説明

冷媒回収装置及び冷媒回収ユニット

【課題】冷媒ガスの回収において、微量のオイルのみを用いることで、ドライコンプレッサの耐久性を飛躍的に向上させ、異種冷媒の混合を防止できる優れた冷媒回収装置の提供。
【解決手段】被冷媒回収機器のオイルを含む冷媒ガスから前記オイルを分離するオイルセパレータと、装置の動力源となるドライコンプレッサと、分離した冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備える冷媒回収装置において、前記オイルセパレータからドライコンプレッサへ至る通路に、ドライコンプレッサ内へオイルを噴霧するオイル供給手段を備え、前記オイルセパレータからオイル供給手段までの間に、圧力調整弁を設けたことを特徴とする冷媒回収装置を解決手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、家庭用クーラー、エアコン、冷蔵庫、自動車用クーラー等(以下、「被冷媒回収機器」という。)の冷媒ガスを大気中に放出することなく回収し、また必要に応じて回収後の冷媒を前記被冷媒回収機器へ送る冷媒回収装置及び冷媒回収ユニットに関し、特には、冷媒回収装置におけるドライコンプレッサ及び冷媒回収ユニットの設置対象となるドライコンプレッサの耐久性を向上させ、併せて、冷媒ガスの回収率及び回収スピードを向上させる、冷媒回収装置及び冷媒回収ユニットに関する。尚、冷媒回収ユニットは、冷媒回収装置の一部であり、他の公知の装置類(例えば、オイルセパレータやコンプレッサ等)と組合せて冷媒回収装置として機能するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被冷媒回収機器Z1の冷媒ガスを回収する手段としては、例えば、図13に示すようなコンプレッサZ2や凝縮器Z3、冷媒回収容器Z4、圧力検知手段Z5、バルブZ6、フィルタZ7等を備えた冷媒回収装置Zが公知である。一般に、冷媒回収装置は、長時間連続稼動させて多量の冷媒の回収を行う必要があり、回収処理速度の向上、回収処理効率の向上が常に求められている。
【0003】
しかしながら、一般的にコンプレッサZ2は、使用環境等によって動作の効率に差が生じやすい。例えば、夏場等の外気温が高い状態で、通気が不十分であったり、冷媒回収装置Zが直射日光下に晒されているといった状況では、冷媒回収装置Z内の温度は60℃乃至70℃にもなることがあり、これによって冷媒回収容器Z4内の圧力が温度と比例して上昇し、コンプレッサZ2に負荷がかかることとなる。そしてコンプレッサZ2に負荷がかかることで、冷媒回収効率は低下し、冷媒回収時間は長くなる不都合が生ずる。
【0004】
また、冬場では、被冷媒回収機器Z1の温度が低いため、被冷媒回収機器Z1から液体冷媒を蒸発させて回収する際に、冷媒の蒸発に伴い気化熱として熱が奪われるため、被冷媒回収機器Z1内の温度及び圧力は低下し、冷媒回収を続けるうちに被冷媒回収機器Z1内の冷媒の凍結が生じる。このような状況下では、冷媒の凍結が発生すると回収は進まないため、冷媒を解凍するための時間を置くことで再度の回収を行う所謂二度引きが行われる。しかしながら冷媒回収時間は長くなる不都合が生ずる。
【0005】
一方、一般的に、コンプレッサは、オイルコンプレッサとドライコンプレッサがあり、いずれも冷媒回収装置に用いることができる。前記オイルコンプレッサは、底部にオイルパンを有しオイルパン内に潤滑オイルを貯留し、圧縮用ピストン等の機構の稼動時に潤滑オイルを用いて消耗を抑える機能を有している。また、ドライコンプレッサは、オイルを用いずにピストン周縁に耐摩耗性を有する合成樹脂製のシール部材を備えている。
【0006】
また、冷媒回収処理を行う業種として、例えば自動車関連業種では、エアコン(被冷媒回収機器)の冷媒ガスとして、フロンガスのR12やR134aが使用されており、他業種の空調関係設備ではフロンガスとしては、R22やR407、その他のガス等が使用されている。冷媒回収装置は、これらの冷媒ガスを回収するのであるが、これらの異種のフロンガスは混合させてはならない旨が、法令によって定められている。
【0007】
ここで、上記オイルコンプレッサは、機構の稼動時に潤滑オイルを要し、吸引した冷媒ガスはオイルコンプレッサ内で貯留される潤滑オイルと混合する構成である。従って、例えば、R12の冷媒回収処理を行った後、R134aの冷媒回収を行うというように、異なるフロンガスを同じ冷媒回収装置(若しくは冷媒回収システム)に用いると、オイルコンプレッサ内で、異種のフロンガスの混合を容易に招来する。異種のフロンガスの混合を回避するためには、オイルコンプレッサ内のフロンガスを大気放出せざるをえなくなるため、上記法令を遵守する観点からすると、非常に問題がある。
【0008】
一方、ドライコンプレッサは潤滑オイルを有しないため、上記の異種の冷媒ガスの混合に関する問題を生じないが、潤滑オイルを使用しない分、耐久性が低い欠点があった。しかしながら、オイルコンプレッサ、ドライコンプレッサのいずれを用いるかに関係なく、被冷媒回収機器から取出した直後の冷媒ガスは、オイルの粒子が混ざった混合物となっている。
冷媒ガスに微量のオイルが含まれる結果、前記したドライコンプレッサの消耗が早いという欠点は、冷媒ガスに含まれる前記微量のオイルの潤滑作用によって、幾分抑えられ、ドライコンプレッサの耐久性の向上に寄与していた。
【0009】
このオイルと冷媒を分離するために、被冷媒回収機器にオイルセパレータを設けることが一般的に行われている。
【0010】
オイルコンプレッサとオイルセパレータを用いた冷媒回収装置としては、取り除いたオイルをコンプレッサ内に戻し、オイルを循環させる構成を備えるもの等があり、例えば、冷媒ガス中の冷凍機オイルを分離除去する吸入側オイルセパレータと、同吸入側オイルセパレータを経た冷媒ガスを圧縮するコンプレッサ(圧縮機)と、同コンプレッサから吐出された冷媒ガスの中の冷凍機オイルを分離除去する吐出側オイルセパレータと、同吐出側オイルセパレータを出た冷媒ガスを凝縮液化させる凝縮器と、同凝縮器で液化された冷媒液を収容する回収ボンベ(冷媒回収容器)とを備え、冷凍サイクル内の冷媒を回収するものにおいて、上記凝縮機と上記回収ボンベ(冷媒回収容器)との間に、吸着剤が充填されたドライヤが配設されたことを特徴とする冷媒回収装置(例えば特許文献1参照。)が公知である。
