説明

冷凍機

【課題】本発明は、液膜の熱抵抗による凝縮熱伝達特性の悪化を軽減可能な、極低温装置用の冷凍機を提供することを課題とする。
【解決手段】略円筒形の本体部7aの外周側面に複数のフィン7bが形成されてなる熱交換器7が第2ステージ6に熱的に接続されて構成され、超電導磁石に使用されている液体ヘリウムが気化したヘリウムガスを熱交換器7で凝縮するために超電導磁石に取り付けられる冷凍機とする。そして、ヘリウムガスが熱交換器7で凝縮した液体ヘリウムを、複数のフィン7bの間に形成される溝部7cから空洞部7dに流し込むための排出孔7eを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導応用装置などの極低温装置に使用される冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI(magnetic resonance imaging)を利用する装置(以下、MRI装置と称する)など超電導を応用した装置は、超電導磁石の超電導コイルを極低温に維持することが必要な極低温装置であり、冷却材として液体ヘリウムが利用される場合がある。
近年のMRI装置に使用される超電導磁石はヘリウム資源を確保する観点から、気化したヘリウムガスが大気中に放出されることが極めて少なくなるように構成され、2段式ヘリウム冷凍機などを備えて、液体ヘリウムが封入される液溜槽内で気化したヘリウムガスを液化ヘリウムに凝縮するように構成される。
【0003】
2段式ヘリウム冷凍機は、ヘリウムガスを凝縮するための熱交換器を冷却部に直接取りつけるように構成される。また熱交換器には、表面積を拡大して効率よくヘリウムガスを凝縮するための多数のフィンが備わっている。
そして、ヘリウムガスは液溜槽の上方に溜まることから、2段式ヘリウム冷凍機はMRI装置の上方に配置されることが好ましい。
【0004】
一方、MRI装置は、小さなスペースにも設置できるように小型化されることが要求される。特に、天井高さが低い場所にも設置できるように構成されることが要求され、高さを低くすることが求められる。
そこで、MRI装置の冷凍機として2段式ヘリウム冷凍機が利用される場合、MRI装置の上下方向に対して傾斜させて2段式ヘリウム冷凍機を取り付け、上方に高くなることを抑えるように構成されることがある。
【0005】
しかしながら、このように2段式ヘリウム冷凍機を取り付けると、2段式ヘリウム冷凍機の熱交換器で凝縮した液体ヘリウムが、特に、熱交換器のフィンとフィンの間に溜まり、溜まった液体ヘリウムによって液膜が厚くなる。そして、液膜が厚くなると、液膜の熱抵抗によって熱交換器における凝縮熱伝達特性が悪化し、単位時間当たりの凝縮液量が減少して凝縮されないヘリウムガスが大気中に放出されるため、液体ヘリウムを補給する必要がある。
【0006】
例えば特許文献1には、フィンに毛細管路を形成し、この毛細管路を通して液滴を落下させ、液滴の表面積拡大によって伝熱性能を改善する技術が開示されている。
しかしながら、比較的凝縮量が少ない場合は液滴の数が少なく、充分に伝熱性能を改善できないという問題がある。また、フィンに毛細管路を形成するため伝熱面積が減少するという問題もある。
したがって、特許文献1に開示される技術を、そのままMRI装置用の2段式ヘリウム冷凍機に適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−107098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、液膜の熱抵抗による凝縮熱伝達特性の悪化を軽減可能な、極低温装置用の冷凍機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため本発明は、略円筒形の本体部の外周側面に複数のフィンが形成されてなる熱交換器が冷却部に熱的に接続されて構成され、極低温装置に使用されている液体冷媒が気化したガスを前記熱交換器で凝縮するために前記極低温装置に取り付けられる冷凍機とする。そして、前記ガスが前記熱交換器で凝縮した前記液体冷媒を、前記複数のフィンの間の溝部から排除するための排除機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、液膜の熱抵抗による凝縮熱伝達特性の悪化を軽減可能な、極低温装置用の冷凍機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る冷凍機が取り付けられる超電導磁石の断面図である。
