説明

冷凍装置

【課題】メイン圧縮機のみが長期間使用されることがあったとしても、該メイン圧縮機側の潤滑油が不足し、潤滑不良に陥る可能性を解消することができる冷凍装置を提供することを目的とする。
【解決手段】単独で運転される複数台の圧縮機2,3からの吐出配管10C,10Dが逆止弁20,21を介して合流されるように並列に接続され、その第1圧縮機2がメイン圧縮機、第2圧縮機3がスタンバイ用圧縮機とされている冷凍装置1において、第1圧縮機2からの第1吐出配管10Cが上向きに配設され、この上向きの第1吐出配管10Cに、該第1吐出配管10Cに設けられている逆止弁20の下流側で第2圧縮機3からの第2吐出配管10Dが横向き合流されるとともに、該第2吐出配管10Dに設けられている逆止弁21の上流側に立ち上り部22が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1系統の冷凍サイクルに並列に接続されている複数台の圧縮機が1台ずつ単独で運転される冷凍装置であって、特に冷凍車等に搭載される輸送用冷凍装置に適用して好適な冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍車両に搭載される輸送用冷凍装置の1つに、圧縮機を車両の走行用エンジンにより駆動するようにした直結方式の冷凍装置がある。この冷凍装置は、車両が走行している場合は、走行用エンジンにより圧縮機を駆動して冷却運転できるが、車両を駐車した状態で予冷運転や保冷運転を行う場合は、通常走行用エンジンを停止するようにしている。このため、走行用エンジンで駆動される圧縮機とは別に、商用電源によって駆動されるスタンバイ用の電動圧縮機が搭載され、走行用エンジンが停止中でも予冷運転や保冷運転が行えるようにされている。
【0003】
上記の冷凍装置では、1系統の冷凍サイクル中に1台ずつ単独で運転される複数台の圧縮機が並列に接続されることになるため、運転側の圧縮機から吐出された冷媒および潤滑油が休止側の圧縮機に流れ込まないように各圧縮機の吐出配管に逆止弁を設け、該逆止弁の下流側で各吐出配管を合流させている。また、この逆止弁の下流側の合流部では、運転中の圧縮機から冷媒と共に吐出された潤滑油が、停止中の圧縮機側に流入しないように合流部に立ち上り部を設けている。
【0004】
しかし、この立ち上り部は、高さを十分に確保しておかないと、潤滑油が立ち上り部を超えて逆止弁の閉止面に移動し、圧力差や路面振動等によって逆止弁から停止中の圧縮機側に微量ずつ漏洩することがある。特に、この種冷凍装置では、稀に走行用エンジンで駆動されるメイン圧縮機のみが長期間使用されることがあり、このような場合に、潤滑油の移動によって走行用エンジン駆動のメイン圧縮機側において、潤滑油が不足し、潤滑不良に至る可能性があった。
【0005】
一方、特許文献1,2には、走行用のエンジンにより駆動されるメイン圧縮機側の吐出配管に対して、該吐出配管に設けられている逆止弁の下流側においてスタンバイ用の電動圧縮機からの吐出配管を水平横向きに逆止弁を介して接続しているものがそれぞれ図示されている(各々の図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−281202号公報(図1参照)
【特許文献2】特開2009−8361号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように、スタンバイ用の電動圧縮機からの吐出配管を水平横向きに逆止弁を介して接続した構成としても、逆止弁の閉止面に付着した油が圧力差や路面振動等によって逆止弁から停止中の圧縮機側に微量ずつ漏洩して溜り込むことは避けられない。従って、上記の如く、走行用エンジンで駆動される圧縮機のみが長期間使用された場合に、潤滑油の移動により走行用エンジンで駆動されるメイン圧縮機側において、潤滑油が不足する事態となり、潤滑不良が発生する可能性を払拭仕切れていなかった。
【0008】
