説明

冷却材を備える電池、並びに冷却材を備える組電池

【課題】冷却材を用いて従来よりも適切に電池を冷却する。
【解決手段】電池と冷却材1Aとを少なくとも備える、冷却材を備える電池であって、該冷却材1Aが、温度に応じて水を吸放出する少なくとも1種の水分吸放出材料を含有する保水層2と、該水に溶解することによって吸熱する少なくとも1種の吸熱材料を含有する吸熱層3とを少なくとも有し、該冷却材1Aの保水層2側と該電池とが接触していることを特徴とする、冷却材を備える電池を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却材を備える電池、並びに冷却材を備える組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばリチウムイオン二次電池、鉛蓄電池、ニッケル水素二次電池等の二次電池、燃料電池等の各種電池は、例えば鉄道、船舶、自動車、産業用蓄電設備等の動力源、スマートグリッドのような電力系統用途等として広く用いられている。上記の各種電池は1つの電池からなる単電池として用いられることもあるが、高出力かつ大容量の電気エネルギーを獲得するという要望から、単電池を複数接続した組電池として用いられることもある。
【0003】
二次電池(以下、適宜、単に「電池」と言う。)においては、充放電の際に電池が通常は発熱することが知られている。そのため、複数の電池を接続する組電池においては、例えば運用の容易性、安全性の観点から組電池にパッケージングが施されており、熱がこもりやすく放熱が非常に行われにくいという課題がある。さらには、防水対策の観点から電池が水に濡れないように箱の中に収められている場合もあり、放熱がよりいっそう行われにくいという課題もある。
【0004】
また、電池性能を向上させるに際して、電池の発熱量が増加することも不可避である。しかしながら、上記各種電池においては、所望の性能を発揮させるために、上記の発熱量の増加に関わらずできるだけ狭い範囲の温度領域に電池温度を収めることが特に重要である。その理由は、電池の通常の使用温度範囲を逸脱するような高温状態が続いた場合、電池の性能が著しく劣化することがあるからである。従って、特に高性能の電池においては、電池の高密度化及び大容量化の観点から、冷却機構を備えることが極めて好ましい。
【0005】
このような冷却機構としては、例えば、冷却液及びラジエータを組み合わせたもの、高出力の冷却ファンの使用等があり、例えば特許文献1には、ヒートパイプを電池に取り付ける技術が記載されている。また、例えば特許文献2には、相変化の際の熱収支の大きな材料を熱接触させることで、電池を所望の温度範囲で運用する技術が記載されている。そして、例えば特許文献3には、相変化時の潜熱を利用する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−210245号公報
【特許文献2】特表2003−533844号公報
【特許文献3】特開2009−140786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、冷却機構を駆動させるための機器類及び動力源が別途必要な場合が多く、組電池の小型軽量化が難しいという課題がある。また、特許文献2及び3記載の技術においては、相変化を起こす相変化材の相変化点(例えば融点等)以下に電池を冷却することが困難であるため冷却温度に一定の制限があったり、電池の冷却が未だ不十分であったりするという課題もある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するべくなされたものであり、その目的は、従来よりも適切に電池を冷却することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、少なくとも二層からなる冷却材を用いて、該二層のうちの特定の一層側を電池と接触させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来よりも適切に電池を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】冷却材についての本発明の第一実施形態に係る、冷却材の断面を模式的に示した図である。
【図2】冷却材についての本発明の第二実施形態に係る、冷却材の断面を模式的に示した図である。
【図3】冷却材についての本発明の第三実施形態に係る、冷却材の断面を模式的に示した図である。
【図4】冷却材についての本発明の第四実施形態に係る、冷却材の上部側面を模式的に示した図である。
【図5】冷却材を備える組電池についての本発明の第一実施形態に係る、積層形電池を複数備える組電池セットの要部構成を模式的に示した図である。
【図6】冷却材を備える電池についての本発明の第一実施形態に係る、円筒型電池を備える電池セットの要部構成を模式的に示した図である。
【図7】(a)は冷却材を備える組電池についての本発明の第二実施形態に係る、円筒型電池を複数備える組電池セットの要部構成を模式的に示した図であり、(b)は(a)に示す組電池セットの上側面図、(c)は(a)に示す組電池セットにおいて、冷却材1が電池収納ケース11の短手方向に配置された変更例の上側面図である。
【図8】実施例1にて製造した冷却材を用いた場合と、比較例1にて製造した冷却材を用いた場合と、における、経過時間に対する温度変化を示すグラフである。
