説明

冷却貯蔵庫

【課題】庫内温度の変化に対応しつつ省エネルギー化を図ることが可能な冷却貯蔵庫を提供する。
【解決手段】貯蔵物を収容する貯蔵庫12と、貯蔵庫12内を冷却する冷却器21を備えた冷却装置と、貯蔵庫12の庫内温度tを検出する庫内温度センサ23と、庫内温度tに応じて冷却装置の運転を制御する冷却運転制御部31と、冷却器21により生じた冷気を貯蔵庫12内に循環させる庫内ファン22と、を備えた冷却貯蔵庫10において、冷却装置の運転中に庫内ファン22を運転させ、冷却装置の運転停止中に庫内ファン22の運転を停止させる庫内ファン運転制御部32を備え、庫内ファン運転制御部32は、冷却装置の運転停止中に、庫内温度tが所定の基準温度t1を所定値Δt上回った場合には庫内ファン22の運転を所定時間T3行わせることを繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置の運転停止中に庫内ファンの運転制御を行う冷却貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷却装置運転停止中において庫内ファンの運転制御を行う冷却貯蔵庫として特許文献1に記載のものが知られている。この冷却貯蔵庫は、貯蔵庫の庫内温度に応じて、圧縮機等を備える冷却装置について冷却運転状態と冷却運転停止状態を繰り返すことにより、当該庫内温度を設定温度付近に保つものである。この冷却装置とは別に運転制御される庫内ファンは、庫内空気を攪拌する機能を有し、冷却装置が冷却運転状態にあるときには、同様に運転状態とされ、冷却装置にて生成された冷気を貯蔵庫内に循環させる。
【0003】
一方、冷却装置が冷却運転停止状態にあるときには、庫内ファンは間欠運転がなされ、運転状態と運転停止状態とが繰り返される。このうち運転停止時間は冷却装置を構成する凝縮器の吐出冷媒温度、つまり冷却装置の熱負荷状態に応じて決定される。即ち、冷却装置の熱負荷が高いために吐出冷媒温度が高くなっている場合には、運転停止時間は短く設定され、冷却装置の熱負荷が低く吐出冷媒温度が低い場合には、運転停止時間は長く設定される。このように間欠運転における停止時間を冷却装置の熱負荷が低いほど長くなるように制御することで、庫内ファンの電力消費を効果的に抑えて省エネルギー化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3220377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成によると、冷却装置の熱負荷が高いときには比較的長い時間運転されるとしても、庫内ファンは実際の庫内温度とは無関係に運転されてしまう。このため、冷却装置の熱負荷は高い(例えば冷却貯蔵庫を設置した室温が高い)状態ではあるが、庫内温度は実際には設定温度付近に保たれている状態においても、所定の停止時間の経過後には庫内ファンは再度運転されることとなる。よって、庫内温度を所定温度に保つ目的においては、その庫内ファンの運転は無駄なものとなり、この無駄を排除すること等による更なる省エネルギー化が求められている。また、所定時間毎に間欠運転における停止時間が決定されるから、所定時間内に冷却装置の熱負荷状態に急激な変化があった場合には、すぐさま追従することができない。加えて、冷却装置の熱負荷状態に応じて庫内ファンの停止時間を決定しているため、庫内温度の変化が冷却装置の熱負荷状態に反映されるまでにはタイムラグが生じ、庫内温度に応じた庫内ファンの運転が思うようになされていないといった現状がある。このため、より庫内温度の変化に応じた庫内ファンの運転制御が求められている。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、冷却装置運転停止中における冷却ファンの運転制御に関して、庫内温度の変化に対応しつつ省エネルギー化を図ることが可能な冷却貯蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、貯蔵物を収容する貯蔵庫と、前記貯蔵庫内を冷却する冷却器を備えた冷却装置と、前記貯蔵庫の庫内温度を検出する庫内温度センサと、前記庫内温度に応じて前記冷却装置の運転を制御する冷却運転制御部と、前記冷却器により生じた冷気を前記貯蔵庫内に循環させる庫内ファンと、を備えた冷却貯蔵庫において、前記冷却装置の運転中に前記庫内ファンを運転させ、前記冷却装置の運転停止中に前記庫内ファンの運転を停止させる庫内ファン運転制御部を備え、前記庫内ファン運転制御部は、前記冷却装置の運転停止中に、前記庫内温度が所定の基準温度を所定値上回った場合には前記庫内ファンの運転を所定時間行わせることを繰り返すことに特徴を有する。
