説明

写真計測に用いるカメラ位置解析用ポインタ

【課題】 ポイントを3次元(立体)に配設して、解析のための基準尺を3次元方向に設定することで、高い精度で理想的なカメラ位置解析ができ、又、ポイントの目見当による指示が容易かつ正確にでき、しかも、8点のポイントを設定できるようにした写真計測に用いるカメラ位置解析用ポインタの提供。
【解決手段】 棒材で直方形に形成された枠体1を備え、この枠体の8ヶ所の角部に中心をポイントとした球体2が取り付けられ、左右に隣り合う球体のポイント間距離L1と、前後に隣り合う球体のポイント間距離L2と、上下に隣り合う球体のポイント間距離L3が、それぞれ基準尺として設定されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地形、構造物等の形状を計測するための写真計測に用いるカメラ位置解析用ポインタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地形や構造物の形状をカメラ(デシタルカメラ)によって撮影した写真画像を基に計測を行う写真計測技術が知られている。
例えば、崖崩れ現場の地形を計測する場合を例に採って説明すると、2次災害のおそれがある崖崩れ現場は、そこに人が立ち入れないことから、カメラ位置の3次元座標を取得するための基準点用ターゲットを崖崩れ現場に持ち込めないし、崖崩れ現場から離れた位置から写真撮影を行う必要がある。
【0003】
このような場合、被計測現場とカメラとの間に、長さの基準となる基準尺部材を配置させ、この基準尺部材を写し込むように異なる2ヶ所の位置から被計測現場を写真撮影する。
次に、撮影した写真画像をコンピュータの写真計測用ソフトに取り込み、2枚の写真画像上で8点以上の同一点を指示して、カメラ位置の解析を行うものである。
このとき、指示する8点以上の同一点は、被計測現場の特徴点(例えば、石や瓦礫、構造物の角など)と、基準尺部材に設けたポイントを指示し、このポイント間距離を基準尺として写真計測用ソフトに入力するもので、これを基にカメラ位置の解析を行うことができる。
そして、最後に、2枚の写真画像上において、被計測現場の同一の特徴点同士を指示することで計測ができるもので、前記したように、距離を拘束した状態で前記カメラ位置解析を行っているため、実距離で計測することができる。
【0004】
従来、上記のような写真計測に用いる基準尺部材として、L字型に連結した2本の柱状部材に、円板によるポイントを等距離間隔で取り付け、このポイント間距離を基準尺としたものが知られている(特許文献1参照)。
この基準尺具は、2本の柱状部材によってL字型に形成されているため、ポイントを2次元(面)にしか配置することができず、基準尺も2次元方向に設定されてしまう。
【0005】
写真計測の精度を向上させるには、カメラ位置を正確に解析することが必要とされるが、このためには、ポイントを左右方向、前後方向、上下方向の3次元(立体)に配設して、解析のための基準尺を3次元方向に設定することが理想的といえる。
このことから、従来のように、基準尺を2次元方向にしか設定できないものは、精度の高い解析ができないという問題があった。
【0006】
又、従来の基準尺部材は、ポイントが円板の中心に設けられているため、この円板が写真画像上で楕円形に表示されることが多く、その中心に設定されたポイントを目見当で指示する場合に、正確にポイントを指示することが難しいといった問題があった。
【0007】
又、写真計測の精度を向上させるには、少なくとも8点以上のポイントが必要とされるが、被計測現場によっては基点として設定する特徴点が少ない場合があり、写真撮影の角度によっては8点以上のポイントを見出すことができず、写真撮影をやり直さなければならないといった問題もあった。
【特許文献1】特開2000−111342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポイントを3次元(立体)に配設して、解析のための基準尺を3次元方向に設定することで、高い精度で理想的なカメラ位置解析ができ、又、ポイントの目見当による指示が容易かつ正確にでき、しかも、8点のポイントを設定できるようにした写真計測に用いるカメラ位置解析用ポインタを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明(請求項1)のカメラ位置解析用ポインタは、