【図9】実施例2にて製造した冷却材を用いた場合と、比較例2にて製造した冷却材を用いた場合と、における、経過時間に対する温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、適宜「本実施形態」と言う。)を詳細に説明するが、本実施形態は以下の内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0013】
[1.冷却材を備える電池、並びに冷却材を備える組電池]
本実施形態に係る、冷却材を備える電池(以下、適宜「本実施形態に係る電池セット」と言う。)は、電池と冷却材とを少なくとも備える、冷却材を備える電池であって、冷却材が、温度に応じて水を吸放出する少なくとも1種の水分吸放出材料を含有する保水層と、水に溶解することによって吸熱する吸熱材料を含有する吸熱層とを少なくとも有するものである。そして、冷却材の保水層側と電池とが接触しているものである。
以下、本実施形態に係る電池セットを中心に、本実施形態を説明する。ただし、本実施形態に係る電池セットに含まれる電池の数が複数になったものが本実施形態に係る組電池セットであり、本実施形態に係る電池セットに備えられる下記冷却材の成分及び構成等は、本実施形態に係る組電池セットに備えられる冷却材においても同様に適用できる。従って、本実施形態に係る組電池セットに備えられる冷却材についての説明は省略するものとする。
【0014】
[1−1.冷却材]
本実施形態に係る電池セットが備える冷却材(以下、適宜、「本実施形態に係る冷却材」と言う。)は、電池と接触して電池を冷却するものであり、温度に応じて水を吸収若しくは放出(即ち吸放出)する水分吸放出材料を含有する保水層と、水に溶解することによって吸熱する吸熱材料を含有する吸熱層とを少なくとも有する。
【0015】
〔保水層〕
保水層は、含有される水分吸放出材料によって、水を放出する際に熱を吸収したり、水を吸収する際に熱を放出したりするものである。即ち、例えば冷却材が接触している電池が発熱した場合には、保水層が水を放出することにより発生した熱を吸収して電池の過度及び急激な温度上昇を抑制し、また、仮に電池が過度に冷却された場合には、保水層が水を吸収して熱を放出し、電池の過度な温度低下を抑制するようになっている。
【0016】
水分吸放出材料が水を吸放出する温度としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、この温度以上であれば水分吸放出材料は水を放出し、一方でこの温度未満であれば水を吸収する。このような温度としては、水分吸放出材料の温度として、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、特に好ましくは40℃以上、また、その上限は、好ましくは110℃以下、より好ましくは90℃以下、特に好ましくは65℃以下で水を放出することが望ましい。水を放出する温度が上記範囲にあると、電池の温度が上昇した際に保水層が水を放出しながら相変化するため、電池から放出された熱を吸収し電池の過度及び急激な温度上昇を抑制することができる。水を放出する温度が上記範囲よりも小さい場合、例えば夏期等の環境温度が高い場合に保水層が電池の温度に関係なく水を放出し、電池の冷却が適切に行われない可能性がある。また、水を放出する温度が上記範囲よりも大きい場合、電池の温度が過度に上昇した場合であっても保水層が水を適切に放出せず、やはり電池の冷却が適切に行われない可能性がある。
【0017】
なお、水分吸放出材料が水を吸放出する温度は、例えば下記方法にて測定することができる。即ち、水分吸放出材料を示差走査熱量計(DSC−6200型、セイコーインスツルメンツ社製)を用い、条件をサンプル量20mg±1mg、昇温速度2℃/分として測定した場合に、昇温時における熱容量曲線の低温側からのベースラインの延長線と熱容量曲線の低温側ピーク最大勾配点での接線との交点を、上記温度とすることができる。
【0018】
水分吸放出材料は、通常、水とゲル化剤とが混合し、ゲル状になったものである。このようなゲル化剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、水の吸放出温度(例えば融点、相変化点等)を勘案して決定すればよいが、例えば多糖類を好適に用いることができる。多糖類の具体例としては、例えば寒天,アガロース,カラギーナン,ジェランガム等が挙げられ、多糖類の中でもこれらが好適である。即ち、本実施形態に係る冷却材において、水分吸放出材料が、30℃以上110℃以下で水を吸放出するとともに、水と多糖類とを含有していることが好ましい。なお、多糖類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0019】
また、保水層に含有される水分吸放出材料の量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、保水層に含有される上記ゲル化剤の濃度が、保水層全体に対して、好ましくは1.5重量%以上、より好ましくは2重量%以上、また、その上限は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下となるように水分吸放出材料が含有されていることが望ましい。ゲル化剤の量が少なすぎる場合、ゲル化剤が水を吸収しきれなくなる可能性があり、多すぎる場合、発熱した電池の温度上昇を抑制できる程度の水を放出することが困難となる可能性がある。
【0020】