【図2】熱交換器の構造を示す斜視図である。
【図3】熱交換器の軸線に沿った方向の断面図である。
【図4】図3のA−A線に沿った断面図であって、上下軸に対して傾斜する軸線を法線とする平面を上下軸と平行になるまで傾斜した平面での断面図である。
【図5】設計変更例に係る熱交換器の断面斜視図である。
【図6】上下軸と平行な排出孔の構造を示す、熱交換器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
例えば、図1に示す超電導磁石100は、超電導コイル3を極低温に維持する必要がある極低温装置であり、MRI装置(図示せず)に備わっている。
図1に示すように、超電導磁石100は、超電導コイル3を内包して液体ヘリウム2(液体冷媒)が封入される液溜槽1が、略円筒形の真空容器10内に収納されて構成される。
真空容器10は内部を真空に維持できる密閉容器であり、内壁には積層断熱層9が形成される。さらに積層断熱層9の内側には、真空容器10に設けられる支持体11によって熱シールド8が支持されて備わっている。
この構成によって、真空容器10の内部、つまり、熱シールド8の内側は外気と熱的に遮断される。
【0013】
支持体11は熱シールド8を支持するとともに、熱シールド8で覆われた空間内に液溜槽1を吊り下げ支持している。この構成によって、液溜槽1は、真空容器10、積層断熱層9、および熱シールド8と接することなく真空容器10内に収納される。
【0014】
液溜槽1は、中軸部1aの周囲に形成される気密の槽であり、液溜槽1の内部には液体ヘリウム2が封入される。また、液溜槽1の中軸部1aの周囲には、液体ヘリウム2に浸漬するように超電導コイル3が巻きつけられる。
【0015】
そして、超電導磁石100には、液溜槽1の内部で液体ヘリウム2が気化したヘリウムガスを冷却して凝縮するための冷凍機4が、ヘリウムガスが溜まる液溜槽1の上部に備わっている。
【0016】
本実施形態に係る冷凍機4は、例えば、冷却部として、第1ステージ5と第2ステージ6を有する2段式ヘリウム冷凍機であり、第2ステージ6には、インジューム箔(図示せず)を介して熱交換器7が熱的に接続されている。
冷凍機4の冷凍性能は、例えば、第1ステージ5の温度が60Kのとき60W、第2ステージ6が4Kのとき1W以上となるような性能が好適である。
【0017】
冷凍機4(2段式ヘリウム冷凍機)は公知のものを使用することができ、その詳細な説明は省略するが、高温側円筒12の先端部に第1ステージ5が備わり、さらに、高温側円筒12の先端部から延びるように、第1ステージ5と熱的に連結する低温側円筒14が備わって構成される。そして、低温側円筒14の先端部に第2ステージ6が備わっている。
また、冷凍機4は、第1ステージ5が高温側円筒12を介して熱シールド8と熱的に接触するように真空容器10に取り付けられ、熱シールド8が第1ステージ5と同じ約60Kに冷却されるように構成される。
【0018】
冷凍機4を真空容器10に取り付けるための冷凍機取付ポート10aは、真空容器10の上部に突出して形成される略円筒形の台座であり、登頂部(真空容器10から離れた端部)は、冷凍機4の高温側円筒12が嵌まり込むように開口している。
冷凍機取付ポート10aは、超電導磁石100の高さ方向を低く抑えるため、上下方向に対し傾斜して形成されることが好ましい。つまり、図1に示すように、冷凍機取付ポート10aの軸線L1(円筒形の中心線)が、超電導磁石100の上下軸Z(上下方向)に対し、例えば、真空容器10の中心線C1の周りに回転した方向に傾斜するように形成される。ここでいう上下方向は、超電導磁石100の上下方向を示す。
【0019】
そして、図1に示すように、冷凍機4は高温側円筒12が冷凍機取付ポート10aに嵌り込んで取り付けられ、シールド部材18によって冷凍機取付ポート10aの開口部が気密にシールドされる。この構成によって、真空容器10の気密性が確保される。
このような、冷凍機4の超電導磁石100への取り付け方法は、従来の冷凍機(2段式ヘリウム冷凍機)を超電導磁石100等に取り付ける方法と同等とすればよい。
【0020】
冷凍機4は高温側円筒12および低温側円筒14の軸線(各円筒の中心線)が略同軸(軸線L2とする)になるように構成され、さらに、冷凍機取付ポート10aの軸線L1と高温側円筒12および低温側円筒14の軸線L2が略同軸になるように、冷凍機4は冷凍機取付ポート10aに取り付けられる。
したがって、高温側円筒12および低温側円筒14の軸線L2が超電導磁石100の上下軸Zに対して傾斜するように冷凍機4が取付けられる。