特に、この種の冷凍装置では、走行用エンジンで駆動されるメイン圧縮機とスタンバイ用の電動圧縮機とが離れた位置に装着されるため、一方の圧縮機への潤滑油の偏りを解消する手段として均油管等を採用することができず、運転していない停止中の圧縮機側に極力潤滑油が流出しないように機器を設計する必要がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、メイン圧縮機のみが長期間使用されることがあったとしても、該メイン圧縮機側の潤滑油が不足し、潤滑不良に陥る可能性を解消することができる冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明の冷凍装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる冷凍装置は、1系統の冷凍サイクルに、1台ずつ単独で運転される複数台の第1圧縮機および第2圧縮機が、各吐出配管に設けられている逆止弁を介して合流されるように並列に接続されているとともに、前記第1圧縮機がメイン圧縮機、前記第2圧縮機がスタンバイ用圧縮機とされている冷凍装置において、前記第1圧縮機からの第1吐出配管が上向きに配設され、この上向きの前記第1吐出配管に、該第1吐出配管に設けられている前記逆止弁の下流側で前記第2圧縮機からの第2吐出配管が横向き合流されるとともに、該第2吐出配管に設けられている前記逆止弁の上流側に立ち上り部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、メイン圧縮機である第1圧縮機からの第1吐出配管が上向きに配設され、この上向きの第1吐出配管に、該第1吐出配管に設けられている逆止弁の下流側でスタンバイ用圧縮機である第2圧縮機からの第2吐出配管が横向きに合流されるとともに、該第2吐出配管に設けられている逆止弁の上流側に立ち上り部が設けられているため、メイン圧縮機である第1圧縮機から吐出された冷媒ガス中に含まれている潤滑油が、上向きに配設されている第1吐出配管側から、この第1吐出配管に横向きに合流されている第2圧縮機の第2吐出配管側に逆止弁および立ち上り部を超えて漏洩することはなく、停止中の第2圧縮機内への油の溜り込みを防止することができる。従って、仮にメイン圧縮機の第1圧縮機のみが長期間使用されることがあったとしても、第1圧縮機側の潤滑油が不足状態に至ることはなく、第1圧縮機が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができる。
【0012】
さらに、本発明にかかる冷凍装置は、1系統の冷凍サイクルに、1台ずつ単独で運転される複数台の第1圧縮機および第2圧縮機が、各吐出配管に設けられている逆止弁を介して合流されるように並列に接続されているとともに、前記第1圧縮機がメイン圧縮機、前記第2圧縮機がスタンバイ用圧縮機とされている冷凍装置において、前記第1圧縮機からの第1吐出配管が横向きに配設され、この横向きの前記第1吐出配管に、該第1吐出配管に設けられている前記逆止弁の下流側で前記第2圧縮機からの第2吐出配管が前記逆止弁を介して下向きに合流されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、メイン圧縮機である第1圧縮機からの第1吐出配管が横向きに配設され、この横向きの第1吐出配管に、該第1吐出配管に設けられている逆止弁の下流側でスタンバイ用圧縮機である第2圧縮機からの第2吐出配管が逆止弁を介して下向きに合流されているため、メイン圧縮機である第1圧縮機から吐出された冷媒ガス中に含まれている潤滑油が、横向きに配設されている第1吐出配管側から、この第1吐出配管に下向きに合流されている第2圧縮機からの第2吐出配管側に逆止弁および上向きの第2吐出配管を越えて漏洩することはなく、停止中の第2圧縮機内への油の溜り込みを防止することができる。従って、仮にメイン圧縮機の第1圧縮機のみが長期間使用されることがあったとしても、第1圧縮機側の潤滑油が不足状態に至ることはなく、第1圧縮機が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができる。
【0014】
さらに、本発明にかかる冷凍装置は、1系統の冷凍サイクルに、1台ずつ単独で運転される複数台の第1圧縮機および第2圧縮機が、各吐出配管に設けられている逆止弁を介して合流されるように並列に接続されているとともに、前記第1圧縮機がメイン圧縮機、前記第2圧縮機がスタンバイ用圧縮機とされている冷凍装置において、前記第1圧縮機からの第1吐出配管に設けられている前記逆止弁の下流側にオイルセパレータが設けられ、該オイルセパレータから出ている吐出配管に前記第2圧縮機からの第2吐出配管が前記逆止弁を介して合流されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、メイン圧縮機である第1圧縮機からの第1吐出配管に設けられている逆止弁の下流側にオイルセパレータが設けられ、該オイルセパレータから出ている吐出配管に第2圧縮機からの第2吐出配管が逆止弁を介して合流されているため、メイン圧縮機である第1圧縮機から吐出された冷媒ガス中に含まれている潤滑油は、オイルセパレータにより分離され、第1圧縮機に戻されることから、該油がオイルセパレータからの吐出配管に逆止弁を介して合流されている第2圧縮機からの第2吐出配管側に逆止弁を超えて漏洩し、第2吐出配管を経て停止中の第2圧縮機内に溜り込むことがなくなる。従って、仮にメイン圧縮機である第1圧縮機のみが長期間使用されることがあったとしても、第1圧縮機側の潤滑油が不足状態に至ることはなく、第1圧縮機が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができる。
