説明

冷凍サイクル装置

【課題】第1の蒸発器の単独運転に起因する圧縮機のオイル戻り不足を抑制するとともに、車室内乗員の空調フィーリングの悪化を抑制する。
【解決手段】第1の蒸発器5と第2の蒸発器7とを並列接続し、第2の蒸発器側7の冷媒通路には、第1の蒸発器5の単独運転を行なう場合に、第2の蒸発器7に対する冷媒流れを断続する流路開閉手段が設けられていない車両用冷凍サイクル装置において、第2の減圧手段6は、第2の蒸発器7の出口側冷媒の温度上昇に応じて圧力が上昇するガス媒体を充填した感温室64と、感温室64内のガス媒体の圧力上昇により開度が増加する弁体6cと、通電により感温室64内のガス媒体を加熱する電気ヒータ70とを有し、第2の蒸発器7の出口側冷媒の過熱度を調整する温度式膨張弁であって、第1の蒸発器5の単独運転が行なわれ、単独運転の運転時間が所定時間を経過すると、電気ヒータ70に通電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に設けられた第1、第2の蒸発器を有する冷凍サイクル装置に関するもので、例えば、デュアルエアコンタイプの車両用空調装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、ミニバン等の大型乗用車の車室内空調用のユニットとして、車室内の前席側と後席側の両方に空調ユニットを配置するデュアルエアコンが用いられている。このデュアルエアコンの冷凍サイクルでは、前席側蒸発器(第1の蒸発器)と後席側蒸発器(第2の蒸発器)とを並列に接続して設け、圧縮機と凝縮器は共通使用している。この冷凍サイクルでは、空調装置のコスト低減のため後席側蒸発器への冷媒流れを断続する電磁弁(流路開閉弁)を付けていない車両が多い。そのため、上記電磁弁を付けていない車両では、前席側エアコン(前席側蒸発器)のみを運転させ、圧縮機の連続作動状態が長時間継続された場合、後席側蒸発器の温度式膨張弁の開閉が何回も繰り返され、後席側蒸発器などにオイルが溜まる。その結果、圧縮機のオイル戻り不足が発生する問題がある。
【0003】
そこで、圧縮機の連続作動状態が所定時間に達すると、圧縮機の作動を強制的に断続制御して、後席側蒸発器の温度式膨張弁を強制開弁させることで、後席側蒸発器等に溜まっているオイルを圧縮機吸入側に戻すようにした冷凍サイクル装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−283576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の冷凍サイクル装置における圧縮機へのオイル戻し制御を図7に基づいて説明すると、図7に示すように圧縮機の連続作動状態が所定時間に達すると圧縮機の作動を複数回だけ断続制御する(図7(a)参照)。この圧縮機の断続制御により、圧縮機吸入側の圧力を変動させ、後席側温度式膨張弁を開弁している。その結果、圧縮機吸入側にオイルが戻され、オイル循環率が上昇する(図7(b)参照)。ここで、圧縮機の断続制御により蒸発器内などに溜まったオイルが圧縮機吸入側に戻されるが、その一方、圧縮機の断続制御を行なうことで前席側蒸発器の空気吹出温度が上昇し(図7(c)参照)、車室内の乗員の空調フィーリングが悪化するという問題が発生する。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、第1の蒸発器と第2の蒸発器を並列に接続し、第1の蒸発器用の電磁弁を持たない車両用冷凍サイクル装置において、第1の蒸発器の単独運転に起因する圧縮機のオイル戻り不足を抑制するとともに、第1の蒸発器の空気吹出温度の上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、冷媒を圧縮し吐出する圧縮機(2)と、圧縮機(2)から吐出された冷媒を冷却し凝縮させる凝縮器(3)と、凝縮器(3)で凝縮した冷媒を減圧膨張させる第1の減圧手段(4)と、第1の減圧手段(4)により減圧膨張した冷媒を蒸発させる第1の蒸発器(5)と、第1の蒸発器(5)に送風する第1の送風機(5a)と、凝縮器(3)で凝縮した冷媒を減圧膨張させる第2の減圧手段(6)と、第2の減圧手段(6)により減圧膨張した冷媒を蒸発させる第2の蒸発器(7)と、第2の蒸発器(7)に送風する第2の送風機(7a)とを備え、第1の減圧手段(4)および第1の蒸発器(5)と、第2の減圧手段(6)および第2の蒸発器(7)は、並列に設けられており、第1の送風機(5a)が稼動状態にされ、第2の送風機(7a)が停止状態にされ、かつ圧縮機(2)が稼動状態にされた第1の蒸発器(5)の単独運転を行なう場合に、第2の蒸発器(7)に対する冷媒流れを断続する流路開閉手段が設けられていない車両用冷凍サイクル装置において、第2の減圧手段(6)は、第2の蒸発器(7)の出口側冷媒の温度上昇に応じて圧力が上昇するガス媒体を充填した感温室(64)と、感温室(64)内のガス媒体の圧力上昇によって開度が増加方向へ変化する弁体(6c)と、通電により感温室(64)内のガス媒体を加熱する電気ヒータ(70)とを有し、第2の蒸発器(7)の出口側冷媒の過熱度を調整する温度式膨張弁であって、電気ヒータ(70)は、通電状態を通電切替手段により切り替えられ、通電切替手段は、第1の蒸発器(5)の単独運転を行なう場合に、第1の蒸発器(5)の単独運転の運転時間が所定時間を経過すると、電気ヒータ(70)に通電することを特徴とする。
