説明

冶金級シリコンを精錬してソーラー級シリコンを生産するための方法及び装置

冶金級シリコンを精錬して、光電池に使用するためのソーラー級シリコンを生産する方法及び装置。真空炉内の坩堝は、冶金級シリコンと、二珪化カルシウムのような還元剤との混合物を受け取る。この混合物は、炉内の非酸化状態においてアルゴンの分圧のもとで溶融する。溶融の後に、アルゴンの分圧を下げて沸騰を生じさせ、このプロセスは、方向性凝固で終了する。このプロセスは、リンのような不純物を、ソーラー級シリコンに適合するレベルまで減少し、他の不純物も著しく減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーセルに使用するためのシリコンの生産に係り、より詳細には、種々の不純物を除去し、冶金級シリコンを精錬して、ソーラーシリコン光電池に使用するためのシリコンを生産できるプロセスに係る。
【背景技術】
【0002】
ソーラーエネルギーを電気に変換することが長年の目的となっている。この技術を具現化するための目玉候補は、シリコン光電池によりソーラーエネルギーを電気に直接変換することである。この技術は、実現可能な代替電源となり得るソーラーシリコン光電池が入手できるレベルまで進歩した。
【0003】
しかしながら、今日まで、ソーラーシリコン光電池は、コスト高であり、送電網と競合して電気を発生する商業的経済的ベースで入手することはまだできない。従って、ソーラーエネルギーシステムは、著しくコスト高のままで、現在のところ、主要な石油、石炭、天然ガス及びプロパンの発電システムに対する費用効果の高い代替手段を構成するものではない。
【0004】
本発明を理解する目的で、商業的に入手できるシリコンは、3つの形態又は等級で入手することができ、その各々は、異なるレベルの不純物及び製造コストによって特徴付けられる。冶金級シリコン(以下、“MG−Si”)は、不純物が10000ppmwの範囲であり、不純物に対して最小制限範囲を有する。又、これは、購入するのに最も安価で、現在の価格で約$3/kgで入手できる。電子級シリコン(以下、“EG−Si”)は、不純物に対する最高制限範囲が1ppbwの範囲である。それ故、EG−Siは、購入するのに最も高いものでもある。過去のEG−Siの販売価格は、$150/kgまでであり、現在の販売価格は、その金額の3倍までである。
【0005】
ソーラーシリコン(以下、“SoG−Si”)は、不純物範囲が1ppmwの範囲で、現在、約$75ないし$250/kgの価格で入手できる。ソーラーエネルギーシステムが、送電網に対して商業的に競合する代替電源であるためには、SoG−Siのコストを著しく下げねばならず、例えば、約$30/kgまで下げねばならないと推定される。
【0006】
ホウ素、リン、鉄及びアルミニウムは、SoG−Siの効率的な生産に対して大部分の障害を与える4つの不純物であることが現在認識されている。公式な規格はまだないが、ホウ素、鉄、リンの不純物を次のように伴うシリコンを生産することが目標であると思われる。

表1
【0007】
SoG−Siを生産するための初期の1つの提案が、回転溶融を使用してシリコンインゴットを成長させる方法を述べたシュミッド氏等のWO90/03952号に見られる。この発明の目的は、熱交換方法を使用して光電池級シリコンを生産することである。そこに開示された方法は、4つのプロセス、即ち(1)シリカ坩堝における真空操作により促進される不純物の気化、(2)シリカでのスラジング及び湿った水素及び/又は塩素でのガス吹き付けによる不純物の反応の除去、(3)制御された方向性凝固により促進される不純物の分離、及び(4)非溶解性粒子の遠心分離、を含む。このシステムは、30トール未満の真空で動作し、0.1トールの真空が最適である。それにより得られる材料は、複数の生産プロセスが必要とされるので、依然として高価である。
【0008】
米国特許第4,094,731号は、鉄濃度の減少されたシリコンを生産する装置及びプロセスを開示している。この装置は、炭素坩堝と、炭素棒撹拌器と、窒素ガス注入器と、混合物がその共融温度に到達する前にマザー溶液をデカント処理するための柄杓とを組み込んでいる。成長するシリコン結晶を伴う型の壁と、溶融マザー溶液との間の動きにより、シリコン結晶の露出された成長表面がマザー溶液で連続的に洗浄される。共有温度に到達する前にマザー溶液をカントすることで、元のマザー溶液の重量の約60%で且つ外側及び内側ゾーンを有する中空の柄杓状のシリコンインゴットが残される。外側及び内側ゾーンは、破棄されて、鉄濃度の減少された環状の結晶部分が残される。
【0009】
米国特許第4,124,410号は、鉄及びアルミニウム不純物のレベルを減少するためのプロセスを開示している。このプロセスにおいて、溶融アルミニウムにおけるMG−Siの溶液から、本質的に鉄のないシリコン小板が沈殿する。このプロセスは、次いで、精錬された小板をシリカスラッジと接触状態で溶融し、その精錬されたシリコン/スラッジ溶融物を方向性凝固させる。1つ以上の溶融物を使用して、最終的製品が形成される。