【0016】
さらに、本発明の冷凍装置は、上記の冷凍装置において、前記オイルセパレータからの吐出配管が上向きに配設され、該吐出配管に前記第2圧縮機からの第2吐出配管が横向きに合流されるとともに、該第2吐出配管に設けられている前記逆止弁の上流側に立ち上り部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、オイルセパレータからの吐出配管が上向きに配設され、該吐出配管に第2圧縮機からの第2吐出配管が横向きに合流されるとともに、該第2吐出配管に設けられている逆止弁の上流側に立ち上り部が設けられているため、オイルセパレータで油が分離仕切れなかったとしても、その潤滑油が横向きに配設されているオイルセパレータからの吐出配管側から、該吐出配管に横向きに合流されている第2圧縮機からの第2吐出配管側に逆止弁および立ち上り部を超えて漏洩することはなく、停止中の第2圧縮機内への油の溜り込みを防止することができる。従って、仮にメイン圧縮機である第1圧縮機のみが長期間使用されることがあったとしても、第1圧縮機側の潤滑油が不足状態に至ることはなく、第1圧縮機が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができる。
【0018】
さらに、本発明の冷凍装置は、上記の冷凍装置において、前記オイルセパレータからの吐出配管が横向きに配設され、該吐出配管に前記第2圧縮機からの第2吐出配管が前記逆止弁を介して下向きに合流されていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、オイルセパレータからの吐出配管が横向きに配設され、該吐出配管に第2圧縮機からの第2吐出配管が前記逆止弁を介して下向きに合流されているため、オイルセパレータで油が分離仕切れなかったとしても、その潤滑油が横向きに配設されているオイルセパレータからの吐出配管側から、該吐出配管に下向きに合流されている第2圧縮機からの第2吐出配管側に逆止弁および上向きの第2吐出配管を越えて漏洩することはなく、停止中の第2圧縮機内への油の溜り込みを防止することができる。従って、仮にメイン圧縮機である第1圧縮機のみが長期間使用されることがあったとしても、第1圧縮機側の潤滑油が不足状態に至ることはなく、第1圧縮機が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができる。
【0020】
また、本発明の冷凍装置は、上述のいずれかの冷凍装置において、前記第1圧縮機が、冷媒と共に前記冷凍サイクル内を循環する油滴により潤滑されるミスト潤滑方式の開放型圧縮機とされ、前記第2圧縮機が、油溜りに溜められている油を強制給油して潤滑する強制潤滑方式の電動圧縮機とされていることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、第1圧縮機が、冷媒と共に冷凍サイクル内を循環する油滴により潤滑されるミスト潤滑方式の開放型圧縮機とされ、第2圧縮機が、油溜りに溜められている油を強制給油して潤滑する強制潤滑方式の電動圧縮機とされているため、第1圧縮機の運転中は冷凍サイクル内を循環する油の循環量が必然的に多くなるが、この油が両圧縮機の吐出側において停止中の第2圧縮機側に漏洩し、溜り込むのを上述の通り防止することができる。