説明

冷却システム

【課題】コンプレッサを数種の中から任意に選択して構成自在とされた冷凍機を備えた冷却システムにおいて、低温ショーケースの冷却性の維持と冷凍機の省エネ性の向上の両立を可能にする冷却システムを提供する。
【解決手段】コンプレッサ9を数種の中から任意に選択して組み込み自在とされたラックシステム冷凍機3に、複数の低温ショーケース7を冷媒管5a、5bを介して並列に接続して構成した冷凍回路2と、前記低温ショーケース7の冷却状態に基づいて、前記ラックシステム冷凍機3に組み込まれているコンプレッサ9の制御データを生成して出力するメインコントローラ4と、前記ラックシステム冷凍機3に組み込まれているコンプレッサ9に対する容量制御に要する制御設定を取得するとともに、及び、前記メインコントローラ4からの制御データを受信し、前記制御設定及び前記制御データに基づいて前記コンプレッサ9の容量制御を行うコンプレッサコントローラ6と、を備える冷却システム1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスーパーマーケットなどに設置される低温ショーケースと該低温ショーケースに冷媒を供給する冷凍機から構成される冷却システムに係り、特に、コンプレッサを数種の中から任意に選定し構成自在とされた冷凍機を備える冷却システムの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍・冷蔵ショーケースなどの複数の低温ショーケースを冷媒管を介して冷凍機に並列に接続して構成した冷却システムが知られている。係る低温ショーケースはスーパーマーケットなどの店内に複数台設置され、食品を冷凍若しくは冷蔵しながら陳列販売することに供されている。
上記冷凍機は、一般に、その内部に1個もしくは複数のコンプレッサと、コンプレッサを制御するマイコンとを筐体内に収めてパッケージ化して構成されている。そして、このマイコンが所定の動作シーケンスに基づいてコンプレッサを制御することで低温ショーケースとの間で冷凍サイクルを構成し、低温ショーケースを冷却している。
【0003】
近年ではスーパーマーケットなどの店舗においても、環境問題への取り組みやエネルギーコストの削減の観点から、冷却システムの消費電力を削減する対策が重視されている。
そこで、上記の低温ショーケースと冷凍機との連携を図ることで、低温ショーケースの庫内温度を庫内設定温度に維持しつつ無駄に冷やすことなどがないように冷凍機を制御することで、低温ショーケースの冷却性の維持と冷凍機の省エネ性の向上の両立を図った冷却システムが実現されている。この種の冷却システムでは、冷凍機の運転を制御する制御装置を設け、この制御装置が低温ショーケースの冷却状態に基づいて、冷凍機の低圧側の冷媒圧力である低圧側圧力に適切な値を設定して冷凍機に出力することで、低温ショーケースの冷却性を維持しつつ冷凍機の省エネ性を高めている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−57347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷却システムの設置箇所で必要とされる最大冷却能力は、冷凍機に接続する低温ショーケースの台数や、庫内設定温度、店内温度や外気温度などの環境条件によって決定される。したがって、冷却システムの設置時には、必要となる最大冷却能力に対して余裕のある能力を有した冷凍機が設置される。このとき、冷凍機の最大冷却能力は機種ごとに既定であるため、設置時の環境条件に見合った最大冷却能力の冷凍機がメーカなどで用意されていなければ、それよりも更に最大冷却能力に余裕のある冷凍機を設置せざるを得えず、冷却能力に無駄が生じることになる。
【0005】
そこで、冷凍機の最大冷却能力を決定付ける要因の一つであるコンプレッサの容量を、設置する環境条件において必要となる最大冷却能力(熱負荷)に合わせて、同一メーカ或いは他メーカの製品の中からユーザ等が自由に選択し、これらを自らが組み合わせて冷凍機を構成自在とすれば、最適な最大冷却能力を有する冷凍機を構成することができる(このような冷凍機を以下「ラックシステム冷凍機」と称する)。係るラックシステム冷凍機においては、必要となる最大冷却能力に最適な冷却能力が得られるから、従来のパッケージ化された冷凍機に比べ、無駄となる冷却能力がなく省エネ効果が高い冷却システムが実現可能になる。
【0006】