【0007】
これによると、第2の蒸発器(7)に送風する第2の送風機(7a)を停止状態にされ、第1の蒸発器(5)の第1の送風機(5a)を稼動状態にされ、かつ圧縮機(2)が稼動状態にされた第1の蒸発器(5)の単独運転を行なう場合に、単独運転の運転時間が所定時間を経過すると、温度式膨張弁の電気ヒータ(70)に通電することで、感温室(64)内のガス冷媒の温度を上昇させるとともに、感温室(64)内の圧力が上昇するため、温度式膨張弁である第2の減圧手段(6)を強制的に開弁状態にすることができる。その結果、温度式膨張弁の強制開弁に伴う冷媒流によって、第2の蒸発器(7a)内等に溜まった潤滑オイルを圧縮機吸入側に戻すことができる。また、圧縮機(2)の断続運転を行なう必要がなく第1蒸発器(5)の空気吹出温度の上昇を抑制できるため、車室内乗員の空調フィーリングの悪化も抑制することができる。したがって、第1の蒸発器(5)の単独運転に起因する圧縮機(2)の潤滑オイル戻り不足を抑制するとともに、車室内乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
【0008】
また、感温室(64)内のガス媒体として、サイクル内を循環する冷媒の温度−圧力特性と同一の温度−圧力特性を持つガス冷媒を充填し、感温室(64)内のガス媒体の温度に対する圧力の変化率がサイクル内を循環する冷媒の温度に対する圧力の変化率と同一となるガスチャージ方式としてもよい。
【0009】
これによると、感温室(64)内にサイクル内循環冷媒と同種のガス媒体を充填することにより、感温室(64)内の圧力(飽和圧力)がサイクル内循環冷媒と同一の圧力変化を示す(ガスチャージ方式)。そのため、低温域(冷房低負荷時)から高温域(冷房高負荷時)に渡って第2の蒸発器(7)出口冷媒の過熱度を略一定に調整することができる。
【0010】
また、感温室(64)内のガス媒体として、サイクル内を循環する冷媒の温度−圧力特性とは異なるガス媒体を充填し、感温室(64)内のガス媒体の温度に対する圧力の変化率がサイクル内を循環する冷媒の温度に対する圧力変化率よりも勾配が緩やかとなり、感温室(64)内のガス冷媒の圧力が所定温度以下の低温域ではサイクル内の循環冷媒の圧力よりも高くなるクロスチャージ方式としてもよい。
【0011】
これによると、クロスチャージ方式の膨張弁では、感温室(64)内のガス媒体温度と感温室(64)内の圧力との関係を示す温度に対する圧力の変化率が、サイクル内循環冷媒の温度に対する圧力の変化率に比較して勾配の緩やかな特性となる。そのため、感温室(64)内のガス媒体温度が低い状態においては、温度式膨張弁の弁体の開度を、ガスチャージ方式の膨張弁を用いる場合に比較して増大できる。
【0012】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図6に基づいて説明する。本実施形態では、デュアルエアコンタイプの車両用冷凍サイクル装置を車両空調用冷凍サイクル装置1に適用している。図1は本実施形態における車両空調用冷凍サイクル装置1の構成図を示している。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の車両空調用冷凍サイクル装置1は、冷媒が循環する冷媒循環通路10を備えている。本実施形態では、冷媒としてHFC−134aを使用している。
【0015】
冷媒循環通路10には、冷媒を吸入圧縮する圧縮機2が配置されている。圧縮機2は、車両エンジン(図示せず)により電磁クラッチ(図示せず)を介して駆動され、冷媒を高温高圧に圧縮する。圧縮機2の吐出側には凝縮器3が接続されている。
【0016】
凝縮器3は、凝縮用熱交換部3a、気液分離器3b、過冷却用熱交換部3cから構成されている。凝縮用熱交換部3a、気液分離器3b、および過冷却用熱交換部3cは、エンジンルーム内にてエンジンと車両フロントグリル(図示せず)との間に配置されている。なお、凝縮用熱交換部3a、気液分離器3b、および過冷却用熱交換部3cは、いわゆるサブクールコンデンサを構成している。
【0017】
凝縮用熱交換部3aは、圧縮機2から吐出された冷媒と送風ファン(図示せず)により送風された外気とを熱交換させて、冷媒を冷却する放熱器である。凝縮用熱交換器3aの冷媒出口側には、気液分離器3bが接続されている。
【0018】
気液分離器3bは、凝縮用熱交換器3aで冷却された冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離するものである。気液分離器3bの出口側には、過冷却用熱交換部3cが接続されている。
【0019】