従って、メイン圧縮機の第1圧縮機が運転中、冷凍サイクル内を循環する潤滑油の油量を十分に確保することができ、第1圧縮機が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、運転中の第1圧縮機から冷媒ガスと共に吐出された潤滑油が、第1圧縮機の第1吐出配管側から、第2圧縮機の第2吐出配管側に逆止弁を超えて漏洩することはなく、停止中の第2圧縮機内への油の溜り込みを防止することができるため、仮にメイン圧縮機である第1圧縮機のみが長期間使用されることがあったとしても、第1圧縮機側の潤滑油が不足状態に至ることはなく、第1圧縮機が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る冷凍装置の冷媒回路図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る冷凍装置の冷媒回路の主要部分のみの回路図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る冷凍装置の冷媒回路の主要部分のみの回路図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る冷凍装置の冷媒回路の主要部分のみの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係る冷凍装置の冷媒回路図が示されている。この冷凍装置1は、冷凍車に搭載される直結方式の輸送用冷凍装置であり、冷媒を圧縮する2台の第1圧縮機2および第2圧縮機3と、ファン4を備え、圧縮された高温高圧の冷媒ガスを凝縮液化する凝縮器5と、液化された高圧冷媒を断熱膨張させて低圧の気液二相冷媒とする膨張弁6と、ファン7を備え、気液二相冷媒を蒸発させる蒸発器8と、蒸発した低圧冷媒ガス中の液分を分離し、ガス冷媒のみを第1および第2圧縮機2,3に吸い込ませるアキュームレータ9とを冷媒配管10により順次接続して構成された冷凍サイクル11を有している。
【0025】
第1圧縮機2は、冷凍車のエンジンルーム内に設置され、車両走行用のエンジン12により電磁クラッチ13を介して駆動されるメイン圧縮機であり、圧縮機構が収容されるハウジング内に駆動源を持たず、小型軽量化が可能な開放型の圧縮機が採用されている。開放型圧縮機は、公知の如くハウジングから駆動軸が外部に突出された構成とされ、駆動軸に設けられている電磁クラッチ13の断続によって走行用エンジン12から動力を得て駆動されるようになっている。また、この第1圧縮機2には、冷媒中に溶解された潤滑油を冷媒と共に冷凍サイクル11内に循環させ、吸入冷媒ガスに含まれるミスト状の潤滑油で第1圧縮機2の摺動箇所を潤滑する公知のミスト潤滑方式が採用されている。
【0026】
第2圧縮機3は、車両のシャーシ下等のスペースに設置され、走行用エンジン12が停止される予冷運転時や保冷運転時に運転されるスタンバイ用圧縮機であり、商用電源から電源ケーブル14を介して得られる電力を駆動源とする電動モータにより駆動されるモータ内蔵の電動圧縮機とされている。このスタンバイ用圧縮機3には、ハウジング内に電動モータを内蔵している密閉型または半密閉型電動圧縮機を用いることができる。また、スタンバイ用圧縮機3の潤滑方式には、圧縮機ハウジング内に油溜めを設け、この油溜めに充填された潤滑油をポンプ等により摺動箇所に強制給油して潤滑する公知の強制潤滑方式が採用されている。
【0027】
凝縮器5は、冷凍車に搭載されている冷却庫の外部に設置されており、ファン4を介して送風される外気および走行風と冷媒とを熱交換させる熱交換器であり、冷媒を冷却して凝縮液化させる機能を担うものである。また、蒸発器8は、冷却庫の内部または冷却庫内に面して設置されており、ファン7を介して循環される庫内空気と冷媒とを熱交換させる熱交換器であり、庫内空気を冷却する機能を担うものである。
【0028】
アキュームレータ9は、2本の冷媒流出管15,16を備えている。この2本の冷媒流出管15,16に、2台の第1圧縮機2および第2圧縮機3の吸入配管10A,10Bが接続され、2台の第1圧縮機2および第2圧縮機3が冷凍サイクル11に共通のアキュームレータ9を介して互いに並列に接続されている。なお、冷媒流出管15は、油戻し穴17を備えたU字管により構成されており、冷媒流出管16は、アキュームレータ9を構成する容器の上方部に接続され、該容器よりも下方部位で容器の下部から導出された電磁弁18を有する細い油戻し管19と接続されている。電磁弁18は、第2圧縮機3が運転時に開かれるように構成されている。
【0029】
また、第1圧縮機2および第2圧縮機3は、2台が同時に運転されることはなく、1台ずつ単独で運転されるようになっている。この2台の第1圧縮機2および第2圧縮機3に接続されている第1吐出配管10Cおよび第2吐出配管10Dには、各々逆止弁20,21が設けられている。更に、この第1吐出配管10Cおよび第2吐出配管10Dは、逆止弁20,21の下流側において、以下のように合流されている。
【0030】
