説明

冷却用包装体

【課題】冷却時に達する最低温度を極端に低くすることなく、冷却効果を長い時間持続させ、さらに、小さい容量で高い冷却効果が得られる冷却用包装体を提供することを目的とする。
【解決手段】包材中に、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末(A)と、水分子解離剤粉末(B)とをそれぞれ隔離して封入してなる冷却用包装体であって、使用時に前記(A)成分と前記(B)成分とを接触させるものであることを特徴とする冷却用包装体による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用や日用品として用いられる冷却用包装体に関し、詳しくは、発熱や炎症の冷却や、皮膚の保湿やリフレッシュ、さらには、食品の保冷等に用いられる冷却用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発熱時や炎症時の症状を和らげたり、皮膚の保湿やリフレッシュ等を目的として、身体の各部を冷却するための冷却用包装体が広く知られている。
【0003】
このような冷却用包装体に用いられる技術として、例えば、下記特許文献1には、密封した袋中に、硝酸アンモニウムや尿素等の冷却剤と、水及び/又は含水塩と、有機酸と、炭酸塩とを隔離して封入し、使用時にこれらを混合することにより、水と有機酸と炭酸塩とを反応させて炭酸ガスを発生させて袋を膨らませるとともに、冷却剤が水に溶解するときの溶解吸熱反応により冷却する冷却袋が記載されている。
【0004】
しかしながら、このような溶解吸熱反応を用いて冷却する方法によれば、冷却剤を溶解するための水が必要になるために、容量が大きいものになるという問題があった。また、溶解吸熱反応は冷却剤が水に溶解したときに、一気に吸熱反応が完了するために、短時間で温度が大幅に下がって最低温度に達し、その後は、冷却された水溶液と体温や外気温との熱交換により温度が短時間で上昇するという問題があった。従って、できるだけ冷却効果を長い時間持続させるためには、冷却剤の量を増やして、最低温度を下げるしかなかった。この場合、冷却剤及び水の量が多くなるために、冷却袋の容量が大きくなるという問題があった。また、最低温度を下げることによって冷却効果を持続させるためには、最低温度を氷点下から大幅に低い温度、具体的には、−10℃以下のような低い温度にする必要がある。しかしながら、この場合には、凍傷等を防ぐために、冷却袋の厚みを増したり、冷却袋表面に緩衝層を設けたり、タオルで覆ったりして用いる必要があった。
【特許文献1】特開2000−229100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、冷却時に達する最低温度を極端に低くすることなく、冷却効果を長い時間持続させ、さらに、小さい容量で高い冷却効果が得られる冷却用包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷却用包装体は、包材中に、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末(A)と、水分子解離剤粉末(B)とをそれぞれ隔離して封入してなる冷却用包装体であって、使用時に前記(A)成分と前記(B)成分とを接触させるものである。このような構成によれば、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末から結晶水を徐々に解離させることにより、最低温度に達するまでの時間が長くなるために、温度が急激に低くなることがない。そのために、長い時間冷却効果が持続し、且つ、冷却剤が粉末のみから構成される小さい容量の冷却用包装体が得られる。
【0007】
また、本発明の冷却方法は、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末(A)と、水分子解離剤粉末(B)とを、接触させることにより生じる吸熱反応を用いるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷却時に達する最低温度を極端に低くすることなく、長い時間冷却効果が持続する、冷却剤が粉末のみから構成される小さい容量の冷却用包装体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の冷却用包装体は、包材中に、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末(A)と、水分子解離剤粉末(B)とをそれぞれ隔離して封入してなる冷却用包装体であって、使用時に前記(A)成分と前記(B)成分とを粉末状態で接触させるものであり、該接触により吸熱反応を生じて冷却効果を発揮するものである。
【0010】
本発明に係る実施形態の冷却用包装体について、図1を参照して説明する。
【0011】
本実施形態の冷却用包装体1は、包材2中に、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末3と、水分子解離剤粉末4とが隔離されて封入されている。そして、使用時に、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末3と、水分子解離剤粉末4とを接触させることにより、吸熱反応を生じるものである。
【0012】