以下、高温側円筒12および低温側円筒14の軸線L2を冷凍機4の軸線L2とする。
【0021】
第2ステージ6に取り付けられる熱交換器7は、伝熱効率を向上するため第2ステージ6に直接(詳細にはインジューム箔を介して)取り付けられる。
図2に示すように、本実施形態に係る熱交換器7は、第2ステージ6に取り付けられない一端が開放した空洞部7dが形成される略円筒形の本体部7aの外周側面に、多数のフィン7bが備わって形成される。本実施形態に係る熱交換器7のフィン7bは、本体部7aの軸線L3(円筒形の中心線)の方向に延伸する板状の部材が本体部7aの外周側面から径方向外周に向かって立設し、このような板状の部材が外周側面の1周に亘って複数配置され、外周側面が周方向に凹凸の形状となる。なお、熱交換器7は本体部7aおよびフィン7bが熱伝導率の高い素材(銅など)で形成されることが好ましい。
【0022】
熱交換器7は、本体部7aの軸線L3(以下、熱交換器7の軸線L3とする)が冷凍機4の軸線L2と略同軸になるように取り付けられる。その取付方法は限定するものではないが、例えば、本体部7aの外周側面に外側に広がるように形成されるフランジ部7a1と、第2ステージ6の外周側面に外側に広がるように形成されるフランジ部6aと、が対峙するようにインジューム箔(図示せず)を挟んで熱交換器7と第2ステージ6を合わせ、互いのフランジ部7a1、6aをボルトB1等で締結固定する構造とすればよい。
なお、排出孔7e、ガス吸込口7fの詳細は後記する。
【0023】
また、図1に示すように冷凍機4が真空容器10に取り付けられたとき、第2ステージ6および熱交換器7が液溜槽1の内部上方に配置されるように構成される。
そして、第2ステージ6の冷却にともなって熱交換器7が冷却されると、熱交換器7の周囲のヘリウムガスが熱交換器7の表面(特に、図2に示すフィン7bの表面)で液体ヘリウム2に凝縮する。
【0024】
図1に示すように、冷凍機4は、超電導磁石100の上下軸Zに対して軸線L2が傾斜するように真空容器10に取り付けられる。
前記したように、熱交換器7の軸線L3(図2参照)は、冷凍機4の軸線L2と略同軸であることから、熱交換器7の軸線L3も超電導磁石100の上下軸Zに対して傾斜することになり、図2に示すフィン7b、およびフィン7bとフィン7bの間に形成される溝部7cが延伸する方向も上下軸Zに対して傾斜した方向になる。
例えば、図2に示すように、熱交換器7の軸線L3が超電導磁石100(図1参照)の上下軸Z(上下方向)に対して「θ」の傾斜角を有する場合、軸線L3より上方に形成されるフィン7bで凝縮した液体ヘリウム2(図1参照)は、溝部7cに流れ落ちる。
なお、軸線L3より上方とは、例えば、軸線L3を法線とする平面上で軸線L3と直交し、かつ上下軸Zと直交方向の線より超電導磁石100の上方の側とし、軸線L3より下方とは、軸線L3を法線とする平面上で軸線L3と直交し、かつ上下軸Zと直交方向の線より超電導磁石100の下方の側とする。
【0025】
フィン7bは熱交換器7の表面積を拡大して冷却効率を向上するために設けられるものであり、その数は多いほうが熱交換器7の表面積を拡大でき、ひいては、冷却効率を向上できる。
したがってフィン7bとフィン7bの間隔が狭くなり、溝部7cの幅も狭くなる。このことによって、液体ヘリウム2(図1参照)が溝部7cを流れにくい構造になり、溝部7cに流れ落ちた液体ヘリウム2が溝部7cに溜まりやすい。そして、溝部7cに液体ヘリウム2が溜まると、液膜の熱抵抗によって熱交換器7の凝縮熱伝達特性が悪化し、単位時間当たりの凝縮液量が減少する。
【0026】
そこで、本実施形態に係る熱交換器7は、軸線L3が上下軸Zに対して傾斜するように冷凍機4が取り付けられる場合であっても、液膜の熱抵抗によって凝縮熱伝達特性が低下しないように、つまり、液膜の熱抵抗による凝縮熱伝達特性の悪化を軽減可能とするように、凝縮した液体ヘリウム2(図1参照)を効率よく排除する排除機構を備える構成とした。特に、溝部7cの液体ヘリウム2を効率よく排除する構成とした。
具体的に、図2〜4に示すように、溝部7cに液体ヘリウム2の排出孔7eを排除機構として設け、略円筒形の本体部7aの空洞部7dと溝部7cを連通する構成とした。
【0027】
熱交換器7の軸線L3が上下軸Zに対して傾斜角θを有するように、冷凍機4(図1参照)が真空容器10(図1参照)に取り付けられる場合、例えば、軸線L3を法線とする平面を上下軸Zの方向に「90°−θ」だけ傾斜させた平面上で、溝部7cから軸線L3の方向に向かって開口する連通孔(排出孔7e)とする。
【0028】