【0011】
尚、上記特許文献1に係る冷媒回収装置は、オイルコンプレッサの循環オイルを補充するために、吐出側オイルセパレータで分離して得られるオイルを、オイルコンプレッサに循環する手段を備えている。
【0012】
【特許文献1】実開平3−48676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年、オイルセパレータの性能が向上し、冷媒とオイルの分離がより高精度で行われることで、冷媒ガスの回収に関しては、オイルセパレータで分離できなかったオイルがドライコンプレッサへ導入される量は、より一層低減している。冷媒ガスと混合されたオイルの量が低減されることは好ましいが、そのために、ドライコンプレッサの耐久性の低下がより顕著となっている。具体的には、二ヶ月乃至三ヶ月程度でコンプレッサを交換しなければならない状況も散見される。
また、上記したように、冷媒回収装置の回収処理速度の向上が必要であり、このためコンプレッサの動作をいかに効率よく行わせるかによって、回収処理速度の向上を図る必要がある。
【0014】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、冷媒ガスの回収に際し、ドライコンプレッサを使用すること、若しくはドライコンプレッサとともに使用可能なことを前提として、従来のオイルコンプレッサでは不可能な異種冷媒の混合の防止というドライコンプレッサの利点を損なわず、ドライコンプレッサの耐久性を飛躍的に向上させ、更には、冷媒処理速度、処理効率を向上させた冷媒回収装置、冷媒回収ユニットの提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、被冷媒回収機器のオイルを含む冷媒ガスから前記オイルを分離するオイルセパレータと、装置の動力源となるドライコンプレッサと、分離した冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備える冷媒回収装置において、前記オイルセパレータからドライコンプレッサへ至る通路に、ドライコンプレッサ内へオイルを噴霧するオイル供給手段を備え、前記オイルセパレータからオイル供給手段までの間に、圧力調整弁を設けたことを特徴とする冷媒回収装置を、課題を解決するための手段とする。
【0016】
また、本発明は、被冷媒回収機器のオイルを含む冷媒ガスから前記オイルを分離するオイルセパレータと、ドライコンプレッサに対する連結手段と、分離した冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備える冷媒回収ユニットにおいて、前記オイルセパレータからドライコンプレッサへ至る通路となる、前記ドライコンプレッサに対する連結手段に、ドライコンプレッサ内へオイルを噴霧するオイル供給手段を備え、オイルセパレータからオイル供給手段までの間に、圧力調整弁を設けたことを特徴とする冷媒回収ユニットを、課題を解決するための手段とする。
【0017】
更に、本発明は、被冷媒回収機器からオイルを含む冷媒ガスを回収する通路と、該通路に接続されるドライコンプレッサと、冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備える冷媒回収装置、及び冷媒回収ユニットにおいて、前記通路に、圧力調整弁と、オイル供給手段を備えたことを特徴とする冷媒回収装置、及び冷媒回収ユニットを、課題を解決するための手段とする。
【0018】
また、本発明は、被冷媒回収機器からオイルを含む冷媒ガスを回収する通路と、ドライコンプレッサに対する連結手段と、分離した冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備える冷媒回収ユニットにおいて、前記通路に、圧力調整弁と、オイル供給手段を備えたことを特徴とする冷媒回収ユニットを、課題を解決するための手段とする。
【0019】
更に、本発明は、上記冷媒回収装置若しくは冷媒回収ユニットについて、オイルセパレータで分離されたオイルを潤滑オイルとして給油機へ供給するためのオイル供給通路を備えた構成を、課題を解決するための手段とする。
【0020】
また、本発明は、上記オイル供給通路を備える構成について、オイルセパレータ内の設定圧力を検知する圧力検知手段と、オイルの供給の制御を行う制御装置を備え、該制御装置は、圧力検知手段から設定圧力の検知信号を受けて、オイル回収通路を通路Gからオイル供給通路Fに至る経路に切換える命令信号をバルブへ出力し、ドライコンプレッサの吸引で注油器にオイルを給油する冷媒回収装置及び冷媒回収ユニットを、課題を解決するための手段とする。
【0021】
本発明は、冷媒回収容器から被冷媒回収機器へ至る冷媒供給通路を備え、冷媒回収容器と被冷媒回収機器との圧力差を利用して冷媒回収容器内の冷媒ガスを高圧で被冷媒回収機器へ送り、被冷媒回収機器内の液体冷媒を吐出する冷媒回収装置、及び冷媒回収ユニットを、課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0022】
被冷媒回収機器のオイルを含む冷媒ガスから前記オイルを分離するオイルセパレータと、装置の動力源となるドライコンプレッサと、分離した冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備えてなる冷媒回収装置において、前記オイルセパレータからドライコンプレッサへ至る通路に、ドライコンプレッサ内へオイルを噴霧するオイル供給手段を備え、前記オイルセパレータからオイル供給手段までの間に、圧力調整弁を設けて、ドライコンプレッサの回収能力が最も発揮される最適な圧力で一定に保ち、供給量を制御することで、冷媒ガスの流れを利用してオイル供給手段で霧吹状にオイルを供給し、僅かなオイル供給量でドライコンプレッサの消耗を低減し、耐久性を向上させることができる。
【0023】