棒材で直方形に形成された枠体を備え、この枠体の8ヶ所の角部に中心をポイントとした球体が取り付けられ、左右に隣り合う球体のポイント間距離と、前後に隣り合う球体のポイント間距離と、上下に隣り合う球体のポイント間距離が、それぞれ基準尺として設定されている構成とした。
【0010】
又、本発明(請求項2)のカメラ位置解析用ポインタは、請求項1記載のカメラ位置解析用ポインタにおいて、
このカメラ位置解析用ポインタの水平姿勢を計るための水平器と、このカメラ位置解析用ポインタを水平姿勢に調整するためのアジャスタが設けられている構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカメラ位置解析用ポインタ(請求項1)は、直方形に形成した枠体の8ヶ所の角部に球体を取り付け、この球体の中心をポイントとし、左右に隣り合う球体のポイント間距離と、前後に隣り合う球体のポイント間距離と、上下に隣り合う球体のポイント間距離を、それぞれ基準尺として設定した点に特徴がある。
【0012】
このように、直方形に形成した枠体を用いたので、ポイントを3次元(立体)に配設して、解析のための基準尺を3次元方向に設定することができ、高い精度で理想的なカメラ位置解析ができる。
又、8ヶ所に取り付けた球体によって8点にポイントを設定できるし、しかもポイントを球体の中心に設けたので、目見当であってもポイントを容易かつ正確に指示させることができる。
【0013】
又、本発明のカメラ位置解析用ポインタは、例えば、座標系を変換させる場合等、場合によっては水平に設置させる必要が生じるもので、この場合、水平器で水平度を確認しながらアジャスタによって水平に設置させることができる(請求項2)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は第1実施例のカメラ位置解析用ポインタを示す斜視図である。
このカメラ位置解析用ポインタAは、棒材10(明細書において、棒材を総称する場合は符号10を付す)で直方形に形成された枠体1と、この枠体1の8ヶ所の角部に取り付けられた8個の球体2とで形成されている。
【0015】
前記枠体1は、左右方向に延在する上下4本の棒材10aと、前後方向(奥行方向)に延在する上下4本の棒材10bと、上下方向に延在する4本の棒材10cとの合計12本の棒材10を、直方形に枠組みすることで形成されている。
この場合、正面枠形状、側面枠形状、平面枠形状は、正方形でも長方形でもよく、全ての面の枠形状を正方形にした立方形に枠組みしてもよい。
【0016】
前記球体2は、前記枠体1の8ヶ所の角部に取り付けられるもので、その中心をポイントとし、左右に隣り合う球体のポイント間距離L1と、前後に隣り合う球体のポイント間距離L2と、上下に隣り合う球体のポイント間距離L3が、それぞれ基準尺として設定されている。
【0017】
なお、前記棒材10及び球体2の材質は、プラスチックや軽金属等、耐侯性に優れ、軽量なものが好ましいが、これに限定されない。
又、棒材10の色彩や直径や長さ、球体2の色彩や直径や色彩についても適宜に決定できるもので、通常は、写真画像上で目立つような色に着色し、持ち運びに支障がないようなサイズに形成する。
【0018】
このカメラ位置解析用ポインタAを用いて写真計測を行う場合の手順を簡略に説明する。
先ず、カメラ位置解析用ポインタAを被計測現場とカメラとの間に配置させ、このカメラ位置解析用ポインタAを写し込むように異なる2ヶ所の位置から被計測現場を写真撮影する。
次に、撮影した写真画像をコンピュータの写真計測用ソフトに取り込み、2枚の写真画像上で8個の球体2それぞれについて、その中心であるポイントを目見当によって指示する。
次に、ポイント間距離L1、L2、L3を入力し、距離を拘束した状態でカメラ位置解析を行うもので、このように左右方向、前後方向、上下方向の3次元方向のポイント間距離L1、L2、L3を入力することから、高い精度で理想的なカメラ位置解析ができる。
その後、実際に実測すべき2点間の距離を、2枚の写真画像上において被計測現場の同一の特徴点同士を指示することで計測することができる。
【0019】
なお、写真計測に際し、カメラ位置解析用ポインタAの数は、1個でも可能であるが、被計測現場(被写体)が遠い場合にはカメラ間の距離と角度をおおきくした方がより正確に計測することができる。
