説明

冷却シート

【課題】 冷却効果に優れる冷却シートを提供する。
【解決手段】 含水ゲル層2を備える冷却シート1であって、含水ゲル層2は、一方面が平滑な貼付面3とされ、他方面が貼付面3よりも表面積が大きい露出面5とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体やその他の被冷却部位に貼り付けて冷却する冷却シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の冷却シートとして、ゲル層に含まれる水分の蒸発潜熱を利用して被冷却物を冷却するものが従来から知られている。例えば、特許文献1には、通気性を有する粘着シートの粘着面に膏体保持シートを保持させ、この膏体保持シートの外周にはみ出した前記粘着シートの粘着面により膏体保持シートの膏体層を患部に固定することで、膏体層中の水分の揮散に伴う冷却作用によって患部を冷却するパップ剤が開示されている。このパップ剤は、粘着シートの粘着面を、所定幅の粘着剤層と非粘着剤層とが交互に配置された状態にすることで、粘着シート全体の通気性を向上させている。
【特許文献1】特開平6−128150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来のパップ剤は、膏体層を保持する粘着シートの通気性を向上させることにより、膏体層中の水分蒸発を促すように構成されているが、膏体層自体の冷却性能の向上については特に検討されていないため、この点で更に改良の余地があった。
【0004】
そこで、本発明は、冷却効果に優れる冷却シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の前記目的は、含水ゲル層を備える冷却シートであって、前記含水ゲル層は、一方面が平滑な貼付面とされ、他方面が前記貼付面よりも表面積が大きい露出面とされている冷却シートにより達成される。
【0006】
この冷却シートによれば、含水ゲル層の平滑な貼付面により人体などの被冷却物への粘着性能を維持しつつ、この貼付面よりも表面積が大きい露出面により、含有する水分の蒸発速度を高めることができるので、良好な冷却効果を得ることができる。
【0007】
前記露出面の表面積の、前記貼付面の表面積に対する比は、1.2以上であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の前記目的は、含水ゲル層を備える冷却シートであって、前記含水ゲル層は、貼付面と反対側の露出面に突起部を有する冷却シートによっても達成され、上記冷却シートと同様に冷却効果を高めることができる。
【0009】
この冷却シートにおいて、前記突起部は、帯状に複数形成され、互いに平行に配置されていることが好ましく、高さが1mm以上であることが好ましい。
【0010】
上記各冷却シートにおいて、前記含水ゲル層は、ゲル化剤としてカラギーナンを含み、含水率が90%以上であることが好ましく、これによって、良好な冷却効果を長時間持続させることができる。
【0011】
また、上記各冷却シートは、前記含水ゲル層の露出面に、透湿性を有する支持体が積層されていてもよい。この場合も、支持体の透湿性により、含水ゲル層の露出面における蒸発能力を維持することができる。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、冷却効果に優れる冷却シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る冷却シートの平面図であり、図2は、この冷却シートの側面図である。本実施形態の冷却シートは、発熱などの際に額に貼り付けて使用されることを想定したものである。
【0014】
冷却シート1は、含水ゲル層2から構成されており、被冷却部位に対応した大きさで矩形状に形成されている。含水ゲル層2としては、ゲル化剤の主材料として、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グァーガム、サイリウムシードガム、タラガム、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、マンナン、ゼラチン、寒天、ペクチンなどから1又は複数種を選択した天然高分子多糖類を、含水ゲル層2全体に対して0.5〜10重量%(好ましくは、1〜8重量%)程度含むものを例示することができる。本実施形態においては、被冷却物に対する粘着性と形状保持性を維持しつつ大きな含水量を得る観点から、含水ゲル層2としてカラギーナンをゲル化剤の主材料として含むものを使用しており、使用開始前の含水量を90〜99重量%としている。
【0015】
