説明

冷却装置およびこれを搭載した電子機器および電気自動車

【課題】電子機器および電気自動車のインバータ回路内の半導体スイッチング素子に発生する熱が大きくなり、冷却に必要な作動流体の量が多くなった場合でも、冷却に必要な量の作動流体を供給することができる、冷却能力の低下を抑制した冷却装置を提供することを目的とする。
【解決手段】作動流体11を循環し液相と気相との相変化により冷却する冷却装置3であって、受熱部4と、放熱部5と、放熱経路6と、帰還経路7とで構成し前記帰還経路7には逆流防止弁16と、液溜め部17とを設けた構成にした。多くの量の作動流体11を溜めることができるため、半導体スイッチング素子9に発生した熱が大きくなり、冷却に必要な作動流体11の量が多くなった場合でも、受熱部4に作動流体11を供給することができる、冷却能力の低下を抑制した冷却装置3を得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力半導体を搭載した電子機器、および電気自動車の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の冷却装置は、電子機器および電気自動車の電力変換回路に搭載されたものが知られている。電気自動車では、駆動動力源となる電動モータを電力変換回路であるインバータ回路でスイッチング駆動していた。インバータ回路には、パワートランジスタを代表とする半導体スイッチング素子が複数個使われていて、それぞれの素子に数十アンペアの大電流が流れていた。そのため、大きな熱が発生し、冷却することが必要であった。
【0003】
そこで、従来は、例えば特許文献1のように、加熱部と冷却器と閉ループ経路で構成するループ型ヒートパイプにより半導体スイッチング素子の冷却を行っていた。
【0004】
以下、特許文献1に示すループ型ヒートパイプについて、図5を参照しながら説明する。
【0005】
図4に示すようにループ型ヒートパイプは上昇管101と下降管102とを別個に含むループ回路、前記ループ回路に真空化において封入された作動流体である熱媒体103、前記ループ回路の一部を構成し、かつ前記ループ回路の上方に位置する冷却器104、前記上昇管101の下部に位置する加熱部105、前記ループ回路内の下部に介装し前記ループ回路内の前記熱媒体103の流向を限定する逆止弁106とを備えている。
【0006】
ここで、加熱部105に接触させた半導体スイッチング素子に熱が発生すると、発生した熱は加熱部105へ伝わる。加熱部105を循環する熱媒体103に熱が加えられ気化する、逆止弁106によりその循環方向が制限され、気化した熱媒体103は上昇管101を上昇し冷却器104に導かれて冷却され、ここで加熱部105で加えられた熱を放出する。冷却器104で加えられた熱を放出した熱媒体103は下降管103を下降し、逆止弁106を介して再び加熱部105へと循環する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−038396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の冷却装置においては、半導体スイッチング素子に発生する熱が大きくなり、冷却に必要な作動流体の量が下降管に溜められている作動流体の量より多くなると、冷却に必要な量の作動流体を供給することができず、冷却能力が低下するという課題を有していた。
【0009】
そこで本発明は、上記の従来の課題を解決するものであり、半導体スイッチング素子に発生する熱が大きくなり、冷却に必要な作動流体の量が多くなった場合でも、冷却に必要な量の作動流体を供給することができる、冷却能力の低下を抑制した冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、この目的を達成するために、本発明は、作動流体を循環し液相と気相との相変化により冷却する冷却装置であって、発熱体からの熱を作動流体に伝える受熱部と、前記作動流体の熱を放出する放熱部と、前記受熱部の排出口と前記放熱部とを連通する放熱経路と、前記放熱部と前記受熱部の流入口を連通する帰還経路とで構成し前記帰還経路には逆流防止弁を備えるとともに、前記放熱部と前記逆流防止弁との間の前記帰還経路に液溜め部を設けたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の冷却装置によれば、作動流体を循環し液相と気相との相変化により冷却する冷却装置であって、発熱体からの熱を作動流体に伝える受熱部と、前記作動流体の熱を放出する放熱部と、前記受熱部の排出口と前記放熱部とを連通する放熱経路と、前記放熱部と前記受熱部の流入口を連通する帰還経路とで構成し前記帰還経路には逆流防止弁を備えるとともに、前記放熱部と前記逆流防止弁との間の前記帰還経路に液溜め部を設けた構成とすることにより、液溜め部を設けない時と比較して、液溜め部を設けたことにより増加した内容積分だけ作動流体を溜めることができる。