された。さらに、この添加により、pH3.0 でコラーゲンタイプIに対して良好な保護をもたらした。この添加保護は、pH3.0 でコラーゲンタイプIIIの場合には観察できなかった。細胞外中性プロテアーゼは、ランダムな立体配座から起こるタンパク質分解にかなり冒されやすいコラーゲンを攻撃すると思われる。(発酵操作の記載について下記参照のこと。)pH3.0 でのpCOL3AI発酵のコラーゲン含有上清を用いて試験を行い、発酵中の分解を最小限とした。遠心分離により細胞を除去した後、上清のpHを5.0 に調整した。次に、平行インキュベーションを下記の添加と共に行った。
(1)新しいピヒア・パストリス細胞(ミリQ(MilliQ)で洗浄したもの)
(2)新しいピヒア・パストリス細胞(ミリQで洗浄したもの)およびガラスビーズ:この混合物を攪拌した(陽性コントロールI)。
(3)何も加えないもの(陰性コントロール)
(4)トリプシン(5mg/ml)(陽性コントロールII)。
【0065】
すべての試料を96時間、30℃、pH5.0 でインキュベートした(これらは発酵中ゼラチンの分解を引き起こす条件であった)。最後に、インキュベートされた試料をバイオラッドミニPROTEAN IIシステムでLaemmli [9]によるSDS−PAGEゲルを行った後、クーマシーブリリアントブルー染色により分析した。
【0066】
結果は以下通りであった。
(1)pH5.0 で、洗浄された無傷の細胞とのインキュベーションは、おそらく細胞表面会合タンパク質分解酵素活性の結果としてpCOL3A1(元々はpH3.0 で作られたもの)を4〜5の別々のバンドへの分解を引き起こした。
(2)壊れた細胞を添加することにより、両方のコラーゲンタイプが多くのタンパク質分解産物へとその分解が引き起こされた(陽性コントロールI)。
(3)pH5.0 で細胞の不存在下で、分解は起こらなかった。
(4)トリプシンの添加はゼラチンの大量分解を引き起こした(陽性コントロールII)。
【0067】
異なる実験において、我々は、発酵の最後に細胞の除去後、無細胞発酵ブロス中の組換えゼラチンが温度範囲0〜30℃で、pH範囲3.0 〜7.0 で7日間安定であったことを確かめた。よって、ゼラチンのタンパク質分解の一部が発酵中に起こったが、細胞の除去後、関連性のあるタンパク質分解活性は保持されず、生成物を安定化するためのさらなる注意は必要ではない。類似の安定性が下記のCOL−1A1生成物について観察された。組換えゼラチンは(下記のようにアミノ酸組成の分析により示されているように)ヒドロキシル化されないので、非らせん、すなわち二次構造を持たないために、それら組換えゼラチンの安定性は驚きであった。二次構造(すなわちコラーゲンタイプのらせん)およびヒドロキシプロリンがまったくないことを、参考文献[13]による円偏光二色性スペクトロスコピー(CD)により、およびペプチド結合の全加水分解後のアミノ酸組成のHPLC分析によりそれぞれ確認した。5℃で、発現産物は主にランダムコイル立体配置にとどまり、よって基本的にはゲル化しないことが確認された。これは、実験により確認されたように、らせん安定化させるヒドロキシプロリンがないことによる。よって、組換えゼラチンは、タンパク質分解を著しく受けやすいのに違いない、著しくオープンな分子(およびそれ自体として非平行ポリペプチド)である。この発現宿主での生成物の予想されない安定性は(分泌後でも)、この発現系からの生成物の下流プロセシングおよび単離を非常に容易にし、タンパク質分解活性の高価で不安定な阻害剤(例えばパラ−メチル−スルホニルフルオリド(PMSF))を繰返し添加する必要がない。さらに、単純なマイクロ濾過または栄養ブロスに対する透析により、および細胞を発酵糟(fermenter)へ再循環させることによって、発酵中細胞からの生成物を連続的に分離することに対して、高い細胞密度発酵中のゼラチン分解を最小限にする可能性を開発している。前もって三重らせんコラーゲンまたは折りたたみポリペプチドのみが作られている。これらはプロテアーゼに対してより耐性がある。三重らせんコラーゲンはトリプシン、ペプシン、および他の周知のプロテアーゼに対してさえも十分に耐性がある。対照的に、そのままの非ヒドロキシル化で折りたたまれていないゼラチンの保護はしたがって著しく難しいと予想された。
【0068】
プロテアーゼ欠損株における産生
pep4プロテアーゼA欠損株SDM1168(インビトロゲン)がプロテアーゼ感受性ゼラチン配列の発現によく適合しているかどうかを調べるために、この株もpCOL3A1構築物で形質転換した。方法論は上記のとおりであった。不幸にも、振とうフラスコおよび発酵糟発現実験の両方で明らかな陽性の(positive)効果は存在しなかった。
【0069】
グリコシル化の分析
該タンパク質がグリコシル化されているかどうかを証明するために、過ヨウ素酸による酸化後にシッフ試薬の適用を伴なうPAS染色をSDS−PAGEゲル上で行った。ゲルを、12.5%TCA中で1時間、1%過ヨウ素酸/3%酢酸中で1時間、15%酢酸中で1時間(10分毎に交換)およびシッフ試薬中で1時間(暗室中4℃で)インキュベートした。次にゲルを 0.5%亜硫酸水素ナトリウムで5分間、2度洗浄し、7%酢酸で脱色した。発現されたタンパク質バンドはシグナルを示さなかったが、陽性コントロール(カルボキシぺプチダーゼY)からのシグナルが存在した。予想されたように、陰性コントロール(大腸菌抽出物)を用いてシグナルは得られなかった。発現されたタンパク質はグリコシル化しないと結論することができる。
【0070】
ノーザンブロット
メタノール成長細胞のノーザンブロットを行った。Schmitt らの方法[10]にしたがってRNAを単離した。pCOL3AlベクターをEco−RI/SphIで消化して 0.5kbのCOL3A1断片を得た。該断片を32Pランダムプライマーで標識し、ブロットにハイブリダイズし、その後ブロットを0.2 ×SSCの最終濃度になるまで65℃で洗浄した。オートラジオグラフィーは予期された長さ(1.3kb)のメッセンジャーを明らかにした。
【0071】
異種COL3A1遺伝子のマルチコピーを含むピヒア形質転換体
ゼラチン発現量をさらに高めることができるかどうかを調べるために、ScorerらのG418マルチコピー選択法[11]が利用された。pPIC9KベクターをBamHI/EcoRIで消化し、9.0 kbバンドを単離した。pCOL3A1ベクターもBamHI/EcoRIで消化し、得られた1.0 kb断片を9.0 kbのpPIC9Kバンドに連結し、その後それを用いて大腸菌JM109を形質転換した。こうして得られた構築物pCOL3A1K(図4)を制限消化により確認した。
【0072】
ピヒア・パストリスGS115を上記のように(Mut+ 形質転換体を得るためにSalIで消化された)pCOL3A1Kベクターで形質転換した。マルチコピー形質転換体を選択するために、MDプレート上のhis+ コロニーを集め(約6000個)、0.25〜4.0 mg/mlの範囲の一連の10種類の異なるG418(ギブコBRL)濃度を含有するプレート上で二次スクリーニングに供した。細胞をプレート1枚あたり約105 個の細胞の密度で塗布した。4日間、30℃でのインキュベーション後、各G418濃度の幾つかの耐性コロニーをG418の対応する量の新しいプレートに移してそれらの耐性を確認した。
【0073】
G418耐性形質転換体におけるpCOL3A1Kのコピー数を決定するために、半定量的ドットブロットを行った。確認されたG418耐性形質転換体のゲノムDNAをLee の方法[8]にしたがって単離し、RNase A処理した。40個(G418の濃度あたり4)の形質転換体のそれぞれの染色体DNA約 200ngを、真空ブロット装置(ギブコBRL変換システム)を用いて、正電荷ナイロンメンブレン(ベーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim))に移した。1コピーコントロールとして、サザンブロットにより僅かに1コピーを含むと証明されたpCOL3A1形質転換体をブロットに(デュプロで(in duplo))移し、また非形質転換コントロールもブロットに(デュプロで)移した。
【0074】
pCOL3AlベクターをEcoRI/SphIで消化し0.5 kbのCOL3A1断片を得た。この断片は32Pプライマー標識し、ドットブロットフィルターにハイブリダイズさせた。65℃で0.5 ×SSCの最終濃度まで洗浄した後、オートラジオグラフィーを行った。(効率をチェックした)ストリップ後、メンブレンを確認済ピヒア・パストリスURA−3断片由来のプローブにハイブリダイズさせ、異種URA3プライマーによるPCRにより選択した。このコントロールは、かけられたDNAの量に関してCOL3A1シグナルの標準化に役立つ。メンブレンを洗浄し、COL−3Alプローブについて記載したようにオートラジオグラフィーに供した。両オートラジオグラフにおけるシグナルをゲルスキャナー(PDI、ファルマシア)を用いて濃度による定量を行った。予想されたように、0コピーコントロールについてはCOL3A1シグナルが存在しなかった一方、URA3シグナルは存在した。そのコピー数は、各URA3シグナルの比により標準化するように、各形質転換体についてのCOL3A1シグナルと1コピーコントロールに対して得られた平均COL3A1シグナルとの比を計算することで見積もることができる(即ち、メンブレンにブロットされたDNA量の違いを計算に入れる)。約1〜15コピーを含む形質転換体がこうして得られた。
【0075】
マルチコピー形質転換体におけるCOL3A1断片の発現
1〜15コピーを含有する一連の形質転換体を上記のように小規模発現に供した。SDS−PAGEは、高いコピー数で高い収量を示したので、さらに試験を100 mlの規模で2、5、10および15コピーの形質転換体を用いて行った。これらを、BMG25ml(100 mMリン酸カリウムpH6.0 、1.34%YNB、4×10-5%ビオチンおよび1%グリセロール)を含む100 mlフラスコ中で一晩生育させた。1500〜3000gで5分間の遠心後、細胞をBMM100 ml(グリセロールの代りに0.5 %メタノールとした以外はBMGと同じ)に再懸濁した。1リットルのバッフル付きフラスコ中、30℃、 250rpm、4日間、メタノールを毎日 0.5%まで加えながら細胞を生育させた。試料1mlを毎日採取し、SDS−PAGEで分析した。高いコピー数は、高い量のゼラチン産物をもたらした。選択された5〜15コピーの形質転換体を発酵糟で1Lの規模で発現試験のために用いた。最大のCOL3A1生産が15コピー形質転換体を用いて得られた(乾燥バイオマス177 g/Lで約184 時間発酵後に細胞外培地中約14.8gゼラチン/L、即ち全体で約7.7 g/L、即ち42mg/(L.時間);乾燥バイオマス110 g/Lで約120 時間発酵後、細胞外培地中約7gゼラチン/L、すなわち全体で約3.7 g/L、または31mg/(L.時間))。