第1圧縮機2からの第1吐出配管10Cは、逆止弁20を含む合流部付近が鉛直上向きに配設されており、この鉛直上向きの第1吐出配管10Cに対して、逆止弁21の下流側において第2圧縮機3からの第2吐出配管10Dの逆止弁21を含む合流部付近が水平方向から横向きに合流された構成とされている。また、この第2吐出配管10Dにおける逆止弁21の上流側には、所定高さHの立ち上り部22が設けられている。
【0031】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
冷凍車が走行中は、走行用エンジン12を介してメイン圧縮機の第1圧縮機2が駆動され、一方、車両が駐車中で走行用エンジン12が停止されているスタンバイ状態では、商用電源によりスタンバイ用の第2圧縮機3が駆動される。第1圧縮機2または第2圧縮機3で圧縮され、第1吐出配管10C、逆止弁20または第2吐出配管10D、逆止弁21を経て冷凍サイクル11側に吐出された高温高圧の冷媒ガスは、凝縮器5で冷却されて凝縮液化された後、膨張弁6で減圧されることにより低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器8に供給される。
【0032】
この冷媒は、蒸発器8でファン7により循環される冷却庫内空気と熱交換され、庫内空気から吸熱して蒸発される。これによって、庫内空気は冷却され、冷却庫内の冷却に供される。蒸発器8で蒸発されたガス冷媒は、アキュームレータ9に流入され、冷媒中に含まれる液分(液冷媒および潤滑油)が分離された後、ガス冷媒のみが冷媒流出管15または16のいずれかから吸入配管10Aまたは10Bを介して第1圧縮機2または第2圧縮機3に吸い込まれ、再び圧縮される。この繰り返しによって冷却庫内が冷却される。
【0033】
上記した冷却運転の際において、メイン圧縮機の第1圧縮機2が運転中は、冷凍サイクル11内を冷媒と共に循環されるミスト状潤滑油により第1圧縮機2が潤滑される。この場合、油循環率(OCR)が大きく、冷凍サイクル11内を多くの潤滑油が循環されることになる。冷凍サイクル11内を循環される潤滑油は、アキュームレータ9で分離された後、冷媒流出管(U字管)15の最下部部位に設けられている油戻し孔17から一定量ずつ第1圧縮機2に吸い込まれ、第1圧縮機2の潤滑に供される。
【0034】
また、スタンバイ状態で予冷運転や保冷運転を行うときは、商用電源を駆動源とするスタンバイ用の第2圧縮機3を駆動して運転が行われる。この場合、圧縮機の内部で油が循環され、油循環率(OCR)が小さい強制潤滑方式の第2圧縮機3を用いての運転となるため、冷凍サイクル11内を循環される潤滑油の量は少なくなる。この潤滑油は、アキュームレータ9で分離され、電磁弁18および油戻し管19を介して一定量ずつ第2圧縮機3に戻される。
【0035】
一方、メイン圧縮機である第1圧縮機2が運転中において、冷媒と共に第1吐出配管10Cに吐出された潤滑油が、合流部において停止中の第2圧縮機3側に逆止弁21および第2吐出配管10Dを経て微量ずつではあっても漏洩すると、それが長期間に亘った場合に、潤滑油が第2圧縮機3側に溜め込まれ、第1圧縮機2が潤滑油不足に至ってしまう。しかるに、本実施形態では、第1圧縮機2からの第1吐出配管10Cが鉛直上向きに配設され、この第1吐出配管10Cに対して、逆止弁20の下流側で第2圧縮機3からの第2吐出配管10Dが水平横向きに合流され、しかも第2吐出配管10Dに設けられている逆止弁21の上流側に高さHの立ち上り部22が設けられた構成とされている。
【0036】
このため、メイン圧縮機である第1圧縮機2から吐出された冷媒ガス中に含まれている潤滑油が、鉛直上向きに配設されている第1圧縮機2の第1吐出配管10C側から、この第1吐出配管10Cに水平横向きに合流されているスタンバイ用の第2圧縮機3からの第2吐出配管10D側に逆止弁21および立ち上り部22を超えて漏洩することがなく、第1圧縮機2が運転中に冷凍サイクル11内を循環する潤滑油が、第2吐出配管10Dを経て停止中の第2圧縮機3内に溜り込むのを防止することができる。
【0037】
