説明

冷却液アキュムレータと一体化された燃料電池脱塩器

燃料電池セルスタック(9)の水輸送プレート(8)は、アキュムレータ(11)からの水を受容する。このアキュムレータは、通気口(17)を有し、内部に脱塩器(33)を備える。アキュムレータへの入口部分は、アキュムレータへ入る水の流れを分断させる円錐形のバッフルを有することにより、ガスセパレータ(16)として機能する。冷却液ポンプ(23)は、冷却液を圧送し、熱交換器(25)を通過した冷却液は、アキュムレータインレットコンジット(31)と脱塩器インレットコンジット(32)とに分かれ、これらの流れは、流れ絞り(30)によって調節され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池発電装置の水の脱塩器を、冷却液アキュムレータの内部に配置し、特に氷点下の温度における始動時に、燃料電池セルスタックの冷却液で暖められるようにすることに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池発電装置の概略を図1に示す。
【0003】
燃料電池セルスタックアッセンブリ9(CAS)内にある冷却プレート8は、コンジット10を介してアキュムレータ11からの水を受容する。冷却プレート8から出る流れは、コンジット15を介して、セパレータ16へ送られる。このセパレータは大気中への通気口17などの通気口を有し、冷却水から混入ガスを除去する。コンジット22は、冷却液を冷却液ポンプ23のインプットへ供給し、冷却液ポンプから出てコンジット24を流れる流れは、冷却液を熱交換器25へ送る。燃料電池発電装置が動作しているとき、熱交換器が、冷却水の熱のいくらかを放散し、冷却プレート8へ再び入る冷却水の温度を適切な温度に保つ。熱交換器は、通常は大気空気を冷却媒体として利用するファンを有し、サーモスタット制御バイパスも有し得る。これらの技術はすべて当分野で周知であるため、これ以上の開示をしない。
【0004】
その後、冷却液はコンジット29,31を通過してアキュムレータ11へ流れる。流れ絞り30が、アキュムレータと脱塩器33との間で水の流れの均衡を保つ。流れ絞りが、コンジット32にある構成であってもよい。脱塩器33は、冷却液から無機塩類を除去するために、大きな塊の通常の脱イオン樹脂を含む。
【0005】
CSA9内におけるプロセスの熱によって、給水系統の氷が融け、水が流れ出して温められても、氷点下の温度では、大きな熱容量をもつ脱塩器内の脱イオン樹脂が、脱塩器を流れる非常に低い流量の水と結合し、脱塩器内へ流れる水を瞬間的に凍らせ、流れを封鎖する。このため脱塩器は、数時間にも及ぶ非常に長い時間を解凍に要する。
【0006】
大きな質量の低温の脱塩器33に対処するため、一般には脱塩器の外側表面に加熱器36を設けるか、他の方法で、脱イオン樹脂の塊を加熱する。
【0007】
脱塩器の質量を水の凝固点温度以上の温度まで上昇させるのに要する熱はかなりの量であり、過剰な寄生電流を流出させる。燃料電池発電装置を乗り物に適用して電気モータを駆動させる場合、燃料の貯蔵場所を最小にする必要があるので、空間が貴重であり、寄生電力を最小に保つ必要がある。乗り物の設備にある全体の水容積も最小にできるとよい。
【0008】
始動時に、脱塩器内に充分な流れができる前は、水が非常に伝導性であり、従って、発生する有効電力が減る。
【0009】
米国特許第6368737号明細書、第6428916号明細書、および第6656622号明細書には、分離した脱イオン器を有する燃料電池発電装置が開示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様は、燃料電池発電装置の寸法を縮小すること、燃料電池発電装置の寄生電力を低減すること、燃料電池発電装置の水の容積および温度管理システムに必要な配管を縮小すること、燃料電池発電装置の給水系統に必要な配管を縮小すること、氷点下の環境で使用される燃料電池の排水系統の停止方式を簡略化すること、および燃料電池発電装置に必要な容積を縮小すること、を含む。
【0011】
さらに本発明によれば、燃料電池発電装置の水容積および温度管理システムの水の流れ場にあるガスセパレータが、通気口を有するアキュムレータの最上流部に配置されたバッフルを備えることにより、発電装置の全体の体積を縮小することができる。
【0012】
本発明によれば、燃料電池発電装置の1つまたは複数の脱塩器が、燃料電池発電装置の水アキュムレータの内部に配置される。
【0013】
本発明は、燃料電池発電装置が始動時に発生する熱を利用して、水アキュムレータにある冷却液と、水アキュムレータに含まれる脱塩器と、の間の熱伝達により、脱塩器を温める。本発明では、1つまたは複数の脱塩器を囲む空間が、単にキャビネットスペースを占めるために使われるのではなく、アキュムレータの水を収容するために使われるので、本発明により、燃料電池発電装置に必要な全体の容積を節約する。
【0014】
本発明の利点は、アキュムレータに含まれる1つまたは複数の脱塩器のバッフル効果によって、アキュムレータにある水の液面動揺を低減することである。
