説明

冷媒混合物の使用

冷媒1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)の代替物として使用可能な冷媒混合物、その際、該混合物は、150未満のGWP100を有するハロゲン化炭化水素とCOとを含有するか、又は150未満のGWP100を有するハロゲン化炭化水素とCOとから成る。該冷媒混合物は有利に空調装置、特に自動車用空調装置における冷媒として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒混合物、特に、自動車及び輸送用車両における空調装置のための、有利に自動車用空調装置のための冷媒混合物に関する。
【0002】
ハロゲン化炭化水素又はその混合物を冷媒として使用することは公知である。
【0003】
数年来、特に乗り物用空調装置に関して、いわゆる自然冷媒が論議されている。二酸化炭素は、従来使用されてきたオゾンに優しい1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)と比較して、その直接的な地球温暖化能力が極めて小さい、あり得る代替物質の1つである。二酸化炭素は約1950年までその不燃性のために冷却機器のための作用物質として使用されていた。しかしながら、不利な三重点及び不利な圧力位置のために、フロンガスの出現に伴って冷媒として価値を失った。
【0004】
COを冷媒として単独でか又はハロゲン化炭化水素との混合物で使用することは公知である。
【0005】
更に、ハロゲン化炭化水素のうち特にフルオロクロロ炭化水素は極めて高い地球温暖化指数(GWP)を有するのに対して、部分フッ素化炭化水素に関するGWP値は明らかに低いことも公知である。そうこうするうちに、冷却技術の分野において、オゾン分解能力を有しない多数の物質が利用可能となってきている。
【0006】
DE4116274には、CO及び部分フッ素化炭化水素、例えばR134a(CF−CHF)又はR152a(CHF−CH)を含有する冷媒混合物が開示されている。前記混合物は特に冷媒R22(CHClF)及びR502((CHClF)(R22)とCClF(R115)とからの共沸混合物)の代替物として使用されるべきである。
【0007】
WO00/39242には、同様に、R22(CHClF)又はR502(CHClFとCClFとからの混合物)の代用物としての冷媒混合物が記載されている。前記混合物はフルオロエタン(R161)とトリフルオロヨードメタン(R13I1)とから成る。
【0008】
本発明の課題は、R134aの代替物として使用可能な冷媒混合物を提供することである。該冷媒混合物は最小の地球温暖化指数を有し、有害でなくかつ出来る限り不燃性であるのが有利である。
【0009】
本発明による冷媒混合物は、150未満のGWP100を有するハロゲン化炭化水素とCOとを含有するか、又は150未満のGWP100を有するハロゲン化炭化水素とCOとから成る。
【0010】
150未満のGWP100を有するハロゲン化炭化水素として、特に、冷媒1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)の代替物としてCOと組み合わせて使用することができる1,1−ジフルオロエタン(R152a)、フルオロエタン(R161)及びトリフルオロヨードメタンを適当な化合物と見なすことができる。
【0011】
フルオロエタン及びジフルオロエタンは単独の物質としては可燃性であるが、しかしながら150未満のGWP100を有し、かつ雰囲気中で極めて不安定である。例えば、フルオロエタンに関して12のGWP100が見い出され、かつジフルオロエタンに関して120のGWP100が見出される。
【0012】
トリフルオロヨードメタンは不燃性であるが、それと引き替えに雰囲気中で同様に不安定である。単独の物質とCOとの組合せにより、単独の物質の不利な特性を補償することができ、かつ本発明による冷媒混合物を特に自動車用空調装置のために使用することができることが見い出された。該冷媒混合物はその直接的な地球温暖化能力に関して1,1,1,2−テトラフルオロメタンよりも本質的に有利であり、従って代替物質として使用することができる。冷媒混合物の組成は冷媒系における圧力に応じて変動し得る。
【0013】
同様に、本発明の意味において、冷媒混合物の組成は、可燃性の危険性が低下もしくは極めて制限されるように選択される。
【0014】
実施態様において、R152a98〜70質量%とCO2〜30質量%とから成る混合物がR134aの代替物として使用される。
【0015】
純物質として、本発明による混合物の2つの単独の成分は冷媒としての使用に不利である。
【0016】
R152aは、その熱物理的特性がR134aと同様である。しかしながらR152aの可燃性に基づき、直接蒸発する系における、例えば自動車における使用可能性は制限される。R152aの爆発範囲は、爆発下限の4.5体積%と爆発上限の21.8体積%との間である。CO含分30質量%を有する混合物の場合、爆発下限は13体積%に上昇する(図1参照)。爆発下限の上昇によって、総じて可燃性の冷媒の際に存在する危険性が低下する。
【0017】
COはその熱物理的特性がR134a及びR152aの熱物理的特性と極めて異なる。COは不燃性である。COはR134a又はR152aよりも本質的に高い圧力位置を有する。
【0018】
【表1】

