説明

冷却装置及びそれを備えた電子機器

【課題】発熱電子部品と熱的に接続された受熱部の熱を熱伝導性シートによりファンケーシング内の送風路へ熱輸送して、冷却性能の向上と小型軽量化・薄型化を図った冷却装置及びそれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】送風ファン2を回転自在に収容し、少なくとも一方の側面に排気口3の設けられたファンケーシング4と、発熱電子部品に熱的に接続される受熱部8からファンケーシング4へ熱輸送を行う熱伝導性シート11と、を備え、発熱電子部品の熱を送風ファン2によって放熱する冷却装置であって、送風ファン2とファンケーシング4との間の送風路6に熱伝導性シート11を配設する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器筐体内部の基板に実装された超小型演算処理装置(以下、MPUと称する)などの発熱電子部品の冷却に用いる冷却装置で、発熱電子部品の熱を送風ファンによって放熱する冷却装置及びそれを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のコンピューターにおけるデータ処理の高速化の動きはきわめて急速であり、MPUのクロック周波数は、以前と比較して格段に高いものになってきている。
【0003】
その結果、MPUの発熱量が増大し、従来のように放熱フィンを有するヒートシンクを発熱電子部品に直接接触させて放熱する方法だけでなく、そのヒートシンクに送風ファンで直接送風して冷却する方法、あるいは受熱部とヒートシンクとをヒートパイプを用いて熱接続したヒートシンクモジュールを構成して、そのヒートシンクを送風ファンにより強制的に送風して放熱することが必要不可欠となっており、今後さらにその冷却性能の向上と小型軽量化・薄型化が必要とされている。
【0004】
一般的には、モバイル対応のノート型PCなどの薄型電子機器に搭載される冷却装置は、その電子機器の筐体内のスペースが高さ方向において極めて狭いため、扁平形状のファンケーシングを備え、その中に送風ファンを収容し、少なくともその一つの側面に排気口を設けたものが採用され、放熱フィンを有するヒートシンクの近くにその冷却装置を設置し、その冷却装置の排気口から送り出される空気によって直接冷却するという形態が多く採用されている。
【0005】
また、それ以外の形態としては、そのファンケーシングの一部に放熱フィンを形成して、その放熱フィンに受熱部の熱を伝達させながらそのファンケーシングに収容された送風ファンによってその放熱フィンに送風して放熱する形態や、あるいはファンケーシングそのものがヒートシンクのような放熱効果を有するように、そのファンケーシングを熱伝導性の良好なアルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金、ステンレス鋼などの熱伝導性の良好な金属材料を用いて構成し、そのファンケーシングに受熱部の熱を伝達させながらそのファンケーシングに収容された送風ファンによって放熱する形態なども採用されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0006】
図8(a)は、従来の技術である(特許文献1)に記載されている冷却装置の斜視図で、図8(b)は、同冷却装置を反転させて内部を示した斜視図である。
【0007】
ここで、冷却装置100は、本体101がアルミニウム合金のダイカスト成型により偏平状のファンケーシングとして形成されている。本体101は、一部をファン室102とし、このファン室102に連続した熱交換室103を有している。
【0008】
ファン室102は、その上部に吸気口104を持ち、内部に偏平な送風ファン105を装備している。熱交換室103は、ダイカストよりなる蓋板106で覆われ、内部に複数の放熱フィン107を備えるとともに、一側面に排気口108を設けて構成されている。
【0009】
各放熱フィン107は、本体101の内側と蓋板106の内側にそれぞれに一体に設けられ、かつ、先端辺が相対向して形成されている。
【0010】
さらに詳しくは、放熱フィン107を形成する下側の片107aと図示しない上側の片の上下2つの片は、その先端辺の間にヒートパイプ109の外径よりやや小さい隙間を形成するように設けてあり、その先端辺にヒートパイプ109の外周の一部が嵌まり合う形状の凹み107bを形成している。
【0011】
また、本体101には発熱電子部品取り付け用の座板110を一体に設けてあり、その受熱部111にMPU等の発熱電子部品112を接合している。
【0012】
そして座板110における受熱部111と反対側の面には、受熱部111に対応する部分より熱交換室103に至る溝113を形成してあり、この溝113に嵌め合わせたヒートパイプ109を熱交換室103に案内し、この熱交換室103に案内された部分を各放熱フィン107の中央部に接合している。
【0013】
より詳しくは、ヒートパイプ109を、各放熱フィン107を構成する上下2つの片の先端辺の凹み107bに嵌め合わせるとともに、その上下2つの片の先端辺で挟圧して接合している。
【0014】
このとき、2つの片の先端辺間はヒートパイプ109の外径よりやや小さい隙間を形成するように設けているので、その2つの片の先端辺はヒートパイプ109の外側面に食い込んで接合する。また、ヒートパイプ109と放熱フィン107との接合において、ヒートパイプ109は、放熱フィンの上下片の先端辺の長手方向に対して垂直から60°以内の角度で交差するように配置されている。
【0015】
以上のように構成された冷却装置100は、発熱電子部品112の熱が受熱部111よりヒートパイプ109に伝達され、そのヒートパイプ109の受熱側において内部の液体が熱により気化し、放熱フィン107接合側に流れて、熱を放熱フィン107および本体101に伝達することで気体が液体に戻り、この液体が毛管部を介して受熱側に送るという動作を繰り返すもので、この一連の動作で発熱電子部品112の熱が放熱フィン107に伝達する。
【0016】
さらに、伝達された熱を受ける放熱フィン107は、その上下2つの片の先端辺部で、すなわち中央部で熱を受けることから、熱が放熱フィン107の全体まで伝わり、放熱用の送風ファン105によって放熱フィン107を強制冷却することで効果的に熱交換作用が促進される。
【0017】
従って、画像処理等のために高い周波数を扱い高い温度の発熱をするMPU等の発熱電子部品であっても、その温度を大きく下げて熱破壊を防止することができ、併せて、冷却装置の小型化・薄型化を実現することができる。
【0018】
また、図9は、従来の技術である(特許文献2)に記載されている冷却装置の要部断面図で、基板201の上面に実装された発熱電子部品202の上部に載置され、その発熱電子部品202の熱を放熱する冷却装置200を示している。
【0019】
また、発熱電子部品202の上表面には、熱伝導性シート203が配設され、この熱伝導性シート203は、弾性を持った材料で形成されたシート、例えばシリコンゴム、シリコンゲルパットといったシリコン系シートなどから構成され、その片面は接着剤が塗布されて接着性を有している。