【0076】
マウスCOL1A1断片(COL1A1−1)マウスのクローニング
プライマーを公知の配列に基づいて設計した(図5)。全体積20μl中、マウス17日目の胎児QUICK クローン(QUICK-Clone)(登録商標)(繊維芽細胞)cDNA(クローンテック(Clontech))に対して、cDNA 0.4ng、0.4 μM C1A1−FWプライマー(図5)、0.4 μM C1A1−RV1プライマー(図5)、1×Advantage Klen Taqポリメラーゼミックス(クローンテック)、0.2
mMのdNTP's(ファルマシア)および1×Klen TaqPCR反応緩衝液(クローンテック)を用いて、PCRを行った。94℃で4分間の最初の変成後に、94℃で1分間、68℃で1分間および72℃で2分間からなるサイクルを35回行った。最終的な伸長(extension)は72℃で10分間であった。アガロースゲル電気泳動は、配列から予想された大きさである1kbバンドを示している。DNAをアガロースゲルから単離し、次にNcoIおよびXhoI制限酵素で消化した。消化された断片をアガロースゲルから単離して、下記の方法にしたがってピヒア・パストリス発現ベクターpPIC9にクローニングした(図6)。最初に、NcoIおよびXhoI部位を有するアダプターをpPIC9のマルチクローニング部位に挿入して、pPIC9* を得た。該アダプターを、図5と図6に示されたように合成オリゴヌクレオチドN−X−FWおよびN−X−RVにアニーリングすることにより調製した。オリゴヌクレオチドN−X−RVの5'末端から生じた一本鎖の突出部は、EcoRI消化ベクターでのアニーリング後にEcoRI部位を形成するように設計した。N−X−FW(XhoI* )からの5'突出部はベクター上のXhoIの作用により作られた突出部に相補的であったが、連結後、XhoI部位を作らなかった。標的ベクターであるpPIC9がマルチクローニング部位の外側にNcoI部位を有しているため、pUC18をこの断片のクローニング用中間ベクターとして用いた。pPIC9* の変更マルチクローニング部位のBamHIとEcoRIとの間の部分を、pUC18ベクターのマルチクローニング部位に移して、pUC18* が得られた。NcoI−XhoI消化断片COL−1A1−1をNcoIとXhoI部位との間のpUC18* ベクターに連結した。このpUC18−COL1A1−1構築物から、COL1A1−1断片を、pPIC9からのマルチクローニング部位の部分とともに、BamHIとEcoRIで消化し、pPIC9に連結して、構築物pCOL1A−1が得られた(図7)。よって、pPIC9の部分的NcoI消化は必要ではなかった。pPIC9の正しい挿入を制限分析により最初にチェックし、次にDNA配列決定によりチェックした。
【0077】
pCOL1A1−1によるピヒアの形質転換およびCOL1A1−1断片の発現
ピヒア・パストリスGS115を、pCOL3A1ベクターについて記載されたようにpCOL1A1−1で形質転換した。SalI消化DNAを、具体的にはMut+ 形質転換体を作るために用いた。いくつかの形質転換体を振とうフラスコ中の小規模発現のために用い、そのうちの一形質転換体を発酵糟中で1〜100 Lの規模での発現のために選択した。典型的な収率は(細胞外)培地1リットルあたり、乾燥バイオマス100 〜120 g/L(全体でゼラチン約3g/L)であり、ゼラチン4〜5g(下記のようにアセトン分画後に測定されたもの)の範囲にある。目的のゼラチン(図8)は、理論Mw27.4kDを有している。コラーゲン性タンパク質およびゼラチンは、見掛けのMwであり、真のMwよりも1.4 倍速く移動することが知られている[10]。一致するように、約38kDの見掛けのMwで移動するSDS−PAGEバンドが観察された(球状タンパク質Mwマーカーを用いて得られた内挿値)。さらに、見掛けのMw24、18および15kD(内挿値)を有する3種類の短い産物が観察された。これらは、細胞間の細胞表面会合もしくは細胞外区画中、または翻訳レベルでの問題からの初期タンパク質分解活性の結果であろう。分解産物は、誘導のごく初期段階に存在し、それ以上の分解は起こらなかった。pH5.0 および30℃での96時間の洗浄されたそのままの細胞の存在下でのインキュベーションでさえ、pH3.0 での発酵後の場合についてpCOL1A1−1のそれ以上の分解を引き起こさなかった。(大量の分解は、陽性コントロールとしてのトリプシンの存在下で起こった)。mRNAレベルでの問題が24、18および15kD産物の存在の原因ではないことを確認するために、プローブとして、pCOL1A1−1からの32Pランダムプライマー標識化 1.0kbNcoI/XhoICOL−1A1−1断片を用いて、COL3A1について記載されたように、ノーザンブロットを行った。予想された 1.6kbメッセンジャーが見出された。
【0078】
観察されたフラグメントの同定を確立するために、アセトン分画化COL1A1−1発酵上清を充填したSDS−PAGEゲルをバイオラッドミニトランスブロットセルを用いるImmobilon PSQメンブラン(ミリポア)にブロットした。(アセトン分画操作の記載については下記を参照のこと)。定量的移動は、CAPS緩衝液(10%MeOH1リットルあたりCAPS2.2 g、pH11)を用いて、100 Vを1時間印加することにより行った。クーマシーブリリアントブルーによる染色後、4本の主なバンドを切り出し、そのN末端配列をエドマン分解により決定した。得られた配列決定シグナルは、充填された材料の量と比較して著しく低かった(平均5%程度)。したがって、該断片はほとんどがN末端でブロックされていると思われる。これは、COL1A1−1のタンパク質分解が細胞内で起こるとの考えを支持する。それにもかかわらず、供給された大量のCOL1A1はN末端配列の容易な決定を可能とした。得られたN末端配列は、トランスフェクトされたCOL1A1−1遺伝子によりコードされたタンパク質配列(図8)に下線を付す。38kDと18kDの両方の見掛けのMwを有する断片は、該タンパク質のN末端について予想された配列を与えたが、'EA'により伸長した。この伸長(即ちEAEA)は、サッカロミセス・セレビシアエ由来のα接合因子(αMF)プレプロシグナルを利用する発現ベクターから発現される幾つかのタンパク質上に存在することが知られている。この効果はSTE13切断活性の立体的妨げによるものと思われる。しかし、タンパク質のほとんどがおそらくN末端でブロックされているために、この伸長したバージョンは配列決定可能な小さいフラクションのみを表すのであろう。N末端および内部配列に基づいて、見掛けのMw38、24、18および15kDを有する断片が、図8に示されているように、標的産物の残基1〜310 、126 〜310 、1〜125 および42〜125 からそれぞれなる断片であると割り当てられた。残基1〜41(理論Mw4kD)および42〜310
(理論Mw24kD、見掛けのMw34kD)に対応する断片は観察されなかった。これは、残基41と42との間よりも残基125 と126 との間の(さらに)多くの頻繁な切断によるものであろう。
【0079】
マウスCOL1A1−2のクローニングと発現
マウス17日目の胎児QUICK-Clone(登録商標)cDNA(クローンテック)に対してマウスCOL1A1−Iと同じように、C1A1−FWおよびC1A1−RV2プライマーを用いてPCRを行った。94℃で4分間での変成後に、94℃で1分間、65℃で1分間および72℃で3分間からなるサイクルを35回行った。最終的な伸長は72℃で10分間であった。アガロースゲル電気泳動は、配列から予想された大きさである1.8 kbバンドを示している。COL1A1−2のpPIC9発現ベクターへのクローニングが、COLIA−1と同じように、さらに行われてpCOL1A1−2が得られた(図9)。
【0080】
pCOL3A1ベクターについて記載したように、ピヒア・パストリスGS115をpCOL1A1−2ベクターで形質転換した。Mut+ 形質転換体を特異的に作るためにSalI消化DNAを用いた。振とうフラスコ中での小規模での発現のために幾つかの形質転換体を用いて、それらの一つを、1〜100 L規模での発酵糟中発現のために選択した。図10は予想されたCOL1A1−2アミノ酸配列を示す。典型的な収量は、バイオマス100 〜120 g/L(全体でゼラチン3g/L)において、(細胞外)培地中、4〜5g/Lゼラチンの範囲である。標的ゼラチン(図10)は、理論Mw53kDを有する。この値と一致して(およびSDS−PAGEでのゼラチンの公知の異常な移動[10]により)、見掛けのMw約74kD(球状タンパク質Mwマーカーを用いて得られた内挿値)で移動するSDS−PAGEバンドが観察された。さらに、見掛けのMw56、18および15kD(内挿値)を有する3つの短い産物が観察された。タンパク質分解切断がCOL1A1−1およびCOL1A1−2の発現産物に対応する部位で生じる場合(図8、10)、COL1A1−2産物の残基1〜595 、126 〜595 、1〜125 、および42〜125 からなる断片が生じることが予想されよう。これらは、見掛けのMwが74、58、17および11kDに対応する、理論Mwそれぞれ53、42、12および8kDを有するだろう。驚くことに、これは、観察された見掛けのMwによく対応し、COL1A1−2の切断が主に残基125 と126 の間の結合、および(さらに)41と42の結合に制限されていたことを示している。また、残基1〜41(理論Mw4kD)および42〜595 (理論Mw50kD、見掛けのMw70kD)に対応する断片は観察されなかった。COL1A1−1で示されたように、これは残基41と42との間よりも残基125 と126 との(さらに)多くの頻繁な切断によるものであろう。
【0081】
マウスCOL1A1−3のクローニングと発現
マウス17日目の胎児QUICK-Clone(登録商標)cDNA(クローンテック)に対して、マウスCOL1A1−1と同じように、C1A1−FWおよびC1A1−RV3プライマーを用いてPCRを実施した。94℃で4分間の変成後に、94℃で1分間、65℃で1分間および72℃で3分間からなるサイクルを35回行った。最終的な伸長は72℃で10分間であった。アガロースゲル電気泳動は、配列から予想された大きさである 2.8kbバンドを示している。
【0082】