しかしながら、低温ショーケースの熱負荷は、外気温度や店内温度などの冷却システムの運転時に時々刻々と変動する環境条件(以下、運転環境条件と言う)によっても大きく左右されるため、一定の冷却能力でラックシステム冷凍機を運転させていると、例えば熱負荷が低いときには無駄な冷却が行われることとなる。上記のようにラックシステム冷凍機は、最適な冷却能力であることを前提に構成されているため、当該ラックシステム冷凍機の運転を低温ショーケースの状態と連携させる手段は不要とされており、低温ショーケースの熱負荷に合わせてラックシステム冷凍機を運転させることはできない。
【0007】
また、従来の冷凍機のマイコンには、内蔵のコンプレッサの種類に対して最適化された動作シーケンス(例えば、低圧側圧力設定値の設定手法など)のマイコンプログラムが予め組み込まれている。したがって、コンプレッサを任意に選定自在としたラックシステム冷凍機において、低温ショーケースの熱負荷に応じて冷却能力を可変し省エネ効果が得られる制御を行うには、コンプレッサの任意の組み合わせの全てを予め予想してマイコンプログラムとして組み込んでおくか、または、マイコンプログラムの一部の変更により、コンプレッサの任意の組み合わせ全てに対応可能にしておく必要がある。しかしながら、これらを実現するのは非常に困難であり、ラックシステム冷凍機において、マイコンにより省エネ効果を得る制御を行うことは困難であった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、コンプレッサを数種の中から任意に選択して構成自在とされた冷凍機を備えた冷却システムにおいて、低温ショーケースの冷却性の維持と冷凍機の省エネ性の向上の両立を可能にする冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、圧縮機を数種の中から任意に選択して組み込み自在とされた冷凍機に、複数の低温ショーケースを冷媒管を介して並列に接続して構成した冷凍回路と、前記低温ショーケースの冷却状態に基づいて、前記冷凍機に組み込まれている圧縮機の制御データを生成して出力するメイン制御装置と、前記冷凍機に組み込まれている圧縮機に対する容量制御に要する制御設定を取得可能に構成されるとともに、前記メイン制御装置からの制御データを受信する受信手段を備え、前記制御設定及び前記制御データに基づいて前記圧縮機の容量制御を行う圧縮機制御装置と、を備えることを特徴とする冷却システムを提供する。
【0010】
また本発明は、上記冷却システムにおいて、前記メイン制御装置は、前記低温ショーケースの冷却状態の安定性に応じた長さのディレイ時間を前記制御データとして生成し、前記圧縮機制御装置は、前記圧縮機の容量を変更すべき状態が前記ディレイ時間に亘って継続したときに、前記制御設定に基づいて前記圧縮機の容量を変更することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記冷却システムにおいて、前記メイン制御装置は、前記低温ショーケースの冷却状態に基づいて前記冷凍機の冷却能力の目標値を規定する前記制御データを生成し、前記圧縮機制御装置は、前記冷凍機の冷却能力が前記目標値に近づくように前記制御設定に基づいて前記圧縮機の容量を変更することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記冷却システムにおいて、前記冷凍機に容量が互いに異なる複数の容量固定型の圧縮機が組み込まれ、前記圧縮機制御装置は、前記圧縮機の各々のオン/オフにより容量制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冷凍機に組み込まれている圧縮機の容量制御に要する制御設定を取得し、また、低温ショーケースの冷却状態に基づく制御データをメイン制御装置から受信し、これら制御設定及び制御データに基づいて圧縮機を制御する圧縮機制御装置を備える構成としたため、圧縮機を数種の中から任意に選択して組み込み自在とされた冷凍機を備える冷却システムであっても、冷凍機にマイコンを設けなくとも低温ショーケースの冷却状態に応じて冷凍機の冷却能力を制御することができるから、低温ショーケースの冷却性の維持と冷凍機の省エネ性の向上の両立が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る冷却システム1の構成を模式的に示す図である。