この場合、写真画像上にカメラ位置解析用ポインタAが小さく写り込んでしまうため、ポイント間距離が近くなりすぎて計算が正しく行われないことがある。又、解析のためのポイントは、写真画像の歪みを考慮して写真画像全体にまんべんなく写り込ませることが好ましい。これを補うためには、カメラ位置解析用ポインタAを複数ヶ所に設置させるのがよい。
ただ、被計測現場(被写体)が近距離の場合や精度がラフでよい場合には、カメラ位置解析用ポインタAを1ヶ所に設置すれば足りる。
又、複数ヶ所にカメラ位置解析用ポインタAを設置する場合、このカメラ位置解析用ポインタAが写真画像に写り込んでいればよく、カメラ位置解析用ポインタA,A相互の水平や距離を考慮する必要はない。
【0020】
次に、図2は第2実施例のカメラ位置解析用ポインタを示す斜視図である。
このカメラ位置解析用ポインタAは、水平器3と、アジャスタとしての調節ねじ4が設けられている。
前記水平器3は、カメラ位置解析用ポインタAの水平姿勢を計るためのもので、水平に延在して直角をなす2本の棒材10a,10bにそれぞれ取り付けられている。
【0021】
前記調節ねじ4は、カメラ位置解析用ポインタAを水平姿勢に調整するためのもので、下端に配置された4個の球体2の下面に、脚を形成するよう下向きに延在して取り付けられ、この調節ねじ4を回転させることに伴うねじ込み深さの変化によって高さを調整するようになっている。
【0022】
写真計測に際し、場合によっては、カメラ位置解析用ポインタAを水平姿勢に設置させる必要が生じるもので、この場合、水平器3,3で水平姿勢を確認しながら調節ねじ4によって水平姿勢に設置させることができる。
このようにカメラ位置解析用ポインタAを水平姿勢に設置させた場合、カメラ位置解析後に水平部分、垂直部分を指示することで、座標系の変換を行うことができる。
【0023】
次に、図3は第3実施例のカメラ位置解析用ポインタを示す斜視図、図4はこのカメラ位置解析用ポインタを三脚に取り付けるための支持台を示す斜視図である。
【0024】
このカメラ位置解析用ポインタAは、三脚5の上に取り付けられている。
三脚5の上端に設けたベース50の上に、2枚の板材60,60で十字状に形成した支持台6を取り付け、前記板材60の両端部に形成した溝61の内部に前記枠体1を形成する棒材10a,10bを嵌め込むことで、この支持台6上にカメラ位置解析用ポインタAを取り付けるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施例のカメラ位置解析用ポインタを示す斜視図である。
【図2】第2実施例のカメラ位置解析用ポインタを示す斜視図である。
【図3】第3実施例のカメラ位置解析用ポインタを示す斜視図である。
【図4】カメラ位置解析用ポインタを三脚に取り付けるための支持台を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 枠体
10a 棒材
10b 棒材
10c 棒材
2 球体
3 水平器
4 調節ねじ(アジャスタ)
5 三脚
50 ベース
6 支持台
60 板材
61 溝
A カメラ位置解析用ポインタ
L1 ポイント間距離
L2 ポイント間距離
L3 ポイント間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒材で直方形に形成された枠体を備え、この枠体の8ヶ所の角部に中心をポイントとした球体が取り付けられ、左右に隣り合う球体のポイント間距離と、前後に隣り合う球体のポイント間距離と、上下に隣り合う球体のポイント間距離が、それぞれ基準尺として設定されていることを特徴とする写真計測に用いるカメラ位置解析用ポインタ。
【請求項2】
請求項1記載のカメラ位置解析用ポインタにおいて、
このカメラ位置解析用ポインタの水平姿勢を計るための水平器と、このカメラ位置解析用ポインタを水平姿勢に調整するためのアジャスタが設けられているカメラ位置解析用ポインタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−89362(P2008−89362A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268851(P2006−268851)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(505092197)大成管理開発株式会社 (4)