冷感枕
【課題】頭部への適度な冷感を付与した構造によって快適な睡眠と休息を提供できる冷感枕を提供する。
【解決手段】頭部を適度に冷却し入眠を促進する冷感枕において、
熱伝導性ゲルを含み、頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が300〜15000W/m2である冷感シートを、枕基体部の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に略コの字様に配置し、該冷感シートが首筋部位および寝返りをした側の頬部位と接触して、前記2部位からの体温を吸熱するとともに、寝返りにより頭部接触が離れた側の頬部位からの放熱をする機能を賦与してなることを特徴とする冷感枕など。
【解決手段】頭部を適度に冷却し入眠を促進する冷感枕において、
熱伝導性ゲルを含み、頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が300〜15000W/m2である冷感シートを、枕基体部の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に略コの字様に配置し、該冷感シートが首筋部位および寝返りをした側の頬部位と接触して、前記2部位からの体温を吸熱するとともに、寝返りにより頭部接触が離れた側の頬部位からの放熱をする機能を賦与してなることを特徴とする冷感枕など。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷感枕に関し、詳しくは、頭部への適度な冷却感を付与した構造によって快適な睡眠と休息を提供できる冷感枕に関する。
【背景技術】
【0002】
快適な睡眠と休息を提供する寝具として枕は重要である。たとえば枕の硬度や高さは、個々の体格等の差により、利用者の嗜好によるが、一方、嗜好によるものでない観点として健康学的には、枕の温度特性が重要であり、体温が枕に伝わって熱が枕内に籠もってしまわないものが一般によいとされる。このようなことから、健康を配慮した利用者ほど、枕購入時において、従来から例えば蕎麦殼を充填した枕や、多数の合成樹脂製短寸パイプを充填した枕等、通気性のよいものが決定する際の大きな理由になっている。
【0003】
ところが、今日まで上記の健康を配慮した利用者でさえ、どの程度頭部を冷却すればよいのか、という知識や認識は希薄である。
これは、枕を販売する立場の者ですら、どの程度冷却すれば快適な睡眠や休眠を提供できるか、といった観点からみて、マッチングされた構造の枕を提供できていなかったことが大きな理由と、考えられている。
これは、例えば、引用文献1〜3に開示されているとおり、いずれも、頭部を長時間冷却すること、頭部の座り具合、といったそれぞれ別々の観点からの考察はあるものの、総じて、「どの部位を、どの程度、どのように冷却すればよいか」といった温度特性(冷却性)を求める技術思想ではなく、ただ単に「長時間冷却が持続する」といった冷感持続の観点から、考えられているのが現状である。
【特許文献1】特開2002−191484公報
【特許文献2】特開平7−323041号公報
【特許文献3】特開平8−267647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の問題点に鑑み、入眠時と入眠後において、快適な睡眠や休息を得るための温度特性(冷却性)を備えた冷感シートを、所定の部位に、特定の接触のさせ方をし、さらには嗜好性、使用感、耐久性をも加味した構成をも付与することにより、快眠を誘うことのできる冷感シートを備えた冷感枕を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、単なる「冷感持続の時間」という観点でなく、快適な睡眠と休息を得るための温度特性(冷却性)とは、「睡眠導入までの冷却温度と、その後の冷却温度が重要である」ことを考察し、(i)特定の冷却シートの冷たさを、(ii)特定の部位に、(iii)特定の接触をさせることにより、従来にない快適な睡眠と休息を提供できる枕が得られることを見出し、また、健康学的に優れた冷却性を求めるだけでなく、さらに利用者の嗜好をも踏まえた構造の枕を得ることまでも、見出した。ちなみに、柔らかさや通気性といった使用感や耐久性など、従来の枕にも重要視される点を配慮していることは当然である。
【0006】
上記の知見などから、具体的には、本発明者らは、人の首筋と頬とを同時に冷却する機能を賦与してなる冷感枕であって、熱伝導性ゲルを含む冷感シートを枕に貼着し、且つ、該冷感シートを、枕の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に、コの字様又は略コの字様に配置することにより、枕に、適度な冷感付与機能および冷感持続機能を与えることができ、その結果、就寝時に頭部の冷涼感が得られ、もって快眠を誘うことができることを、見出した。また、前記冷感シートの配置部分の枕形状を、特定の高さ関係とすることによって、冷感シートの配置との複合作用により、枕の冷感付与機能が向上できることをも、見出し、そして、本発明は、これらの知見に基づき、完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、頭部を適度に冷却し入眠を促進する冷感枕において、熱伝導性ゲルを含み、頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が300W/m2〜15000W/m2である冷感シートを、枕基体部の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に略コの字様に配置し、該冷感シートが首筋部位および寝返りをした側の頬部位と接触して、前記2部位からの体温を吸熱するとともに、寝返りにより頭部接触が離れた側の頬部位からの放熱をする機能を賦与してなることを特徴とする冷感枕が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記略コの字様は、冷感シートが前記2部位および寝返りにより頭部とは接触しない部位の各々を、熱伝導を性能的に分断してなることを特徴とする冷感枕が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記枕基体部は、中央上面が凹陥した頭部支持凹部が形成されるとともに、その周囲が相対的に高く形成された左右のサイドサポート部と、その間の頸椎部サポート部とが形成されたものであって、前記冷感シートは、前記サイドサポート部と頚椎部サポート部に沿って略コの字に配置することを特徴とする冷感枕が提供される。
【0009】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記枕基体部は、底面からの高さが、サイドサポート部>頚椎サポート部>頭部支持凹部の関係であることを特徴とする冷感枕が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、冷感枕は、枕基体部と、該枕基体部の上部に積み重ねられるアッパー部とを具えてなり、該枕基体部は、軟性フォームから成るブロック要素が複数組み合わされて構成され、一方、アッパー部には、冷感シートが配置されていることを特徴とする冷感枕が提供される。
【0010】
本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、冷感シートが接触する首筋部位は、側頭部のツボである完骨または後頭部のツボである風池であることを特徴とする冷感枕が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1又は2の発明において、前記略コの字様は、冷感シート3枚が分断されて、コの字形に配置されていることを特徴とする冷感枕が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、前記枕基体部に、肩位置サポート部が形成されていることを特徴とする冷感枕が提供される。
【0011】
本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、冷感枕は、枕基体部とアッパー部の硬さが枕基体部>アッパー部であり、かつ枕基体部には、人体側の長辺に傾斜面を付して該傾斜面の上部にあたるフォーム層の直角断面を枕からオーバーハングするように突出角を設けてアッパー部を浮かせた状態としたことを特徴とする冷感枕が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明において、前記冷感シートは、熱伝導率(JIS R2616準拠)が0.5〜2.0W/m・Kであり、厚みが1〜10mmであることを特徴とする冷感枕が提供される。
さらに、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明において、前記熱伝導性ゲルは、熱伝導率が0.8〜3.0W/m・Kであり、針入度硬度が20〜150であることを特徴とする冷感枕が提供される。
【0012】
本発明の第12の発明によれば、第1〜11のいずれかの発明おいて、前記冷感シートは、熱源側表面層(A)、中間層(B)及び裏面層(C)の少なくとも3層からなり、前記3層の素材は、熱源側表面層(A)にゲル材料、中間層(B)に樹脂材料、裏面層(C)に炭素質材料を選択して、前記3層の引張り伸び率(JIS K6251準拠)が、表面層(A)>中間層(B)>裏面層(C)の順になる構成とし、かつ裏面層(C)は、面積が中間層(B)の面積より小さくし、さらに、中間層(B)の各辺にかからないよう中央に寄って密着し、屈曲に追従する配置とすることを特徴とする冷感枕が提供される。
また、本発明の第13の発明によれば、第12の発明おいて、前記冷感シートの裏面層(C)は、熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいグラファイトシートからなり、かつ放熱を誘導させる方向にそろう複数の小スリットが形成され、熱源側からの屈曲する外力に対して、該小スリットが中間層(B)に密着しつつ、拡開することを特徴とする冷感枕が提供される。
さらに、本発明の第14の発明によれば、第13の発明おいて、前記冷感シートの裏面層(C)は、前記小スリットのスリット幅より大きい、少なくとも一本の大スリットで分断されていることを特徴とする冷感枕が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷感枕は、人の首筋と頬とを同時に冷却する機能を賦与してなる冷感枕であって、熱伝導性ゲルを含む冷感シートを枕に貼着し、且つ、該冷感シートを、枕の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に、コの字様又は略コの字様に配置することにより、枕に、適度な冷感付与機能ならびに冷感持続機能を与えることができ、その結果、夏季等の熱帯夜のように夜間でも高温状態が続いてしまっているような場合であっても、就寝時に頭部の冷涼感が得られ、もって快眠を誘うことができる。また、冷感シートが熱伝導性ゲルを含むため、体圧に対しゆっくりと沈み込み、枕に適した適度の硬度に設定することも可能であり、さらに、電気等の外部エネルギーを必要としないため、環境負荷、経済負荷を生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
I.冷感付与の技術思想と冷感枕の構成
1.冷感付与の技術思想
冷却部材を枕基体上面に配置してなる従来の冷却枕は、冷却部材が枕の長辺方向にほぼ枕長尺寸法で配置されたものであって、従来の高熱時の病人に用いる氷枕に基づく発想であり、後頭部を強制的に冷やすことによって冷感を継続的に付与する、という技術思想に着目したものである。
しかしながら、発熱などの病床時とは異なり、通常の睡眠においては、入眠準備段階において適度な冷感を付与して、スムーズな入眠を誘い、入眠後は、頭部の冷やし過ぎずに、適度な体温を保つことが質のよい眠りが得られ易いことが近年解明されてきており、従来の冷却枕は、こうした睡眠学的な理論に合致したものではなかった。また、大きな(長い)冷却部材の冷却能力も十分には活かされていなかった。
例えば、図12に示すように、人間の体温は、一般的に人の活動に応じて、起床時から徐々に上昇し、20時頃にピークを迎え、その後、入眠準備段階から徐々に下降しはじめ、睡眠中も、徐々に下降するものである。このような体温パターンから、入眠準備段階においては、体温の低下を補助するように冷感を与えて入眠を誘い、入眠後は、適度な冷感として、冷感による刺激を抑えることで熟睡できるので、質のよい眠りが得られ、使用者の健康維持に寄与する。
【0015】
ところが、本発明の冷感枕は、図12に示すような体温パターンや睡眠学的なバックボーンに基づき、(i)特定の冷却シートの冷たさを、(ii)特定の部位に、(iii)特定の接触をさせるという技術思想からなるものであって、特定の冷感シートを、枕基体部の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に略コの字様に配置し、該冷感シートが首筋部位および寝返りをした側の頬部位と接触して、前記2部位からの体温を吸熱するとともに、寝返りにより頭部接触が離れた側の頬部位からの放熱をする機能を賦与してなることを特徴とするものである。
