説明

冷凍サイクル装置の室外機

【課題】送風機用制御基板に異常が生じた場合でも運転を続けることができる冷凍サイクル装置の室外機を提供する。
【解決手段】圧縮機15および室外熱交換器を有するとともに、その室外熱交換器に外気を送る室外送風機6,7,8を3つ以上有する冷凍サイクル装置の室外機1において、当該室外機の全体を制御する主制御部と、前記主制御部の指令に応じて前記圧縮機15を駆動制御する圧縮機用制御部と、前記主制御部の指令に応じて前記各室外送風機6,7,8をそれぞれ駆動制御する複数の送風機用制御部と、第1基板20、第2基板30、および第3基板40と、を備え、主制御部を第1基板20に載せ、圧縮機用制御部を第2基板30に載せ、各送風機用制御部の少なくとも1つを上記第1基板20または上記第2基板30に載せて残りの送風機用制御部を第3基板40に載せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数の室外送風機を有する冷凍サイクル装置の室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル装置の室外機、例えば、空気調和機の室外機は、圧縮機、室外熱交換器、室外送風機などを収容し、室外送風機の運転により外気を吸込み、その吸込み空気を室外熱交換器に通して排出する。
【0003】
複数の室外送風機が収容される室外機の場合、圧縮機用制御部を1つの制御基板に搭載し、各室外送風機に対応する複数の送風機用制御部を1つの制御基板にまとめて搭載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−156277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送風機用制御基板に異常たとえば配線パターンの断線等が生じると、各室外送風機を運転できなくなる。各室外送風機を運転できなくなると、室外熱交換器における冷媒と外気の熱交換ができないため、空調そのものが不可能となる。
【0006】
本発明の実施形態の目的は、送風機用制御基板に異常が生じた場合でも運転を続けることができる冷凍サイクル装置の室外機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の冷凍サイクル装置の室外機は、圧縮機および室外熱交換器を有するとともに、その室外熱交換器に外気を送る室外送風機を3つ以上有するものであって、当該室外機の全体を制御する主制御部と、この主制御部の指令に応じて上記圧縮機を駆動制御する圧縮機用制御部と、上記主制御部の指令に応じて上記各室外送風機をそれぞれ駆動制御する複数の送風機用制御部と、第1基板、第2基板、および第3基板と、を備える。そして、上記主制御部を第1基板に載せ、上記圧縮機用制御部を第2基板に載せ、上記各送風機用制御部の少なくとも1つを上記第1基板または上記第2基板に載せて残りの送風機用制御部を上記第3基板に載せる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態の構成を正面側から見た図。
【図2】図1の要部の構成を上方から見た図。
【図3】一実施形態における制御回路のブロック図。
【図4】一実施形態の制御を示すフローチャート。
【図5】一実施形態における風量分布の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について説明する。
図1において、1は冷凍サイクル装置の室外機であり、本実施形態においては、空気調和機を例に説明する。室外機1は、横吹きタイプの室外機で、筐体の前面2にその高さ方向に沿って3つの吹出口3,4,5を有する。これら吹出口3,4,5と対応する位置に、3つの室外送風機6,7,8を配置する。これら室外送風機6,7,8は、定格送風量が互いに同じである。また、室外機1は、図2に示すように、筐体の背面9に吸込口10を有する。この吸込口10と対応する位置に、筐体の背面から側面にかけてL字形に折り曲げた室外熱交換器11を配置する。この室外熱交換器11の高さ方向の寸法は、室外送風機6,7,8の並び方向の寸法とほぼ同じである。
