説明

冷凍装置

【課題】メイン圧縮機が運転時に休止側圧縮機への潤滑油の流出を防止でき、かつ吸入圧損を低減して冷凍能力の向上を図ることができる低コストの冷凍装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数本の冷媒流出管15,16を有するアキュームレータ9を介して1台ずつ単独で運転される第1圧縮機2および第2圧縮機3が冷凍サイクル11に並列に接続され、第1圧縮機2が使用頻度の高いメイン圧縮機、第2圧縮機3が使用頻度の低いスタンバイ用圧縮機とされている冷凍装置1において、複数本の冷媒流出管中の第1冷媒流出管15が、下方部位に油戻し穴17が設けられたU字管により構成され、第1圧縮機2の吸入配管10Aに接続されているとともに、第2冷媒流出管16が、アキュームレータ9の上方部に接続された液トラップ部を持たない流出管により構成され、第2圧縮機3の吸入配管10Bに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1系統の冷凍サイクルに並列に接続されている複数台の圧縮機が1台ずつ単独で運転される冷凍装置であって、特に冷凍車等に搭載される輸送用冷凍装置に適用して好適な冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍車両に搭載される輸送用冷凍装置の1つに、圧縮機を車両の走行用エンジンにより駆動するようにした直結方式の冷凍装置がある。この冷凍装置は、車両が走行している場合は、走行用エンジンにより圧縮機を駆動して冷却運転できるが、車両を駐車した状態で予冷運転や保冷運転を行う場合は、通常走行用エンジンを停止している。このため、走行用エンジンで駆動されるメイン圧縮機とは別に、商用電源によって駆動されるスタンバイ用の電動圧縮機が搭載され、走行用エンジンが停止中でも予冷運転や保冷運転が行えるようにされている。
【0003】
上記冷凍装置は、1系統の冷凍サイクルに1台ずつ単独で運転される複数台の圧縮機が並列に接続されているため、運転時に、冷凍サイクル内を冷媒と共に循環する潤滑油が運転されている側の圧縮機にのみ返油されるようにしないと、特に使用頻度が高いメイン圧縮機の運転時において、時間の経過に伴い潤滑油が不足する事態に至る場合がある。かかる問題に対処するため、複数台の圧縮機の吸入側に油戻し穴を有する複数本のU字管を備えた共通のアキュームレータを設置し、このアキュームレータを介して複数台の圧縮機を並列に接続したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、上記の構成では、運転中の圧縮機が停止された場合、蒸発器内の冷媒が、運転側の圧縮機および休止側の圧縮機の双方に移動して圧力バランスする。その時の冷媒流れにより休止側の圧縮機のU字管を含む吸入配管系にトラップされていた潤滑油が休止側の圧縮機内に移動される。かかる状況下、稀に走行用エンジンで駆動されるメイン圧縮機のみが長期間継続して使用されることがあり、この場合、メイン圧縮機が潤滑油不足に陥ることがある。その対策として、特許文献2に示されるように、使用頻度が低いスタンバイ用圧縮機の吸入配管に遮断弁を設けたものや、特許文献3に示されるように、アキュームレータの下流側に各圧縮機の下方部位に位置する吸入容積部を設け、この吸入容積部(吸入側ヘッダ)を介して各圧縮機を並列に接続したもの等が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2002/073036号パンフレット(図10ないし図12参照)
【特許文献2】特開平11−281202号公報(図1参照)
【特許文献3】特開2004−93027号公報(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に示されるように、吸入配管に遮断弁を設けると、吸入圧損が増大することは避けられず、その分だけ冷凍能力が低下するという問題があり、しかも口径の太い吸入配管に対して口径が大きな遮断弁を設けなければならず、コスト高となってしまうという問題があった。