この図に示すように、冷却システム1は、ラックシステム冷凍機3に液管たる冷媒管5a及びガス管たる冷媒管5bを介して、複数の低温ショーケース7を並列に接続して構成した冷凍回路2と、メインコントローラ(メイン制御装置)4と、コンプレッサコントローラ(圧縮機制御装置)6とを備えて構成されている。
【0015】
ラックシステム冷凍機3は、複数台のコンプレッサ9と、コンデンサ11と、コンデンサファン13と、低圧側の冷媒圧力を検出する低圧側圧力センサ26とを備えている。コンプレッサ9の各々は互いに容量が異なる容量固定型の圧縮機であり、それらの駆動台数によって総出力、すなわち冷凍機の冷却能力が可変される。以下の説明では、コンプレッサ9の台数を2台とするが、台数はこれに限定されるものではない。
【0016】
低温ショーケース7の各々は膨張弁(減圧装置)15と、冷却器17とを備え、膨張弁15の入り口には液電磁弁19が接続されている。
液電磁弁19は、膨張弁15への冷媒の供給を制御するための弁であり、液電磁弁19の開閉によって冷却器17の冷却による低温ショーケース7の庫内温度が制御される。
すなわち、低温ショーケース7は、庫内の温度を検出する庫内温度センサ21及びマイコン23を備え、マイコン23は、庫内設定温度の上下に設定された上限温度と下限温度を記憶し、上限温度にて液電磁弁19を開き、下限温度にて閉じるON−OFF制御を実行する。係るON−OFF制御により、平均として低温ショーケース7の庫内温度が庫内設定温度に近付けられる。なお、ラックシステム冷凍機3には、低温ショーケース7の他にも例えば冷蔵/冷凍プレハブ庫等の他の負荷設備を接続しても良い。
【0017】
上記ラックシステム冷凍機3は、冷却能力を決定付ける主要要素の一つであるコンプレッサ9を、冷却システム1に必要となる最大冷却能力に基づいて、数種の機種の中から自由自在に選択して組み合わせて組み込み自在としたものである。係るラックシステム冷凍機3においては、構成部品が1つの筐体にパッケージ化される必要がないため、例えばコンプレッサ9を屋内に配置しつつ、コンデンサ11及びコンデンサファン13を屋外に配置して熱籠もりを防止可能なレイアウトとすることができる。また、筐体による設置スペースの制約が無いため、コンプレッサ9の機種や台数を決定する際の自由度が高められる。
【0018】
係るラックシステム冷凍機3においては、コンプレッサ9の機種や台数が不定であるため、従来の冷凍機のようにマイコンを内蔵する構成とし、省エネ効果が得られるようにコンプレッサ9の各々の容量をマイコンが制御することは難しい。そこで、本実施形態の冷却システム1においては、ラックシステム冷凍機3が備える複数台のコンプレッサ9を制御するコンプレッサコントローラ6をラックシステム冷凍機3と別体に設けている。このコンプレッサコントローラ6は、メインコントローラ4からの後述する制御データに基づいて、複数台のコンプレッサ9の各々をオン/オフさせて容量制御を行うが、その詳細な構成については後述する。
【0019】
メインコントローラ4は、各低温ショーケース7、及び、コンプレッサコントローラ6のそれぞれと通信線24を介して接続され、所定の動作シーケンスを規定するプログラム25に基づいて動作するマイコンや通信装置などを備え、各低温ショーケース7の冷却状態に基づいてラックシステム冷凍機3のコンプレッサ9を制御するための後述する制御データを生成してコンプレッサコントローラ6に出力する。
【0020】
図2はメインコントローラ4の機能的構成を示すブロック図である。
この図において、制御部40は、メインコントローラ4の各部を中枢的に制御する。
制御設定入力部41は、ラックシステム冷凍機3に組み込まれているコンプレッサ9に対する容量制御に要する情報として制御ルールを規定した制御設定が入力される。
さらに詳述すると、ラックシステム冷凍機3においては、コンプレッサ9の機種(容量)や台数が設置時に決定されることから、コンプレッサコントローラ6に、これらのコンプレッサ9の容量制御を規定したプログラムを予め組み込むことはできない。そこで本実施例では、ラックシステム冷凍機3に組み込まれているコンプレッサ9に対する容量制御に要する情報が制御設定としてメインコントローラ4に入力される構成とし、そして上記制御データに含められてコンプレッサコントローラ6に入力している。
【0021】
図3は、制御設定として用いられる制御ルールの一例を示す図である。