本発明者らは、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末は、水分子を解離するときに、吸熱反応し、この吸熱反応が長時間にわたって持続することを見出した。この長時間の吸熱反応の持続は、水分子の解離が徐々に進行するために生じる挙動であると考えられる。この吸熱反応の挙動は、従来知られた、硝酸アンモニウム等の冷却剤が水に溶解するときに短い時間で急激に吸熱反応が進行する溶解吸熱反応による吸熱反応とは、全く異なる吸熱挙動を示すものである。
【0013】
本発明者らは、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末と水分子解離剤粉末とを混合したときの吸熱反応は、水分子解離剤粉末が第2リン酸ナトリウム12水和物からの水分子の解離を促進させることにより水分子が解離して吸熱反応を生じるものであると考えた。この水分子の解離による吸熱反応においては、水和された複数の水分子が徐々に外れていくと考えられる。そのために、水分子が徐々に時間を隔てて外れていくときの吸熱により、冷却効果が長時間持続する。一方、従来知られた、溶解吸熱反応においては、溶解度の高い硝酸アンモニウム等が水に溶解するときの吸熱反応を用いるために、溶解したときに一気に急激に温度が低下し、短時間のうちに吸熱反応が完了する。
【0014】
水分子解離剤粉末とは、他の含水化合物の結晶水を解離する化合物の粉末であり、具体的には、例えば、有機多塩基酸粉末や無機アンモニウム塩粉末等が挙げられる。その具体例としては、例えば、シュウ酸、コハク酸等のジカルボン酸、りんご酸や酒石酸等のオキシジカルボン酸、クエン酸等のオキシトリカルボン酸等の塩基度が2以上の有機多塩基酸の粉末や、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、アンモニウム明礬、臭化アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩等の粉末が挙げられる。これらの中では、クエン酸粉末が第2リン酸ナトリウム12水和物粉末と接触したときの吸熱効果に特に優れる点から好ましく用いられる。
【0015】
有機多塩基酸粉末を用いる場合のモル比としては、封入される第2リン酸ナトリウム12水和物粉末1モルに対して、有機多塩基酸粉末が0.2〜3モル、さらには、0.2〜1.5モルであることが、より小さい容量で長い時間、冷却効果が得られる点から好ましい。有機多塩基酸粉末のモル比が少なすぎる場合には、冷却効果が低下し、多すぎる場合には最低温度が下がりすぎ、また、冷却効果の持続時間が短くなる傾向がある。
【0016】
また、無機アンモニウム塩粉末を用いる場合のモル比としては、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末1モルに対して、無機アンモニウム塩粉末0.5〜5モル、さらには0.5〜2モルであることが好ましい。前記無機アンモニウム塩のモル比が少なすぎる場合には、冷却効果が不充分になり、多すぎる場合には、最低温度が低くなりすぎる傾向がある。
【0017】
無機アンモニウム塩も有機多塩基酸もともに第2リン酸ナトリウム12水和物から水分子を解離する解離剤として作用するが、無機アンモニウム塩は有機多塩基酸に比べて水を解離させる速度がより速い傾向がある。従って、有機多塩基酸粉末及び無機アンモニウム塩粉末を併用することにより、冷却用包装体の冷却挙動を調整することができる。さらに、第2リン酸ナトリウム12水和物が全ての水分子を解離して、液体状態の水を放出した際には、放出した水に、無機アンモニウム塩が溶解するときの溶解吸熱反応により、さらに、冷却反応を持続させることができる。
【0018】
次に、包材について説明する。
【0019】
包材2は、内部に収納される第2リン酸ナトリウム12水和物粉末3や水分子解離剤粉末4等を封入し、使用時に生成する水が液漏れしないような材料から形成されているものであれば特に限定なく用いられうる。このような材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂からなるフィルムが好ましく用いられる。このフィルムは、単層のフィルムであっても、また、ガスバリア性を高める等の目的で、金属箔をラミネートしたり、表面に金属を蒸着したりして多層化されたフィルムであってもよい。さらに、包材2の外側を、触感を改良する等の目的で、天然繊維や、合成繊維からなる織布や不織布で被覆したようなものも好ましく用いられる。
【0020】
冷却用包装体1においては、2つの隔離された室2a,2bを有する包材2中に、それぞれ第2リン酸ナトリウム12水和物粉末3と水分子解離剤粉末4とが収納されている。そして、使用時に、2aと2bとを隔離している隔離壁2cを破断することにより、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末3と水分子解離剤粉末4とが接触して、吸熱反応が起こる。
【0021】
なお、隔離壁2cは、通常の保存状態においては、隔離状態を保つことができ、使用時に適度の衝撃等を加えることにより容易に破断して、隔離状態から開放されるような強度を有するものであることが好ましい。具体的には、例えば、隔離壁2cにミシン目やスリット等を設けておいたり、包材2の外側を形成するフィルムの厚みに比べて、薄いフィルムを用いたりする方法が挙げられる。
【0022】