また、特許文献3に示されたものでは、アキュームレータの他に各圧縮機の下方部に吸入容積部を設置しなければならないという構造上の制約があるうえに、複数台の圧縮機が上下方向に離れた場所に設置されている冷凍装置に対しては実質的に適用できないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、メイン圧縮機が運転時に休止側圧縮機への潤滑油の流出を防止でき、かつ吸入圧損を低減して冷凍能力の向上を図ることができる低コストの冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の冷凍装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる冷凍装置は、複数本の冷媒流出管を有するアキュームレータを備え、該アキュームレータを介して1台ずつ単独で運転される複数台の第1圧縮機および第2圧縮機が冷凍サイクルに並列に接続され、前記第1圧縮機が使用頻度の高いメイン圧縮機、前記第2圧縮機が使用頻度の低いスタンバイ用圧縮機とされている冷凍装置において、前記複数本の冷媒流出管中の第1冷媒流出管が、下方部位に油戻し穴が設けられたU字管により構成され、前記第1圧縮機の吸入配管に接続されているとともに、第2冷媒流出管が、前記アキュームレータの上方部に接続された液トラップ部を持たない流出管により構成され、前記第2圧縮機の吸入配管に接続されていることを特徴とする。
【0009】
複数台の圧縮機が1台ずつ単独で運転される冷凍装置にあっては、運転側の圧縮機が停止される都度、圧力バランスする際に休止側の圧縮機にも冷媒が流れ、その時、吸入配管系にトラップされていた潤滑油が冷媒流れに伴われて休止側の圧縮機内に移動し、それが繰り返されると、運転側圧縮機の潤滑油が不足する事態に至る可能性がある。本発明によれば、第1冷媒流出管が、下方部位に油戻し穴が設けられたU字管により構成され、第1圧縮機の吸入配管に接続されているとともに、第2冷媒流出管が、アキュームレータの上方部に接続された液トラップ部を持たない流出管により構成され、第2圧縮機の吸入配管に接続されているため、使用頻度の高いメイン圧縮機である第1圧縮機が運転中に停止される都度、圧力バランスにより冷媒が休止しているスタンバイ用の第2圧縮機に流れたとしても、アキュームレータから潤滑油が繰り返し休止側の第2圧縮機へと流出されることがなく、遮断弁を設けなくても休止側の第2圧縮機への潤滑油の流出を防止することができる。従って、使用頻度の高いメイン圧縮機である第1圧縮機が潤滑油不足により潤滑不良に陥ることがなく、信頼性を向上することができる。また、遮断弁を設けることによる吸入圧損の増大がなく、その分冷凍能力を向上することができるとともに、遮断弁の省略によりコスト低減を図ることができる。
【0010】
さらに、本発明の冷凍装置は、上記の冷凍装置において、前記第2冷媒流出管は、前記アキュームレータよりも下方部位において該アキュームレータの下部と電磁弁を有する油戻し管により接続されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第2冷媒流出管が、アキュームレータよりも下方部位において該アキュームレータの下部と電磁弁を有する油戻し管により接続されているため、使用頻度の低いスタンバイ用圧縮機である第2圧縮機を運転する際、電磁弁を開くことにより油戻し管を介してアキュームレータで分離された潤滑油を少量ずつ重力で吸入配管側へと戻し、第2圧縮機に吸入させることができる。従って、アキュームレータから油を吸い上げるヘッド差を確保する必要がなく、その分吸入配管を太く設計でき、吸入圧損を低減し冷凍能力の向上を図ることができる。なお、油戻し管および電磁弁は、少量の油を戻すことができる細い配管および小さい電磁弁でよい。
【0012】
さらに、本発明の冷凍装置は、上述のいずれかの冷凍装置において、前記第2冷媒流出管には、前記アキュームレータ内に開口される開口端よりも上方に立ち上げられた立ち上げ部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、第2冷媒流出管に、アキュームレータ内に開口される開口端よりも上方に立ち上げられた立ち上げ部が設けられているため、アキュームレータ内に開口する第2冷媒流出管の開口端から第2圧縮機側へと流出しようとする油を立ち上げ部によって阻止することができる。従って、休止側の第2圧縮機への潤滑油の流出をより確実に防止することができる。
【0014】
