説明

冷却装置

【課題】被処理物をエアによって冷却する冷却装置において低コストで構築することができ、結露の発生を防止することができる冷却装置を提供する。
【解決手段】室内空気が温度調節された温調空気となっている冷却室10と、冷却室10内に被処理物40を搬入し及び冷却室から被処理物40を搬出して、被処理物40を搬送する搬送コンベア12と、冷却室内の温調空気を吸引して圧送させる送風機14と、送風機14によって送り出された温調空気を支持手段によって支持された被処理物の上方及び下方に案内するダクト16b、16cと、ガイド手段によって案内された温調空気を被処理物に吹き付ける吹き出しボックス22と、を備え、温調空気を上方及び下方から被処理物40に同時に吹き付けて冷却を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物をエアによって冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理物をエアによって冷却する装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。これによれば、被処理物が載置された無端ネットコンベアを運行させるように装置し防熱された冷却室内に、冷却器を配置しており、冷却器側に開口する一側のダクトの先端をネットコンベアの上段に開口させて、その先端面に多数の通風孔を設けており、同様に、他側のダクトの先端をネットコンベアの下段に開口させて、その先端面に多数の通風孔を設けている。そして、冷却器に付設したファンの回転方向を随時切り替えることにより、冷風が上下両方から交互に循環できるようにしている。即ち、冷却エアを上から下へと下から上へと交互に随時風向きを切り替えて循環させることで、冷却エアを上下方向から吹き付けることで、急速な冷却を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭49−128339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されるように多くの冷却装置では、冷却エアを循環させるための循環路をダクト等によって形成している。そして、その循環路内に被処理物によって加熱された冷却エアと熱交換する冷却器を配置する構成をとっているために、その設備の構築に費用がかかるという問題がある。また、冷媒が流れる冷却器が場所を大きく占有するために、設備が大型化するという問題がある。
【0005】
また、ダクト内の温度が、ダクト外の温度よりも低く、且つその温度差が大きいために、通風孔周辺に結露が発生し、被処理物への異物混入のおそれもあるという問題がある。
【0006】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、低コストで構築することができ、結露の発生を防止することができる冷却装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明による冷却装置は、
室内空気が温度調節された温調空気となっている冷却室と、
冷却室内に被処理物を搬入し及び冷却室から被処理物を搬出する搬入出手段と、
冷却室内において、被処理物を支持する支持手段と、
冷却室内の温調空気を吸引して圧送させる送風機と、
送風機によって送り出された温調空気を支持手段によって支持された被処理物の上方及び下方に案内するガイド手段と、
ガイド手段によって案内された温調空気を被処理物に吹き付ける吹き付け手段と、
を備え、温調空気を上方及び下方から被処理物に同時に吹き付けて冷却を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の冷却装置において、前記搬入出手段と前記支持手段とが共通のコンベア装置で構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の冷却装置において、前記支持手段は、被処理物を支持する支持面が通気性を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の冷却装置において、前記送風機は、冷却室外部に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷却室の温度調節された温調空気を用いて被処理物の冷却を行うために、冷却室に冷却器を配置する必要はなく、従って、簡単に且つ低コストで構成することができる。
【0012】
また、冷却室の室内空気とほぼ等しい温度となった温調空気を吹き付け手段が被処理物へ吹き付けるために、その吹き付け手段の周辺に結露が発生するおそれがなく、従って、ガイド手段及び吹き付け手段を断熱する必要はなく、簡単に且つ低コストで構成することができると共に、被処理物への異物混入も防ぐことができる。
【0013】
さらに、被処理物に吹き付けた温調空気はそのまま冷却室に解放するために、さらなる空気のガイド手段は不要となるために、簡単に且つ低コストで構成することができる。
【0014】