その結果、発熱体に発生した熱が大きくなり、冷却に必要な作動流体の量が多くなった場合でも、受熱部に作動流体を供給することができるため、冷却能力の低下を抑制することができるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1の電気自動車の概略図
【図2】液溜め部を設けた冷却装置を示す概略図
【図3】液溜め部を設けていない冷却装置を示す概略図
【図4】液溜め部を設けた帰還経路を示す概略図((a)液溜め部を受熱部と放熱部とを結ぶ直線の半分より低い位置に設けた時の図(b)液溜め部を受熱部と放熱部とを結ぶ直線の半分より高い位置に設けた時の図)
【図5】従来の冷却装置を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の請求項1記載の冷却装置は、作動流体を循環し液相と気相との相変化により冷却する冷却装置であって、発熱体からの熱を作動流体に伝える受熱部と、前記作動流体の熱を放出する放熱部と、前記受熱部の排出口と前記放熱部とを連通する放熱経路と、前記放熱部と前記受熱部の流入口を連通する帰還経路とで構成し前記帰還経路には逆流防止弁を備えるとともに、前記放熱部と前記逆流防止弁との間の前記帰還経路に液溜め部を設けたという構成を有する。
【0014】
これにより、液溜め部を設けない時と比較して、液溜め部を設けたことにより増加した内容積分だけ作動流体を溜めることができる。その結果、発熱体に発生した熱が大きくなり、冷却に必要な作動流体の量が多くなった場合でも、受熱部に作動流体を供給することができるため、冷却能力の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0015】
また、請求項2記載の冷却装置は、前記作動流体循環方向に対する前記液溜め部の垂直断面積は、前記作動流体循環方向に対する前記帰還経路の垂直断面積より大きいという構成にしてもよい。
【0016】
これにより、液溜め部を設けない時と比較して、液溜め部を設けたことにより増加した内容積分だけ作動流体の循環量を増加させることができる。その結果、発熱体に発生した熱が大きくなり、冷却に必要な作動流体の量が多くなった場合でも、受熱部に作動流体を供給することができるため、冷却能力の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0017】
また、請求項3記載の冷却装置は、前記受熱部は前記放熱部より低い位置に設置し、前記液溜め部は前記受熱部と前記放熱部とを結ぶ直線の半分より高い位置に設けたという構成にしてもよい。
【0018】
これにより、液溜め部を設けた場合でも作動流体の水頭高さを高くすることができるため、受熱部に供給する作動流体の量を多くすることができる。詳述する。まず、液溜め部を受熱部と放熱部とを結ぶ直線の半分より低い位置に設けた場合を考える。ここで、液溜め部が作動流体で完全に満たされている時、水頭高さは液溜め部上部までの高さとなる。
【0019】
続いて、同量の作動流体が循環している状態で、液溜め部を高い位置に設けた場合を考えると、液溜め部は途中まで作動流体で満たされることになる。この時、水頭高さは液溜め部を低い位置に設けた場合より高くなる。つまり、水頭圧力が高くなり、受熱部へ作動流体を循環させるための圧力が高くなるため、受熱部に供給する作動流体の量を多くすることができる。
【0020】
その結果、発熱体に発生した熱が大きくなり、冷却に必要な作動流体の量が多くなった場合でも、受熱部に作動流体を供給することができるため、冷却能力の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0021】