【0020】
そして、この熱伝導性シート203は、接着性を持った片面を発熱電子部品202に貼り付けることによって当該発熱電子部品202に固着されている。
【0021】
なお、この熱伝導シート203には、銀、アルミナなどの熱伝導性の良い材料からなる粒子或は熱伝導フィラーを分散させるようにしても良い。
【0022】
さらに、熱伝導性シート203上には、送風ファン装置204が配設され、この送風ファン装置204は、アルミダイカスト製のファンケーシング205内に小型モータ206に取り付けられた送風ファン207を配設してなる。
【0023】
ファンケーシング205は、矩形状に形成され、その四隅には脚205aが突設されていて、基板201に締め付け具としてのねじ208によって基板1に締め付け固定されている。このねじ208による締め付け力により、ファンケーシング205の外下面が熱伝導性シート203に適度な押圧力でもって押し付けられ、当該熱伝導性シート203に密着する。
【0024】
従って、実使用時に、発熱電子部品202が発した熱は、熱伝導性シート203から効率よくファンケーシング205に伝えられるようになる。
【0025】
一方、送風ファン装置204において、小型モータ206により軸流型の送風ファン207が回転駆動されると、矢印Aで示すように、軸流型の送風ファン207が空気をファンケーシング205の上面の吸気口209から吸引された空気は、ファンケーシング205の下側の内壁にぶつかって流れ方向が変えられ、側面の排気口210から吐出するようになる。
【0026】
つまり、発熱電子部品202の熱はファンケーシング205に伝達され、この送風ファン207による空気流の生成によってファンケーシング205から放熱されるので、効果的に発熱電子部品202を冷却することができる。
【特許文献1】特開2002−280505号公報(第5頁、図1、図2)
【特許文献2】特開2005―333056号公報(第6頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかしながら、(特許文献1)のような従来の冷却装置100では、ヒートパイプ109は熱交換室103のほぼ中央部に案内され、受熱部111から伝達された熱を各放熱フィン107に伝達する作用があるものの、一方では、各放熱フィン107の間の隙間は、ファン室102から排気口108へ向かって流れる空気の送風路を構成しており、この送風路に対してほぼ直交する方向にそのヒートパイプ109が横断するように配置されているので、その風路抵抗を増大させる原因となっていた。
【0028】
従って、その風路抵抗を低減し、より大きな風路断面積を確保しようとすると高さ方向を大きくしなければならず、薄型化を図るのが困難なばかりでなく、ヒートパイプ109には外径が約3〜8mmで銅などの熱伝導率の高い金属製パイプが用いられその中に水やフロンなどの作動液が充填されていることから、扁平加工を施したとしても総厚が約1.0mm程度となり小型軽量化が困難であった。
【0029】
また、ヒートパイプ109は、曲げ加工が難しく形状的な自由度が小さく、例えば受熱部111から熱交換室103までを平面的に横断させる必要があり、例えば高さ方向の段差を有するような複雑な曲げ形状には適さないので、実装基板に対し高さの異なる複数の発熱電子部品を冷却するのが著しく困難であった。
【0030】
さらに、前述したように、ヒートパイプ109は、発熱電子部品112の熱を受熱部111から放熱フィン107まで熱輸送を行う有効な手段ではあるが、ヒートパイプ109はその断面形状が略円形であることに起因して、受熱側では発熱電子部品112の平坦な面に直接的に接触させることができないが受熱部111を介することによりその分熱抵抗が増大し、放熱側では放熱フィン107を構成する上下2つの片の先端辺の凹み107bに嵌め合わせるとともに、その上下2つの片の先端辺で挟圧して接合しているので、その放熱フィン107との接触面積は、そのヒートパイプの外周寸法と放熱フィン107の肉厚寸法との積で表わされる比較的小さな面積となり、ヒートパイプ109と放熱フィン107との間に十分な伝熱が行われにくいという課題もあった。
【0031】
また、(特許文献2)のような従来の冷却装置200は、まず発熱電子部品202の上表面には両面に接着性を有する熱伝導性シート203が配設され、さらにその上表面に放熱用の送風ファン装置204が配設されるが、高さ方向の寸法が大きくなり薄型化に適さず、発熱電子部品202の上方に送風ファン装置を配置するスペースを十分確保できなかった。
【0032】
さらに、発熱電子部品202から熱伝導性シート203に伝達された熱は、さらにアルミダイカスト製のファンケーシング205の外表面に伝達されるが、その熱が効率よく冷却装置200の外部に放熱されるためには、ファンケーシング205の外表面の下側中央から送風ファン207の最も効率的な熱交換が行われる送風路である排気口210の内壁面まで熱伝導される必要があるが、むしろ最も温度が上昇する部分は、小型モータ206の真下になると考えられ、所望の放熱部に効率的な熱伝導を行うのが困難であった。
【0033】
以上の理由により、発熱電子部品と熱的に接続された受熱部の熱を、送風ファンによって放熱する冷却装置においては、冷却性能の向上と小型軽量化・薄型化の両立が必要とされていたが、前述した従来の冷却装置では十分な効果が得られなかった。
【課題を解決するための手段】
【0034】
上記課題を解決するため、本発明は、送風ファンを回転自在に収容し、少なくとも一方の側面に排気口の設けられたファンケーシングと、発熱電子部品に熱的に接続される受熱部からファンケーシングへ熱輸送を行う熱伝導性シートと、を備え、発熱電子部品の熱を送風ファンによって放熱する冷却装置であって、送風ファンとファンケーシングとの間に熱伝導性シートを配設することを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、送風ファンを回転自在に収容し、少なくとも一方の側面に排気口の設けられたファンケーシングと、発熱電子部品に熱的に接続される受熱部からファンケーシングへ熱輸送を行う熱伝導性シートと、を備え、発熱電子部品の熱を送風ファンによって放熱する冷却装置であって、送風ファンとファンケーシングとの間に熱伝導性シートを配設することにより、発熱電子部品の熱が効率よく放熱され、小型軽量化・薄型化が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
請求項1記載の発明によれば、送風ファンを回転自在に収容し、少なくとも一方の側面に排気口の設けられたファンケーシングと、発熱電子部品に熱的に接続される受熱部からファンケーシングへ熱輸送を行う熱伝導性シートと、を備え、発熱電子部品の熱を送風ファンによって放熱する冷却装置であって、送風ファンとファンケーシングとの間に熱伝導性シートを配設するので、その熱輸送の経路を構成する熱伝導性シートは、例えば厚さが0.1〜1.0mm程度と薄いグラファイトシートやシリコン系ゴムシートなどの軽量で高い熱伝導性とフレキシブル性のある熱伝導性シートであり形状的な自由度も大きく、外形形状の異なる複数の構成要素のそれぞれの外形に沿って配設することができるので、小型軽量化・薄型化が容易となる。