また、水分吸放出材料は、15℃以上30℃以下で水を放出するとともに、水とコラーゲン及び/又はゼラチンとを含有しているものであることも好ましい。水分吸放出材料が15℃以上30℃以下で水を吸放出することにより、例えば冬季等の環境温度が0℃付近になるような場合に、保水層が液体から固体に相変化する際に潜熱を放出し、電池温度の過度及び急激な低下を抑制することができる。
【0021】
水分吸放出材料は、保水層に1種が単独で含まれていてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで含まれていてもよい。例えば、15℃以上30℃以下で水を放出する水分吸放出材料と、30℃以上110℃以下で水を放出する水分吸放出材料とを組み合わせて保水層に含有させることにより、保水層が水を吸放出する温度を所望のものとすることができる。
【0022】
また、保水層には、水分吸放出材料以外にも、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意の材料が含有されていてもよい。このような任意の材料としては、例えば、微粉末シリカ(フュームドシリカ),沈降シリカ(含水ケイ酸),微粉末アルミナ,微粉末中空セラミックス等の無機微粒子、ポリアクリル酸ナトリウム等の保水性高分子化合物、安息香酸等の防腐剤等が挙げられる。これらの任意の成分は、1種が単独で含まれていてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで含まれていてもよい。
【0023】
保水層に無機微粒子が含有される場合、その含有量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、保水層に含有される水分吸放出材料の量に対して、通常1重量%以上、また、その上限は、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下であることが望ましい。無機微粒子の含有量が多すぎる場合、保水層から吸熱層への水の放出が行われにくくなる可能性がある。また、無機微粒子の個数平均粒径も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5nm以上、好ましくは8nm以上、また、その上限は、通常50nm以下、好ましくは40nm以下である。
【0024】
また、保水層に保水性高分子化合物が含有される場合、その含有量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、保水層に含有される水分吸放出材料の量に対して、通常1重量%以上、また、その上限は、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。保水性高分子化合物の含有量が多すぎる場合、保水層から吸熱層への水の放出が行われにくくなる可能性がある。
【0025】
〔吸熱層〕
本実施形態に係る冷却材は、上記保水層に加えて、当該保水層から放出された水に溶解することによって吸熱する吸熱材料を含有する吸熱層を有する。従って、本実施形態に係る冷却材は、このような保水層及び吸熱層を少なくとも有することにより上記潜熱を用いた冷却(即ち相変化を利用する従来の冷却)に加えて溶解熱を利用した冷却も行うことができ、温度が上昇した電池を確実に冷却することができる。
【0026】
吸熱層に含有される吸熱材料は、水に溶解したときに吸熱するものであれば本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、例えば、塩化アンモニウム,硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、炭酸ナトリウム,硫酸ナトリウム十水和物,炭酸ナトリウム十水和物,硫酸水素ナトリウム七水和物等のナトリウム塩水和物、尿素、キシリトール,エリトリトール,ソルビトール等の単糖アルコール等の糖アルコール等が挙げられる。中でも、本実施形態に係る冷却材に用いられる吸熱材料としては、これらの吸熱材料が好ましい。なお、吸熱材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0027】
吸熱層における吸熱材料の量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、また、その上限は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。吸熱材料の量が少なすぎる場合、吸熱による電池の冷却効果が不十分となる可能性がある。
【0028】
また、吸熱層は、上記吸熱材料の他に、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意の成分を含有することができる。任意の成分の具体例としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸エステル等が挙げられる。吸熱層における任意の成分の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、吸熱層に対して、通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、その上限は、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。任意の成分の含有量が多すぎる場合、吸熱層の形成が困難になる可能性がある。
【0029】
〔保水層及び吸熱層の量的関係〕