冷却シート1は、裏面側が平滑な貼付面3である一方、表面側が波形に形成された露出面5とされている。露出面5の波形を構成する各突起部4は、帯状に形成されており、露出面5の短辺方向に沿って互いに平行となるように複数配置されている。各突起部4の高さは、露出面5の表面積を大きくする観点からなるべく高いことが好ましく、顕著な冷却効果を得るためには、後述する実験データなどから1mm以上であることが好ましい。各突起部4の高さの上限は特にないが、強度上の問題などから冷却シート1の突起部4が形成されていない部分の厚みと同程度であることが好ましく、例えば3mmである。また、隣接する突起部4の頂部間隔は、大きすぎると表面積を増大し難くなる一方、小さすぎると強度上の問題が生じ易くなることから、1〜8mmが好ましく、2〜4mmがより好ましい。
【0016】
このように構成された冷却シート1は、上述したゲル化剤や他の公知の添加剤を精製水に順次混合し、突起部4の形状に対応した凹凸形状を底部に有する成形型内に流し込み、80〜90℃で加熱後に冷却することにより、製造することができる。
【0017】
この冷却シート1は、予め密閉ケース(図示せず)内に収容しておき、必要時に取り出して、貼付面3を額などの被冷却部位に貼り付けて使用する(図5参照)。冷却シート1の露出面5からは含有水分が徐々に蒸発し、このときの蒸発潜熱により熱が奪われて、被冷却部位が冷却される。本実施形態の冷却シート1は、突起部4が形成されることで表面積が増加しており、外気との接触エリアが増大することで高い蒸発速度を得ることができるため、良好な冷却効果を得ることができ、特に急冷が必要な場合に有効である。一方、貼付面3は、平滑に形成することで被冷却部位との接触面積を確保することができ、良好な粘着性能を維持することができる。
【0018】
また、本実施形態においては、ゲル化剤としてカラギーナンを含むことにより90%以上の含水率としているため、高い蒸発速度にも拘わらず、冷却効果を長時間維持することができる。
【0019】
突起部4の形状としては、必ずしも本実施形態のものに限定されず、湾曲状、リング状、ドット状など露出面5の表面積を増大できる構成であればよい。露出面5の表面積の、貼付面3の表面積に対する比(以下、単に「表面積比」という)は、後述する実験データなどから、1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。この表面積比の上限は特に存在しないが、実用的な観点からは2以下である。
【0020】
含水ゲル層2の材質としては、上述した以外に、ゲル化剤の主材料として、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリメタアクリル酸の塩などを1又は複数種選択したポリアクリル酸類を、含水ゲル層2全体に対して1〜59.5重量%(好ましくは1〜20重量%)程度含むものを使用することができる。このような材料を選択することにより含水ゲル層2自体の形状を保持し難い場合には、図3に示すように、冷却シート11を、含水ゲル層2の露出面5側に透湿性を有するシート状の支持体6が積層された構成にしてもよい。尚、図3において、図1及び図2と同様の構成部分には同じ符号を付している。
【0021】
支持体6は、エンボス加工により表面に突起部41が形成されており、このような突起部41を有する支持体6に含水ゲル層2を積層することにより、含水ゲル層2にも突起部4が形成されている。すなわち、図1及び図2に示す構成と同様に、含水ゲル層2の露出面5の表面積が増加する。この結果、含水ゲル層2の水分が支持体6を介して蒸発することが促され、高い冷却効果を得ることができる。尚、含水ゲル層2の貼付面3には、使用時に除去可能な剥離フィルム(図示せず)を積層しておくことが好ましい。
【0022】
支持体6は、含水ゲル層2の露出面5における蒸発が阻害されないように、透湿性や通気性を有するものであれば、不織布以外に、織布、編布などを使用することも可能であり、更には、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなどからなる多孔性の樹脂フィルムなどを使用することも可能である。
【0023】
このような支持体6を備える冷却シート11の構成においても、含水ゲル層2の表面積比や突起部4の高さは、上述した数値範囲に設定することが好ましい。この場合、含水ゲル層2の表面積比は、支持体6表面の表面積の、含水ゲル層2の貼付面3の表面積に対する比から便宜的に求めることができ、含水ゲル層2の突起部4の高さは、支持体6の突起部41の高さから便宜的に求めることができる。
【0024】