【0037】
請求項2記載の発明によれば、熱伝導性シートをファンケーシングの内壁に密着させて、送風ファンとファンケーシングとの間を流れる空気を熱伝導性シートに接触させるので、発熱電子部品と熱的に接続された受熱部の熱が熱伝導性シートによりファンケーシングの内壁へ熱輸送され、送風ファンとファンケーシングとの間を流れる空気と熱伝導性シートとが直接的に接触するので、より熱交換が促進され効率的に放熱する作用がある。
【0038】
請求項3記載の発明によれば、送風ファンは遠心型の送風ファンであって、その半径方向と直交する方向に位置するファンケーシングの内壁に熱伝導性シートを密着させるので、回転軸方向に沿って吸入された空気は、ファンケーシング内における送風ファンとファンケーシングとの間において、送風ファンによりその半径方向に向きを変えられて送風され、その半径方向と直交する方向に位置するファンケーシングの内壁にぶつかりながら回転方向に沿って排気されることとなり、熱伝導性シートとの直接的な熱交換が促進される作用があり、冷却性能が向上する。
【0039】
請求項4記載の発明によれば、送風ファンは軸流型の送風ファンであって、その回転軸方向と直交する方向に位置するファンケーシングの内壁に熱伝導性シートを密着させるので、回転軸方向に沿って吸入された空気は、ファンケーシング内の送風ファンとファンケーシングとの間において、その回転軸方向と直交する方向に位置するファンケーシングの内壁にぶつかりながら直角方向に向きを曲げられて排気されることとなり、熱伝導性シートとの直接的な熱交換が促進される作用があり、冷却性能が向上する。
【0040】
請求項5記載の発明によれば、発熱電子部品と受熱部との間に挟み込むように熱伝導性シートを配置するので、熱伝導性シートに発熱電子部品の熱が直接伝達され、その分熱抵抗が小さくなり発熱電子部品から熱伝導性シートへ効率的に伝熱できるという作用がある。
【0041】
また、熱伝導性シートには柔軟性があるので、受熱部を発熱電子部品に押圧するように取り付ければ、より発熱電子部品と熱伝導性シートの密着性が増し、伝熱性が向上できるという作用がある。
【0042】
請求項6記載の発明によれば、受熱部を複数個備え、それぞれの受熱部の熱を送風ファンとファンケーシングとの間に熱輸送して放熱する熱伝導性シートを備えるので、熱伝導性シートが平面的な形状で自由度を有することから、例えば高さ方向の段差を有するような複雑な曲げ形状にも適応でき、実装基板に対し高さの異なる複数個の発熱電子部品を冷却できる。
【0043】
請求項7記載の発明によれば、熱伝導性シートは、少なくとも一方の面に接着性を有するので、受熱部やファンケーシングの内壁との良好な密着性が得られ、熱伝導性シートと受熱部やファンケーシングとの間の伝熱性が向上するという作用がある。
【0044】
請求項8記載の発明によれば、ファンケーシングの内壁に密着させた熱伝導性シートをカバー部材で覆うので、遠心ファンによる風圧の衝撃や回転振動などの影響により熱伝導性シートが剥がれるのを有効に防止する作用があり、より安定した放熱性能が得られる。
【0045】
請求項9記載の発明によれば、熱伝導性の良好な金属材料を用いた接続部を介して、受熱部とファンケーシングとを連設するので、冷却装置を一体的に取り扱え、電子機器への搭載が容易となるばかりでなく、発熱電子部品の熱をその接続部によってもファンケーシングに伝達できるので、より冷却性能が向上する。
【0046】
請求項10記載の発明によれば、ファンケーシング、受熱部、及び接続部を、熱伝導性の良好な金属材料を用いてプレス成形またはダイカスト成型により一体成形するので、主要な構成要素であるファンケーシング、受熱部、及びそれらを連設する接続部が同時に製作可能となり、製造コストを大きく低減できる。
【0047】
請求項11記載の発明によれば、ファンケーシングと受熱部とを連設する接続部に、熱伝導性シートを密着させるので、熱伝導性シートに対して接続部が補強材として作用し、熱伝導性シートが受熱部から送風ファンとファンケーシングとの間の空間まで所定の形状で案内させることができる。
【0048】
また、熱伝導性シートが熱伝導性の良好な金属材料を用いた接続部に密着するので、その接続部への熱拡散効果も得られより放熱性能を向上できる。
【0049】
請求項12記載の発明によれば、受熱部の縁端部をL字状断面となるように折り曲げるので、冷却装置を電子機器に搭載する際には、良好な熱的な接続を行うため受熱部を発熱電子部品に押圧するように取り付けるが、その押圧力によって受熱部が変形して平坦度が悪くなり、発熱電子部品と受熱部との間または発熱電子部品と熱伝導性シートとの間の密着性が低下するのを防止する作用がある。
【0050】
請求項13記載の発明によれば、ファンケーシングの排気口側に放熱フィンを設け、その放熱フィンの表面に沿って熱伝導性シートを密着させるので、送風ファンとファンケーシングとの間に配設された熱伝導性シートとファンケーシング内を流れる空気との接触面積がより増大して放熱性能を向上できる。
【0051】
請求項14記載の発明によれば、請求項1〜13いずれか1項に記載の冷却装置を備えたので、発熱電子部品に対する冷却性能が向上し、より高速なクロック周波数で駆動するMPUやCPUなどの発熱電子部品を搭載した場合の発熱対策が容易になることから、その電子機器の高性能化をより促進できる。
【0052】
また、冷却装置の小型軽量化・薄型化により、電子機器の筐体内でのレイアウト設計が容易となるばかりでなく、その冷却装置が搭載される電子機器の小型軽量化や薄型化への対応も容易となる。
【0053】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0054】
(実施の形態1)
図1(a)は本発明の実施の形態1における冷却装置の斜視図で、図1(b)は(a)で示した冷却装置を反転させて見た斜視図で、図2は図1(b)で示した冷却装置の分解斜視図で、図3(a)は図2における下側ファンケーシングから受熱部までの接続部分のA−A矢視部分断面図で、図3(b)は図2における受熱部のB−B矢視部分断面図で、図4は、図2における下側ファンケーシングA−A矢視断面図の変形例を示す図である。
【0055】
まず、図1(a)の本発明の実施の形態1における冷却装置の斜視図で示したように、冷却装置1の中央部には、遠心型の送風ファン2を回転自在に収容し、一方の側面に矩形形状の排気口3の設けられたファンケーシング4が配設されていて、そのファンケーシング4の上下方向に設けられた吸気口5より吸入した空気は、矢印で示した方向に回転する送風ファン2の遠心方向へ向きを変えられ、送風ファン2とファンケーシング4との間の空間を形成する送風路6を通過して排気口3から排気される。
【0056】
一方、そのファンケーシング4の側面には、異なる2方向に接続部7が延設され、その接続部7を介してプレート形状の2つの受熱部8が並列に連設されている。