なお、冷却用包装体は、図1に示すような、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末3と水分子解離剤粉末4とを、1枚の隔離壁2により隔離するような形態のほか、図2に示すような、包材12中に、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末3を収納する内袋12aと水分子解離剤粉末4を収納する内袋12bとを収納するような形態等であってもよい。なお、包材12中に、収納される内袋12a及び内袋12bも、通常の保存状態においては、隔離状態を保つことができ、使用時に適度の衝撃等を加えることにより容易に破断して、隔離状態から開放されるような強度を有するものからなるものであることが好ましい。このような、内袋を形成する材料としては、上記包材を形成するフィルムの他、ポリビニルアルコール、和紙、オブラートのような水溶性の材料からなるものも好ましく用いられる。
【0023】
冷却用包装体1の隔離壁2は、使用される際に、外部から与えられる衝撃等の力により、破断される。そして、隔離壁2が破断することにより隔離状態が破られ、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末3と水分子解離剤粉末4とが接触することにより吸熱反応が引き起こされる。
【0024】
なお、上記のような吸熱反応の初期においては第2リン酸ナトリウム12水和物粉末3も水分子解離剤粉末4も粉末状であるが、これらを混合することにより、反応の進行に伴い、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末の水和水が徐々に解離して、その状態が粉末状態からシャーベット状に徐々に変化した後、液体の水が徐々に分離され、さらに、反応の後期においては、第2リン酸ナトリウム及び水分子解離剤が溶解した水溶液の状態が観察される。
【0025】
以上、詳しく説明した冷却用包装体は、冷却剤が粉体原料から構成されるためにコンパクトな小さい容量で、長時間冷却効果が持続する冷却用包装体である。従って、このような冷却用包装体は、日用品として用いられる冷却用包装体に関し、詳しくは、発熱や炎症の冷却医療用や、皮膚を保湿したりリフレッシュするための日用品、さらには、生鮮食品の保冷等に好ましく用いられる。
【0026】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
21℃の雰囲気下、縦130mm、横100mmのポリエステル袋(フィルム厚み50μm)中で、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末35.8g(0.1モル)、クエン酸粉末4.8g(0.025モル)をミシン目が設けられた縦80mm、横60mmのポリエステル製内袋にそれぞれ隔離して収納し、冷却用包装体を得た。
【0028】
そして、該袋内のポリエステル製内袋を破断させて、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末とクエン酸粉末とを混合した。そして、冷却用包装体に水銀温度計を挿入し、混合直後からの時間経過に対する温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図3に示す。なお、図3のグラフ中、経過時間を示す軸は対数表示である。
【0029】
図3に示すように、混合直後から6分後に−1.5℃の最低温度になり、また、10℃以下の低温が約58分間持続した。
【0030】
(実施例2)
クエン酸4.8g(0.025モル)の代わりに、クエン酸を57.6g(0.3モル)用いた以外は実施例1と同様にして、混合直後からの温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図3に示す。
【0031】
図3に示すように、混合直後から7分後に−8.1℃の最低温度になり、また、10℃以下の低温が約98分間持続した。
【0032】
(実施例3)
第2リン酸ナトリウム12水和物粉末35.8g(0.1モル)及びクエン酸4.8g(0.025モル)を用いる代わりに、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末28.6g(0.08モル)、シュウ酸9g(0.1モル)を用いた以外は実施例1と同様にして、混合直後からの温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図4に示す。
【0033】
図4に示すように、混合直後から8分後に6℃の最低温度になり、また、10℃以下の低温が約96分間持続した。
【0034】
(実施例4)
第2リン酸ナトリウム12水和物粉末35.8g(0.1モル)及びクエン酸4.8g(0.025モル)を用いる代わりに、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末25.1g(0.07モル)、酒石酸15g(0.1モル)を用いた以外は実施例1と同様にして、混合直後からの温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図4に示す。
【0035】
図4に示すように、混合直後から5分後に2.6℃の最低温度になり、また、10℃以下の低温が約47分間持続した。
【0036】
(実施例5)
第2リン酸ナトリウム12水和物粉末35.8g(0.1モル)及びクエン酸4.8g(0.025モル)を用いる代わりに、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末25.1g(0.07モル)、コハク酸11.8g(0.1モル)を用いた以外は実施例1と同様にして、混合直後からの温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図4に示す。
【0037】