上述した本発明の冷却シートは、発熱時の冷却用として使用する以外に、例えば、パップ剤として使用することも可能であり、更に、鮮度保持や保冷などを目的として、人体以外の食品や日用品などに貼り付けて使用することもできる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。図1及び図2に示す冷却シート1の構成において、含水ゲル層2の露出面5の表面積を変化させたときの冷却効果を比較した。実施例として、実施例1(突起部の頂部間隔:4mm、高さ:2mm、表面積比:1.57)、実施例2(突起部の頂部間隔:2mm、高さ:1mm、表面積比:1.56)、実施例3(突起部の高さ:1mm、表面積比:1.2)、実施例4(突起部の高さ:0.5mm、表面積比:1.1)を使用し、比較例として、比較例1(表面積比:1.0)を使用した。
【0026】
具体的には、冷却シートの貼付面をホットプレート上に貼り付けて0.7Wで通電し、貼付面直下のホットプレート上の温度を測定した。冷却シートの冷却力が完全になくなり温度が上昇しなくなった時点で測定を終了し、その時点の温度を終点温度とした。そして、各測定時刻における測定温度から、下式に基づき冷却温度を算出した。この結果を表1に示す。
(数1) 冷却温度(℃)=測定温度−終点温度+4
【0027】
【表1】

【0028】
冷却温度は、絶対値が大きいほど冷却効果が高いことを示している。表1からわかるように、冷却シートの表面積比が増大するにつれて冷却温度の絶対値も大きくなる傾向にあり、この傾向は、製品の想定最大使用時間である4時間後も変化していない。特に、表面積比が1.2以上(突起部の高さが1mm以上)である実施例1から3においては、4時間経過後も冷却温度の絶対値が4以上となっており、比較例1との違いが十分認識できる程度の冷却効果が得られることを確認した。
【0029】
また、上記実施例1〜4及び比較例1について、冷却感を評価した結果を表2に示す。冷却感の評価は、3人の被験者が、それぞれ貼付直後から3時間後までの冷感を総合的に判定することにより行った。
【0030】
【表2】

【0031】
表2において、「◎」は非常に冷たい、「○」は冷たい、「△」はやや冷たい、と感じたことをそれぞれ表している。表2の結果からわかるように、比較例1については、全員が十分な冷感を感じていないのに対し、実施例4については被験者の1人が冷感を感じており、特に実施例1から3については、全員がほぼ満足のいく冷感を感じていることを確認した。
【0032】
上述した冷却効果の比較を図3に示す構成についても行った。実施例(突起部の頂部間隔:4mm、高さ:2mm、表面積比:1.57)と比較例(表面積比:1.0)について、上記と同様に冷却温度を測定したところ、図4に示す結果となり、特に4時間以内において、突起部の有無により冷却効果に顕著な違いがあることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷却シートの概略平面図である。
【図2】図1に示す冷却シートの概略側面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る冷却シートの概略側面図である。
【図4】本発明の冷却シートの冷却効果を実験データで示す図である。
【図5】図1に示す冷却シートの使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1,11 冷却シート
2 含水ゲル層
3 貼付面
4,41 突起部
5 露出面
6 支持体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水ゲル層を備える冷却シートであって、
前記含水ゲル層は、一方面が平滑な貼付面とされ、他方面が前記貼付面よりも表面積が大きい露出面とされている冷却シート。
【請求項2】
前記露出面の表面積の、前記貼付面の表面積に対する比が、1.2以上である請求項1に記載の冷却シート。
【請求項3】
含水ゲル層を備える冷却シートであって、
前記含水ゲル層は、貼付面と反対側の露出面に突起部を有する冷却シート。
【請求項4】
前記突起部は、帯状に複数形成され、互いに平行に配置されており、高さが1mm以上である請求項3に記載の冷却シート。
【請求項5】
前記含水ゲル層は、ゲル化剤としてカラギーナンを含み、含水率が90%以上である請求項1から4のいずれかに記載の冷却シート。
【請求項6】
前記含水ゲル層の露出面に、透湿性を有する支持体が積層されている請求項1から4のいずれかに記載の冷却シート。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−95200(P2006−95200A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287384(P2004−287384)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)