【0057】
次に、図1(b)は図1(a)で示した冷却装置1を反転させて見た斜視図で、ファンケーシング4の上側の吸気口5には、その外周側より3本のスポーク9が略均等間隔で横断的に配置され、それらのスポーク9には送風ファン2をファンケーシング4の内側の中央に保持するためのモータ保持部10が連結されている。
【0058】
また、詳細には後述するが、受熱部8を2つ備え、それぞれの受熱部8の熱を送風ファン2とファンケーシング4との間の空間を形成する送風路6に熱輸送して放熱する熱伝導性シート11を備えているので、その熱伝導性シート11が平面的な形状で自由度を有することから、例えば高さ方向の段差を有するような複雑な曲げ形状にも適応でき、実装基板に対し高さの異なる複数個の発熱電子部品を冷却できる。
【0059】
そして、それぞれの受熱部8には、例えば厚さが0.1〜1.0mm程度と薄いグラファイトシートやシリコン系ゴムシートなどの軽量で高い熱伝導性とフレキシブル性のある熱伝導性シート11が、少なくとも冷却しようとする発熱電子部品(図示せず)との接触面積よりも大きくなるようなサイズにせん断加工されて貼り付けられているが、その熱伝導性シート11の下面は接着性を有しているので、受熱部8との良好な密着性が得られ、熱伝導性シート11と受熱部8との間の伝熱性が向上するという作用がある。
【0060】
例えば、その熱伝導性シート11が、高分子フィルムを熱分解によりグラファイト化するという方法で作られた単結晶に近い構造で厚みが約0.1mmの高配向性グラファイトであれば、面方向の熱伝導率は600〜800W/(m・K)と銅の約2倍、アルミニウムの約3倍となる高い熱伝導率を有し、密度は1g/cm3と銅の1/9、アルミニウムの1/3となる軽さを有している。
【0061】
また、その熱伝導性シート11の下側の面はアクリル系両面テープやアクリル系接着剤を用いて粘着加工処理が施され接着性を有しているので、それらも含めた合成熱伝導率はグラファイト単体と比較して熱伝導率が約17〜25%程度減少するが、それでも銅やアルミニウムと比較すると十分な熱伝導性を有している。
【0062】
そして、発熱電子部品と受熱部8との間に挟み込まれるように熱伝導性シート11が配置されているので、その熱伝導性シート11に発熱電子部品の熱が伝達され、その分熱抵抗が小さくなり発熱電子部品から熱伝導性シート11へ効率的に伝熱できるという作用がある。
【0063】
また、熱伝導性シート11には柔軟性があるので、略四角形状である受熱部8の対角線上のコーナーに位置する2箇所の取り付け穴8b(図2参照)のそれぞれにビスを挿入した後、それらのビスをその発熱電子部品の実装された基板のビス穴に螺着させて、その受熱部8を発熱電子部品に押圧するように取り付ければ、より発熱電子部品と熱伝導性シート11の密着性が増し、伝熱性が向上できるという作用がある。
【0064】
さらに、熱伝導性シート11は、前述したように受熱部8とファンケーシング4とを連設する接続部7の上面に密着するように配設され、ファンケーシング4の内壁の側面側まで配設されている。そして、その熱伝導性シート11は破線で示したカバー部材12で覆われているが、そのカバー部材12については、詳細を後述する。
【0065】
以上のような構成で、送風ファン2を回転自在に収容し、少なくとも一方の側面に排気口の設けられたファンケーシング4と、発熱電子部品に熱的に接続されるべき2つの受熱部8からファンケーシング4へ熱輸送を行う熱伝導性シート11と、を備え、送風ファン2とファンケーシング4との間の送風路6に熱伝導性シート11を配設することにより、発熱電子部品から受熱した熱が熱伝導性シート11により送風路6へ熱輸送され、その送風路6を流れる空気と熱伝導性シート11とが直接的に接触しているので、発熱電子部品の熱が効率よく放熱され、小型軽量化・薄型化が容易となる。
【0066】
次に、図2は図1(b)で示した冷却装置1の分解斜視図で、前述したファンケーシング4を上側ファンケーシング4uと下側ファンケーシング4dとに分離した状態を示している。
【0067】
この図でも明らかなように、熱電性シート11の一方端が前述した送風路6に配設されて、送風ファン2の半径方向と直交する方向に位置する下側ファンケーシング4dの内壁4iの側面側に密着していることを示している。
【0068】
より詳細には、それぞれの熱伝導性シート11は、少なくとも冷却しようとする発熱電子部品(図示せず)と接触する面積よりも大きくなるようなサイズで、上方向から見てL字状にせん断加工され、それぞれの受熱部8の中央部において密着しているが、その一方端は、略中央に折曲げ部を有する接続部7の上面を経て、さらに下側ファンケーシング4dの上端部で折曲げられ、その下側ファンケーシング4dの内壁4iの側面側に沿うように垂下させられて、内壁4iの底面側に届く手前で止められる位置まで配設されている。
【0069】
つまり、ファンケーシング4の上下方向に設けられた上側吸気口5a及び下側吸気口5bより吸入した空気は、回転する送風ファン2の遠心方向へ向きを変えられ図1で示した送風路6を流れて、排気口3から排気されるが、その送風路6を流れる空気を熱伝導性シート11に接触させるように、熱伝導性シート11を下側ファンケーシング4dの内壁4iの側面側に密着させている。
【0070】
また、前述したように、熱伝導性シート11の下面は接着性を有しているので、ここでも下側ファンケーシング4dの内壁4iとの良好な密着性が得られ、熱伝導性シート11と下側ファンケーシング4dとの間の伝熱性が向上するという作用がある。
【0071】
ここで、遠心型の送風ファン2の回転軸方向に沿って上側吸気口5a、下側吸気口5bのそれぞれより吸入された空気は、前述したようにファンケーシング4内の送風路6(図1の(a)、(b)参照)において、遠心型の送風ファン2によりその半径方向に向きを変えられて送風され、その半径方向と直交する方向に位置する下側ファンケーシング4dの内壁4iの側面側にぶつかりながら回転方向に沿って排気されることとなり、熱伝導性シート11との直接的な熱交換が促進される作用があり、冷却性能が向上する。
【0072】
また、下側ファンケーシング4dの内壁4iの側面側に密着させた熱伝導性シート11の上面とその外側までの破線で示した所定の領域を、PET、ABS、PS、PE、PPなどのプラスティック基材の粘着シートなどのカバー部材12で覆うことにより、遠心型の送風ファン2による風圧の衝撃や回転振動などの影響により熱伝導性シート11が剥がれるのを有効に防止する作用があり、より安定した冷却性能が得られる。
【0073】
一方、この図からも分かるように、下側ファンケーシング4d、受熱部8、及び接続部7は、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金などのような熱伝導性の良好な金属材料を用いてプレス成形により一体成形されているので、主要な構成要素である下側ファンケーシング4d、受熱部8及びそれらを連設する接続部7が同時に製作可能となり、製造コストを大きく低減できる。
【0074】
