説明

冷却システム及び冷却方法

【課題】低外気温度あるいは低冷却負荷の条件下でも、冷却塔の所望の冷却能力を安定して得ることができる冷却システム及び冷却方法を提供する。
【解決手段】冷却回路100は、m台(m≧1)の冷却塔20と、n台(n≧1)の冷凍機40と、冷却塔20及び冷凍機40を連結する循環配管70と、冷却塔20を通過した冷却水を、冷凍機40を介さずに冷却塔20に返送するバイパス配管72と、バイパス配管72を流れる冷却水の流量を調節するバイパスポンプ74とを備える。制御装置50は、流量計78の測定結果に基づいて、冷却塔20に流入する冷却水の流量が冷却塔20の最小冷却水流量以上になるように、バイパスポンプ74を制御する。これにより、冷却塔20の容量に対して十分な流量の冷却水を冷却塔20に流すことができるため、低外気温度あるいは低冷却負荷の条件下でも、冷却塔20の所望の冷却能力を安定して得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システム及び冷却方法に係り、例えば、クリーンルームやビル等の空調に用いる冷却システム及び冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームやビル等の施設では、冷房運転が行われる。このため、これらの施設の冷却時に消費されるエネルギーを削減する冷却システム及び冷却方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、従来の設計よりも大きな容量の冷却塔を用いることで、エネルギーを削減することができる冷却システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−214608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法のように、従来よりも大型化した冷却塔を用いると、冷却塔の容量に対して冷却水の流量が不足してしまうことがある。冷却水の流量が不足すると、冷却塔内の充填材を均一に濡らすことが困難になり、冷却水と外気との伝熱面積が変動して、冷却塔の所望の冷却能力を安定して得ることが難しい。
【0006】
また、低外気温度や低冷却負荷の条件下では、冷凍機やフリークーリング用の熱交換器の冷却能力が過剰にならないように、冷却水の循環流量が減らされるので、冷却塔の容量に対して冷却水の流量が不足しがちになる。したがって、低外気温度や低冷却負荷の条件下では、冷却塔の所望の冷却能力を安定して得ることがますます難しい。
【0007】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、低外気温度あるいは低冷却負荷の条件下でも、冷却塔の所望の冷却能力を安定して得ることができる冷却システム及び冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る冷却システムは、外気により冷却水を冷却する冷却塔と、前記冷却塔により冷却された前記冷却水を、冷却対象媒体と熱交換する熱交換部と、前記冷却塔と前記熱交換部とを連結する循環配管と、前記循環配管を通じて、前記冷却水を前記冷却塔と前記熱交換部との間で循環させる冷却水ポンプと、前記冷却塔を通過した前記冷却水を、前記熱交換部を介さずに前記冷却塔に返送するバイパス配管と、前記バイパス配管を流れる前記冷却水の流量を調節するバイパスポンプと、前記冷却塔に流入する前記冷却水の流量が、前記冷却塔の最小冷却水流量以上になるように、前記バイパスポンプを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記冷却システムによれば、バイパス配管を流れる冷却水の流量をバイパスポンプにより調節することで、冷却塔に流入する冷却水の流量を、冷却塔の最小冷却水流量以上に維持することができる。これにより、冷却塔の容量に対して十分な流量の冷却水を冷却塔に流すことができるため、低外気温度あるいは低冷却負荷の条件下でも、冷却塔の所望の冷却能力を安定して得ることができる。
【0010】
なお、「冷却対象媒体」とは、例えば、冷凍機の冷凍サイクルを循環する冷媒や、熱交換器における熱交換の対象である冷媒(冷水)などを指す。
【0011】
上記冷却システムにおいて、「熱交換部」は、冷凍機の凝縮器であってもよいし、フリークーリング用の熱交換器であってもよい。
【0012】