PUC18* プラスミドをNcoIで消化し、脱リン酸化した。C1A1−FW/C1A1−RV3 PCR生成物をNcoIで消化し、得られた 2.5kb断片をゲル精製し、これを、該NcoI消化され且つ脱リン酸化したベクターに連結した。大腸菌XL1Blueの形質転換後、得られたクローンの挿入物の正確な向きをPvuII消化により確認した。さらに、COL1A1−3のpPIC9発現ベクターへのクローニングが、COLIA−1について記載した方法と同じようにさらに行われて、pCOL1A1−3が得られた(図11)。
【0083】
ピヒア・パストリスGS115をpCOL1A1−3ベクターで、pCOL3A1ベクターについ記載したように形質転換した。Mut+ 形質転換体を特異的に作るためにSalI消化DNAを用いた。幾つかの形質転換体を振とうフラスコ中での小規模発現のために用いて、それらの一つを発酵糟中、1〜100 L規模での発現のために選択した。図12は予想されたCOL1A1−3アミノ酸配列を示す。典型的な収量は、(細胞外)培地中、乾燥バイオマス100 〜120 g/Lにおいて、4〜5gゼラチン/Lの範囲(アセトン分画後に測定)である(全体で3gゼラチン/L)。標的ゼラチン(図12)は、理論Mw72kDである。この値に一致して、見掛けのMw約100 kD(球状タンパク質Mwマーカーを用いて得られた内挿値)で移動するSDS−PAGEバンドが観察された。さらに、見掛けのMwが85、18および15kD(内挿値)の3つの短い産物が観察された。タンパク質分解がCOL1A1−1およびCOL1A1−3の発現産物の均一部位で起こる場合(図8,12)、COL1A1−3産物の残基1〜812 、126 〜812 、1〜125 、および42〜125 からなる断片が存在することが予想されよう。これらは、見掛けのMwが100 、84、17および11kDのそれぞれに対応する理論上のMw72、60、12および8kDを有するだろう。驚くことに、これは観察された見掛けのMwによく対応し、COL1A1−3の切断が主に残基125 と126 の間の結合および(さらに少ない程度で)41と42の結合に限定されていることを示している。再び、残基1〜41(理論Mw4kD)および42〜812 (理論Mw68kD、見掛けのMw96kD)に対応する断片は観察されなかった。これは、COL1A1−1に示されたように、残基41と42との間よりも残基125 と126 との間の(さらに)多くの頻繁な切断によるものであろう。
【0084】
表1は、分子量マーカータンパク質(LMWキャリブレーションキット;ファルマシア)との比較により得られた見掛けCOL1A1断片サイズを、配列から計算したサイズとともにまとめた。
【0085】
COL1A1断片の見掛けの分子量および理論分子量
【表1】

【0086】
表1から、「MGPR」モデルは、実際に見出された断片によく適合していることがわかる。
【0087】
残基1〜41(4kD;1A1−1,2,3)および残基42〜310 (理論Mw:24kD、見掛けのMw:34kD;1A1−1)、残基42〜595 (理論Mw:50kD、見掛けのMw:70kD;1A1−2)、または残基42〜595 (理論Mw:68kD、見掛けのMw:96kD;1A1−3)の断片も予想できるであろう。これらの断片がゲル上に見られないということは、第2の「MGPR」部位での切断速度が、第1の部位よりもさらに高いとみなすことにより説明がつくだろう。このことは、タンパク質分子が切断される場合、それが常に第2の部位で最初に起こることを意味する。切断速度におけるこの違いは、第1の部位がプロテアーゼを立体的に妨げる可能性のあるプロリン残基の前に存在するとのことで説明がつくだろう。
【0088】
マウスCOL1A1−1、COL1A1−2およびCOL1A1−3'RGPM'変異体
我々は、タンパク質分解酵素の認識部位として働く同じアミノ酸配列がすべてのCOL1A1産物(COL1A1−1、COL1A1−2、COLIA1−3)の分解の原因である可能性を考慮した。驚くことに、COL1A1−1断片15kDおよび24kDから得られた両内部N末端配列は、同一の配列「MGPR」よりも前に存在する。さらに、この配列は、残基83〜41および残基 122〜 125に対して、マウスCOL1A1−1、COL1A1−2、またはCOL1A1−3遺伝子中に2回のみ存在する。(COL1A1−1と比較して、COL1A1−2及びCOL1A1−3は、付加的なMGPR部位を含まない。)また、ラットからのCOL3A1断片はそのような部位を含まなかった。これは観察された切断パターンにうまく対応する。したがって、我々は、「MGPR」が特定のプロテアーゼにより認識される部分であり、COL1A1タンパク質の切断をもたらすと考えている。このMGPRプロテアーゼ認識部位は以前には記載されていない。この部分のさらに一般化された表示は、おそらくMXXR、MXX[RK]、または[MLIV]XX[RKH]であろう。前者2つの部分は実際に全マウスCOL1A1遺伝子中にわずかに2回存在するだけであり、COL3A1断片には存在いない。一方、三番目の部分は広いために非切断部位(COL1A1中の残基85〜88のMKGHおよび残基169 〜172 のVGAK、並びにCOL3A1中の残基198 〜201 のIKGH)を含む。よって、MXXRまたはMXX[RK]は[MLIV]XX[RKHよりもさらに一般化された部分である。図13はCOL−1A1−2配列中の「MGPR」部分を示している。このタンパク質切断部位が、それが比較的オープンで、折りたたまれていない構造(我々のゼラチンのように)で存在するが、さらにコンパクトに折りたたまれた構造(球状タンパク質のように)では容易に存在しない場合、関与する酵素により単に認識されることが予想できる。よって、それは、ゼラチンおよび折りたたまれていないコラーゲン等のある種のタンパク質及びポリペプチドにのみ重要であろう。
【0089】
3つの他の主要バンドが存在することなく、完全長のCOL1A1−1、COL1A1−2およびCOL1A1−3を作ることができるために、「MGPR」部分が部位特異的変異誘発により除去しなければならない。天然のCOL1A1ゼラチンの元のアミノ酸組成を保持するために、「MGPR」部分を「RGPM」に変換することにより除去した。下記の相補的プライマーの二対が合成された。
【0090】
COL1A1MUT1FW:
R G P M
5'-GAG-CCT-GGC-GGT-TCA-GGT-CCA-CGA-GGT-CCA-ATG-GGT-CCC-CCT-GG-3'
COL1A1MUT1RV:
5'-CC-AGG-GGG-ACC-CAT-TGG-ACC-TCG-TGG-ACC-TGA-ACC-GCC-AGG-CTC-3'
COL1A1MUT2FW:
R G P M
5'-GGA-GCT-CCT-GGC-CAG-CGA-GGT-CCA-ATG-GGT-CTG-CCC-GGT-GAG-AG-3'
COL1A1MUT2RV:
5'-CT-CTC-ACC-GGG-CAG-ACC-CAT-TGG-ACC-TCG-CTG-GCC-AGG-AGC-TCC-3'
注意:変異部位に下線が引かれている;Pro残基の元のCがAに変換されてNcoI部位の生成を避ける。
【0091】
3プライマーの組合せが用いられた:
1.5'AOX1プライマーとCOL1A1MUT1RV
2.COL1A1MUT1FWとCOL1A1MUT2RV
3.COL1A1MUT2FWと3'AOX1
【0092】
反応物は、1.25U Pwoポリメラーゼ(ユーロゲンテック(Eurogentec))、各プライマー50pmol、0.2 mM dNTPs(ファルマシア)、1×Pwo緩衝液(ユーロゲンテック)およびpCOL−1A1−1テンプレートDNA15ngを全反応体積50μl中に含んだ。使用したPCR装置は、GeneAmp 9700(パーキンエルマー)であった。94℃で5分間の最初のインキュベーション後、94℃で30秒間、60℃で30秒間および72℃で45秒間からなるサイクルを18回行った。最終伸長は72℃で10分間行った。PCR反応のアガロース電気泳動は予想された大きさ(それぞれ0.5 、0.3 および0.7 kb)の産物であることがわかった。バンドをゲルから切り出して精製した。次に、単離した断片をオーバーラップ伸長PCRに供した。各断片約0.1 pmolを共に混合した。5'AOX1 50pmolおよび3'AOX1プライマー、ならびにPwoポリメラーゼ、dNTPsおよび上記の緩衝液を加えた。72℃での伸長を45秒間の代りに90秒間実施した以外、サイクル条件は上記と同じである。アガロースゲル電気泳動により、予期された1.5 kb産物であることがわかった。PCR反応の残りはQIAクイックPCR精製キット(キアゲン)を用いて精製した。精製されたDNAを次にBamHI/ApaIで消化し、その後、得られた1.0 kb断片をゲルから精製した。ApaI部位のdcmメチル化を除去するために、大腸菌株JM110をpCOL1A1−1、pCOL1A1−2およびpCOL1A1−3で形質転換した。DNA単離後、プラスミドをBamHI/ApaIで消化した。それぞれ7.9 、8.8 および9.5 kbの得られたベクター断片をアガロースゲルから精製し、BamHI/ApaI消化PCR生成物に連結した。大腸菌XL1−Blueをこれらの連結反応物で形質転換し、PCRで証明された挿入物を含有するクローンのプラスミドDNAを単離し、自動化配列決定法により証明した。こうして作られた変異体プラスミドpCOL1A1−1* 、pCOLIA1−2* およびpCOLIA1−3* をSalIで消化してピヒア・パストリス株GS115を形質転換するために用いた。小規模および発酵糟規模の発現を、COLIA1−1で記載したように行った。
【0093】
SDS−PAGE分析は、予期された完全長サイズの僅かに一つの主要バンドがpCOL1A1−1* ならびにpCOLIA1−2* およびpCOLIA1−3* について形成された。
【0094】
合成遺伝子の構築と発現
極性ゼラチン(P単量体)をコードする合成遺伝子は、オーラーラップ伸長PCRにより構築した。理論上の分子量及び等電点は、それぞれ9.1 kD及び4.9
であった。該遺伝子は、ピヒア・パストリスの高度に発現された遺伝子のコドン利用を有するように設計された(Sreekrishna, K. and Kropp, K. E. (1996) Pichia pastoris, Wolf, K. (Ed), Nonconventional yeasts in biotechnology. A handbook, Springer-Verlag, pp. 6/203-6/253 )。二つの別々のPCR反応を下記のオリゴヌクレオチドを用いて実施した。
【0095】
OVL−PA−FW 1pmol、OVL−PA−RV 1pmol、HLP−PA−FW 50pmolおよびHLP−PA−RV 50pmol。
OVL−PB−FW 1pmol、OVL−PB−RV 1pmol、HLP−PB−FW 50pmolおよびHLP−PB−RV 50pmol。