【0016】
2.冷感枕の構成
本発明の冷感枕は、頭部を適度に冷却し入眠を促進する冷感枕において、熱伝導性ゲルを含み、頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が300W/m2〜15000W/m2である冷感シートを((i)特定の冷却シートの冷たさ)、枕基体部の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に略コの字様に配置し((iii)特定の接触をさせる)、該冷感シートが首筋部位および寝返りをした側の頬部位((ii)特定の部位)と接触して、前記2部位からの体温を吸熱するとともに、寝返りにより頭部接触が離れた側の頬部位からの放熱をする機能を賦与してなることを特徴とするものである。
ここで、「頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が300W/m2〜15000W/m2」において、熱流束値は、33.4℃一定の恒温的な熱源と、被測定物の間に、フィルム状熱流束センサー(25mm□)を挟設して測定される値であって、「頭部への初期接触」は、「恒温保持される熱源の被測定物への初期接触」との定義である。ここで、熱流束は、前記熱源から冷感パッドに熱が移動する方向を正の値としている。熱源を恒温とする理由は、頭部の恒温状態を模した条件とするためである。この測定法における熱流束の値は、接触開始(0秒)から10秒の範囲で、大きなピーク値(最大値)を示し、この間の熱流束の挙動が、人体における初期接触冷感に相当する。したがって、「頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が300W/m2〜15000W/m2」の意味するところは、冷感シートに頭が接触したときの初期冷感を適正な範囲とする、ということである。
【0017】
また、略コの字様の配置と冷感付与の技術思想のもうひとつの特徴は、従来の冷却枕のように、冷感を感じにくい頚椎周辺の後頭部(特に女性の場合は毛髪が熱抵抗となることによる)に、強い冷感を付与するのではなく、冷感に敏感な耳下腺近傍から首筋側面にかけての肌露出部に、すなわち、不眠に効果のあるといわれるツボである側頭部の完骨(側頭部の乳様突起の根部下縁にあるツボ)や風池(後ろ髪の生え際の下で、首の大きな筋(僧帽筋)の両外側にあるツボ)に、特定の冷却性能を持つ冷感パッドを効果的に接触させて、後頭部での冷感を感じにくい場合であっても、心地よい冷涼感を与えられることである。
【0018】
さらに、上記冷感シートは、特定の冷却性能としているので、接触から入眠に至るまでには、心地よい冷却間が持続し、入眠した後においては、体温に近い温度まで経時的に冷感を減じることで、入眠後の過剰冷却による不快感を回避することができ、快眠が可能となる。
そして、頚椎との接触部を基準とした略コの字様の配置形態において、頚椎当設部は、後頭部からうなじ(項)部分へ冷感を付与し、頚椎当設部の左右前寄りに配置される二つの部分は、頬に冷感を付与する。また、頚椎当設部と頬部当設部の少なくとも一方の一部は、冷感に敏感な耳下腺近傍から首筋側面にかけて接触するように、配置させることが特に好ましい。より効果的な冷感付与部位は、図14に示す部位の範囲が好適である。
前記の効果的な部位としては、不眠に効果のあるといわれるツボである側頭部の完骨であることが好ましい。
【0019】
上記略コの字様は、冷感シートが前記2部位および寝返りにより頭部とは接触しない部位の各々を、熱伝導を性能的に分断してなることが好ましい。ここで、熱伝導を性能的に分断とは、頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が400〜15000W/m2未満の部分で分断されることを意味する。具体的には、図5に示されるように、冷感シート3枚が分断されて、コの字形に配置されていることが好ましい。さらに、図5のような複数枚の冷感シートを用いる以外にも、一枚の冷感シート内で、面方向に熱抵抗を大きくするような高熱抵抗部を構成してもよい。冷感シートは、人体との継続的な接触によって、熱飽和してくるが、冷感シートが熱的に分断されていれば、冷感シートの熱飽和部(a)が隔離されて、他方の冷感シート(b)は温度上昇しないので、寝返りして他方の冷感シート(b)に触れれば、心地よい冷感が得られる。同時に、熱飽和していた冷感シート(a)は、人体から離れて、人体が接触した他方の冷感シート(b)は、温度上昇していくが、冷感シート(b)から冷感シート(a)への熱流入が起こらないので、冷感シート(a)は、放熱によって温度を下げられるのである。その結果、寝返りを利用して常に人体と接触していない熱的に分断された冷感シート部分をクールダウンすることができ、体温パターンに合わせた適度な冷感付与を実現できる。
【0020】
コの字様の具体例としては、図6に示した様な形態が挙げられる。
この形態では、頬当設部の冷感シートが、頚椎部当設部に対して、左右前寄りに配置した状態であり、仰臥位(仰向け)から側臥位(横向き)に頭部を側転(または横転)させたときに、左右前寄りに配置した冷感シートに、頬部分が効率よく接触させることができる。
また、別の形態として、頬全体にある三叉神経が敏感な人の場合には、頬への冷感を押させる目的で、頬当設部の冷感シートを図7の様に、配置してもよい。
そして、特に好ましい形態として、頚椎を基点とした頭部の左右の側転動作においては、頬から首筋側面のラインは、頚椎を基準に斜めになることに着目し、その接触ライン近傍に頬当設部の冷感シートを配置するという技術思想に基づいて、図8の様に、頬当設部の冷感シートを斜め前方に開くように配置することが好ましく、このように頬当設部を斜めに配置することにより、寝返りによる側転動作時において頬部への冷却シートの接触がスムーズになり、効率的に冷感付与することができる。
また、うなじ(項)部(頚椎部)に配置する冷却シートは、両端側に向かって反り上がるように配置され、これにより、前記冷感シートが首裏から首側面にかけての曲形状に沿う形となるので、首裏部分への冷感が乏しい条件でも、仰臥位からほんの僅かに首を動かすだけで、首筋側面(図14のa部分)に冷感シートが触れて、有効な冷感を付与することができる。
【0021】
また、枕基体の冷感シート配置部分は、柔軟な凸曲面を有し、冷感シートは、前記曲面形状に沿って凸曲面を形成して、人体に当設することを特徴とする。この曲面の形成により、人体が接触し始めは、接触面積が小さく、人体が冷却シート部に深く沈み込むに従い接触面積が大きくなるため、初期接触時の過度の冷感を抑えつつ、徐々に快適な接触冷感を与えることができる。
【0022】
さらに、前述の略コの字様の冷感シートの平面的な配置効果に加えて、各当設部の冷感シートの高さ方向の配置関係も、快適な睡眠の重要な要因である。
冷感シートの高さ方向の配置関係は、枕基体部の形状と一致するので、以下に枕基体部の詳細を記載し、高さ配置の作用について説明する。
【0023】
3.枕基体部
枕基体部としては、上記冷感シートを、枕基体部の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に略コの字様に配置できるものであって、略コの字様に配置する冷感シートの冷感付与作用が効果的に発揮される形状であることが好ましく、また、形状追従性のある素材からなることが好ましい。
【0024】
枕基体部の形状としては、図9に示すように、中央上面が凹陥した頭部支持凹部が形成されるとともに、その周囲が相対的に高く形成された左右のサイドサポート部と、その間の頸椎部サポート部とが形成されたものであることが好ましい。前記頭部支持凹部は、仰臥位において後頭部の座りを安定させるとともに、頬への密着が促進され、冷感を向上させる作用がある。また、前記サイドサポート部は、単に前記頭部支持凹部の前記作用のサポートではなく、仰臥位での枕使用において、頬に効率よく冷感を与えるための冷感シートを配置する目的がある。さらに、頚椎サポート部は、仰臥位での枕使用において、頚椎の湾曲形状に沿った形状としているので、頚椎の部分と枕の密着性を高めて、頚椎の支持安定性と、冷感シートによる冷感付与効率を向上させる。そして、前記冷感シートは、前記サイドサポート部と頚椎部サポート部に沿って、略コの字に配置することが好ましい。これは、頚椎保持の安定性を確保でき、かつ効率よく冷感を付与できるからである。
【0025】
また、枕基体部は、図9に示されるように、接触面の密着性が高くなって、頚椎保持安定性と冷感付与性が向上するため、底面からの高さが、サイドサポート部>頚椎サポート部>頭部支持凹部の関係であることが好ましい。特に、冷感シートの配置として、図8の様に、頬当設部の冷感シートを斜め前方に開くように配置した場合に、前記高さの関係の効果が優れている。
さらに、枕基体部には、図6、図9に示されるように、肩部の隙間を埋めて、頚椎保持安定性が高まるため、肩位置サポート部が形成されていることが好ましい。一般的に、仰臥位の枕使用時おいて、頚椎の付け根から僧帽筋に沿った部分には、枕に接触しない空間ができやすく、この空間が大きいほど、就寝時の首への負担が大きくなり、寝違えや肩凝りの原因のひとつとなるが、前記肩サポート部は、この空間を埋めるように、枕の肩側前面にスロープ状に構成されるため、肩から後頭部まで安定して支持できるとともに、頚椎への良好な密着性を高めることができる。前記スロープ状とする角度は、枕基体底面を基準として、30〜60°が好ましい。30°未満の場合は、肩との隙間を十分に埋めることができず、一方、60°を超えると、逆に肩への圧迫感が強くなるので好ましくない。
【0026】
また、冷感枕は、図10に示されるように、枕基体部と、該枕基体部の上部に積み重ねられるアッパー部とを具えてなり、そのアッパー部には、冷感シートが配置されていることが好ましい。アッパー部は、枕基体部よりも柔らかい素材で構成され、枕基体部と冷感シートとの間に挟設させることにより、冷感シートの枕基体形状への密着性を向上させる作用がある。また、冷感シートがない部分においては、枕の感触を良くする効果も有する。
さらに、冷感枕は、図11に示されるように、枕基体部には、人体側の長辺に傾斜面を付して該傾斜面の上部にあたるフォーム層の直角断面を枕からオーバーハングするように突出角を設けて、アッパー部を浮かせた状態としたことが好ましい。なお、前記スロープの肩サポート部であれば、アッパー部の先端17を浮かせた状態にできるので、肩が接触する際に、その浮いた部分が下側に容易に変形でしやすいので、使用感において段差を感じさせない効果がある。
【0027】
また、枕基体部を構成する形状追従性のある材料としては、軟性フォームから成るブロック要素が複数組み合わされているものが好ましい。また、型を用いた発泡成形や、プログラム制御した切断機(コンターマシン等)を用いて、一体物として形成(通称CFカット)しても良い。
軟質フォームとしては、例えば、低反発のウレタンフォーム等から成る低反発発泡体を適用できるが、市場の嗜好性等に応じて、種々の素材のものに改変して実施することができる。また、複数のブロック要素で構成する場合には、各ブロック要素の作用に応じて硬さや素材を変えてもよい。また、無膜フォームを適用すれば、通気性がよくなる。
【0028】
II.冷感シート
本発明の冷感枕において、熱伝導性ゲルを含み、頭部への初期接触から10秒以内の平均熱流束値が300〜15000W/m2である冷感シートが用いられる。
上記の冷感シートは、上記の熱流束値の範囲で、適度な柔軟性を有していれば従来のアクリル系やウレタン系の保冷シート等が適用できるが、適度な冷感と柔らかい感触ならび密着性の観点から、シリコーンゲル材料からなる冷感シートであることが好ましい。
【0029】
本発明の冷感枕の冷感シートは、ゲル材料が好ましく、さらに好ましくは、熱伝導性ゲルシート、蓄熱ゲルシート及び高吸水性ポリマーゲルシートからなる群から選ばれたものであり、熱伝導性ゲルシートが特に好ましい。
【0030】
上記熱伝導性ゲルシートは、性状、性能として、熱伝導率が0.5〜3.0W/m・Kであり、硬度が針入度(JIS K2207準拠)で20〜150であり、厚みが1〜10mmであることが好ましい。熱伝導率が0.5W/m・K未満であると、十分な冷感が得られず、一方、熱伝導率が3.0W/m・Kを超えると、熱伝導付与のための熱伝導性フィラーの充填量が大きくなり、熱伝導ゲルシートが硬くなって、曲げ撓み性が損なわれて好ましくない。また、硬度が20未満であると、熱伝導ゲルシートが硬くなって、曲げ撓み性が損なわれ、一方、硬度が150を超えると、柔らかすぎて、使用時にゲルの破断が起こる虞がある。さらに、厚みが1mm未満であると、十分な冷感が得られず、一方、厚みが10mmを超えると、柔軟性が損なわれ、また、コストアップとなり好ましくない。
【0031】
また、上記熱伝導性ゲルシートは、材料として、有機ゲルと熱伝導性フィラーからなるシート状の熱伝導性ゲル硬化物であることが好ましい。有機ゲルとしては、圧縮歪が小さく、温度安定性に優れたシリコーン材料が好ましい。シリコーンゲルとしては、従来から知られ、市販されている種々のシリコーン材料として一般的に使用されているケイ素化合物を適宜選択して用いることができる。よって、加熱硬化型あるいは常温硬化型あるいは光硬化型のもの、硬化機構が縮合型あるいは付加型のものなど、いずれも用いることができる。