つまり、本実施形態においては、上下軸Zに対して傾斜している軸線L3を法線とする平面を上下軸Zと平行になるまで上下軸Zの方向に傾斜した平面上で、図4に示すように、溝部7cから軸線L3に向かって、空洞部7dと溝部7cが連通するように設けられる連通孔(排出孔7e)を排除機構とする。
この構成によると、軸線L3より上方のフィン7bで凝縮した液体ヘリウム2(図1参照)は溝部7cに流れ落ち、さらに、排出孔7eを通って空洞部7dに流れ落ちる。空洞部7dは溝部7cより広い空間であり、液体ヘリウム2は傾斜によって熱交換器7(空洞部7d)から流れ落ちやすい。したがって、フィン7bで凝縮した液体ヘリウム2を熱交換器7から効率よく排除できる。
【0029】
なお、排出孔7eは軸線L3より下方の溝部7cに形成されていてもよいが、軸線L3より下方では、フィン7bで凝縮した液体ヘリウム2(図1参照)は流れ落ちやすいため、排出孔7eを形成する必要はない。
また、図2,3には1つの溝部7cに複数の排出孔7eが設けられる構成が図示されているが、この構成は限定されるものではない。例えば、1つの溝部7cに1つの排出孔7eが設けられる構成であってもよい。
また、排出孔7eの形状も限定されるものではなく、例えば、溝部7cの延伸方向に沿って長く開口する形状の排出孔7eであってもよい。
【0030】
また、図2,3に示すように、例えば本体部7aにガス吸込口7fが形成される構成であってもよい。
ガス吸込口7fは本体部7aと空洞部7dを連通する管路であり、例えば空洞部7dの根元側(第2ステージ6側)に、排出孔7eと直交する方向に開口している。
このようなガス吸込口7fが開口すると、熱交換器7の周囲のヘリウムガスがガス吸込口7fを通って空洞部7dに流れ込み、空洞部7dに流れ込んだヘリウムガスは、空洞部7dの周囲で液体ヘリウム2(図1参照)に凝縮する。
このように、ガス吸込口7fを設けることによって、空洞部7dの内部でもヘリウムガスを凝縮することができ、熱交換器7での凝縮量を増やすことができる。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る冷凍機4(図1参照)は、熱交換器7(図2参照)に形成される複数のフィン7b(図2参照)の間の溝部7c(図2参照)に排出孔7e(図3参照)を設けることによって、液体ヘリウム2(図1参照)を溝部7cから効果的に排除することができる。そして、液体ヘリウム2の液膜の熱抵抗による凝縮熱伝達特性の悪化を軽減することができ、単位時間当たりの凝縮液量の減少を抑えることができる。
【0032】
また、ガス吸込口7fを設けることによってヘリウムガスの凝縮量を増やすことができ、このことによっても単位時間当たりの凝縮液量の減少を抑えられる。
【0033】
《設計変更例》
本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、図5に示すように、略円筒形の本体部70aの外周側面から径方向外方に向かって立設し、周方向に延びて形成される複数のフィン70b(つまり、本体部70aの外周側面から径方向外方に広がるフランジ状の複数のフィン70b)を備える熱交換器70とすることも可能である。
このような熱交換器70においても、軸線L3より上方には、フィン70bとフィン70bの間の溝部70cと空洞部70dを連通する排出孔70eを形成することで、溝部70cの液体ヘリウム2(図1参照)を空洞部70dに流し込むことができ、さらに空洞部70dから落下させることが可能である。
したがって、熱交換器70でヘリウムガスが凝縮した液体ヘリウム2を熱交換器70から効率よく排除することができる。
【0034】
この場合の排出孔70eも、超電導磁石100(図1参照)の上下軸Zに対して傾斜角θだけ傾斜している軸線L3を法線とする平面を、「90°−θ」だけ上下軸Zの方向に傾斜させた平面上で、つまり、上下軸Zに対して傾斜している軸線L3を法線とする平面を上下軸Zと平行になるまで上下軸Zの方向に傾斜した平面上で、溝部70cから軸線L3の方向に向かって開口する排出孔70eとすればよい。
【0035】
また、熱交換器70の軸線L3が超電導磁石100(図1参照)の上下軸Zに対して傾斜角θで傾斜している場合、図5に示す形状のフィン70bを有する熱交換器70では、液体ヘリウム2(図1参照)の、軸線L3に沿った方向への流れはフィン70bによって堰き止められる。
そこで、例えばフィン70bに複数のスリット71を形成する構成としてもよい。スリット71は、例えば、フィン70bの外縁部から本体部70a(つまり、フィン70bの根元)まで達する切り込みで形成される間隙である。