本実施形態に係る電池セットにおいては、電池の温度上昇時に冷却材の保水層から水が放出され、当該水に吸熱材料が溶解して熱が吸収されることにより、電池を冷却するようになっている。従って、このような効果を著しく損なわない限り、保水層の量も吸熱層の量も任意であるが、吸熱層の体積は、保水層の体積に対して、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、また、その上限は、好ましくは100%以下、より好ましくは75%以下とすることが望ましい。吸熱層の体積が小さすぎる場合、十分な吸熱を行うことができず、相変化のみを利用する従来の冷却方法と比較して高い冷却効率を達成することができなくなる可能性がある。また、吸熱層の体積が大きすぎる場合、保水層が放出した水に対して吸熱層に含有される吸熱材料の量が過剰なものとなるため、冷却材が過度な重量及び体積となり、小型軽量な電池セットを提供することができない可能性がある。
【0030】
〔その他の層〕
本実施形態に係る冷却材は、保水層及び吸熱層以外にも、本発明の効果を著しく損なわない限り、1層又は2層以上の任意の層を有することができる。このような任意の層としては、例えば、保水層と吸熱層との間に隔壁層を設けることができる。隔壁層を設けることにより、製造時に、通常粉末である吸熱材料の取り扱いが容易になるという利点がある。
【0031】
隔壁層の材質、厚さ等の物性は、本発明の効果を著しく損なわない限りに任意であるが、保水層が放出した水の吸熱層への供給を阻害しないものとする。例えば隔壁層の材質としては、例えば不織布、紙等を用いることができる。また、その厚さは、好ましくは0.1mm以上、また、その上限は、好ましくは1.5mm以下である。
【0032】
〔全層の厚さ〕
上記保水層及び吸熱層、並びに必要に応じて設けられる隔壁層等の任意の層からなる全ての層の合計厚みは、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、この厚さは、好ましくは1mm以上、また、その上限は、好ましくは30mm以下である。厚さが上記範囲にある場合、十分な冷却効果が得られるとともに、小型軽量な電池セットを提供することができる。
【0033】
〔冷却材の外装〕
上記保水層及び吸熱層、並びに必要に応じて設けられる隔壁層等の任意の層(以下、適宜、これらの層をまとめて「構成層」と言う。)を、外被材に収納したものを冷却材として用いることが好ましい。例えば外被材として袋を用いる場合、その袋の厚さ、材質等は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、電池と冷却材との熱交換が妨げられないものとする。このような外被材を構成する材料としては、例えばナイロンとポリエチレンとを張り合わせたラミネートシート、エチレン酢酸ビニル共重合体からなるシート、エチレンメチルメタクリレート共重合体からなるシート等が挙げられる。
【0034】
また、上記材料からなる2枚のシートを用いて、上記構成層を1枚のシート上に配設したのち、もう1枚のシートで上記構成層を上部から覆って2枚のシートの重なり合う部位を封止してもよい。また、1枚のシートを用いて、当該1枚のシートで上記構成層を包み込んだ後折り畳み、当該1枚のシートの重なり合う部分を封止してもよい。
【0035】
[1−2.冷却方法]
本実施形態に係る電池セットにおいては、冷却材の保水層側と電池とが接触することにより、電池が冷却されるようになっている。ここで、本実施形態における「接触」とは、保水層と電池との間で行われる熱交換において電池からの熱を十分に吸収できて電池を冷却することができる限り、接触面同士が密着しているか否かを問わない、最も広範な意味での「接触」を意味する。即ち、例えば電池が積層型電池、若しくは角型電池の場合、その接触面は通常長方形となるが、当該長方形の大きさは本発明の効果を著しく損なわない限り特に制限されない。また接触の程度も、必ずしも密着している必要は無く、接触する際の接触圧も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
【0036】
また、電池が円柱型電池の場合、冷却材の保水層側と電池とが接触する際の接触面は、通常湾曲したものとなっている。この際の接触面積及び接触圧も、本発明の効果が著しく損なわれない限り任意である。
さらに、保水層と電池の接触は、通常、少なくとも保水層と吸熱層とが収納された外被材を介して行われる。
【0037】
[1−3.本実施形態に係る電池セットにおける冷却メカニズム]
従来の冷却材は二層に分かれておらず、また、相変化のみを利用して電池の冷却を行うものであった。しかしながら、本実施形態に係る電池セットにおいては、冷却材を、通常ゲル状の保水層と、通常粉末状の吸熱層との少なくとも二層に分け、さらに、冷却材の保水層側と電池とを接触させて電池を冷却している。
【0038】
即ち、本実施形態に係る冷却材においては、電池の温度が上昇して電池から熱が放出された場合に、当該放出された熱を保水層が受け取って電池の過度及び急激な温度上昇を抑制している。そのうえで、当該放出された熱を受け取った保水層は、自身が有する水を放出することによって、保水層の熱エネルギーバランスを保っている。そして、保水層が放出した水は、吸熱層が有する吸熱材料を溶解する。この溶解は吸熱反応であるため、電池が有する熱を奪う。このようにして、本実施形態においては、上記保水層による電池の過度及び急激な温度上昇の抑制に加えて、吸熱層による幅広い温度でかつ効率の良い電池の冷却効果も有する。また、本実施形態においては用いる冷却材の構造が簡便なものであるため、本実施形態によれば小型軽量な電池セットを提供できるという利点もある。