この図に示すように、制御ルールにおいては、コンプレッサ9の各々のオン/オフと、総出力との対応関係が規定されており、総出力が低い方から順に、コンプレッサ9の各々のオン/オフの組み合わせにステップNo1、ステップNo2・・・と番号が付されている。すなわち、容量制御において総出力を下げる場合には、そのときの各コンプレッサ9のオン/オフの組に対応するステップNoよりも小さなステップNoを選択し、その選択したステップNoで規定された通りに各コンプレッサ9をオン/オフさせれば総出力を下げることができ、これとは逆に、総出力を上げる場合には、より大きなステップNoを選択して、その選択したステップNoで規定された通りに各コンプレッサ9をオン/オフさせれば総出力を上げることができる。
【0022】
ここで、本実施形態のラックシステム冷凍機3には、互いに容量の異なる容量固定型のコンプレッサ9が2台設けられているため、同図に示す通り、それぞれのオン/オフ状態の組み合わせが4通り得られる。このとき、コンプレッサ9の各々の容量が同じであると、4通りの組み合わせに総出力が同じになる組み合わせが生じることとなり、総出力が異なる組み合わせの数が減ってしまうが、互いに容量の異なるコンプレッサ9を用いることで、総出力が異なる組み合わせの数を最大とし、コンプレッサ9の総出力を細かく制御することができる。
【0023】
係るコンプレッサ9の容量制御は、ラックシステム冷凍機3の冷凍能力に無駄を生じさせないために行われるものである。本実施形態では、冷却能力の指標に、ラックシステム冷凍機3の低圧側の冷媒圧力(以下、「低圧側圧力」と言う)を用いることとし、この低圧側圧力を所定の設定値(以下、「低圧側圧力設定値」と言う)に維持するために、上記容量制御ルールに基づくコンプレッサ9の容量制御が行われる。なお低圧側圧力設定値は、例えば夏季の最も冷却能力が必要とされる環境に耐えるのに過不足のない値に設定されている。
【0024】
前掲図2に戻り、制御設定記憶部42は、制御設定入力部41から入力された制御設定を記憶する。なお、制御設定をコンプレッサコントローラ6が記憶して保持可能な場合には、当該制御設定記憶部42をメインコントローラ4が必ずしも備える必要はない。
ショーケース通信部43は、通信線24を介して各低温ショーケース7のマイコン23と通信する。この通信により、各低温ショーケース7における庫内温度と庫内設定温度と偏差温度が取得される。
【0025】
冷却状態判定部44は、低温ショーケース7の冷却状態の安定性を判定する。この安定性は、庫内温度と庫内設定温度の偏差温度の時間的変動の度合いに基づいて判定される。例えば、単位時間当たりの偏差温度の変化率(上昇率又は下降率)が庫内温度の急激な変化とみなされる閾値を超えている場合には、この偏差温度の変化に追従させてラックシステム冷凍機3の冷却能力を可変させなくては低温ショーケース7の冷却性が悪くなることを意味する。したがって、この場合には、「安定性が悪い」と判定される。これとは逆に、単位時間当たりの偏差温度の変化率(上昇率又は下降率)が小さい場合には、この偏差温度の変化に対してラックシステム冷凍機3の冷却能力の追従性が多少悪くとも低温ショーケース7の冷却状態には影響が出にくいため「安定性が良い」と判定される。
【0026】
冷却状態の安定性の判定は、全ての低温ショーケース7について行われ、1つでも「安定性が悪い」と判定された場合には、「安定性が悪い」という判定結果が冷却状態判定部44から出力され、全ての低温ショーケース7について「安定性が良い」と判定されたときに冷却状態判定部44から「安定性が良い」という判定結果が出力される。
なお、低温ショーケース7が備える液電磁弁19の開閉が上記偏差温度、さらには冷却状態(庫内の冷え具合)に連動していることから、この液電磁弁19の開閉頻度に基づいて低温ショーケース7の冷却状態の安定性を判定しても良い。この場合には、低温ショーケース7の庫内の冷却状態が、冷えの良い状態(庫内温度≦庫内設定温度)と、悪い状態(庫内温度>庫内設定温度)との間を所定時間内に何回遷移しているかが安定性として判定され、所定回数以上遷移している場合に安定性が悪いと判定される。
【0027】