【0008】
このような構成によれば、冷却装置の運転停止中における庫内ファンの運転開始のタイミングは庫内温度に応じて決定されるから、更なる省エネルギー化を図ることができる。詳しく説明すると、冷却装置の運転停止中において、庫内ファンは、庫内温度が所定の基準温度を所定値上回った場合にその運転が開始される。よって、まず冷却装置の運転停止中における庫内ファンの間欠運転において、停止時間と運転時間とが固定である場合と比較して、庫内温度の状況に応じてその停止期間が決定されることとなるから、庫内ファンが不必要に運転されることなく、省エネルギー化を図ることができる。例えば、庫内温度が高い場合には、冷却装置の運転停止中における庫内ファンの停止時間が短くなり、庫内ファンが運転される回数及び時間は長くなる。一方、庫内温度が低い場合には、冷却装置の運転停止中における庫内ファンの停止時間は長くなり、庫内ファンが運転される回数及び時間は短くなる。いずれにしても、庫内温度状況に応じて庫内ファンの運転開始が決定されることで、固定の間欠運転が行われる場合と比較して、過剰運転又は過少運転を抑制し、庫内温度の上昇を抑える効果と消費電力とのバランスを最適なものとすることができる。また、庫内温度は貯蔵庫外の周囲温度によっても影響されるから、庫内温度状況に応じた庫内ファンの運転を行うことで、周囲温度をも考慮した運転制御を実現することができる。
【0009】
前記庫内ファンの運転が停止する毎にその運転停止期間における庫内温度を停止時温度として記憶する温度記憶部を備え、前記基準温度は、前記温度記憶部に記憶された最新の停止時温度とされることが望ましい。
【0010】
このような構成とすれば、庫内温度と比較される基準温度が、固定値ではなく、その判断される直前の庫内ファンの停止時温度に所定値加えた値とされているから、冷却装置の運転停止中における庫内ファンの最適な運転間隔を実現できる。つまり、冷却装置の運転が停止されると、冷却器による庫内空気の熱交換は徐々に行われなくなるから、たとえ庫内ファンを運転したとしても庫内温度は徐々に上昇することとなる。よって、庫内ファンの運転を開始させるための基準温度が固定であると、冷却装置が運転再開される間近においては、庫内ファンは冷却装置を停止させた直後よりも頻繁に運転が繰り返されることとなる。しかしながら、庫内ファンを頻繁に運転させたからといって冷却器による熱交換は行われなくなる一方であるから、庫内温度を下げる効果は少なく、むしろ庫内ファン自体の発熱により庫内温度が上昇してしまう虞がある。よって、庫内ファンの運転開始に用いる基準温度をその判断される直前の庫内ファンの停止時温度に所定値加えた値とすることで、庫内温度の緩やかな上昇を許容しつつ省エネルギー化を図った効果的な庫内ファンの運転制御を行うことができる。
【0011】
また、冷却装置の運転停止中における庫内ファンの運転開始を判断するのにその判断される直前の庫内ファンの停止時温度を用いることで、例えば貯蔵庫の扉の開閉や新たな貯蔵物の投入等によって急激に温度が上昇した場合には、すぐさま追従して庫内ファンの運転を開始させることができるから、庫内温度の変化に応じた庫内ファンの運転を実現することができる。
【0012】
また、上記のようにして庫内ファンが庫内空気を攪拌して均一にする、あるいは庫内温度の上昇を抑制するといった効果以上に運転されることを抑制することで、庫内ファンにおいて頻繁に運転及び停止を繰り返すことによる負荷やそれに伴う突入電流による寿命低下を抑制することができる。また、食品等の貯蔵物に対して庫内ファンによる送風が不必要に当たることで生じる貯蔵物の乾燥を抑制することもできる。
【0013】
なお、冷却装置の運転停止中における庫内ファンの間欠運転における運転時間と停止時間が固定である場合、あるいは、庫内ファンの運転開始を判断する基準温度が固定値である場合と比較して、貯蔵庫の大きさや冷凍装置の冷凍能力等機種によってその値を決定する必要がなく、結果として製造コストを削減することができる。また、貯蔵庫自体の構成においては、庫内温度管理に必須である既存の庫内温度センサを用いて庫内ファン運転制御部に本発明の間欠運転を行わせることができるため、汎用性に優れたものとすることができる。
【0014】