上記室外送風機6,7,8は、筐体の高さ方向に沿って並び、その並び方向と直行する方向に送風を行う。すなわち、これら室外送風機6,7,8の運転により、吸込口10から筐体内に外気が吸込まれ、その吸込み空気が室外熱交換器11を通って吹出口3,4,5から筐体外に吹出される。
【0010】
室外機1の筐体内は、筐体の底部から垂直方向に設けられた仕切り板12により、室外送風機6,7,8や室外熱交換器11が存する熱交換室13と、機械室14とに仕切られる。この機械室14の下方部に圧縮機15を収容するとともに、その機械室14の上方部に第1基板であるインタフェース基板20を配置する。また、熱交換室13および機械室14の上方に、第2基板である圧縮機・送風機用制御基板30および第3基板である送風機用制御基板40を配置する。
【0011】
圧縮機・送風機用制御基板30は、インバータ用のスイッチング素子の放熱用のヒートシンク30aを有する。送風機用制御基板40も、インバータ用のスイッチング素子の放熱用のヒートシンク40aを有する。これらヒートシンク30a,40aは、制御基板30,40の板面から下方に突出する形状を有し、室外送風機6,7,8により形成される風路に臨んで制御基板30,40の熱を効率よく放出する。
【0012】
室外機1の制御回路およびその室外機1と共に空気調和機を構成する室内機50の制御回路を図3に示す。ここでは、1台の室内機50が接続されているが、複数の室内機50が接続されても良い。
上記インタフェース基板20に、主制御部21を搭載する。この主制御部21に、温度センサ、圧力センサ、室内外通信部、リセットスイッチ、設定入力部、信号受信部などをまとめた入力部22を接続するとともに、電子膨張弁、四方弁、室内外通信部、電磁弁、圧縮機巻線加熱器、信号送信部などをまとめたアクチュエータ部23を接続する。
【0013】
主制御部21は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路からなり、室内機50における主制御部51との相互通信により、室外機1の全体を制御する。
【0014】
上記圧縮機・送風機用制御基板30に、圧縮機用制御部として圧縮機用インバータ31を搭載するとともに、送風機用制御部として中段送風機用インバータ32を搭載する。圧縮機用インバータ31は、上記圧縮機15を主制御部21からの指令に応じて駆動制御する。中段送風機用インバータ32は、中段の室外送風機7を主制御部21からの指令に応じて駆動制御する。
【0015】
上記送風機用制御基板40に、送風機用制御部として上段送風機用インバータ41および下段送風機用インバータ42を搭載する。上段送風機用インバータ41は、上段の室外送風機6を主制御部21からの指令に応じて駆動制御する。下段送風機用インバータ42は、下段の室外送風機8を主制御部21からの指令に応じて駆動制御する。
【0016】
中段の室外送風機7を駆動制御する中段送風機用インバータ32は、本来は上段送風機用インバータ41および下段送風機用インバータ42と同じ送風機用制御基板40にまとめて搭載するのが一般的であるが、本実施形態では、元々は圧縮機用インバータ31のみ搭載される制御基板30に搭載している。
【0017】
仮に、配線パターンの断線等の異常が送風機用制御基板40に生じた場合、上段送風機用インバータ41および下段送風機用インバータ42が機能しなくなり、上段の室外送風機6および下段の室外送風機8を運転できなくなる可能性があるが、圧縮機・送風機用制御基板30に搭載した中段送風機用インバータ32は正常に機能するので、少なくとも中段の室外送風機7の運転は続けることができる。この中段の室外送風機7の運転継続により、冷凍サイクルの高圧側圧力の異常上昇を防ぐことができ、ひいては高圧保護による不要な運転停止を回避して空調運転を続けることができる。
【0018】
また、主制御部21は、主要な機能として次の(1)(2)を有する。
(1)低外気温での冷房開始、複数の室内機50のうちの1台のみによる冷房運転、高外気温での暖房開始、複数の室内機50のうちの1台のみによる暖房運転などの低負荷運転時、室外送風機6,7,8の1つのみ運転して残りを停止する風量低減モードを設定する第1制御手段。1つのみ運転する室外送風機は、圧縮機・送風機用制御基板30および送風機用制御基板40に最も近い上段の室外送風機6である。