上記冷却システムは、前記冷却塔に流入する前記冷却水の流量を測定する流量計をさらに備え、前記制御手段は、前記流量計の測定結果に基づいて前記バイパスポンプを制御してもよい。
【0013】
これにより、冷却塔に流入する冷却水の流量の正確な測定値に基づいて、バイパスポンプを制御することができる。また、シミュレーションや条件出し等の事前の検討をする必要がない。
【0014】
上記冷却システムは、前記冷却水ポンプ及び前記バイパスポンプの回転数と、前記冷却塔に流入する前記冷却水の流量との関係を予め記憶しておく記憶手段をさらに備え、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記関係に基づいて、前記バイパスポンプを制御してもよい。
【0015】
この場合、流量計や差圧計等の測定装置を追加する必要がないため、冷却システムの導入コストを低減することができる。
【0016】
上記冷却システムは、前記熱交換部の入口及び出口における前記冷却水の圧力差を測定する差圧計をさらに備え、前記制御手段は、前記差圧計の測定結果に基づいて、前記バイパスポンプを制御してもよい。
【0017】
これにより、高価な流量計を追加する必要がないため、冷却システムの導入コストを低減することができる。
【0018】
本発明に係る冷却方法は、外気により冷却水を冷却する冷却塔と、前記冷却塔により冷却された前記冷却水を、冷却対象媒体と熱交換する熱交換部と、前記冷却塔と前記熱交換部とを連結する循環配管と、前記循環配管を通じて、前記冷却水を前記冷却塔と前記熱交換部との間で循環させる冷却水ポンプと、前記冷却塔を通過した前記冷却水を、前記熱交換部を介さずに前記冷却塔に返送するバイパス配管と、前記バイパス配管を流れる前記冷却水の流量を調節するバイパスポンプとを備える冷却システムを用いる冷却方法であって、前記冷却塔に流入する前記冷却水の流量を取得する工程と、取得された前記冷却水の流量が、前記冷却塔の最小冷却水流量以上になるように、前記バイパスポンプを制御する工程とを備えることを特徴とする。
【0019】
ここで、冷却水の流量を「取得する」とは、冷却水の流量を測定する場合だけでなく、冷却水の流量を算出する場合も含む。例えば、冷却水流量を流量計で測定してもよいし、冷凍機の入口及び出口における冷却水の圧力差を差圧計により測定し、当該圧力差に基づいて、冷却水流量を算出してもよい。さらに、冷却水ポンプ及びバイパスポンプの回転数と、冷却塔に流入する冷却水流量との関係を予め求めておき、当該関係に基づいて、冷却水流量を算出してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、バイパス配管を流れる冷却水の流量をバイパスポンプにより調節することで、冷却塔に流入する冷却水の流量を、冷却塔の最小冷却水流量以上に維持することができる。これにより、冷却塔の容量に対して十分な流量の冷却水を冷却塔に流すことができるため、低外気温度あるいは低冷却負荷の条件下でも、冷却塔の所望の冷却能力を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】冷却システムの一例を示す構成図である。
【図2】冷却システムの運転方式の決定に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図3】冷凍機運転用冷却回路の一例を示す構成図である。
【図4】図3に示す冷凍機運転用冷却回路のバイパスポンプの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】第1変形例に係る冷凍機運転用冷却回路を示す構成図である。
【図6】図5に示す冷凍機運転用冷却回路のバイパスポンプの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】第2変形例に係る冷凍機運転用冷却回路を示す構成図である。
【図8】図7に示す冷凍機運転用冷却回路のバイパスポンプの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
図1は、冷却システムの一例を示す構成図である。冷却システム10は、冷却塔20及びフリークーリング用の第1熱交換器30を含むフリークーリング運転用冷却回路Aと、冷却塔20及び冷凍機40を含む冷凍機運転用冷却回路Bと、第2熱交換器32と、ドライコイル34と、冷却対象であるクリーンルーム36と、冷却システム10の各部を制御する制御装置50とを備える。