また、請求項2に係る発明によれば、被冷媒回収機器のオイルを含む冷媒ガスから前記オイルを分離するオイルセパレータと、ドライコンプレッサに対する連結手段と、分離した冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備える冷媒回収ユニットにおいて、前記オイルセパレータからドライコンプレッサへ至る通路となる、前記ドライコンプレッサに対する連結手段に、ドライコンプレッサ内へオイルを噴霧するオイル供給手段を備え、オイルセパレータからオイル供給手段までの間に、圧力調整弁を設けたことによって、既存のドライコンプレッサと連結することで、既存のドライコンプレッサに対して、上記請求項1に係る発明と同様に、圧力調整弁で供給量を制御し、冷媒ガスの流れを利用してオイル供給手段で霧吹状にオイルを供給することで、僅かなオイル供給量でドライコンプレッサの消耗を低減し、耐久性を向上させることができる。
【0024】
請求項3に係る発明及び請求項9に係る発明によれば、被冷媒回収機器からオイルを含む冷媒ガスを回収する通路と、該通路に接続されるドライコンプレッサと、分離した冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備える冷媒回収装置において、前記通路に、圧力調整弁と、オイル供給手段を備えたことを特徴とする冷媒回収装置、冷媒回収ユニットとしたことによって、オイルセパレータを備えていない冷媒回収装置、冷媒回収ユニットであっても、常に、冷媒が気化された状態(即ち冷媒ガス)として供給し、圧力調整弁で、ドライコンプレッサの回収能力が最も発揮される最適な圧力で一定に保ち、供給量を制御することで、冷媒ガス(気体)の流れを利用してオイル供給手段で霧吹状にオイルを供給し、僅かなオイル供給量でドライコンプレッサの消耗を低減し、耐久性を向上させることができる。
【0025】
請求項4に係る発明によれば、被冷媒回収機器からオイルを含む冷媒ガスを回収する通路と、ドライコンプレッサに対する連結手段と、分離した冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備え、前記通路に、圧力調整弁と、オイル供給手段を備えたことを特徴とする冷媒回収ユニットとしたことから、オイルセパレータを備えていない既存のドライコンプレッサと連結することによって、冷媒ガス(気体)の流れを利用してオイル供給手段で霧吹状にオイルを供給し、圧力調整弁で供給量を制御することで、僅かなオイル供給量でドライコンプレッサの消耗を低減し、耐久性を向上させることができる。
【0026】
請求項5、6に係る発明によれば、上記請求項1又は請求項3に係る冷媒回収装置、及び請求項2又は請求項4に係る冷媒回収ユニットの構成に加えて、オイルセパレータで分離されたオイルを潤滑オイルとして給油器へ供給するためのオイル供給管を備えたによって、人手によって給油機へ潤滑オイルを補給する必要がなく、冷媒から分離されたオイルの有効な活用が行えるため、非常に経済性、効率性に優れた冷媒回収装置又は冷媒回収ユニットとすることができる。
【0027】
請求項7、8に係る発明によれば、上記請求項5、6に係る発明の構成に加えて、オイルセパレータ内の設定圧力を検知する圧力検知手段と、オイルの供給の制御を行う制御装置を備え、該制御装置は、圧力検知手段から設定圧力の検知信号を受けて、オイル回収通路を通路Gからオイル供給通路Fに至る経路に切換える命令信号をバルブへ出力し、ドライコンプレッサの吸引で注油器にオイルを給油する構成を設けたことから、上記本発明の作用効果を得ることができることに加え、人手によることなく、潤滑オイルの供給が可能となるから、動作安定性の向上、省力化を兼備させることができる。
【0028】
請求項10、11に係る発明によれば、上記本発明の構成に加えて、冷媒回収容器から被冷媒回収機器へ至る冷媒供給通路を備えたことで、高圧となった被冷媒回収容器と、これに比して低圧となる被冷媒回収機器との圧力差を利用して、冷媒回収容器内の冷媒ガスを高圧力で被冷媒回収機器へ送るプッシュプルを行い、被冷媒回収機器内の液体冷媒を吐出する構成を追加したことから、上記本発明によってドライコンプレッサの耐久性が確保された上で、被冷媒回収機器内での気化熱の発生を防止し、被冷媒回収機器内の圧力を高圧に保つことで、冷媒回収処理効率、冷媒回収処理速度を飛躍的に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、オイルセパレータからドライコンプレッサへ至る通路に、ドライコンプレッサ内へオイルを噴霧するオイル供給手段を備え、前記オイルセパレータからオイル供給手段までの間に、圧力調整弁を設け、オイルセパレータで分離されたオイルを潤滑オイルとして給油器へ供給するためのオイル供給管を備えたことによって、オイルセパレータで気化した冷媒ガスの流れを利用してオイル供給手段でオイルを霧状としてドライコンプレッサ内へ供給することで、僅かなオイル供給量でドライコンプレッサの消耗を低減し、耐久性を向上させ、圧力調整弁で供給量を制御することで、経済性、効率性に優れた冷媒回収装置を実現した。
【実施例】
【0030】
図1は本発明の実施例1に係る冷媒回収装置の配管図、図2は本発明の実施例1に係る冷媒回収ユニットU1の配管図、図3は本発明の実施例1に係る冷媒回収ユニットU2の配管図、図4は本発明の実施例1に係る冷媒回収ユニットU3の配管図、図5は本発明の実施例1に係る冷媒回収装置に用いたオイルセパレータを示す参考図、図6乃至図9は実施例2の構成について、本発明の実施例1に示した各冷媒回収ユニットU1、U2、U3、U4の構成に対応してオイル供給管を具備させた構成を示す配管図、図10はオイルセパレータを用いず直接被冷媒回収機器Rからドライコンプレッサへ冷媒ガスを導入する構成とした冷媒回収装置を示す配管図である。
【0031】
(実施例1)
本発明の実施例1に係る冷媒回収装置Mは、図1に示すように、被冷媒回収機器Rとなる車両のクーラーユニットに接続して用いるものである。車両のクーラーユニット内にはオイルが混合した液体冷媒が貯留されている。主要構成は、分離後の液体冷媒を貯留するための冷媒回収容器5、オイル受器8、クーラーユニットのオイルを含む冷媒から前記オイルを分離し、且つ冷媒を気化するオイルセパレータ1、装置の動力源となるドライコンプレッサ2、冷媒ガスを液化するための凝縮器6等である。これらの構成は、一般的な冷媒回収装置と共通する。本実施例1における冷媒回収装置Mを用いた冷媒回収処理は、クーラーユニットからオイルが混入した冷媒を回収する回収工程と、回収後、冷媒回収装置内で冷媒及びオイルを分離させる分離工程と、冷媒を冷媒回収容器5に貯留し、更には冷媒回収容器5に貯留した冷媒をクーラーユニットへ移送する移送工程とを有する。