また、本発明の冷凍装置は、上述のいずれかの冷凍装置において、前記第1圧縮機が、冷媒と共に前記冷凍サイクル内を循環する油滴により潤滑されるミスト潤滑方式のエンジンで駆動される開放型圧縮機とされ、前記第2圧縮機が、油溜りに溜められている油を強制給油して潤滑する強制潤滑方式の商用電源で駆動される電動圧縮機とされていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、第1圧縮機が、冷媒と共に冷凍サイクル内を循環する油滴により潤滑されるミスト潤滑方式のエンジンで駆動される開放型圧縮機とされ、第2圧縮機が、油溜りに溜められている油を強制給油して潤滑する強制潤滑方式の電動圧縮機とされているため、メイン圧縮機である第1圧縮機が運転中は、冷凍サイクル内を循環する油の循環量が必然的に多くなるが、この油がアキュームレータから圧縮機までの吸入配管系において休止側の第2圧縮機へと流出し、第2圧縮機内に溜り込むのを上述のとおり防止することができる。従って、メイン圧縮機の第1圧縮機が運転中、冷凍サイクル内を循環する潤滑油の油量を十分に確保することができ、第1圧縮機が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、使用頻度の高いメイン圧縮機である第1圧縮機が運転中に停止される都度、圧力バランスにより冷媒が休止しているスタンバイ用の第2圧縮機に流れたとしても、アキュームレータから潤滑油が繰り返し休止側の第2圧縮機へと流出されることがなく、遮断弁を設けなくても休止側の第2圧縮機への潤滑油の流出を防止することができるため、使用頻度の高いメイン圧縮機である第1圧縮機が潤滑油不足により潤滑不良に陥ることがなく、信頼性を向上することができる。また、遮断弁を設けることによる吸入圧損の増大がなく、その分冷凍能力を向上することができるとともに、遮断弁の省略によりコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる冷凍装置の冷媒回路図である。
【図2】図1に示す冷凍装置のアキュームレータ周りの拡大図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる冷凍装置のアキュームレータ周りの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係る冷凍装置の冷媒回路図が示されている。この冷凍装置1は、冷凍車に搭載される直結方式の輸送用冷凍装置であり、冷媒を圧縮する2台の第1圧縮機2および第2圧縮機3と、ファン4を備え、圧縮された高温高圧の冷媒ガスを凝縮液化する凝縮器5と、液化された高圧冷媒を断熱膨張させて低圧の気液二相冷媒とする膨張弁6と、ファン7を備え、気液二相冷媒を蒸発させる蒸発器8と、蒸発した低圧冷媒ガス中の液分を分離し、ガス冷媒のみを第1および第2圧縮機2,3に吸い込ませるアキュームレータ9とを冷媒配管10により順次接続して構成された冷凍サイクル11を有している。
【0019】
第1圧縮機2は、冷凍車のエンジンルーム内に設置され、車両走行用のエンジン12により電磁クラッチ13を介して駆動される使用頻度の高いメイン圧縮機であり、圧縮機構が収容されるハウジング内に駆動源を持たず、小型軽量化が可能な開放型の圧縮機が採用されている。開放型圧縮機は、公知の如くハウジングから駆動軸が外部に突出された構成とされ、駆動軸に設けられている電磁クラッチ13の断続によって走行用エンジン12から動力を得て駆動されるようになっている。また、この第1圧縮機2には、冷媒中に溶解された潤滑油を冷媒と共に冷凍サイクル11内に循環させ、吸入冷媒ガスに含まれるミスト状の潤滑油により第1圧縮機2の摺動箇所を潤滑する公知のミスト潤滑方式が採用されている。
【0020】
第2圧縮機3は、車両のシャーシ下等のスペースに設置され、走行用エンジン12が停止される予冷運転時や保冷運転時に運転される使用頻度の低いスタンバイ用の圧縮機であり、商用電源から電源ケーブル14を介して得られる電力を駆動源とする電動モータにより駆動されるモータ内蔵の電動圧縮機とされている。このスタンバイ用圧縮機3には、ハウジング内に電動モータを内蔵している密閉型または半密閉型電動圧縮機を用いることができる。また、スタンバイ用圧縮機3の潤滑方式には、圧縮機ハウジング内に油溜めを設け、この油溜めに充填された潤滑油をポンプ等により摺動箇所に強制給油して潤滑する公知の強制潤滑方式が採用されている。
【0021】
なお、第1圧縮機2および第2圧縮機3は、2台が同時に運転されることはなく、1台ずつ単独で運転されるようになっている。この2台の第1圧縮機2および第2圧縮機3に接続されている第1吐出配管10Cおよび第2吐出配管10Dには、各々逆止弁20,21が設けられている。更に、この第1吐出配管10Cおよび第2吐出配管10Dは、逆止弁20,21の下流側において、メイン圧縮機である第1圧縮機2側からスタンバイ用圧縮機である第2圧縮機3側への油の流出を防止するため、例えば、以下のように合流されている。