そして、そのような熱伝導性の良好な金属材料を用いた接続部7を介して、2つの受熱部8と下側ファンケーシング4dとが並列的に連設されているので、この冷却装置1を一体的に取り扱え、電子機器への搭載が容易となるばかりでなく、発熱電子部品の熱をその接続部7によっても下側ファンケーシング4dに伝達できるので、より冷却性能が向上する。
【0075】
さらに、下側ファンケーシング4dと受熱部8とを連設する接続部7に、熱伝導性シート11を密着させているので、熱伝導性シート11に対して接続部7が補強材として作用し、熱伝導性シート11を受熱部8から送風路6内まで所定の形状で案内することができる。
【0076】
また、熱伝導性シート11が熱伝導性の良好な金属材料を用いた接続部7に密着するので、その接続部7への熱拡散効果も得られより放熱性能を向上できる。
【0077】
次に、図3(a)は図2における下側ファンケーシング4dから受熱部8までの接続部分のA−A矢視部分断面図で、2点鎖線で上側ファンケーシング4uも加えて示しているが、受熱部8、接続部7、及び下側ファンケーシング4dのそれぞれの外形に沿って熱伝導性シート11が配設されている状態を示している。
【0078】
前述したように、熱伝導性シート11は、少なくとも冷却しようとする発熱電子部品(図示せず)と接触する面積よりも大きくなるようなサイズで、上方向から見てL字状にせん断加工され、受熱部8の中央部において密着しているが、その一方端は、略中央に折曲げ部を有する接続部7の上面を経て、さらに下側ファンケーシング4dの上端部で折曲げられ、その下側ファンケーシング4dの内壁4iの側面側に沿うように垂下させられて、内壁4iの底面側に届く手前で止められる位置まで配設されている。
【0079】
そして、ファンケーシング4の上下方向に設けられた上側吸気口5a及び下側吸気口5bより吸入した空気は、回転する送風ファン2の遠心方向へ向きを変えられ送風路6を流れて、排気口3から排気されるが、その送風路6を流れる空気を熱伝導性シート11に接触させるように、熱伝導性シート11を下側ファンケーシング4dの内壁4iの側面側に密着させている。
【0080】
また、下側ファンケーシング4dの上端部においては、上側ファンケーシング4uが、熱伝導性シート11とその上面に接着されたカバー部材12とを挟み込むように取り付けられている。
【0081】
このように、熱輸送の経路を構成する熱伝導性シート11は、厚さが0.1〜1.0mm程度のシート状の平面形状であり形状的な自由度も大きく、形状の異なる複数の構成要素のそれぞれの外形に沿って配設することができるので、小型軽量化・薄型化が容易となる。
【0082】
また、発熱電子部品から受熱した熱が熱伝導性シート11により送風路6へ熱輸送され、その送風路6を流れる空気と熱伝導性シート11とが前述したカバー部材12に開けられたスリット状の開口部12aで接触しているので、より熱交換が促進され効率的に放熱する作用がある。
【0083】
一方、図3(b)は図2における受熱部8のB−B矢視部分断面図で、受熱部8の縁端部8aがL字状断面となるように下側方向へプレス成形されて折り曲げられていることを示している。
【0084】
これは、冷却装置1を電子機器の搭載する際には、2点鎖線で示した発熱電子部品13との良好な熱的な接続を行うため、略四角形状である受熱部8の対角線上のコーナーに位置する2箇所の取り付け穴8b(図2参照)のそれぞれにビスを挿入した後、それらのビスをその発熱電子部品13の実装された基板のビス穴に螺着させて、受熱部8を発熱電子部品13に押圧するように取り付けるが、その押圧力によって受熱部8が変形して平坦度が悪くなり、発熱電子部品13と熱伝導性シート11との間の密着性が低下するのを防止する作用がある。
【0085】
以上のような構成とすることで、発熱電子部品13と熱的に接続された受熱部8の熱が熱伝導性シート11によりファンケーシング4内の送風路6へ熱輸送され、その送風路6を流れる空気と熱伝導性シート11とが直接的に接触するので、より熱交換が促進され効率的に放熱する作用がある。
【0086】
さらに、図4(a)は、図2における下側ファンケーシング4dのA−A矢視部分断面図の変形例で、2点鎖線で示した上側ファンケーシング14uと下側ファンケーシング14dとを組み合わして構成されたファンケーシング14に軸流型の送風ファン(図示せず)が回転自在に収容された場合には、その回転軸方向と直交する方向に位置する下側ファンケーシング14dの内壁14iの底面側に熱伝導性シート15が密着しているので、回転軸方向に沿って吸入された空気は、ファンケーシング14内の送風路16において、その回転軸方向と直交する方向に位置する下側ファンケーシング14dの内壁14iの底面側にぶつかりながら直角方向に向きを曲げられて排気されることとなり、熱伝導性シート15との直接的な熱交換が促進される作用があり、冷却性能が向上する。
【0087】
なお、この場合においては、軸流型の送風ファンを用いているので、一方向からの吸入となり、上側ファンケーシング14uのみに吸気口(図示せず)が設けられており、下側ファンケーシング14dの内壁14iの底面側にはその吸入した空気がぶつかるので、吸気口が設けられていない。
【0088】
また、図4(b)は、図2における下側ファンケーシング4dのA−A矢視部分断面図の別の変形例で、2点鎖線で示した上側ファンケーシング17uと下側ファンケーシング17dとを組み合わして構成されたファンケーシング17の排気口側に、排気方向と略平行に並べられた複数の放熱フィン18が設けられ、それらの放熱フィン18の表面に沿って熱伝導性シート19が密着しているので、ファンケーシング17内の送風路20に配設された熱伝導性シート19と送風路20を流れる空気との接触面積がより増大して放熱性能を向上できる。
【0089】
(実施の形態2)
図5(a)は本発明の実施の形態2における冷却装置の斜視図で、図5(b)は(a)で示した冷却装置を反転させて見た斜視図で、図6は図5(b)で示した冷却装置の分解斜視図である。
【0090】
まず、図5(a)の本発明の実施の形態2における冷却装置31の斜視図で示したように、冷却装置31の端部には、遠心型の送風ファン32を回転自在に収容し、一方の側面に矩形形状の排気口33の設けられたファンケーシング34が配設されていて、そのファンケーシング34の上下方向に設けられた吸気口35より吸入した空気は、矢印で示した方向に回転する送風ファン32の遠心方向へ向きを変えられ、送風ファン32とファンケーシング34との間の空間を形成する送風路36を通過して排気口33から排気される。
【0091】
一方、そのファンケーシング34の一方の側面には、第1の接続部37が延設され、その第1の接続部37を介してプレート形状の第1の受熱部38が連設されている。
【0092】
そして、その第1の受熱部38には、第2の接続部39が延設され、その第2の接続部39を介して同じくプレート形状の第2の受熱部40が連設されている。
【0093】
以上のように、ファンケーシング34に対して、第1の受熱部38と第2の受熱部40が直列に連設されている。
【0094】