【0096】
オリゴヌクレオチド配列は次の通りである。
HLP−PA−FW:5'-GCGCTCGAGAAAAGAGAGGCTGAAGC-3'
OVAL−PA−FW:
5'-GCGCTCGAGAAAAGAGAGGCTGAAGCTGGTCCACCCGGTGAGCCAGGTAACCCAGGATCTCCTGGTAACCAAGGACAGCCCGGTAACAAGGGTTCTCCAGGTAATCCA-3'
OVL−PA−RV:
5'-TGAGAACCTTGTGGACCGTTGGAACCTGGCTCACCAGGTTGTCCGTTCTGACCAGGTTGACCAGGTTGACCTTCGTTTCCTGGTTGACCTGGATTACCTGGAGAACCCTT-3'
HLP−PA−RV:5'-TGAGAACCTTGTGGACCGTTGGAA-3'
HLP−PB−FW:5'-TTCCAACGGTCCACAAGGTTCTCA-3'
OVL−PB−FW:
5'-TTCCAACGGTCCACAAGGTTCTCAGGGTAACCCTGGAAAGAATGGTCAACCTGGATCCCCAGGTTCACAAGGCTCTCCAGGTAACCAAGGTTCCCCTGGTCAGCCAGGTAACCCT-3'
OVL−PB−RV:
5'-GCGTCTGCAGTACGAATTCTATTAGCCACCGGCTGGACCCTGGTTTCCTGGTTTACCTTGTTCACCTGGTTGACCAGGGTTACCTGGCTGACCAGGGGAACCTTGGTT-3'
HLP−PB−RV:5'-GCGTCTGCAGTACGAATTCTATTAGC-3'
【0097】
PCR反応物50μlは、0.2 mM dNTP's(ファルマシア)、1×Pwo緩衝液(ユーロゲンテック)および1.25U Pwoポリメラーゼ(ユーロゲンテック)を含んでいた。反応1は、94℃で15秒間および72℃で15秒間からなる18サイクルを伴なった。反応2はタッチダウンPCRを伴なうことで、各サイクルは94℃で15秒間、アニーリング温度で15秒間および72℃で15秒間からなった。アニーリング温度は最初の5サイクルで72℃から68℃まで低下させ、その後、67℃でのアニーリング温度でさらに20サイクルを行った。
【0098】
PCR産物をアガロースゲルから単離した。各断片0.3 pmolと外側プライマーHLP−PA−FW50pmolおよびHLP−PB−RVをオーバーラップ伸長PCRに供した。94℃で15秒間、67℃で15秒間および72℃で15秒間からなる25サイクルを行った。得られた0.3 kb PCR断片をXhoI/EcoRIで消化し、クローニングベクターpMTL23にクローニングした。遺伝子の配列を自動化DNA配列決定により確認した。
【0099】
Pテトラマー(P4;理論分子量36.8kD)を作るために、ベクターをDraIII/Van91Iで消化することにより該断片を放出させた。別の反応において、ベクターをVan91Iで消化し、脱リン酸化した。次に、DraIII/Van91I断片をこのVan91I消化ベクターに挿入した。これによりPダイマーを有するベクターを得た。このダイマーはDraIII/Van91Iによる消化により放出させ、ダイマーを有するベクターのVan91I部位中に再挿入して、Pテトラマー(P4)を得た。次に、P断片とP4断片をベクターpIC9のXhoI/EcoRI部位にクローニングした。成熟(プロセシング後の)Pモノマーおよびテトラマーのコードされたアミノ酸配列は下記の通りである。
【0100】
モノマー(P):
1 GPPGEPGNPG SPGNQGQPGN KGSPGNPGQP GNEGQPGQPG QNGQPGEPGS NGPQGSQGNP
61 GKNGQPGSPG SQGSPGNQGS PGQPGNPGQP GEQGKPGNQG PAGG
テトラマー(P4):
1 GPPGEPGNPG SPGNQGQPGN KGSPGNPGQP GNEGQPGQPG QNGQPGEPGS NGPQGSQGNP
61 GKNGQPGSPG SQGSPGNQGS PGQPGNPGQP GEQGKPGNQG PAGEPGNPGS PGNQGQPGNK
121 GSPGNPGQPG NEGQPGQPGQ NGQPGEPGSN GPQGSQGNPG KNGQPGSPGS QGSPGNQGSP
181 GQPGNPGQPG EQGKPGNQGP AGEPGNPGSP GNQGQPGNKG SPGNPGQPGN EGQPGQPGQN
241 GQPGEPGSNG PQGSQGNPGK NGQPGSPGSQ GSPGNQGSPG QPGNPGQPGE QGKPGNQGPA
301 GEPGNPGSPG NQGQPGNKGS PGNPGQPGNE GQPGQPGQNG QPGEPGSNGP QGSQGNPGKN
361 GQPGSPGSQG SPGNQGSPGQ PGNPGQPGEQ GKPGNQGPAG G
【0101】
PおよびP4ゼラチンの起こりうるC末端分解を防止するために、PとP4と同一の配列を有するが、Gly残基の代りにC末端Proを有する構築物を作った(それぞれをPCとP4Cとした)。
【0102】
ベクターをSalIによる消化により直鎖とし、これを用いてピヒア・パストリス株GS115を形質転換した。発酵を、COL1A1について記載したように(すなわちpH3およびカザミノ酸の存在下での成長)行った。培養上清をSDS−PAGEにより分析し、予想されたN末端アミノ酸配列を有するタンパク質バンドを明らかにした。収率は1グラム/L発酵培地と算出された。生産物を上天然のゼラチンについて上記したようにアセトン分画(すなわち40%アセトンでの内因性タンパク質の除去と80%アセトンでのゼラチンの析出)により精製することができた。
【0103】
発酵糟中のゼラチンの発現/産生
供給バッチ発酵をインビトロゲン社のピヒア発酵法指針にしたがって行った。細胞を、最初の実験段階で1リットルの発酵糟(アップリコン)中で生育させて、タンパク質産生を最適化した。その後、コラーゲンのパイロット規模生産のために、細胞を20リットルまたは140 リットルの発酵糟(バイオベンチ20、バイオパイロット140、アップリコン(Aplikon))で生育させた。作動体積はそれぞれ1リットル、15リットルおよび100 リットルであった。AD1020コントローラ(アップリコン)を用いて発酵パラメータをモニターし、調節した。プログラムBioXpert(アップリコン)をデータ保存のために用いた。溶解酸素レベルを、酸素電極(1リットル発酵についてはインゴールド(Ingold)、大規模発酵についてメトラー・トレド(Mettler Toledo))を用いて発酵糟中でモニターした。攪拌(500 〜1000rpm)と通気(1〜2vvm、すなわち1〜2LL-1/分)を手動で調整して溶解酸素濃度を20%以上に保った。pHをpH電極(ブロードリージェームス(Broadly James)社)で測定し、水酸化アンモニウム(25%)の添加によりpH3.0 またはpH5.0 に自動的に維持し、該水酸化アンモニウムは微生物成長のための窒素源としても機能した。消泡電極を用いて過剰の発泡を防止した。必要であれば、消泡Strutol J673(チル&ザイラッハー(Schill & Seilacher)、ハンブルグ、ドイツ)を用いた。微生物の成長を細胞乾燥重量の測定によりモニターした。検量線を作成することで細胞湿重量を細胞乾燥重量に換算することができた。細胞湿重量は、試料2mlを5分間15,000rpmで遠心分離後、上清を除去することにより測定した。細胞乾燥重量は、細胞 200μlを予備乾燥フィルター(0.45μmメンブレン、シュライヒナー&シェル、ダッセル、ドイツ)に加え、脱イオン水25mlで洗浄し、乾燥(例えば電子レンジで1000W、15分間)した後に測定した。細胞乾燥重量は、細胞湿重量の約1/3であった。前培養はMGYの初期発酵体積の合計10%を含有するフラスコ中でMGYプレート上のコロニーから開始した。培地の体積は全フラスコ体積の20%以下であった。細胞を30℃、200 rpmでロータリーシェーカー(ギャレンカンプ)で24〜60時間生育させた。
【0104】
発酵培地
発酵糟中の発酵基礎塩培地は、1リットルあたり、リン酸26.7ml(85%)、硫酸カルシウム0.93g、硫酸カリウム18.2g、硫酸マグネシウム・7H2 O 14.9g、水酸化カリウム4.13gおよびグリセロール40.0gを含んでいた。PTM1 微量塩4.3 mlの量を発酵基礎塩培地1リットルあたり加えた。PTM1 微量塩は、1リットルあたり、塩化第二銅・2H2 O 4.5g、ヨウ化カリウム0.09g、塩化マンガン・4H2 O 3.5g、モリブデン酸ナトリウム・2H2 O 0.2g、ホウ酸0.02g、硫酸コバルト・7H2 O1.08g、硫酸亜鉛・7H2 O42.3g、硫酸鉄・7H2 O65.0g、ビオチン 0.2gおよび硫酸5.0 mlを含んでいた。微量塩はフィルター濾過(ポアサイズ0.22μm、コスター、米国)で除菌した。カザミノ酸(カゼイン加水分解物、メルク)を別に滅菌し、マウスのコラーゲンタイプIが発現されたときに(COL1A1−1、COL1A1−1* 、COL1A1−2、COL1A1−2* 、COL1A1−3、COL1A1−3* )、5g/lの量で発酵培地に加えた。発酵中、50時間後に、5g/l滅菌カザミノ酸をさらに発酵培地に加えた。
【0105】
mut+ 培養物の発酵
発酵糟を発酵基本塩培地とともに滅菌した。20リットルと120 リットルの発酵糟をそれぞれ5〜7.5 リットルと50リットルの容量の初期培地とともにその場で滅菌した。1リットル発酵糟を培地500 mlとともにオートクレーブ中で滅菌した。滅菌後、温度を30℃に設定し、攪拌と通気をそれぞれ500 rpmと1vvm(すなわ、1LL-1/分)に設定した。pHを25%水酸化アンモニウムで設定点(通常pH5.0 )に調整した。微量塩を培地に無菌的に加えた。発酵糟にMGYの前培養培地の初期発酵体積の10%を接種した。バッチ培養物を、グリセロールが完全に消費されるまで(18〜24時間)生育させた。これは、溶解酸素濃度の100 %までの増加により示された。細胞乾燥重量はこの段階で25〜35g/lであった。その後、グリセロール供給バッチ相を、グリセロール1リットルあたりPTM1 微量塩を12ml含む50%(v/v)グリセロールの供給を始めることにより開始した。グリセロール供給は、18ml/時間/1リットル初期発酵体積に設定した。グリセロール供給は4時間、または長期ラグ相の場合は一晩実施した。グリセロールバッチ相中、発酵培地のpHを3.0 まで低下させた。タンパク質誘導相は、メタノール1リットルあたりPTM1 微量塩を12ml含む100 %メタノール供給を始めることにより開始した。供給速度は3ml/時間/リットルの初期発酵糟体積に設定した。最初の数時間、メタノールは発酵糟中に蓄積した。2〜4時間後、溶解酸素量はメタノールへの順応のために減少した。迅速溶解酸素の上昇の場合、メタノール供給を、6ml/時間/リットルの初期発酵糟体積まで増加させた。炭素源が制限されている場合、炭素源を封じることにより培養の代謝速度が減少して、溶解酸素濃度が高まる。さらに2時間後、メタノール速度は9ml/時間/リットルの初期発酵糟体積まで増加させた。この供給速度は残りの培養中にわたって維持した。培養は、70〜130 時間のメタノール供給バッチ相後に止めた。培養中、試料2mlを取り、遠心し(5分間、15,000rpm)、上清を−20℃で保存した。