【0022】
第1圧縮機2からの第1吐出配管10Cは、逆止弁20を含む合流部付近が鉛直上向きに配設されており、この鉛直上向きの第1吐出配管10Cに対して、逆止弁21の下流側において第2圧縮機3からの第2吐出配管10Dの逆止弁21を含む合流部付近が水平方向から横向きに合流された構成とされている。また、この第2吐出配管10Dにおける逆止弁21の上流側には、所定高さHの立ち上り部22が設けられている。
【0023】
凝縮器5は、冷凍車に搭載されている冷却庫の外部に設置されており、ファン4を介して送風される外気および走行風と冷媒とを熱交換させる熱交換器であり、冷媒を冷却して凝縮液化させる機能を担うものである。また、蒸発器8は、冷却庫の内部または冷却庫内に面して設置されており、ファン7を介して循環される庫内空気と冷媒とを熱交換させる熱交換器であり、庫内空気を冷却する機能を担うものである。
【0024】
また、アキュームレータ9は、図2に示されるように、蒸発器8からの冷媒配管10が上部に接続されているとともに、2本の第1冷媒流出管15および第2冷媒流出管16を備えている。この2本の第1冷媒流出管15および第2冷媒流出管16には、それぞれ2台の第1圧縮機2および第2圧縮機3の吸入配管10A,10Bが接続され、これによって2台の第1圧縮機2および第2圧縮機3が冷凍サイクル11に共通のアキュームレータ9を介して互いに並列に接続されている。
【0025】
第1冷媒流出管15は、最下位部位に油戻し穴17が設けられているU字管15Aにより構成されており、油戻し穴17から油を少量ずつ吸上げ、U字管15Aおよび吸入配管10Aを経て運転中の第1圧縮機2側に潤滑油を戻すように構成されている。また、第2冷媒流出管16は、アキュームレータ9の上方部に接続されたトラップ部を持たない流出管とされており、この第2冷媒流出管16には、キュームレータ9内に開口される開口端16Aに対して高さhだけ上方に立ち上げられた立ち上げ部16Bが設けられている。
【0026】
さらに、第2冷媒流出管16に対しては、アキュームレータ9の底部よりも下方部位において、一端19Aがアキュームレータ9の下部と連通されている電磁弁18を備えた油戻し管19が接続されている。この油戻し管19の一端19Aは、アキュームレータ9内に挿入され、上記U字管15Aに設けられている油戻し穴17と略同等高さ位置で開口されている。なお、電磁弁18は、第2圧縮機3が運転時に開かれるようになっている。
【0027】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
冷凍車が走行中は、走行用エンジン12を介してメイン圧縮機の第1圧縮機2が駆動され、一方、車両が駐車中で走行用エンジン12が停止されているスタンバイ状態では、商用電源によりスタンバイ用の第2圧縮機3が駆動される。第1圧縮機2または第2圧縮機3で圧縮され、第1吐出配管10C、逆止弁20または第2吐出配管10D、逆止弁21を経て冷凍サイクル11側に吐出された高温高圧の冷媒ガスは、凝縮器5で冷却されて凝縮液化された後、膨張弁6で減圧されることにより低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器8に供給される。
【0028】
この冷媒は、蒸発器8でファン7により循環される冷却庫内空気と熱交換され、庫内空気から吸熱して蒸発される。これによって、庫内空気は冷却され、冷却庫内の冷却に供される。蒸発器8で蒸発されたガス冷媒は、アキュームレータ9に流入され、冷媒中に含まれる液分(液冷媒および潤滑油)が分離された後、ガス冷媒のみが冷媒流出管15または16のいずれかから吸入配管10Aまたは10Bを介して第1圧縮機2または第2圧縮機3に吸い込まれ、再び圧縮される。この繰り返しによって冷却庫内が冷却される。
【0029】
上記した冷却運転時において、メイン圧縮機の第1圧縮機2が運転中は、冷凍サイクル11内を冷媒と共に循環されるミスト状潤滑油によって第1圧縮機2が潤滑される。冷凍サイクル11内を循環される潤滑油は、アキュームレータ9において分離された後、U字管15Aの最下部部位に設けられている油戻し孔17から一定量ずつ第1圧縮機2に吸い込まれ、第1圧縮機2の潤滑に供される。
【0030】