【0010】
米国特許第4,246,240号及び第4,256,717号は、鉄不純物を減少するための更に別のプロセスを開示している。このシリコン精製プロセスは、溶融したシリコンリッチな材料から熱を抽出し、結晶形態のシリコンを含む個体相と、濃縮不純物を伴う溶融相とを与える。溶融相は、個体相から分離される。個体相は、次いで、不純物を含む溶媒金属を結晶から除去するために再溶融される。再溶融された材料の少なくとも一部分が結晶から分離される。関心のある金属は、スズ、亜鉛、アルミニウム、銀、及び鉛である。この特許は、リンの除去に関する問題を認識し、溶融状態のシリコンリッチ合金を、Cl2、COCl2及びCCl4のような塩素源で処理することによりレベルを下げることを提案している。
【0011】
2006年リンチ氏等により出願された国際公告WO2007/127126号に説明された1つの一般的な解決策は、MG−SiをEG−Siに変換する間にホウ素及びリンを除去するように設計される。より詳細には、リンチ氏の参照文献は、オキシニトライドスラッジを生成するために溶融シリコンにアルミニウム及びフラックス剤(Al23、SiO2、CaO及びMgO)を添加するプロセスを説明している。このスラッジは、溶解したホウ素及びリンに対してシンクとして働くと述べられている。窒素は、溶融シリコンを通して気泡化される。アルミニウムは、アルミニウム金属として又はAl23として添加することができる。通常、ホウ素及びリンの精錬反応を生じさせるために、シリコンを最初に還元しなければならない。このプロセスに続いて、酸化精錬、SiC沈殿、シルグレインプロセス、及び方向性凝固を行って、他の不純物を除去し、ソーラーセルに使用するためのシリコンを生産する。このプロセスの別の態様では、窒素含有コンパウンド及びアルミニウム含有コンパウンドで形成された粒状ベッドに溶融シリコンが通される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記プロセスの各々が許容不純物レベルでSoG−Siを生産できる程度で、各プロセスは複雑であり、実施費用が高くなる。
【0013】
従って、SoG−Si材料のための製造コストは、ソーラーシリコン光電池に使用するための商業的に実現可能なシリコンの生産を可能にする価格目標を越える。ソーラー光電池発電システムの構造及び動作を、送電網に配送される従来の電気エネルギーに対し商業的に実現可能な代替手段にすることのできる製造コストで、MG−SiをSoG−Siへ変換するプロセスが要望される。
【0014】
そこで、本発明の目的は、SoG−Siを生産するための方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、MG−SiからSoG−Siを生産するための方法を提供することである。
【0016】
本発明の更に別の目的は、許容不純物レベルでMG−SiからSoG−Siを生産するための方法を提供する。
【0017】
本発明の更に別の目的は、許容不純物レベルでSoG−Siを費用効果的に生産することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の1つの態様によれば、加熱ゾーンを含むリアクタで冶金級シリコンを精錬して不純物を除去する方法は、少なくとも1つの不純物を還元するための還元コンパウンドを選択し、その選択された還元コンパウンドとシリコンを混合することを含む。次いで、シリコン及び還元コンパウンドの混合物を、低い圧力及び高い温度のもとで非酸化環境において精錬する。その後、精錬された混合物を冷却して、方向性凝固を促進する。
【0019】
本発明の別の態様によれば、冶金級シリコンを精錬して不純物を除去する装置は、冶金級シリコンと、少なくとも1つの不純物に対する還元コンパウンドとの混合物を受け取るための坩堝を備えている。
【0020】
坩堝は、リアクタに入れられる。環境コントローラは、精錬プロセス中に前記リアクタ内に低い圧力の非酸化環境を確立する。坩堝内の精錬された材料は、方向性凝固を受けながら冷却される。精錬及び方向性凝固の間に不純物の分離が生じる。
【0021】
特許請求の範囲は、本発明の要旨を特に指摘し明確に主張している。同様の部分が同じ参照番号で示された添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより本発明の種々の目的、効果及び新規な特徴がよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のプロセスの一部分を具現化するように構成された装置のブロック図である。
【図2】本発明を具現化するプロセスの一実施形態のフローチャートである。