さらに、高熱伝導性フィラーとしては、アルミナ、窒化硼素、窒化アルミ、水酸化アルミ、炭化珪素、その他の熱伝導性に優れるセラミックフィラーや、アルミ粉、銅粉、その他の熱伝導性に優れる金属フィラーを用いることができる。
蓄熱ゲルシート及び高吸水性ポリマーゲルシートとしては、特に限定されず、公知のものを適用できる。
【0032】
さらに、冷感シートとしては、冷感持続性を向上させるために、前記熱伝導性ゲルシートを表面層(A)として、その裏面には、可撓性と熱拡散性を有した金属や炭素系の裏面層(C)を積層して、熱伝導性ゲルシートの熱を裏面層(C)から分散排熱する構造としても良い。
前記裏面層(C)は、枕用途における怪我やアレルギーなどの安全性の観点から、炭素質材料であって、特に好ましくは、熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいグラファイトシートからなるものである。前記グラファイトシートとしては、厚み方向の熱伝導率が1〜50W/mKで、面方向の熱伝導率が100〜3500W/mKであるものが好適である。
そのようなグラファイトシートの熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいものとして、例えば、面方向に配向したタイカ(株)製の商品名「スーパーλGS」の熱伝導異方性(面方向250〜350W/mK、厚み方向5〜10W/mK)あるいは商品名「λGS」の熱伝導異方性(面方向170〜200W/mK、厚み方向5〜10W/mK)グラファイトシートなどが挙げられる。
【0033】
本発明において、グラファイトシートの厚みは、特に限定するものではないが、厚みが厚くなると、熱拡散性能は向上するものの可撓性が損なわれ、曲げ柔軟性と曲げ耐久性に支障をきたし、逆に薄すぎると、可撓性は向上するものの十分な熱拡散性能が得られない。したがって、可撓性と熱拡散性能のバランスを考慮して、厚みは、0.05〜0.15mm程度が好適であり、特に好ましくは0.075〜0.10mmである。グラファイトシートの厚みが0.075〜0.10mmの範囲であると、グラファイトシートと中間層(B)との追従性がとくに好ましいものとなる。
【0034】
また、裏面層(C)の形状としては、表面層(A)の形状に相似するようなものが、熱拡散の効率の点から好ましい。また、図4に示されるように、裏面層(C)は、放熱を誘導させる方向にそろう複数の小スリットが形成される。前記小スリットは、屈曲によって拡開して、その結果、熱伝導性を損なわずに、裏面層(C)は、冷感パッドの曲げ変形に対する追従を容易にする。なお、ここでいう拡開とは、曲げ変形において、引張り応力によってスリットの形状が変化する(具体的には開くように作用する)現象をいう。小スリットの溝幅や小スリット間の間隔、配置は、適宜決定される。
さらに、裏面層(C)は、少なくとも一本の大スリットで分断されていることが好ましく、前記大スリットの形成により、さらに裏面層(C)の屈曲による形状追従性が向上する。大スリットは、その面積が表面層(A)より小さく、かつ前記小スリットのスリット幅より大きいものであることが好ましい。
前記大スリットのスリット幅は、人体の皮膚の冷感点を基準に、該冷感点間の距離の10倍より小さければ、大スリット部分と裏面層(C)部分との冷感の差を感じない(し難い)ので、その範囲内で大スリットの幅を広げることができ、冷感の連続的な感覚を付与しながら、裏面層(C)の屈曲による形状追従性を向上することができる。なお、前記スリット幅の範囲を数値換算すると、具体的には25mm以下が好ましく、20mm以下が特に好ましい。25mmを超えると、冷感パッドの裏面層(C)のある部分と大スリットの部分で、冷感に明らかな差を感じやすくなり、好ましくない。25mm以下であれば、人体に適用した場合には、冷点の感覚において冷感の明らかな差を感じ難くなる作用がある。
小スリットと大スリットとは、略垂直の位置関係にあり、それぞれが面方向の縦(または横)、横(または縦)の曲げ変形時に対して、共動して変形応力を低減させることにより、裏面層(C)の優れた曲面形状追従性と曲げ耐久性を実現させる作用がある。
また、小スリットと大スリットは、その機能を損なわない範囲において、その形状は直線状や波形状など、好適な形状を適用できる。
なお、スリットとは、裏面まで貫通して、裏面層(C)の面方向が分断された状態であって、例えば、ごく薄い刃で切り込みを入れただけの状態も含まれる。
【0035】
さらに、裏面層(C)がグラファイトシートの場合には、熱伝導性ゲルシートからのオイル移りによるグラファイトシートの膨潤による不具合や、グラファイトシートの曲げ応力耐久性を確保する目的で、熱伝導ゲルシートとグラファイトシートの間に樹脂フィルムからなる中間層(B)を挟設する。
中間層(B)の面積は、裏面層(C)のグラファイトシートより大きいものである。
また、中間層(B)は、熱伝導性ゲルシートの柔らかい感触を活かしつつ、かつ、伸延性に乏しいグラファイトシートを補強して枕基材の曲面形状に追従し、かつ優れた曲げ耐久性の機能、働きを発揮するために、次の性状、性能を有するものである。
すなわち、上記樹脂材料としては、JIS K6251準拠の引張り伸び率が表面層(A)の引張り破断荷重以下の引張り試験力の範囲において、20〜200%、厚さが0.05〜0.5mm、及びJIS K7311準拠のJIS Aの硬度が30〜120の樹脂フィルムが挙げられる。引張り伸び率が20%未満であると、冷感シートの使用の際に表面層(A)の柔らか感が損なわれることがある。一方、引張り伸び率が200%を超えると、表面層(A)の伸びとグラファイトシートの伸びとの差によって生ずる応力を緩和できず、グラファイトシートの曲げ耐久性が低下するので好ましくない。また、厚さが0.05mm未満であると、後述する被覆層(E)との溶着加工の際に、薄すぎて十分な溶着強度が得られない問題が発生する可能性があり、一方、厚さが0.5mmを超えると、可撓性が低下するとともに、中間層(B)の熱抵抗が大きくなるので、表面層(A)から裏面層(C)への熱の伝導が阻害されて、冷感持続性が低下するので好ましくない。特に好ましい厚さは、熱抵抗低減と可撓性の観点から、0.05〜0.15mmの範囲である。
【0036】
また、樹脂の材料としては、ウレタン、PETなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸などが挙げられ、公知のプラスチックフィルムの材料として用いられているものであれば、適宜用いられる。
【0037】
さらに、本発明の冷感枕の冷感シートにおいて、上記表面層(A)、中間層、裏面層(C)の3層の引張り伸び率は、表面層(A)の引張り破断荷重以下の引張り試験力の範囲において、表面層(A)>中間層(B)>裏面層(C)の関係である。
この理由としては、熱源側から荷重がかかって冷感シートが表面層(A)を内側として屈曲(湾曲)した時に、伸縮性に乏しく脆い裏面層(C)が過度の荷重によって破断するのを防ぐために、表面層(A)より中間層(B)の引張り伸び率を小さくする必要があり、さらに、中間層(B)の引張り伸び率が裏面層(C)よりも小さいと、中間層(B)の剛性が大きくなり、冷感シートとしてのフレキシブル性が損なわれるので、中間層(B)の引張り伸び率は、裏面層(C)よりも大きくする必要があるためである。
また、裏面層(C)は、その面積が中間層(B)の面積より小さくし、さらに、中間層(B)の各辺にかからないよう中央に寄って密着させて、屈曲する位置に配置されることもでき、それが望ましい。本発明においては、例えば、裏面層(C)のグラファイトシートが屈曲する位置に配置されたとしても、割裂や屈折、それに伴う熱伝導性の低下といった不具合がなく、屈曲性や耐久性も満足し、曲げ耐久性に優れるものである。
尚、本発明における引張り伸び率は、JIS K6251に準拠した同じダンベル形であるが、厚みは、各層の実厚みでの引張り伸び率であって、前記引張り伸び率の大小関係も、各層の実厚みでの引張り伸び率の比較における大小関係である。これは、各層の硬さと厚みで、引張り伸び率が変わるので、実際の積層構成における各層の引張り伸び特性の大小関係が重要であるためである。そこで本発明では、引っ張り伸び率は、表面層(A)の引張り破断荷重以下の引張り試験力の範囲での数値として定める。
【0038】
本発明の冷感枕の冷感シートにおいて、裏面層(C)には、さらに、裏面層(C)を補強するために、可撓性の補強層(D)を有していることが好ましい。
補強層(D)の形状としては、図2に示されるように、面積が裏面層(C)より大きく、かつ裏面層(C)全面を覆い、補強層(D)の一部が中間層(B)と密着することが望ましい。
また、補強層(D)の材質としては、可撓性であれば、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ウレタン、ナイロンなどが挙げられる。
さらに、補強層(D)の性能、機能としては、可撓性であれば、特に限定されないが、厚みが0.1〜1mmであり、また、熱伝導性、防水性の性能を有していることが望ましい。
【0039】
また、本発明の冷感枕の冷感シートにおいて、表面層(A)には、中間層(B)と接触していない部分に、さらに、被覆層(E)を有していてもよい。
被覆層(E)の形状としては、図4に示されるように、中間層(B)と連結して袋状とし、表面層(A)全面を被覆していることが望ましい。その場合には、少なくとも表面層(A)の熱源側は被覆層(E)を被覆することが望ましい。
被覆層(E)と中間層(B)の連結は、接着剤、粘着テープなどによる接着や、溶着など公知の方法を適用できるが、連結強度の確保の観点から、溶着が好ましい。また、連結部を溶着で行うことにより、溶着部分は、非溶着部に比べて弾性率が大きくなるので、表面層(A)の過剰変形(屈曲)を抑制する作用が得られ、その結果、裏面層(C)の変形に伴う小スリットの拡開を効果的に機能させることができるとともに、過変形によるスリットを基点とした裏面層(C)の破損を防止することができる。
被覆層(E)は中間層(B)と異なり、表面層(A)の柔らかさを活かした、感触や熱源への密着性を得るために、被覆層(E)の引張り伸び率は、表面層(A)の伸び率を同等以上とすることが望ましい。また、表面層(A)のゲル触感(冷涼感)を導き出すために、厚みは0.05〜0.15mmが好ましい。0.05mm未満の場合には、中間層(B)との接合、特に溶着の場合に薄すぎて溶着ができない虞があり、0.15mmを超えると剛性が大きくなり、柔軟性が損なわれるので好ましくない。
また、被覆層(E)の材質としては、特に限定されないが、例えば、ウレタンや熱可塑性エラストマーなどがあげられる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。
【0041】
(1)冷感シートの作製
(i)表面層(A):
シリコーンゲル原料(a)として、二液付加反応型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング社製CF5106をA液/B液=50:50(重量比)にて混合)20重量%と、熱伝導性フィラー(c)として水酸化アルミニウム(昭和電工社製HS341)80重量%を、ケミカルミキサーで5分間混合後、10分間真空脱泡して25℃粘度が50Pa・sの未硬化のゲル組成物を準備した。次いで、前記未硬化のゲル組成物を、OPP/PET積層の剥離フィルムC1(タカラインコーポレーション社製、75μm)のOPP積層側に接するように挟んで厚み2.5mmのシートにロール成形機で成形し、電気式温風オーブン内で100℃、2時間加熱して、厚さ2.5mmの熱伝導性シートとし、230mm×80mmの長方形にカットして、表面層(A)とする熱伝導性シートを得た。前記熱伝導性シートの熱伝導率は1.0W/m・Kで、破断時の引張り伸び率は360%であった。
【0042】
(ii)中間層(B):
厚み0.1mmのウレタンフィルム(日本マタイ社製 エスマーURS92°)を準備した。前記ウレタンフィルムの、前記表面層(A)の熱伝導性ゲルの引張り破断荷重(0.5N)における引張り伸び率は20%であった。
【0043】
(iii)裏面層(C):
厚み0.07mmで、予め片面にUV樹脂コート処理し、かつ他方面に片面粘着剤付のグラファイトシート(株式会社タイカ製、製品名スーパーラムダGS)を準備した。
前記表面層(A)の熱伝導性ゲルの引張り破断荷重(0.5N)における引張り伸び率は2%であった。
【0044】
(iv)その他の層(補強層(D)、被覆層(E)):
補強層(D)として、可撓性を有する不織布テープ(恵比寿工業社製、N1040)を、被覆層(E)として、250mm×100mm×厚み0.05mmで、前記表面層(A)の熱伝導性ゲルの引張り破断荷重(0.5N)における引張り伸び率が40%のウレタンフィルム(日本マタイ社製、エスマーURS92°)を準備した。
【0045】
なお、熱伝導率は、熱伝導率測定用に60mm×120mm×10mm厚のブロック状試料を作製し、前記ブロック状試料が25℃における熱伝導率をJIS R2616準拠の熱線法で測定した。測定装置は、京都電子工業株式会社製の熱伝導率計(商品名:QTM−500 PD−11型プローブ)を用いた。
