冷却塔用充填材及び充填材用シート
【課題】 充填材用シートどうしを安定して保持させることのできる冷却塔用充填材、及びその充填材を構成する充填材用シートの提供。
【解決手段】 冷却塔内に複数枚積層された充填材用シートからなり、充填材用シートの層間に一方から原水が供給され、且つ他方から外気が供給されることにより原水を外気と接触させて冷却する冷却塔用充填材であって、前記複数枚の充填材用シートは、それぞれ複数の突起部と凹部とを有し、該突起部および凹部は、外気の流れ方向に長い扁平状の円錐台形状に形成され、該突起部は積層方向一方側に隣合う充填材用シートに至るよう延長され、突起部の先端部が隣合う充填材用シートに形成された凹部に嵌合することで充填材用シートの層間間隔を保持するよう構成され、前記各凹部の長手方向途中部分に、該長手方向に交叉する方向の補強リブが、各充填材用シートにおける凹部の突出側表面に形成されている構成。
【解決手段】 冷却塔内に複数枚積層された充填材用シートからなり、充填材用シートの層間に一方から原水が供給され、且つ他方から外気が供給されることにより原水を外気と接触させて冷却する冷却塔用充填材であって、前記複数枚の充填材用シートは、それぞれ複数の突起部と凹部とを有し、該突起部および凹部は、外気の流れ方向に長い扁平状の円錐台形状に形成され、該突起部は積層方向一方側に隣合う充填材用シートに至るよう延長され、突起部の先端部が隣合う充填材用シートに形成された凹部に嵌合することで充填材用シートの層間間隔を保持するよう構成され、前記各凹部の長手方向途中部分に、該長手方向に交叉する方向の補強リブが、各充填材用シートにおける凹部の突出側表面に形成されている構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔内に配され、原水を外気と接触させて冷却する冷却塔用充填材及び該冷却塔用充填材を構成する充填材用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場やビルなどの空調設備等から排出される冷却水は、加温されて温水となっているため、冷却水としてそのまま循環使用することは困難である。このため、冷却塔を用いて冷却水を冷却し、循環使用する方法が採用されている。
この種の冷却塔としては、内部を所定方向に流れる原水(冷却対象水)に外部から引き込まれた外気を接触させること等により原水と外気との間で熱交換を行い、原水を冷却するものが用いられている。
【0003】
斯かる冷却塔に於いては、内部に、複数の板部材たる充填材用シートが積層されてなる冷却塔用充填材が充填され、該充填材の層間に原水が流れるように(通常、層間が上下方向に向くように)配置されており、該充填材にて、層間に上方から原水が供給され側方から外気が供給されて、原水と外気との接触により熱交換が行われるように構成されている。
【0004】
ところで、上記の如き充填材に於いては、従来より、原水及び外気が供給される層間間隔を確保する観点及び層間に供給された原水と外気とを十分に接触させる観点から、通常、積層される充填材用シートに多数の円柱状の突起部が設けられているものが採用されている(特許文献1)。
【0005】
即ち、斯かる充填材に於いては、突起部により、積層した充填材用シートの層間に原水と外気とが供給される間隔が確保されており、この層間に供給された原水が突起部に衝突して層間を流れる原水の滞留時間が延び且つ飛沫効果(水滴が微細化することにより液体表面が増加して気液接触が促進される効果)が得られることから、熱交換率の優れたものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−120919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の充填材に於いては、熱交換率を上げるために、充填材用シートの突起部の数を増加させると、開口率(充填材に於いて充填材用シートの外気が供給される面から見て、層間の全面積中の投影的に開口している率)が低くなり、層間に外気を供給する圧損が増大するという問題が生じることとなる。
一方、突起部の数を減少させると、開口率が高くなり圧損は減少するものの、その分原水と突起部との衝突が減り、熱交換率が減少するという問題が生じることとなる。
【0008】
そこで本願出願人は、圧損を減少させしかも熱交換率の減少を抑えることのできる構成として、突起部を、外気の流れ方向に長い扁平状の円錐台形状に形成された扁平突起部に形成した冷却塔用充填材及び充填材用シートを提案している。
扁平突起部を外気の流れ方向に長い扁平状とすれば、外気が衝突する程度の割に、上方から供給される原水が衝突することが多くなり、扁平突起部に長手方向の両端部に角が無いことから、角があるものに比して圧損を少なくすることができ、比較的圧損が少ないにもかかわらず、原水の滞留時間を長くすることができ、飛沫効果も増大させることができる。
【0009】
ところで、積層される充填材用シートの層間間隔を確保する観点からは、隣合う一の充填材用シートの突起部に、該一の充填材用シートに隣合う他の充填材用シートに突起部の先端が嵌合する凹部を形成することが考えられる。
しかしながら突起部は扁平な形状であるから、突起部と凹部との嵌合状態は不安定である。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、充填材用シートどうしを安定して保持させることのできる冷却塔用充填材、及びその充填材を構成する充填材用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明は、冷却塔内に複数枚積層された充填材用シートからなり、充填材用シートの層間に一方から原水が供給され、且つ他方から外気が供給されることにより原水を外気と接触させて冷却する冷却塔用充填材であって、前記複数枚の充填材用シートは、それぞれ複数の突起部と凹部とを有し、該突起部および凹部は、外気の流れ方向に長い扁平状の円錐台形状に形成され、該突起部は積層方向一方側に隣合う充填材用シートに至るよう延長され、突起部の先端部が隣合う充填材用シートに形成された凹部に嵌合することで充填材用シートの層間間隔を保持するよう構成され、前記各凹部の長手方向途中部分に、該長手方向に交叉する方向の補強リブが、各充填材用シートにおける凹部の突出側表面に形成されていることを特徴とする冷却塔用充填材を提供する。