【0106】
ゼラチンおよび全タンパク質の濃度を、試料(0.22μm)の濾過およびその後のアセトン分画(40体積%アセトン後に60〜80体積%アセトン)後に測定した。メルクのゼラチンをリファレンスとして用いて、BCAタンパク質アッセイ(ピアス(Pierce))を慣用的に用いた。アミノ酸組成のSDS−PAGEおよび分析にしたがって、非コラーゲンタンパク質は40%アセトンで析出した一方、COL3A1およびCOL1A1断片は60〜80%で析出した。60%アセトンで、好ましくは高分子量のゼラチン成分が析出した。増加アセトン濃度で、上記の主要な分解生成物の増加する析出が得られた。80%で、すべての主要な分解生成物が(SDS−PAGEによりチェックされたように)析出物中に回収された。小ペプチドと他の低分子量不純物が80%アセトンでは溶液中にとどまった。
【0107】
1リットルの培養の場合、培養の最後に、細胞を遠心分離すること(10,000rpm、30分、4℃)により除去した。20リットルの培養の場合は、マイクロフィルター濾過により細胞を除去した。細胞ブロスを、最初に孔径が0.50μmのポリエーテルスルホンメンブレンを含むマイクロ濾過モジュール(X-Flow社のRX 300濾過モジュールに合わせたX-Flow社のタイプMF 05 M2)に適用した。その後、上清を孔径が0.2 μmのポリエーテルスルホンメンブレンを含む類似のタイプのマイクロ濾過モジュール(同様にX-Flow社のタイプMF 02 M1)に適用した。120 リットルの発酵の場合、細胞を、孔径が0.2 μmのポリエーテルスルホンメンブレンを有するパイロットプラント規模のマイクロ濾過ユニット(R-10メンブレンモジュールに合わせたX-Flow社のタイプMF 02 M1)により除去した。これらの濾過ユニットは、単に例として示しただけである。細胞を除去するためにどのような適当なマイクロ濾過システムも利用できることを理解されたい。任意に、細胞およびデブリ(debris)の塊を遠心分離により除去し、上清および細胞を洗浄するために用いられた培地のみをマイクロ濾過ユニットに適用した。または、発酵ブロスから産物を回収し、産生したゼラチンを特異的に結合させる樹脂を用いる、適切な膨張層クロマトグラフィーシステムに該発酵ブロスを適用することにより産物を細胞から分離することができる。我々は、ファルマシアのSPセファロースXLストリームラインを膨張層モード中のカチオン交換体(pH3〜4)としてうまく利用することができた。
【0108】
Muts 培養物の発酵
グリセロールバッチおよび供給バッチ相を、mut+ 培養物について記載されたように行った。Muts 培養物はメタノールを十分には代謝しないので、それらの酸素消費は低い。したがって、溶解酸素濃度の上昇は、培養物を評価するのに用いることはできない。メタノール供給は、0.3 %を超えない培地中の過剰のメタノールを保持するために調整した。メタノール供給は、1ml/h/リットルの初期発酵糟体積で始められ、ゆっくりと3ml/h/リットルまで高めた。Muts 培養物を用いるときに必要とされる全発酵時間は、Muts 培養物が用いられたときよりも比較的長い。
【0109】
コラーゲン/ゼラチンの調製規模での調製的精製
マイクロ濾過工程後、二つの代用精製方法にしたがった(下記のI、IIを参照のこと)。
【0110】
I.析出差(differential precipitation)による精製
アセトン分画
コラーゲンタイプIおよびタイプIIIを、40〜80%アセトン分画により上清のバッチ500 ml〜2リットルから部分精製した。40%アセトンで、(ピヒア由来の)非コラーゲンタンパク質が析出した一方、60〜80%アセトンで、コラーゲンならびにコラーゲン分解生成物が、SDS−PAGEおよびアミノ酸組成物の分析により示されたように、析出した。60%アセトンで、好ましくは高分子量のゼラチン成分が析出した。増加アセトン濃度で、上記の主要な分解生成物の増加する析出が得られた。80%で、すべての主要な分解生成物が(SDS−PAGEによりチェックしたように)析出物中に回収された。小ペプチドと他の低分子量の不純物が80%アセトンでは溶液中にとどまった。アセトンを2〜4時間、−20℃で冷却した。40%の氷冷アセトン(v/v)をマグネテックスターラーによる4℃での攪拌下で発酵からの予備冷却した上清にゆっくりと加えた。上清を4℃で一晩攪拌した。析出したタンパク質と粒子を遠心分離により除去した(4℃、10,000rpm、30分間)。ペレットを40%の氷冷アセトンに再懸濁し、再び遠心分離した。両方の40%アセトン上清フラクションを収集した。その後、上清を60〜80%アセトン(v/v)とし、一晩攪拌した。析出したタンパク質は遠心分離により収集した。ペレットを60〜80%アセトンに懸濁し、再び遠心分離した。ペレットを5mM酢酸/水酸化アンモニウム緩衝液、pH3.0 (緩衝液A)の適切な量で20〜50g/lタンパク質濃度まで溶解した。
【0111】
硫酸アンモニウム沈殿
次に、多糖類を60%飽和硫酸アンモニウムでのゼラチン/コラーゲンの析出により除去する。ここで多糖類は溶液中に残った。硫酸アンモニウムをゆっくりと4℃で60%飽和まで加えた。60分間の攪拌後、試料を遠心分離した(30分間、4℃、10,000 rpm)。そのペレットを60%硫酸アンモニウムに再懸濁し、再び遠心分離した。1%(w/w)を超える多糖類または糖が残っている場合、硫酸アンモニウムの不存在下でゼラチン/コラーゲンを完全に再溶解した後、上記の完全な硫酸アンモニウム析出法を繰り返した。最後に、ペレットを脱イオン水または緩衝液Aに溶解し、タンパク質濃度を20〜50g/lとした。試料のpHを3.0
に調整した。試料を緩衝液Aに対する透析により脱塩した。該緩衝液は4時間毎に取替えた。排除分子量8kDの再生セルロースの透析膜(Spectra Por (登録商標)、スペクトラム(Spektrum)社)を用いた。透析は、試料の電導度が十分に低い(典型的にはバックグランド上の20〜150 μS.cm-1)と判定されたときの2〜7日後に止めた。電導度は、1mMおよび10mMのKCl溶液(それぞれ140 および1400μS.cm-1)で検量したデジタル電導測定計(ラジオメーター)を用いて測定した。透析に変わるものとして、限外濾過および透析濾過を用いて試料を脱塩し、(任意に)濃縮した。適用可能であれば、生成物を次に高濃度のアセトンによる析出およびアセトンの蒸発により前乾燥し(任意)、最終的に凍結乾燥した。
【0112】
II.陽イオン交換クロマトグラフィーによる精製
陽イオン交換樹脂は、SPセファロースXL(ファルマシア バイオテク)であったが、他の適当な樹脂も用いることができた。精製を、幾つかの規模で行った。よって、XK16カラム(ファルマシア)の25mlベッドを用いた。運転はFPLC(ファルマシア)を用いて行った。ベッドの高さは12.5cmであった。流速は典型的には1ml/分であった。中間規模では、100 mlのベットを用いて、運転はエクタ・エクスプローラー統合ポンプ/プロセッサー/複数バルブ/複数検出器装置(ファルマシア)により調節した。パイロット規模では、インデックス140/200カラム中の2リットルのベッドを用いた。ベッドの高さは少なくとも13cmであった。運転はエクタ・エクスプローラーポンプ/プロセッサー装置(ファルマシア)または他のポンプシステムを用いて行った。流速は50〜100 ml/分以上であった。具体例として、下記の緩衝液系と溶出条件を用いた。緩衝液Xは5mMクエン酸緩衝液(pH3.2)であり、緩衝液Yは1MのNaClを有する5mMクエン酸緩衝液(pH3.0)であった。カラムを2〜5ベッド体積の緩衝液Xで平衡化した。目的タンパク質を、5〜10カラム体積分の0〜0.5 M NaClの直線グラジエントで溶出した。コラーゲンタイプIIIのメインバンドを50〜100 mM NaClで溶出した。コラーゲンタイプIのメインバンドを70mM NaClで溶出し、他のバンドは30〜150 mM NaClで溶出し、それらの理論的等電点と合致した。該カラムを1ベッド容積分の緩衝液Yで洗った。パイロット規模では、プールしたフラクションを脱塩し、例えば80%アセトンを加えることにより濃縮した後に凍結乾燥した。
【0113】
ゼラチン/コラーゲン生成物の特性決定
アミノ酸組成を、非常に低いpHおよび高温で、ペプチド結合をHCl媒介で完全に加水分解した後、アミノ酸を蛍光体で誘導体化し、かつHPLCにより決定した。
【0114】
純粋なコラーゲンから予測されたGlyのパーセントは33%である。これは、産生組換えゼラチンの純度を評価する手段を提供する。ピヒア・パストリスの内因性分泌タンパク質中のGlyのパーセントを補正するために、pPIC9のMut+ 変異体の発酵上清のアミノ酸組成分析を行った。観測されたGlyのパーセントは9%であった。試料の純度はここで下記式により推定することができる。
(Gly(%)−9)/(33−9)=(Gly(%)−9)/24。
【0115】
試料のミリQ水(MilliQ water)への溶解後、下記のアッセイを行った。
【0116】
タンパク質含量は、メルク社のゼラチンを参照として用いて、ピアス社のBCAアッセイにより決定した。
【0117】
タンパク質Mw分布を、SDS−PAGEにより決定した。
【0118】
糖含量はフェノールに基づくアッセイで決定した。試料200 μLを5%(w/w)フェノール200 μLと混合した。Vortexミキサーを用いて完全に混合した後、濃硫酸1mlを加えた。混合後、試料を室温で10分間、続いて30℃で20分間インキュベートした。冷却後、試料の 485nmの光吸収を測定した。デンプン、グルコースおよびスクロースを用いて検量線を作成した。
【0119】
DNA含量は、モレキュラープローブ社の希釈SYBR(登録商標)グリーンI核酸「ゲル」染色(DMSO中10,000×濃度)のアリコートを試料と混合することによって決定した。完全なスペクトル分析後に、励起波長を 490nmに選択し、発光波長を 523nmに選択した。その検量は、内部標準としてわかっている量のDNAをこの同じ混合物に加えることによった。こうして、検量線を作った。さらに、DNA−分解酵素をその後に添加することにより、蛍光シグナルの完全な分解がもたらされることがチェックされた。