また、請求項4記載の冷却装置は、前記送風機は前記帰還経路の外表面に送風するという構成にしてもよい。
【0022】
これにより、受熱部で作動流体に加えられた熱を放熱部で完全に放出できなかった場合でも、作動流体が帰還経路を循環している間に作動流体を冷却することができ、作動流体に加えられた熱を放出することができる。
【0023】
完全に熱を放出できなかった作動流体と比較すると、帰還経路で冷却された作動流体は帰還経路で放出した熱の量だけ多くの熱を受熱部で加えることができる。
【0024】
その結果、発熱体に発生した熱が大きくなり、冷却に必要な作動流体の量が多くなった場合でも、受熱部に作動流体を供給することができるため、冷却能力の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0025】
また、請求項5記載の冷却装置は、前記送風機は前記液溜め部の外表面に送風するという構成にしてもよい。
【0026】
これにより、受熱部で作動流体が吸収した熱を放熱部で完全に放出できなかった場合でも、作動流体が液溜め部に溜められている間に作動流体を冷却することができ、作動流体に加えられた熱を放出することができる。
【0027】
完全に熱を放出できなかった作動流体と比較すると、液溜め部で冷却された作動流体は液溜め部で放出した熱の量だけ多くの熱を受熱部で加えることができる。
【0028】
その結果、発熱体に発生した熱が大きくなり、冷却に必要な作動流体の量が多くなった場合でも、受熱部に作動流体を供給することができるため、冷却能力の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0029】
また、請求項6記載の冷却装置は、請求項1から5いずれか一つに記載の冷却装置を備えたこと構成とした電子機器にしてもよい。
【0030】
これにより、電子機器は、発熱体に発生した熱が大きくなった場合でも、受熱部に作動流体を供給し、冷却能力の低下を抑制する効果を有した冷却装置を備えた構成となる。
【0031】
その結果、電子機器に発生した熱が大きくなり、冷却に必要な作動流体の量が多くなった場合でも、受熱部に作動流体を供給することができるため、冷却能力の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0032】
また、請求項7記載の冷却装置は、請求項1から5いずれか一つに記載の冷却装置を備えたこと構成とした電気自動車にしてもよい。
【0033】
これにより、電気自動車は、発熱体に発生した熱が大きくなった場合でも、受熱部に作動流体を供給し、冷却能力の低下を抑制する効果を有した冷却装置を備えた構成となる。
【0034】
その結果、電気自動車に発生した熱が大きくなり、冷却に必要な作動流体の量が多くなった場合でも、受熱部に作動流体を供給することができるため、冷却能力の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0036】
(実施の形態1)
図1に示すように、電気自動車1の車軸(図示せず)を駆動する電動モータ(図示せず)は、電気自動車1の内に配置した電力変換装置であるインバータ回路2に接続されている。
【0037】
インバータ回路2は、電動モータに電力を供給するもので、複数の半導体スイッチング素子(図3の9)を備えおり、この半導体スイッチング素子(図3の9)が動作中に熱を発生する。
【0038】
このため、この半導体スイッチング素子(図3の9)を冷却するために、熱媒体となる作動流体(図3の11で、例えば水)を循環させることで冷却を行う冷却装置3を備えている。
【0039】
冷却装置3は、作動流体(図3の11で、例えば水)に熱を加える受熱部4と、加えた熱を放出する放熱部5を備え、受熱部4と放熱部5の間で熱媒体となる作動流体(図3の11で、例えば水)を循環させる放熱経路6と帰還経路7とを設けることで、受熱部4、放熱経路6、放熱部5、帰還経路7、前記受熱部4となる帰還経路を構成している。
【0040】
さらに、帰還経路7に逆流防止弁(図3の16)を備えることで、この帰還経路7においては、作動流体(図3の11、例えば水)が、気体状態(水の場合水蒸気)や液体状態及びその混合状態で、受熱部4、放熱経路6、放熱部5、帰還経路7、前記受熱部4と一方向に、循環するようになっている。
【0041】