【図3】本発明のプロセスの別の部分を具現化するように構成された図1の装置のブロック図である。
【図4】本発明による処理の前後におけるシリコン中の不純物濃度を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の発端は、MG−Si中のリンの不純物レベル(≒26ppmw)をSoG−Si用途に満足なレベル(<1.0ppmw)へ減少するための経済的プロセスを定義する努力であった。カルシウム系の還元剤がMG−Si中のリン不純物と相互作用するとした場合に、ガス状のリン複合体を真空により除去できると仮定された。又、MG−Si中の不純物と相互作用して満足な結果を得るには、カルシウムが非酸化環境及び非酸化坩堝内になければならないことも理論付けられた。以下に説明するように、本発明の装置及びプロセスは、リンの不純物を、SoG−Si要求より低いレベルに除去した。又、この装置及びプロセスは、他の不純物も著しく除去し、多数の最終的不純物は、商業的に受け入れられるSoG−Siのための現行要求を満足するものであった。
【0024】
図1は、このプロセスを遂行するための装置又はリアクタ10を示す。このリアクタ10は、前記米国特許第7,344,596号に示されたリアクタの変形である真空密シリンダ又は容器11を備えている。真空ポンプアッセンブル12は、シリンダ11の内部を排気するもので、真空ポンプ12P、真空制御用の測定値を与える真空ゲージ12G、及び真空バルブ12Vと共に概略的に示されている。
【0025】
真空密チャンバー11は、多数の既知の手段又は構造物により加熱ゾーン16を支持する。この実施形態では、絶縁体15は、絶縁された加熱ゾーン16を形成し、グラファイトフェルト(gfelt)のようなグラファイト系材料で構成される。加熱ゾーン16は、グラファイト抵抗ヒータ17を備え、リード線20が電源21へと延びている。少なくとも1つの高温計22が、窓23A及びポート23Bのような窓及びポートを通してプロセス温度を測定し、プロセス制御のための温度制御信号を与える。支持ロッド24は、適切に構成された坩堝25が載せられるグラファイトブロック27を支持する。坩堝25は、精錬プロセスに使用される材料の混合物26を収容する。抵抗ヒータ17が坩堝25を取り巻いている。
【0026】
坩堝25は、精錬プロセス中に酸化物と反応しないように構成されるのが重要である。好ましい別の態様として、坩堝25は、非酸化物材料で構成された保護ライナー29と共に、グラファイト又は他の適当な材料で構成することができる。更に別の態様として、坩堝25は、窒化シリコンコーティングのような非酸化物材料のコーティングで構成することもできる。更に別の態様として、坩堝25全体を、シリコンを汚染することのない非酸化物材料で構成することもできる。
【0027】
又、図1の装置は、支持ロッド24に装着されて図1及び3に示す位置の間で移動できる絶縁パック28を含む熱交換システムも備えている。絶縁パック28を下げると、良好な方向性凝固のために精錬された材料から熱をある方向に抽出することができる。即ち、熱交換システムは、液体及び固体に熱勾配を生じるように動作して、柱状の粒子を成長させるべく液体に対して凸状界面を形成し、これは、不純物を個体/液体界面において液体へと効率的に分離する。
【0028】
本発明の別の態様によれば、不活性ガスシステム30は、空洞16を含む真空密容器11によって画成された容積部へ不活性ガスを供給する。このシステムは、供給タンク31又は他の供給源を備えている。プログラム可能なバルブ32及び流量計33を使用して、リアクタ10へのガス流量を制御する。又、リアクタ10は、ビューポート35も備えている。このビューポートは、オペレータが窓36A及びポート36Bを通して坩堝25の中身を直接見ることができるようにする。このようなビューポートは、この技術で良く知られている。
【0029】
コントローラ34は、真空システムのためのインターフェイス34Vと、電源システムのためのインターフェイス34Pと、不活性ガスシステムのためのインターフェイス34Gとを備えている。基本的に、コントローラ34は、図1及び2を参照して以下に述べるように、精錬プロセス40のパラメータを監視し制御する。
【0030】
より詳細には、シリコン精錬プロセス40は、ステップ41において、リアクタ10を不活性環境で且つ真空下で動作する準備をすることにより開始される。即ち、リアクタ10におけるカルシウムと不純物との間の相互作用の可能性を最小にするためのステップが行われる。例えば、リアクタ10は、坩堝25及び他のコンポーネントが清潔であることを保証することにより準備される。ステップ42において、MG−Siと選択された還元コンパウンドとの混合物26が坩堝25に添加され、次いで、坩堝がステップ43においてリアクタ10へ装填される。このとき、絶縁パック28は、図1に示す上方位置へ上げられる。