図4に示すように、混合直後から9分後に9.5℃の最低温度になり、また、10℃以下の低温が約43分間、15℃以下の低温が約80分間持続した。
【0038】
(実施例6)
クエン酸4.8g(0.025モル)の代わりに、硝酸アンモニウム8g(0.1モル)を用いた以外は実施例1と同様にして、混合直後からの温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図4に示す。
【0039】
図4に示すように、混合直後から10分後に3℃の最低温度になり、また、10℃以下の低温が約47分間持続した。
【0040】
(実施例7)
硝酸アンモニウム8g(0.1モル)を前記ポリエステル製内袋で隔離して、前記ポリエステル袋に、さらに収納した以外は実施例1と同様にして、混合直後からの温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図5に示す。
【0041】
図5に示すように、混合直後から8分後に−2.5℃の最低温度になり、また、10℃以下の低温が約82分間持続した。
【0042】
(実施例8)
硝酸アンモニウム24g(0.3モル)を前記ポリエステル製内袋で隔離して、前記ポリエステル袋に、さらに収納した以外は実施例1と同様にして、混合直後からの温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図5に示す。
【0043】
図5に示すように、混合直後から7分後に−5.8℃の最低温度になり、また、10℃以下の低温が約80分間持続した。
【0044】
(実施例9)
塩化アンモニウム5.4g(0.1モル)を前記ポリエステル製内袋で隔離して、前記ポリエステル袋に、さらに収納した以外は実施例1と同様にして、混合直後からの温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図5に示す。
【0045】
図5に示すように、混合直後から15分後に−0.9℃の最低温度になり、また、10℃以下の低温が約80分間持続した。
【0046】
(実施例10)
第2リン酸ナトリウム12水和物粉末28.6g(0.08モル)、クエン酸7.7g(0.04モル)、塩化アンモニウム3.21g(0.06モル)をそれぞれ隔離して収納して、冷却用包装体を得た以外は実施例1と同様にして、混合直後からの温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図5に示す。
【0047】
図5に示すように、混合直後から4分後に−0.3℃の最低温度になり、また、10℃以下の低温が60分間、15℃以下の低温が約90分間持続した。
【0048】
(実施例11)
第2リン酸ナトリウム12水和物粉末35.8g(0.1モル)、シュウ酸6.3g(0.07モル)、塩化アンモニウム5.4g(0.1モル)をそれぞれ隔離して収納して、冷却用包装体を得た以外は実施例1と同様にして、混合直後からの温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図5に示す。
【0049】
図5に示すように、混合直後から8分後に0.3℃の最低温度になり、また、10℃以下の低温が約79分間持続した。
【0050】
(実施例12)
第2リン酸ナトリウム12水和物粉末35.8g(0.1モル)、酒石酸7.5g(0.05モル)、塩化アンモニウム5.4g(0.1モル)をそれぞれ隔離して収納して、冷却用包装体を得た以外は実施例1と同様にして、混合直後からの温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図5に示す。
【0051】
図5に示すように、混合直後から5分後に−3℃の最低温度になり、また、10℃以下の低温が約40分間持続した。
【0052】
以上の結果を下記表1にまとめて記載する。
【0053】
【表1】

【0054】
(比較例1)
第2リン酸ナトリウム12水和物粉末35.8g(0.1モル)の代わりに、硫酸ナトリウム10水和物32.2g(0.1モル)を用いた以外は実施例1と同様にして、混合直後からの温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図3に示す。
【0055】
図3に示すように、混合直後から65分後に17.8℃程度の最低温度に到達したが、10℃以下の低温にはならなかった。
【0056】
(比較例2)
第2リン酸ナトリウム12水和物粉末35.8g(0.1モル)の代わりに、水酸化バリウム8水和物31.5g(0.1モル)を用いた以外は実施例1と同様にして、混合したが、図3に示すように、吸熱反応せず、10℃以下の低温にはならなかった。
【0057】
(比較例3)
21℃の雰囲気下、縦130mm、横100mmのポリエステル袋(フィルム厚み50μm)中で、硝酸アンモニウム24.0g(0.3モル)、コハク酸水溶液30.9g(0.05モル)をミシン目が設けられた縦80mm、横60mmのポリエステル製内袋にそれぞれ隔離して収納し、冷却用包装体を得た。
【0058】
そして、該袋内のポリエステル製内袋を破断させて、硝酸アンモニウムとコハク酸水溶液とを混合した。そして、冷却用包装体に水銀温度計を挿入し、混合直後からの温度変化をプロットした。このときの温度変化を示すグラフを図3に示す。
【0059】
図3に示すように、混合直後から2分後に2.1℃程度の最低温度に到達したが、15℃以下の温度は約35分間程度しか維持できなかった。
【0060】
(参考例1)