前記冷却運転制御部は、前記冷却装置の運転停止中において、前記庫内ファンの運転開始時から所定時間経過後に、前記冷却装置の運転を再開するか否かの判定が許可されるものであることが望ましい。このような構成によれば、庫内ファンにより庫内空気を攪拌させ均一にさせたのち、庫内温度センサにより検出された庫内温度に応じて、冷却装置の運転を再開するか否かの判定を行うことができるから、より正確な庫内温度に応じてその運転再開を決定することができる。例えば、貯蔵庫内全体としては冷却装置の運転を再開する必要がない庫内温度に保たれている場合において、庫内温度センサ付近の温度のみが冷却装置等機器類からの発熱によって高いと、不必要に冷却装置が運転されることとなる。これに対して、庫内ファンの運転開始から所定時間経過後に冷却装置の運転を再開するか否かを判断する構成とすることで、不必要な冷却装置の起動をなくし、省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0015】
前記冷却装置の運転停止中における前記庫内ファンの運転時間は、前記冷却装置の停止から前記冷却装置の運転再開までの間において、漸次短くなるものであってもよい。冷却装置の運転が停止されると、冷却器による庫内空気の熱交換は徐々に行われなくなるから、たとえ庫内ファンを運転したとしても庫内温度は徐々に上昇することとなる。また、庫内ファンを頻繁に運転させたからといって、冷却能力は減少する一方であるから、庫内温度を下げる効果は少なく、むしろ庫内ファン自体の発熱により庫内温度が上昇してしまう虞まである。よって、冷却装置の運転再開に近づくにつれて、庫内ファンの運転時間を短くすることで、庫内ファンを運転することによって得られる効果を発揮させつつも、省エネルギー化を図った効果的な運転制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、冷却装置運転停止中における冷却ファンの運転制御に関して、庫内温度の変化に対応しつつ省エネルギー化を図ることが可能な冷却貯蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るプレハブ冷蔵庫の一部切欠斜視図
【図2】プレハブ冷蔵庫の一部切欠正面図
【図3】室内機の概略断面図
【図4】庫内ファン及び圧縮機の制御機構を表すブロック図
【図5】庫内ファン及び圧縮機の運転制御動作を示すフローチャート
【図6】圧縮機及び庫内ファンの作動状態と、それに伴う温度変化を示すタイムチャート
【図7】周囲温度35℃におけるプレハブ冷蔵庫の消費電力と庫内温度の関係を示したグラフ
【図8】周囲温度20℃におけるプレハブ冷蔵庫の消費電力と庫内温度の関係を示したグラフ
【図9】周囲温度10℃におけるプレハブ冷蔵庫の消費電力と庫内温度の関係を示したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図9によって説明する。
本実施形態の冷却貯蔵庫は、プレハブ冷蔵庫10に適用した場合を例示している。以下、図2の紙面手前側を前側、紙面奥側を後側として説明する。
【0019】
まず、図1及び図2を用いて全体構造を説明する。プレハブ冷蔵庫10は、複数枚の断熱性のパネルを組み立てることで方形の箱形に形成された冷蔵庫本体11を備えており、その内部は貯蔵物を収容可能な貯蔵庫12とされている。冷蔵庫本体11の前面には、貯蔵物の出入れを可能な出入口が開口形成され、その出入口を覆うように、片開き戸式の断熱扉13が装着されている。
【0020】
貯蔵庫12の天井12Aには、冷却器21と庫内ファン22とが収容された室内機15が設置されている。一方、冷蔵庫本体11外には、圧縮機24、空冷式の凝縮器等が収容された室外機16が設置されている。この室内機15と室外機16との間には、冷却器21や圧縮機24等の冷凍装置を循環接続する冷媒配管17が配設されており、所謂冷凍サイクル(冷却装置に相当する)が構成されている。この冷凍サイクルは、室外機16に収容された圧縮機24、凝縮器、図示しないドライヤ、キャピラリーチューブ及び室内機15に収容された冷却器21を順に連ねたものであり、冷媒配管17内の冷媒を圧縮機24で圧縮し、凝縮器で放熱させ、冷却器21で蒸発させることにより冷却作用を生じさせる周知の構成である。
【0021】