ところで、全ての低温ショーケース7において冷却状態の安定性が良い場合、上述の通り、低温ショーケース7の偏差温度の変化に対してラックシステム冷凍機3の冷却能力の追従性(応答性)を多少低くしても低温ショーケース7の冷却性には影響が生じない。また、低温ショーケース7の冷却状態は一時的に悪くなっても、ある程度の時間経過後には、冷却状態が良くなる可能があり、このような場合にはコンプレッサ9のオン/オフを禁止することで当該オン/オフに伴う消費電力を削減することができる。これらのことから、本実施形態では、低圧側圧力が低圧側圧力設定値よりも高い/低い状態、すなわち、コンプレッサ9の容量制御を行って冷却能力を調整すべき状態が所定の時間(以下、「ディレイ時間」と言う)に亘り継続したときに、コンプレッサ9の容量を可変する構成とし、「安定性が良い」と判定された場合にはディレイ時間を一定時間延長して追従性を低め、これとは逆に「安定性が悪い」と判定された場合にはディレイ時間を一定時間短縮して追従性を高める構成としている。これにより、「安定性が良い」場合にはコンプレッサ9のオン/オフ頻度が減って省エネが図られるとともに、「安定性が悪い」場合には冷却能力の追従性が速やかに高められ低温ショーケース7の冷却状態が良好に維持されることとなる。
【0028】
コンプレッサコントローラ通信部45は、通信線24を介してコンプレッサコントローラ6に、制御部40が生成した制御データを出力する。この制御データには、上記制御設定、低圧側圧力設定値、及び、ディレイ時間の指示値(延長/短縮時間)のいずれかが含まれている。なお、制御設定及び低圧側圧力設定値は、冷却システム1の設置時に決定付けられ、それ以降可変するものでもないため、本実施形態では、制御設定及び低圧側圧力設定値をコンプレッサコントローラ6が保持可能に構成され、これら制御設定及び低圧側圧力設定値が冷却システム1の設置当初にだけ制御データとして送信され、コンプレッサコントローラ6に保持される。
【0029】
図4は、コンプレッサコントローラ6の機能的構成を示すブロック図である。
この図において、制御部60は、コンプレッサコントローラ6の各部を中枢的に制御するとともに、ラックシステム冷凍機3に組み込まれているコンプレッサ9の各々のオン/オフを制御するコンプレッサ制御信号を生成するものであり、例えばマイコンを備えて構成されている。コントローラ通信部61は、メインコントローラ4との間で通信線24を介して通信し、上記制御データを受信する。制御設定記憶部62は、制御データに含まれている上記制御設定及び低圧側圧力設定値を記憶する。低圧側圧力センサ入力部63は、ラックシステム冷凍機3に設けた低圧側圧力センサ26から低圧側圧力の検出値が入力される。制御部60は、低圧側圧力の検出値と低圧側圧力設定値を比較し、低圧側圧力の検出値が上記ディレイ時間に亘り継続して低圧側圧力設定値を超えた又は回った場合に、上記制御設定の容量制御ルールにしたがってラックシステム冷凍機3の容量を変更する。
【0030】
具体的には、低圧側圧力が低圧側圧力設定値よりも低い場合、無駄な冷却能力が生じ省エネ性が悪くなっていることを示し、これとは逆に、低圧側圧力が低圧側圧力設定値よりも高い場合、冷却能力が足りずに低温ショーケース7の冷却性が損なわれていることを示す。したがった、制御部60は、低圧側圧力が低圧側圧力設定値よりも高い状態がディレイ時間に亘り継続した場合には、その都度、上記容量制御ルールのステップNoを「1」ずつ上げて総出力を高めて冷却能力を高め、これとは逆に、低圧側圧力が低圧側圧力設定値よりも低い状態がディレイ時間に亘り継続した場合には、ステップNoを「1」ずつ下げて総出力を次第に下げて冷却能力を低める。そして、制御部60は、そのステップNoで指定された組のコンプレッサ9だけを稼働させるべく制御信号を生成する。コンプレッサ制御信号出力部64は、係るコンプレッサ制御信号をラックシステム冷凍機3のコンプレッサ9に出力する。
【0031】
なお、制御設定及び低圧側圧力設定値が毎回の制御データに含まれている場合には、コンプレッサコントローラ6が制御設定記憶部62を備える必要はない。また、コンプレッサコントローラ6に、メインコントローラ4と同様に制御設定入力部や表示部を設け、メインコントローラ4ではなくコンプレッサコントローラ6に制御設定を直接入力しても良い。
【0032】
次いで、係る構成の冷却システム1の動作について説明する。
図5は、メインコントローラ4の動作をコンプレッサコントローラ6の動作とともに示すフローチャートである。
上述の通り、冷却システム1においては、メインコントローラ4がコンプレッサコントローラ6に、上述した制御設定、低圧側圧力設定値及びディレイ時間を含む制御データを出力し、この制御データに基づいてコンプレッサコントローラ6がラックシステム冷凍機3の各コンプレッサ9の容量制御が行われる。
このとき、冷却システム1の設置当初においては、制御設定が不明であるため、サービスマン等によってコンプレッサ9の構成に基づく制御設定及び低圧側圧力設定値がメインコントローラ4に入力され(ステップS1)、これら制御設定及び低圧側圧力設定値がコンプレッサコントローラ6に制御データとして送信される(ステップS2)。係る制御データはコンプレッサコントローラ6に受信され(ステップS10)、当該コンプレッサコントローラ6の制御設定記憶部62に保持される。