【0019】
(2)上記風量低減モードを除く通常運転時、室外送風機6,7,8の目標回転数を最上段の室外送風機6から最下段の室外送風機8にかけて徐々に大きくなる値に補正するとともに、その補正に際し、最上段の室外送風機6の目標回転数と最下段の室外送風機8の目標回転数との差を低回転数域より高回転数域で広く設定する第2制御手段。
【0020】
つぎに、図4のフローチャートを参照しながら作用について説明する。
低外気温での冷房開始、1室冷房、高外気温での暖房開始、1室暖房などの低負荷運転時(ステップ101のYES)、上段に位置する室外送風機6のみ運転して残りの室外送風機7,8を停止する風量低減モードが設定される(ステップ102)。
【0021】
上段の室外送風機6のみ運転することにより、空調負荷に見合う最適な冷房能力または暖房能力を得ることができる。しかも、上段の室外送風機6は圧縮機・送風機用制御基板30および送風機用制御基板40に最も近い上段の位置に存するので、上段の室外送風機6の運転によって生じる風を圧縮機・送風機用制御基板30のヒートシンク30aおよび送風機用制御基板40のヒートシンク40aに確実に当てることができる。これにより、圧縮機・送風機用制御基板30および送風機用制御基板40に対する冷却作用を得ることができる。
【0022】
圧縮機・送風機用制御基板30および送風機用制御基板40は、それぞれ圧縮機駆動のインバータや送風機駆動用のインバータを備えていることから、これらインバータを備えていないインタフェース基板20より発熱量が大きい。上段に位置する室外送風機6の運転は、このように発熱量の大きな圧縮機・送風機用制御基板30および送風機用制御基板40に対しても、十分な冷却作用を確保できる。
【0023】
一方、上記風量低減モードを除く通常運転時は(ステップ101のNO)、全ての室外送風機6,7,8を運転する(ステップ103)。これら室外送風機6,7,8の運転時、たとえ室外送風機6,7,8の定格送風量が互いに同じでも、吹出口3,4,5の配置・形状・大きさ、室外送風機6,7,8の配置・大きさ、室外熱交換器11の形状・大きさ等を要因とする風量分布が室外機1の筐体内に発生する。例えば、室外送風機6が位置する上段の辺りで風量が多く、その上段から中段および下段の位置にかけて徐々に風量が少なくなるといった風量分布がある。この風量分布は、室外熱交換器11の熱交換作用に高さ方向の偏りを生じさせる。
【0024】
しかも、この風量分布には、例えば図5に示すように、上段位置の風量と下段位置の風量との差が、低回転数域よりも高回転数域で大きくなる傾向がある。すなわち、上段位置の風量については低回転数域と高回転数域で差がなく、上段位置の風量を100%とすると、中段位置の風量は低回転数域で99%に下がり、高回転数域では98%まで下がる。下段位置の風量は、低回転数域で97%まで下がり、高回転数域ではさらに下がって90%となる。
【0025】
このような風量分布に対処するべく、室外送風機6,7,8の運転時、その室外送風機6,7,8の目標回転数を上段の室外送風機6から下段の室外送風機8にかけて徐々に大きくなる値に補正するとともに、その補正に際し、最上段の室外送風機6の目標回転数と最下段の室外送風機8の目標回転数との差を低回転数域より高回転数域で広く設定する(ステップ104)。この補正および設定により、室外機1の筐体の高さ方向における風量分布を、低回転数域と高回転数域の違いも含めて均一にすることができる。この風量分布の均一化により、室外熱交換器11の高さ方向における偏りのないしかも効率のよい熱交換が可能となる。
【0026】
なお、上記実施形態では、風量低減モードにおいて上段の室外送風機6のみ運転したが、中段の室外送風機7のみ運転してもよい。1つのみ運転する室外送風機を中段の室外送風機7とすることで、室外機1の筐体の高さ方向における風量分布を室外送風機6のみ運転する場合よりも改善することができる。室外送風機7の運転によって生じる風の流れは圧縮機・送風機用制御基板30のヒートシンク30aおよび送風機用制御基板40のヒートシンク40aにも当たるので、冷却効果は上段の室外送風機6のみ運転する場合より小さくなるものの、圧縮機・送風機用制御基板30および送風機用制御基板40に対する冷却作用はある程度は確保することができる。
