説明

冷凍ゼリーの製造方法

【課題】冷凍状態において、一般的な冷蔵状態におけるゼリーと異なる食感を有し、かつ、歯入りのしやすい新食感のゼリーを提供する。
【解決手段】ゼリー液を構成する糖類の組成が、果糖40〜65重量%、ブドウ糖30〜55重量%、その他の糖類0〜10重量%であり、かつ糖度がBrix30〜50であるゼリー液を、加熱溶解後に容器に充填し、5〜20℃の温度帯下で冷却してゲル化させ、得られたゼリーを−20〜−5℃の温度帯下に静置することにより、ゼリー中に微小な氷晶が形成された冷凍ゼリーを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍ゼリーの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、冷凍状態で喫食することで、ゼリーの軟らかい食感の中に微小な氷晶による硬い食感を局所的に有する、新食感のゼリーを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にゼリーは冷蔵状態で喫食されるが、新しい喫食スタイルとして、冷凍状態でゼリーを食する形式も普及し始めている。しかしながら、既存の多くのゼリーは水分を多く含んでおり、凍結により氷晶が大きく析出するとともに、ゼリー液に溶存する糖の再結晶化も生じるため、冷凍状態では歯入りが悪く、非常に硬い食感となってしまう。
【0003】
氷晶の析出や糖の再結晶化を抑制し、耐冷凍性を有するゼリー液の配合として、メチルエステル化率約60〜75%のペクチンと、分子量約350以下の数種の糖とそれ以外の分子量の糖とを含有し、その糖度がBrix約60〜75であるもの(特許文献1参照。)、寒天、澱粉加水分解物、キサンタンガム、有機酸を含有するもの(特許文献2参照。)、DE30〜40のコーンシラップを含有するもの(特許文献3参照。)、二種以上の単糖類または単糖類と糖アルコールとを含有し、その糖度がBrix50以上であるもの(特許文献4参照。)、キサンタンガム、イオタカラギナン、ローカストビーンガム、及びβ−1,3−グルカンを主鎖とする高分子物質を含有するもの(特許文献5参照。)などが知られている。しかしながら、これらのゼリー液の組成は、冷凍状態においても冷蔵状態と同様の軟らかい食感を有することを目的として構成されたものであり、好んで冷凍状態で喫食するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−259551号公報
【特許文献2】特開平2−20254号公報
【特許文献3】特公平6−91800号公報
【特許文献4】特公平6−61228号公報
【特許文献5】特許第2766386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、冷凍状態において、一般的な冷蔵状態におけるゼリーと異なる食感を有し、かつ、歯入りのしやすい新食感のゼリーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の工程を含むことを特徴とするゼリーの製造方法により、上記の課題を解決する。すなわち、ゼリー液を構成する糖類の組成が果糖40〜65重量%、ブドウ糖30〜55重量%、その他の糖類0〜10重量%であり、かつ糖度がBrix30〜50であるゼリー液を、加熱溶解後に容器に充填し、5〜20℃の温度帯下で冷却してゲル化させる工程、得られたゼリーを−20〜−5℃の温度帯下に静置することにより、ゼリー中に微小な氷晶を形成させる工程を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明で示した組成および工程によりゼリーを製造することで、冷凍状態において、ゼリーの軟らかい食感の中に微小な氷晶による硬い食感を局所的に有する、一般的な冷蔵状態のゼリーの食感と異なり、かつ、歯入りのしやすい新食感のゼリーを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明のゼリーの製造方法は、ゼリー液を構成する糖類の組成を果糖40〜65重量%、ブドウ糖30〜55重量%、その他の糖類0〜10重量%とし、かつゼリー液の糖度をBrix30〜50とすること、および得られたゼリーを冷凍状態にすることに特徴がある。
【0009】
前記ゼリー液を構成する糖類の組成は、果糖が40〜65重量%、好ましくは45〜60重量%であり、ブドウ糖が30〜55重量%、好ましくは35〜45重量%、その他の糖類が0〜10重量%である。前記割合がこの範囲を外れると、冷凍状態としたときにゼリー液に溶存する糖の再結晶化が生じやすくなり、全体的に硬い食感となってしまうか、氷晶の形成が抑制されて、冷凍状態においても冷蔵状態と同様の軟らかい食感となってしまう。また、前記その他の糖類とは、ショ糖、異性化糖、乳糖、麦芽糖、転化糖、水飴、粉末水飴、還元麦芽水飴、蜂蜜、トレハロース、パラチノース、キシロース、セルロース、カップリングシュガーなどが挙げられるが、特に限定はない。
【0010】
前記ゼリー液の糖度は、Brix30〜50、好ましくは30〜40とする。Brix30未満であると、冷凍状態にすることでゼリー中に大きな氷晶が形成されて非常に硬い食感となり、Brix50を超えると、冷凍状態においても冷蔵状態と同様の軟らかい食感となってしまう。
【0011】
本発明のゼリーに用いられるゲル化剤としては、ローカストビーンガム、キサンタンガム、寒天、ゼラチン、ジェランガム、グアガム、アラビアガム、蒟蒻マンナン、ペクチン、カラギーナンなどが挙げられるが、特に限定はない。これらのゲル化剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ゲル化剤の配合量は、種類によって多少異なるが、ゼリー液の総重量に対して、0.15〜3.0%程度とすることが好ましい。この配合量が0.15%未満となるとゼリーとしての保形性が得られず、3.0%を超えると粘度が増して充填が困難となる。
【0012】
本発明のゼリーには、上記の糖類やゲル化剤の他、必要に応じて、組織の安定性を向上させるために乳化剤や乳酸カルシウムなどの塩類を配合したり、風味や色調を向上させるためにクエン酸などの酸味料や果汁、フレーバー、色素等を任意に配合したりすることができる。
【0013】
前記ゼリー液の加熱溶解条件としては、85〜95℃で10〜30分間加熱するのが好ましい。
【0014】
本発明において、前記ゼリー液を充填する容器としては、軟質プラスチック材質の袋状のもの、硬質プラスチック材質の筒状のもの、金属系のもの、また紙材質の箱状のものなどが挙げられるが、冷凍に耐えうるものであれば、特に限定はない。
【0015】
前記ゼリー液を冷却してゲル化させる条件としては、5〜20℃で1〜2時間冷却することが好ましい。
【0016】
前記ゼリーを凍結させる条件としては、−20〜−5℃に3時間以上静置させることが好ましい。
【0017】
上記のような本発明の製造方法により、ゼリー中に微小な氷晶を有する新食感の冷凍ゼリーが得られる。前記本発明における微小な氷晶とは、光学顕微鏡下で観察を行ったところ最大辺0.01〜1mm程度の大きさのものであり、この範囲を外れた氷晶が多く存在すると、好ましい食感が得られない。
【実施例】
【0018】
次に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら制限されるものではない。なお、実施例中の組成に関する数字は重量部を意味する。
【0019】
(実施例1)
まず、常法に従い、下記表1に示す実施例1の組成でゼリー液を得た。得られたゼリー液の糖度はBrix32であった。このゼリー液を85℃で20分間加熱殺菌した後、35mm×120mmのスティック状の袋に20gずつ充填し、流水中で冷却してゲル化させた。得られた袋入りゼリーを−18℃の温度下に静置することで、冷凍状態のゼリーを得た。
得られたゼリーは、全体に微小な氷晶が形成されたことで、軟らかい食感の中に局所的に硬い食感を有する非常に新しい食感のゼリーであった。
【0020】
(実施例2)
ゼリー液の組成を下記表1に示す実施例2の組成とする以外は、実施例1と同様の条件にて冷凍状態のゼリーを製造した。得られたゼリー液の糖度はBrix35であった。
得られたゼリーは、実施例1のゼリーと同様の、非常に新しい食感のゼリーであった。
【0021】
(実施例3)
ゼリー液の組成を下記表1に示す実施例3の組成とする以外は、実施例1と同様の条件にて冷凍状態のゼリーを製造した。得られたゼリー液の糖度はBrix32であった。
得られたゼリーは、実施例1のゼリーと同様の、非常に新しい食感のゼリーであった。
【0022】
(実施例4)
ゼリー液の組成を下記表1に示す実施例4の組成とする以外は、実施例1と同様の条件にて冷凍状態のゼリーを製造した。得られたゼリー液の糖度はBrix34であった。
得られたゼリーは、実施例1のゼリーと同様の、非常に新しい食感のゼリーであった。
【0023】
(実施例5)
ゼリー液の組成を下記表1に示す実施例5の組成とする以外は、実施例1と同様の条件にて冷凍状態のゼリーを製造した。得られたゼリー液の糖度はBrix30であった。
得られたゼリーは、実施例1のゼリーと同様の、非常に新しい食感のゼリーであった。
【0024】
(実施例6)
ゼリー液の組成を下記表1に示す実施例6の組成とする以外は、実施例1と同様の条件にて冷凍状態のゼリーを製造した。得られたゼリー液の糖度はBrix50であった。
得られたゼリーは、実施例1のゼリーと同様の、非常に新しい食感のゼリーであった。
【0025】
【表1】