【0024】
フリークーリング運転用冷却回路Aおよび冷凍機運転用冷却回路Bに設けられる冷却塔20は、冷却水を散水する散水管22と、塔内に外気を導入するファン24と、塔内に設けられる充填材(不図示)とを有する。これにより、散水管22から散水された冷却水は、冷却塔20内の充填材を伝って流れ落ちる際に、ファン24により塔内に導入された外気と接触して、冷却される。
【0025】
フリークーリング運転用冷却回路Aの第1熱交換器30は、冷却塔20を通過した冷却水を冷水と熱交換する熱交換器であり、スパイラル式や、多管円筒式等の公知の熱交換器を使用することができる。
【0026】
冷凍機運転用冷却回路Bの冷凍機40は、凝縮器42及び蒸発器44を含む冷凍サイクルを備え、凝縮器42と蒸発器44とは不図示の循環路により接続され、当該循環路を冷媒が循環するようになっている。そして、凝縮器42において凝縮した冷媒が、蒸発器44において気化する際に、冷水から気化熱を奪って、冷水を冷却する。
【0027】
第2熱交換器32は、フリークーリング運転用冷却回路Aおよび冷凍機運転用冷却回路Bの少なくとも一方により冷却された冷水を、ドライコイル冷却水と熱交換する熱交換器であり、スパイラル式や、多管円筒式等の公知の熱交換器を使用することができる。
【0028】
また、ドライコイル34は、第2熱交換器32で冷却されたドライコイル冷却水を、クリーンルーム36内の空気と熱交換することで、クリーンルーム36を冷却する。なお、クリーンルーム36内の空気は、不図示の空気循環用ファンにより、クリーンルーム36とドライコイル34とを循環するようになっている。
【0029】
制御装置50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリから構成され、冷却塔20のファン24や、ポンプ60、62、64、66及び68のインバータ周波数を調節することで、これらを制御する。
【0030】
また、制御装置50は、第1バルブ52及び第2バルブ54の開閉状態を制御することにより、フリークーリング運転用冷却回路Aと冷凍機運転用冷却回路Bとを切り換えることができる。
【0031】
例えば、外気湿球温度が低い冬期には、第1バルブ52を開状態、第2バルブ54を閉状態として、フリークーリング運転用冷却回路Aによる冷却を行う。すなわち、フリークーリング運転用冷却回路Aの冷却塔20において冷却された冷却水を、冷却水ポンプ60により、冷却塔20と第1熱交換器30との間で循環させるとともに、フリークーリング利用時用の冷水ポンプ62により、第1熱交換器30と第2熱交換器32との間で冷水を循環させる。また、ドライコイル冷却水ポンプ64により、第2熱交換器32とドライコイル34との間で、ドライコイル冷却水を循環させる。これにより、フリークーリング運転用冷却回路Aを用いて、クリーンルーム36内の空気を冷却することができる。
【0032】
一方、外気湿球温度が高い夏期には、第1バルブ52を閉状態、第2バルブ54を開状態として、冷凍機運転用冷却回路Bによる冷却を行う。すなわち、冷凍機40において冷却された冷水を、冷凍機運転時用の冷水ポンプ66により、冷凍機40の蒸発器44と第2熱交換器32との間で循環させる。また、ドライコイル冷却水ポンプ64により、第2熱交換器32とドライコイル34との間で、ドライコイル冷却水を循環させる。これにより、冷凍機運転用冷却回路Bを用いて、クリーンルーム36内の空気を冷却することができる。なお、冷凍機運転時は、冷凍機運転時用の冷却水ポンプ68により、冷凍機運転用冷却回路Bの冷却塔20と冷凍機40の凝縮器42との間で冷却水が循環される。
【0033】
なお、中間期には、第1バルブ52及び第2バルブ54の両方を開状態として、フリークーリング運転用冷却回路Aと冷凍機運転用冷却回路Bとを併用してもよい。
【0034】
フリークーリング運転用冷却回路Aと冷凍機運転用冷却回路Bとの切り換えは、外気条件及び冷却負荷の少なくとも一方に基づいて行われることが好ましい。例えば、制御装置50が、フリークーリング運転用冷却回路A及び冷凍機運転用冷却回路Bについて、現在の外気条件(例えば、外気湿球温度や外気比エンタルピー)及び冷却負荷における全消費電力を算出して、全消費電力が最小となる運転方式を選択してもよい。あるいは、上記演算を種々の外気条件及び冷却負荷について予め行って、全消費電力が最小となる運転方式をテーブル(図2参照)として不図示の記憶手段に記憶しておき、当該テーブルに基づいて運転方式を選択してもよい。