その後、コンプレッサ9の電源がオンされて運転可能状態とされ、コンプレッサコントローラ6が制御設定の容量制御ルールにしたがって、ラックシステム冷凍機3のコンプレッサ9を駆動することで低温ショーケース7の冷却が行われる。
【0033】
低温ショーケース7の冷却中、すなわち、冷却システム1の運転中の間、メインコントローラ4は、一定時間(例えば10秒〜60秒)ごとに全ての低温ショーケース7から庫内温度と庫内設定温度の偏差温度を取得し(ステップS3)、それぞれの低温ショーケース7の冷却状態を判定する(ステップS4)。この冷却状態の判定においては、上述の通り、各低温ショーケース7の冷却状態の安定性が判定され、全ての低温ショーケース7において冷却状態の安定性が良い場合には「安定性が良い」と判定され、1つでも冷却状態の安定性の悪い低温ショーケース7がある場合には「安定性が悪い」と判定される。
【0034】
そして、メインコントローラ4は、冷却状態の安定性が良い場合には(ステップS5:YES)、低温ショーケース7の冷却状態の変化に対するコンプレッサ9の容量制御の追従性を低めて省エネ化を図るべく、ディレイ時間をa時間だけ延長する(ステップS6)。これとは逆に、冷却状態の安定性が悪い場合(ステップS5:NO)、メインコントローラ4は、コンプレッサ9の容量制御の追従性を高めて低温ショーケース7の冷却性を維持すべく、ディレイ時間をb時間だけ短縮する(ステップS7)。これらa時間及びb時間は共に同じ時間であっても、異なる時間であってもよい。
【0035】
メインコントローラ4は、低温ショーケース7の冷却状態に基づいて、このようにしてディレイ時間を決定すると、このディレイ時間の指示値を制御データとしてコンプレッサコントローラ6に送信する(ステップS8)。そして、低温ショーケース7の冷却状態を監視すべく処理手順をステップS3に戻す。
これにより、低温ショーケース7の冷却状態を反映したディレイ時間の指示値が制御データとしてコンプレッサコントローラ6に受信され(ステップS11)、コンプレッサコントローラ6においては、このディレイ時間を反映してのコンプレッサ9の容量制御が行われる。
【0036】
図6は、コンプレッサコントローラ6による容量制御のフローチャートである。
この図に示すように、コンプレッサコントローラ6は、ラックシステム冷凍機3の低圧側圧力センサ26から一定時間ごとに低圧側圧力を取得し(ステップS20)、低圧側圧力設定値と比較する(ステップS21)。低圧側圧力が低圧側圧力設定値を超えラックシステム冷凍機3の冷却能力が不足している場合(ステップS21:YES)、この状態が上述のディレイ時間に亘り継続したか否かを判定する(ステップS22)。そして、継続していなければ(ステップS22:NO)、コンプレッサ9の無駄なオン/オフを回避すべく処理手順をステップS20に戻し、継続している場合には(ステップS22:YES)、冷却能力を上げて低温ショーケース7の冷却性を維持すべく容量制御ルールのステップNOを「1」つ上げ(ステップS23)、この容量制御ルールに基づくコンプレッサ制御信号を生成してコンプレッサ9に出力する(ステップS24)。
【0037】
また、低圧側圧力が低圧側圧力設定値を下回りラックシステム冷凍機3の冷却能力に余りが生じている場合(ステップS21:NO)、この状態が上述のディレイ時間に亘り継続したか否かを判定する(ステップS25)。そして、継続していなければ(ステップS25:NO)、コンプレッサ9の無駄なオン/オフを回避すべく処理手順をステップS20に戻し、継続している場合には(ステップS25:YES)、冷却能力を下げてラックシステム冷凍機3の消費電力削減を図るべく容量制御ルールのステップNOを「1」つ下げ(ステップS26)、この容量制御ルールに基づくコンプレッサ制御信号を生成してコンプレッサ9に出力する(ステップS24)。
【0038】