また、引張り伸び率の測定は、JIS K6251に準拠して、ダンベル3号形状で、引張り強度試験機(島津製作所 AD−100)を用いて、クランプ距離55mm、引張り速度500mm/minの条件で実施した。引張り伸び率は、試験前の標線間距離L0(20mm)、破断時の標線間距離L1において、次式より求めた。
伸び率(%)={(L1−L0)/L0}×100
ただし、中間層(B)と裏面層(C)の伸び率は、表面層(A)の引張り破断時の試験力における標線間距離をL1として、上記の式から求めた。
さらに、熱流束は、インタークロス社の熱流束計(INTERCROSS200)を用い、同装置のプローブが33.4℃一定になるように温度制御した状態で、冷感シート(表面温度25℃±3℃)に非接触な状態からプローブ自重で密着接触させて、接触したときを0秒として、0〜10秒の間の最大値を求めた。ここで、熱流束は、プローブから冷感シートに熱が移動する方向を正の値とした。
【0046】
上記の各層を用いて、以下の要領で、冷感シートを作製した。
作製手順:
(I)中間層(B)と被覆層(C)の各周端部約10mmを溶着シロとして、表面層(A)となる熱伝導ゲルシートの表裏面を、それぞれ中間層(B)と被覆層(E)で挟んで、空気が入らないように被覆、溶着して、250mm×100mmの長方形の熱伝導性ゲルシートのパックを作製する。
(II)熱伝導性ゲルシートのパックの中間層(B)面に、トムソン式抜き刃を用いて小スリットを形成した(又はしない)裏面層(C)を、裏面層(C)の粘着層を介して貼り付ける。(大スリットを形成する場合は、複数の裏面層片を、大スリットを形成するように配置して貼り付ける。)
(III)さらに、裏面層(C)が全被覆されるように、補強層(D)を貼り付ける。
このようにして作製した冷感シートは、初期接触から10秒以内の最大熱流束値が10000W/m2であった。
【0047】
(2)枕基体部の作製
枕基体部は、ブロック要素が組み合わされて中央上面が凹陥した頭部支持凹部を形成し、その周囲は相対的に高く形成された左右のサイドサポート部と、その間に設けられる頸椎部サポート部とを形成した。
具体的には、枕基体部は、図13に示すように、それぞれ軟性フォームのブロック要素であるベースブロックと、サイドサポート部ブロックと、頚椎サポート部ブロックとから構成されるものであって、横長平板形状をした軟性フォームのベースブロックの上面左右に対し、サイドサポート部ブロックを接着剤で貼設するとともに、このサイドサポート部ブロックの間のベースブロックの上面における前後両端部に対し、頚椎サポート部ブロックを接着剤で貼設して作製した。
また、枕基体の肩側前面にスロープ状に傾斜加工をして肩サポート部を形成した。肩サポート部の長さは、水平方向の長さは560mm、傾斜角は40°とした。
さらに、前記サイドサポート部ブロックと頚椎サポート部ブロックの高さは、左右のサイドサポート部ブロックの方が頚椎サポート部ブロックよりも高さの高い構成とし、サイドサポート部>頚椎サポート部>頭部支持凹部 とした。具体的には、枕基体底面から高さが、それぞれ、650mm、45mm、25mmとした。各ブロック要素のフォーム硬度とフォーム密度は、同一のものを用いるもので、フォームの硬度が、約115N(JIS K6400)で、フォームの密度は、約20kg/m3の、ブリジストン化成社製のウレタンフォームFLを用いた。
次いで、サイドサポート部、頚椎サポート部ならびに頭部支持凹部にそって、アッパーシートを接着剤で密着積層して、枕基体部を得た。アッパーシートとしては、フォームの硬度が、約50N(JIS K6400)で、フォームの密度が約20kg/m3の、ブリジストン化成社製のウレタンフォームFJを用いた。また、接着剤は、3M社製の「スプレーのり99」を用いた。
【0048】
(3)冷感枕の作製
上記で作製した冷感シートを、上記で作製した枕基体部に適用した。
【0049】
[実施例1〜3]
実施例1では、冷感シートを、図8の如く略コの字様に、枕基体部に適用し、冷感枕を作製した。
また、実施例2では、冷感シートを、図6の如く略コの字様に、枕基体部に適用し、冷感枕を作製した。
さらに、実施例3では、冷感シートを、図7の如く略コの字様に、枕基体部に適用し、冷感枕を作製した。
【0050】
[比較例1]
比較例1として、上記の熱伝導性シートを250mm×300mmにカットして冷感シートとし、前記冷感シート1枚を、枕基体部に適用し、従来の冷感シート配置の冷感枕を作製した。
【0051】
[冷感枕の評価]
上記で作製した冷感枕を、以下の要領で、冷却感や使用感の官能試験を行い、評価した。
1.官能試験方法:
年齢20、30、40、50、60代の男女各5名、合計10名で、8月上旬〜中旬の連続7日間(気温25〜32℃)に実施した。7日間の試験期間のうち、最後の2日間において、起床時にアンケートに答えてもらい、アンケート結果に基づき、冷感枕の冷感等の効果を確認した。アンケート項目は、(1)冷感、(2)側転時の冷感、(3)冷感持続性、(4)頚椎保持性で、評価は、優れる(5点)、やや優れる(4点)、普通(3点)、やや劣る(2点)、劣る(1点)の5段階とした。判定は、各評価点数を加算して、15点(すべて普通相当)以上を○(最も高得点のものは◎)とし、15点未満を×とした。
【0052】
2.評価結果
実施例1〜3の冷感枕は、比較例1の冷感枕に比べて、側転時の冷感や冷感持続性が優れており、本発明の特徴である冷感シートの略コの字配置による効果的な冷感付与性が実証された。また、実施例1〜3の冷感枕は、比較例の冷感枕に比べて頚椎保持性が優れており、本発明の枕基体の構造の効果が実証された。さらに、実施例1〜3のうち、特に実施例2の冷感枕が総合的に優れており、これは、枕基体の構成と冷感シート配置の複合効果による結果といえる。
【0053】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の冷感枕は、適度な冷感と冷感持続性を付与しうる冷感シートを効果的に配置することによって、(i)特定の冷却シートの冷たさを、(ii)特定の部位に、(iii)特定の接触をさせることができ、すなわち、体温パターンや睡眠学的なバックボーンに基づいた性能を得て、入眠前後の睡眠状態に適した冷涼感が得られ、また、睡眠中においても、過剰な冷却をしないので、快適で質のよい睡眠が得られ、使用者の健康維持に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートを説明する模式図である。
【図2】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートの一実施形態を説明する模式図である。
【図3】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートの一実施形態、特にスリットを説明する模式図である。
【図4】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートの一実施形態を説明する模式図である。
【図5】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートを、略コの字様に配置した説明図である。
【図6】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートにおける、略コの字様の一実施形態を説明する図である。
【図7】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートにおける、略コの字様の他の一実施形態を説明する図である。
【図8】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートにおける、略コの字様の他の一実施形態を説明する図である。
【図9】本発明の冷感枕に用いられる枕基体部の一実施形態を説明する模式図である。
【図10】本発明の冷感枕に用いられる枕基体部、特にアッパー部を説明する模式図である。
【図11】本発明の冷感枕に用いられる枕基体部、特にアッパー部の一実施形態を説明する模式図である。
【図12】人間の体温パターンを説明する図である。
【図13】枕基体部の模式図(ブロックパーツ構成図)である。
【図14】冷感を付与する頬部分の模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 冷感シートの表面層(A)
2 冷感シートの中間層(B)
3 冷感シートの裏面層(C)
4 冷感シートの補強層(D)
5 冷感シートの被覆層(E)
6 裏面層(C)の小スリット
7 裏面層(C)の大スリット
10 冷感シート
11 枕基体部
12 肩サポート部
13 頚椎サポート部
14 頭部支持凹部
15 サイドサポート部
16 アッパー部
17 アッパー部の浮かせた状態
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷感枕に関し、詳しくは、頭部への適度な冷却感を付与した構造によって快適な睡眠と休息を提供できる冷感枕に関する。
【背景技術】
【0002】
快適な睡眠と休息を提供する寝具として枕は重要である。たとえば枕の硬度や高さは、個々の体格等の差により、利用者の嗜好によるが、一方、嗜好によるものでない観点として健康学的には、枕の温度特性が重要であり、体温が枕に伝わって熱が枕内に籠もってしまわないものが一般によいとされる。このようなことから、健康を配慮した利用者ほど、枕購入時において、従来から例えば蕎麦殼を充填した枕や、多数の合成樹脂製短寸パイプを充填した枕等、通気性のよいものが決定する際の大きな理由になっている。
【0003】
ところが、今日まで上記の健康を配慮した利用者でさえ、どの程度頭部を冷却すればよいのか、という知識や認識は希薄である。
これは、枕を販売する立場の者ですら、どの程度冷却すれば快適な睡眠や休眠を提供できるか、といった観点からみて、マッチングされた構造の枕を提供できていなかったことが大きな理由と、考えられている。
これは、例えば、引用文献1〜3に開示されているとおり、いずれも、頭部を長時間冷却すること、頭部の座り具合、といったそれぞれ別々の観点からの考察はあるものの、総じて、「どの部位を、どの程度、どのように冷却すればよいか」といった温度特性(冷却性)を求める技術思想ではなく、ただ単に「長時間冷却が持続する」といった冷感持続の観点から、考えられているのが現状である。
【特許文献1】特開2002−191484公報
【特許文献2】特開平7−323041号公報
【特許文献3】特開平8−267647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の問題点に鑑み、入眠時と入眠後において、快適な睡眠や休息を得るための温度特性(冷却性)を備えた冷感シートを、所定の部位に、特定の接触のさせ方をし、さらには嗜好性、使用感、耐久性をも加味した構成をも付与することにより、快眠を誘うことのできる冷感シートを備えた冷感枕を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、単なる「冷感持続の時間」という観点でなく、快適な睡眠と休息を得るための温度特性(冷却性)とは、「睡眠導入までの冷却温度と、その後の冷却温度が重要である」ことを考察し、(i)特定の冷却シートの冷たさを、(ii)特定の部位に、(iii)特定の接触をさせることにより、従来にない快適な睡眠と休息を提供できる枕が得られることを見出し、また、健康学的に優れた冷却性を求めるだけでなく、さらに利用者の嗜好をも踏まえた構造の枕を得ることまでも、見出した。ちなみに、柔らかさや通気性といった使用感や耐久性など、従来の枕にも重要視される点を配慮していることは当然である。
【0006】
上記の知見などから、具体的には、本発明者らは、人の首筋と頬とを同時に冷却する機能を賦与してなる冷感枕であって、熱伝導性ゲルを含む冷感シートを枕に貼着し、且つ、該冷感シートを、枕の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に、コの字様又は略コの字様に配置することにより、枕に、適度な冷感付与機能および冷感持続機能を与えることができ、その結果、就寝時に頭部の冷涼感が得られ、もって快眠を誘うことができることを、見出した。また、前記冷感シートの配置部分の枕形状を、特定の高さ関係とすることによって、冷感シートの配置との複合作用により、枕の冷感付与機能が向上できることをも、見出し、そして、本発明は、これらの知見に基づき、完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、頭部を適度に冷却し入眠を促進する冷感枕において、熱伝導性ゲルを含み、頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が300W/m2〜15000W/m2である冷感シートを、枕基体部の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に略コの字様に配置し、該冷感シートが首筋部位および寝返りをした側の頬部位と接触して、前記2部位からの体温を吸熱するとともに、寝返りにより頭部接触が離れた側の頬部位からの放熱をする機能を賦与してなることを特徴とする冷感枕が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記略コの字様は、冷感シートが前記2部位および寝返りにより頭部とは接触しない部位の各々を、熱伝導を性能的に分断してなることを特徴とする冷感枕が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記枕基体部は、中央上面が凹陥した頭部支持凹部が形成されるとともに、その周囲が相対的に高く形成された左右のサイドサポート部と、その間の頸椎部サポート部とが形成されたものであって、前記冷感シートは、前記サイドサポート部と頚椎部サポート部に沿って略コの字に配置することを特徴とする冷感枕が提供される。