室内機15は、図3に示すように、貯蔵庫12の前後方向を長辺方向とする略直方体のケーシング18を備えており、その前後方向に延びる一方の側部(図3の右側面)には、略全面にわたって吸込口19が開口形成されている。一方、吸込口19とは対向面である他方の側部(図3の左側面)には、個々の庫内ファン22に対応した吹出口20が開口形成されている。ケーシング18内において、吸込口19側には、冷却器21が配されており、吹出口20側にはファンモータ22Aを備えた庫内ファン22が配されている。ケーシング18の底面は、ドレンパン18Aとされ、後方に向けて下り勾配をなす傾斜面が形成されており、その後縁には、排水口18Bが設けられている。この排水口18Bには、図1に示すドレン管14が垂設されて貯蔵庫12外へと導出されている。
【0022】
冷却器21の外周縁部のうち、吸込口19に対向する側面と、下面にはU溝21Aが切り欠き形成され、当該U溝21Aには除霜ヒータ21Bが嵌め込まれている。また、冷却器21の外周縁部のうち、除霜ヒータ21Bが設けられていない庫内ファン22に対向する側面には冷却器21の温度を検知する除霜サーミスタ21Cが取り付けられている。除霜ヒータ21Bはその通電により、冷却器21を加熱して着霜を防止する除霜運転に用いられ、除霜サーミスタ21Cはその検知温度に応じて、除霜運転を終了するなどの制御に用いられている。
【0023】
貯蔵庫12内の庫内空気は、図3に示すように、庫内ファン22によって吸込口19からケーシング18内へと吸い込まれ、その庫内空気は冷却器21により熱交換が行われることで冷却され、その後吹出口20より貯蔵庫12内に吹き出されることで、貯蔵庫12内に冷却された庫内空気が循環供給されるようになっている。なお、吸込口19の近傍には、貯蔵庫12内の温度tを検出する庫内サーミスタ23(庫内温度センサに相当する)が設置されている。
【0024】
さて、圧縮機24及び庫内ファン22を制御するものとして、マイクロコンピュータを備えた運転制御部30が設けられている(図4参照)。この運転制御部30の入力側には、貯蔵庫12内の庫内温度tを検出する庫内サーミスタ23が接続されており、出力側には圧縮機24と庫内ファン22がそれぞれ接続されている。運転制御部30には、少なくとも圧縮機24の運転を制御する圧縮機運転制御部31(冷却運転制御部に相当する)と、庫内ファン22の運転を制御する庫内ファン運転制御部32と、圧縮機24運転停止中における庫内ファン22の運転停止時の庫内温度である停止時温度を基準温度t1として記憶する温度記憶部33とが具備されている。
【0025】
圧縮機運転制御部31には、予め設定された圧縮機ON温度t(ON)と圧縮機OFF温度t(OFF)が記憶されている。圧縮機運転制御部31は庫内サーミスタ23からの信号を読み取り、その入力値である庫内温度tと圧縮機ON温度t(ON)及び圧縮機OFF温度t(OFF)とを比較する。例えば、プルダウン運転やコントロール運転により圧縮機24が運転されている状態において、庫内温度tが圧縮機OFF温度t(OFF)を下回った場合には、圧縮機24の運転は停止される。即ち、圧縮機運転制御部31から運転停止指示の信号が圧縮機24に出力される。
【0026】
また、詳しくは後述するが、庫内ファン運転制御部32には、圧縮機24の運転停止期間中に庫内ファン22が間欠運転するように設定されている。この間欠運転において庫内ファン22に運転開始指示が出力されると同時に、所定の待機時間T2の計測が開始される。そして、待機時間T2が経過すると、庫内温度tと圧縮機ON温度t(ON)との比較が許可される。つまり、間欠運転中の庫内ファン22の運転開始から所定時間T2は、庫内温度tと圧縮機ON温度t(ON)との比較が禁止される(又は、それに応じた圧縮機運転制御部31から圧縮機24への運転開始指示の出力が禁止される)こととなる。待機時間T2経過後、庫内温度tが圧縮機ON温度t(ON)を上回った場合には、圧縮機24の運転が開始される。即ち、圧縮機運転制御部31から運転開始指示の信号が圧縮機24に出力される。このように、圧縮機24の運転及び停止を繰り返すことで、貯蔵庫12内の庫内温度tを所望の設定温度付近に維持する構成とされている。
【0027】
続いて庫内ファン運転制御部32について説明すると、まず、その一部が圧縮機運転制御部31の制御と連動しており、圧縮機24の運転又は停止指示と同時に、庫内ファン22の運転及び停止指示がなされる。即ち、圧縮機運転制御部31から運転指示の信号が圧縮機24に出力されると同時に、庫内ファン運転制御部32からは庫内ファン22へ運転指示信号が出力される。また、圧縮機運転制御部31から運転停止を指示する信号が圧縮機24に出力されると同時に、庫内ファン運転制御部32からは庫内ファン22へ運転停止を指示する信号が出力される。