なお、低圧側圧力が低圧側圧力設定値を超えたか否かの判定の際には、判定基準となる低圧側圧力設定値にヒステリシスが設けられる。すなわち、低圧側圧力が低圧側圧力設定値よりも所定値だけ高い圧力を超えた場合に「超えた」と判定し、低圧側圧力が低圧側圧力設定値よりも所定値だけ低い圧力を下回った場合に「下回った」と判定されている。かかる所定値は、上記低圧側圧力設定値と共にメインコントローラ4からコンプレッサコントローラ6に送信したり、或いは、当該コンプレッサコントローラ6のプログラムに予め組み込んでおくこともできる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、ラックシステム冷凍機3に組み込まれているコンプレッサ9の容量制御に要する制御設定を取得可能に構成され、また、低温ショーケース7の冷却状態に基づく制御データをメインコントローラ4から受信し、これら制御設定及び制御データに基づいてコンプレッサ9を制御するコンプレッサコントローラ6を備える構成としたため、コンプレッサ9を数種の中から任意に選択して組み込み自在とされた上記ラックシステム冷凍機3を備える冷却システム1であっても、当該ラックシステム冷凍機3にマイコンを設けなくとも低温ショーケース7の冷却状態に応じてラックシステム冷凍機3の冷却能力を制御することができるから、低温ショーケース7の冷却性の維持と冷凍機の省エネ性の向上の両立が実現される。
【0040】
特に本実施形態によれば、メインコントローラ4は、低温ショーケース7の冷却状態の安定性に応じた長さのディレイ時間を制御データとして生成してコンプレッサコントローラ6に出力し、コンプレッサコントローラ6は、コンプレッサ9の総出力を変更すべき状態がディレイ時間に亘って継続したときに、制御設定に基づいてコンプレッサ9の容量を変更する構成としたため、低温ショーケース7の冷却状態が安定しているときには、コンプレッサ9のオン/オフ頻度を抑えて省エネ性を高めつつ、冷却状態が安定していないときには、低温ショーケース7の冷却状態の変化に対するラックシステム冷凍機3の冷却能力の追従性を高めて低温ショーケース7の冷却性を良好に維持することができる。
【0041】
さらに本実施形態によれば、互い容量が異なる複数の容量固定型のコンプレッサ9を組み込んでラックシステム冷凍機3を構成し、それぞれのコンプレッサ9をオン/オフして容量制御を行う構成としたため、コンプレッサ9のオン/オフの組み合わせの数と同じ数だけ総出力を異ならせることができ、容量が同じコンプレッサが含まれる場合と比べて総出力を異ならせることができる。
【0042】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、容量固定型のコンプレッサ9を複数台設けてラックシステム冷凍機3を構成したが、これに限らず、コンプレッサ9の台数を1台とし、当該コンプレッサ9をオン/オフさせることで冷却能力を制御してもよい。
また、複数台の容量固定型のコンプレッサ9により容量を制御する構成に限らず、容量可変型のインバータコンプレッサを組み込んでラックシステム冷凍機を構成し、当該インバータコンプレッサをインバータ制御することで容量を制御する構成としてもよい。この場合、インバータ制御の制御ルールが制御設定として用いられる。
【0043】
また上述した実施形態では、低温ショーケース7の冷却状態の安定性を、コンプレッサ9の容量制御に反映させることで、低温ショーケース7の冷却性の維持とラックシステム冷凍機3の省エネ性の向上とを図った。
この他にも、低温ショーケース7の冷却状態の良否を、コンプレッサ9の容量制御に反映させる構成としても良い。
すなわち、メインコントローラ4が、低温ショーケース7の冷却状態の良否に基づいてラックシステム冷凍機3の冷却能力の目標値を例えば低圧側圧力設定値として規定した制御データを生成し、ラックシステム冷凍機3の低圧側圧力が当該低圧側圧力設定値に近づくように制御設定に基づいてコンプレッサコントローラ6がコンプレッサ9の容量制御を行う構成としてもよい。
【0044】
この場合、冷却状態の良否の判断は、例えば次のようにして行われる。すなわち、メインコントローラ4は各低温ショーケース7から送られてくる偏差温度から一定時間(例えば1時間)当たりの平均偏差温度Te(deg)をそれぞれ算出し、全ての低温ショーケース7においてこの平均偏差温度Teが予め設定したしきい値A以上か否かで判断する。そして、全ての低温ショーケース7の平均偏差温度Teがしきい値A以上でない場合には、冷却状態の判定結果を「良」とし、1台でもしきい値A以上となっている低温ショーケース7がある場合には、冷却状態の判定結果を「否」とする。このしきい値Aは平均偏差温度Teの良否を判断するための値であり、低温ショーケース7の庫内を十分に良好な冷却状態を維持できる値に設定される。
【0045】