【0032】
そして、本発明に係る冷媒回収装置Mの特徴とする構成は、ドライコンプレッサ2の吸引側接続部20側に、圧力調整弁3と、注油器4とを組み合わせて接続した点にある。以下、各構成について具体的に記載する。
【0033】
本実施例1において用いたオイルセパレータ1は、本出願人が先に出願した特許文献1に係るオイルセパレータと略同様の構成を備えたものであり、図5に示すように、クーラーユニット(被冷媒回収機器R)のオイルを含む冷媒から前記オイルを分離して凝縮器6により液体冷媒として冷媒回収容器5に回収し、液体冷媒をクーラーユニットに充填する冷媒回収充填装置に使用するもので、オイルと液体冷媒を加熱手段で分離する冷媒回収充填用オイルセパレータ1である。
【0034】
上記オイルセパレータ1は、中空胴部14の上下を天端板150と底端板151で閉塞した蒸発用気化室140を本体とし、前記天端板150の下部に位置し内部周囲及び天端板150との間に通路空間を確保して隔壁を設けるとともに、中心管154が液体冷媒の回収用通路の一部となり外管153が冷媒回収時に被回収冷媒を回収する通路A2に連続する熱交換用二重管152を、溜まりを招かないように縦中心周りに螺旋形に形成して蒸発用気化室140内に設け、該熱交換用二重管152における外管153の上端には、該外管153の上端を閉塞するとともに中心管154が貫通する浮動弁156を設け、前記浮動弁156は、外管153の上端を開閉可能な弁体と、該弁体を受ける弁受け部材と、前記弁体上に設けられる錘とからなり、弁体の上昇により外管153の上端を開放する。
【0035】
そして、オイルセパレータ1の前記蒸発用気化室140の底端板151には、一端がクーラーユニットとの連結側となる通路A1とオイルドレンへの通路Gとに分岐する通路A2に通じ、他端がオイル排出と冷媒流入とを兼ねる導入口として蒸発用気化室140内に開口し、且つ該導入口と前記熱交換用二重管152の外管153を含む通路Bとのいずれかに流通路を変更する切換機能弁を具備する第一接続部10(冷媒回収時低圧流入側)と、前記熱交換用二重管152の中心管154の下部に配管されて液体冷媒の流出口となる第四接続部13(冷媒回収時高圧流出側)とを設け、底端板151の底面には蒸発用気化室140を加熱する底部ヒータ155と、底部の温度調節手段とを設けている。
【0036】
また、オイルセパレータ1の前記蒸発用気化室140の上部又は前記天端板150には、一端が蒸発用気化室140の内部で開口し他端が二方向の選択的な流通路の変更が可能な開閉弁を具備する第二接続部11(冷媒回収時低圧流出側)と、一端が前記熱交換用二重管152の中心管154の上部に配管され他端がニ方向の流通路を具備する第三接続部12(冷媒回収時高圧流入側)を設けている。
【0037】
更に、オイルセパレータ1の蒸発用気化室140内にオイルの液面位置を検知するための上側レベルセンサ141及び下側レベルセンサ142を備えている。
【0038】
オイルセパレータ1の第一接続部10は、熱交換用二重管152の下部に連結してある。熱交換用二重管152は、中心管154が液体冷媒を回収する通路Dの一部となる。外管153は冷媒回収時に被回収冷媒を回収する後記通路A2と連続する。
【0039】
図1に示すように、被冷媒回収機器Rとなる車両のクーラーユニットの高圧出側の接続部R1と、オイルセパレータ1の底面の第一接続部10とを、通路A1、A2で接続してある。
オイルセパレータ1の上面の第二接続部11からドライコンプレッサ2の吸入側接続部20(低圧側)までを通路Bで接続してある。通路Bには、オイルセパレータ1に近い側から順に、圧力調整弁3、オイル供給手段である注油器4を、設けている。
【0040】
ドライコンプレッサ2の吐出側接続部21(高圧側)とオイルセパレータ1の第三接続部12を、通路Cで接続してある。通路Cには、凝縮器6を設けてある。また、オイルセパレータ1の第四接続部13と、冷媒回収容器5を回収通路Dで接続してある。そして、冷媒回収容器5とクーラーユニットを回収通路Eで接続してある。冷媒回収容器5の回収通路D側には、第四バルブV4を設け、該冷媒回収容器5の回収通路E側には、第五バルブV5を設けている。
【0041】
通路A1、A2は、オイル受器へのオイルを輸送する通路Gと連結してある。通路A1には第一バルブV1を設けてある。また通路Gには第二バルブV2を設けてある。第一バルブV1を開き第二バルブV2を閉じることで、クーラーユニットからオイルセパレータ1への通路A1、A2を開く経路を選択でき、第一バルブV1を閉じて第二バルブV2を開くことで、クーラーユニットからの冷媒の供給を停止してオイルセパレータ1内のオイルをオイル受部8へ移す経路を選択できる。また、通路A1には、フィルタ7を設けてあり、該フィルタ7で液体冷媒に混入した埃や異物を除去することができる。更に、通路A1のフィルタと第一バルブV1との間には、圧力を検知する第一センサS1(圧力検知手段)を設けてある。また、第二接続部11と第三バルブV3の間には、オイルセパレータ1内の圧力を検知する圧力検知手段S2を設けてある。
【0042】
前記第一センサS1は、被冷媒回収機器内の冷媒ガスがなくなり、ガス圧力が設定値よりも低下したことを検知する手段である。また、前記第二センサS2は、オイルセパレータ1内のガス圧力が設定値よりも低下したことを検知する
【0043】
ドライコンプレッサ2によって得られる圧力値が外気温等の諸条件によって変動することから、前記圧力調整弁3によって、圧力に一定の上限値を設定することによって、オイル供給手段である注油器4のオイルの噴霧量を一定に保つ。そして、給排気のバランスを保ち、ドライコンプレッサ2の円滑な動作を確保する。本実施例1における圧力調整弁3は、株式会社鷺宮製作所製の圧力調整弁3を使用している。
【0044】