【0031】
ステップ44及び45において更に別のコンディショニングが行われる。ステップ44は、真空システムを付勢して真空レベルを最初に確立し、次いで、リアクタ10をアルゴンのような不活性ガスでパージして、水蒸気のような汚染物を環境から除去する。パージプロセスは、リアクタを排気することにより完了され、その後、ステップ45において、加熱ゾーンの温度が上げられる。初期条件が確立されると、ステップ46は、不活性ガスを、1100℃ないし1200℃の所定温度において50ないし100ミリバールの圧力までリアクタ10に埋め戻して、二珪化カルシウムの揮発を防止する。
【0032】
次いで、ステップ47において、コントローラ34は、温度を制御された仕方で混合物26の融点より高く上昇させる。坩堝25の中身が溶融すると、ステップ50は、図1に示すように、坩堝25内の液体の気泡が観察されるまで圧力を制御された仕方で下げ始める。ステップ51の間に、制御システム40は、揮発反応の存在を指示する気泡作用又は泡立ちを監視しながら、温度を融点より高く維持する。ステップ52は、一定の気泡又は泡立ち率を維持しながら、圧力を下げ(即ち、真空を上げ)始める。このプロセスは、泡立ち作用が終了して揮発反応の終わりを指示するまで、続けられる。ある時間の後に、ステップ53は、ステップ54へ制御を移行し、これにより、制御された速度で絶縁パック28が下げられて、上述したように且つ図4に示すように、坩堝25の液体中身の方向性凝固を与える。
【0033】
実施例
この実施例では、図4に定義されたMG−Si組成物が、二珪化カルシウム(CaSi2)をカルシウム系還元剤として使用して精錬された。ステップ41は、加熱ゾーン16における汚染物を除去することによりリアクタ10の準備を行った。
【0034】
ステップ42において、坩堝25に、図4の欄Aに示す不純物元素を有する300グラムのMG−Siと、二珪化カルシウム(CaSi2)をシリコンの25重量%まで、充填した。ステップ43において、坩堝25をリアクタに装填した後に、ステップ44において、真空ポンプ12を付勢して、リアクタ10を約0.032ミリバールまで排気した。ステップ45は、抵抗ヒータ17により温度を1170℃に上昇させ、次いで、ステップ46は、ガス源31がリアクタ10を不活性ガスで埋め戻せるようにする。この実施例では、リアクタを約60ミリバールに埋め戻すためにアルゴンが選択された。
【0035】
これらの条件に到達すると、コントローラ34は、ステップ47において、坩堝の中身を溶融するために、加熱ゾーン16の温度を1473℃に上昇させた。次いで、ステップ50は、リアクタ10の圧力をゆっくりと下げた。ステップ51の観察を使用して、ステップ52において約0.002ミリバール/分の制御された割合で圧力を下げると、坩堝25における気泡が制御されることが分かった。
【0036】
坩堝の中身が約1.5時間後に静止状態になると、圧力が約0.374ミリバールに下げられた。より詳細には、コントローラ34は、圧力を下げ続けながら温度を約1500℃に上げた。約14.5時間後に、圧力は、0.106ミリバールに下がった。プロセスが完了すると、ステップ53は、ステップ54へ動作を転換し、その際に、絶縁パック28及びブロックが図3に示す位置へ下げられ、坩堝の中身の方向性凝固が開始された。
【0037】
図4は、実施例1で生成されたシリコンの分析結果を示す。より詳細には、図4は、元素(欄A)と、処理の前のMG−Si(欄B)におけるその元素の濃度とを示す。一般的に述べると、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、硫黄(S)、塩素(Cl)、カリウム(K)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、砒素(As)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ランタン(La)、カルシウム(Ca)、及びネオジム(Nd)の不純物レベルが欄C及びDに示すように減少され、欄Cに示された多くの元素の濃度は、欄Eの要件より低かった。
【0038】
方向性凝固の間に、坩堝内の最も下の又は底部の材料が最初に凍結し、これは、図3に参照番号26Fで示されている。材料が上方に次第に凍結するにつれて、不純物が液体26Lへと分離する。方向性凝固ステップが完了すると、不純物が凝固中に液体から除去されない限り、頂部又は「最後に凍結する」部分の不純物の濃度(欄D)は、底部又は「最初に凍結する」部分の不純物の濃度(欄C)より高くなければならない。例えば、「最初に凍結する」シリコンにおける鉄の濃度が4.3ppmwの場合に、「最後に凍結する」シリコンでは640ppmwの濃度より著しく低く、これは、2617ppmwの出発濃度より充分低い。鉄の分離はシリコンでは非常に高く、そして凍結する最後の材料の濃度は、凍結する最後のシリコンへの分離のために、出発シリコンにおける2617ppmwより高くなければならない。それ故、明らかに、精錬プロセス中にシリコンから鉄が除去された。