そして、メインコントローラ4は、冷却状態が「良」の場合には低圧側圧力設定値を高めた制御データを生成してコンプレッサコントローラ6に送信することで、制御設定に基づく容量制御によりコンプレッサ9の総出力が小さくなって消費電力が削減される。これとは逆に、冷却状態が「否」の場合には、低圧側圧力設定値を低めた制御データを生成し、係る制御データを生成してコンプレッサコントローラ6に送信することで、制御設定に基づく容量制御によりコンプレッサ9の総出力が大きくなって低温ショーケース7の冷却性を良好に維持される。
【0046】
また例えば、上述した実施形態で示した運転環境条件はそれに限定されるものでは無い。また、実施形態では制御データとして冷凍機の低圧側圧力設定値を調整したが、これも限定されるものでは無く、冷却システムの冷却能力と消費電力に関係する制御ファクターであれば対象となり得る。更に、実施形態では1分周期で低圧側圧力設定値を調整したが、それに限らず、10分、30分、1時間、1時間30分、2時間周期など使用状況に応じて適宜選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る冷却システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】メインコントローラの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】制御設定としての容量制御ルールの一例を示す図である。
【図4】コンプレッサコントローラの機能的構成を示すブロック図である。
【図5】メインコントローラ及びコンプレッサコントローラの動作を示すフローチャートである。
【図6】コンプレッサコントローラの容量制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
1 冷却システム
2 冷凍回路
3 ラックシステム冷凍機(冷凍機)
4 メインコントローラ(メイン制御装置)
5a、5b 冷媒管
6 コンプレッサコントローラ(圧縮機制御装置)
7 低温ショーケース
9 コンプレッサ
11 コンデンサ
13 コンデンサファン
21 庫内温度センサ
26 低圧側圧力センサ
41 制御設定入力部
42 制御設定記憶部
61 コントローラ通信部(受信手段)
62 制御設定記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機を数種の中から任意に選択して組み込み自在とされた冷凍機に、複数の低温ショーケースを冷媒管を介して並列に接続して構成した冷凍回路と、
前記低温ショーケースの冷却状態に基づいて、前記冷凍機に組み込まれている圧縮機の制御データを生成して出力するメイン制御装置と、
前記冷凍機に組み込まれている圧縮機に対する容量制御に要する制御設定を取得可能に構成されるとともに、前記メイン制御装置からの制御データを受信する受信手段を備え、前記制御設定及び前記制御データに基づいて前記圧縮機の容量制御を行う圧縮機制御装置と、
を備えることを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記メイン制御装置は、
前記低温ショーケースの冷却状態の安定性に応じた長さのディレイ時間を前記制御データとして生成し、
前記圧縮機制御装置は、
前記圧縮機の容量を変更すべき状態が前記ディレイ時間に亘って継続したときに、前記制御設定に基づいて前記圧縮機の容量を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記メイン制御装置は、
前記低温ショーケースの冷却状態に基づいて前記冷凍機の冷却能力の目標値を規定する前記制御データを生成し、
前記圧縮機制御装置は、
前記冷凍機の冷却能力が前記目標値に近づくように前記制御設定に基づいて前記圧縮機の容量を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記冷凍機に容量が互いに異なる複数の容量固定型の圧縮機が組み込まれ、
前記圧縮機制御装置は、前記圧縮機の各々のオン/オフにより容量制御を行う
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−78229(P2010−78229A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247268(P2008−247268)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】