【0012】
上記構成では、突起部が外気の流れ方向に長い扁平状であることから、外気が衝突する程度の割に、上方から供給される原水が衝突することが多くなる。更に、突起部が円錐台形状であって長手方向の両端部に角が無いことから、角があるものに比して圧損を少なくすることができる。従って、比較的圧損が少ないにもかかわらず、原水の滞留時間を長くすることができ、飛沫効果も増大させることができる。
【0013】
また、各凹部の長手方向途中部分に、長手方向に交叉する方向の補強リブが、充填材用シートにおける凹部の突出側表面に形成されているから、扁平状どうしの突起部の先端部と凹部とが嵌合しても、補強リブの支持により、突起部と凹部との嵌合状態は安定化させられる。
【0014】
本発明においては、突起部の先端部と凹部との嵌合状態において、前記先端部と凹部の長手方向部どうしが補強リブの弾性によって嵌合される構成を採用することができる。
上記構成によれば、凹部が突起部の先端部により広げられるようにして挿入されると、突起部および凹部の長手方向部どうしは補強リブの弾性によって密着するようになって、突起部と凹部とが確実に嵌合される。
【0015】
本発明においては、各充填材用シートの表面全体に、原水が接触することでその表面積を大きくするための凹凸波形状部が形成され、補強リブの突出側表面に沿う方向の高さは凹凸波形状部の高さを越えないように形成される構成を採用することができる。
上記構成によれば、補強リブの弾性による突起部と凹部との嵌合の支持力を確保したうえで、凹凸波形状部の高さを越えないように形成することで、その分だけ外気の流れを阻害しないようにすることができる。
【0016】
本発明は、上記何れかに記載の冷却塔用充填材を構成する充填材用シートである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、凹部の長手方向途中部分に、長手方向に交叉する方向の補強リブが、充填材用シートにおける凹部の突出側表面に形成されているから、扁平状どうしの突起部の先端部と凹部とを嵌合させても、補強リブの支持により、突起部と凹部との嵌合状態における補強リブ側へのぐらつきを抑制して、充填材用シートどうしが確実に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷却塔用充填材が用いられる冷却塔の、正面側からの概略図である。
【図2】同冷却塔用充填材を外気供給側から見た図(側面図)である。
【図3】同充填材用シートを示す正面図である。
【図4】同一部拡大正面図である。
【図5】同充填材用シートに形成された突起部の正面図である。
【図6】同平面図である。
【図7】同側面図である。
【図8】同充填材用シートに形成された突起部の正面図である。
【図9】同平面図であり、突起部との嵌合状態を表している。
【図10】同側面図であり、突起部との嵌合状態を表している。
【図11】同実際の充填材用シートの一部を斜視図的に表した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、冷却塔用充填材が充填された冷却塔について説明する。本実施形態の冷却塔用充填材の充填された冷却塔は、工場設備等で加温され排出された冷却水等の原水を冷却するためのものである。
【0020】
図1は、前記冷却塔を示す、正面側からの概略図である。
前記冷却塔は、側面周面に外気取入口51が形成され上面中央部に外気排出口52が形成された略円柱状又は角柱状のケーシング50と、ケーシング50内側で外気取入口51に沿うように配され原水Aと外気Bとを接触させて熱交換により原水Aを冷却する冷却部60と、冷却部60に原水Aを散水供給するように冷却部60の上方に配された原水供給部70と、冷却部60により冷却された冷水を収容する冷水槽80と、冷却部60にて包囲されるようにケーシング50内の中央部に形成された通風空間90を介して、冷却に用いられた外気Bを外気排出口52へ排出する送風機100とを備えている。
【0021】
冷却部60は、ケーシング50内の中央側に通風空間90が形成されるようにケーシング50内の外側寄りに配されている。
また、冷却部60は、冷却塔用充填材1が複数段上下方向に連結された状態で充填されてなり、原水供給部70により上方から供給された原水Aとケーシング50の外気取入口51を介して側方から供給された外気Bとを、冷却塔用充填材1内にて熱交換させ、冷却された原水Aを冷水槽80に排出し、熱交換によって加熱された外気Bを中央部の通風空間90に排出するように構成されている。
【0022】
次に、上記の如き冷却塔に複数段充填された本実施形態の冷却塔用充填材1を構成する充填材用シート5について説明する。
図2は、冷却塔用充填材1を外気Bが供給される側、すなわち側面方向から見た図であり、複数の充填材用シート5が前後方向に積層された状態を示している。図3は、冷却塔用充填材1を構成する充填材用シート5を示す正面図である。
【0023】
図2ないし図4に示すように、本実施形態の冷却塔用充填材1は、複数の突起部15及び凹部20を有する充填材用シート5が複数枚積層されて構成されている。
冷却塔用充填材1では、前後方向に積層された各充填材用シート5の、複数の突起部15及び凹部20によって、層間に空間が形成されてなり、該空間が形成されることにより原水Aや外気Bが層間に供給されうるようになっている。
【0024】