また、被処理物に対して、上下から温調空気を同時に吹き付けるために、上下のバランスを図り、効果的に冷却を行うことができる。
【0015】
搬入出手段と支持手段とを共通のコンベア装置で構成することで、さらに簡単に且つ低コストで設備を構成することができる。
【0016】
被処理物を支持する支持面に通気性があるために、被処理物にその下方から温調空気を十分に当てることができる。
【0017】
送風機は、冷却室外部に配置することで、冷却室の温調空気に影響を与えないようすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る冷却装置の冷却室の内部を表す平面図である。
【図2】温調空気の流れを表す説明図である。
【図3】冷却エリアにおける拡大側面図である。
【図4】冷却エリアにおける搬送方向に垂直な面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1〜図3に示したように、本発明の冷却装置は、冷却温調された冷却室10を備える。冷却室10は、好ましくは適宜断熱された壁によって囲繞されたものとすることができる。公知の空気調和設備によって、冷却室10の空気は、その室内温度Troomが温度制御された温調空気となっている。室内温度Troomである温調温度は、被処理物を冷却する目標冷却温度よりもやや低い所望の温度に保持されている。例えば、被処理物の目標冷却温度が20℃である場合、室内温度Troomを5℃〜15℃程度の温度とすることができる。
【0021】
冷却室10には入口10aと出口10bが設けられており、入口10a及び出口10bに渡り、被処理物を搬送する搬送コンベア12が配置されて、その両端部は冷却室10から突出している。搬送コンベア12は、1台または複数台のコンベア装置で構成することができる。
【0022】
そして、少なくともその一部のコンベア装置は、被処理物40を支持する支持面が通気性を持ったコンベア装置となっており、具体的には、支持面は、ネット、ワイヤ、多孔板等よりなる通気性支持面で構成することができる。図示の例では、搬送コンベア12は、被処理物40を2列で搬送できるようになっているが、この列数は任意に設定可能である。
【0023】
冷却室10の外部には、送風機14が配置される。送風機14は、ファン(ターボファン等)やブロアとすることができ、制御盤15(図2)によるインバータ制御により周波数を調整可能である。
【0024】
冷却室10には、複数の吸込み口10cが設けられており、該吸込み口10cと送風機14の入口14aとの間には第1ダクト16aが配設され、送風機14の出口14bには第2ダクト16bの一端が配設されている。
【0025】
図2に示したように、第2ダクト16bの途中部分にはフィルタ18を設けることができ、第2ダクト16bの他端は、冷却室10の壁を貫通して冷却室10内へと進入して、分岐管20に連結される。分岐管20から複数の第3ダクト16cによって複数の吹き出しボックス22へと連結される。以上の第1〜第3ダクト16a〜16cによってガイド手段が構成される。
【0026】
各吹き出しボックス22は、搬送コンベア12の所定位置にある冷却エリアにおいて、搬送コンベア12の上方及び下方に配置される。そして各吹き出しボックス22には、図3及び図4に示したように、搬送コンベア12の方に向かって開口されたスリット状の吹き付けノズル22aが設けられている。下方に配置される吹き出しボックス22は、搬送コンベア12の往路コンベア12aと復路コンベア12bとの間に配置される。
【0027】
吹き出しボックス22の吹き付けノズル22aと搬送コンベア12上に支持された被処理物40との鉛直方向距離dは、20mm〜100mm程度とするとよい。
【0028】
冷却エリアは、1つまたは図示例のように2つ以上設けることができる。冷却エリアの搬送方向に沿って測った長さは、冷却に必要な時間及び搬送コンベア12の搬送速度との関係において決められる。また、搬送コンベア12の搬送長さよりも冷却エリアは小さくなっている。特に、冷却室10の室内において、冷却エリアはその一部となっている。
【0029】
以上のように構成される冷却装置においては、冷却室10の入口10aにおいて冷却室10より突出した搬送コンベア12の一端から冷却するべき被処理物40が投入されて、搬送コンベア12の支持面に載置される。被処理物の初期温度は、冷却室10の室内温度Troomより遥かに高い温度である。そして、搬送コンベア12によって冷却エリアに搬送されると、そこで、上下の吹き出しボックス22の吹き付けノズル22aから吹き出される空気が被処理物40に対して上下から当たり、被処理物から熱を奪っていく。下方の吹き出しボックス22の吹き付けノズル22aから吹き出される空気は、通気性支持面を通過して被処理物40に直接当たる。
【0030】