過冷却用熱交換部3cは、気液分離器3bで分離された液相冷媒と送風ファン(図示せず)により送風された外気とを熱交換させて、冷媒を冷却する放熱器である。この過冷却用熱交換部3cは、液相冷媒をさらに冷却することで液相冷媒自体がもつエネルギ(エンタルピ)を増大させ、冷房性能の向上を図るために設けられている。
【0020】
過冷却用熱交換部3cの冷媒出口側には、前席側温度式膨張弁4が設けられている。前席側温度式膨張弁4は、周知のように後述する前席側蒸発器5の出口冷媒の過熱度が予め設定した所定値となるように弁開度を調整して、冷媒流量を調整するものである。なお、前席側温度式膨張弁4が、本発明における第1の減圧手段に相当している。
【0021】
ここで、本実施形態における前席側温度式膨張弁4は、一般にボックス型膨張弁と称される形式のものであり、前席側蒸発器5の出口冷媒が流れる冷媒通路部4aを一体に内蔵している。
【0022】
従って、前席側蒸発器5の出口冷媒の圧力および温度を直接感知して、ダイヤフラム機構部4bのダイヤフラム変位量を調整し、それにより、弁体4cの開度、すなわち、弁絞り通路の開度を調整できる。
【0023】
なお、後述する後席側温度式膨張弁6もボックス型膨張弁であり、ボックス型膨張弁の具体的構成は図2に例示する通りであり、前席側温度式膨張弁4と後席側温度式膨張弁6は、基本的構成において後述する電気ヒータ70の有無が異なっている。
【0024】
前席側温度式膨張弁4の冷媒出口側には、前席側蒸発器5が接続されている。前席側蒸発器5は、前席用空調ケース(図示せず)内に配置されており、前席側温度式膨張弁4にて減圧膨張された冷媒と空調ケース内に配置された前席側送風ファン5aによって送風された送風空気とを熱交換させる熱交換器である。なお、前席側送風ファン5aが、本発明における第1の送風機に相当している。
【0025】
前席側蒸発器5で熱交換された送風空気は、空調対象空間である車室内前席付近に向けて吹き出される。なお、前席側蒸発器5が、本発明における第1の蒸発器に相当している。
【0026】
前席側蒸発器5の冷媒出口側は、圧縮機2の吸入側と接続されており、前席側蒸発器5で蒸発後の冷媒は再び圧縮機2に流入する。
【0027】
また、本実施形態の冷凍サイクル装置1には、冷媒循環通路10の凝縮器3と前席側温度式膨張弁4との間の部位で分岐し、前席蒸発器5と圧縮機2との間で冷媒循環通路10に合流する分岐通路11が形成されている。
【0028】
この分岐通路11には、冷媒の流量調節と冷媒の減圧を行う後席側温度式膨張弁6が設けられている。分岐通路11における後席側温度式膨張弁6の出口側には、後席側蒸発器7が設けられている。
【0029】
そのため、分岐通路11は、後席側温度式膨張弁6および後席側蒸発器7が、前席膨張弁4および前席側蒸発器5に対して並列に冷媒循環通路10に接続されている。なお、「並列に」とは、圧縮機2から吐出された冷媒が冷媒循環通路10における前席側温度式膨張弁4および前席側蒸発器5と後席側温度式膨張弁6および後席側蒸発器7とに同時に供給可能になっていることを意味している。
【0030】
ここで、後席側温度式膨張弁6は、後席側蒸発器7の出口冷媒の過熱度を感知して、この出口冷媒の過熱度が所定値となるように弁開度(冷媒流量)を調整するものである。
【0031】
後席側温度式膨張弁6も、前席側温度式膨張弁4と同様の冷媒通路部6a、ダイヤフラム機構部6b、および弁体6cを有するボックス型膨張弁である。後席側温度式膨張弁6の詳細については後述する。なお、後席側温度式膨張弁6が、本発明における第2の減圧手段に相当している。
【0032】
また、後席側蒸発器7は、後席側温度式膨張弁6にて減圧膨張された冷媒と後席用空調ケース(図示せず)内に配置された後席側送風ファン7aによって送風された送風空気とを熱交換させる熱交換器である。なお、後席側送風ファン5aが、本発明における第2の送風機に相当している。
【0033】
後席側蒸発器7で熱交換された送風空気は、空調対象空間である車室内後席付近に向けて吹き出される。なお、後席側蒸発器7が、本発明における第2の蒸発器(副蒸発器)に相当している。
【0034】
次に、後席側温度式膨張弁6の詳細について図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係る後席側温度式膨張弁6の内部構成図である。
【0035】
次に、図2は後席側温度式膨張弁6を構成するボックス型膨張弁の具体例を示すもので、膨張弁6の本体ケース50は、アルミニウム等の金属で略直方体状に成形されている。
【0036】
この本体ケース50内部の一端側(図2の上部側)に前述の冷媒通路部6aが形成され、また、本体ケース50の一端部外面側に前述のダイヤフラム機構部6bが配置され、そして、本体ケース50内部の他端側(図2の下部側)に前述の弁体6cが配置されている。
【0037】
本体ケース50の下方部右側には凝縮器3からの高圧液冷媒が流入する冷媒入口51が開口している。
【0038】
この冷媒入口51は弁体収容室52に連通しており、この弁体収容室52内に、後席側温度式膨張弁6の球状の弁体6c、およびこの弁体6cを支持する支持部材53が収容されている。弁体6cは冷媒入口51からの液冷媒を減圧する絞り通路54に対向配置され、この絞り通路54の開度を調整するようになっている。