注油器4は、ドライコンプレッサ2への潤滑オイルを一定量貯留する貯留部40と、外部からオイルを導入するためのオイル導入部41と、外部から潤滑オイルの貯留量を確認できる透明な確認窓を有するレベルゲージ42と、冷媒ガス吸入部43と、冷媒ガス排出部44と、注油器4の内部で霧化させる微量の潤滑オイルを供給するためのオイル供給部45と、オイル供給量調節部46を備えている。冷媒ガス吸入部43から冷媒ガス排出部44までの冷媒ガス通路47に、オイル供給部から潤滑オイルが供給される。潤滑オイルの供給量は、オイル供給量調節部の操作によって、適宜調節できる。本実施例1における前記注油器4は、日本精器株式会社製の注油器(ルブリケータ)を使用している。
【0045】
本実施例1に係る注油器4を含め、一般的に注油器は、通常大気環境下(エアを使用する環境下)において使用するものであり、被冷媒回収機器Rからの冷媒回収という特殊な冷媒ガス環境で用いるものではない。本実施例1における注油器4も本来冷媒ガス環境下での使用は劣化を生じるため使用できないものとされている。このため実施例1では、冷媒ガス環境下における既製の注油器4を使用して、その耐久性について十分な連続稼動試験を行うことによって、当該注油器4が、実施例1で冷媒として使用しているフロンに対する耐久性があることを見出している。そして、前記圧力調整弁3と組み合わせて使用することにより、ドライコンプレッサ2に対して安定したオイルの噴霧を行うものとしている。
【0046】
次に、以上に示した本実施例1に係る冷媒回収装置Mの動作について図1を参照して説明する。
【0047】
先ず、冷媒回収容器5の第四バルブV4を開放し、図示しないマニホールドゲージ(低圧側、高圧側の圧力計を備えた構成を有するマニホールド)を同様に開放し、プッシュプルを行い、被冷媒回収機器Rであるクーラーユニットにガス圧力をかける。
【0048】
クーラーユニットの低圧側接続部R2へガスを導入する。クーラーユニットの高圧側接続部R1から通路A1、A2を通じて、オイルと冷媒を(液体と気体の混合物として)、オイルセパレータ1の第一接続部10へ導入する。クーラーユニットからの一定量の冷媒を冷媒回収処理装置へ導入すると、第一バルブV1を閉じ、第二バルブV2を開くことで、第一接続部10とオイル受部8とが接続されるように、切り換えられる。
【0049】
導入されたオイルを含有する冷媒は、熱交換用二重管152における中心管154に通され、熱交換を行う。前記オイルを含有する冷媒は、熱交換用二重管152の上部に設けた逆流防止のための浮動弁156を僅かに押し上げ、冷媒ガスと、オイル及び液体冷媒の混合物とに分離される。
【0050】
更にオイルを含んだ液体冷媒は、蒸発用気化室140の底部に落下し、更に比重の違いで、オイルが上層、液体冷媒が下層として分離し、底部ヒータ155によって加熱され、下層の液体冷媒及び液体冷媒中の水分は速やかに気化される。尚、本実施例での加熱温度は約40℃である。
【0051】
底部ヒータの加熱によってオイルセパレータ1内は高圧となっており、第二接続部11から圧力調整弁3、注油器4を経て、ドライコンプレッサ2への処理能力に最適な圧力で、冷媒ガスをドライコンプレッサ2へ送る。最適な圧力値は、圧力調整弁によって決定する。本実施例では、約490kPa(5kgf/cm)としている。
【0052】
ドライコンプレッサ2の吸引により、前記オイルセパレータ1の第二接続部11から、圧力調整弁3で気化された冷媒(冷媒ガス)は、上記設定した一定圧力で注油器4へ送られる。
【0053】
本実施例1における注油器4への給油は、図1に示す給油口キャップ48を開き、手動で、注油器4のオイル導入部41から貯留部40へ給油する。
【0054】
本実施例1における注油器4は、負圧によって貯留したオイルをオイル供給部から滴下し、滴下されたオイルを冷媒ガス通路47で霧化し、冷媒ガス吸入部43から導入された冷媒ガスとともに冷媒ガス排出部44からドライコンプレッサ2へ送る。
【0055】
オイルは、潤滑オイルとして霧状となってドライコンプレッサ2に吸引され、ドライコンプレッサ2内の潤滑機能を発揮する。
【0056】
ここで、注油器4内において、回収された冷媒が液体を含むと、当該液体は導入された注油器4内において膨張し、蒸発の際の気化熱によって、注油器4における合成樹脂製の透明なオイルゲージタンクは急冷され、破損する虞がある。このため実施例1に係るオイルセパレータ1は、迅速に冷媒を気化させて注油器4を通過させる手段として機能させることで、上記合成樹脂製の透明なオイルゲージタンクの破損を防止する。
【0057】
ドライコンプレッサ2から排出された高圧縮の冷媒ガスは、オイルセパレータ1の第三接続部12へ導入される。第四接続部13から冷媒を、第四バルブV4を経由して冷媒回収容器5へ導入する。更に、冷媒回収容器5から、冷媒ガスをクーラーユニットへ導入できる。
【0058】
オイルセパレータ内に残存するオイルは、第一接続部から通路A2、通路Gを経てオイル受部8へ貯留する。
【0059】
一方、注油器4への潤滑オイルの供給は、透明のレベルゲージ42によって、注油器4内の潤滑オイル量を監視することで、随時供給する。
【0060】
第一センサS1は、被冷媒回収機器内のガス圧を常時監視しており、設定された圧力(例えば、0Pa乃至―13.3Pa程度(0mmHg乃至―100mmHg程度)であることを検知すると、制御装置9へ検知信号を送信する。前記制御装置9は、第一センサS1からの検知信号を受信すると、冷媒回収装置Mの停止処理信号を制御装置9へ出力する。
【0061】
第二センサS2は、オイルセパレータ内のガス圧を常時監視しており、設定された圧力であることを検知すると、制御装置9へ検知信号を送信する。前記制御装置9は、図示されない警報ブザーへ警報音の命令出力を行う。
【0062】
以上のように、上記実施例1に係る発明は、冷媒回収装置Mにおいて、ドライコンプレッサ2を用いたものにつき、公知の圧力調整弁3と注油器4を組み合わせることにより、従来なし得なかった、冷媒ガスに常時晒される特殊環境下のドライコンプレッサ2の耐久性を向上し、冷媒回収装置Mの長期に亘る品質の安定性を実現している。
【0063】