各充填材用シート5は同様の構成であるので、一枚の充填材用シート5についてその構成を説明する。この場合、図1の方向すなわち正面側から観た充填材用シート5について説明する。
図2および図3に示すように、充填材用シート5は、平板状で且つ正面視が長方形(正方形も含む)または平行四辺形(鋭角コーナーで通常、75度以上90度未満)に形成されている。
【0025】
充填材用シート5は合成樹脂から形成され、金型を用いたプレス成形などにより一枚のシートから形成されている。その大きさは特に限定されるものではないが底面の長さ及び高さがそれぞれ400〜1000mm程度に設定され、また、その厚み(この場合、前後方向の厚みに相当する)は、通常、0.2〜0.7mm程度である。充填材用シート5に用いられる合成樹脂として、例えば、硬質ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等を挙げることができる。
【0026】
充填材用シート5は、その表面積を増大させるべく略全域に、前後方向に波打った波模様状の凹凸波形状部8が形成されている。なお、図3に於いて、凹凸波形状部8は、一部のみ示している。
凹凸波形状部8は、その稜線8a及び谷線8bが互いに平行であり、且つ上下方向でジグザグに蛇行するように形成されている。尚、凹凸波形状部8の深さ、すなわち稜線8aの頂面81aと谷線8bの頂点81bの間の深さは特に限定されないが、3〜10mm程度である。頂面81aは垂直平面に形成されている。
【0027】
充填材用シート5に形成された突起部15と凹部20どうしは、上下方向、左右方向に互いに交互になるよう、整然と配置されている。但し、隣合う充填材用シート5どうしでは、突起部15と凹部20は、対応する位置に形成されている。
尚、突起部15および凹部20を配置した領域には、凹凸波形状部8は形成されていない。
【0028】
各突起部15は同一の構成であるので、一個の突起部15の構成について説明する。図5ないし図7に、突起部15の詳細を示す。これらの図に示すように、突起部15は、充填材用シート5の一面側である後面から、積層方向一方側である後方へ突出するよう形成されている。突起部15は、その充填材用シート5の後方に隣合う別の充填材用シート5に至るよう延長されている。
【0029】
突起部15は、外気の流れ方向である左右方向に長い、上下方向に扁平状の円錐台形状に形成されている。また、その前後方向途中の断面は楕円形に形成されている。
突起部15は、胴部16と先端部17とから一体的に形成されている。
胴部16は、その基部側(充填材用シート5の前面側)に近いほど、左右幅が広く上下高さが高く形成され、後方ほど順次左右幅が狭く、上下高さが低くなるよう形成されている。
先端部17は、胴部16の後部に一体的に形成されている。先端部17は先端本体部18と、先端本体部18の後部に一体的に形成された挿入部19とを有する。先端本体部18は、後方ほど順次左右幅が狭く、上下高さが低くなるよう形成されている。挿入部19は後方ほど順次左右幅が狭く、上下高さが低くなるよう形成されている。
胴部16と先端本体部18の表面の傾斜角度は異なっている。すなわち、先端本体部18の表面傾斜角度に対して胴部16の表面傾斜角度のほうが急峻である。この構成により、先端本体部18の表面と胴部16の表面とは鈍角的に連続している。
【0030】
突起部15の上面および下面には、左右方向に離間した二条の溝15aが形成されている。この構成により断面積が増大しており、その分だけ強度を向上させた構成としている。一枚の充填材用シート5には、上記の構成の突起部15が複数形成されている。
【0031】
各凹部20は同一の構成であるので、一個の凹部20の構成について説明する。図8ないし図11(図11は、実際の製品の一部を斜視図的に表した写真である)に、凹部20の詳細を示す。これらの図に示すように、凹部20は、充填材用シート5の他側面である前面から、後方に向けてくぼむように形成されている。したがって、充填材用シート5の後面には凹部20の形状に応じた突形状部分が形成されている。
凹部20の内方空間は、突起部15の先端部17が挿入可能な形状に形成されている。すなわち凹部20は、外気の流れ方向である左右方向に長い、上下方向に扁平状の円錐台形状に形成されている。
【0032】
但し、凹部20の内面左右幅L1は、突起部15の先端部17の左右幅L2に比べて大きく形成され、凹部20の内面高さH1は先端部17の高さH2と同じかH2よりも低く形成され締まり嵌めとしている。
凹部20の前後深さD1は、先端部17の前後長さD2に比べてわずかに大きく形成されている。
【0033】
充填材用シート5の後面(突出側表面に相当する)のうち凹部20に対応する所定部位に補強リブ21が形成されている。補強リブ21は、凹部20を形成することで後方へ突出した突出面22において、その左右方向(長手方向)に交叉する方向に延びるよう形成されている。補強リブ21は、突出面22の上部および下部にそれぞれ形成されている。補強リブ21は、側面視して略三角形状に形成されており、その後面からの前後高さD3は、凹凸波形状部8の頂面81aを越えないよう形成されている。
この場合では、補強リブ21の前後高さD3は、凹凸波形状部8の頂面81aに一致するよう形成されている。
【0034】
各充填材用シート5の所定の部位に分散するように、挿通穴25が形成されている。各挿通穴25は、各充填材用シート5において同じ位置に形成されている。各挿通穴25には、充填材用シート5どうしの積層状態を安定化させるための支持柱26が挿通されている。各挿入穴25の位置は、これに支持柱26を挿通させたとき、前後に隣合う充填材用シート5どうしの突起部15と凹部20とを前後方向で合致させられる位置に配置されている。
【0035】