ここで、放熱部5は送風機8から外気が送風されることで、冷却され熱を放出している。
【0042】
なお、この放熱部5の表面から放出された熱は、電気自動車1の車内の暖房に活用することも出来る。
【0043】
図2に示すように受熱部4は、半導体スイッチング素子9に接触させて熱を吸収する受熱板10と、この受熱板10の表面を覆い、流れ込んだ作動流体11を蒸発させる受熱空間12を形成する受熱板カバー13とを備えている。
【0044】
さらに、受熱板カバー13には、受熱空間12に帰還経路7から作動流体11を流入させる流入口14と、受熱空間12から作動流体11を放熱経路6へ排出する排出口15が設けられている。
【0045】
ここで、帰還経路7には、流入口14近傍上部に逆流防止弁16を備え、さらに、放熱部5と逆流防止弁16との間には液溜め部17を設けており、作動流体11を溜めることができるようになっている。
【0046】
このような構成による冷却装置3の作用について説明する。
【0047】
上記構成において、インバータ回路2の半導体スイッチング素子9が動作を開始すると電動モータに電力が供給されて、電気自動車1は、動きだすこととなる。
【0048】
このとき、半導体スイッチング素子9には大電流が流れることにより、大きな熱が発生する。
【0049】
ここで、半導体スイッチング素子9で発生した熱は受熱板10へ伝わる。受熱板10へ伝わった熱は、受熱空間12の受熱板10上に供給された液体状態の作動流体11を瞬時に気化させ、気体状態へと変化させる。蒸発潜熱を与えられた気体状態の作動流体は、排出口15から放熱経路6へと循環し、放熱部5で冷却され凝縮し液体状態になることで熱を外気に放出する。
【0050】
続いて、凝縮潜熱を放出した液体状態の作動流体11は帰還経路7へと循環する。作動流体11は液溜め部17を通過した後に、逆流防止弁16の上に溜まることとなる。液体状態の作動流体11は、徐々に帰還経路7で増加し、水頭圧力が高くなる。(水頭高さが高くなる。)一方、受熱空間12では作動流体11が供給されないため、徐々に気体状態の作動流体11が減少し、受熱空間12の圧力が低下する。
【0051】
逆流防止弁16の上流側の圧力(帰還経路7の液体状態の作動流体11の持つ水頭圧力と作動流体11の液面での気体の圧力との和)が逆流防止弁16の下流の圧力(受熱空間12の圧力)より高くなった時に、作動流体11は逆流防止弁16を通過し、再び受熱空間12の受熱板10上に作動流体11が供給される。
【0052】
このようにして作動流体11が冷却装置3を循環することで、半導体スイッチング素子9の冷却を行なうことになる。
【0053】
ここで、受熱空間12の冷却のメカニズムについて図3を用いて説明を加える。
【0054】
受熱空間12では、帰還経路7からの作動流体11は、受熱板10上に液滴となって滴下される。滴下した作動流体11は、帰還経路7の流入口14と受熱板10の隙間から外周部へ拡散される。このとき、受熱板10の表面では、作動流体11が薄い膜として広がり、高温の受熱板10の熱を加えられ一瞬にして気化することとなる。
【0055】
なお、受熱空間12を含む帰還経路7の気圧は、使用する作動流体11によって異なるが、例えば作動流体11として水を使用した場合、大気圧よりも低く設定することで、大気圧中の水の沸騰に比べて低い温度で気化させることができる。本実施の形態では、ほぼ真空に減圧した帰還経路内に所望の水を封入し、外気温度に応じた飽和水蒸気状態にしておくことで、外気温度+数10度程度の気化温度で容易に水を気化させることができる。
【0056】
これにより、半導体スイッチング素子9からの熱は作動流体11に気化潜熱として除去され、効率的な冷却が可能となる。
【0057】
また、作動流体11が気化するときに受熱空間12の圧力は増加するが、逆流防止弁16の作用により作動流体11は逆流して帰還経路7側へ戻ることはなく、確実に排出口15から放熱経路6へ放出させることができる。
【0058】
このように冷却装置3を動作させることで、規則的な受熱と放熱のサイクルができ、連続して作動流体11を受熱空間12で気化させて半導体スイッチング素子9からの熱を効率的に除去し、大きな冷却効果を実現することができる。
【0059】
次に、本実施形態における最も特徴的な部分について説明する。
【0060】
図2に液溜め部17を設けた冷却装置3を示し、図3に液溜め部17を設けていない冷却装置3を示す。