【0039】
多数の元素は、このパターンをたどる。例えば、リンは、初期濃度が26.2ppmw(欄B)で、最終濃度が0.51ppmwで、そして欄C及びDに各々示す「最初に凍結する」及び「最後に凍結する」サンプルでは0.013ppmwであった。これらの値は、元の材料における全てのリンを考慮したものではない。ホウ素、アルミニウム、マグネシウム、塩素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、砒素、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ウラニウム、ナトリウム、及びカリウムも、精錬プロセスの結果として除去された。一般的に述べると、精錬されたシリコンにおけるこれら不純物の合計レベルは、元のシリコンにおける合計レベルより低かった。それ故、グラファイトの坩堝及びアルゴンガスにより画成された非酸化環境内、並びに真空中、二珪化カルシウム(CaSi2)の存在中における溶融の組み合わせで、MG−Siからのゲッター作用によりこれら不純物が除去されたと仮定される。
【0040】
従って、本発明の精錬プロセスは、MG−Siに最初に見られたものから不純物レベルを著しく減少したシリコンを生産したことが明らかであろう。又、この処理は、入手容易な材料と、従来提供されたものより簡単且つ低コストのプロセスとを伴うことが明らかであろう。前記実施例の全ての不純物がSoG−Siの現行要件を満足するのではないが、プロセスの変更で、現行要件を満足する最終製品を生産できることが明らかである。このような変更は、例えば、還元材料とMG−Siの最初の比を変え、及び/又は精錬プロセス中にその比を高くし、及び/又は異なる還元材料を使用し、及び/又は処理中に圧力を下げ、及び/又は低い圧力での処理時間を増加することを含む。更に別の変更は、中身を再処理してメルトストック(meltstock)又はインゴットを生産することである。別の解決策は、前記実施例で示された材料の「最後に凍結する」部分を除去し、次いで、シリコンの残り部分を再処理してメルトストック又はインゴットを生産することである。従って、本発明は、現在の精錬プロセスより低い価格点でSoG−Siを提供するという目的を達成する。
【0041】
以上、幾つかの実施形態について本発明を開示した。本発明の範囲から逸脱せずにここに開示した装置に対して多数の変更がなされることが明らかであろう。それ故、本発明の真の精神及び範囲内に含まれるこのような全ての変更や修正は特許請求の範囲により網羅されるものとする。
【符号の説明】
【0042】
10:リアクタ
11:真空密シリンダ又は容器
12:真空ポンプアッセンブリ
12P:真空ポンプ
12G:真空ゲージ
12V:真空バルブ
15:絶縁体
16:加熱ゾーン
17:グラファイト抵抗ヒータ
20:リード線
21:電源
22:高温計
23A、36A:窓
23B、36B:ポート
24:支持ロッド
25:坩堝
27:グラファイトブロック
28:絶縁パック
29:保護ライナー
30:不活性ガスシステム
32:プログラム可能なバルブ
33:流量計
34:コントローラ
35:ビューポート
40:シリコン精錬プロセス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ゾーンを含むリアクタで冶金級シリコンを精錬して、そこから不純物を除去するための方法において、
A)少なくとも1つの不純物を還元するための還元コンパウンドを選択するステップ、
B)その選択された還元コンパウンドとシリコンを混合するステップ、
C)シリコン及び還元コンパウンドの混合物を、その還元コンパウンドの揮発を最小にする低い圧力及び高い温度で非酸化環境において精錬するステップ、及び
D)その後、精錬された材料を方向性凝固して、前記精錬及び冷却中に不純物の分離を生じさせるステップ、
を備えた方法。
【請求項2】
前記冶金級シリコンは、1つの不純物としてリンを含み、前記選択は、カルシウム系の還元コンパウンドを選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記冶金級シリコンは、1つの不純物としてリンを含み、前記選択は、二珪化カルシウムを選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物を受け取るための坩堝を準備して、前記精錬のためのリアクタ内に配置するステップを更に備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記精錬は、前記加熱ゾーンにおける還元コンパウンドと不純物との間