前後方向に充填材用シート5どうしを積層する場合では、複数の支持柱26に充填材用シート5に形成された挿通穴25を挿通するようにして、必要枚数の充填材用シート5を積層する。このとき、前後方向(積層方向)に隣合う充填材用シート5どうしでは、突起部15と凹部20は、対応する位置に形成されているから、前側の充填材用シート5の突起部15を後側の充填材用シート5の凹部20に嵌合することができる。
【0036】
凹部20の内面高さH1は先端部17の高さH2よりも低く形成されているから、突起部15と凹部20とを嵌合するとき、凹部20はやや上下方向に開かれながら、突起部15が挿入される。また、突起部15はその先端部17が円錐台形状に形成されているから、凹部20への挿入を容易に行うことができる。
【0037】
胴部16と先端本体部18の表面の傾斜角度は異なっており、先端本体部18の表面と胴部16の表面とは鈍角的に連続している。このため、突起部15を凹部20に挿入すると、先端本体部18の表面と胴部16の表面との連続部分が凹部20の周縁に係止し、凹部20の前後深さD1は、先端部17の前後長さD2に比べてわずかに大きく形成されているから、挿入部19は凹部20の底には接触しない位置で突起部15が留められる。
【0038】
そして、充填材用シート5の後面のうち凹部20に対応する所定部位に補強リブ21が形成されており、補強リブ21は、凹部20を形成することで後方へ突出した突出面22において、その左右方向に交叉する方向に延びるよう形成されている。
このため、凹部20が開かれる方向の力を補強リブ21が受け、逆に突起部15には、補強リブ21からその弾性復元力が働き、突起部15と凹部20との嵌合が確実に行われ、突起部15が凹部20から抜け出にくくなる。
【0039】
充填材用シート5には、突起部15および凹部20はそれぞれ複数あるので、前後方向に積層する充填材用シート5において、各突起部15および凹部20を嵌合させる。複数箇所で突起部15および凹部20を嵌合させることで、充填材用シート5どうしの保持状態が確実になる。
【0040】
このような複数の充填材用シート5からなる冷却塔用充填材1において、充填材用シート5における突起部15は、外気Bの流れ方向に長い扁平状であることから、外気Bが衝突する程度の割に、上方から供給される原水Aが衝突することが多くなる。
更に、突起部15が円錐台形状であって長手方向の両端部に角が無いことから、角があるものに比して圧損を少なくすることができる。従って、比較的圧損が少ないにもかかわらず、原水Aの滞留時間を長くすることができ、飛沫効果も増大させることができる。
【0041】
充填材用シート5の表面には凹凸波形状部8が形成されてなるので、充填材用シート5の表面に沿って流れる原水Aの表面積を増大させることができ、効率よく外気Bと熱交換をさせることができる。
また、凹凸波形状部8は、その稜線8a及び谷線8bが上方から下方に移動する際に、蛇行するように形成されてなるので、上方から下方に谷線8bに沿って流れる原水Aの滞留時間を長くすることができ、原水Aをより低い温度に冷却させることができる。
【0042】
そして、補強リブ21の前後高さD3は、凹凸波形状部8の頂面81aを越えないよう形成されており、しかも補強リブ21の前後高さD3は、凹凸波形状部8の頂面81aに一致するよう形成されている。このため、充分な弾性復元力を確保することができて、突起部15が凹部20から抜け出るのを確実に防止できるとともに、補強リブ21を設けたからといって外気Bの流れを大きく邪魔することがなく、したがって原水Aと外気Bとの熱交換率の低下を抑えることができる。
凹凸波形状部8の頂部は平面(頂面81a)としてあるから、外気Bの流れに対する抵抗が減って外気Bが円滑に流れ、しかも頂部のみを平面としているだけであるから、凹凸部8に沿って原水Aの流れの状態を変更させてしまうこともない。
【0043】
補強リブ21の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、外気Bの流れを大きく邪魔せず、しかもその弾性復元力で突起部15をその場に支持できるものであればよい。
また、補強リブ21の高さD3は頂面81aを越えずに、しかもその弾性復元力で突起部15をその場に支持できる高さであれば、頂面81aと一致しなくてもよい。
なお、本実施形態においては突起部15の上面および下面に二条の溝15aを形成したがこれに限定されず、一本の溝としてもよい。また、溝ではなく逆方向に突出させた形状(表面側に突出する山型の形状)としても良い。なお、山型とした場合、凹部20に嵌め込む必要があるので、この場合は先端部17の高さH2は先端部17に形成された山型の高さを含めた値となる。
【符号の説明】
【0044】
1…冷却塔用充填材、5…充填材用シート、15…突起部、16…胴部、17…先端部、18…先端本体部、19…挿入部、20…凹部、21…補強リブ、25…挿通穴、50…ケーシング、51…外気取入口、52…外気排出口、60…冷却部、70…原水供給部、80…冷水槽、90…通風空間、100…送風機、A…原水、B…外気
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔内に配され、原水を外気と接触させて冷却する冷却塔用充填材及び該冷却塔用充填材を構成する充填材用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場やビルなどの空調設備等から排出される冷却水は、加温されて温水となっているため、冷却水としてそのまま循環使用することは困難である。このため、冷却塔を用いて冷却水を冷却し、循環使用する方法が採用されている。
この種の冷却塔としては、内部を所定方向に流れる原水(冷却対象水)に外部から引き込まれた外気を接触させること等により原水と外気との間で熱交換を行い、原水を冷却するものが用いられている。
【0003】
斯かる冷却塔に於いては、内部に、複数の板部材たる充填材用シートが積層されてなる冷却塔用充填材が充填され、該充填材の層間に原水が流れるように(通常、層間が上下方向に向くように)配置されており、該充填材にて、層間に上方から原水が供給され側方から外気が供給されて、原水と外気との接触により熱交換が行われるように構成されている。