以上が本発明の実施例1に係る冷媒回収装置Mであるが、本発明においては、例えば、図2乃至図4に示すような形態とすることができる。図2は、二点差線で囲んだ範囲、即ち圧力調整弁3、注油器4、ドライコンプレッサ2、凝縮器6を一つのユニット、即ち冷媒回収ユニットU1としたものである。このようなユニット化によって、既存のオイルセパレータとの組み合わせを容易とし、冷媒回収システムを構築することができる。図3は、二点差線で囲んだ範囲、即ち、オイルセパレータ1、オイル受部8、注油器4、ドライコンプレッサ2、凝縮器6を、一つの冷媒回収ユニットU2としたものである。この冷媒回収ユニットU2によれば、既存のドライコンプレッサ2との組み合わせを容易とし、冷媒回収システムを構築することができる。図4は、図2及び図3の例の組み合わせであり、オイルセパレータ1、ドライコンプレッサ2の双方について既存のものを使用できる冷媒回収ユニットU3を示すものである。図5は実施例1に係る冷媒回収装置に用いたオイルセパレータを示す参考図である。
【0064】
(実施例2)
図6は本発明の実施例1に係る冷媒回収装置Mの改良となる実施例2にかかる冷媒回収装置Mである。本実施例2は、基本構成としては、実施例1に係る冷媒回収装置Mと共通するが、オイルセパレータ1で分離したオイルを、ドライコンプレッサ2の潤滑オイルとして、注油器4の貯留部に自動供給する構成を追加したものである。この自動供給する構成は、実施例1と同様の手動での供給に切り換えることができる。
【0065】
実施例2における注油器4自体は、実施例1と同様であり、ドライコンプレッサ2への潤滑オイルを一定量貯留する貯留部40と、外部からオイルを導入するためのオイル導入部41と、冷媒ガス吸入部43と、冷媒ガス排出部44と、注油器4の内部で霧化させる微量の潤滑オイルを供給するためのオイル供給部45と、オイル供給量調節部46を備えている。また、冷媒ガス吸入部43から冷媒ガス排出部44までの冷媒ガス通路47に、オイル供給部45から潤滑オイルが供給される。潤滑オイルの供給量は、オイル供給量調節部46の操作によって、適宜調節できる。本実施例2における注油器4は、自動オイル供給方式であることから、特に目視によるレベルゲージの監視を行う必要性が乏しく、またレベルゲージの樹脂部の耐久性を向上させるため、不透明の金属製のオイルゲージタンクを用いている。
【0066】
本実施例2に係る冷媒回収装置Mの特徴である、分離した冷媒オイルを注油器4の貯留部に供給する構成は、具体的には、オイルセパレータ1の第一接続部10から、回収用通路A2、連結部、オイル供給通路Fを経て、該注油器4のオイル導入部41へ至るものとしている。オイル供給通路Fには、第六バルブV6を設けてある。
【0067】
即ち、本実施例2においては、第一バルブV1、第三バルブV3を開き第二バルブV2、第六バルブV6を閉じることで、クーラーユニットからオイルセパレータ1への通路A1、A2を開く経路を選択でき、第一バルブV1、第三バルブV3、第六バルブV6を閉じて第二バルブV2を開くことで、クーラーユニットからの冷媒の供給を停止してオイルセパレータ1内のオイルをオイル受部8へ移す経路を選択でき、第一バルブV1、第二バルブV2を閉じて、第六バルブV6を開くことで、オイル供給通路Fから注油器4へのオイルの補給経路を選択することができる。
【0068】
更に、本実施例2は上記第一バルブV1、第二バルブV2、第三バルブV3、第六バルブV6の動作を自動制御する構成である。具体的には、通路A1のフィルタと第一バルブV1との間には、圧力を検知する第一センサS1(圧力検知手段)を設けてある。第二接続部11と第三バルブV3の間には、オイルセパレータ1内の設定圧力を検知する圧力検知手段S2を設けてある。また、前記各バルブと第一センサS1、第二センサS2は、制御装置9と電気配線で接続してある。前記制御装置9は、圧力検知手段S2から設定圧力の検知信号を受けて、オイル回収通路を通路Gからオイル供給通路Fに至る経路に切換える命令信号をバルブへ出力する。本実施例2における通路Gからオイル供給通路Fへ切換える命令信号は、第一バルブV1、第二バルブV2、第三バルブV3、第六バルブV6に対して出力する。前記命令信号によって、前記第一バルブV1に対しては閉状態を保ち、第二バルブ及び第三バルブを閉状態とし、第六バルブV6を開状態とする。
【0069】
本実施例2に係る冷媒回収装置Mの動作について、(実施例1に係る冷媒回収装置の動作と重複する部分もあるが、)以下に、説明する。
【0070】
先ず、実施例1と同様に冷媒回収容器5の第四バルブV4を開放し、図示しないマニホールドゲージ(低圧側、高圧側の圧力計を備えた構成を有するマニホールド)を同様に開放し、プッシュプルを行い、被冷媒回収機器Rであるクーラーユニットの低圧側接続部R2にガス圧力をかける。
【0071】
クーラーユニットの低圧側接続部R2へガスを導入し、クーラーユニットの高圧側接続部R1から通路A1、A2を通じて、オイルと冷媒を(液体と気体の混合物として)、オイルセパレータ1の第一接続部10へ導入する。クーラーユニットからの一定量の冷媒を冷媒回収処理装置へ導入すると、第一バルブV1を閉じ、第三バルブV3を閉じ、第二バルブV2を開くことで、第一接続部10とオイル受部8とが接続されるように、切り換えられる。
【0072】
導入されたオイルを含有する冷媒は、熱交換用二重管152における中心管154に通され、熱交換を行う。前記オイルを含有する冷媒は、熱交換用二重管152の上部に設けた逆流防止のための浮動弁156を僅かに押し上げ、冷媒ガスと、オイル及び液体冷媒の混合物とに分離される。
【0073】
更にオイルを含んだ液体冷媒は、蒸発用気化室140の底部に落下し、更に比重の違いで、オイルが上層、液体冷媒が下層として分離し、底部ヒータ155によって加熱され、下層の液体冷媒及び液体浩媒中の水分は速やかに気化される。
【0074】
底部ヒータの加熱によってオイルセパレータ1内は高圧となっており、第二接続部11から圧力調整弁3、注油器4を経て、ドライコンプレッサ2への処理能力に最適な圧力で、冷媒ガスをドライコンプレッサ2へ送る。最適な圧力値は、圧力調整弁によって決定する。本実施例では、約490kPa(5kgf/cm)としている。
【0075】
ドライコンプレッサ2の吸引により、前記オイルセパレータ1の第二接続部11から、圧力調整弁3で気化された冷媒(冷媒ガス)は、上記設定した一定圧力で注油器4へ送られる。
【0076】
注油器4は、オイル導入部41から貯留部40へオイルを導入して貯留し、負圧によって貯留したオイルをオイル供給部から滴下し、滴下されたオイルを冷媒ガス通路47で霧化し、冷媒ガス吸入部43から導入された冷媒ガスとともに冷媒ガス排出部44からドライコンプレッサ2へ送る。