【0009】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記枕基体部は、底面からの高さが、サイドサポート部>頚椎サポート部>頭部支持凹部の関係であることを特徴とする冷感枕が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、冷感枕は、枕基体部と、該枕基体部の上部に積み重ねられるアッパー部とを具えてなり、該枕基体部は、軟性フォームから成るブロック要素が複数組み合わされて構成され、一方、アッパー部には、冷感シートが配置されていることを特徴とする冷感枕が提供される。
【0010】
本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、冷感シートが接触する首筋部位は、側頭部のツボである完骨または後頭部のツボである風池であることを特徴とする冷感枕が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1又は2の発明において、前記略コの字様は、冷感シート3枚が分断されて、コの字形に配置されていることを特徴とする冷感枕が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、前記枕基体部に、肩位置サポート部が形成されていることを特徴とする冷感枕が提供される。
【0011】
本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、冷感枕は、枕基体部とアッパー部の硬さが枕基体部>アッパー部であり、かつ枕基体部には、人体側の長辺に傾斜面を付して該傾斜面の上部にあたるフォーム層の直角断面を枕からオーバーハングするように突出角を設けてアッパー部を浮かせた状態としたことを特徴とする冷感枕が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明において、前記冷感シートは、熱伝導率(JIS R2616準拠)が0.5〜2.0W/m・Kであり、厚みが1〜10mmであることを特徴とする冷感枕が提供される。
さらに、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明において、前記熱伝導性ゲルは、熱伝導率が0.8〜3.0W/m・Kであり、針入度硬度が20〜150であることを特徴とする冷感枕が提供される。
【0012】
本発明の第12の発明によれば、第1〜11のいずれかの発明おいて、前記冷感シートは、熱源側表面層(A)、中間層(B)及び裏面層(C)の少なくとも3層からなり、前記3層の素材は、熱源側表面層(A)にゲル材料、中間層(B)に樹脂材料、裏面層(C)に炭素質材料を選択して、前記3層の引張り伸び率(JIS K6251準拠)が、表面層(A)>中間層(B)>裏面層(C)の順になる構成とし、かつ裏面層(C)は、面積が中間層(B)の面積より小さくし、さらに、中間層(B)の各辺にかからないよう中央に寄って密着し、屈曲に追従する配置とすることを特徴とする冷感枕が提供される。
また、本発明の第13の発明によれば、第12の発明おいて、前記冷感シートの裏面層(C)は、熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいグラファイトシートからなり、かつ放熱を誘導させる方向にそろう複数の小スリットが形成され、熱源側からの屈曲する外力に対して、該小スリットが中間層(B)に密着しつつ、拡開することを特徴とする冷感枕が提供される。
さらに、本発明の第14の発明によれば、第13の発明おいて、前記冷感シートの裏面層(C)は、前記小スリットのスリット幅より大きい、少なくとも一本の大スリットで分断されていることを特徴とする冷感枕が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷感枕は、人の首筋と頬とを同時に冷却する機能を賦与してなる冷感枕であって、熱伝導性ゲルを含む冷感シートを枕に貼着し、且つ、該冷感シートを、枕の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に、コの字様又は略コの字様に配置することにより、枕に、適度な冷感付与機能ならびに冷感持続機能を与えることができ、その結果、夏季等の熱帯夜のように夜間でも高温状態が続いてしまっているような場合であっても、就寝時に頭部の冷涼感が得られ、もって快眠を誘うことができる。また、冷感シートが熱伝導性ゲルを含むため、体圧に対しゆっくりと沈み込み、枕に適した適度の硬度に設定することも可能であり、さらに、電気等の外部エネルギーを必要としないため、環境負荷、経済負荷を生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
I.冷感付与の技術思想と冷感枕の構成
1.冷感付与の技術思想
冷却部材を枕基体上面に配置してなる従来の冷却枕は、冷却部材が枕の長辺方向にほぼ枕長尺寸法で配置されたものであって、従来の高熱時の病人に用いる氷枕に基づく発想であり、後頭部を強制的に冷やすことによって冷感を継続的に付与する、という技術思想に着目したものである。
しかしながら、発熱などの病床時とは異なり、通常の睡眠においては、入眠準備段階において適度な冷感を付与して、スムーズな入眠を誘い、入眠後は、頭部の冷やし過ぎずに、適度な体温を保つことが質のよい眠りが得られ易いことが近年解明されてきており、従来の冷却枕は、こうした睡眠学的な理論に合致したものではなかった。また、大きな(長い)冷却部材の冷却能力も十分には活かされていなかった。
例えば、図12に示すように、人間の体温は、一般的に人の活動に応じて、起床時から徐々に上昇し、20時頃にピークを迎え、その後、入眠準備段階から徐々に下降しはじめ、睡眠中も、徐々に下降するものである。このような体温パターンから、入眠準備段階においては、体温の低下を補助するように冷感を与えて入眠を誘い、入眠後は、適度な冷感として、冷感による刺激を抑えることで熟睡できるので、質のよい眠りが得られ、使用者の健康維持に寄与する。
【0015】
ところが、本発明の冷感枕は、図12に示すような体温パターンや睡眠学的なバックボーンに基づき、(i)特定の冷却シートの冷たさを、(ii)特定の部位に、(iii)特定の接触をさせるという技術思想からなるものであって、特定の冷感シートを、枕基体部の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に略コの字様に配置し、該冷感シートが首筋部位および寝返りをした側の頬部位と接触して、前記2部位からの体温を吸熱するとともに、寝返りにより頭部接触が離れた側の頬部位からの放熱をする機能を賦与してなることを特徴とするものである。
【0016】
2.冷感枕の構成
本発明の冷感枕は、頭部を適度に冷却し入眠を促進する冷感枕において、熱伝導性ゲルを含み、頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が300W/m2〜15000W/m2である冷感シートを((i)特定の冷却シートの冷たさ)、枕基体部の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に略コの字様に配置し((iii)特定の接触をさせる)、該冷感シートが首筋部位および寝返りをした側の頬部位((ii)特定の部位)と接触して、前記2部位からの体温を吸熱するとともに、寝返りにより頭部接触が離れた側の頬部位からの放熱をする機能を賦与してなることを特徴とするものである。
ここで、「頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が300W/m2〜15000W/m2」において、熱流束値は、33.4℃一定の恒温的な熱源と、被測定物の間に、フィルム状熱流束センサー(25mm□)を挟設して測定される値であって、「頭部への初期接触」は、「恒温保持される熱源の被測定物への初期接触」との定義である。ここで、熱流束は、前記熱源から冷感パッドに熱が移動する方向を正の値としている。熱源を恒温とする理由は、頭部の恒温状態を模した条件とするためである。この測定法における熱流束の値は、接触開始(0秒)から10秒の範囲で、大きなピーク値(最大値)を示し、この間の熱流束の挙動が、人体における初期接触冷感に相当する。したがって、「頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が300W/m2〜15000W/m2」の意味するところは、冷感シートに頭が接触したときの初期冷感を適正な範囲とする、ということである。
【0017】
また、略コの字様の配置と冷感付与の技術思想のもうひとつの特徴は、従来の冷却枕のように、冷感を感じにくい頚椎周辺の後頭部(特に女性の場合は毛髪が熱抵抗となることによる)に、強い冷感を付与するのではなく、冷感に敏感な耳下腺近傍から首筋側面にかけての肌露出部に、すなわち、不眠に効果のあるといわれるツボである側頭部の完骨(側頭部の乳様突起の根部下縁にあるツボ)や風池(後ろ髪の生え際の下で、首の大きな筋(僧帽筋)の両外側にあるツボ)に、特定の冷却性能を持つ冷感パッドを効果的に接触させて、後頭部での冷感を感じにくい場合であっても、心地よい冷涼感を与えられることである。
【0018】
さらに、上記冷感シートは、特定の冷却性能としているので、接触から入眠に至るまでには、心地よい冷却間が持続し、入眠した後においては、体温に近い温度まで経時的に冷感を減じることで、入眠後の過剰冷却による不快感を回避することができ、快眠が可能となる。
そして、頚椎との接触部を基準とした略コの字様の配置形態において、頚椎当設部は、後頭部からうなじ(項)部分へ冷感を付与し、頚椎当設部の左右前寄りに配置される二つの部分は、頬に冷感を付与する。また、頚椎当設部と頬部当設部の少なくとも一方の一部は、冷感に敏感な耳下腺近傍から首筋側面にかけて接触するように、配置させることが特に好ましい。より効果的な冷感付与部位は、図14に示す部位の範囲が好適である。
前記の効果的な部位としては、不眠に効果のあるといわれるツボである側頭部の完骨であることが好ましい。
【0019】
上記略コの字様は、冷感シートが前記2部位および寝返りにより頭部とは接触しない部位の各々を、熱伝導を性能的に分断してなることが好ましい。ここで、熱伝導を性能的に分断とは、頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が400〜15000W/m2未満の部分で分断されることを意味する。具体的には、図5に示されるように、冷感シート3枚が分断されて、コの字形に配置されていることが好ましい。さらに、図5のような複数枚の冷感シートを用いる以外にも、一枚の冷感シート内で、面方向に熱抵抗を大きくするような高熱抵抗部を構成してもよい。冷感シートは、人体との継続的な接触によって、熱飽和してくるが、冷感シートが熱的に分断されていれば、冷感シートの熱飽和部(a)が隔離されて、他方の冷感シート(b)は温度上昇しないので、寝返りして他方の冷感シート(b)に触れれば、心地よい冷感が得られる。同時に、熱飽和していた冷感シート(a)は、人体から離れて、人体が接触した他方の冷感シート(b)は、温度上昇していくが、冷感シート(b)から冷感シート(a)への熱流入が起こらないので、冷感シート(a)は、放熱によって温度を下げられるのである。その結果、寝返りを利用して常に人体と接触していない熱的に分断された冷感シート部分をクールダウンすることができ、体温パターンに合わせた適度な冷感付与を実現できる。
【0020】
コの字様の具体例としては、図6に示した様な形態が挙げられる。
この形態では、頬当設部の冷感シートが、頚椎部当設部に対して、左右前寄りに配置した状態であり、仰臥位(仰向け)から側臥位(横向き)に頭部を側転(または横転)させたときに、左右前寄りに配置した冷感シートに、頬部分が効率よく接触させることができる。
また、別の形態として、頬全体にある三叉神経が敏感な人の場合には、頬への冷感を押させる目的で、頬当設部の冷感シートを図7の様に、配置してもよい。