【0039】
絞り通路54の中心部を貫通して弁棒55が配置され、この弁棒55の下端部は球状の弁体6cに当接している。絞り通路54の下流側には、絞り通路54を通過して減圧された低温、低圧の気液2相冷媒が流れる冷媒流出通路56が形成されている。
【0040】
一方、前述の冷媒通路部6aは後席側温度式膨張弁6の本体ケース50において冷媒流出通路56の上方部を左右方向に円筒状に貫通する蒸発器出口側通路を形成している。この蒸発器出口側冷媒通路部6aは後席側蒸発器7にて蒸発したガス冷媒が流れるものである。
【0041】
本体ケース50には蒸発器出口側冷媒通路部6aを貫通して感温棒57が配置されている。この感温棒57はアルミニウム等の熱伝導の良好な金属にて円柱状に形成されている。
【0042】
この感温棒57は蒸発器出口側冷媒通路部6aのガス冷媒の流れ中に位置するので、ガス冷媒の熱が伝導され、ガス冷媒と同じ温度になる。従って、感温棒57はガス冷媒の温度を感知する感温手段としての役割を果たすことができる。
【0043】
この感温棒57は、具体的には、蒸発器出口側冷媒通路部6aを貫通する軸部57aと、この軸部57aの端部に形成されたダイヤフラムストッパ部57bとから構成されている。
【0044】
感温棒57の軸部57aの下端面は弁棒55の上端面に当接している。また、感温棒57の軸部57aの下端部近傍の外周溝部にはシール用のOリング58が配設され、本体ケース50の孔部59に対して感温棒57は気密に、かつ摺動可能にはめ合わせている。
【0045】
前述のダイヤフラム機構部6bは圧力応動部材をなすダイヤフラム60を有し、このダイヤフラム60に感温棒57の上端部に形成されたダイヤフラムストッパ部57bが当接している。
【0046】
従って、このダイヤフラム60が図2の上下方向に変位すると、この変位に応じて円柱状感温棒57、弁棒55を介して弁体6cも変位するようになっている。よって、感温棒57は弁体6cを変位させる変位伝達部材としての役割も兼ねている。
【0047】
ダイヤフラム60の外周縁部は、上下のダイヤフラムケース部材61、62の間に挟持されて支持されている。このダイヤフラムケース部材61、62はステンレス(SUS304)等の金属材で構成され、溶接、ろう付け等により一体に接合されている。
【0048】
下側のダイヤフラムケース部材62は本体ケース50の最上部にねじ止め等にて固定されており、この下側ダイヤフラムケース部材62の固定部はゴム製の弾性シール材(パッキン)63にて気密になっている。
【0049】
そして、ダイヤフラムケース部材61、62内の空間はダイヤフラム60により上側の感温室64と下側の冷媒圧力室65に仕切られている。感温室64は密封空間であって、この感温室64の内部には冷凍サイクル内の循環冷媒(本実施形態では、HFC−134a)と同種のガス媒体が気液混合状態にて充填されている。
【0050】
この感温室64内のガス媒体に感温棒57の熱が金属製ダイヤフラム60を介して伝導されるので、このガス媒体の温度は後席側蒸発器7の出口冷媒温度と同等の温度となる。その結果、このガス媒体の圧力は蒸発器出口冷媒温度に応じた飽和圧力となる。なお、ダイヤフラム60は弾性に富む強靱な材質であると同時に、熱伝導が良好な材質にて形成することが好ましい。
【0051】
一方、冷媒圧力室65は、感温棒57のダイヤフラムストッパ部57bの周囲の空隙と、この空隙の下方部に形成される圧力導入用の空間66とを通して蒸発器出口側冷媒通路部6aに連通して、この蒸発器出口側冷媒通路部6aの冷媒圧力が冷媒圧力室65内に導入される。従って、冷媒圧力室65内の圧力は冷媒通路部6aと同等の圧力となる。
【0052】
一方、本体ケース50の最下部には、外部に開口したねじ穴部67が設けられており、このねじ穴部67に調整ナット68がねじ止め固定されており、この調整ナット68はシール用のOリング68aによりねじ穴部67との間を気密にシールしている。
【0053】
コイルばね69は弁体6cを閉弁方向に押圧するばね手段であり、調整ナット68と支持部材53との間に配置される。そして、調整ナット61の締めつけ位置の調整によりコイルばね69の取付荷重を調整して、蒸発器出口冷媒の過熱度を調整できるようになっている。
【0054】
ところで、本実施形態の後席側温度式膨張弁6には、上記上側ダイヤフラムケース部材61の外表面には、通電により発熱するリング状の電気ヒータ70が密着して配置されている。
【0055】
この電気ヒータ70は、後述する電気制御部である制御装置100からの制御信号により通電され、上側ダイヤフラムケース部材61を介して感温室64内の冷媒温度を上昇させる。なお、本実施形態における前席側温度式膨張弁4の構成は、後席側温度式膨張弁6と比べて電気ヒータ70を有していない点が異なっている。
【0056】
また、本実施形態では、感温室64内に充填するガス媒体として、冷凍サイクル内の循環冷媒(HFC−134a)と同種のガス媒体を用いていることにより、前席側温度式膨張弁4、後席側温度式膨張弁6が、ガスチャージ方式の膨張弁を構成するようになっている。