また、スタンバイ状態で予冷運転や保冷運転を行うときは、商用電源を駆動源とするスタンバイ用の第2圧縮機3を駆動して運転が行われる。この場合も潤滑油は、アキュームレータ9において分離され、電磁弁18および油戻し管19を介して一定量ずつ第2圧縮機3に戻されることになる。
【0031】
一方、メイン圧縮機である第1圧縮機2が運転中に停止された場合、その都度、冷凍サイクル内の高低圧が圧力バランスするため、蒸発器内の冷媒が休止されている第2圧縮機3側にも流れる。この際、第2圧縮機3に至る第2冷媒流出管16および吸入配管10Bに溜っている油は、冷媒の流れに伴われて休止側の第2圧縮機3内へと流出される。この繰り返しにより潤滑油が休止側の第2圧縮機3内に溜り込むと、第1圧縮機2側が潤滑油不足に至ってしまう。しかるに、本実施形態では、アキュームレータ9の第2圧縮機3が接続されている第2冷媒流出管16には、トラップ部がなく、油が溜らないようにされているので、アキュームレータ9の第2冷媒流出管16から吸入配管10Dを経て休止側の第2圧縮機3に潤滑油が流出するということがなくなる。
【0032】
このため、使用頻度の高いメイン圧縮機の第1圧縮機2が運転中に停止される都度、圧力バランスにより冷媒がスタンバイ用の第2圧縮機3に流れたとしても、アキュームレータ9から第2圧縮機3までの吸入配管系においてトラップされていた潤滑油が繰り返し休止側の第2圧縮機3へと流出されることがなく、遮断弁を設けなくても休止側の第2圧縮機3への潤滑油の流出を防止することができる。従って、使用頻度の高いメイン圧縮機である第1圧縮機2が潤滑油不足により潤滑不良に陥ることがなく、信頼性を向上することができる。また、遮断弁を設けることによる吸入圧損の増大がなく、その分冷凍能力を向上することができるとともに、遮断弁の省略によりコスト低減を図ることができる。
【0033】
さらに、スタンバイ用の第2圧縮機3に接続される第2冷媒流出管16が、アキュームレータ9の底部よりも下方部位で該アキュームレータ9の下部と電磁弁18を有する油戻し管19により接続されている。このため、使用頻度の低いスタンバイ用圧縮機である第2圧縮機3を運転する際、電磁弁18を開くことにより油戻し管19を介してアキュームレータ9で分離された潤滑油を少量ずつ重力により第2冷媒流出管16および吸入配管10D側へと戻し、第2圧縮機3に吸入させることができる。従って、アキュームレータ9から油を吸い上げるヘッド差を確保する必要がなくなり、その分吸入配管10Dを太く設計することができ、吸入圧損を低減し冷凍能力の向上を図ることができる。
【0034】
また、第2冷媒流出管16に、アキュームレータ9内に開口される開口端16Aよりも高さhだけ上方に立ち上げられた立ち上げ部16Bを設けた構成としている。このため、アキュームレータ9内に開口する第2冷媒流出管16の開口端16Aから第2圧縮機3側へと流出しようとする油を、立ち上げ部16Bによって阻止し、アキュームレータ9へと戻すことができる。従って、休止側の第2圧縮機3への潤滑油の流出をより確実に防止することができる。
【0035】
また、第1圧縮機2が、冷媒と共に冷凍サイクル11内を循環する油滴で潤滑されるミスト潤滑方式のエンジン12で駆動される開放型圧縮機とされ、第2圧縮機3が、油溜りの油を強制給油して潤滑する強制潤滑方式の電動圧縮機とされている。このため、メイン圧縮機である第1圧縮機2が運転中は、冷凍サイクル11内を循環する油の循環量が必然的に多くなるが、この油がアキュームレータ9から圧縮機までの吸入配管系において休止側の第2圧縮機3へと流出し、第2圧縮機3内に溜り込むのを上述のとおり防止することができる。従って、使用頻度が高いメイン圧縮機の第1圧縮機2が運転中、冷凍サイクル11内を循環する潤滑油の油量を十分に確保することができ、第1圧縮機2が潤滑不良に陥る可能性を解消し、信頼性の向上を図ることができる。
【0036】
さらに、冷凍車両の狭いエンジンルーム内に設置される走行用エンジン駆動の第1圧縮機2に、小型に構成できるミスト潤滑方式の開放型圧縮機を用いているため、狭いスペース内での設置を容易化し、冷凍装置1の架装性を向上できるとともに、シャーシ下方等の比較的余裕のあるスペースに設置されるスタンバイ用の第2圧縮機3に、内部に油溜めを備えた強制潤滑方式の密閉型電動圧縮機を用いているため、潤滑性能の信頼性を確保できる等の効果が得られることは云うまでもない。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図3を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、第2冷媒流出管26の構成が異なっている。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態では、図3に示されるように、第2冷媒流出管26をアキュームレータ9の上方側部に横方向から接続した構成としている。また、この第2冷媒流出管26は、破線で示されるように、上り勾配をつけて接続し、アキュームレータ9内に開口される開口端26Aに対して高さhの立ち上げ部26Bが形成されるように接続してもよい。