そして、特に好ましい形態として、頚椎を基点とした頭部の左右の側転動作においては、頬から首筋側面のラインは、頚椎を基準に斜めになることに着目し、その接触ライン近傍に頬当設部の冷感シートを配置するという技術思想に基づいて、図8の様に、頬当設部の冷感シートを斜め前方に開くように配置することが好ましく、このように頬当設部を斜めに配置することにより、寝返りによる側転動作時において頬部への冷却シートの接触がスムーズになり、効率的に冷感付与することができる。
また、うなじ(項)部(頚椎部)に配置する冷却シートは、両端側に向かって反り上がるように配置され、これにより、前記冷感シートが首裏から首側面にかけての曲形状に沿う形となるので、首裏部分への冷感が乏しい条件でも、仰臥位からほんの僅かに首を動かすだけで、首筋側面(図14のa部分)に冷感シートが触れて、有効な冷感を付与することができる。
【0021】
また、枕基体の冷感シート配置部分は、柔軟な凸曲面を有し、冷感シートは、前記曲面形状に沿って凸曲面を形成して、人体に当設することを特徴とする。この曲面の形成により、人体が接触し始めは、接触面積が小さく、人体が冷却シート部に深く沈み込むに従い接触面積が大きくなるため、初期接触時の過度の冷感を抑えつつ、徐々に快適な接触冷感を与えることができる。
【0022】
さらに、前述の略コの字様の冷感シートの平面的な配置効果に加えて、各当設部の冷感シートの高さ方向の配置関係も、快適な睡眠の重要な要因である。
冷感シートの高さ方向の配置関係は、枕基体部の形状と一致するので、以下に枕基体部の詳細を記載し、高さ配置の作用について説明する。
【0023】
3.枕基体部
枕基体部としては、上記冷感シートを、枕基体部の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に略コの字様に配置できるものであって、略コの字様に配置する冷感シートの冷感付与作用が効果的に発揮される形状であることが好ましく、また、形状追従性のある素材からなることが好ましい。
【0024】
枕基体部の形状としては、図9に示すように、中央上面が凹陥した頭部支持凹部が形成されるとともに、その周囲が相対的に高く形成された左右のサイドサポート部と、その間の頸椎部サポート部とが形成されたものであることが好ましい。前記頭部支持凹部は、仰臥位において後頭部の座りを安定させるとともに、頬への密着が促進され、冷感を向上させる作用がある。また、前記サイドサポート部は、単に前記頭部支持凹部の前記作用のサポートではなく、仰臥位での枕使用において、頬に効率よく冷感を与えるための冷感シートを配置する目的がある。さらに、頚椎サポート部は、仰臥位での枕使用において、頚椎の湾曲形状に沿った形状としているので、頚椎の部分と枕の密着性を高めて、頚椎の支持安定性と、冷感シートによる冷感付与効率を向上させる。そして、前記冷感シートは、前記サイドサポート部と頚椎部サポート部に沿って、略コの字に配置することが好ましい。これは、頚椎保持の安定性を確保でき、かつ効率よく冷感を付与できるからである。
【0025】
また、枕基体部は、図9に示されるように、接触面の密着性が高くなって、頚椎保持安定性と冷感付与性が向上するため、底面からの高さが、サイドサポート部>頚椎サポート部>頭部支持凹部の関係であることが好ましい。特に、冷感シートの配置として、図8の様に、頬当設部の冷感シートを斜め前方に開くように配置した場合に、前記高さの関係の効果が優れている。
さらに、枕基体部には、図6、図9に示されるように、肩部の隙間を埋めて、頚椎保持安定性が高まるため、肩位置サポート部が形成されていることが好ましい。一般的に、仰臥位の枕使用時おいて、頚椎の付け根から僧帽筋に沿った部分には、枕に接触しない空間ができやすく、この空間が大きいほど、就寝時の首への負担が大きくなり、寝違えや肩凝りの原因のひとつとなるが、前記肩サポート部は、この空間を埋めるように、枕の肩側前面にスロープ状に構成されるため、肩から後頭部まで安定して支持できるとともに、頚椎への良好な密着性を高めることができる。前記スロープ状とする角度は、枕基体底面を基準として、30〜60°が好ましい。30°未満の場合は、肩との隙間を十分に埋めることができず、一方、60°を超えると、逆に肩への圧迫感が強くなるので好ましくない。
【0026】
また、冷感枕は、図10に示されるように、枕基体部と、該枕基体部の上部に積み重ねられるアッパー部とを具えてなり、そのアッパー部には、冷感シートが配置されていることが好ましい。アッパー部は、枕基体部よりも柔らかい素材で構成され、枕基体部と冷感シートとの間に挟設させることにより、冷感シートの枕基体形状への密着性を向上させる作用がある。また、冷感シートがない部分においては、枕の感触を良くする効果も有する。
さらに、冷感枕は、図11に示されるように、枕基体部には、人体側の長辺に傾斜面を付して該傾斜面の上部にあたるフォーム層の直角断面を枕からオーバーハングするように突出角を設けて、アッパー部を浮かせた状態としたことが好ましい。なお、前記スロープの肩サポート部であれば、アッパー部の先端17を浮かせた状態にできるので、肩が接触する際に、その浮いた部分が下側に容易に変形でしやすいので、使用感において段差を感じさせない効果がある。
【0027】
また、枕基体部を構成する形状追従性のある材料としては、軟性フォームから成るブロック要素が複数組み合わされているものが好ましい。また、型を用いた発泡成形や、プログラム制御した切断機(コンターマシン等)を用いて、一体物として形成(通称CFカット)しても良い。
軟質フォームとしては、例えば、低反発のウレタンフォーム等から成る低反発発泡体を適用できるが、市場の嗜好性等に応じて、種々の素材のものに改変して実施することができる。また、複数のブロック要素で構成する場合には、各ブロック要素の作用に応じて硬さや素材を変えてもよい。また、無膜フォームを適用すれば、通気性がよくなる。
【0028】
II.冷感シート
本発明の冷感枕において、熱伝導性ゲルを含み、頭部への初期接触から10秒以内の平均熱流束値が300〜15000W/m2である冷感シートが用いられる。
上記の冷感シートは、上記の熱流束値の範囲で、適度な柔軟性を有していれば従来のアクリル系やウレタン系の保冷シート等が適用できるが、適度な冷感と柔らかい感触ならび密着性の観点から、シリコーンゲル材料からなる冷感シートであることが好ましい。
【0029】
本発明の冷感枕の冷感シートは、ゲル材料が好ましく、さらに好ましくは、熱伝導性ゲルシート、蓄熱ゲルシート及び高吸水性ポリマーゲルシートからなる群から選ばれたものであり、熱伝導性ゲルシートが特に好ましい。
【0030】
上記熱伝導性ゲルシートは、性状、性能として、熱伝導率が0.5〜3.0W/m・Kであり、硬度が針入度(JIS K2207準拠)で20〜150であり、厚みが1〜10mmであることが好ましい。熱伝導率が0.5W/m・K未満であると、十分な冷感が得られず、一方、熱伝導率が3.0W/m・Kを超えると、熱伝導付与のための熱伝導性フィラーの充填量が大きくなり、熱伝導ゲルシートが硬くなって、曲げ撓み性が損なわれて好ましくない。また、硬度が20未満であると、熱伝導ゲルシートが硬くなって、曲げ撓み性が損なわれ、一方、硬度が150を超えると、柔らかすぎて、使用時にゲルの破断が起こる虞がある。さらに、厚みが1mm未満であると、十分な冷感が得られず、一方、厚みが10mmを超えると、柔軟性が損なわれ、また、コストアップとなり好ましくない。
【0031】
また、上記熱伝導性ゲルシートは、材料として、有機ゲルと熱伝導性フィラーからなるシート状の熱伝導性ゲル硬化物であることが好ましい。有機ゲルとしては、圧縮歪が小さく、温度安定性に優れたシリコーン材料が好ましい。シリコーンゲルとしては、従来から知られ、市販されている種々のシリコーン材料として一般的に使用されているケイ素化合物を適宜選択して用いることができる。よって、加熱硬化型あるいは常温硬化型あるいは光硬化型のもの、硬化機構が縮合型あるいは付加型のものなど、いずれも用いることができる。
さらに、高熱伝導性フィラーとしては、アルミナ、窒化硼素、窒化アルミ、水酸化アルミ、炭化珪素、その他の熱伝導性に優れるセラミックフィラーや、アルミ粉、銅粉、その他の熱伝導性に優れる金属フィラーを用いることができる。
蓄熱ゲルシート及び高吸水性ポリマーゲルシートとしては、特に限定されず、公知のものを適用できる。
【0032】
さらに、冷感シートとしては、冷感持続性を向上させるために、前記熱伝導性ゲルシートを表面層(A)として、その裏面には、可撓性と熱拡散性を有した金属や炭素系の裏面層(C)を積層して、熱伝導性ゲルシートの熱を裏面層(C)から分散排熱する構造としても良い。
前記裏面層(C)は、枕用途における怪我やアレルギーなどの安全性の観点から、炭素質材料であって、特に好ましくは、熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいグラファイトシートからなるものである。前記グラファイトシートとしては、厚み方向の熱伝導率が1〜50W/mKで、面方向の熱伝導率が100〜3500W/mKであるものが好適である。
そのようなグラファイトシートの熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいものとして、例えば、面方向に配向したタイカ(株)製の商品名「スーパーλGS」の熱伝導異方性(面方向250〜350W/mK、厚み方向5〜10W/mK)あるいは商品名「λGS」の熱伝導異方性(面方向170〜200W/mK、厚み方向5〜10W/mK)グラファイトシートなどが挙げられる。
【0033】
本発明において、グラファイトシートの厚みは、特に限定するものではないが、厚みが厚くなると、熱拡散性能は向上するものの可撓性が損なわれ、曲げ柔軟性と曲げ耐久性に支障をきたし、逆に薄すぎると、可撓性は向上するものの十分な熱拡散性能が得られない。したがって、可撓性と熱拡散性能のバランスを考慮して、厚みは、0.05〜0.15mm程度が好適であり、特に好ましくは0.075〜0.10mmである。グラファイトシートの厚みが0.075〜0.10mmの範囲であると、グラファイトシートと中間層(B)との追従性がとくに好ましいものとなる。
【0034】
また、裏面層(C)の形状としては、表面層(A)の形状に相似するようなものが、熱拡散の効率の点から好ましい。また、図4に示されるように、裏面層(C)は、放熱を誘導させる方向にそろう複数の小スリットが形成される。前記小スリットは、屈曲によって拡開して、その結果、熱伝導性を損なわずに、裏面層(C)は、冷感パッドの曲げ変形に対する追従を容易にする。なお、ここでいう拡開とは、曲げ変形において、引張り応力によってスリットの形状が変化する(具体的には開くように作用する)現象をいう。小スリットの溝幅や小スリット間の間隔、配置は、適宜決定される。
さらに、裏面層(C)は、少なくとも一本の大スリットで分断されていることが好ましく、前記大スリットの形成により、さらに裏面層(C)の屈曲による形状追従性が向上する。大スリットは、その面積が表面層(A)より小さく、かつ前記小スリットのスリット幅より大きいものであることが好ましい。
前記大スリットのスリット幅は、人体の皮膚の冷感点を基準に、該冷感点間の距離の10倍より小さければ、大スリット部分と裏面層(C)部分との冷感の差を感じない(し難い)ので、その範囲内で大スリットの幅を広げることができ、冷感の連続的な感覚を付与しながら、裏面層(C)の屈曲による形状追従性を向上することができる。なお、前記スリット幅の範囲を数値換算すると、具体的には25mm以下が好ましく、20mm以下が特に好ましい。25mmを超えると、冷感パッドの裏面層(C)のある部分と大スリットの部分で、冷感に明らかな差を感じやすくなり、好ましくない。25mm以下であれば、人体に適用した場合には、冷点の感覚において冷感の明らかな差を感じ難くなる作用がある。
小スリットと大スリットとは、略垂直の位置関係にあり、それぞれが面方向の縦(または横)、横(または縦)の曲げ変形時に対して、共動して変形応力を低減させることにより、裏面層(C)の優れた曲面形状追従性と曲げ耐久性を実現させる作用がある。
また、小スリットと大スリットは、その機能を損なわない範囲において、その形状は直線状や波形状など、好適な形状を適用できる。
なお、スリットとは、裏面まで貫通して、裏面層(C)の面方向が分断された状態であって、例えば、ごく薄い刃で切り込みを入れただけの状態も含まれる。
【0035】
さらに、裏面層(C)がグラファイトシートの場合には、熱伝導性ゲルシートからのオイル移りによるグラファイトシートの膨潤による不具合や、グラファイトシートの曲げ応力耐久性を確保する目的で、熱伝導ゲルシートとグラファイトシートの間に樹脂フィルムからなる中間層(B)を挟設する。
中間層(B)の面積は、裏面層(C)のグラファイトシートより大きいものである。
また、中間層(B)は、熱伝導性ゲルシートの柔らかい感触を活かしつつ、かつ、伸延性に乏しいグラファイトシートを補強して枕基材の曲面形状に追従し、かつ優れた曲げ耐久性の機能、働きを発揮するために、次の性状、性能を有するものである。