【0004】
ところで、上記の如き充填材に於いては、従来より、原水及び外気が供給される層間間隔を確保する観点及び層間に供給された原水と外気とを十分に接触させる観点から、通常、積層される充填材用シートに多数の円柱状の突起部が設けられているものが採用されている(特許文献1)。
【0005】
即ち、斯かる充填材に於いては、突起部により、積層した充填材用シートの層間に原水と外気とが供給される間隔が確保されており、この層間に供給された原水が突起部に衝突して層間を流れる原水の滞留時間が延び且つ飛沫効果(水滴が微細化することにより液体表面が増加して気液接触が促進される効果)が得られることから、熱交換率の優れたものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−120919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の充填材に於いては、熱交換率を上げるために、充填材用シートの突起部の数を増加させると、開口率(充填材に於いて充填材用シートの外気が供給される面から見て、層間の全面積中の投影的に開口している率)が低くなり、層間に外気を供給する圧損が増大するという問題が生じることとなる。
一方、突起部の数を減少させると、開口率が高くなり圧損は減少するものの、その分原水と突起部との衝突が減り、熱交換率が減少するという問題が生じることとなる。
【0008】
そこで本願出願人は、圧損を減少させしかも熱交換率の減少を抑えることのできる構成として、突起部を、外気の流れ方向に長い扁平状の円錐台形状に形成された扁平突起部に形成した冷却塔用充填材及び充填材用シートを提案している。
扁平突起部を外気の流れ方向に長い扁平状とすれば、外気が衝突する程度の割に、上方から供給される原水が衝突することが多くなり、扁平突起部に長手方向の両端部に角が無いことから、角があるものに比して圧損を少なくすることができ、比較的圧損が少ないにもかかわらず、原水の滞留時間を長くすることができ、飛沫効果も増大させることができる。
【0009】
ところで、積層される充填材用シートの層間間隔を確保する観点からは、隣合う一の充填材用シートの突起部に、該一の充填材用シートに隣合う他の充填材用シートに突起部の先端が嵌合する凹部を形成することが考えられる。
しかしながら突起部は扁平な形状であるから、突起部と凹部との嵌合状態は不安定である。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、充填材用シートどうしを安定して保持させることのできる冷却塔用充填材、及びその充填材を構成する充填材用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明は、冷却塔内に複数枚積層された充填材用シートからなり、充填材用シートの層間に一方から原水が供給され、且つ他方から外気が供給されることにより原水を外気と接触させて冷却する冷却塔用充填材であって、前記複数枚の充填材用シートは、それぞれ複数の突起部と凹部とを有し、該突起部および凹部は、外気の流れ方向に長い扁平状の円錐台形状に形成され、該突起部は積層方向一方側に隣合う充填材用シートに至るよう延長され、突起部の先端部が隣合う充填材用シートに形成された凹部に嵌合することで充填材用シートの層間間隔を保持するよう構成され、前記各凹部の長手方向途中部分に、該長手方向に交叉する方向の補強リブが、各充填材用シートにおける凹部の突出側表面に形成されていることを特徴とする冷却塔用充填材を提供する。
【0012】
上記構成では、突起部が外気の流れ方向に長い扁平状であることから、外気が衝突する程度の割に、上方から供給される原水が衝突することが多くなる。更に、突起部が円錐台形状であって長手方向の両端部に角が無いことから、角があるものに比して圧損を少なくすることができる。従って、比較的圧損が少ないにもかかわらず、原水の滞留時間を長くすることができ、飛沫効果も増大させることができる。
【0013】
また、各凹部の長手方向途中部分に、長手方向に交叉する方向の補強リブが、充填材用シートにおける凹部の突出側表面に形成されているから、扁平状どうしの突起部の先端部と凹部とが嵌合しても、補強リブの支持により、突起部と凹部との嵌合状態は安定化させられる。
【0014】
本発明においては、突起部の先端部と凹部との嵌合状態において、前記先端部と凹部の長手方向部どうしが補強リブの弾性によって嵌合される構成を採用することができる。
上記構成によれば、凹部が突起部の先端部により広げられるようにして挿入されると、突起部および凹部の長手方向部どうしは補強リブの弾性によって密着するようになって、突起部と凹部とが確実に嵌合される。
【0015】
本発明においては、各充填材用シートの表面全体に、原水が接触することでその表面積を大きくするための凹凸波形状部が形成され、補強リブの突出側表面に沿う方向の高さは凹凸波形状部の高さを越えないように形成される構成を採用することができる。
上記構成によれば、補強リブの弾性による突起部と凹部との嵌合の支持力を確保したうえで、凹凸波形状部の高さを越えないように形成することで、その分だけ外気の流れを阻害しないようにすることができる。
【0016】
本発明は、上記何れかに記載の冷却塔用充填材を構成する充填材用シートである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、凹部の長手方向途中部分に、長手方向に交叉する方向の補強リブが、充填材用シートにおける凹部の突出側表面に形成されているから、扁平状どうしの突起部の先端部と凹部とを嵌合させても、補強リブの支持により、突起部と凹部との嵌合状態における補強リブ側へのぐらつきを抑制して、充填材用シートどうしが確実に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷却塔用充填材が用いられる冷却塔の、正面側からの概略図である。