【0038】
上記のような構成とすることによって、上記第1実施形態と略同等の作用効果を得ることができるとともに、第2冷媒流出管16または26を配管上の都合に合わせてアキュームレータ9の上部または側部のいずれかに選択的に接続することが可能となる。
【0039】
なお、本発明は、上記した実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、アキュームレータ9として、比較的大径の単胴タイプのアキュームレータ9とした例について説明したが、それよりも細い径の2本の筒体を上下で連通するように結合して構成した双胴タイプのアキュームレータとしてもよい。また、第1圧縮機2および第2圧縮機3については、レシプロ、ロータリ、スクロール、スクリュー等々、如何なる構成の圧縮機構を用いたものであってもよい。
【0040】
さらに、上記実施形態では、第1圧縮機2にミスト潤滑方式の圧縮機、第2圧縮機3に強制潤滑方式の圧縮機を採用した例について説明したが、本発明において、圧縮機の潤滑方式が上記のような組み合わせに限定されるものではなく、如何なる潤滑方式の圧縮機の組み合わせにおいても有効であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0041】
1 冷凍装置
2 第1圧縮機(メイン圧縮機)
3 第2圧縮機(スタンバイ用圧縮機)
9 アキュームレータ
10A,10B 吸入配管
11 冷凍サイクル
12 エンジン
14 電源ケーブル
15 第1冷媒流出管
15A U字管
16,26 第2冷媒流出管
16A,26A 開口端
16B,26B 立ち上げ部
17 油戻し穴
18 電磁弁
19 油戻し管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の冷媒流出管を有するアキュームレータを備え、該アキュームレータを介して1台ずつ単独で運転される複数台の第1圧縮機および第2圧縮機が冷凍サイクルに並列に接続され、前記第1圧縮機が使用頻度の高いメイン圧縮機、前記第2圧縮機が使用頻度の低いスタンバイ用圧縮機とされている冷凍装置において、
前記複数本の冷媒流出管中の第1冷媒流出管が、下方部位に油戻し穴が設けられたU字管により構成され、前記第1圧縮機の吸入配管に接続されているとともに、第2冷媒流出管が、前記アキュームレータの上方部に接続された液トラップ部を持たない流出管により構成され、前記第2圧縮機の吸入配管に接続されていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
前記第2冷媒流出管は、前記アキュームレータよりも下方部位において該アキュームレータの下部と電磁弁を有する油戻し管により接続されていることを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記第2冷媒流出管には、前記アキュームレータ内に開口される開口端よりも上方に立ち上げられた立ち上げ部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記第1圧縮機が、冷媒と共に前記冷凍サイクル内を循環する油滴により潤滑されるミスト潤滑方式のエンジンで駆動される開放型圧縮機とされ、前記第2圧縮機が、油溜りに溜められている油を強制給油して潤滑する強制潤滑方式の商用電源で駆動される電動圧縮機とされていることを特徴とする請求項1,2,3のいずれかに記載の冷凍装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−236829(P2010−236829A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87506(P2009−87506)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)