実施例1において、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末とクエン酸との混合後、吸熱開始から120分後の液温が21℃に戻ったときに、さらに、クエン酸4.8gを混合したところ、液温が20.4℃となり、わずかに吸熱が見られた。
【0061】
(参考例2)
実施例1において、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末とクエン酸との混合後、10分後の液温が17℃に戻ったときに、さらに、塩化アンモニウム5.4gを混合したところ、液温が7.5℃にまで、急激に低下した。
【0062】
図3から、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末とクエン酸粉末とを接触させた、本願発明に係る実施例1及び2の冷却用包装体の吸熱挙動は、10℃以下、または15℃以下の温度を長い時間維持していることが分かる。また、図4及び図5に示すように、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末と、シュウ酸やコハク酸等の有機多塩基酸や、硝酸アンモニウム塩等の無機アンモニウム塩等の粉末と接触させた場合にも、水分子の解離を引き起こして冷却反応が進行することがわかる。
【0063】
一方、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末の代わりに、硫酸ナトリウム10水和物粉末を用いた、比較例1の冷却剤においては、水の解離による吸熱反応を引き起こすが、最低温度が17.8℃であり、冷却効果が低かった。
【0064】
また、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末の代わりに、水酸化バリウム8水和物粉末を用いた比較例2の冷却用包装体においては、実質的な冷却効果が確認できなかった。
【0065】
さらに、硝酸アンモニウムをコハク酸水溶液に溶解させたときのような、硝酸塩が水に溶解するときの吸熱反応を用いた場合には、短時間で、最低温度の2.1℃に達したが、冷却効果が持続せず、15℃以下の温度は約35分間程度しか維持できなかった。
【0066】
さらに、参考例1に示すように、第2リン酸ナトリウム12水和物が解離されて溶解された後の水溶液に、さらに、クエン酸を加えても、大きな冷却効果は見られなかった。
【0067】
一方、参考例2に示すように、第2リン酸ナトリウム12水和物が解離されて溶解された後の水溶液に、さらに、塩化アンモニウムを加えた場合には、塩化アンモニウムの溶解吸熱反応により、急激な温度低下が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る実施形態の冷却用包装体の模式説明図を示す。
【図2】本発明に係る実施形態の冷却用包装体の模式説明図を示す。
【図3】実施例1、2及び比較例1〜3における冷却用包装体の温度の経時変化をプロットしたグラフである。
【図4】実施例3〜6における冷却用包装体の温度の経時変化をプロットしたグラフである。
【図5】実施例7〜12における冷却用包装体の温度の経時変化をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0069】
1、10 冷却用包装体
2、12 包材
2a 室
2c 隔離壁
3、13 第2リン酸ナトリウム12水和物粉末
4、14 水分子解離剤粉末
12a 内袋
12b 内袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包材中に、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末(A)と、水分子解離剤粉末(B)とをそれぞれ隔離して封入してなる冷却用包装体であって、使用時に前記(A)成分と前記(B)成分とを接触させるものであることを特徴とする冷却用包装体。
【請求項2】
前記水分子解離剤粉末(B)が、有機多塩基酸粉末及び無機アンモニウム塩粉末からなる群から選ばれる少なくとも1種の粉末である請求項1に記載の冷却用包装体。
【請求項3】
前記有機多塩基酸粉末がクエン酸粉末、シュウ酸粉末、コハク酸粉末、及び酒石酸粉末からなる群から選ばれる少なくとも1種の粉末である請求項2に記載の冷却用包装体。
【請求項4】
前記水分子解離剤粉末(B)がクエン酸粉末である請求項1に記載の冷却用包装体。
【請求項5】
前記(A)成分1モルに対して、前記(B)成分0.2〜3モル封入されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷却用包装体。
【請求項6】
第2リン酸ナトリウム12水和物粉末(A)と、水分子解離剤粉末(B)とを、接触させることにより生じる吸熱反応を用いることを特徴とする冷却方法。
【請求項7】
前記水分子解離剤粉末(B)が有機多塩基酸粉末、無機アンモニウム塩粉末からなる群から選ばれる少なくとも1種の粉末である請求項6に記載の冷却方法。
【請求項8】
前記水分子解離剤粉末(B)がクエン酸粉末である請求項6に記載の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−22493(P2009−22493A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188196(P2007−188196)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(594023582)タカビシ化学株式会社 (4)
【Fターム(参考)】