【0015】
本発明のその他の態様、特徴ならびに利点は、図面を使って示す実施例の詳細な説明によって明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図2を参照すると、1つまたは複数の脱塩器33が、アキュムレータ11の内部に直接的に配置されている。アキュムレータの最上流部で、セパレータ16は円錐形のバッフルを備え、このバッフルの周囲で、水が下流に流れてアキュムレータの中へ流れることで、通気口17を通して種々のガスを逃がすことができる。他の実施例では、他の形状のバッフルでもよいし、あるいは噴霧器であってよい。図2に例示する形態で、本発明は、アキュムレータの内部に脱塩器を配置することによって燃料電池発電装置の体積を縮小するだけでなく、アキュムレータの内部にセパレータを配置することによっても体積を縮小する。
【0017】
流れ絞り30、および配管29,31,32の多くも、アキュムレータ11の内部に配置されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術において既知の個別の脱塩器を有する燃料電池発電装置のブロック図。
【図2】本発明によって水アキュムレータ内に配置された脱塩器を有する燃料電池発電措置のブロック図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各燃料電池セルが燃料極水流チャネルおよび空気極水流チャネルを有する燃料電池セルスタック(9)と、
前記水流チャネルの少なくともいくつかと流体連通し、インレット供給コンジット(31)を有する水アキュムレータ(11)と、
前記水アキュムレータ内に配置されインレット供給コンジット(32)を有する少なくとも1つの脱塩器(33)と、を含み、
前記アキュムレータが、通気口(17)を備え、かつ前記アキュムレータへ入る水およびガスの流れを分離させる円錐形状のバッフル(16)をアキュムレータのインレットに備えることで水からガスを分離し、
前記アキュムレータインレット供給コンジットと前記脱塩器インレット供給コンジットとが、前記水流チャネル(8)の少なくともいくつかからの水を受容することを特徴とする、燃料電池発電装置。
【請求項2】
前記水流チャネル(8)と前記アキュムレータインレットコンジット(31)との間に配置される熱交換器(25)をさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の燃料電池発電装置。
【請求項3】
各燃料電池セルが燃料極水流チャネルと空気極水流チャネルとを有する燃料電池セルスタック(9)と、
前記水流チャネルの少なくともいくつかと流体連通しインレット供給コンジットを有する水アキュムレータ(11)と、
前記水アキュムレータ内に配置されインレット供給コンジット(32)を有する少なくとも1つの脱塩器(33)と、を含み、
前記アキュムレータインレット供給コンジットと前記脱塩器インレット供給コンジットとが、前記水流チャネル(8)の少なくともいくつかからの水流を受容することを特徴とする、燃料電池発電装置。
【請求項4】
前記アキュムレータ(11)中への、および前記少なくとも1つの脱塩器(33)中への前記水流が、前記インレット供給コンジット(31,32)のうち一方にある流れ絞り(30)によって調節されることを特徴とする、請求項3記載の燃料電池発電装置。
【請求項5】
前記水流チャネル(8)と前記アキュムレータインレットコンジット(31)との間に配置される熱交換器(25)をさらに含むことを特徴とする、請求項3記載の燃料電池発電装置。
【請求項6】
各燃料電池セルが燃料極水流チャネルおよび空気極水流チャネルを有する燃料電池セルスタック(9)と、
水アキュムレータ(11)であって、通気口(17)を有し、このアキュムレータに入る水およびガスの流れを分離させる円錐形状のバッフル(16)をインレットに備えることで、水からガスを分離する水アキュムレータ(11)と、を含み、
前記アキュムレータインレットコンジット(31)が、前記水チャネル(8)のいくつかからの水を受容することを特徴とする、燃料電池発電装置。
【請求項7】
前記水流チャネル(8)と前記アキュムレータインレットコンジット(31)との間に配置される熱交換器をさらに含むことを特徴とする、請求項6記載の燃料電池発電装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−525988(P2008−525988A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549383(P2007−549383)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/043160
【国際公開番号】WO2006/071432
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(500477447)ユーティーシー パワー コーポレイション (138)
【Fターム(参考)】