【0028】
ところで、温度記憶部33には、庫内ファン22の停止と同時に、庫内サーミスタ23により検出された庫内温度である基準温度t1(停止時温度に相当する)が記憶されており、庫内ファン22が停止する度にその時点での庫内温度tを記憶することで基準温度t1は最新の停止時温度に更新される。そして、庫内ファン運転制御部32により、庫内ファン22はこの温度記憶部33に記憶された基準温度t1に基づいた制御がなされている。具体的には、庫内ファン運転制御部32には、上記した圧縮機24と連動する基本制御とは別に、圧縮機24の運転停止中に庫内ファン22を運転させる間欠運転制御が設定されている。
【0029】
詳しく説明すると、圧縮機24運転停止中に、庫内サーミスタ23により検出された庫内温度tが、温度記憶部33に記憶された基準温度t1よりも所定温度Δt(所定値に相当する)だけ上回ると、庫内ファン22の運転が所定の庫内ファンON時間T3の間、行われる。即ち、庫内ファン運転制御部32から庫内ファン22に運転開始を指示する信号が出力され、庫内ファンON時間T3が経過すると、庫内ファン22に運転停止を指示する信号が出力される。なお、所定温度Δtは、例えば0.5Kとされ、庫内ファンON時間T3は、20秒、又は30秒が例示される。
【0030】
なお、この間欠運転中に、待機時間T2が経過し、庫内温度tが圧縮機ON温度t(ON)を上回った場合には、庫内ファン運転制御部32からは、この間欠運転の制御に優先して、圧縮機24と共に庫内ファン22の運転を開始する運転指示が庫内ファン22へと出力されるように設定されている。
【0031】
続いて本実施形態の作用を図5及び図6を用いて説明する。
電源が投入されると、圧縮機24及び庫内ファン22の運転が開始され(ステップS10)、貯蔵庫12内の冷却が開始される。貯蔵庫12内は、その庫内温度tが、設定温度付近に低下するまで冷却される(ステップS11で「NO」)。貯蔵庫12内が設定温度付近まで冷却され、圧縮機OFF温度t(OFF)を下回ると、圧縮機24及び庫内ファン22の運転が停止する(ステップS12及びステップS13)。貯蔵庫12内の庫内空気は、庫内ファン22が停止しているため、室内機15に吸い込まれることなく、圧縮機24の停止に伴い、冷却器21による熱交換は徐々に行われなくなる。
【0032】
この圧縮機24の停止状態において、貯蔵庫12内の庫内温度tが、庫内ファン22の停止と同時に記憶された庫内温度である基準温度t1より所定温度Δtだけ上回った場合には(ステップS14で「YES」)、庫内ファン22の運転のみ開始され(ステップS15)、上回らない場合には、圧縮機24の停止と共に、庫内ファン22も停止状態が継続する(ステップS14で「NO」)。庫内ファン22の運転が開始されると(ステップS15)、庫内ファン22は、図6に示すように、庫内ファンON時間T3の時間だけ運転された後、停止し(ステップS20で「YES」、ステップS13)、再び庫内温度tが庫内ファン22停止時の庫内温度である基準温度t1より所定温度Δtだけ上回ったか否かが判断される(ステップS14)。上回った場合には、庫内ファンON時間T3の期間、運転がなされ(ステップS14で「YES」、ステップS15、ステップS20で「YES」、ステップS13)、上回らない場合には、圧縮機24の停止と共に、庫内ファン22も停止状態が継続する(ステップS14で「NO」)。このように、圧縮機24の停止状態において、上記動作が繰り返される。結果として、図6に示すように、圧縮機24の停止中にあっては、庫内ファン22はその一回の運転時間を庫内ファンON時間T3とした間欠運転がなされることとなる。
【0033】
さて、圧縮機24の停止中に、貯蔵庫12内の庫内温度tが、基準温度t1より所定温度Δtだけ上回り(ステップS14で「YES」)、庫内ファン22の運転を開始してから(ステップS15、ステップS16)、待機時間T2が経過し(ステップS17で「YES」)、且つ庫内温度tが圧縮機ON温度t(ON)を上回っている場合には(ステップS18で「YES」)、圧縮機24と庫内ファン22の運転が同時に開始される(ステップS19)。このとき、庫内ファン22が庫内ファンON時間T3の運転期間中にあっては(ステップS20で「NO」、ステップS18で「YES」)、そのまま運転状態が保たれ、圧縮機24のみ運転が新たに開始される(ステップS19)。以上のような動作を繰り返すことで、庫内温度tは、図6に示すように、圧縮機ON温度t(ON)と圧縮機OFF温度t(OFF)との間に維持され、所定の設定温度付近に保たれることとなる。