【0019】
臨界温度が31℃であることによって、結果として、COは乗り物の空調のために、典型的な臨界未満の圧縮冷却プロセスにおいて使用することはできず、遷移臨界的(transkritisch)なプロセスにおいて導通されねばならない。遷移臨界的なプロセスは本質的に比較的高いプロセス圧(>100バール)及び理論的に達成可能な最高の効果レベルの明らかな悪化をもたらす。
【0020】
COは、人体から発せられるにもかかわらず4体積%以上の濃度では毒性作用を有し、比較的長く吸入した場合には意識不明の状態を招き、かつ8体積%を上回った場合には死を招き得る。R152aを有する混合物において、この毒性作用は相殺される。
【0021】
R134aは、気圏に達した際、1300のGWP100で温室効果に対して比較的高い寄与を示す。
【0022】
R152aに関して140のGWP100及びCOに関して1のGWP100で、本発明により使用される成分はR134aよりも本質的に低いGWP100を示す。
【0023】
R134aに対するR152a及びCOの種々の固有の密度に基づき、自動車用空調装置のために必要な充填量を本質的に減少させることができる(第1表参照)。
【0024】
【表2】

【0025】
混合物は高い容積冷却性能を有することが見い出された。この高い冷却性能によって、圧縮機の必要な排気量の低下、従って圧縮機の構造サイズの減少がもたらされる(実施例1参照)。
【0026】
R134aの使用のために予定されたコンプレッサーを用いる場合、より高い冷却速度が達成される。これは自動車用空調装置の場合には特に安全工学的理由から極めて重要である。
【0027】
>2質量%のCO含分を有するR152aとCOとの混合物はR134aよりも高い圧力位置を有する。より高い圧力位置によって、熱伝達及び低下された摩擦圧力損失が改善される。2つの効果は共に系全体のエネルギー効率に対してプラスに作用する。
【0028】
R152aとCOとからの混合物は大きな温度勾配を有する。これは、勾配のある温度の際に冷却及び加熱が必要である場合にプラスに作用する。勾配のある熱伝達は、二次相転移が生じない全ての熱伝達の際に存在するため、空気冷却又は空気加熱の際にも存在する。
【0029】
実施例
実施例:1
シミュレートされた自動車用空調装置において、冷媒又は冷媒混合物を上記の条件下で相互に比較した。
【0030】
循環条件:
内部熱交換器を用いた単一循環
Tu=30℃
To=0℃
Tc=45℃
T過熱=5K
T過冷=2K
等エントロピー効率=1;
ΔTIWT=12K
R152a/COの非共沸混合物に関する異なる条件:
熱交換器内での熱伝達は、平均温度
=T’’−(T’’−T’)/2
の場合に生じる。
【0031】
R152a/CO 79.32/20.68質量%の混合物に関する異なる条件:
冷媒の出口温度は35℃であり、これはT=48.5℃の平均温度をもたらす。
【0032】
遷移臨界的なCO−プロセスに関する異なる条件:
ΔTIWT=5K
【0033】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】R152a/CO混合物のCO含分に対する爆発下限の変化を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
150未満のGWP100を有するハロゲン化炭化水素とCOとを含有するか、又は150未満のGWP100を有するハロゲン化炭化水素とCOとから成る、冷媒R134aの代替物として使用可能な冷媒混合物。
【請求項2】
ハロゲン化炭化水素、特に1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン及び/又はトリフルオロヨードメタンが含有されている、請求項1記載の冷媒混合物。
【請求項3】
1,1−ジフルオロエタン98〜70質量%とCO2〜30質量%とから成る、請求項1又は2記載の冷媒混合物。
【請求項4】
冷媒混合物がフルオロエタンとCOとを含有するか又はフルオロエタンとCOとから成る、請求項1又は2記載の冷媒混合物。
【請求項5】
自動車及び輸送用車両における空調装置における、特に自動車用空調装置のための、冷媒1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)の代替物としての、150未満のGWP100を有するハロゲン化炭化水素とCOとを含有するか、又は150未満のGWP100を有するハロゲン化炭化水素とCOとから成る、冷媒混合物の使用。
【請求項6】
冷媒R134aの代替物としての、R152a98〜70質量%とCO2〜30質量%とから成る、請求項5記載の冷媒混合物の使用。
【請求項7】
冷媒混合物がフルオロエタンとCOとを含有するか又はフルオロエタンとCOとから成る、請求項5記載の冷媒混合物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2007−503486(P2007−503486A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524262(P2006−524262)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008772
【国際公開番号】WO2005/021675
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(592165314)ゾルファイ フルーオル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Fluor GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20,D−30173 Hannover,Germany