【0039】
どのような電池温度になったときに保水層が水を放出して吸熱層が電池を冷却するかは、[1−1.冷却材]の「水分吸放出材料」において説明したように任意に設定することが可能である。従って、電池の種類に応じて適切な冷却材を製造することが可能であり、また、自動で、従来よりも確実に電池を冷却することができる。さらに、一度、吸熱層により電池を冷却した後にさらに電池の温度上昇があった場合であっても、保水層がさらに水を放出することにより保水層が電池より放出された熱を吸収し、電池の過度及び急激な温度上昇を抑制することができる。
【0040】
さらに、吸熱層に含有される吸熱成分が溶解した後、電池の温度が低下した場合、吸熱成分が析出するとともに、保水層は水を吸収して潜熱を放出する。従って、放出された潜熱は電池の温度低下の抑制に用いられ、このようにして電池の過度及び急激な温度低下を抑制することができる。また、本実施形態に係る電池セットにおいては、環境温度が低下したり、保水層が水を吸収したりすることにより、吸熱層に含有される吸熱材料が析出(若しくは再結晶化)する。このようにして析出した吸熱材料により、再び電池の温度が上昇した場合であっても、自動で可逆的に電池の冷却を行うことができる。なお、この可逆過程は、吸熱層と保水層とが混合された状態(即ち、吸熱層と保水層とが明確な2層に分かれていない場合)においても行われる。また、保水層のみが再び析出(若しくは再結晶化)した場合でも、保水層の働きにより電池より放出された熱を冷却材は吸収でき、電池の過度及び急激な温度上昇を抑制することができる。従って、相変化時の潜熱を利用する冷却と同様な機能を準可逆的に提供可能である。
【0041】
また、本実施形態に係る電池セットにおいては、冷却材の保水層側と電池とを接触させている。吸熱層ではなく保水層側に電池を接触させる理由は、吸熱層に含有される吸熱材料が通常粉末状であるからである。このような粉末状の吸熱材料は空隙を有し、当該空隙には通常空気が存在している。空気の層は、通常、液体及び固体と比べて熱伝導率が低く、例えば同じ厚さの保水層(通常ゲル状であって、空隙をほとんど有さないもの。)と吸熱層(通常粉末状であって、空隙を多数有するもの。)との熱伝導性を比較したときに、保水層の方が熱伝導性に優れている。そのため、本実施形態に係る電池セットにおいては、冷却材の吸熱層ではなく保水層側と電池とを接触させることにより、電池が放出する熱を素早く冷却材が吸収し、電池の温度上昇に対してより感度良く反応するという利点がある。
【0042】
なお、冷却材からの水漏れ発生の可能性に関して、電池温度が上昇した場合には保水層は水を放出するが、当該放出された水は吸熱層により吸収される。一方で、電池温度が低下した場合には、上記保水層により放出され吸熱層が含有することになった水を、保水層が再び吸収する。このように、保水層と吸熱層との間でやり取りする水は元々保水層が含有していたものである。従って、本質的に、本実施形態に係る電池セットは、冷却材からの水漏れ発生の可能性が抑制されたものとなっている。
【0043】
[1−4.冷却材の構造]
本実施形態に係る冷却材は、保水層及び吸熱層を少なくとも有し、冷却材の保水層側と電池とが接触しうる構造を有する限り、その他の部位の構造は任意である。
【0044】
図1は、冷却材についての本発明の第一実施形態に係る、冷却材1Aの断面を模式的に示した図である。第一実施形態に係る冷却材1Aは、保水層2と、吸熱層3と、隔壁層4と、袋5とからなる。保水層2、吸熱層3、隔壁層4及び袋5は、いずれも、上記保水層、吸熱層、隔壁層及び袋と同じものを表す。そして、保水層2と吸熱層3との間に隔壁層4が設けられ、保水層2と吸熱層3とを分離している。また、冷却材1Aの左右両端部では、隔壁層4と2枚のシートとが封止され、袋5が形成されている。当該シートは、例えば外表面がナイロンポリアミド共重合体からなり、内表面がポリ塩化ビニルからなるラミネートシートを用いることができる。また、封止は、例えば熱溶着等により行えばよい。そして、このように保水層が冷却材1Aの片側に配置されることにより、冷却材1Aの保水層2側と電池とを接触させることができる。
また、上記のように冷却材の保水層側と電池とが接触しうる構造を有する限り冷却材の構造は問わないが、例えば図1に記載の冷却材1Aの形状である、扁平形状(即ちシート状)とすることで、筒形電池の容器に沿わせたり、角型電池の間隙や、電池モジュールに使用される電池収納ケースと電池との間隙に配置したりすることが容易となる。
【0045】
図2は、冷却材についての本発明の第二実施形態に係る、冷却材1Bの断面を模式的に示した図である。以下の記載において、第一実施形態と同じ符号を付した部材は、第一実施形態におけるものと同じものを表すものとする。第二実施形態に係る冷却材1Bは、保水層2と、吸熱層3と、隔壁層4と、袋5とからなる。冷却材1Bにおいては、隔壁層4を介して吸熱層3を保水層2が囲うように形成されている。また、冷却材1Bの左右両端部では、2枚のシートが封止され、袋5が形成されている。冷却材1Bがこのような構成を有することにより、冷却材1Bの上下方向(即ち紙面上方向及び下方向)のいずれの方向においても電池と接触させることができる。
【0046】