次に、図5(b)は図5(a)で示した冷却装置31を反転させて見た斜視図で、ファンケーシング34の上側の吸気口35には、その外周側より3本のスポーク41が略均等間隔で横断的に配置され、それらのスポーク41には送風ファン32をファンケーシング34の内側の中央に保持するためのモータ保持部42が連結されている。
【0095】
そして、それぞれの受熱部38、40には、例えば厚さが0.1〜1.0mm程度と薄いグラファイトシートやシリコン系ゴムシートなどの軽量で高い熱伝導性とフレキシブル性のある熱伝導性シート43が少なくとも冷却しようとする発熱電子部品(図示せず)との接触面積よりも大きくなるようなサイズにせん断加工されて貼り付けられているが、その熱伝導性シート43の下面は接着性を有しているので、第1の受熱部38や第2の受熱部40との良好な密着性が得られ、熱伝導性シート43との伝熱性が向上するという作用がある。
【0096】
このように第1の受熱部38と第2の受熱部40の熱を送風路36に熱輸送して放熱する熱伝導性シート43を備えているので、熱伝導性シート43が平面的な形状で自由度を有することから、例えば高さ方向の段差を有するような複雑な曲げ形状にも適応でき、実装基板に対し高さの異なる2つの発熱電子部品を冷却できる。
【0097】
そして、それら発熱電子部品とそれぞれの受熱部38、40との間に挟み込まれるように熱伝導性シート43が配置されているので、熱伝導性シート43に発熱電子部品の熱が伝達され、その分熱抵抗が小さくなり発熱電子部品から熱伝導性シート43へ効率的に伝熱できるという作用がある。
【0098】
また、熱伝導性シート43には柔軟性があるので、略四角形状である受熱部38、40の対角線上のコーナーに位置する2箇所の取り付け穴38a、40aのそれぞれにビスを挿入した後、それらのビスをその発熱電子部品の実装された基板のビス穴に螺着させて、それらの受熱部38、40を発熱電子部品に押圧するように取り付ければ、より発熱電子部品と熱伝導性シート43の密着性が増し、伝熱性が向上できるという作用がある。
【0099】
さらに、熱伝導性シート43は、前述したように受熱部38、40とファンケーシング34とを連設するそれぞれの接続部37、39の上面に沿って密着するように配設され、ファンケーシング34の内壁まで配設されている。そして、その熱伝導性シートは破線で示したカバー部材44で覆われているが、そのカバー部材44については、詳細を後述する。
【0100】
以上のような構成で、送風ファン32を回転自在に収容し、少なくとも一方の側面に排気口の設けられたファンケーシング34と、発熱電子部品に熱的に接続されるべき2つの受熱部38、40からファンケーシング34へ熱輸送を行う熱伝導性シート43と、を備え、送風ファン32とファンケーシング34との間の送風路36に熱伝導性シート43を配設することにより、発熱電子部品から受熱した熱が熱伝導性シート43により送風路36へ熱輸送され、その送風路36を流れる空気と熱伝導性シート43とが直接的に接触しているので、発熱電子部品の熱が効率よく放熱され、小型軽量化・薄型化が容易となる。
【0101】
そして、図6は図5(b)で示した冷却装置31の分解斜視図で、上側ファンケーシング34uと下側ファンケーシング34dとを分離した状態を示している。
【0102】
ここで、熱伝導性シート43が、下側ファンケーシング34dの内壁34iの側面側まで配設されて、送風ファン32の半径方向と直交する方向に位置する下側ファンケーシング34dの内壁34iの側面側に密着していることを示している。
【0103】
また、熱伝導性シート43は、少なくとも冷却しようとする発熱電子部品(図示せず)と接触する面積よりも大きくなるようなサイズで、上方向から見てL字状にせん断加工され、それぞれの受熱部38,40の中央部において密着しているが、その一方端は、略中央に折曲げ部を有する第1の接続部37の上面を経て、さらに下側ファンケーシング34dの上端部で折曲げられ、その下側ファンケーシング34dの内壁34iの側面側に沿うように垂下させられて、内壁34iの底面側に届く手前で止められる位置まで配設されている。
【0104】
つまり、ファンケーシング34の上下方向に設けられた上側吸気口35a及び下側吸気口35bより吸入した空気は、回転する送風ファン32の遠心方向へ向きを変えられ図5で示した送風路36を流れて、排気口33から排気されるが、その送風路36を流れる空気を熱伝導性シート43に接触させるように、熱伝導性シート43を下側ファンケーシング34dの内壁34iの側面側に密着させている。
【0105】
また、前述したように、熱伝導性シート43の下面は接着性を有しているので、ここでも下側ファンケーシング34dの内壁34iとの良好な密着性が得られ、熱伝導性シート43と下側ファンケーシング34dとの間の伝熱性が向上するという作用がある。
【0106】
ここで、遠心型の送風ファン32の回転軸方向に沿って上側吸気口35a、下側吸気口35bのそれぞれより吸気された空気は、前述したようにファンケーシング34内の送風路36において、遠心型の送風ファン32によりその半径方向に向きを変えられて送風され、その半径方向と直交する方向に位置する下側ファンケーシング34dの内壁34iの側面側にぶつかりながら回転方向に沿って排気されることとなり、熱伝導性シート43との直接的な熱交換が促進される作用があり、冷却性能が向上する。
【0107】
また、下側ファンケーシング34dの内壁34iの側面側に密着させた熱伝導性シート43の破線で示した所定の領域を、前述したように粘着シートなどのカバー部材44で覆うことにより、遠心型の送風ファン32による風圧の衝撃や回転振動などの影響により熱伝導性シート43が剥がれるのを有効に防止する作用があり、より安定した冷却性能が得られる。
【0108】
そして、発熱電子部品から受熱した熱が熱伝導性シート43により送風路36へ熱輸送され、その送風路36を流れる空気と熱伝導性シート43とが前述したカバー部材44に開けられたスリット状の開口部44aで接触しているので、より熱交換が促進され効率的に放熱する作用がある。
【0109】
一方、この図からも分かるように、下側ファンケーシング34d、第1の受熱部38、第2の受熱部40、第1の接続部37、及び第2の接続部39は、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金などのような熱伝導性の良好な金属材料を用いてプレス成形により一体成形されているので、主要な構成要素である下側ファンケーシング34d、第1の受熱部38、第2の受熱部40、第1の接続部37、及び第2の接続部39が同時に製作可能となり、製造コストを大きく低減できる。
【0110】
そして、そのような熱伝導性の良好な金属材料を用いた第1の接続部37や第2の接続部39を介して、第1の受熱部38と第2の受熱部39と下側ファンケーシング34dとが直列的に連設されているので、この冷却装置31を一体的に取り扱え、電子機器への搭載が容易となるばかりでなく、発熱電子部品の熱が第1の接続部37と第2の接続部39によっても下側ファンケーシング34dに伝達できるので、より冷却性能が向上する。