【0120】
RNAプラスDNA−含量を定量的に示すものを、次にSYBR(登録商標)グリーンIの代りにSYBR(登録商標)グリーンII「RNAゲルステイン」を用いることにより得られた。完全なスペクトル分析後に、励起波長を490 nmに選択し、発光波長を514 nmに選択した。検量は、既知量のRNAを加えることによった。得られた値が該試料の「RNA」含量を示した。DNAの不存在下では、それは真のRNA含量に対応する。存在する場合、DNAに関連した蛍光はRNA値に影響を与えたかもしれないが、RNAseの最終添加を用いて蛍光に対するDNAおよびRNA由来の寄与を見分けた。
【0121】
試料の電導度を、デジタルラジオメーター電導計を用いて測定して、ミリQ水中の1mM及び10mM KCl溶液がそれぞれ 140μS.cm-1及び1400μS.cm-1の読みを与えることをチェックした。
【0122】
本発明により作られた幾つかのゼラチンバッチの純度に関するデータ(実施例)
GATO4a(col3al)
・約 2.4グラム
・精製
マイクロ濾過、析出(1×アセトン分画(40%/80%)、1×(NH4 2 SO4 )、試料をpH4以下に保つ5mMのCH3 COOH/CH3 COO- 緩衝液(初期pH約3.5 ;25%NH4 OHによりpH3.0 に調整された500 mM酢酸の希釈により調製された緩衝液)に対する透析、凍結乾燥
・DNA:<1ppm(w/w)
・RNA:12.7ppm(w/w)
・全糖類:4.5 %(w/w)
・ゼラチンは精製中分解しなかった(SDS−PAGE:図14)
【0123】
GATO4b(col3al、GATO4aよりもさらに精製されたもの)
・約1グラム
・精製
繰返し(2×追加)硫酸アンモニウム析出後に、試料をpH4以下に保つ5mMのCH3 COOH/CH3 COO- 緩衝液(初期pH約3.5 ;25%NH4 OHによりpH3.0 に調整された500 mM酢酸の希釈により調製された緩衝液)に対する透析、凍結乾燥
・DNA:0.56ppm(w/w)
・RNA:3.2 ppm(w/w)
・全糖類:0.94%(w/w)
・ゼラチンは精製中分解しなかった。
・10gゼラチン/Lで透析後の比電導度約180 μScm-1
(緩衝液の比電導度約100 μScm-1
・凍結乾燥および試料の溶解後の比電導度:10gゼラチン/Lで180 μScm-1、5gゼラチン/Lで100 μScm-1
【0124】
GATO5(col1a1−1)
・約0.9 グラム
・精製
マイクロ濾過、析出(1×アセトン分画(40%/80%)、1×(NH4 2 SO4 )、試料をpH4以下に保つ5mMのCH3 COOH/CH3 COO- 緩衝液(初期pH約3.5 ;25%NH4 OHによりpH3.0 に調整された500 mM酢酸の希釈により調製された緩衝液)に対する透析、凍結乾燥
・DNA:<1ppm(w/w)
・RNA:87ppm(w/w)
・全糖類:4.5 %(w/w)
・ゼラチンは精製中分解しなかった(SDS−PAGE:図15)
【0125】
GATO6(膨張層陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製されたcol3a1)
・約50mg
・精製
pH3〜3.5 での膨張層陽イオン交換クロマトグラフィー(SP−セファロースXL"ストリームライン"樹脂(ファルマシアバイオテック;カラムの副最適洗浄および0.3 MNaClの溶出後の糖含量:1.8 %(w/w))、さらに一回の(NH4 2 SO4 析出による糖の除去後、5mMのNH4 + /CH3 COO- 緩衝液(pH約3.5 )に対する透析、凍結乾燥
・DNA:<1ppm(w/w、すでに(NH4 2 SO4 析出および透析)・RNA:<9ppm(w/w、すでに(NH4 2 SO4 析出および透析)・全糖類:1.1 %(w/w)
・0.55gゼラチン/Lで透析後の比電導度約94μScm-1
(緩衝液の比電導度:約100 μScm-1
・ゼラチンは精製中分解しなかった
【0126】
GATO7(col1a1−2)
・400 mg
・精製
マイクロ濾過、析出(1×アセトン分画(40%/71.5%)、3×(NH4 2 SO4 )、アセトン沈殿による予備脱塩:1×71.5%、1×80%、ミリQ水に対する透析、凍結乾燥
・DNA:0.79ppm
・RNA:9.5 ppm
・全糖類:0.7 %(w/w)
・4gゼラチン/Lで透析後の比電導度約15.5μScm-1
・ゼラチンは精製中分解しなかった
【0127】
GATO8(col3a1)
・約6mg
・精製
マイクロ濾過、希釈、20mMクエン酸、pH3.5 で平衡化させた2.1 リットル層SPセファロース−XL中の陽イオン交換クロマトグラフィー(ファルマシアバイオテック)および同緩衝液中の0.1 〜1MNaClのグラジエントによる0.15MNaClでの溶出、濃縮、80%アセトンによる部分的な脱塩、遠心、ミリQ水への再溶解、ミリQ水に対する透析および凍結乾燥
・DNA:1.55ppm(w/w)
・RNA:10.9ppm(w/w)
・全糖類:1.2 %(w/w)
・透析後の7.5 gゼラチン/Lの比電導度約90μScm-1
・ゼラチンは精製中分解しなかった
図16は精製の結果を示す。
【0128】
GATO9(col1a1−1)
・ 1.7g
・精製:GATO8を参照。陽イオン交換体から0.74M NaClの1つの塩段階での溶出だけが異なる。
・DNA:<1ppm(w/w)
・RNA:1.3 ppm(w/w)
・全糖類:2.2 %(w/w)
・透析後の12gゼラチン/Lの比電導度約70μScm-1
・ゼラチンは精製中分解しなかった
【0129】
GATO10(col1a1−2)ここで両MGPR配列はRGPMに変更した
・6g
・精製:GATO8を参照
・DNA:0.04ppm(w/w)
・RNA:2ppm(w/w)
・全糖類:2%(w/w)
・ゼラチンは精製中分解しなかった
・N末端アミノ酸配列はプロペプチドの不完全な除去のためにN末端伸長としてGlu−Alaを有し、予想された通りであった。
その結果を図18に示す。
【0130】
結論として、すべての試料のアミノ酸組成は理論的組成に合致した。外来タンパク質による不純物は非常に低かった。グリシンベースでは、GATO4−GATO8は不純物として1%未満の外来タンパク質を有している。GATO9およびGATO10は5%未満を有する。
【0131】
実施例1で挙げられた参考文献
[1] Capello, J & Ferrari, F. (1994) in: Plastics from microbes (Mobley,
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[2] Strausberg, R. L. & Link, R. P. (1990) TIBTECH 8: 53-57 。
[3] Maniatis T., Fritsch. E. F. & Sambrook, J. (1982) Molecular cloning: A laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.。
[4] Manual of the Pichia Expression Kit Version E (Invitrogen, San Diego, CA, USA)。
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[6] Sanger, F., Nicklen, S. & Coulson, A. R. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463-5467。
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[9] Laemmli, U. K. (1970) Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4, Nature 227: 680-685。
[10] Schimitt, M. E., Brown, T. A. and Trumpower, B. L. (1990) A rapid and simple method for preparation of RNA from Saccharomyces cerevisiae, Nucleic Acids Res, 18 (10): 3091 。
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[12] Butkowsky R. J., Noelken, M. E. & Hudson, B. G. (1982) Estimation of the size of colagenous proteins by electrophoresis and gel chromatography. Meth. Enzymol. 82: 410-423。
[13] De Wolf, F. A. & Keller R. C. A (1996) Characterization of the helical structures in gelatin networks and model polypeptides by circular dichroism. Progr. Colloid Polym. Sci. 102: 9-14。
【0132】
[実施例2](コントロール)
従来の標準タイプのゼラチンを有する臭化銀結晶の調製
核形成: 2.1g/l標準ゼラチン(PBゼラチンズ社の標準的な脱イオン化IAG骨ゼラチン、テッセンデルロー、ベルギー)および7.3 mM臭化カリウムを含有する反応溶液中35℃の温度で、そのpHを水酸化ナトリウムまたは硫酸により5.5 の値に調整する。一回の噴射添加により、144 mM硝酸銀の水溶液を10秒間一定の速度で、激しい攪拌下、加える。硝酸銀の添加後、反応混合物中のゼラチン濃度は2.0 g/lとなり、臭素化物濃度は1mMとなった。
【0133】
成熟:核形成後、容器の内容物を成熟容器に移し、温度を徐々に75℃まで上げて、3.4 M臭化カリウム溶液を加えて臭化物濃度を15mmol/lに上げる。成熟を56分間続け、その後に標準的な脱イオン化ゼラチンを5g/lの濃度まで加え;58分後に、メチルフェニルテトラゾール溶液を加えて冷却することによりオストワルド成熟を強く低下させる。この調製された乳剤試料を直接透過型電子顕微鏡ならびにそのレプリカにより分析した。
【0134】
結果: 表IIに見られるように、平板状粒子が非常に低い率で形成される。
【0135】