【0077】
その後、オイルセパレータ1内の冷媒が殆ど残存しなくなり圧力が低下して設定値(例えば本実施例では約68.6kPa(0.7kgf/cm))になることを、制御装置9が圧力検知手段S2(第二センサ)からの検知信号を受信すると、制御装置9は、オイルの回収経路が通路A2からオイル供給通路Fとなるように、第一バルブV1を閉じ、第二バルブV2を閉じ、第三バルブV3を閉じて、第六バルブV6を開くように、命令信号を送信して制御する。オイルセパレータ1内の約68.6kPa(0.7kgf/cm)のガス(気体)圧力と、前記オイルセパレータ1内のドライコンプレッサ2の吸引によって、注油器4のオイル導入部41へ当該オイルを潤滑オイルとして補給する。
【0078】
分離したオイルを潤滑オイルとして補給した後、第一バルブV1を閉じ、第三バルブを閉じ、第六バルブV6を閉じて、第二バルブV2を開き、第一接続部10と通路Gを繋ぐように切換え、オイルセパレータ1内の圧力で、残留したオイルをオイル受部8へ押出す。
【0079】
尚、実施例2においても、実施例1と同様に、ドライコンプレッサ2から排出された冷媒ガスは、オイルセパレータ1の第三接続部12へ導入され、第四接続部13から第四バルブV4、導入側接続部50を通して、冷媒回収容器5へ導入される。
【0080】
以上が本発明の実施例2に係る冷媒回収装置Mであるが、本発明に於いては、実施例1と同様に、例えば、図7乃至図9に示すような形態とすることができる。図7は、二点差線で囲んだ範囲、即ち圧力調整弁3、注油器4、ドライコンプレッサ2、凝縮器6を一つのユニット、即ち冷媒回収ユニットU4としたものである。このようなユニット化によって、既存のオイルセパレータとの組み合わせを容易とし、冷媒回収システムを構築することができる。図8は、二点差線で囲んだ範囲、即ち、オイルセパレータ1、オイル受部8、注油器4、ドライコンプレッサ2、凝縮器6を、一つの冷媒回収ユニットU5としたものである。この冷媒回収ユニットU5によれば、既存のドライコンプレッサ2との組み合わせを容易とし、冷媒回収システムを構築することができる。図9は、図7及び図8の例の組み合わせであり、オイルセパレータ1、ドライコンプレッサ2の双方について既存のものを使用できる冷媒回収ユニットU6を示すものである。
【0081】
尚、本発明におけるオイルセパレータ1は、特に上記実施例1、2に示したものに限定されず、回収される冷媒の気化を促進する機能を有していれば足りる趣旨である。即ち、冷媒を気化して一定圧力で注油器4へ導入することで、注油器4の破損等を防止でき、注油器4の安定した稼動によって本発明の目的とするドライコンプレッサ2の消耗の低減を実現することができるからである。
【0082】
また、図10に実施例3として示すように、本発明においては、被冷媒回収機器Rであるクーラーユニットとオイルセパレータ1とを接続せずに、直接クーラーユニットとドライコンプレッサ2を接続して、これらの間に圧力調整弁3、注油器4を介在させる構成とすることもできる。即ち、クーラーユニット内の冷媒が冷媒ガス(気体)であるときには、オイルセパレータ1によって気化する必要がないため、オイルセパレータを用いないものとすることができる。
一方、冷媒が液体冷媒であるときには、上記実施例1及び実施例2に示した構成が望ましいが、処理速度を考慮する必要がなければ処理能力は非常に遅いものの、オイルセパレータ1を用いないものとすることもできる。
【0083】
ドライコンプレッサ2は、オイルコンプレッサにおけるオイルパンに相当する構成を有しない。このため、本発明の構成の適用の有無にかかわらず、冷媒はドライコンプレッサ2における潤滑作用を奏するだけで実質的にドライコンプレッサ2内に残留せず、その結果、オイルコンプレッサのような異種の冷媒の混入を生じる事態に至らない。
従って、本発明は、異種の冷媒の混合を防止できるドライコンプレッサ2の利点を生かした上で、微量の潤滑オイルによって、該ドライコンプレッサ2の消耗を大幅に低減できる。
【0084】
また、本発明は、例えば、実施例4として、図11に示す冷媒回収装置、図12に示す冷媒回収ユニットのように、本発明の実施例2(例えば、図6、図7)に係るドライコンプレッサを2基以上併設することもできる。これらの冷媒回収装置若しくは係る冷媒回収ユニットは、オイルセパレータ1の第二接続部11から通路Bを分岐して複数設け、各通路Bにつき、実施例1に開示した圧力調整弁3、注油器4、ドライコンプレッサ2を順次設け、各ドライコンプレッサ2の吐出側の通路Cに凝縮器6を設け、各通路Cを連結して、オイルセパレータの第三接続部に結合した構成である。
【0085】
当該構成によれば、本発明の特徴であるドライコンプレッサ2の耐久性の向上を実現できたことで、該ドライコンプレッサを更に複数設け、長期に亘って冷媒回収処理の効率を非常に高めることに成功している。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施例1に係る冷媒回収装置の配管図。
【図2】本発明の実施例1に係る冷媒回ユニットU1とオイルセパレータとの関係を示す配管図。
【図3】本発明の実施例1に係る冷媒回収ユニットU2とドライコンプレッサとの関係を示す配管図。
【図4】本発明の実施例1に係る冷媒回収ユニットU3と既存設備との関係を示す配管図。
【図5】本発明の実施例1に係る冷媒回収装置に用いているオイルセパレータを示す参考図。
【図6】本発明の実施例2に係る冷媒回収装置の配管図。
【図7】本発明の実施例2に係る冷媒回収ユニットU4とオイルセパレータとの関係を示す配管図。
【図8】本発明の実施例2に係る冷媒回収ユニットU5とドライコンプレッサとの関係を示す配管図。
【図9】本発明の実施例2に係る冷媒回収ユニットU6と既存設備との関係を示す配管図。
【図10】本発明の実施例3に係る冷媒回収装置を示す配管図。
【図11】本発明の実施例4に係る冷媒回収装置を示す配管図。
【図12】本発明の実施例4に係る冷媒回収ユニットを示す配管図。
【図13】従来の冷媒回収装置を示す配管図。
【符号の説明】
【0087】
1 オイルセパレータ
10 第一接続部