【図2】同冷却塔用充填材を外気供給側から見た図(側面図)である。
【図3】同充填材用シートを示す正面図である。
【図4】同一部拡大正面図である。
【図5】同充填材用シートに形成された突起部の正面図である。
【図6】同平面図である。
【図7】同側面図である。
【図8】同充填材用シートに形成された突起部の正面図である。
【図9】同平面図であり、突起部との嵌合状態を表している。
【図10】同側面図であり、突起部との嵌合状態を表している。
【図11】同実際の充填材用シートの一部を斜視図的に表した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、冷却塔用充填材が充填された冷却塔について説明する。本実施形態の冷却塔用充填材の充填された冷却塔は、工場設備等で加温され排出された冷却水等の原水を冷却するためのものである。
【0020】
図1は、前記冷却塔を示す、正面側からの概略図である。
前記冷却塔は、側面周面に外気取入口51が形成され上面中央部に外気排出口52が形成された略円柱状又は角柱状のケーシング50と、ケーシング50内側で外気取入口51に沿うように配され原水Aと外気Bとを接触させて熱交換により原水Aを冷却する冷却部60と、冷却部60に原水Aを散水供給するように冷却部60の上方に配された原水供給部70と、冷却部60により冷却された冷水を収容する冷水槽80と、冷却部60にて包囲されるようにケーシング50内の中央部に形成された通風空間90を介して、冷却に用いられた外気Bを外気排出口52へ排出する送風機100とを備えている。
【0021】
冷却部60は、ケーシング50内の中央側に通風空間90が形成されるようにケーシング50内の外側寄りに配されている。
また、冷却部60は、冷却塔用充填材1が複数段上下方向に連結された状態で充填されてなり、原水供給部70により上方から供給された原水Aとケーシング50の外気取入口51を介して側方から供給された外気Bとを、冷却塔用充填材1内にて熱交換させ、冷却された原水Aを冷水槽80に排出し、熱交換によって加熱された外気Bを中央部の通風空間90に排出するように構成されている。
【0022】
次に、上記の如き冷却塔に複数段充填された本実施形態の冷却塔用充填材1を構成する充填材用シート5について説明する。
図2は、冷却塔用充填材1を外気Bが供給される側、すなわち側面方向から見た図であり、複数の充填材用シート5が前後方向に積層された状態を示している。図3は、冷却塔用充填材1を構成する充填材用シート5を示す正面図である。
【0023】
図2ないし図4に示すように、本実施形態の冷却塔用充填材1は、複数の突起部15及び凹部20を有する充填材用シート5が複数枚積層されて構成されている。
冷却塔用充填材1では、前後方向に積層された各充填材用シート5の、複数の突起部15及び凹部20によって、層間に空間が形成されてなり、該空間が形成されることにより原水Aや外気Bが層間に供給されうるようになっている。
【0024】
各充填材用シート5は同様の構成であるので、一枚の充填材用シート5についてその構成を説明する。この場合、図1の方向すなわち正面側から観た充填材用シート5について説明する。
図2および図3に示すように、充填材用シート5は、平板状で且つ正面視が長方形(正方形も含む)または平行四辺形(鋭角コーナーで通常、75度以上90度未満)に形成されている。
【0025】
充填材用シート5は合成樹脂から形成され、金型を用いたプレス成形などにより一枚のシートから形成されている。その大きさは特に限定されるものではないが底面の長さ及び高さがそれぞれ400〜1000mm程度に設定され、また、その厚み(この場合、前後方向の厚みに相当する)は、通常、0.2〜0.7mm程度である。充填材用シート5に用いられる合成樹脂として、例えば、硬質ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等を挙げることができる。
【0026】
充填材用シート5は、その表面積を増大させるべく略全域に、前後方向に波打った波模様状の凹凸波形状部8が形成されている。なお、図3に於いて、凹凸波形状部8は、一部のみ示している。
凹凸波形状部8は、その稜線8a及び谷線8bが互いに平行であり、且つ上下方向でジグザグに蛇行するように形成されている。尚、凹凸波形状部8の深さ、すなわち稜線8aの頂面81aと谷線8bの頂点81bの間の深さは特に限定されないが、3〜10mm程度である。頂面81aは垂直平面に形成されている。
【0027】
充填材用シート5に形成された突起部15と凹部20どうしは、上下方向、左右方向に互いに交互になるよう、整然と配置されている。但し、隣合う充填材用シート5どうしでは、突起部15と凹部20は、対応する位置に形成されている。
尚、突起部15および凹部20を配置した領域には、凹凸波形状部8は形成されていない。
【0028】
各突起部15は同一の構成であるので、一個の突起部15の構成について説明する。図5ないし図7に、突起部15の詳細を示す。これらの図に示すように、突起部15は、充填材用シート5の一面側である後面から、積層方向一方側である後方へ突出するよう形成されている。突起部15は、その充填材用シート5の後方に隣合う別の充填材用シート5に至るよう延長されている。
【0029】
突起部15は、外気の流れ方向である左右方向に長い、上下方向に扁平状の円錐台形状に形成されている。また、その前後方向途中の断面は楕円形に形成されている。
突起部15は、胴部16と先端部17とから一体的に形成されている。
胴部16は、その基部側(充填材用シート5の前面側)に近いほど、左右幅が広く上下高さが高く形成され、後方ほど順次左右幅が狭く、上下高さが低くなるよう形成されている。