【0035】
ところで、冷却塔20に流入する冷却水の流量が不足すると、塔内の充填材を均一に濡らすことが困難になり、冷却水と外気との伝熱面積の変動により、冷却塔20の所望の冷却能力を安定して得ることが難しい。このため、本実施形態では、冷却塔20を通過した冷却水を冷却塔20に直接返送するバイパス配管を設けて、当該バイパス配管の冷却水流量をバイパスポンプにより調節することで、冷却塔20の最小冷却水流量を確保している。
【0036】
以下、バイパス配管及びバイパスポンプについて、冷凍機運転用冷却回路Bを例にとって詳細に説明するが、フリークーリング運転用冷却回路Aについても以下で説明するバイパス配管及びバイパスポンプを設けてもよいのはいうまでもない。
【0037】
図3は、冷凍機運転用冷却回路の一例を示す構成図である。なお、上述の冷却システム10の冷凍機運転用冷却回路Bと共通する構成要素には同一の符号を付しており、ここではその説明を省略する。
【0038】
図3に示す冷凍機運転用の冷却回路100は、m台(m≧1)の冷却塔20(20−1、20−2、…、20−m)と、n台(n≧1)の冷凍機40(40−1、40−2、…、40−n)と、冷却塔20及び冷凍機40を連結する循環配管70とを備える。
【0039】
冷凍機40のCOPを向上させるには、冷却塔20を大型化して、冷凍機40の入口における冷却水を低温化することが望ましい。ここで、冷却塔20を「大型化」するとは、冷却塔20の全体としての容量を増やすことをいい、冷却塔20の台数mを増やしてもよいし、一台の冷却塔20の容量を増やしてもよい。また、大容量の冷却塔20を複数台設けることで、冷却塔20の大型化を行ってもよい。
【0040】
しかしながら、冷却塔20を大型化すると、冷却塔20の全体としての容量に対して冷却水の流量が不足して、冷却塔20に流入する冷却水の流量が、冷却水流量の下限値(最小冷却水流量)を下回ってしまう場合がある。各冷却塔20に流入する冷却水の流量が最小冷却水流量を下回ると、冷却塔20内の充填材を均一に濡らすことが困難となり、所望の冷却能力を安定して得ることが難しい。
【0041】
例えば、冷却塔20及び冷凍機40の一般的な仕様に従って、冷却塔20の最小冷却水流量が冷却塔20の定格流量の40%である場合について考える。なお、冷凍機40の定格流量をV[m/hr]とする。
【0042】
定格運転時に冷凍機40が全体として必要とする冷却水流量は、nV[m/hr]である。通常であれば冷凍機40に合わせて、定格流量がnV[m/hr]の冷却塔20を用いればよいが、冷凍機40のCOPを向上させるために、例えば、定格流量が2nV[m/hr]の大型化した冷却塔20を用いると、定格運転時に循環配管70を流れる冷却水の流量(=nV)は、冷却塔20の定格流量の50%になる。
【0043】
さらに、低外気温度や低冷却負荷の条件下では、冷却水ポンプの搬送動力削減のため、冷却水ポンプ68(68−1、68−2、…、68−n)の変流量制御により、冷凍機40の凝縮器42に流入する冷却水の流量が減らされる。したがって、循環配管70を循環する冷却水の流量が減少する。
【0044】
この場合、循環配管70を循環する冷却水の流量が、冷却塔群の定格流量の40%(最小冷却水流量)を下回ってしまうことがある。
【0045】
そこで、本実施形態では、冷却塔20を通過した冷却水を、冷凍機40を介さずに冷却塔20に返送するバイパス配管72と、バイパス配管72を流れる冷却水の流量を調節するバイパスポンプ74とを設けている。これにより、バイパス配管72の冷却水流量を調節することで、冷却塔20に流入する冷却水の流量を冷却塔20の最小冷却水流量以上に維持することができる。
【0046】
本実施形態では、冷却塔20に流入する冷却水の流量を測定する流量計78を設けて、流量計78の測定結果に基づいて、制御装置50が、冷却塔20に流入する冷却水の流量が冷却塔20の最小冷却水流量以上になるように、バイパスポンプ74を制御する。
【0047】
また、バイパス配管72は、冷凍機40側に設けてもよいが、バイパスポンプ74のポンプ揚程を小さくする観点から、冷却塔20の近傍に設けることが好ましい。なお、バイパスポンプ74の停止時や低回転数運転時に、バイパス配管72内の冷却水が水頭差により逆流してしまうことを防止するために、バイパス配管72に逆止弁76を設けることが好ましい。
【0048】