【0057】
ガスチャージ方式について、図3に基づいて説明する。本実施形態に係る前席側温度式膨張弁4、後席側温度式膨張弁6の感温室64内の冷媒温度−圧力の特性図を示している。
【0058】
図3の破線に示すように、感温室64内のガス媒体温度と感温室64内の圧力との関係を示す温度−圧力特性Aが、感温室64内の圧力(飽和圧力)がチャージ圧力P0に上昇するまでは、図3の実線で示すサイクル内循環冷媒(HFC−134a)の温度−圧力特性Bと同じ特性となる。
【0059】
なお、感温室64内の圧力が、感温室64内のガス媒体温度と感温室64内の圧力との関係を示す温度−圧力特性Aが、感温室64内に充填する際のチャージ圧P0まで上昇すると、ガス媒体の液相部分がすべて蒸発してしまうので、これ以後は、温度が上昇しても感温室64内の圧力はほぼ一定となる。
【0060】
したがって、前席側温度式膨張弁4、後席側温度式膨張弁6の感温室64内の圧力が感温室64内の温度に対してサイクル循環冷媒と同じ温度−圧力特性(飽和圧力特性)で変化するので、前席側温度式膨張弁4、後席側温度式膨張弁6は、感温室64内の冷媒温度の低温域(冷房低負荷条件)でも高温域(冷房高負荷条件)でも、感温室64内の冷媒圧力が前席側蒸発器5、後席側蒸発器7の出口冷媒温度に応じて同様の変化をする。
【0061】
これにより、前席側温度式膨張弁4、後席側温度式膨張弁6は、冷房低負荷条件でも冷房高負荷条件でも前席側蒸発器5、後席側蒸発器7の出口冷媒の過熱度を常に適切な値に調整することができる。
【0062】
図1に戻り、本実施形態における電気制御部である制御装置100について説明する。制御装置(以下ECUという)100は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。このECU100は、そのROM内に制御プログラムを記憶しており、その制御プログラムに基づいて所定の演算処理を行って、各機器の作動を制御する。
【0063】
具体的には、前席側送風ファン5aのモータ5b、後席側送風機ファン7aのモータ7b、後席側温度式膨張弁6に設けられた電気ヒータ70等の空調機器の作動をECU100により制御するようになっている。なお、ECU(制御装置)100が本発明の通電切替手段に相当している。
【0064】
また、ECU100には、空調の自動制御のためのセンサ群20の検出信号、及び操作パネル30の操作スイッチ群40の操作信号が入力される。
【0065】
センサ群20として、具体的には車室内温度(内気温度)を検出する内気温センサ、外気温を検出する外気温センサ、車室内への日射量を検出する日射センサ、前席側蒸発器5の吹出空気温度センサ、後席側蒸発器7の吹出空気温度センサ等が設けられている。
【0066】
操作スイッチ群40として、操作パネル30に設けられたエアコンスイッチ、前席側ブロワスイッチ、後席側ブロワスイッチ等が設けられている。
【0067】
ここで、エアコンスイッチは冷凍サイクルの圧縮機2の起動または停止を指令するものであり、前席側ブロワスイッチは前席側送風ファン5aのモータ5bのオン、オフおよび風量切替を指令するものであり、さらに後席側ブロワスイッチは後席側送風ファン7aのモータ7bのオン、オフ等を指令するものである。
【0068】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。
【0069】
まず、前席側および後席側両方の空調対象空間を空調する場合については、エアコンスイッチが投入されると、圧縮機2の電磁クラッチが通電され接続状態となり、圧縮機2が車両エンジンにより駆動される。また、圧縮機2の駆動とともに前後両方の前席側、後席側送風ファン5a、7aが作動する。
【0070】
これにより、前席側蒸発器5、後席側蒸発器7により送風空気を冷却し、冷却された送風空気をそれぞれの空調対象空間に向けて吹き出す。
【0071】
ここで、前席側および後席側両方の空調対象空間に空調する場合は、前席側温度式膨張弁4および後席側温度式膨張弁6は、それぞれに対応する前席側蒸発器5および後席側蒸発器7の過熱度に対応した弁開度に調整され、その過熱度に対応した流量の冷媒を前席側蒸発器5および後席側蒸発器7の流路を通過させるため、後席側蒸発器7内などに潤滑オイルが溜まることはない。
【0072】
一方、前席側にのみ乗員が搭乗し、後席側には乗員が搭乗していない場合には、操作パネル30のスイッチ操作により後席用送風ファン7aのモータ7bを停止した状態で圧縮機2の作動が開始される。これにより、後席側の空調対象空間は空調された空気が吹き出されないため、前席側蒸発器5のみ送風空気を冷却する前席側蒸発器5の単独運転状態となる。なお、前席側蒸発器5の単独運転状態が、本発明における第1の蒸発器5の単独運転に相当している。
【0073】
この前席側蒸発器5の単独運転状態では、後席側蒸発器7が、後席側送風ファン7aから送風される空気との熱交換が行なわれないため、後席側蒸発器7内の冷媒は、気相、液相の冷媒を含んだ飽和状態となる。この冷媒は、ダイヤフラム60の下方の冷媒圧力室65へ導入されている。
【0074】
