説明

冷凍米飯の製造方法並びに冷凍米飯

【課題】 冷凍処理された米飯について、解凍容易性を備えることで、短時間で解凍・加温が可能であるとともに、米飯の腐敗を抑制しつつ風味を損なわずに保存・運搬を行うことが可能であるとともに、食の安全性が担保された冷凍米飯並びにその製造方法の提供を図る。
【解決手段】 冷凍米飯の製造方法において、中空部成形シャフトが備えられた型枠に炊飯済み米飯を詰めることで略中心部に中空部が成形された状態で該米飯を所定形状に成形する形状成形工程と、前記形状成形工程により成形された米飯を冷凍する冷凍工程と、から成る製造方法を採用する。あるいは、型枠に炊飯済み米飯を詰めることで該米飯を所定形状に成形する形状成形工程と、前記形状成形工程により成形された米飯の略中心部に中空部成形シャフトによって中空部を成形する中空部成形工程と、前記中空部成形工程により成形された米飯を冷凍する冷凍工程と、から成る製造方法を採用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍米飯に関し、詳しくは、解凍容易性を備えた冷凍米飯並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、炊飯済みの米飯を保存する場合に、冷凍処理が行われている。これは、冷凍することで腐敗菌の繁殖を抑え、腐敗速度を遅らせる目的で行われるものである。かかる冷凍処理された米飯を食する場合には、電子レンジによる電磁解凍及び加熱処理がされることとなるが、解凍に時間が掛かり過ぎたり、また、米飯外縁部と内部とに解凍速度の差が生じ、外縁部は熱い状態となっていても内部は未だ冷凍あるいは冷たい状態のままであることがあった。
【0003】
上記問題を解決するには、冷凍せずに保存しなければならない。しかしながら、そのためには腐敗を抑制するべく合成保存料など種々の添加剤が必要となってしまい、米飯本来の風味を損なってしまうだけでなく、それを食する人体にも少なからず健康上の影響を及ぼす結果となってしまう。
【0004】
【特許文献1】特開2009―82025号公報
【特許文献2】特開2004―49065号公報
【特許文献3】特開2000―316499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、冷凍処理された米飯について、解凍容易性を備えることで、短時間で解凍・加温が可能であるとともに、米飯の腐敗を抑制しつつ風味を損なわずに保存・運搬を行うことが可能であるとともに、食の安全性が担保された冷凍米飯並びにその製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、解凍することで食することが可能な冷凍米飯の製造方法であって、中空部成形シャフトが備えられた型枠に炊飯済み米飯を詰めることで略中心部に中空部が成形された状態で該米飯を所定形状に成形する形状成形工程と、前記形状成形工程により成形された米飯を冷凍する冷凍工程と、から構成されている。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、解凍することで食することが可能な冷凍米飯の製造方法であって、型枠に炊飯済み米飯を詰めることで該米飯を所定形状に成形する形状成形工程と、前記形状成形工程により成形された米飯の略中心部に中空部成形シャフトによって中空部を成形する中空部成形工程と、前記中空部成形工程により成形された米飯を冷凍する冷凍工程と、から構成されている。
【0008】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の方法により、製造された冷凍米飯の発明である。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる冷凍米飯の製造方法によれば、簡単な方法で解凍容易性を備えた冷凍米飯を製造することが可能である。製造された冷凍米飯は、風味を損なうことなく、腐敗も充分に抑制することができ、解凍・加温処理による調理時間も従来に比し飛躍的に短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる冷凍米飯の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明にかかる冷凍米飯の製造方法を示す説明図である。
【図3】本発明にかかる冷凍米飯の製造方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明にかかる冷凍米飯の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、型枠1に詰められて所定形状に成形された米飯R1の冷凍処理に際し、略中心部に中空部Hを成形したことを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる冷凍米飯R2の製造方法並びに冷凍米飯R2の実施形態を、図面に基き説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明にかかる冷凍米飯R2の製造方法を示すフローチャートであり、図2は、本発明にかかる冷凍米飯R2の製造方法を示す説明図である。