[実施例3](コントロール)
従来の加水分解ゼラチンを用いる臭化銀結晶の調製
核形成: 反応混合物中のゼラチンを従来の加水分解ゼラチン試料(日本のニッタゼラチン社により脱イオン化されて供給されるもの)で置き換えた以外は実施例2と同じ条件(またpH=5.5)を適用することにより核形成を行う。
【0136】
成熟:成熟を実施例2で用いられた同じ操作にしたがって行う。
【0137】
結果:平板状粒子の平均%が約40%であるものが表IIに示されている。
【0138】
[実施例4](コントロール)
酸化ゼラチンを用いる臭化銀結晶の調製
核形成: 反応混合物中のゼラチンを従来の酸化ゼラチン試料(ベルギー、テッセンデルローのPBゼラチンズ社により供給されるもの)で置き換えた以外は実施例1と同じ条件(またpH=5.5)を適用することにより核形成を行う。
【0139】
成熟:成熟を実施例2で用いられた同じ操作にしたがって行う。
【0140】
結果:平均アスペクト比が5:1の平板状粒子%が70%と高い、pH5.5 での酸化ゼラチンに対して表IIに示されている。加水分解され標準のゼラチンによるよりも良好な結果はこのゼラチンの低いメチオニン含量によるものと説明がつく(11μmol/gゼラチン対50〜60μmol/gの従来のゼラチン)。
【0141】
[実施例5](本発明)
発明の天然組換えゼラチンを用いる臭化銀結晶の調製
核形成: 反応混合物中のゼラチンを発明の天然COL3A1ゼラチン試料で置き換えた以外は実施例2と同じ条件(またpH=5.5)を適用することにより核形成を行う。
【0142】
成熟:成熟を実施例2で用いられた同じ操作にしたがって行う。
【0143】
結果:平均アスペクト比が5:1、平板状粒子の%が85%を超える高さのものが表IIに示されている。
【0144】
[実施例6](コントロール)
異なるpHでの従来の標準ゼラチン(ベルギー、テッセンデルローのPBゼラチンズ社の標準的脱イオンIAG骨ゼラチン)を用いる臭化銀結晶の調製
核形成:核形成をpH=7の条件を適用する一方で他の条件を実施例2に維持することで行う。
【0145】
成熟:成熟を、pHを核形成中と同じpH=7に保持する以外は実施例2で用いられた同じ操作にしたがって行う。
【0146】
結果:アスペクト比が5を超える平板状粒子は、従来の市販ゼラチンでは表IIに示されたように得られなかった。
【0147】
[実施例7](コントロール)
異なるpHでの従来の標準ゼラチン(ニッタゼラチンズ、日本)を用いる臭化銀結晶の調製
核形成:核形成をpH=7の条件を適用する一方で他の条件を実施例2に維持することで行う。
【0148】
成熟:pHを核形成中と同じpH=7に保持する以外、成熟を実施例2で用いられた同じ操作にしたがって行う。
【0149】
結果:5%程度の平板状粒子の非常に低い%が表IIで示されたように得られた。
【0150】
[実施例8](本発明)
異なるpHでの発明の天然組換えゼラチンを用いる臭化銀結晶の調製
核形成:核形成を異なるpH条件、すなわちpH=7の条件を適用する一方で他の条件は実施例4に維持することで行う。
【0151】
成熟:pHを核形成中と同じpH=7に保持する以外、成熟を実施例4で用いられた同じ操作にしたがって行う。
【0152】
結果:表IIに示されたように、非常に高い平板状粒子%(約80%、これは最新技術のゼラチンよりも明らかに高い)がこの条件で驚くべきことに見出されている。
【0153】
[実施例9]
結合力と平板状粒子形態との関係
ゼラチン45mgを正確に計り取り、0.1 M硝酸カリウムを含有する0.1 Mリン酸緩衝液(pH=7)15gを加える。この溶液を水浴中、45℃で15分間置く。溶液を室温(23℃)まで冷却する。
(ゼラチンを含有する)このpH7.0 のリン酸緩衝液溶液10mlを23℃で0.5
mM硝酸銀100 μlと混合する。「vAg」と称されるこの溶液のポテンシャルをAg/AgCl参照二重接点電極(Orion モデル90-02)に対するAg電極(Orion モデル97-81)を用いて測定する。ゼラチンのない同じ緩衝液溶液も硝酸銀溶液と混合し、ポテンシャル「vAg」を同一の方法で測定する。二つの測定されたポテンシャル間の違いを計算して、これを、Agイオンに対するゼラチンの結合親和性である「デルタvAg」として表す。下記の表IIは、pH5.5 およびpH7について、試験されたペプタイザー、平板状粒子%およびゼラチン結合親和性「デルタVAg」を有し、ここでは平板状の基準はアスペクト比>5として定義されている。
【0154】
【表2】

* 測定せず。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】ベクターpCOL3A1。
【図2】pCOL3A1構築物コントロール用PCRプライマー。
【図3】予想されたCOL3A1配列。N末端YはpPIC9ベクターに由来する。配列の残りはラットのCOL3A1に由来する。下線を付けた配列はCOL3A1断片について得られたN末端配列に対応する。
【図4】ベクターpCOL3AIK。
【図5】COLIA1のクローニング用オリゴ配列。下の配列はアニーリング後のアダプター。
【図6】クローニング法。
【図7】ベクターpCOL1A1−1。
【図8】予想されたCOL1A1−1配列。一本下線の配列はCOL1A1断片について得られたN末端配列に対応する。二重下線はこの配列を分け合っている。両断片はEAによりN末端で延長する。
【図9】ベクターpCOL1A1−2。
【図10】予想されたCOL1A1−2配列。
【図11】ベクターpCOL1A1−3。
【図12】予想されたCOL1A1−3* 配列。
【図13】予想されたCOL1A1−2配列中のMGPR配列。一本下線の配列はCOL1A1−1断片について得られたN末端配列に対応する。二重下線はMPPR配列である。
【図14】GATO4のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動。ゲルはクーマシーブリリアントブルーで染色された。最も左のレーンにおいて、分子量マーカータンパク質混合物が見える。上から下へ、バンドは分子量94、67、43、30、20.1および14.4kDに対応する。左から第二と第三のレーンは精製後のGATO4を示す。
【図15】GATO5のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動。ゲルはクーマシーブリリアントブルーで染色された。最も右のレーンにおいて、分子量マーカータンパク質混合物が見える。上から下へ、バンドは分子量94、67、43、30、20.1および14.4kDに対応する。右から第二と第三のレーンは精製後のGATO5を示す。
【図16】発現産物col1A1−2のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動。ゲルはクーマシーブリリアントブルーで染色された。最も左のレーンにおいて、分子量マーカータンパク質混合物が見える。上から下へ、バンドは分子量94、67、43、30、20.1および14.4kDに対応する。
【図17】MGPR配列がRGPMに変異された発現産物col1A1−1のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動。ゲルはクーマシーブリリアントブルーで染色された。最も左のレーンにおいて、分子量マーカータンパク質混合物が見える。上から下へ、バンドは分子量94、67、43、30、20.1および14.4kDに対応する。
【図18】MGPR配列がRGPMに変異された発現産物col1A1−2のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動。ゲルはクーマシーブリリアントブルーで染色された。最も左のレーンにおいて、分子量マーカータンパク質混合物が見える。上から下へ、バンドは分子量94、67、43、30、20.1および14.4kDに対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状粒子が全粒子投影面積の75%以上を占める平板状ハロゲン化銀乳剤であって、該乳剤が核形成ペプタイザーの存在下で核化され、その後成長ペプタイザーの存在下で成長したハロゲン化銀粒子を有し、少なくとも一つのペプタイザーが遺伝子工学で調製された実質的に純粋なコラーゲン様材料であり、該ペプタイザーが4個を超える異なるアミノ酸を有するアミノ酸配列を有する、平板状ハロゲン化銀乳剤。
【請求項2】
該ペプタイザーが、4個を超え、さらに10個を超える異なるアミノ酸を有するアミノ酸配列を有する請求項1記載の乳剤。
【請求項3】
ペプタイザーのアミノ酸配列が、天然コラーゲンと40%を超える相同性を示し、好ましくは50%を超える相同性を示す請求項1または2記載の乳剤。
【請求項4】
ペプタイザーが、コラーゲンに関して天然に存在するものと同等であるアミノ酸配列を有し、ここで同等とは天然に存在するものとアミノ酸同一性が少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは同一であることを意味する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項5】
ペプタイザーが、天然に存在するものと実質的に同じアミノ酸配列を有し、ここで実質的とはアミノ酸の変異が5個未満、好ましくは3個未満を意味する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項6】
ペプタイザーが、天然コラーゲンをコードする核酸により調製された実質的に純粋なコラーゲン様材料である、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項7】
ペプタイザーが、コラーゲンタイプI、IIまたはIIIに関して天然に存在するものと実質的に同じアミノ酸配列を有する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項8】
ペプタイザーが、コラーゲンタイプI、IIまたはIIIに関して天然に存在するものと同等であるアミノ酸配列を有する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項9】
ペプタイザーが、コラーゲンタイプI、IIまたはIIIに関して天然に存在するものと同じアミノ酸配列を有する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項10】
コラーゲンタイプIが、図8、10または12またはGenbank寄託番号U08020のアミノ酸配列を有するか、またはそれである、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項11】