次に、バイパスポンプ74の制御方法の具体例について説明する。図4は、バイパスポンプ74の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0049】
まず、流量計78により冷却塔20に流入する冷却水の流量(冷却水流量V)を測定し(ステップS1)、冷却水流量Vと閾値V0とを比較する(ステップS2)。ここで、閾値V0は、冷却塔20の最小冷却水流量以上の流量である。
【0050】
冷却水流量V<閾値V0の場合、制御装置50によりバイパスポンプ74の運転を開始する(ステップS3)。一方、冷却水流量V>閾値V0の場合、冷却水流量Vと閾値V1(>V0)とを比較して(ステップS4)、冷却水流量V>閾値V1の場合にはバイパスポンプ74を停止し(ステップS5)、冷却水流量V=閾値V1の場合には運転条件を変更せず、そのまま運転を継続する(ステップS6)。
【0051】
バイパスポンプ74の運転開始後、流量計78により冷却塔20に流入する冷却水の流量(冷却水流量V)を再び測定し(ステップS7)、冷却水流量Vと閾値V0とを比較する(ステップS8)。
【0052】
冷却水流量V<閾値V0の場合、制御装置50によりバイパスポンプ74の回転数を増やし(ステップS9)、ステップS7に戻る。一方、冷却水流量V>閾値V0の場合、冷却水流量Vと閾値V1(>V0)とを比較して(ステップS10)、冷却水流量V>閾値V1の場合にはバイパスポンプ74の回転数を減らし(ステップS11)、ステップS7に戻る。また、冷却水流量V=閾値V1の場合には運転条件を変更せず、そのまま運転を継続する(ステップS12)。
【0053】
上記制御方法によれば、冷却水流量Vが閾値V0(≧最小冷却水流量)を下回る場合にバイパスポンプ74の運転を行うことで、冷却塔20に流入する冷却水の流量を冷却塔20の最小冷却水流量以上に維持することができる。また、冷却水流量Vが閾値V1(>V0)を上回る場合にバイパスポンプ74の運転を停止するか、回転数を減らすことにより、ポンプ消費電力を削減することができる。
【0054】
さらに、冷却塔20に流入する冷却水の流量の正確な測定値に基づいて、バイパスポンプ74を制御することができる。また、シミュレーションや条件出し等の事前の検討をする必要がない。
【0055】
なお、上記制御方法では、バイパスポンプ74のON/OFFの切換頻度を少なくする観点から、閾値V1を閾値V0よりも大きな値に設定しているが、閾値V1として閾値V0を用いてもよい。
【0056】
以上、本発明の実施形態に係る冷却システムおよび冷却方法について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、冷却対称としてクリーンルーム36を備える冷却システム10の例について説明したが、本発明はこの例に限定されず、様々な冷却対象についても適用可能である。例えば、本発明を適用することができる冷却対称として、ビル、工場等の施設や、計算機を格納するサーバールームや、発熱を伴う機器を挙げることができる。
【0058】
また、上述の実施形態では、バイパス配管72の冷却水流量を流量計78の測定結果に基づいて調節する例について説明したが、以下で説明する第1変形例および第2変形例のように、流量計78を用いずに、バイパス配管72の冷却水流量を調節してもよい。
【0059】
図5は第1変形例に係る冷凍機運転用冷却回路を示す構成図であり、図6は図5に示す冷却回路のバイパスポンプ74の制御方法の一例を示すフローチャートである。また、図7は第2変形例に係る冷凍機運転用冷却回路を示す構成図であり、図8は図7に示す冷却回路のバイパスポンプ74の制御方法の一例を示すフローチャートである。なお、図5及び7に示す冷凍機運転用冷却回路のうち、上述の冷却回路100と共通する構成要素には同一の符号を付しており、ここではその説明を省略する。
【0060】
図5に示す冷凍機運転用の冷却回路110は、流量計78に代えて、冷却水ポンプ68及びバイパスポンプ74の回転数と、冷却塔20に流入する冷却水の流量との関係が予め記憶された記憶部56を備える点で冷却回路100と異なる。
【0061】
記憶部56に予め記憶される上記関係は、冷却水ポンプ68及びバイパスポンプ74の回転数を変化させながら、冷却塔20に流入する冷却水の流量を測定することで求めることができる。また、シミュレーションにより、種々の冷却水ポンプ68及びバイパスポンプ74の回転数について、冷却塔20に流入する冷却水の流量を算出することで、上記関係を求めてもよい。