【0111】
さらに、第1の接続部37と第2の接続部39に、熱伝導性シート43を密着させているので、熱伝導性シート43に対してそれぞれの接続部37、39が補強材として作用し、熱伝導性シート43を第2の受熱部40から送風路36内まで所定の形状で案内することができる。
【0112】
また、熱伝導性シート43が熱伝導性の良好な金属材料を用いたそれぞれの接続部37、39に密着するので、熱拡散効果も得られより放熱性能を向上できる。
【0113】
なお、熱伝導性シート43、カバー部材44、及びそれらの配設状態などについては、実施の形態1と同様なので、詳細な説明は省略するが、以上のような構成とすることで、発熱電子部品と熱的に接続された第1の受熱部38及び第2の受熱部40の熱が熱伝導性シート43によりファンケーシング34内の送風路36へ熱輸送され、その送風路36を流れる空気と熱伝導性シート43とが直接的に接触するので、より熱交換が促進され効率的に放熱する作用がある。
【0114】
(実施の形態3)
図7(a)は、本発明の実施の形態3における電子機器の筐体内部の変形例を示す図で、電子機器50は、操作部を有する本体装置51の端部のヒンジ機構52に開閉型の液晶表示装置53が回動支持された構成のノート型PCである。
【0115】
この電子機器50の本体装置51の筐体内部に配置された回路基板54の下側面には、冷却されるべき2つの発熱電子部品55、56が実装されていて、さらにそれらを同時に冷却する冷却装置57が搭載されている状態を示している。
【0116】
図7(a)における冷却装置57は、実施の形態1で説明した構成とほぼ同一のもので、回路基板54に対して高さの異なる発熱電子部品55、56のそれぞれに冷却装置57の受熱部58、59が熱的に接続されるように回路基板54の下面側に配置されている。
【0117】
そして、実施の形態1で説明したように、この冷却装置57は、送風ファン60を回転自在に収容するファンケーシング61と、受熱部58、59からファンケーシング61へ熱輸送を行う熱伝導性シート(図示せず)とを備え、遠心型の送風ファン60とファンケーシング61との間の送風路にその熱伝導性シートが配設されているので、発熱電子部品55、56と熱的に接続された受熱部58、59の熱が熱伝導性シートによりファンケーシング61内の送風路へ熱輸送され、その送風路を流れる空気と熱伝導性シートとが直接的に接触するので、より熱交換が促進され効率的に放熱する作用がある。
【0118】
ここで、電子機器50の本体装置51の底面には、ファンケーシング61の取り付け位置に対応する場所に複数個の通風口62が設けられているので、送風ファン60の吸気作用によって、その電子機器50の底面側外部の冷えた空気が、矢印で示したように通風口62を通過してファンケーシング61内の送風路に吸入され、受熱部58、59より熱輸送された熱が熱伝導性シートやファンケーシング61と熱交換して、さらに図示しない排気口を通過して、電子機器50の外部に排気される。
【0119】
また、図7(b)も、本発明の実施の形態3における電子機器の筐体内部の変形例を示す図で、電子機器70は、操作部を有する本体装置71の端部のヒンジ機構72に開閉型の液晶表示装置73が回動支持された構成のノート型PCである。
【0120】
この電子機器70の本体装置71の筐体内部に配置された回路基板74の下側面には、冷却されるべき2つの発熱電子部品75、76が実装されていて、さらにそれらを同時に冷却する冷却装置77が搭載されている状態を示している。
【0121】
図7(b)における冷却装置77は、実施の形態2で説明した構成とほぼ同一のもので、回路基板74に対して高さの異なる発熱電子部品75、76のそれぞれに冷却装置77の受熱部78、79が熱的に接続されるように回路基板74の下面側に配置されている。
【0122】
そして、実施の形態2で説明したように、この冷却装置77は、送風ファン80を回転自在に収容するファンケーシング81と、受熱部78、79からファンケーシング81へ熱輸送を行う熱伝導性シート(図示せず)とを備え、遠心型の送風ファン80とファンケーシング81との間の送風路にその熱伝導性シートが配設されているので、発熱電子部品75、76と熱的に接続された受熱部78、79の熱が熱伝導性シートによりファンケーシング81内の送風路へ熱輸送され、その送風路を流れる空気と熱伝導性シートとが直接的に接触するので、より熱交換が促進され効率的に放熱する作用がある。
【0123】
ここで、電子機器70の本体装置71の底面には、ファンケーシング81の取り付け位置に対応する場所に複数個の通風口82が設けられているので、送風ファン80の吸気作用によって、その電子機器70の底面側外部の冷えた空気が、矢印で示したように通風口82を通過してファンケーシング81内の送風路に吸入され、受熱部78、79より熱輸送された熱が熱伝導性シートやファンケーシング81と熱交換して、さらに図示しない排気口を通過して、電子機器70の外部に排気される。
【0124】
以上のような構成にすることにより、発熱電子部品75、76に対する冷却性能が向上し、より高速なクロック周波数で駆動するMPUやCPUなどの発熱電子部品75、76を搭載した場合の発熱対策が容易になることから、その電子機器70の高性能化をより促進できる。
【0125】
また、冷却装置77の小型軽量化・薄型化により、電子機器70の筐体内でのレイアウト設計が容易となるばかりでなく、その冷却装置77が搭載される電子機器70の小型軽量化や薄型化への対応も容易となる。
【0126】
なお、以上の実施の形態の説明において、構成要素の寸法、数量、材質、形状、その相対的な配置などは、特にそれらに限定される旨の記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なるひとつの実施の形態の説明に過ぎず、様々な変形が可能である。
【0127】
例えば、熱伝導性シートを覆うカバー部材は、軽量化や加工性の点で前述したような粘着シートを用いるのが好ましいが、硬質な樹脂成型品や金属加工品などを用いてもよいし、カバー部材によって熱伝導性シートを覆う領域についても、十分な放熱性が得られればその全体を覆ってもよいし、その一部の領域であってもよい。
【0128】
また、ファンケーシング、受熱部、及び接続部を、熱伝導性の良好な金属材料を用いてプレス成形又はダイカスト成型により一体成形するのが製造コストを低減でき好ましいが、電子機器の筐体内でのレイアウト設計上困難である場合などには、それらの構成要素を別体で構成しても構わない。
【0129】
また、主要な構成要素であるファンケーシング、受熱部、及びそれらを連設する接続部を、熱伝導性の良好な金属材料を用いてプレス成形又はダイカスト成型により一体成形するのが製造コストを低減でき好ましいが、電子機器の筐体内でのレイアウト設計上困難である場合などには、それらを別体で製作して、組み立て加工をしても構わない。
【0130】