すなわち、上記樹脂材料としては、JIS K6251準拠の引張り伸び率が表面層(A)の引張り破断荷重以下の引張り試験力の範囲において、20〜200%、厚さが0.05〜0.5mm、及びJIS K7311準拠のJIS Aの硬度が30〜120の樹脂フィルムが挙げられる。引張り伸び率が20%未満であると、冷感シートの使用の際に表面層(A)の柔らか感が損なわれることがある。一方、引張り伸び率が200%を超えると、表面層(A)の伸びとグラファイトシートの伸びとの差によって生ずる応力を緩和できず、グラファイトシートの曲げ耐久性が低下するので好ましくない。また、厚さが0.05mm未満であると、後述する被覆層(E)との溶着加工の際に、薄すぎて十分な溶着強度が得られない問題が発生する可能性があり、一方、厚さが0.5mmを超えると、可撓性が低下するとともに、中間層(B)の熱抵抗が大きくなるので、表面層(A)から裏面層(C)への熱の伝導が阻害されて、冷感持続性が低下するので好ましくない。特に好ましい厚さは、熱抵抗低減と可撓性の観点から、0.05〜0.15mmの範囲である。
【0036】
また、樹脂の材料としては、ウレタン、PETなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸などが挙げられ、公知のプラスチックフィルムの材料として用いられているものであれば、適宜用いられる。
【0037】
さらに、本発明の冷感枕の冷感シートにおいて、上記表面層(A)、中間層、裏面層(C)の3層の引張り伸び率は、表面層(A)の引張り破断荷重以下の引張り試験力の範囲において、表面層(A)>中間層(B)>裏面層(C)の関係である。
この理由としては、熱源側から荷重がかかって冷感シートが表面層(A)を内側として屈曲(湾曲)した時に、伸縮性に乏しく脆い裏面層(C)が過度の荷重によって破断するのを防ぐために、表面層(A)より中間層(B)の引張り伸び率を小さくする必要があり、さらに、中間層(B)の引張り伸び率が裏面層(C)よりも小さいと、中間層(B)の剛性が大きくなり、冷感シートとしてのフレキシブル性が損なわれるので、中間層(B)の引張り伸び率は、裏面層(C)よりも大きくする必要があるためである。
また、裏面層(C)は、その面積が中間層(B)の面積より小さくし、さらに、中間層(B)の各辺にかからないよう中央に寄って密着させて、屈曲する位置に配置されることもでき、それが望ましい。本発明においては、例えば、裏面層(C)のグラファイトシートが屈曲する位置に配置されたとしても、割裂や屈折、それに伴う熱伝導性の低下といった不具合がなく、屈曲性や耐久性も満足し、曲げ耐久性に優れるものである。
尚、本発明における引張り伸び率は、JIS K6251に準拠した同じダンベル形であるが、厚みは、各層の実厚みでの引張り伸び率であって、前記引張り伸び率の大小関係も、各層の実厚みでの引張り伸び率の比較における大小関係である。これは、各層の硬さと厚みで、引張り伸び率が変わるので、実際の積層構成における各層の引張り伸び特性の大小関係が重要であるためである。そこで本発明では、引っ張り伸び率は、表面層(A)の引張り破断荷重以下の引張り試験力の範囲での数値として定める。
【0038】
本発明の冷感枕の冷感シートにおいて、裏面層(C)には、さらに、裏面層(C)を補強するために、可撓性の補強層(D)を有していることが好ましい。
補強層(D)の形状としては、図2に示されるように、面積が裏面層(C)より大きく、かつ裏面層(C)全面を覆い、補強層(D)の一部が中間層(B)と密着することが望ましい。
また、補強層(D)の材質としては、可撓性であれば、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ウレタン、ナイロンなどが挙げられる。
さらに、補強層(D)の性能、機能としては、可撓性であれば、特に限定されないが、厚みが0.1〜1mmであり、また、熱伝導性、防水性の性能を有していることが望ましい。
【0039】
また、本発明の冷感枕の冷感シートにおいて、表面層(A)には、中間層(B)と接触していない部分に、さらに、被覆層(E)を有していてもよい。
被覆層(E)の形状としては、図4に示されるように、中間層(B)と連結して袋状とし、表面層(A)全面を被覆していることが望ましい。その場合には、少なくとも表面層(A)の熱源側は被覆層(E)を被覆することが望ましい。
被覆層(E)と中間層(B)の連結は、接着剤、粘着テープなどによる接着や、溶着など公知の方法を適用できるが、連結強度の確保の観点から、溶着が好ましい。また、連結部を溶着で行うことにより、溶着部分は、非溶着部に比べて弾性率が大きくなるので、表面層(A)の過剰変形(屈曲)を抑制する作用が得られ、その結果、裏面層(C)の変形に伴う小スリットの拡開を効果的に機能させることができるとともに、過変形によるスリットを基点とした裏面層(C)の破損を防止することができる。
被覆層(E)は中間層(B)と異なり、表面層(A)の柔らかさを活かした、感触や熱源への密着性を得るために、被覆層(E)の引張り伸び率は、表面層(A)の伸び率を同等以上とすることが望ましい。また、表面層(A)のゲル触感(冷涼感)を導き出すために、厚みは0.05〜0.15mmが好ましい。0.05mm未満の場合には、中間層(B)との接合、特に溶着の場合に薄すぎて溶着ができない虞があり、0.15mmを超えると剛性が大きくなり、柔軟性が損なわれるので好ましくない。
また、被覆層(E)の材質としては、特に限定されないが、例えば、ウレタンや熱可塑性エラストマーなどがあげられる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。
【0041】
(1)冷感シートの作製
(i)表面層(A):
シリコーンゲル原料(a)として、二液付加反応型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング社製CF5106をA液/B液=50:50(重量比)にて混合)20重量%と、熱伝導性フィラー(c)として水酸化アルミニウム(昭和電工社製HS341)80重量%を、ケミカルミキサーで5分間混合後、10分間真空脱泡して25℃粘度が50Pa・sの未硬化のゲル組成物を準備した。次いで、前記未硬化のゲル組成物を、OPP/PET積層の剥離フィルムC1(タカラインコーポレーション社製、75μm)のOPP積層側に接するように挟んで厚み2.5mmのシートにロール成形機で成形し、電気式温風オーブン内で100℃、2時間加熱して、厚さ2.5mmの熱伝導性シートとし、230mm×80mmの長方形にカットして、表面層(A)とする熱伝導性シートを得た。前記熱伝導性シートの熱伝導率は1.0W/m・Kで、破断時の引張り伸び率は360%であった。
【0042】
(ii)中間層(B):
厚み0.1mmのウレタンフィルム(日本マタイ社製 エスマーURS92°)を準備した。前記ウレタンフィルムの、前記表面層(A)の熱伝導性ゲルの引張り破断荷重(0.5N)における引張り伸び率は20%であった。
【0043】
(iii)裏面層(C):
厚み0.07mmで、予め片面にUV樹脂コート処理し、かつ他方面に片面粘着剤付のグラファイトシート(株式会社タイカ製、製品名スーパーラムダGS)を準備した。
前記表面層(A)の熱伝導性ゲルの引張り破断荷重(0.5N)における引張り伸び率は2%であった。
【0044】
(iv)その他の層(補強層(D)、被覆層(E)):
補強層(D)として、可撓性を有する不織布テープ(恵比寿工業社製、N1040)を、被覆層(E)として、250mm×100mm×厚み0.05mmで、前記表面層(A)の熱伝導性ゲルの引張り破断荷重(0.5N)における引張り伸び率が40%のウレタンフィルム(日本マタイ社製、エスマーURS92°)を準備した。
【0045】
なお、熱伝導率は、熱伝導率測定用に60mm×120mm×10mm厚のブロック状試料を作製し、前記ブロック状試料が25℃における熱伝導率をJIS R2616準拠の熱線法で測定した。測定装置は、京都電子工業株式会社製の熱伝導率計(商品名:QTM−500 PD−11型プローブ)を用いた。
また、引張り伸び率の測定は、JIS K6251に準拠して、ダンベル3号形状で、引張り強度試験機(島津製作所 AD−100)を用いて、クランプ距離55mm、引張り速度500mm/minの条件で実施した。引張り伸び率は、試験前の標線間距離L0(20mm)、破断時の標線間距離L1において、次式より求めた。
伸び率(%)={(L1−L0)/L0}×100
ただし、中間層(B)と裏面層(C)の伸び率は、表面層(A)の引張り破断時の試験力における標線間距離をL1として、上記の式から求めた。
さらに、熱流束は、インタークロス社の熱流束計(INTERCROSS200)を用い、同装置のプローブが33.4℃一定になるように温度制御した状態で、冷感シート(表面温度25℃±3℃)に非接触な状態からプローブ自重で密着接触させて、接触したときを0秒として、0〜10秒の間の最大値を求めた。ここで、熱流束は、プローブから冷感シートに熱が移動する方向を正の値とした。
【0046】
上記の各層を用いて、以下の要領で、冷感シートを作製した。
作製手順:
(I)中間層(B)と被覆層(C)の各周端部約10mmを溶着シロとして、表面層(A)となる熱伝導ゲルシートの表裏面を、それぞれ中間層(B)と被覆層(E)で挟んで、空気が入らないように被覆、溶着して、250mm×100mmの長方形の熱伝導性ゲルシートのパックを作製する。
(II)熱伝導性ゲルシートのパックの中間層(B)面に、トムソン式抜き刃を用いて小スリットを形成した(又はしない)裏面層(C)を、裏面層(C)の粘着層を介して貼り付ける。(大スリットを形成する場合は、複数の裏面層片を、大スリットを形成するように配置して貼り付ける。)
(III)さらに、裏面層(C)が全被覆されるように、補強層(D)を貼り付ける。
このようにして作製した冷感シートは、初期接触から10秒以内の最大熱流束値が10000W/m2であった。
【0047】
(2)枕基体部の作製
枕基体部は、ブロック要素が組み合わされて中央上面が凹陥した頭部支持凹部を形成し、その周囲は相対的に高く形成された左右のサイドサポート部と、その間に設けられる頸椎部サポート部とを形成した。
具体的には、枕基体部は、図13に示すように、それぞれ軟性フォームのブロック要素であるベースブロックと、サイドサポート部ブロックと、頚椎サポート部ブロックとから構成されるものであって、横長平板形状をした軟性フォームのベースブロックの上面左右に対し、サイドサポート部ブロックを接着剤で貼設するとともに、このサイドサポート部ブロックの間のベースブロックの上面における前後両端部に対し、頚椎サポート部ブロックを接着剤で貼設して作製した。
また、枕基体の肩側前面にスロープ状に傾斜加工をして肩サポート部を形成した。肩サポート部の長さは、水平方向の長さは560mm、傾斜角は40°とした。
さらに、前記サイドサポート部ブロックと頚椎サポート部ブロックの高さは、左右のサイドサポート部ブロックの方が頚椎サポート部ブロックよりも高さの高い構成とし、サイドサポート部>頚椎サポート部>頭部支持凹部 とした。具体的には、枕基体底面から高さが、それぞれ、650mm、45mm、25mmとした。各ブロック要素のフォーム硬度とフォーム密度は、同一のものを用いるもので、フォームの硬度が、約115N(JIS K6400)で、フォームの密度は、約20kg/m3の、ブリジストン化成社製のウレタンフォームFLを用いた。
次いで、サイドサポート部、頚椎サポート部ならびに頭部支持凹部にそって、アッパーシートを接着剤で密着積層して、枕基体部を得た。アッパーシートとしては、フォームの硬度が、約50N(JIS K6400)で、フォームの密度が約20kg/m3の、ブリジストン化成社製のウレタンフォームFJを用いた。また、接着剤は、3M社製の「スプレーのり99」を用いた。
【0048】
(3)冷感枕の作製
上記で作製した冷感シートを、上記で作製した枕基体部に適用した。
【0049】
[実施例1〜3]
実施例1では、冷感シートを、図8の如く略コの字様に、枕基体部に適用し、冷感枕を作製した。
また、実施例2では、冷感シートを、図6の如く略コの字様に、枕基体部に適用し、冷感枕を作製した。
さらに、実施例3では、冷感シートを、図7の如く略コの字様に、枕基体部に適用し、冷感枕を作製した。
【0050】
[比較例1]
比較例1として、上記の熱伝導性シートを250mm×300mmにカットして冷感シートとし、前記冷感シート1枚を、枕基体部に適用し、従来の冷感シート配置の冷感枕を作製した。
【0051】
[冷感枕の評価]
上記で作製した冷感枕を、以下の要領で、冷却感や使用感の官能試験を行い、評価した。
1.官能試験方法:
年齢20、30、40、50、60代の男女各5名、合計10名で、8月上旬〜中旬の連続7日間(気温25〜32℃)に実施した。7日間の試験期間のうち、最後の2日間において、起床時にアンケートに答えてもらい、アンケート結果に基づき、冷感枕の冷感等の効果を確認した。アンケート項目は、(1)冷感、(2)側転時の冷感、(3)冷感持続性、(4)頚椎保持性で、評価は、優れる(5点)、やや優れる(4点)、普通(3点)、やや劣る(2点)、劣る(1点)の5段階とした。判定は、各評価点数を加算して、15点(すべて普通相当)以上を○(最も高得点のものは◎)とし、15点未満を×とした。
【0052】
2.評価結果
実施例1〜3の冷感枕は、比較例1の冷感枕に比べて、側転時の冷感や冷感持続性が優れており、本発明の特徴である冷感シートの略コの字配置による効果的な冷感付与性が実証された。また、実施例1〜3の冷感枕は、比較例の冷感枕に比べて頚椎保持性が優れており、本発明の枕基体の構造の効果が実証された。さらに、実施例1〜3のうち、特に実施例2の冷感枕が総合的に優れており、これは、枕基体の構成と冷感シート配置の複合効果による結果といえる。