【0062】
冷却回路110の制御装置50は、図6に示す手順に従って、記憶部56に予め記憶された上記関係に基づいてバイパスポンプ74を制御することが好ましい。以下、冷却回路110におけるバイパスポンプ74の制御方法の一例について説明する。
【0063】
まず、制御装置50により、冷却水ポンプ68の回転数(インバータ周波数)を取得して(ステップS21)、記憶部56に予め記憶された上記関係から、取得した冷却水ポンプ68の回転数に対応する冷却水流量Vを算出する(ステップS22)。
【0064】
次に、算出された冷却水流量Vと閾値V0とを比較して(ステップS23)、冷却水流量V<閾値V0の場合にはバイパスポンプ74の運転を開始し(ステップS24)、冷却水流量V≧閾値V0の場合にはバイパスポンプ74を停止する(ステップS25)。なお、閾値V0は冷却塔20の最小冷却水流量以上の流量である。
【0065】
バイパスポンプ74の運転開始後、記憶部56に予め記憶された上記関係から、冷却水流量Vが閾値V0となるようなバイパスポンプ74の回転数ω0を算出する(ステップS26)。そして、制御装置50により、ポンプ回転数がω0となるようにバイパスポンプ74を制御する(ステップS27)。
【0066】
上記制御方法によれば、冷却水流量Vが閾値V0(≧最小冷却水流量)を下回る場合にバイパスポンプ74の運転を行うことで、冷却塔20に流入する冷却水の流量を冷却塔20の最小冷却水流量以上に維持することができる。また、冷却水流量Vが閾値V0を上回る場合にバイパスポンプ74の運転を停止して、消費電力を削減することができる。
【0067】
さらに、流量計や差圧計等の測定装置を設ける必要がないため、冷却システムの導入コストを低減することができる。
【0068】
図7に示す冷凍機運転用の冷却回路120は、流量計78に代えて、冷凍機40の入口及び出口における冷却水の圧力差を測定する差圧計79(79−1、79−2、…、79−n)を備える点で冷却回路100と異なる。
【0069】
冷却回路120の制御装置50は、図8に示す手順に従って、差圧計79の測定結果に基づいてバイパスポンプ74を制御することが好ましい。以下、冷却回路120におけるバイパスポンプ74の制御方法の一例について説明する。
【0070】
まず、差圧計79により冷凍機40の入口及び出口における冷却水の圧力差を測定し(ステップS31)、差圧計79の測定結果に基づいて冷却塔20に流入する冷却水の流量(冷却水流量V)を算出した後(ステップS32)、冷却水流量Vと閾値V0とを比較する(ステップS33)。ここで、閾値V0は、冷却塔20の最小冷却水流量以上の流量である。
【0071】
冷却水流量V<閾値V0の場合、制御装置50によりバイパスポンプ74の運転を開始する(ステップS34)。一方、冷却水流量V>閾値V0の場合、冷却水流量Vと閾値V1(>V0)とを比較して(ステップS35)、冷却水流量V>閾値V1の場合にはバイパスポンプ74を停止し(ステップS36)、冷却水流量V=閾値V1の場合には運転条件を変更せず、そのまま運転を継続する(ステップS37)。
【0072】
バイパスポンプ74の運転開始後、差圧計79により冷凍機40の入口及び出口における冷却水の圧力差を測定し(ステップS38)、算出された圧力差に基づいて冷却水流量Vを再び算出する(ステップS39)。そして、算出された冷却水流量Vと閾値V0とを比較する(ステップS40)。
【0073】
冷却水流量V<閾値V0の場合、制御装置50によりバイパスポンプ74の回転数を増やし(ステップS41)、ステップS38に戻る。一方、冷却水流量V>閾値V0の場合、冷却水流量Vと閾値V1(>V0)とを比較して(ステップS42)、冷却水流量V>閾値V1の場合にはバイパスポンプ74の回転数を減らし(ステップS43)、ステップS38に戻る。なお、冷却水流量V=閾値V1の場合には運転条件を変更せず、そのまま運転を継続する(ステップS44)。
【0074】
上記制御方法によれば、冷却水流量Vが閾値V0(≧最小冷却水流量)を下回る場合にバイパスポンプ74の運転を行うことで、冷却塔20に流入する冷却水の流量を冷却塔20の最小冷却水流量以上に維持することができる。また、冷却水流量Vが閾値V1(>V0)を上回る場合にバイパスポンプ74の運転を停止するか、回転数を減らすことにより、ポンプ消費電力を削減することができる。
【0075】