【0061】
まず、図3を用い、液溜め部17を設けていない冷却装置3で半導体スイッチング素子9を冷却する場合について説明する。
【0062】
前述したように、液体状態の作動流体11が逆流防止弁16を通過し、受熱空間12へ供給され、半導体スイッチング素子9から発生した熱を除去することにより冷却を行う。ここで、半導体スイッチング素子9から発生した熱の量が大きくなると、多くの量の作動流体11を受熱空間12へ供給する必要がある。図3のような液溜め部17を設けていない冷却装置3の場合、受熱空間12へ供給することができる液体状態の作動流体11の量は帰還経路7の内部容積分となる。もし、必要な作動流体11の量がこの内部容積分より大きい場合、冷却能力が低下し、半導体スイッチング素子9から発生した熱を除去しきれなくなる。最悪の場合、半導体スイッチング素子9が破壊されることになる。
【0063】
続いて、図2を用い、液溜め部17を設けた冷却装置3で半導体スイッチング素子9を冷却する場合について説明する。
【0064】
図2に示すように、帰還経路7に液溜め部17を設けた構成としており、液溜め部17を設けていない時と比較して、液溜め部17を設けたことにより増加した内部容積分だけ多くの量の作動流体11を溜めることができるようにしている。
【0065】
ここで、半導体スイッチング素子9から発生した熱の量が大きくなり、多くの量の作動流体11を受熱空間12へ供給する必要となった時でも、液溜め部17を設けたことにより増加した量の作動流体11を受熱空間12へ供給することができる。
【0066】
その結果、半導体スイッチング素子9から発生した熱の量が大きくなり、冷却に必要な作動流体11の量が多くなった場合でも、受熱部4に作動流体11を供給することができるため、冷却能力の低下を抑制することができる。
【0067】
また、図2中の矢印で示す作動流体11の循環方向に対する液溜め部17の垂直断面積を帰還経路7の垂直断面積より大きくした構成としている。
【0068】
このような構成にすることで、液溜め部17を設けることにより、帰還経路7の内部容積が減ることを防ぎ、帰還経路7の内部容積を確実に増やすことができる。
【0069】
その結果、上述の通り、半導体スイッチング素子9から発生した熱の量が大きくなり、冷却に必要な作動流体11の量が多くなった場合でも、受熱部4に作動流体11を供給することができるため、冷却能力の低下を抑制することができる。
【0070】
さらに、液溜め部17を受熱部4と放熱部5とを結ぶ直線の半分より高い位置に設けた構成とすることで、作動流体11の水頭高さを高くできるようにしている。
【0071】
ここで、図4を用いて詳述する。図4(a)には液溜め部17を受熱部4と放熱部5とを結ぶ直線の半分より低い位置に設けた帰還経路7を示し、図4(b)には液溜め部17を半分より高い位置に設けた帰還経路7を示す。
【0072】
図4(a)に示すように、液溜め部17が作動流体11で完全に満たされている時、水頭高さHaは液溜め部17の上部までの高さとなる。
【0073】
続いて、図4(b)に示すように、図4(a)と同量の作動流体11が循環している状態で、液溜め部17を高い位置に設けた場合には、液溜め部17は途中まで作動流体11で満たされることになる。この時、水頭高さHbは液溜め部17を低い位置に設けた場合の水頭高さHaより高くなる。つまり、水頭圧力が高くなり、受熱空間12に供給する作動流体11の量を多くすることができる。
【0074】
その結果、半導体スイッチング素子9から発生した熱の量が大きくなり、冷却に必要な作動流体11の量が多くなった場合でも、受熱部4に作動流体11を供給することができるため、冷却能力の低下を抑制することができる。
【0075】
また、送風機8は帰還経路7の外表面に送風する構成となっている。
【0076】
このような構成にすることで、受熱部4にて作動流体11に加えられた熱を放熱部5で完全に放出できなかった場合でも、作動流体11が帰還経路7を循環している間に作動流体11を冷却することができ、作動流体11に加えられた熱を放出することができる。
【0077】
完全に熱を放出できなかった作動流体11と比較すると、帰還経路7で冷却された作動流体11は帰還経路7で放出した熱の量だけ多くの熱を受熱部4で加えることができる。
【0078】