図3は、冷却材についての本発明の第三実施形態に係る、冷却材1Cの断面を模式的に示した図である。第三実施形態に係る冷却材1Cは、2つの保水層2と、吸熱層3と、2つの隔壁層4と、袋5とからなる。冷却材1Cにおいては、隔壁層4を介して、2つの保水層2の間に吸熱層3が侠持されている。また、冷却材1Cの左右両端部では、2枚の隔壁層4と2枚のシートとが熱封止され、袋5が形成されている。従って、冷却材1Cがこのような構成を有することにより、上記冷却材1Bの場合と同様に、冷却材1Cの上下方向(即ち紙面上方向及び下方向)のいずれの方向においても電池と接触させることができる。また、図3に示す冷却材1Cは、その製造方法が容易であるという利点もある(具体的な製造方法は後述する。)。
【0047】
図4は、冷却材についての本発明の第四実施形態に係る、冷却材1Dの上部側面を模式的に示した図である。第四実施形態に係る冷却材1Dは、封止部6と、少なくとも保水層及び吸熱層を有する封入部7と、からなるものである。封入部7は、例えば上記冷却材1A〜1Cと同様の構造を有するものであり、図4においては3つ示しているが、封入部7の数は3つに限定されない。また、封止部6は封入部7を区切るものであり、例えば加熱等により形成されている。冷却材1Dが図4に示す構成を有することにより、冷却材内の保水層及び吸熱層が一偏に偏らず、電池との熱交換にムラが生じないため均一に電池を冷却することができる。また、封止部6は封入部7に比して形状を変化させやすいため、冷却材1Dを封止部6の位置で折り曲げることが容易である。従って、このような形状を有する冷却材1Dは、例えば筒型電池や角型電池が収納された電池収納ケースの内壁に沿わせて使用する際に、電池と冷却材1Dとを密着させやすい。また、当該容器の内壁が湾曲したものとなっていても、電池に封入部7を接触されることができる。さらに、図4に記載の冷却材1Dは、複数の冷却材(即ち図4中の封入部7)が一体となって別の冷却材として形成されたような形状のものである。そのため、複数の電池のそれぞれに対応させるように別の冷却材を配置する必要がなくなり、簡便に冷却材を配置することができる。また、冷却材の運搬、組電池への挿入時等、複数の冷却材を使用する場合に比して、電池セット及び組電池セットを製造する際の手間を省くことが可能である。
【0048】
図5は、組電池セットについての本発明の第一実施形態に係る、組電池セットの要部構成を模式的に示した図である。図5においては、冷却材1として上記冷却材1Dを用いており、また、電池8として積層型電池を用いている。そして、2つの電池8間に、冷却材1Dの保水層側と電池8とが接するように、2つの冷却材1Dが設けられている。即ち、図5の奥側の冷却材1Dにおいてはその手前側に吸熱層が、また、図5の手前側の冷却材1Dにおいてはその手前側に保水層が配置されるようになっている。また、冷却材1Dと電池8との接触面には、グリース塗布部10が設けられている。グリース塗布部10には、熱伝導性に優れるグリースが塗布され、これにより、電池と冷却剤との熱のやりとりを無駄なく行うことができる。
【0049】
図6は、電池セットについての本発明の第一実施形態に係る、筒型電池を備える電池セットの要部構成を模式的に示した図である。図6においては、冷却材1として上記冷却材1Dを用いており、電池8’として筒型電池を用いている。ただし、電池8’の形状は円柱状であるが、角柱状であってもよい。そして、このような形状を有する電池8’の周囲を冷却材1が捲回する構成となっている。この際、冷却材1Dの保水層側と電池8’とが接触するように捲回されている。また、上記のように、冷却材1Dに備えられる封止部6は折り曲げが容易であるため、図6において、冷却材1Dは封止部6で折り曲げられて備えられている。
【0050】
図7は、組電池セットについての本発明の第二実施形態に係る、組電池セットの要部構成を模式的に示した図である。図7においては、電池収納ケース11に6つの電池8’が収納され、これらの電池8’が冷却材1により冷却される構成となっている。ただし、電池8’の数は6つに限定されず、電池8’の数が6つ以外の場合であっても同様に本実施形態を適用することができる。例えば、電池8’の数が図7(b)において電池収納ケース11の長手方向に4つである場合、冷却材1Dにおける封入部7の数も4つとし、冷却材1を配置したときに、電池8’の位置と封入部7の位置とが一致するように、冷却材1Dの封止部6及び封入部7の幅及び大きさを調整することが好ましい。
【0051】
図7(a)及び(b)において、電池収納ケース11の長手方向に並んだ3つの電池8’と電池収納ケース11の内壁部との間に、冷却材1が設けられている。この際、冷却材1の向きは、冷却材1の保水層側と二次電池8’とが接触するようになっている。また、電池収納ケース11の縦方向中央部であって、3つの電池8’からなる2組の二次電池群の間には、冷却材1の保水層側と二次電池8’とが接触するように、2つの冷却材1が設けられている。なお、図7(a)及び(b)に示す実施形態においては、電池収納ケース11の長手方向に冷却材1を4つ設け、3つの電池8’が冷却材1に接触する構成としたが、図7(c)で示すように、電池収納ケース11の短手方向に冷却材1を6つ設けて,2つの電池8’が冷却材1と接触する構成としてもよい。このように、電池の隙間の長手方向に冷却材1を配置すると,1つの冷却材1によって3つの電池8’を冷却できるため、構成に必要な冷却材1の数を減らすことができる。一方、短手方向に配置すると、1つの冷却材1が冷却する電池8’の数を減らすことができ、1つの電池8’からの発熱量が大きくなっても確実に電池8’を冷却することができる。
【0052】
[1−5.冷却材の製造方法]