すなわち、該冷凍米飯R2の製造方法は、図1に示すように、形状成形工程と、冷凍工程と、から構成されている。
【0013】
形状成形工程は、型枠1に炊飯済み米飯R1を詰めることで該米飯を所定形状に成形する工程である。具体的には、炊飯済み米飯R1を略円筒形状に成形すべく、半円筒形状であって中空の上枠及び下枠がヒンジ2等により回動自在に連結された型枠1を用意し、下枠の中空内に炊飯済み米飯R1を詰める。次に、炊飯済み米飯R1を下枠の中空内に詰めた状態で、該下枠に上枠で蓋をするように上枠を回動させ、上方から詰められた炊飯済み米飯R1を押さえ込む。このとき、該型枠1内には、中空部成形シャフト3が備えられている。
なお、中空部成形シャフト3の形状は、棒状であれば特に限定するものではないが、例えば、略円筒形状や多角筒形状などが考え得る。
【0014】
充分に炊飯済み米飯R1を押さえ込んだ後、今度は上枠を上方へ開放し、中空部成形シャフト3を抜いて、下枠から炊飯済み米飯R1を取り出す。これにより、所定形状に成形された炊飯済み米飯R1が完成する。なお、完成した炊飯済み米飯R1の形状は、略円筒形状であって、その略中心部に中空部Hが成形された状態となっている。
このとき、成形すべき中空部Hの径については、炊飯済み米飯R1の厚みとの関係で適宜決定される。
また、成形される中空部Hについて、炊飯済み米飯R1の略中心部を貫通するように成形することも可能であり、あるいは、炊飯済み米飯R1における側方端部から所定中間位置までを中空部Hとすることも考え得る。
【0015】
前記形状成形工程により成形された炊飯済み米飯R1について、次に冷凍工程が施される。すなわち、冷凍工程とは、所定の冷凍装置Fにより、略円筒形状であってその略中心部に中空部Hが成形された状態に成形された炊飯済み米飯R1を、冷凍する工程である。冷凍装置Fや冷凍手段については、特に限定するものではなく、従来からある食品の冷凍手段を用いればよい。また、冷凍温度についても特に限定はなく、用いられる冷凍手段に応じた温度設定が可能である。
【0016】
かかる冷凍工程における冷凍手段について、例えば、瞬間冷凍による手段を用いることが望ましい。すなわち、所定の冷凍装置により、約−18℃前後で瞬間冷凍する手段である。かかる手段を採用することにより、炊飯済み米飯R1の風味を損なうことなく冷凍することが可能となる。
【0017】
以上の工程を経て、本発明にかかる冷凍米飯R2は完成する。完成した冷凍米飯R2は、適宜包装され、コンビニエンスストアや各種飲食店などに搬送され、搬送先にて解凍・調理がなされることとなる。
【0018】
なお、冷凍米飯R2を解凍・加温する場合には、電子レンジを使用して電磁加熱されることで行われる。このとき、該冷凍米飯R2には、略中心部に中空部Hが成形されているため、解凍・加温において冷凍米飯R2の外周面から加熱されるのはもちろんのこと、中空部Hを介して冷凍米飯R2の内部からも加熱されることとなって、非常に短い時間で解凍・加温が可能となる。
また、解凍・加温がなされた後の冷凍米飯R2は、加温により体積が膨らんで、略中心部に成形された中空部Hは、当初成形した中空部Hよりも小径な状態となる。
【実施例2】
【0019】
次に、本発明にかかる冷凍米飯の製造方法の他の実施例について説明する。図3は、本発明にかかる冷凍米飯の製造方法を示すフローチャートであり、図4は、本発明にかかる冷凍米飯の製造方法を示す説明図である。
すなわち、該冷凍米飯の製造方法は、図3に示すように、形状成形工程と、中空部成形工程と、冷凍工程と、から構成されている。
【0020】
形状成形工程は、上記実施例1同様、型枠1に炊飯済み米飯R1を詰めることで該米飯を所定形状に成形する工程である。具体的には、炊飯済み米飯R1を略円筒形状に成形すべく、半円筒形状であって中空の上枠及び下枠がヒンジ2等により回動自在に連結された型枠1を用意し、下枠の中空内に炊飯済み米飯R1を詰める。次に、炊飯済み米飯R1を下枠の中空内に詰めた状態で、該下枠に上枠で蓋をするように上枠を回動させ、上方から詰められた炊飯済み米飯R1を押さえ込む。これにより、所定形状に成形された炊飯済み米飯R1が完成する。なお、完成した炊飯済み米飯R1の形状は、略円筒形状となっている。
【0021】
前記形状成形工程により成形された炊飯済み米飯R1について、次に中空部成形工程が施される。すなわち、型枠1内で押さえ込まれた炊飯済み米飯R1に対し、側方から中空部成形シャフト3を差し込んで略中心部の米飯R1を押し出すことで、中空部Hを成形する工程である。これにより、型枠1内で略円筒形状に成形された炊飯済み米飯R1の略中心部に、中空部Hが成形される。