また、後席側蒸発器7の出口冷媒の温度は、感温棒57を介してダイヤフラムの上方の感温室64へと伝熱される。そのため、冷媒圧力室65内の冷媒温度と感温室64内の冷媒温度とは、同じような温度となる。
【0075】
さらに、感温室64内には、冷凍サイクル内の循環冷媒(HFC−134a)が封入されており、感温室64内の冷媒および後席側蒸発器7の出口冷媒は、飽和状態であるため同じような圧力となる。
【0076】
これにより、弁体6c、弁棒55、感温棒57には、下方よりスプリングのバネ力が働いているため、ダイヤフラム60は上方へ変位し、絞り通路54を弁体が閉鎖するため、後席側温度式膨張弁6の開度は閉鎖状態となる。
【0077】
しかしながら、後席側蒸発器7内の冷媒は徐々に蒸発し、蒸発が完了すると、後席側蒸発器7の周囲温度(室内温度)に向かって上昇していく。それに伴って、後席側温度式膨張弁6の感温室64内の冷媒温度も上昇し、後席側蒸発器7の出口冷媒の過熱度が上昇することにより、後席側温度式膨張弁6が微小な開放状態となる。後席側温度式膨張弁6の微小な開放により、液相の潤滑オイルが後席側蒸発器7内などに溜まり、圧縮機2のオイル戻り不足が発生する。
【0078】
そこで、本実施形態では、潤滑オイルを圧縮機2のオイル戻り不足を解消するため、前席側蒸発器5の単独運転状態が第1所定時間Tx経過すると後席側温度式膨張弁6の電気ヒータ70に通電することで、圧縮機2に潤滑オイルを戻すオイル戻し制御を行なう。
【0079】
上述のオイル戻し制御内容について図4に基づいて説明する。図4は、制御装置100により実行される制御ルーチンを示すフローチャートであり、操作パネル30のエアコンスイッチ(A/C)の投入により図4の制御ルーチンはスタートする。
【0080】
まず、ステップS10にてセンサ等20の検出信号、操作パネル30からの操作信号等を読み込む。次に、ステップS20にて上記各信号の状態から、エアコンスイッチがオン状態にあるか否かを判定する。エアコンスイッチがオン状態にある場合は、ステップS30に進む。またエアコンスイッチがオン状態でない場合は、リターンする。
【0081】
次に、ステップS30では、タイマがスタートしている否かを判定する。ステップS30でタイマがスタートしていないと判定された場合、ステップS40でタイマをスタートする。ステップS40でタイマをスタートさせた後、またはステップ30でタイマがスタートしていると判定された場合は、ステップS50に進む。
【0082】
次に、ステップS50では、ステップS40でスタートさせたタイマが、第1所定時間Tx(例えば60分)を経過したか否かを判定する。なお、第1所定時間Txについては後述する。
【0083】
ステップS50でタイマが第1所定時間Txを経過すると、ステップS60で後席側温度式膨張弁6の上側ダイヤフラムケース部材61に接着された電気ヒータ70に第2所定時間Ty(例えば20秒)通電を行なう。なお、第2所定時間Tyについては後述する。
【0084】
電気ヒータ70は通電により加熱し、上述の上側ダイヤフラムケース部材61を介して感温室64内の冷媒温度が上昇させる。感温室64内の冷媒温度の上昇に伴い、感温室64内の圧力が上昇するため、感温室64内と冷媒圧力室65内との圧力差が増加する。
【0085】
この圧力差の増加により、ダイヤフラム60を下方に押す力が、コイルばね69のばね力よりも大きくなると、ダイヤフラム60が下方へ変位し、それに伴い感温棒57、弁棒55、弁体5cが下方へ動き、絞り通路54が開放される。
【0086】
これにより、後席側温度式膨張弁6を強制的に開弁状態とすることができ、開弁による冷媒流によって、後席側蒸発器7内等に溜まった潤滑オイルを圧縮機2吸入側に戻すことができる。
【0087】
次に、ステップS70でタイマをリセットする。その後、リターンする。なお、ステップS50で、タイマが所定時間Txを経過していない場合は、リターンする。
【0088】
上記制御について図5に示す作動説明図を用いて説明する。ここで、図5(a)は、電気ヒータ70への通電のオン、オフを示すタイミングチャートであり、図5(b)は電気ヒータ70への通電のオン、オフに合わせて変化するオイル循環率であり、図5(c)は電気ヒータ70への通電のオン、オフに合わせて変化する前席側蒸発器5の吹出温度を示している。
【0089】
図5に示すように、前席側蒸発器5の単独運転状態にいては、単独運転状態が連続すると、潤滑オイルが後席側蒸発器7内などに溜まっていくため、徐々にオイル循環率が低下する(図5(b)参照)。なお、オイル循環率は、潤滑オイル量/(潤滑オイル+冷媒量)×100(%)で表される。
【0090】
ここで、オイル循環率の測定方法は、例えば、冷凍サイクル内の気液分離器3b下流側の冷媒液相部において、紫外線が潤滑オイルには吸収されるという特性を利用して、潤滑オイルによる紫外線の吸光度を測定して、オイル循環率を算出することができる。
【0091】
前席側蒸発器5の単独運転状態が第1所定時間Txを経過すると、後席側温度式膨張弁6に設けられた電気ヒータ70に第2所定時間Ty通電することで、後席側温度式膨張弁6の開度を強制的に開弁する(図5(a)参照)。また、従来のように圧縮機2の断続運転を行なわないため、前席側蒸発器5の吹出温度が上昇することもない(図5(c)参照)。