つまり、逆止弁21の閉止面に付着した潤滑油が、圧力差や路面振動等により微少量漏れることがあったとしても、それが立ち上り部22を超えて停止中の第2圧縮機3側へと流れ込むことはなく、第2吐出配管10D側からの停止中の第2圧縮機3への潤滑油の溜り込みを確実に防止することができる。従って、仮にメイン圧縮機である第1圧縮機2のみが長期間に亘り運転されることがあったとしても、第1圧縮機2側の潤滑油が不足状態に至ることはなく、第1圧縮機2が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、メイン圧縮機である第1圧縮機2が、冷媒と共に冷凍サイクル11内を循環する油滴により摺動箇所を潤滑するミスト潤滑方式の開放型圧縮機とされ、スタンバイ用圧縮機である第2圧縮機3が、油溜りに溜められている油を強制給油して摺動箇所を潤滑する強制潤滑方式の密閉型電動圧縮機とされている。このため、第1圧縮機2の運転中は、冷凍サイクル11内を循環する油の循環量が必然的に多くなるが、この潤滑油が第1圧縮機2および第2圧縮機3の吐出側で停止中の第2圧縮機3側に漏洩し、溜り込むのを上述の通り防止することができる。従って、メイン圧縮機である第1圧縮機2が運転中、冷凍サイクル11内を循環する潤滑油の油量を十分に確保することができ、第1圧縮機2が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができる。
【0039】
さらに、冷凍車両の狭いエンジンルーム内に設置される走行用エンジン駆動の第1圧縮機2に、小型に構成できるミスト潤滑方式の開放型圧縮機を用いているため、狭いスペース内での設置を容易化し、冷凍装置1の架装性を向上できるとともに、シャーシ下方等の比較的余裕のあるスペースに設置されるスタンバイ用の第2圧縮機3に、内部に油溜めを備えた強制潤滑方式の密閉型電動圧縮機を用いているため、潤滑性能の信頼性を確保できる等の効果を維持できることは云うまでもない。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図2を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、第1吐出配管10Cと第1吐出配管10Dとの合流部の構成が異なっている。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態では、図2に示されるように、メイン圧縮機である第1圧縮機2からの第1吐出配管10Cが水平方向に横向きに配設されており、この水平横向きの第1吐出配管10Cに対して、逆止弁20の下流側でスタンバイ用の第2圧縮機3からの第2吐出配管10Dが逆止弁21を介して鉛直下向きに合流された構成とされている。
【0041】
上記のような構成とすることにより、メイン圧縮機である第1圧縮機2から吐出された冷媒ガス中に含まれている潤滑油が、水平横向きに配設されている第1圧縮機2の第1吐出配管10C側から、この第1吐出配管10Cに対して鉛直下向きに合流されているスタンバイ用の第2圧縮機3からの第2吐出配管10D側に逆止弁21および鉛直上向きの第2吐出配管10Dを超えて漏洩することはなく、第1圧縮機2が運転中に冷凍サイクル11内を循環する潤滑油が、第2吐出配管10Dを経て停止中の第2圧縮機3内に溜り込むのを防止することができる。
【0042】
従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様、仮にメイン圧縮機である第1圧縮機2のみが長期間使用されることがあったとしても、第1圧縮機2側の潤滑油が不足状態に至ることはなく、第1圧縮機2が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができるという効果を得ることができる。
【0043】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図3を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、第1圧縮機2からの第1吐出配管10Cにオイルセパレータ30を設けた構成としている点が異なっている。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態では、図3に示されるように、メイン圧縮機である第1圧縮機2からの第1吐出配管10Cに設けられている逆止弁20の下流側に、オイルセパレータ30を設けた構成とされている。
【0044】
そして、このオイルセパレータ30から出ている鉛直上向きの吐出配管10Eに、第2圧縮機3からの第2吐出配管10Dが水平横向きに合流されるとともに、この第2吐出配管10Dに設けられている逆止弁21の上流側に立ち上り部22が設けられた構成としている。なお、オイルセパレータ30で分離された潤滑油は、流量調整手段を備えた油戻し管31を介して第1圧縮機2の吸入側に戻されるようになっている。
【0045】