その結果、半導体スイッチング素子9から発生した熱の量が大きくなり、冷却に必要な作動流体11の量が多くなった場合でも、受熱部4に作動流体11を供給することができるため、冷却能力の低下を抑制することができる。
【0079】
さらに、送風機8は液溜め部17の外表面に送風する構成となっている。
【0080】
このような構成にすることで、受熱部4にて作動流体11に加えられた熱を放熱部5で完全に放出できなかった場合でも、作動流体11が液溜め部17に溜まっている間に作動流体11を冷却することができ、作動流体11に加えられた熱を放出することができる。作動流体11を低い温度で受熱部4に供給させることができる。
【0081】
完全に熱を放出できなかった作動流体11と比較すると、液溜め部17で冷却された作動流体11は液溜め部17で放出した熱の量だけ多くの熱を受熱部4で加えることができる。
【0082】
その結果、半導体スイッチング素子9から発生した熱の量が大きくなり、冷却に必要な作動流体11の量が多くなった場合でも、受熱部4に作動流体11を供給することができるため、冷却能力の低下を抑制することができる。
【0083】
なお、上記実施形態においては、冷却装置3を電気自動車1に適用したものを説明したが、電子機器に冷却装置3を適用することも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明にかかる冷却装置は半導体スイッチング素子から発生した熱の量が大きくなり、冷却に必要な作動流体の量が多くなった場合でも、受熱部に作動流体を供給することができるため、電子機器および電気自動車のインバータ回路内の半導体スイッチング素子などの冷却に有用である。
【符号の説明】
【0085】
1 電気自動車
2 インバータ回路
3 冷却装置
4 受熱部
5 放熱部
6 放熱経路
7 帰還経路
8 送風機
9 半導体スイッチング素子
10 受熱板
11 作動流体
12 受熱空間
13 受熱板カバー
14 流入口
15 排出口
16 逆流防止弁
17 液溜め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を循環し液相と気相との相変化により冷却する冷却装置であって、発熱体からの熱を作動流体に伝える受熱部と、前記作動流体の熱を放出する放熱部と、前記受熱部の排出口と前記放熱部とを連通する放熱経路と、前記放熱部と前記受熱部の流入口を連通する帰還経路とで構成し前記帰還経路には逆流防止弁を備えるとともに、前記放熱部と前記逆流防止弁との間の前記帰還経路に液溜め部を設けたことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記作動流体循環方向に対する前記液溜め部の垂直断面積は、前記作動流体循環方向に対する前記帰還経路の垂直断面積より大きいことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記逆流防止弁は前後の圧力差により作動流体を循環させる構成であって、前記受熱部は前記放熱部より低い位置に設置し、前記液溜め部は前記受熱部と前記放熱部とを結ぶ直線の半分より高い位置に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記放熱部に送風する送風機を備え、前記送風機は前記帰還経路の外表面に送風することを特徴とする請求項1から3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記送風機は前記液溜め部の外表面に送風することを特徴とする請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれか一つに記載の冷却装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1から5いずれか一つに記載の冷却装置を備えたことを特徴とする電気自動車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−19549(P2013−19549A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150655(P2011−150655)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)