【0092】
ここで、第1所定時間Txについては、圧縮機2の潤滑オイル不足になる前までの時間を設定する必要があるため、例えば潤滑オイルのオイル循環率(図5(b)参照)が所定下限値以下になるまでの時間とすることができる。なお、第1所定時間Txは、後席用温度式膨張弁6の動作特性、後席側蒸発器7の容量などにより異なるため、予め実験等によって算出されている。
【0093】
また、第2所定時間Tyについては、圧縮機2の潤滑オイルが充分に圧縮機2吸入側に戻すことができる時間に設定する必要があるため、例えば、圧縮機2に戻される潤滑オイルのオイル循環率(図5(b)参照)が所定上限値以上になるまでの時間とすることができる。なお、第2所定時間Tyは、後席側蒸発器7と、後席側蒸発器7下流側であって分岐通路11と冷媒循環通路10の合流部とを接続する配管(後席側低圧配管)の径、長さ、形状、配置等により異なるため、予め実験等によって算出されている。
【0094】
以上説明したように、後席側蒸発器7の後席側送風ファン7aのモータ7bを停止させ、前席側蒸発器5の前席側送風ファン5aのモータ5bを稼動させる前席側蒸発器5の単独運転を行なう場合に、単独運転状態が第1所定時間Txを経過すると、後席側温度式膨張弁6の電気ヒータ70に第2所定時間Ty通電することで、感温室64内のガス冷媒の温度を上昇させるとともに、感温室64内の圧力が上昇するため、後席側温度式膨張弁6を強制的に開弁状態にすることができる。
【0095】
その結果、後席側温度式膨張弁6の強制開弁に伴う冷媒流によって、後席側蒸発器7内等に溜まった潤滑オイルを圧縮機吸入側に戻すことができる。また、圧縮機2の断続運転を行なう必要がないため、前席側蒸発器5の吹出温度の上昇を抑制することができ、車室内乗員の空調フィーリングの悪化も抑制することができる。
【0096】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6に基づいて説明する。本第2実施形態では、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。図6は、本実施形態に係る後席側温度式膨張弁6の感温室64内冷媒温度−圧力の特性図を示している。
【0097】
上記第1実施形態では、感温室64内に充填するガス冷媒として、冷凍サイクル内の循環冷媒(HFC−134a)と同種のガス冷媒を用いているが、これに限定されるものではなく、感温室64内に充填するガス冷媒として、冷凍サイクル内の循環冷媒と異なるガス冷媒を用いてもよい。
【0098】
具体的には、HCFC―124にN(窒素)を混合したものを用いることにより、後席側温度式膨張弁6がクロスチャージ方式の膨張弁を構成することができる。
【0099】
ここで、クロスチャージ方式の膨張弁とは図6の一点鎖線に示すように、感温室64内のガス媒体温度と感温室64内の圧力との関係を示す温度に対する圧力の変化率(温度−圧力特性C)が、図6の実線で示すサイクル内循環冷媒(HFC−134a)の温度に対する圧力の変化率(温度−圧力特性B)に比較して勾配の緩やかな特性となり、この両特性B、Cが所定温度T1にて交差(クロス)する関係に設定されていることを言う。
【0100】
クロスチャージ方式の膨張弁においては、このように温度変化に応じて変化する感温室64内のガス媒体の温度に対する圧力の変化率(温度−圧力特性C)を、サイクル内循環冷媒(HFC−134a)の温度に対する圧力の変化率(温度−圧力特性B)に比較して勾配の緩やかな特性にしている。
【0101】
したがって、感温室64内のガス媒体温度が低い状態においては、後席側温度式膨張弁6の弁体6cの開度を、ガスチャージ方式の膨張弁を用いる場合に比較して増大できる。
【0102】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、第1の減圧手段(前席側膨張弁)を前席側温度式膨張弁4で構成する場合について説明したが、前席側温度式膨張弁4の代わりに、キャピラリチューブやオリフィス等の固定絞りを用いて第1の減圧手段を構成してもよい。
【0103】
(2)また、上記各実施形態では、後席側温度式膨張弁6を、後席側蒸発器7の出口冷媒が流れる出口側冷媒通路、およびこの出口冷媒の温度を感知する感温部をなす感温棒57を内蔵するボックス型膨張弁で構成する場合について説明したが、後席側蒸発器7の出口冷媒の温度を感知する感温部(感温筒)を膨張弁本体部とは別の場所に配置し、この別の場所の感温部(感温筒)と膨張弁本体部の感温室との間をキャピラリチューブで結合する形式の膨張弁で後席側温度式膨張弁6を構成してもよい。
【0104】
(3)また、上記第2実施形態では、サイクル内循環冷媒としてHFC−134aを用いる場合に、後席側温度式膨張弁6の感温室64内に充填するガス媒体として、HCFC−124にNを混合したものを用いることにより、後席側温度式膨張弁6をクロスチャージ方式としているが、サイクル内循環冷媒と後席側温度式膨張弁6の感温室64内に充填するガス媒体(不活性ガス)との組み合わせは、上記各実施形態の組み合わせに限定されることなく、公知の種々なガス媒体の組み合わせを採用できる。