なお、中空部成形シャフト3の形状は、棒状であれば特に限定するものではないが、例えば、略円筒形状や多角筒形状などが考え得る。
このとき、成形すべき中空部Hの径については、炊飯済み米飯R1の厚みとの関係で適宜決定される。
また、成形される中空部Hについて、炊飯済み米飯R1の略中心部を貫通するように成形することも可能であり、あるいは、炊飯済み米飯R1における側方端部から所定中間位置までを中空部Hとすることも考え得る。
【0022】
前記中空部成形工程が完了した後、型枠1の上枠を上方へ開放し、下枠から炊飯済み米飯R1を取り出す。これにより、所定形状に成形された炊飯済み米飯R1が完成する。なお、完成した炊飯済み米飯R1の形状は、略円筒形状であって、その略中心部に中空部Hが成形された状態となっている。
【0023】
前記形状成形工程並びに中空部成形工程を経て成形された炊飯済み米飯R1について、次に冷凍工程が施される。すなわち、冷凍工程とは、所定の冷凍装置Fにより、略円筒形状であってその略中心部に中空部Hが成形された状態に成形された炊飯済み米飯R1を、冷凍する工程である。冷凍装置Fや冷凍手段については、上記実施例1と同様、特に限定するものではなく、従来からある食品の冷凍手段を用いればよい。また、冷凍温度についても特に限定はなく、用いられる冷凍手段に応じた温度設定が可能である。
【0024】
以上の工程を経て、本発明にかかる冷凍米飯R2は完成する。完成した冷凍米飯R2は、適宜包装され、コンビニエンスストアや各種飲食店などに搬送され、搬送先にて解凍・調理がなされることとなる。なお、冷凍米飯R2の解凍・加温の方法並びに結果物の状態については、上記実施例1と同様である
【0025】
以上、本発明にかかる冷凍米飯の製造方法について説明したが、これらはあくまで例示であって、本発明が上記した実施例や図示した構造に限定されるものではなく、本発明の趣旨・構成に反しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記各実施例において、本発明に使用する型枠1並びに完成する冷凍米飯R2が略円筒形状である場合について説明したが、多角筒形状や俵形状その他の形状であっても構わない。
また、記各実施例において、本発明に使用する型枠1の構造について、上枠と下枠とがヒンジ2により回動可能に連結された構造として説明したが、必ずしも上枠と下枠とを連結する必要はなく、回動機構がヒンジ2である必要もない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、米飯を使用した食品加工の分野において、保存性・運搬性等に鑑み、少なからず人体の健康上影響を及ぼす化学薬剤等の添加剤を用いることなく、冷凍による手段を採用するもので、かかる冷凍による問題点、すなわち解凍・加温の均一性を担保するという問題点を、従来ない手法を採用することで飛躍的かつ画期的に解決したものである。したがって、食品の安全性が叫ばれている今日の食品業界において、本発明の産業上の利用可能性は非常に大きいといえる。
【符号の説明】
【0027】
1 型枠
2 ヒンジ
3 中空部成形シャフト
F 冷凍装置
H 中空部
R1 炊飯済み米飯
R2 冷凍米飯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解凍することで食することが可能な冷凍米飯の製造方法であって、
中空部成形シャフトが備えられた型枠に炊飯済み米飯を詰めることで略中心部に中空部が成形された状態で該米飯を所定形状に成形する形状成形工程と、
前記形状成形工程により成形された米飯を冷凍する冷凍工程と、
から成ることを特徴とする冷凍米飯の製造方法。
【請求項2】
解凍することで食することが可能な冷凍米飯の製造方法であって、
型枠に炊飯済み米飯を詰めることで該米飯を所定形状に成形する形状成形工程と、
前記形状成形工程により成形された米飯の略中心部に中空部成形シャフトによって中空部を成形する中空部成形工程と、
前記中空部成形工程により成形された米飯を冷凍する冷凍工程と、
から成ることを特徴とする冷凍米飯の製造方法。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の方法により、製造されたことを特徴とする冷凍米飯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−92070(P2011−92070A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248374(P2009−248374)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(507345262)株式会社ヘラクレスジャパン (1)
【Fターム(参考)】