【0026】
(比較例1)
ゼリー液の組成を下記表2に示す比較例1の組成とする以外は、実施例1と同様の条件にて冷凍状態のゼリーを製造した。得られたゼリー液の糖度はBrix35であった。
得られたゼリーは、全体に大きな氷晶が形成され、歯入りがしにくい非常に硬い食感であった。
【0027】
(比較例2)
ゼリー液の組成を下記表2に示す比較例2の組成とする以外は、実施例1と同様の条件にて冷凍状態のゼリーを製造した。得られたゼリー液の糖度はBrix33であった。
得られたゼリーは、全体的に軟らかい食感であり、一般的な冷蔵状態のゼリーと同様な食感であった。
【0028】
(比較例3)
ゼリー液の組成を下記表2に示す比較例3の組成とする以外は、実施例1と同様の条件にて冷凍状態のゼリーを製造した。得られたゼリー液の糖度はBrix26であった。
得られたゼリーは、全体に大きな氷晶が形成され、歯入りがしにくい非常に硬い食感であった。
【0029】
(比較例4)
ゼリー液の組成を下記表2に示す比較例4の組成とする以外は、実施例1と同様の条件にて冷凍状態のゼリーを製造した。得られたゼリー液の糖度はBrix53であった。
得られたゼリーは、全体的に軟らかい食感であり、一般的な冷蔵状態のゼリーと同様な食感であった。
【0030】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼリー液を構成する糖類の組成が、果糖40〜65重量%、ブドウ糖30〜55重量%、その他の糖類0〜10重量%であり、かつ糖度がBrix30〜50であるゼリー液を、加熱溶解後に容器に充填し、5〜20℃の温度帯下で冷却してゲル化させる工程、得られたゼリーを−20〜−5℃の温度帯下に静置することにより、ゼリー中に微小な氷晶を形成させる工程を含むことを特徴とする、冷凍ゼリーの製造方法。