さらに、高価な流量計を設ける必要がないため、冷却システムの導入コストを低減することができる。特に、冷凍機40の台数が少ない場合に、冷却システムの導入コストを大幅に低減することができる。
【0076】
なお、上記制御方法では、バイパスポンプ74のON/OFFの切換頻度を少なくする観点から、閾値V1を閾値V0よりも大きな値に設定しているが、閾値V1として閾値V0を用いてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10…冷却システム、20…冷却塔、22…散水管、24…ファン、30…第1熱交換器、32…第2熱交換器、34…ドライコイル、36…クリーンルーム、40…冷凍機、42…凝縮器、44…蒸発器、50…制御装置、52…第1バルブ、54…第2バルブ、56…記憶部、60…冷却水ポンプ、62…冷水ポンプ、64…ドライコイル冷却水ポンプ、66…冷水ポンプ、68…冷却水ポンプ、70…循環配管、72…バイパス配管、74…バイパスポンプ、76…逆止弁、78…流量計、79…差圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気により冷却水を冷却する冷却塔と、
前記冷却塔により冷却された前記冷却水を、冷却対象媒体と熱交換する熱交換部と、
前記冷却塔と前記熱交換部とを連結する循環配管と、
前記循環配管を通じて、前記冷却水を前記冷却塔と前記熱交換部との間で循環させる冷却水ポンプと、
前記冷却塔を通過した前記冷却水を、前記熱交換部を介さずに前記冷却塔に返送するバイパス配管と、
前記バイパス配管を流れる前記冷却水の流量を調節するバイパスポンプと、
前記冷却塔に流入する前記冷却水の流量が、前記冷却塔の最小冷却水流量以上になるように、前記バイパスポンプを制御する制御手段とを備えることを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記熱交換部は、冷凍機の凝縮器であることを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記熱交換部は、フリークーリング用の熱交換器であることを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記冷却塔に流入する前記冷却水の流量を測定する流量計をさらに備え、
前記制御手段は、前記流量計の測定結果に基づいて前記バイパスポンプを制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記冷却水ポンプ及び前記バイパスポンプの回転数と、前記冷却塔に流入する前記冷却水の流量との関係を予め記憶しておく記憶手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記関係に基づいて、前記バイパスポンプを制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記熱交換部の入口及び出口における前記冷却水の圧力差を測定する差圧計をさらに備え、
前記制御手段は、前記差圧計の測定結果に基づいて、前記バイパスポンプを制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項7】
外気により冷却水を冷却する冷却塔と、前記冷却塔により冷却された前記冷却水を、冷却対象媒体と熱交換する熱交換部と、前記冷却塔と前記熱交換部とを連結する循環配管と、前記循環配管を通じて、前記冷却水を前記冷却塔と前記熱交換部との間で循環させる冷却水ポンプと、前記冷却塔を通過した前記冷却水を、前記熱交換部を介さずに前記冷却塔に返送するバイパス配管と、前記バイパス配管を流れる前記冷却水の流量を調節するバイパスポンプとを備える冷却システムを用いる冷却方法であって、
前記冷却塔に流入する前記冷却水の流量を取得する工程と、
取得された前記冷却水の流量が、前記冷却塔の最小冷却水流量以上になるように、前記バイパスポンプを制御する工程とを備えることを特徴とする冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−286126(P2010−286126A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138088(P2009−138088)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】