【0034】
続いて、上記のように圧縮機24及び庫内ファン22を運転制御することにより得られる効果について、図6ないし図9を用いて説明する。まず、庫内ファン22を圧縮機24運転停止期間中に間欠運転することで、運転しない場合と比較して、貯蔵庫12内の庫内空気を攪拌して庫内温度tを均一に保つほか、庫内温度tの上昇を抑える効果が得られる。そして、庫内ファン22は、間欠運転において庫内温度tが、その直前の庫内ファン22の停止と同時に記憶された庫内温度である基準温度t1より所定温度Δtだけ上回った場合に、庫内ファンON時間T3の運転がなされるように設定されている。よって、貯蔵庫12内の庫内温度tの状況に応じて、庫内ファン22の運転を行うことができるから、例えば間欠運転における停止時間と運転時間とが予め決定されている場合と比較して、庫内ファン22を不必要に運転させることなく、省エネルギー化を図ることができる。
【0035】
また、圧縮機24運転停止期間中の間欠運転において、庫内ファン22の運転を開始させるために庫内温度tと比較される基準値は、固定値ではなく、この判断される直前の庫内ファン22の運転停止時の庫内温度である基準温度t1に所定温度Δtを加えた値とされているから、庫内温度tや当該庫内温度tに影響を及ぼす貯蔵庫12外の周囲温度に応じた庫内ファン22の運転間隔を実現できる。即ち、図6に示すように、圧縮機24の運転再開が近づくにつれて庫内ファン22の運転間隔、つまり停止時間は長くなり、不必要な庫内ファン22の運転を抑制することで、省エネルギー化を図ることができる。このような運転が効率的である理由としては、圧縮機24の運転再開が近づくにつれて、庫内ファン22の運転による温度を下げる効果が少なくなることが挙げられる。その理由としては、圧縮機24の停止により冷却器21による熱交換が徐々に行われなくなり、冷凍能力が低下し、庫内ファン22の運転によって庫内空気がの攪拌されることによる庫内温度tの上昇抑制にも限界があるからである。
【0036】
ここで図7ないし図9に示す実測値を用いて、より詳細に本実施形態による庫内ファン22の間欠運転制御の効果を説明する。図7は周囲温度35℃におけるプレハブ冷蔵庫の消費電力と庫内温度の関係を示したグラフであり、図8は周囲温度20℃における同関係を示したグラフ、図9は周囲温度10℃における同関係を示したグラフである。各図のうち上のグラフは庫内温度tの変化を表したものであり、下のグラフは消費電力の変化を表したものである。下のグラフにおいて、消費電力1000W程度の値を示す波形は、圧縮機24及び庫内ファン22の運転によるものであり、その運転期間の間に現れる細かな波形は庫内ファン22のみの運転によるものである。
【0037】
図7ないし図9を比較すると、まず圧縮機24の運転間隔に差が見られる。圧縮機24は、庫内温度tが圧縮機ON温度t(ON)を上回ることで、その運転開始が指示され、庫内温度tが圧縮機OFF温度t(OFF)を下回ることで運転停止が指示される。図9の周囲温度10℃の場合においては、図8の周囲温度20℃の場合と比較して、その運転間隔は長くなり、図7の周囲温度35℃の場合と比較して、さらにその運転間隔は長くなる。このように、周囲温度に応じて圧縮機24及び庫内ファン22の運転制御がなされることとなり、庫内温度tが所望の設定温度に保たれるだけでなく、省エネルギー化が実現されていることがわかる。
【0038】
続いて、圧縮機24停止中の庫内ファン22の間欠運転における運転間隔をみてみると、図7の周囲温度35℃の場合においては、その間隔が短く頻繁に庫内ファン22の運転が繰り返されていることがわかる。この庫内ファン22の運転間隔は、周囲温度に比例して長くなり、図8の周囲温度20℃の場合においては、図7の周囲温度35℃の場合よりも運転間隔は長くなり、図9の周囲温度10℃の場合においては、図7及び図8の場合と比較して、その間隔はさらに長くなる。このように、周囲温度が低いと、貯蔵庫12における断熱負荷が小さくなるために、庫内温度tの上昇が緩やかなものとなるから、これに応じて庫内ファン22の間欠運転制御を行うことで、庫内ファン22の運転による効果と消費電力の抑制とのバランスを最適なものとすることができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、圧縮機24停止中において、庫内温度tに応じた間欠運転制御を行うことができるから、省エネルギー化を図ることが可能である。つまり、庫内温度tの状況に応じて庫内ファン22の運転開始が決定されることで、固定の間欠運転が行われる場合と比較して、過剰運転又は過少運転を抑制し、庫内温度tの上昇を抑える効果と消費電力とのバランスを最適なものとすることができる。また、庫内温度tは上記したように貯蔵庫12外の周囲温度によっても影響されるから、庫内温度tの状況に応じた庫内ファン22の運転を行うことで、周囲温度をも考慮した運転制御を実現することができる。