本実施形態に係る冷却材は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の方法で製造することができる。以下、本実施形態に係る冷却材の製造方法の一例を説明するが、本実施形態に係る冷却材の製造方法は以下のものに限定されるものではない。
【0053】
例えば、保水層は、水と上記ゲル化剤を混合して加熱し、さらに任意の成分を混合して冷却することにより、製造することができる。この際に、混合する水、ゲル化剤及び任意の成分の量は、上記[1−1.冷却材]において説明したゲル化剤濃度となるように、それぞれ調整すればよい。また、加熱温度及び冷却温度も、ゲル化剤の種類に応じて適宜設定すればよい。
【0054】
そして、例えば目的とする冷却材の構造が図1に示す構造である場合、例えば樹脂、ラミネートシート等のシート上に、予め混合した吸熱材料及びその他の成分からなる吸熱層を配設し、その上を例えば不織布、紙等で覆う。そして、さらにその上に上記の方法にて作製した保水層を配設し、シートで覆って左右両端部を封止することにより、冷却材を製造することができる。
【0055】
また、冷却材の構造が例えば図2に示す構造である場合、例えばラミネートシート等の上に保水層を配設し、その上に例えば不織布で包んだ吸熱層を置き、さらに保水層及びラミネートシートをこの順で設けて、端部を封止することにより、冷却材を製造することができる。
【0056】
さらに、例えば冷却材の構造が図3に示す構造である場合、シート、保水層、シート、吸熱層、シート、保水層及びシートをこの順で設け、最後に左右両端部を封止することにより、両面に電池を接触させることができる冷却材を容易に製造することができる。
【0057】
以上のように製造した冷却材を用いて、本実施形態に係る電池セット並びに組電池セットを実施することができる。
【0058】
[2.本実施形態に係る電池セット並びに組電池セットの適用範囲]
本実施形態に係る電池セット並びに組電池セットは、一次電池及び二次電池等の電池として、任意の用途に適用することができる。例えば、電池の発熱が大きな課題となっている、組電池モジュール、ハイブリッド自動車等の電気自動車,燃料電池自動車等の自動車に搭載される車載用二次電池の冷却等に対して特に好適に適用可能である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0060】
(実施例1)
水95.0gと、ゲル化剤として粉末状寒天5.0g(伊那食品工業社製;水に対するゲル化剤濃度で5重量%)とを混合し、撹拌しながら100℃まで加熱し、懸濁液を得た。この懸濁液をポリエチレン製の袋(日本ユニパック社製)に収納し、温度を5℃以下に保った保冷庫に入れ、一昼夜冷却して保水層を得た。得られた保水層を一度袋から取り出し、保水層表面に染み出した水分を拭き取り、再度ポリエチレン製の別の袋へ充填した。この際に得られた保水層の体積は20.0mLであった。そして、保水層を充填したポリエチレン製の袋に硝酸アンモニウム粉末(和光純薬工業社製)10.0mL(保水層に対する体積比で50%)を充填し、温度が室温(20℃)になるまで静置して冷却材を製造した。
【0061】
(実施例2)
水95.0gと、ゲル化剤として粉末状ゼラチン5.0g(ハウス食品社製;水に対するゲル化剤濃度で5重量%)とを混合し、撹拌しながら80℃まで加熱し、懸濁液を得た。この懸濁液をポリエチレン製の袋(日本ユニパック社製)に収納し、温度を5℃以下に保った保冷庫に入れ、一昼夜冷却して保水層を得た。得られた保水層を一度袋から取り出し、保水層表面に染み出した水分を拭き取り、再度ポリエチレン製の別の袋へ充填した。この際に得られた保水層の体積は15.0mLであった。そして、保水層を充填したポリエチレン製の袋に硝酸アンモニウム粉末(和光純薬工業社製)7.5mL(保水層に対する体積比で50%)を充填し、温度が室温(20℃)になるまで静置して冷却材を製造した。
【0062】
(比較例1)
水30.0mLをポリエチレン製の袋(日本ユニパック社製)に詰め、冷却材を製造した。
【0063】
(比較例2)
水95.0gと、ゲル化剤として粉末状ゼラチン5.0g(ハウス食品社製;水に対するゲル化剤濃度で5重量%)とを混合し、撹拌しながら80℃まで加熱し、懸濁液を得た。この懸濁液をポリエチレン製の袋(日本ユニパック社製)に収納し、温度を5℃以下に保った保冷庫に入れ、一昼夜冷却して保水層を得た。得られた保水層を一度袋から取り出し、保水層表面に染み出した水分を拭き取り、再度ポリエチレン製の別の袋へ充填し、温度が室温(20℃)になるまで静置して冷却材を製造した。
【0064】
(評価方法1)
温度制御を容易にするために発熱体として電池に模したホットプレート(アズワン社製)を用いて、本実施形態に係る冷却材を用いた場合と用いない場合とで、冷却材の冷却効果を評価した。はじめに、2台の上記ホットプレート上に、それぞれ実施例1及び比較例1にて製造した冷却材を置き、冷却材とホットプレートとが接触するホットプレート表面にサーモカップル(助川電気工業社製)を設置した。そして、ホットプレートの加熱目標温度を120℃に設定して加熱を開始し、上記サーモカップルにて測定した接触面の温度が100℃に到達するまでの時間に対する温度変化を測定した。その結果を図8に示す。
【0065】