先端部17は、胴部16の後部に一体的に形成されている。先端部17は先端本体部18と、先端本体部18の後部に一体的に形成された挿入部19とを有する。先端本体部18は、後方ほど順次左右幅が狭く、上下高さが低くなるよう形成されている。挿入部19は後方ほど順次左右幅が狭く、上下高さが低くなるよう形成されている。
胴部16と先端本体部18の表面の傾斜角度は異なっている。すなわち、先端本体部18の表面傾斜角度に対して胴部16の表面傾斜角度のほうが急峻である。この構成により、先端本体部18の表面と胴部16の表面とは鈍角的に連続している。
【0030】
突起部15の上面および下面には、左右方向に離間した二条の溝15aが形成されている。この構成により断面積が増大しており、その分だけ強度を向上させた構成としている。一枚の充填材用シート5には、上記の構成の突起部15が複数形成されている。
【0031】
各凹部20は同一の構成であるので、一個の凹部20の構成について説明する。図8ないし図11(図11は、実際の製品の一部を斜視図的に表した写真である)に、凹部20の詳細を示す。これらの図に示すように、凹部20は、充填材用シート5の他側面である前面から、後方に向けてくぼむように形成されている。したがって、充填材用シート5の後面には凹部20の形状に応じた突形状部分が形成されている。
凹部20の内方空間は、突起部15の先端部17が挿入可能な形状に形成されている。すなわち凹部20は、外気の流れ方向である左右方向に長い、上下方向に扁平状の円錐台形状に形成されている。
【0032】
但し、凹部20の内面左右幅L1は、突起部15の先端部17の左右幅L2に比べて大きく形成され、凹部20の内面高さH1は先端部17の高さH2と同じかH2よりも低く形成され締まり嵌めとしている。
凹部20の前後深さD1は、先端部17の前後長さD2に比べてわずかに大きく形成されている。
【0033】
充填材用シート5の後面(突出側表面に相当する)のうち凹部20に対応する所定部位に補強リブ21が形成されている。補強リブ21は、凹部20を形成することで後方へ突出した突出面22において、その左右方向(長手方向)に交叉する方向に延びるよう形成されている。補強リブ21は、突出面22の上部および下部にそれぞれ形成されている。補強リブ21は、側面視して略三角形状に形成されており、その後面からの前後高さD3は、凹凸波形状部8の頂面81aを越えないよう形成されている。
この場合では、補強リブ21の前後高さD3は、凹凸波形状部8の頂面81aに一致するよう形成されている。
【0034】
各充填材用シート5の所定の部位に分散するように、挿通穴25が形成されている。各挿通穴25は、各充填材用シート5において同じ位置に形成されている。各挿通穴25には、充填材用シート5どうしの積層状態を安定化させるための支持柱26が挿通されている。各挿入穴25の位置は、これに支持柱26を挿通させたとき、前後に隣合う充填材用シート5どうしの突起部15と凹部20とを前後方向で合致させられる位置に配置されている。
【0035】
前後方向に充填材用シート5どうしを積層する場合では、複数の支持柱26に充填材用シート5に形成された挿通穴25を挿通するようにして、必要枚数の充填材用シート5を積層する。このとき、前後方向(積層方向)に隣合う充填材用シート5どうしでは、突起部15と凹部20は、対応する位置に形成されているから、前側の充填材用シート5の突起部15を後側の充填材用シート5の凹部20に嵌合することができる。
【0036】
凹部20の内面高さH1は先端部17の高さH2よりも低く形成されているから、突起部15と凹部20とを嵌合するとき、凹部20はやや上下方向に開かれながら、突起部15が挿入される。また、突起部15はその先端部17が円錐台形状に形成されているから、凹部20への挿入を容易に行うことができる。
【0037】
胴部16と先端本体部18の表面の傾斜角度は異なっており、先端本体部18の表面と胴部16の表面とは鈍角的に連続している。このため、突起部15を凹部20に挿入すると、先端本体部18の表面と胴部16の表面との連続部分が凹部20の周縁に係止し、凹部20の前後深さD1は、先端部17の前後長さD2に比べてわずかに大きく形成されているから、挿入部19は凹部20の底には接触しない位置で突起部15が留められる。
【0038】
そして、充填材用シート5の後面のうち凹部20に対応する所定部位に補強リブ21が形成されており、補強リブ21は、凹部20を形成することで後方へ突出した突出面22において、その左右方向に交叉する方向に延びるよう形成されている。
このため、凹部20が開かれる方向の力を補強リブ21が受け、逆に突起部15には、補強リブ21からその弾性復元力が働き、突起部15と凹部20との嵌合が確実に行われ、突起部15が凹部20から抜け出にくくなる。
【0039】
充填材用シート5には、突起部15および凹部20はそれぞれ複数あるので、前後方向に積層する充填材用シート5において、各突起部15および凹部20を嵌合させる。複数箇所で突起部15および凹部20を嵌合させることで、充填材用シート5どうしの保持状態が確実になる。
【0040】
このような複数の充填材用シート5からなる冷却塔用充填材1において、充填材用シート5における突起部15は、外気Bの流れ方向に長い扁平状であることから、外気Bが衝突する程度の割に、上方から供給される原水Aが衝突することが多くなる。
更に、突起部15が円錐台形状であって長手方向の両端部に角が無いことから、角があるものに比して圧損を少なくすることができる。従って、比較的圧損が少ないにもかかわらず、原水Aの滞留時間を長くすることができ、飛沫効果も増大させることができる。
【0041】
充填材用シート5の表面には凹凸波形状部8が形成されてなるので、充填材用シート5の表面に沿って流れる原水Aの表面積を増大させることができ、効率よく外気Bと熱交換をさせることができる。