【0040】
また、圧縮機24停止中の庫内ファン22の間欠運転制御において、庫内ファン22の運転開始を判断するのにその判断される直前の庫内ファン22の運転停止時の庫内温度tである基準温度t1を用いることで、例えば貯蔵庫12の断熱扉13の開閉や新たな貯蔵物の投入等によって急激に庫内温度tが上昇した場合には、すぐさま追従して庫内ファン22の運転を開始させることができるから、庫内温度tの変化に応じた庫内ファン22の運転を実現することができる。
【0041】
また、庫内ファン22が、圧縮機24停止中の間欠運転において、その運転時間と停止時間が固定の場合、あるいは、庫内ファン22の運転開始を判断する基準値が固定値である場合と比較して、貯蔵庫12の大きさや冷凍サイクルの冷凍能力等機種によって固有の値を決定する必要がないから、結果として製造コストを削減することができる。また、貯蔵庫12自体の構成においては、庫内温度管理に必須である既存の庫内サーミスタ23を用いて庫内ファン運転制御部32に間欠運転を行わせることができるため、汎用性に優れたものとすることができる。
【0042】
また、上記のように庫内ファン22が庫内空気を攪拌して均一にする、あるいは庫内温度tの上昇を抑制するといった効果以上に運転されることを抑制することで、庫内ファン22において頻繁に運転及び停止を繰り返すことによる負荷やそれに伴う突入電流による寿命低下を抑制することができる。また、食品等の貯蔵物に対して庫内ファン22による送風が不必要に当たることで生じる貯蔵物の乾燥を抑制することもできる。
【0043】
また、圧縮機運転制御部31は、圧縮機24の運転停止中において、間欠運転による庫内ファン22の運転開始時から待機時間T2経過後に、圧縮機24の運転を再開するか否かの判定が許可されるから、庫内ファン22により庫内空気を攪拌させ均一にさせたのち、庫内サーミスタ23により検出されたより正確な庫内温度tに応じてその運転再開を決定することができる。例えば、貯蔵庫12内全体としては圧縮機24の運転を再開する必要がない庫内温度tに保たれている場合において、庫内サーミスタ23付近の温度のみが冷却器21等の発熱によって高いと、不必要に圧縮機24が運転されることとなる。これに対して、庫内ファン22の運転開始から待機時間T2経過後に圧縮機24の運転を再開するか否かを判断する構成とすることで、不必要な圧縮機24の起動をなくし、省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態において、間欠運転における庫内ファン22の運転開始を判断する基準値を構成する所定温度Δtは0.5Kが例示されていたが、この値を適宜変更し、例えば1Kやそれ以上に変更することで、間欠運転における庫内ファン22の停止時間を長くすることで、更なる省エネルギー化を図ることが可能となる。なお、このように、所定温度Δtを変更するだけで、間欠運転における庫内ファン22の運転間隔を変更することができるから、庫内ファン運転制御部32における運転制御を容易なものとすることができる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
(1)上記した一実施形態では、基準温度t1として庫内ファン22の運転開始が判断される直前の庫内ファン22の運転停止時の庫内温度tが用いられていたが、これに限られず、例えば庫内ファンの停止期間中の温度や、停止期間後の庫内ファンの運転開始と同時に検出した庫内温度であってもよい。この場合、この検出された庫内温度は、庫内ファンを所定時間運転した後の、次の庫内ファンの運転開始判定の基準温度として用いられる。このような構成によっても、庫内ファンを停止させると同時に検出した庫内温度を基準温度として適用する場合と同程度の効果が得られる。
【0047】