11 第二接続部
12 第三接続部
13 第四接続部
14 中空胴部
140 蒸発用気化室
141 上側レベルセンサ
142 下側レベルセンサ
150 天端板
151 底端板
152 熱交換用二重管
153 外管
154 中心管
155 底部ヒータ
156 浮動弁
2 ドライコンプレッサ
20 吸引側接続部
21 吐出側接続部
3 圧力調整弁
4 注油器
40 貯留部
41 オイル導入部
42 レベルゲージ
43 冷媒ガス吸入部
44 冷媒ガス排出部
45 オイル供給部
46 オイル供給量調節部
47 冷媒ガス通路
48 給油口キャップ
5 冷媒回収容器
50 導入側接続部
51 排出側接続部
6 凝縮器
7 フィルタ
8 オイル受部
9 制御装置
A1 通路
A2 通路
B 通路
C 通路
D 通路
E 通路
G 通路
F オイル供給通路
M 冷媒回収装置
R 被冷媒回収機器(クーラーユニット)
R1 高圧側接続部
R2 低圧側接続部
S1 第一センサ(圧力検知手段)
S2 第二センサ(圧力検知手段)
U1 冷媒回収ユニット
U2 冷媒回収ユニット
U3 冷媒回収ユニット
U4 冷媒回収ユニット
U5 冷媒回収ユニット
U6 冷媒回収ユニット
V1 第一バルブ
V2 第二バルブ
V3 第三バルブ
V4 第四バルブ
V5 第五バルブ
V6 第六バルブ
Z 冷媒回収装置(従来)
Z1 被冷媒回収機器(従来)
Z2 コンプレッサ(従来)
Z3 凝縮器(従来)
Z4 冷媒回収容器(従来)
Z5 圧力検知手段(従来)
Z6 バルブ(従来)
Z7 フィルタ(従来)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷媒回収機器のオイルを含む冷媒ガスから前記オイルを分離するオイルセパレータと、装置の動力源となるドライコンプレッサと、分離した冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備える冷媒回収装置において、
前記オイルセパレータからドライコンプレッサへ至る通路に、ドライコンプレッサ内へオイルを噴霧するオイル供給手段を備え、前記オイルセパレータからオイル供給手段までの間に、圧力調整弁を設けたことを特徴とする冷媒回収装置。
【請求項2】
被冷媒回収機器のオイルを含む冷媒ガスから前記オイルを分離するオイルセパレータと、ドライコンプレッサに対する連結手段と、分離した冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備える冷媒回収ユニットにおいて、
前記オイルセパレータからドライコンプレッサへ至る通路となる、前記ドライコンプレッサに対する連結手段に、ドライコンプレッサ内へオイルを噴霧するオイル供給手段を備え、オイルセパレータからオイル供給手段までの間に、圧力調整弁を設けたことを特徴とする冷媒回収ユニット。
【請求項3】
被冷媒回収機器からオイルを含む冷媒ガスを回収する通路と、該通路に接続されるドライコンプレッサと、冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備える冷媒回収ユニットにおいて、
前記通路に、圧力調整弁と、オイル供給手段を備えたことを特徴とする冷媒回収ユニット。
【請求項4】
被冷媒回収機器からオイルを含む冷媒ガスを回収する通路と、ドライコンプレッサに対する連結手段と、分離した冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備える冷媒回収ユニットにおいて、前記通路に、圧力調整弁と、オイル供給手段を備えたことを特徴とする冷媒回収ユニット。
【請求項5】
オイルセパレータで分離されたオイルを潤滑オイルとして給油器へ供給するためのオイル供給通路を備えたことを特徴とする請求項1記載の冷媒回収装置。
【請求項6】
オイルセパレータで分離されたオイルを潤滑オイルとして給油機へ供給するためのオイル供給通路を備えたことを特徴とする請求項2、3又は4記載の冷媒回収ユニット。
【請求項7】
オイルセパレータ内の設定圧力を検知する圧力検知手段と、オイルの供給の制御を行う制御装置を備え、該制御装置は、圧力検知手段から設定圧力の検知信号を受けて、オイル回収通路を通路Gからオイル供給通路Fに至る経路に切換える命令信号をバルブへ出力し、ドライコンプレッサの吸引で注油器にオイルを給油することを特徴とする請求項5記載の冷媒回収装置。
【請求項8】
オイルセパレータ内の設定圧力を検知する圧力検知手段と、オイル供給の制御を行う制御装置を備え、該制御装置は、圧力検知手段から設定圧力の検知信号を受けて、オイル回収通路を通路Gからオイル供給通路Fに至る経路に切換える命令信号をバルブへ出力し、ドライコンプレッサの吸引で注油器にオイルを給油することを特徴とする請求項6記載の冷媒回収ユニット。
【請求項9】
被冷媒回収機器からオイルを含む冷媒ガスを回収する通路と、該通路に接続されるドライコンプレッサと、冷媒ガスを液体冷媒とする凝縮器と、分離後の液体冷媒を貯留する冷媒回収容器を備える冷媒回収装置において、
前記通路に、圧力調整弁と、オイル供給手段を備えたことを特徴とする冷媒回収装置。
【請求項10】
冷媒回収容器から被冷媒回収機器へ至る冷媒供給通路を備え、冷媒回収容器と被冷媒回収機器との圧力差を利用して冷媒回収容器内の冷媒ガスを高圧で被冷媒回収機器へ送り、被冷媒回収機器内の液体冷媒を吐出することを特徴とする請求項1、5、7又は9記載の冷媒回収装置。
【請求項11】
冷媒回収容器から被冷媒回収機器へ至る冷媒供給通路を備え、冷媒回収容器と被冷媒回収機器との圧力差を利用して冷媒回収容器内の冷媒ガスを高圧で被冷媒回収機器へ送り、被冷媒回収機器内の液体冷媒を吐出することを特徴とする請求項2、3、4、6又は8記載の冷媒回収ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−275273(P2008−275273A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120876(P2007−120876)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(000109772)デンゲン株式会社 (6)