【0027】
また、中段の室外送風機7のための中段送風機用インバータ32を圧縮機・送風機用基板30に搭載したが、インタフェース基板20に搭載する構成としてもよい。
【0028】
また、圧縮機・送風機用基板30またはインタフェース基板20に搭載する中段送風機用インバータ32に換えて、上段送風機用インバータ41を搭載し、中段送風機用インバータ32を送風機用制御基板40に搭載してもよい。仮に、配線パターンの断線等の異常が送風機用制御基板40に生じた場合でも、圧縮機・送風機用制御基板30に搭載した上段送風機用インバータ41は正常に機能するので、少なくとも上段の室外送風機6の運転は続けることができる。この上段の室外送風機6の運転継続により、上段の室外送風機6の運転によって生じる風を圧縮機・送風機用制御基板30のヒートシンク30a確実に当てることができ、圧縮機・送風機用制御基板30の冷却作用を得ることができる。ひいては圧縮機・送風機用制御基板30の温度上昇による異常を回避して空調運転を続けることができる。
【0029】
その他、上記実施形態およびその変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1…室外機、3,4,5…吹出口、6,7,8…室外送風機、10…吸込口、11…室外熱交換器、12…仕切り板、13…熱交換室、14…機械室、15…圧縮機、20…インタフェース基板(第1基板)、21…主制御部、30…圧縮機・送風機用制御基板(第2基板)、30a…ヒートシンク、31…圧縮機用インバータ、32…中段送風機用インバータ、40…送風機用制御基板(第3基板)、40a…ヒートシンク、41…上段送風機用インバータ、42…下段送風機用インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機および室外熱交換器を有するとともに、その室外熱交換器に外気を送る室外送風機を3つ以上有する冷凍サイクル装置の室外機において、
当該室外機の全体を制御する主制御部と、
前記主制御部の指令に応じて前記圧縮機を駆動制御する圧縮機用制御部と、
前記主制御部の指令に応じて前記各室外送風機をそれぞれ駆動制御する複数の送風機用制御部と、
第1基板、第2基板、および第3基板と、
を備え、前記主制御部を第1基板に載せ、前記圧縮機用制御部を第2基板に載せ、前記各送風機用制御部の少なくとも1つを前記第1基板または前記第2基板に載せて残りの送風機用制御部を前記第3基板に載せる構成とした、
ことを特徴とする冷凍サイクル装置の室外機。
【請求項2】
前記各室外送風機は、当該室外機の筐体の高さ方向に並び、その並び方向と直行する方向に送風を行うことを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置の室外機。
【請求項3】
前記主制御部は、風量低減モードの設定時、前記各室外送風機の1つのみ運転して残りを停止する、
ことを特徴とする請求項2記載の冷凍サイクル装置の室外機。
【請求項4】
前記1つのみ運転する室外送風機は、前記前記第2基板のヒートシンクおよび前記第3基板のヒートシンクに最も近い位置の室外送風機である、
ことを特徴とする請求項3記載の冷凍サイクル装置の室外機。
【請求項5】
前記1つのみ運転する室外送風機は、当該室外機の筐体の高さ方向における中段に位置する室外送風機である、
ことを特徴とする請求項3記載の冷凍サイクル装置の室外機。
【請求項6】
前記主制御部は、前記各室外送風機の目標回転数を最上段から最下段にかけて徐々に大きくなるよう補正するとともに、その補正に際し、最上段の室外送風機の目標回転数と最下段の室外送風機の目標回転数との差を低回転数域より高回転数域で広く設定する、
ことを特徴とする請求項2記載の冷凍サイクル装置の室外機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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