上記のように、メイン圧縮機である第1圧縮機2からの第1吐出配管10Cに設けられている逆止弁20の下流側にオイルセパレータ30を設け、このオイルセパレータ30からの吐出配管10Eに第2圧縮機3からの第2吐出配管10Dが逆止弁21を介して合流された構成とすることにより、第1圧縮機3から吐出された冷媒ガス中に含まれている潤滑油をオイルセパレータ30で分離し、第1圧縮機2に戻すことができる。このため、第1圧縮機3から吐出された潤滑油が、オイルセパレータ30からの吐出配管10Eに逆止弁21を介して合流されているスタンバイ用第2圧縮機3からの第2吐出配管10D側に逆止弁21を超えて漏洩し、第2吐出配管10Dを経て停止中の第2圧縮機3内に溜り込むことがなくなる。
【0046】
また、オイルセパレータ30からの吐出配管10Eが鉛直上向きに配設され、この吐出配管10Eにスタンバイ用の第2圧縮機3からの第2吐出配管10Dが水平横向きに合流されるとともに、第2吐出配管10Dに設けられている逆止弁21の上流側に立ち上り部22が設けられているため、もしオイルセパレータ30で油が十分に分離されなかったとしても、その潤滑油が水平横向きに配設されているオイルセパレータ30の吐出配管10E側から、この吐出配管10Eに水平横向きに合流されている第2圧縮機3からの第2吐出配管10D側に逆止弁21および立ち上り部22を超えて漏洩することはなく、停止中の第2圧縮機3内への油の溜り込みを防止することができる。
【0047】
従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様、仮にメイン圧縮機である第1圧縮機2のみが長期間使用されることがあったとしても、第1圧縮機2側の潤滑油が不足状態に至ることはなく、第1圧縮機2が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができるという効果を得ることができる。
【0048】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について、図4を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第3実施形態に対して、オイルセパレータ30の吐出配管10Eに合流される第2圧縮機3からの第2吐出配管10Dの接続構成が異なっている。その他の点については、第1ないし第3実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態では、図4に示されるように、オイルセパレータ30からの吐出配管10Eが水平横向きに配設され、この水平横向きの吐出配管10Eに第2圧縮機3からの第2吐出配管10Dが逆止弁21を介して鉛直下向きに合流された構成としている。
【0049】
上記のような構成とすることにより、オイルセパレータ30において油を十分に分離仕切れなかったとしても、その潤滑油が水平横向きに配設されているオイルセパレータ30からの吐出配管10E側から、この吐出配管10Eに鉛直下向きに合流されているスタンバイ用第2圧縮機3からの第2吐出配管10D側に逆止弁21および鉛直上向きの第2吐出配管10Dを越えて漏洩することはなく、停止中の第2圧縮機3内への油の溜り込みを防止することができる。
【0050】
従って、本実施形態においても、第1および第3実施形態と同様、仮にメイン圧縮機である第1圧縮機2のみが長期間使用されることがあったとしても、第1圧縮機2側の潤滑油が不足状態に至ることはなく、第1圧縮機2が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができるという効果を得ることができる。
【0051】
なお、本発明は、上記した実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、アキュームレータ9として、冷媒流出管15をU字管、冷媒流出管16を容器の上方部に接続された流出管の下方部分に油戻し管19を接続した構成の流出管とした例について説明したが、両冷媒流出管15,16を共にU字管とする等、他の構成のアキュームレータとしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、第1圧縮機2にミスト潤滑方式の圧縮機、第2圧縮機3に強制潤滑方式の圧縮機を採用した例について説明したが、本発明において、圧縮機の潤滑方式が上記のような組み合わせに限定されるものではなく、如何なる潤滑方式の圧縮機の組み合わせにおいても有効であることはもちろんである。同様に、第1圧縮機2および第2圧縮機3については、レシプロ、ロータリ、スクロール、スクリュー等々、如何なる構成の圧縮機構を用いたものであってもよいことは云うまでもない。