(2)上記した一実施形態では、圧縮機運転制御部31は、圧縮機24の運転停止中において、間欠運転による庫内ファン22の運転開始時から待機時間T2経過後に、圧縮機24の運転を再開するか否かの判定が許可されるものとしたが、これに限られず、例えば、庫内ファンの運転開始を待たずに、庫内温度が圧縮機ON温度を上回ったか否かの判断がなされているものであってもよい。
【0048】
(3)上記した一実施形態では、圧縮機24の運転は、庫内温度tが圧縮機ON温度t(ON)を上回る、又は圧縮機OFF温度t(OFF)を下回ることで、運転開始又は停止が制御されていたが、これに限られず、貯蔵庫外の周囲温度や貯蔵物自体の温度を検知して圧縮機の運転を制御するものであってもよい。
【0049】
(4)上記した一実施形態では、圧縮機24停止中の庫内ファン22の間欠運転における運転時間は庫内ファンON時間T3として一定とされていたが、これに限られず、例えばその同じ圧縮機停止期間内において庫内ファンON時間が漸次短くなる態様であってもよい。圧縮機の運転が停止されると、冷凍サイクルによる庫内空気の熱交換は徐々に行われなくなるから、たとえ庫内ファンを運転したとしても庫内温度は徐々に上昇することとなる。また、庫内ファンを頻繁に運転させたからといって、庫内温度を下げる効果は少なく、むしろ庫内ファン自体の発熱により庫内温度が上昇してしまう虞まである。よって、圧縮機の運転再開に近づくにつれて、庫内ファンの運転時間を短くすることで、庫内ファンを運転することによって得られる効果を発揮させつつも、省エネルギー化を図った効果的な運転制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
10…プレハブ冷蔵庫(冷却貯蔵庫) 11…冷蔵庫本体 12…貯蔵庫 13…断熱扉 15…室内機 16…室外機 18…ケーシング 19…吸込口 20…吹出口 21…冷却器 22…庫内ファン 23…庫内サーミスタ(庫内温度センサ) 24…圧縮機 30…運転制御部 31…圧縮機運転制御部(冷却運転制御部) 32…庫内ファン運転制御部 33…温度記憶部 t…庫内温度 t1…基準温度 t(ON)…圧縮機ON温度 t(OFF)…圧縮機OFF温度 Δt…所定温度 T2…待機時間 T3…庫内ファンON時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵物を収容する貯蔵庫と、
前記貯蔵庫内を冷却する冷却器を備えた冷却装置と、
前記貯蔵庫の庫内温度を検出する庫内温度センサと、
前記庫内温度に応じて前記冷却装置の運転を制御する冷却運転制御部と、
前記冷却器により生じた冷気を前記貯蔵庫内に循環させる庫内ファンと、を備えた冷却貯蔵庫において、
前記冷却装置の運転中に前記庫内ファンを運転させ、前記冷却装置の運転停止中に前記庫内ファンの運転を停止させる庫内ファン運転制御部を備え、
前記庫内ファン運転制御部は、前記冷却装置の運転停止中に、前記庫内温度が所定の基準温度を所定値上回った場合には前記庫内ファンの運転を所定時間行わせることを繰り返すことを特徴とする冷却貯蔵庫。
【請求項2】
前記庫内ファンの運転が停止する毎にその運転停止期間における庫内温度を停止時温度として記憶する温度記憶部を備え、
前記基準温度は、前記温度記憶部に記憶された最新の停止時温度とされることを特徴とする請求項1に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項3】
前記冷却運転制御部は、前記冷却装置の運転停止中において、前記庫内ファンの運転開始時から所定時間経過後に、前記冷却装置の運転を再開するか否かの判定が許可されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項4】
前記冷却装置の運転停止中における前記庫内ファンの運転時間は、前記冷却装置の停止から前記冷却装置の運転再開までの間において、漸次短くなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の冷却貯蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−202623(P2012−202623A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67913(P2011−67913)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)