コラーゲンタイプIIIが、図3またはEMBL寄託番号X70−369のアミノ酸配列を有するか、またはそれである、前記請求項1〜8のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項12】
ペプタイザーがコラーゲンタイプIに関して天然に存在するものと実質的に同じアミノ酸配列を有し、ペプタイザーが配列[MLIV]XXRおよび好ましくはMGPRを有さない、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項13】
ペプタイザーが、天然コラーゲンをコードする配列由来の一定の長さおよび組成の断片であり、該断片がコラーゲンに特徴的なGXY部分を有し、該断片量がアミノ酸をベースとして少なくとも2.5 kDaであるような長さである、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項14】
ペプタイザーがヒドロキシルプリンを有さない、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項15】
ペプタイザーが脱アミン化されていない、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項16】
ペプタイザーが等電点7〜10である、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項17】
ペプタイザーがアミノ酸をベースとして2.5 〜100 kDaの質量である前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項18】
ペプタイザーがプロコラーゲンおよびテロペプチドを有さない、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項19】
ペプタイザーがらせん構造を有さない、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項20】
ペプタイザーがシステインを有さない、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項21】
ペプタイザーは、該ペプタイザー1グラムあたりのメチオニンの還元力0.1 〜200 マイクロモル、好ましくは0.1 〜120 マイクロモルと等しいレベルで還元アミノ酸であるメチオニン及びヒスチジンが存在する程度に、(酸化)還元アミノ酸を有する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項22】
ペプタイザーは、該ペプタイザー1グラムあたりのメチオニンの還元力0.1 〜80マイクロモルと等しいレベルで還元アミノ酸が存在する程度に、(酸化)還元アミノ酸を有する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項23】
ペプタイザーは、該ペプタイザー1グラムあたりのメチオニンの還元力30〜80マイクロモルと等しいレベルで還元アミノ酸が存在する程度に、(酸化)還元アミノ酸を有する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項24】
ペプタイザーが50mVよりも高い銀への結合力を有する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項25】
ペプタイザーが100 mVよりも低い銀への結合力を有する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項26】
ペプタイザーが50〜100 mVの銀への結合力を有する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項27】
ハロゲン化銀粒子が5を超える平均アスペクト比を示す、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項28】
ペプタイザーが、pH4〜8でのハロゲン化銀平板状粒子形成に対して安定である、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項29】
平板状粒子を、90%を超えるレベル、好ましくは95%を超えるレベルで有する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項30】
ペプタイザーが均質分散性を有する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項31】
ペプタイザーが実質的に純粋な形で存在する、すなわち核酸、多糖類および他のタンパク質を実質的に有さない、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項32】
乳剤が、写真応用に適するものであり、さらに該応用に許容できる化合物、例えば明確に定義された第二の量の成長ペプタイザーを含有する、前記請求項のいずれか1項記載の乳剤。
【請求項33】
平板状粒子が全粒子投影面積の75%以上を占める平板状ハロゲン化銀乳剤の調製方法であって、該方法が核形成ペプタイザーの存在下でハロゲン化銀粒子を核化し、その後成長ペプタイザーの存在下で該ハロゲン化銀粒子を成長させることを有し、両ペプタイザーが一定の量で存在し、少なくとも一つのペプタイザーが遺伝子工学で調製されたコラーゲン様材料であり、該ペプタイザーは4個を超える異なるアミノ酸を有するアミノ酸配列を有する、乳剤の調製方法。
【請求項34】
核形成工程で、および/または粒子成長工程中にペプタイザーを添加することを有し、該ペプタイザーが請求項1〜32、52または53のいずれかに開示された態様のいずれかから選択される、請求項33記載の乳剤の製造方法。
【請求項35】
核形成工程で、および粒子成長工程中の双方でペプタイザーを添加することを有する、請求項33または34記載の乳剤の製造方法。
【請求項36】
核形成工程で、および粒子成長工程中で同一のペプタイザーを添加することを有する、請求項33〜35のいずれか1項記載の乳剤の製造方法。
【請求項37】
請求項1〜32のいずれか1項記載の乳剤を利用すること、または少なくとも一つのハロゲン化銀乳剤層を用いた写真要素生産のためにそれ自体公知の方法で適用されるハロゲン化銀乳剤を得るための請求項33〜36のいずれか1項記載の方法により得られる乳剤を利用することを有し、該層のハロゲン化銀結晶がアスペクト比5以上である、写真要素生産の方法。
【請求項38】
写真要素が、光、レーザーまたはX線照射に感光性のある材料であり、該要素が例えば白黒リバーサルフィルム、白黒ネガフィルム、カラーネガフィルム、カラーリバーサルフィルム、感光性写真成分がデジタルスキャンされたフィルム、白黒反転紙、白黒紙、カラー紙、反転カラー紙、感光性写真成分がデジタルデータベースからのレーザー照射により感光された紙から選択される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
請求項37または38記載の方法にしたがって得られる写真要素。
【請求項40】
0.95グラム/リットルを超える程度までの微生物によるコラーゲン様ポリペプチドをコードする核酸配列の発現を有する組換えコラーゲン様ポリペプチドの製造方法であって、該組換えコラーゲンがらせん構造を有さず、好ましくは該発現が大腸菌またはサッカロミセス・セレビシアエ以外の微生物で起こる、組換えコラーゲン様ポリペプチドの製造方法。
【請求項41】
発現が3グラム/リットルを超える、請求項40記載の方法。
【請求項42】
組換えコラーゲン様ペプチドが請求項1〜32、52または53に開示された態様のいずれかから選択される、請求項40または41記載の方法。
【請求項43】
微生物が発現産物を分泌することができる、請求項40〜42のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
微生物が真菌細胞、好ましくは酵母細胞である、請求項40〜43のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
微生物が、コラーゲン様配列を原繊維へ処理するための活性のある翻訳後プロセッシング機構を持たない、請求項40〜44のいずれ1項記載の方法。
【請求項46】
微生物が、コラーゲン様配列を三重らせんへ処理するための活性のある翻訳後プロセッシング機構を持たない、請求項40〜45のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
発現される核酸配列が、プロコラーゲンおよびテロペプチドをコードする配列を有さない、請求項40〜46のいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
微生物が、ハンセヌラ、トリコデルマ、アスペルギルスおよび好ましくはピヒア・パストリスからなる群から選択される請求項40〜47のいずれか1項記載の方法。
【請求項49】
組換えコラーゲンが、発現宿主細胞で活性のあるプロテアーゼのプロテアーゼ切断部位を持たないアミノ酸配列を有する、請求項40〜48のいずれか1項記載の方法。
【請求項50】
発現産物が単離され、他のタンパク質、多糖類および核酸を実質的に有さなくなるまで精製される、請求項40〜49のいずれか1項記載の方法。
【請求項51】
発現産物を単離し、核酸の量100 ppm未満、多糖類の量5%未満、適切にはRNAの量10ppm未満、適切には、最も適切なDNAの量1ppm未満になる程度まで少なくとも精製される、請求項40〜50のいずれか1項記載の方法。
【請求項52】
ペプタイザーが、天然コラーゲンに対して40%を超える相同性を示すアミノ酸配列を有し、4個を超える異なるアミノ酸タイプを有する、遺伝子工学により調製された実質的に純粋なコラーゲン様材料。
【請求項53】
請求項1〜32のいずれか1項で定義される組換えコラーゲン化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−45069(P2009−45069A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−265227(P2008−265227)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【分割の表示】特願平10−378430の分割
【原出願日】平成10年12月24日(1998.12.24)
【出願人】(505232782)フジフィルム マニュファクチャリング ユーロプ ビー.ブイ. (50)
【Fターム(参考)】