溝部70cの液体ヘリウム2はスリット71を通って軸線L3に沿った方向に流れ、熱交換器70の先端部まで到達するとそこから流れ落ちる。この構成によっても液体ヘリウム2を熱交換器70から効率よく排除することができる。
【0036】
なお、スリット71は軸線L3より上方のみに形成される構成であってもよい。この構成によると、フィン70bの面積を小さくすることを抑制でき、熱交換器70の表面積が小さくなることを抑えられる。
【0037】
また、図4に示す排出孔7eは、上下軸Zに対して傾斜している軸線L3を法線とする平面を上下軸Zと平行になるまで上下軸Zの方向に傾斜した平面上で、溝部7cから軸線L3の方向に向かって開口しているが、例えば、図6に示すように、全ての排出孔7eが上下軸Zと平行な方向に開口する構成であってもよい。
この構成の場合、上下軸Zが鉛直方向になるように超電導磁石100(図1参照)が設置されると、全ての排出孔7eは鉛直方向に開口することになる。したがって、液体ヘリウム2(図1参照)を排出孔7eに効率よく流し込むことができ、熱交換器7から効率よく液体ヘリウム2を排除できる。
【0038】
この場合、図6に示すように、軸線L3より上方の溝部7cと、軸線L3より下方の他の溝部7cを連通する排出孔7e1が形成される場合がある。
液体ヘリウム2は排出孔7e1に流れ込んだ場合、軸線L3より下方の溝部7cから流れ落ちるため、このような排出孔7e1であっても熱交換器7から液体ヘリウム2を効率よく排除できる。
【0039】
また、例えば熱交換器7(図2参照)の表面(本体部7a(図2参照)および、フィン7b(図2参照)の少なくとも一方の表面)が、例えばフッ素樹脂のコーティングなどの撥液加工されている構成とすれば、より効果的に液体ヘリウム2(図1参照)を熱交換器7から排除することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 液溜槽
2 液体ヘリウム(液体冷媒)
4 冷凍機
5 第1ステージ(冷却部)
6 第2ステージ(冷却部)
7,70 熱交換器
7a,70a 本体部
7b,70b フィン
7c,70c 溝部
7e,70e 排出孔(排除機構)
7f ガス吸込口
100 超電導磁石(極低温装置)
L1 軸線(冷凍機取付ポートの軸線)
L2 軸線(冷凍機の軸線)
L3 軸線(本体部の軸線、熱交換器の軸線)
Z 上下軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形の本体部の外周側面に複数のフィンが形成されてなる熱交換器が冷却部に熱的に接続されて構成され、
極低温装置に使用されている液体冷媒が気化したガスを前記熱交換器で凝縮するために前記極低温装置に取り付けられる冷凍機であって、
前記ガスが前記熱交換器で凝縮した前記液体冷媒を、前記複数のフィンの間の溝部から排除するための排除機構を備えることを特徴とする冷凍機。
【請求項2】
前記排除機構は、
前記本体部の空洞部と前記溝部を連通する連通孔であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍機。
【請求項3】
前記空洞部に前記ガスを吸込むためのガス吸込口を設けたことを特徴とする請求項2に記載の冷凍機。
【請求項4】
前記複数のフィンは、前記本体部の外周側面から径方向外側に向かって立設し、前記本体部の軸線方向に延伸していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の冷凍機。
【請求項5】
前記複数のフィンは、前記本体部の外周側面から径方向外側に向かって立設し、周方向に延びて形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の冷凍機。
【請求項6】
前記複数のフィンにスリットを形成したことを特徴とする請求項5に記載の冷凍機。
【請求項7】
前記本体部および前記複数のフィンの少なくとも一方の表面が撥液加工されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の冷凍機。
【請求項8】
前記本体部の軸線が前記極低温装置の上下方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の冷凍機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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