の相互作用を防止するために前記リアクタ及び坩堝を適切にコンディショニングすることを初期ステップとして含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記コンディショニングは、前記加熱ゾーンを排気し、前記加熱ゾーンの温度を上げることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記精錬は、前記コンディショニングの後に不活性ガスで前記加熱ゾーンをパージするステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記精錬は、前記加熱ゾーンをアルゴンで埋め戻すことにより前記加熱ゾーンをパージするステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記精錬は、前記加熱ゾーンの温度を少なくとも前記混合物の融点まで上げ、その後、前記加熱ゾーンの圧力を制御された割合で下げることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記冶金級シリコンは、複数の不純物を含み、前記精錬は、前記加熱ゾーンの温度を少なくとも前記混合物の融点まで上げ、その後、前記加熱ゾーンの圧力を制御された割合で下げて、不純物の還元を容易にすることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
精錬された混合物を冷却中に方向性凝固するステップを更に備えた、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
冶金級シリコンを精錬してそこから不純物を除去するための装置において、
A)冶金級シリコンと、少なくとも1つの不純物に対する還元コンパウンドとの混合物を受け取るための坩堝手段、
B)前記坩堝手段と、前記シリコン及び還元コンパウンドの混合物とを受け入れるリアクタ手段、
C)減圧した圧力のもとでの精錬プロセス中に前記リアクタ内に非酸化環境を確立して還元コンパウンドの揮発を最小にするための環境制御手段、及び
D)前記坩堝手段における精錬された材料を冷却する手段であって、前記環境制御手段及びこの冷却手段の動作中に不純物の分離が生じるようにする冷却手段、
を備えた装置。
【請求項13】
前記坩堝手段の内面は、精錬プロセス中に酸化物との接触を最小にするように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記坩堝には、非酸化材料で形成されたライナーが形成される、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記坩堝には、非酸化物材料のコーティングが形成される、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記環境制御手段は、前記リアクタ内に真空を確立するための真空手段を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記環境制御手段は、前記リアクタ内に不活性雰囲気を維持するための不活性ガス手段を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記環境制御手段は、前記リアクタ内にアルゴン雰囲気を維持するためのアルゴンガス手段を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項19】
前記環境制御手段は、前記リアクタ内の温度を制御するためのヒータ手段を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項20】
前記冷却手段は、前記混合物に方向性凝固を受けさせる、請求項12に記載の装置。
【請求項21】
前記冷却手段は、熱交換機と、リアクタをシールする閉じた位置から、液体及び固体に温度勾配を形成して不純物を分離させるための開いた位置へと移動する絶縁パックとを備えた、請求項20に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−508154(P2012−508154A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535619(P2011−535619)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/063053
【国際公開番号】WO2010/062735
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511111024)クリスタル システムズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】