また、凹凸波形状部8は、その稜線8a及び谷線8bが上方から下方に移動する際に、蛇行するように形成されてなるので、上方から下方に谷線8bに沿って流れる原水Aの滞留時間を長くすることができ、原水Aをより低い温度に冷却させることができる。
【0042】
そして、補強リブ21の前後高さD3は、凹凸波形状部8の頂面81aを越えないよう形成されており、しかも補強リブ21の前後高さD3は、凹凸波形状部8の頂面81aに一致するよう形成されている。このため、充分な弾性復元力を確保することができて、突起部15が凹部20から抜け出るのを確実に防止できるとともに、補強リブ21を設けたからといって外気Bの流れを大きく邪魔することがなく、したがって原水Aと外気Bとの熱交換率の低下を抑えることができる。
凹凸波形状部8の頂部は平面(頂面81a)としてあるから、外気Bの流れに対する抵抗が減って外気Bが円滑に流れ、しかも頂部のみを平面としているだけであるから、凹凸部8に沿って原水Aの流れの状態を変更させてしまうこともない。
【0043】
補強リブ21の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、外気Bの流れを大きく邪魔せず、しかもその弾性復元力で突起部15をその場に支持できるものであればよい。
また、補強リブ21の高さD3は頂面81aを越えずに、しかもその弾性復元力で突起部15をその場に支持できる高さであれば、頂面81aと一致しなくてもよい。
なお、本実施形態においては突起部15の上面および下面に二条の溝15aを形成したがこれに限定されず、一本の溝としてもよい。また、溝ではなく逆方向に突出させた形状(表面側に突出する山型の形状)としても良い。なお、山型とした場合、凹部20に嵌め込む必要があるので、この場合は先端部17の高さH2は先端部17に形成された山型の高さを含めた値となる。
【符号の説明】
【0044】
1…冷却塔用充填材、5…充填材用シート、15…突起部、16…胴部、17…先端部、18…先端本体部、19…挿入部、20…凹部、21…補強リブ、25…挿通穴、50…ケーシング、51…外気取入口、52…外気排出口、60…冷却部、70…原水供給部、80…冷水槽、90…通風空間、100…送風機、A…原水、B…外気
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却塔内に複数枚積層された充填材用シートからなり、充填材用シートの層間に一方から原水が供給され、且つ他方から外気が供給されることにより原水を外気と接触させて冷却する冷却塔用充填材であって、
前記複数枚の充填材用シートは、それぞれ複数の突起部と凹部とを有し、該突起部および凹部は、外気の流れ方向に長い扁平状の円錐台形状に形成され、該突起部は積層方向一方側に隣合う充填材用シートに至るよう延長され、突起部の先端部が隣合う充填材用シートに形成された凹部に嵌合することで充填材用シートの層間間隔を保持するよう構成され、前記各凹部の長手方向途中部分に、該長手方向に交叉する方向の補強リブが、各充填材用シートにおける凹部の突出側表面に形成されていることを特徴とする冷却塔用充填材。
【請求項2】
突起部の先端部と凹部との嵌合状態において、前記先端部と凹部の長手方向部どうしが補強リブの弾性によって嵌合されることを特徴とする請求項1記載の冷却塔用充填材。
【請求項3】
各充填材用シートの表面全体に、原水が接触することでその表面積を大きくするための凹凸波形状部が形成され、補強リブの突出側表面に沿う方向の高さは凹凸波形状部の高さを越えないように形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の冷却塔用充填材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の冷却塔用充填材を構成する充填材用シート。
【請求項1】
冷却塔内に複数枚積層された充填材用シートからなり、充填材用シートの層間に一方から原水が供給され、且つ他方から外気が供給されることにより原水を外気と接触させて冷却する冷却塔用充填材であって、
前記複数枚の充填材用シートは、それぞれ複数の突起部と凹部とを有し、該突起部および凹部は、外気の流れ方向に長い扁平状の円錐台形状に形成され、該突起部は積層方向一方側に隣合う充填材用シートに至るよう延長され、突起部の先端部が隣合う充填材用シートに形成された凹部に嵌合することで充填材用シートの層間間隔を保持するよう構成され、前記各凹部の長手方向途中部分に、該長手方向に交叉する方向の補強リブが、各充填材用シートにおける凹部の突出側表面に形成されていることを特徴とする冷却塔用充填材。
【請求項2】
突起部の先端部と凹部との嵌合状態において、前記先端部と凹部の長手方向部どうしが補強リブの弾性によって嵌合されることを特徴とする請求項1記載の冷却塔用充填材。
【請求項3】
各充填材用シートの表面全体に、原水が接触することでその表面積を大きくするための凹凸波形状部が形成され、補強リブの突出側表面に沿う方向の高さは凹凸波形状部の高さを越えないように形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の冷却塔用充填材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の冷却塔用充填材を構成する充填材用シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−220652(P2011−220652A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93224(P2010−93224)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
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