さらに、ファンケーシング、受熱部、及びそれらを連設する接続部の材料として、熱伝導性の良好な金属材料を選択すれば、それらの部材での熱拡散効果が得られ放熱性能を向上できて好ましいが、所望の冷却性能が得られより軽量化を求める場合などには、それらの構成要素を樹脂材料で製作してもよく、接続部を介した放熱効果を求める必要がない場合には、その接続部を有しない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の冷却装置は、例えばノートPC、携帯電話、PDA等の薄型・軽量のモバイル型の電子機器に実装されたMPUなどの発熱電子部品の冷却装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】(a)本発明の実施の形態1における冷却装置の斜視図、(b)(a)で示した冷却装置を反転させて見た斜視図
【図2】図1(b)で示した冷却装置の分解斜視図
【図3】(a)図2における下側ファンケーシングから受熱部までの接続部分のA−A矢視部分断面図、(b)図2における受熱部のB−B矢視部分断面図
【図4】図2における下側ファンケーシングA−A矢視断面図の変形例を示す図
【図5】(a)本発明の実施の形態2における冷却装置の斜視図、(b)は(a)で示した冷却装置を反転させて見た斜視図
【図6】図5(b)で示した冷却装置の分解斜視図
【図7】本発明の実施の形態3における電子機器の筐体内部の変形例を示す図
【図8】(a)従来の技術である(特許文献1)に記載されている冷却装置の斜視図、(b)同冷却装置を反転させて内部を示した斜視図
【図9】従来の技術である(特許文献2)に記載されている冷却装置の要部断面図
【符号の説明】
【0133】
1 冷却装置
2 送風ファン
3 排気口
4 ファンケーシング
4d 下側ファンケーシング
4i 内壁
4u 上側ファンケーシング
5 吸気口
5a 上側吸気口
5b 下側吸気口
6 送風路
7 接続部
8 受熱部
8a 縁端部
8b 取り付け穴
9 スポーク
10 モータ保持部
11 熱伝導性シート
12 カバー部材
12a 開口部
13 発熱電子部品
14 ファンケーシング
14d 下側ファンケーシング
14i 内壁
14u 上側ファンケーシング
15 熱伝導性シート
16 送風路
17 ファンケーシング
17d 下側ファンケーシング
17u 上側ファンケーシング
18 放熱フィン
19 熱伝導性シート
20 送風路
31 冷却装置
32 送風ファン
33 排気口
34 ファンケーシング
34d 下側ファンケーシング
34i 内壁
34u 上側ファンケーシング
35 吸気口
35a 上側吸気口
35b 下側吸気口
36 送風路
37 第1の接続部
38 第1の受熱部
38a 取り付け穴
39 第2の接続部
40 第2の受熱部
40a 取り付け穴
41 スポーク
42 モータ保持部
43 熱伝導性シート
44 カバー部材
44a 開口部
50 電子機器
51 本体装置
52 ヒンジ機構
53 液晶表示装置
54 回路基板
55 発熱電子部品
56 発熱電子部品
57 冷却装置
58 受熱部
59 受熱部
60 送風ファン
61 ファンケーシング
62 通風口
70 電子機器
71 本体装置
72 ヒンジ機構
73 液晶表示装置
74 回路基板
75 発熱電子部品
76 発熱電子部品
77 冷却装置
78 受熱部
79 受熱部
80 送風ファン
81 ファンケーシング
82 通風口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風ファンを回転自在に収容し、少なくとも一方の側面に排気口の設けられたファンケーシングと、発熱電子部品に熱的に接続される受熱部から前記ファンケーシングへ熱輸送を行う熱伝導性シートと、を備え、発熱電子部品の熱を送風ファンによって放熱する冷却装置であって、前記送風ファンと前記ファンケーシングとの間に前記熱伝導性シートを配設することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記熱伝導性シートを前記ファンケーシングの内壁に密着させて、前記送風ファンと前記ファンケーシングとの間を流れる空気を前記熱伝導性シートに接触させることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記送風ファンは遠心型の送風ファンであって、その半径方向と直交する方向に位置する前記ファンケーシングの内壁に前記熱伝導性シートを密着させることを特徴とする請求項2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記送風ファンは軸流型の送風ファンであって、その回転軸方向と直交する方向に位置する前記ファンケーシングの内壁に前記熱伝導性シートを密着させることを特徴とする請求項2記載の冷却装置。
【請求項5】
前記発熱電子部品と前記受熱部との間に挟み込むように前記熱伝導性シートを配置することを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項6】
前記受熱部を複数個備え、それぞれの受熱部の熱を前記送風ファンと前記ファンケーシングとの間に熱輸送して放熱する熱伝導性シートを備えることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項7】
前記熱伝導性シートは、少なくとも一方の面に接着性を有することを特徴とする請求項2記載の冷却装置。
【請求項8】
前記ファンケーシングの内壁に密着させた前記熱伝導性シートをカバー部材で覆うことを特徴とする請求項2記載の冷却装置。
【請求項9】
熱伝導性の良好な金属材料を用いた接続部を介して、前記受熱部と前記ファンケーシングとを連設することを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項10】
前記ファンケーシング、前記受熱部、及び前記接続部を、熱伝導性の良好な金属材料を用いてプレス成形またはダイカスト成型により一体成形することを特徴とする請求項9記載の冷却装置。
【請求項11】
前記ファンケーシングと前記受熱部とを連設する前記接続部に、前記熱伝導性シートを密着させることを特徴とする請求項9記載の冷却装置。
【請求項12】
前記受熱部の縁端部をL字状断面となるように折り曲げることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項13】
前記ファンケーシングの前記排気口側に放熱フィンを設け、その放熱フィンの表面に沿って前記熱伝導性シートを密着させることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項14】
請求項1〜13いずれか1項に記載の冷却装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−281214(P2007−281214A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105970(P2006−105970)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】