【0105】
(4)また、上記各実施形態では、本発明の車両用冷凍サイクル装置を車両空調用冷凍サイクル装置1に適用しているが、これに限らず、冷凍車における冷凍、冷蔵用の車両用冷凍サイクル装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両空調用冷凍サイクル装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る後席側温度式膨張弁の内部構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る後席側温度式膨張弁の感温室内に充填するガス冷媒の特性図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るオイル戻し制御のフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態に係るオイル戻し制御の作動説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る後席側温度式膨張弁の感温室内に封入するガス冷媒の特性図である。
【図7】従来のオイル戻し制御の作動説明図である。
【符号の説明】
【0107】
1…車両空調用冷凍サイクル装置、2…圧縮機、3…凝縮器、4…前席側温度式膨張弁、5…前席側蒸発器、5a…前席側送風ファン、6…後席側温度式膨張弁、6c…弁体、7…後席側蒸発器、7a…後席側送風ファン、64…感温室、70…電気ヒータ、100…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮し吐出する圧縮機(2)と、
前記圧縮機(2)から吐出された冷媒を冷却し凝縮させる凝縮器(3)と、
前記凝縮器(3)で凝縮した冷媒を減圧膨張させる第1の減圧手段(4)と、
前記第1の減圧手段(4)により減圧膨張した冷媒を蒸発させる第1の蒸発器(5)と、
前記第1の蒸発器(5)に送風する第1の送風機(5a)と、
前記凝縮器(3)で凝縮した冷媒を減圧膨張させる第2の減圧手段(6)と、
前記第2の減圧手段(6)により減圧膨張した冷媒を蒸発させる第2の蒸発器(7)と、
前記第2の蒸発器(7)に送風する第2の送風機(7a)とを備え、
前記第1の減圧手段(4)および前記第1の蒸発器(5)と、前記第2の減圧手段(6)および前記第2の蒸発器(7)は、並列に設けられており、
前記第1の送風機(5a)が稼動状態にされ、前記第2の送風機(7a)が停止状態にされ、かつ前記圧縮機(2)が稼動状態にされた前記第1の蒸発器(5)の単独運転を行なう場合に前記第2の蒸発器(7)に対する冷媒流れを断続する流路開閉手段が設けられていない車両用冷凍サイクル装置において、
前記第2の減圧手段(6)は、前記第2の蒸発器(7)の出口側冷媒の温度上昇に応じて圧力が上昇するガス媒体を充填した感温室(64)と、
前記感温室(64)内の前記ガス媒体の圧力上昇によって開度が増加方向へ変化する弁体(6c)と、
通電により前記感温室(64)内の前記ガス媒体を加熱する電気ヒータ(70)とを有し、前記第2の蒸発器(7)の出口側冷媒の過熱度を調整する温度式膨張弁であって、
前記電気ヒータ(70)は、通電状態を通電切替手段により切り替えられ、
前記通電切替手段は、前記第1の蒸発器(5)の単独運転を行なう場合に、前記第1の蒸発器(5)の単独運転の運転時間が所定時間を経過すると、前記電気ヒータ(70)に通電することを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記感温室(64)内の前記ガス媒体として、サイクル内を循環する冷媒の温度−圧力特性と同一の温度−圧力特性を持つガス冷媒を充填し、前記感温室(64)内のガス媒体の温度に対する圧力の変化率がサイクル内を循環する冷媒の温度に対する圧力の変化率と同等となるガスチャージ方式としたことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記感温室(64)内の前記ガス媒体として、サイクル内を循環する冷媒の温度−圧力特性とは異なるガス媒体を充填し、前記感温室(64)内のガス媒体の温度に対する圧力の変化率がサイクル内を循環する冷媒の温度に対する圧力の変化率よりも勾配が緩やかとなり、前記感温室(64)内のガス冷媒の圧力が所定温度以下の低温域ではサイクル内の循環冷媒の圧力よりも高くなるクロスチャージ方式としたことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−19847(P2009−19847A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184309(P2007−184309)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】