【0053】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の冷感枕は、適度な冷感と冷感持続性を付与しうる冷感シートを効果的に配置することによって、(i)特定の冷却シートの冷たさを、(ii)特定の部位に、(iii)特定の接触をさせることができ、すなわち、体温パターンや睡眠学的なバックボーンに基づいた性能を得て、入眠前後の睡眠状態に適した冷涼感が得られ、また、睡眠中においても、過剰な冷却をしないので、快適で質のよい睡眠が得られ、使用者の健康維持に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートを説明する模式図である。
【図2】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートの一実施形態を説明する模式図である。
【図3】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートの一実施形態、特にスリットを説明する模式図である。
【図4】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートの一実施形態を説明する模式図である。
【図5】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートを、略コの字様に配置した説明図である。
【図6】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートにおける、略コの字様の一実施形態を説明する図である。
【図7】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートにおける、略コの字様の他の一実施形態を説明する図である。
【図8】本発明の冷感枕に用いられる冷感シートにおける、略コの字様の他の一実施形態を説明する図である。
【図9】本発明の冷感枕に用いられる枕基体部の一実施形態を説明する模式図である。
【図10】本発明の冷感枕に用いられる枕基体部、特にアッパー部を説明する模式図である。
【図11】本発明の冷感枕に用いられる枕基体部、特にアッパー部の一実施形態を説明する模式図である。
【図12】人間の体温パターンを説明する図である。
【図13】枕基体部の模式図(ブロックパーツ構成図)である。
【図14】冷感を付与する頬部分の模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 冷感シートの表面層(A)
2 冷感シートの中間層(B)
3 冷感シートの裏面層(C)
4 冷感シートの補強層(D)
5 冷感シートの被覆層(E)
6 裏面層(C)の小スリット
7 裏面層(C)の大スリット
10 冷感シート
11 枕基体部
12 肩サポート部
13 頚椎サポート部
14 頭部支持凹部
15 サイドサポート部
16 アッパー部
17 アッパー部の浮かせた状態
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部を適度に冷却し入眠を促進する冷感枕において、
熱伝導性ゲルを含み、頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が300W/m2〜15000W/m2である冷感シートを、枕基体部の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に略コの字様に配置し、該冷感シートが首筋部位および寝返りをした側の頬部位と接触して、前記2部位からの体温を吸熱するとともに、寝返りにより頭部接触が離れた側の頬部位からの放熱をする機能を賦与してなることを特徴とする冷感枕。
【請求項2】
前記略コの字様は、冷感シートが前記2部位および寝返りにより頭部とは接触しない部位の各々を、熱伝導を性能的に分断してなることを特徴とする請求項1に記載の冷感枕。
【請求項3】
前記枕基体部は、中央上面が凹陥した頭部支持凹部が形成されるとともに、その周囲が相対的に高く形成された左右のサイドサポート部と、その間の頸椎部サポート部とが形成されたものであって、前記冷感シートは、前記サイドサポート部と頚椎部サポート部に沿って略コの字に配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の冷感枕。
【請求項4】
前記枕基体部は、底面からの高さが、サイドサポート部>頚椎サポート部>頭部支持凹部の関係であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項5】
冷感枕は、枕基体部と、該枕基体部の上部に積み重ねられるアッパー部とを具えてなり、該枕基体部は、軟性フォームから成るブロック要素が複数組み合わされて構成され、一方、アッパー部には、冷感シートが配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項6】
冷感シートが接触する首筋部位は、側頭部のツボである完骨または後頭部のツボである風池であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項7】
前記略コの字様は、冷感シート3枚が分断されて、コの字形に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷感枕。
【請求項8】
前記枕基体部に、肩位置サポート部が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項9】
冷感枕は、枕基体部とアッパー部の硬さが枕基体部>アッパー部であり、かつ枕基体部には、人体側の長辺に傾斜面を付して該傾斜面の上部にあたるフォーム層の直角断面を枕からオーバーハングするように突出角を設けてアッパー部を浮かせた状態としたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項10】
前記冷感シートは、熱伝導率(JIS R2616準拠)が0.5〜2.0W/m・Kであり、厚みが1〜10mmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項11】
前記熱伝導性ゲルは、熱伝導率が0.8〜3.0W/m・Kであり、針入度硬度が20〜150であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項12】
前記冷感シートは、熱源側表面層(A)、中間層(B)及び裏面層(C)の少なくとも3層からなり、前記3層の素材は、熱源側表面層(A)にゲル材料、中間層(B)に樹脂材料、裏面層(C)に炭素質材料を選択して、前記3層の引張り伸び率(JIS K6251準拠)が、表面層(A)>中間層(B)>裏面層(C)の順になる構成とし、かつ裏面層(C)は、面積が中間層(B)の面積より小さくし、さらに、中間層(B)の各辺にかからないよう中央に寄って密着し、屈曲に追従する配置とすることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項13】
前記冷感シートの裏面層(C)は、熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいグラファイトシートからなり、かつ放熱を誘導させる方向にそろう複数の小スリットが形成され、熱源側からの屈曲する外力に対して、該小スリットが中間層(B)に密着しつつ、拡開することを特徴とする請求項12に記載の冷感枕。
【請求項14】
前記冷感シートの裏面層(C)は、前記小スリットのスリット幅より大きい、少なくとも一本の大スリットで分断されていることを特徴とする請求項13に記載の冷感枕。
【請求項1】
頭部を適度に冷却し入眠を促進する冷感枕において、
熱伝導性ゲルを含み、頭部への初期接触から10秒以内の最大熱流束値が300W/m2〜15000W/m2である冷感シートを、枕基体部の表面上に、人の頚椎との接触部を基準に略コの字様に配置し、該冷感シートが首筋部位および寝返りをした側の頬部位と接触して、前記2部位からの体温を吸熱するとともに、寝返りにより頭部接触が離れた側の頬部位からの放熱をする機能を賦与してなることを特徴とする冷感枕。
【請求項2】
前記略コの字様は、冷感シートが前記2部位および寝返りにより頭部とは接触しない部位の各々を、熱伝導を性能的に分断してなることを特徴とする請求項1に記載の冷感枕。
【請求項3】
前記枕基体部は、中央上面が凹陥した頭部支持凹部が形成されるとともに、その周囲が相対的に高く形成された左右のサイドサポート部と、その間の頸椎部サポート部とが形成されたものであって、前記冷感シートは、前記サイドサポート部と頚椎部サポート部に沿って略コの字に配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の冷感枕。
【請求項4】
前記枕基体部は、底面からの高さが、サイドサポート部>頚椎サポート部>頭部支持凹部の関係であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項5】
冷感枕は、枕基体部と、該枕基体部の上部に積み重ねられるアッパー部とを具えてなり、該枕基体部は、軟性フォームから成るブロック要素が複数組み合わされて構成され、一方、アッパー部には、冷感シートが配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項6】
冷感シートが接触する首筋部位は、側頭部のツボである完骨または後頭部のツボである風池であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項7】
前記略コの字様は、冷感シート3枚が分断されて、コの字形に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷感枕。
【請求項8】
前記枕基体部に、肩位置サポート部が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項9】
冷感枕は、枕基体部とアッパー部の硬さが枕基体部>アッパー部であり、かつ枕基体部には、人体側の長辺に傾斜面を付して該傾斜面の上部にあたるフォーム層の直角断面を枕からオーバーハングするように突出角を設けてアッパー部を浮かせた状態としたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項10】
前記冷感シートは、熱伝導率(JIS R2616準拠)が0.5〜2.0W/m・Kであり、厚みが1〜10mmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項11】
前記熱伝導性ゲルは、熱伝導率が0.8〜3.0W/m・Kであり、針入度硬度が20〜150であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項12】
前記冷感シートは、熱源側表面層(A)、中間層(B)及び裏面層(C)の少なくとも3層からなり、前記3層の素材は、熱源側表面層(A)にゲル材料、中間層(B)に樹脂材料、裏面層(C)に炭素質材料を選択して、前記3層の引張り伸び率(JIS K6251準拠)が、表面層(A)>中間層(B)>裏面層(C)の順になる構成とし、かつ裏面層(C)は、面積が中間層(B)の面積より小さくし、さらに、中間層(B)の各辺にかからないよう中央に寄って密着し、屈曲に追従する配置とすることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の冷感枕。
【請求項13】
前記冷感シートの裏面層(C)は、熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいグラファイトシートからなり、かつ放熱を誘導させる方向にそろう複数の小スリットが形成され、熱源側からの屈曲する外力に対して、該小スリットが中間層(B)に密着しつつ、拡開することを特徴とする請求項12に記載の冷感枕。
【請求項14】
前記冷感シートの裏面層(C)は、前記小スリットのスリット幅より大きい、少なくとも一本の大スリットで分断されていることを特徴とする請求項13に記載の冷感枕。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−63837(P2010−63837A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235622(P2008−235622)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(306026980)株式会社タイカ (62)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(306026980)株式会社タイカ (62)
【Fターム(参考)】
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