図8に示すように、100℃に到達するまでの時間は、実施例1にて製造した冷却材を用いた場合には449秒、比較例1にて製造した冷却材を用いた場合には152秒であった。即ち、本実施形態に係る冷却材を用いた場合、発熱体が特定の温度に到達するまでに要する時間を延長することができ、短時間で高温状態に到達することを防ぐことができる。従って、本実施形態に係る冷却材を用いることにより、電池温度が上昇した場合であっても電池の冷却を適切に行うことができ、単電池及び単電池を複数接続した組電池等の各種電池を効率よく冷却できる。
【0066】
(比較評価2)
温度制御を容易にするために発熱体として電池に模したホットプレート(アズワン社製)を用いて、本実施形態に係る冷却材を用いた場合と、従来の相変化のみを利用する冷却材を用いた場合とで、冷却材の冷却効果を評価した。はじめに、2台の上記ホットプレート上に、それぞれ実施例2及び比較例2にて製造した冷却材を置き、冷却材とホットプレートとが接触するホットプレート表面にサーモカップル(助川電気工業社製)を設置した。そして、ホットプレートの加熱目標温度を80℃に設定して加熱を開始し、加熱開始から120秒間の接触面の温度変化を上記サーモカップルにて測定した。その結果を図9に示す。
【0067】
図9に示すように、実施例2の冷却材を用いた場合には69.3℃、比較例2の冷却材を用いた場合には81.1℃であった。従って、本実施形態に係る冷却材を用いることにより、発熱体の温度上昇を従来よりも抑制することができ、従来の相変化のみを利用する冷却方法と比較して、適切に電池を冷却できる。
【符号の説明】
【0068】
1 冷却材
1A 冷却材
1B 冷却材
1C 冷却材
1D 冷却材
2 保水層
3 吸熱層
4 隔壁層
5 袋
6 封止部
7 封入部
8 電池
8’ 電池
9 冷却材
10 グリース塗布部
11 電池収納ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と冷却材とを少なくとも備える、冷却材を備える電池であって、
該冷却材が、温度に応じて水を吸放出する少なくとも1種の水分吸放出材料を含有する保水層と、該水に溶解することによって吸熱する少なくとも1種の吸熱材料を含有する吸熱層とを少なくとも有し、
該冷却材の保水層側と該電池とが接触していることを特徴とする、冷却材を備える電池。
【請求項2】
該水分吸放出材料が、30℃以上110℃以下で水を放出するとともに、
水と多糖類とを含有していることを特徴とする、請求項1に記載の冷却材を備える電池。
【請求項3】
該多糖類が、寒天,アガロース,カラギーナン及びジェランガムからなる群より選ばれる1種以上の高分子材料であることを特徴とする、請求項2に記載の冷却材を備える電池。
【請求項4】
該水分吸放出材料が、15℃以上30℃以下で水を放出するとともに、
水とコラーゲン及び/又はゼラチンとを含有していることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の冷却材を備える電池。
【請求項5】
該吸熱材料が、ナトリウム塩水和物,アンモニウム塩,尿素及び糖アルコールからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有していることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の冷却材を備える電池。
【請求項6】
該ナトリウム塩水和物が、炭酸ナトリウム,硫酸ナトリウム十水和物,炭酸ナトリウム十水和物及び硫酸水素ナトリウム七水和物からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項5に記載の冷却材を備える電池。
【請求項7】
該アンモニウム塩が、塩化アンモニウム,硝酸アンモニウム及び硫酸アンモニウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の冷却材を備える電池。
【請求項8】
複数の電池と冷却材とを少なくとも備える、冷却材を備える組電池であって、
該冷却材が、温度に応じて水を吸放出する少なくとも1種の水分吸放出材料を含有する保水層と、該水に溶解することによって吸熱する少なくとも1種の吸熱材料を含有する吸熱層とを少なくとも有し、
該冷却材の保水層側と該複数の電池のうちの少なくとも一つとが接触していることを特徴とする、冷却材を備える組電池。
【請求項9】
該冷却材は、該保水層と該吸熱層とを分離する隔壁層を備え、
該保水層、該吸熱層及び該隔壁層が、外被材に収納されていることを特徴とする、請求項8に記載の冷却材を備える組電池。
【請求項10】
該冷却材は、該保水層及び該吸熱層を有する封入部を複数備え、隣接する該封入部の間に封止部が備えられていることを特徴とする、請求項8に記載の冷却材を備える組電池。
【請求項11】
該冷却材は、該封止部で曲げられて備えられていることを特徴とする、請求項10に記載の冷却材を備える組電池。
【請求項12】
該冷却材は扁平形状であることを特徴とする、請求項8又は9に記載の冷却材を備える組電池。
【請求項13】
該冷却材は、該複数の電池のうちの隣接する二つの電池の間に少なくとも二つ備えられていることを特徴とする、請求項8〜12の何れか1項に記載の冷却材を備える組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−48905(P2012−48905A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188580(P2010−188580)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】