【0053】
さらに、上記実施形態では、第1吐出配管10C、第2第1吐出配管10Dおよびオイルセパレータからの吐出配管10E等が、鉛直上向き、鉛直上向き、水平横向きに配設あるいは合流されている旨説明したが、これらは、必ずしも厳密な意味において鉛直あるいは水平である必要はなく、斜めであってもよく、要は上向き、上向き、横向きになっておればよい。
【符号の説明】
【0054】
1 冷凍装置
2 第1圧縮機(メイン圧縮機)
3 第2圧縮機(スタンバイ用圧縮機)
10C 第1吐出配管
10D 第2吐出配管
10E オイルセパレータからの吐出配管
11 冷凍サイクル
12 エンジン
14 電源ケーブル
20,21 逆止弁
22 立ち上り部
30 オイルセパレータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1系統の冷凍サイクルに、1台ずつ単独で運転される複数台の第1圧縮機および第2圧縮機が、各吐出配管に設けられている逆止弁を介して合流されるように並列に接続されているとともに、前記第1圧縮機がメイン圧縮機、前記第2圧縮機がスタンバイ用圧縮機とされている冷凍装置において、
前記第1圧縮機からの第1吐出配管が上向きに配設され、この上向きの前記第1吐出配管に、該第1吐出配管に設けられている前記逆止弁の下流側で前記第2圧縮機からの第2吐出配管が横向き合流されるとともに、該第2吐出配管に設けられている前記逆止弁の上流側に立ち上り部が設けられていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
1系統の冷凍サイクルに、1台ずつ単独で運転される複数台の第1圧縮機および第2圧縮機が、各吐出配管に設けられている逆止弁を介して合流されるように並列に接続されているとともに、前記第1圧縮機がメイン圧縮機、前記第2圧縮機がスタンバイ用圧縮機とされている冷凍装置において、
前記第1圧縮機からの第1吐出配管が横向きに配設され、この横向きの前記第1吐出配管に、該第1吐出配管に設けられている前記逆止弁の下流側で前記第2圧縮機からの第2吐出配管が前記逆止弁を介して下向きに合流されていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項3】
1系統の冷凍サイクルに、1台ずつ単独で運転される複数台の第1圧縮機および第2圧縮機が、各吐出配管に設けられている逆止弁を介して合流されるように並列に接続されているとともに、前記第1圧縮機がメイン圧縮機、前記第2圧縮機がスタンバイ用圧縮機とされている冷凍装置において、
前記第1圧縮機からの第1吐出配管に設けられている前記逆止弁の下流側にオイルセパレータが設けられ、該オイルセパレータから出ている吐出配管に前記第2圧縮機からの第2吐出配管が前記逆止弁を介して合流されていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項4】
前記オイルセパレータからの吐出配管が上向きに配設され、該吐出配管に前記第2圧縮機からの第2吐出配管が横向きに合流されるとともに、該第2吐出配管に設けられている前記逆止弁の上流側に立ち上り部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記オイルセパレータからの吐出配管が横向きに配設され、該吐出配管に前記第2圧縮機からの第2吐出配管が前記逆止弁を介して下向きに合流されていることを特徴とする請求項3に記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記第1圧縮機が、冷媒と共に前記冷凍サイクル内を循環する油滴により潤滑されるミスト潤滑方式の開放型圧縮機とされ、前記第2圧縮機が、油溜りに溜められている油を強制給油して潤滑する強制潤滑方式の電動圧縮機とされていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の冷凍装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−236828(P2010−236828A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87505(P2009−87505)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)