吹き出しボックス22から吹き出される空気は、送風機14によって冷却室10の吸込み口10aから吸い込まれて圧送される温調空気である。その温調空気の温度は、冷却室10の室内温度Troomとほぼ同じとなっている。但し、温調空気は、送風機14を経ることにより、若干、室内温度Troomよりも高い温度となっているが、その温度差は、せいぜい約1〜5℃程度であり、被処理物の温度に対して温度差が十分に小さく、実質的に室内温度Troomと同じとみなすことができる。よって、温調空気と被処理物40との温度差によって被処理物40との間で熱交換を行い、被処理物40の冷却を行う。
【0031】
被処理物の上方及び下方から空気を吹き出すことによって、図4に示したように、被処理物40の上下を均一に冷却し、短時間で目標冷却温度にまで到達することができる。また、上下から被処理物40を押さえ付けるので、被処理物40が吹き飛ばされることを防止することができる。被処理物40と熱交換されて加温された空気は、冷却室10の室内へと解放される。冷却室10の室内容量を、吹き出される流量に対して十分に大きく設定しておくことにより、冷却室10に対する温調機能に影響を与えることはないようにできる。
【0032】
こうして、被処理物40は、冷却エリアにおいて、搬送コンベア12によって搬送されながら、温調空気に曝されて冷却され、目標冷却温度まで到達すると、出口10bを通って冷却室10から搬出されて、取り出される。
【0033】
目標冷却温度は、冷却室10の室内温度Troomよりも高い温度となる。
【0034】
吹き出しボックス22から吹き出される温調空気の温度は、室内温度と実質的に同じ温度であり、詳細には若干高い温度となっているために、結露の発生がない。そのため、ダクトや吹き出しボックス22に断熱カバーを施す必要がなく、異物混入といった心配もない。
【0035】
以上のように本発明の冷却装置によれば、冷却器を不要としており、既存の空調調和設備によって温度が制御された冷却室を利用しているために、簡単に且つ低コストで構成することができる。
【0036】
尚、以上の例では、搬送コンベア12によって搬送しながら冷却を行ったが、これに限るものではなく、搬送と冷却のそれぞれの工程を別々に行うようにすることも可能である。冷却室10へ搬送手段によって搬入後に、支持手段で被処理物を不動に支持しつつ、上方及び下方から温調空気を吹き付け、所定時間経過後に、搬送手段によって冷却室10から搬出するようにしてもよい。
【0037】
また、以上の例は、被処理物の冷却を行う冷却装置について説明したが、これに限るものではなく、解凍装置または加温装置にも同様に適用することができる。解凍装置とする場合には、室内温度Troomが被処理物よりも高い温度となっており、室内温度と実質的に同一温度である温調空気を被処理物に吹き付けることで、加熱を行い、解凍または加温を行うようにするとよい。
【実施例】
【0038】
寸法が200mm×150mm×厚み25mm、質量が500g、内容物がおこわである1つの被処理物に対して次の条件で冷却を行った。
【0039】
【表1】

【0040】
No.1については、63秒で38.6℃(Δt=44.9℃)まで冷却することができ、No.2については、67秒で36.7℃(Δt=48.1℃)まで冷却することができた。
【符号の説明】
【0041】
10 冷却室
12 搬送コンベア(支持手段、搬入出手段)
14 送風機
16a、16b、16c ダクト(ガイド手段)
22 吹き出しボックス(吹き付け手段)
40 被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空気が温度調節された温調空気となっている冷却室と、
冷却室内に被処理物を搬入し及び冷却室から被処理物を搬出する搬入出手段と、
冷却室内において、被処理物を支持する支持手段と、
冷却室内の温調空気を吸引して圧送させる送風機と、
送風機によって送り出された温調空気を支持手段によって支持された被処理物の上方及び下方に案内するガイド手段と、
ガイド手段によって案内された温調空気を被処理物に吹き付ける吹き付け手段と、
を備え、温調空気を上方及び下方から被処理物に同時に吹き付けて冷却を行うことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記搬入出手段と前記支持手段とが共通のコンベア装置で構成されることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記支持手段は、被処理物を支持する支持面が通気性を備えることを特徴とする請求項1または2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記送風機は、冷却室外部に配置されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−97944(P2012−97944A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244999(P2010−244999)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(593012310)菱熱工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】