説明

冷接点補償回路、冷接点補償回路の校正方法及び温度測定装置

【課題】順方向電圧温度特性に傾き誤差が生じているため、その結果、冷接点の現在温度を正確に特定することができない。
【解決手段】熱電対2の冷接点2Bの現在温度に応じて電圧を出力する冷接点補償用ダイオード21と、同冷接点補償用ダイオードに関わる所定の順方向電圧温度特性に基づき、前記冷接点補償用ダイオードの出力電圧に対応する温度を冷接点の現在温度として検出する冷接点温度検出部23と、この検出した冷接点の現在温度に対応する補償電圧を生成する補償電圧生成部25とを有する冷接点補償回路12であって、冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧値Vgと、冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧値Vpとに基づき、所定の順方向電圧温度特性(シフト校正後推定特性)の傾きを校正する校正部26を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱電対の温接点及び冷接点間の温度差で発生する直流電圧に、前記冷接点の温度相当の直流電圧を補償する冷接点補償回路、この冷接点補償回路の校正方法及び、この冷接点補償回路を備えた温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような冷接点補償回路を備えた温度測定装置は、直流電圧毎に温度を対応付けた熱電対特性テーブル(基準熱起電力表)を予め備え、熱電対の温接点及び冷接点間の温度差で発生する直流電圧に、前記冷接点補償回路から、前記冷接点の現在温度に対応した補償電圧を加算し、この加算結果の直流電圧に対応した温度を熱電対特性テーブルから読み出し、この読み出した温度を温接点の現在温度として検出出力するものである。
【0003】
また、このような冷接点補償回路は、冷接点の温度毎に補償電圧を対応付けた補償電圧テーブル(基準熱起電力表)と、熱電対の冷接点の現在温度に応じて電圧を出力する冷接点補償用ダイオードと、同冷接点補償用ダイオードに関わる順方向電圧温度特性に基づき、前記冷接点補償用ダイオードの出力電圧に対応する温度を前記冷接点の現在温度として検出する冷接点温度検出部と、この冷接点温度検出部にて検出した前記冷接点の現在温度に対応した補償電圧を補償電圧テーブルから読み出し、この読み出した補償電圧を生成する補償電圧生成部とを有している(例えば特許文献1参照)。
【0004】
このような従来の冷接点補償回路によれば、冷接点補償用ダイオードの順方向電圧温度特性に基づき、前記冷接点補償用ダイオードの出力電圧に対応する温度を前記冷接点の現在温度として検出するようにしたので、ダイオードの順方向電圧温度特性の直線性を利用して冷接点の現在温度を検出することができる。
【0005】
また、冷接点補償回路の冷接点補償用ダイオードの出力電圧から冷接点の現在温度を特定するために使用する順方向電圧温度特性は、図5に示すように、そもそも冷接点補償用ダイオードの製品種別毎に3個以上の任意温度(絶対零度を除く)、例えば−10℃、25℃及び50℃等に対応した出力電圧値を予め測定し、これら3個以上の任意温度に対応した出力電圧値で順方向電圧温度特性を実測推定特性として製品種別毎に作成し、これら製品種別毎に作成した順方向電圧温度特性(実測推定特性)を平均化することで製品共通の順方向電圧温度特性(デフォルト特性)を使用するものである。尚、この製品共通の順方向電圧温度特性(デフォルト特性)の傾きは一定である。
【0006】
従って、従来の冷接点補償回路によれば、同冷接点補償回路を備えた温度測定装置の出荷時に、図6に示すように、同冷接点補償回路で使用する冷接点補償用ダイオードの順方向電圧温度特性のシフト量に基づき、冷接点補償用ダイオードの製品種別に応じて、デフォルト特性を校正するようにしたので、このシフト校正した順方向電圧温度特性(シフト校正後推定特性)に基づき、冷接点補償用ダイオードの出力電圧に対応する温度を冷接点の現在温度として検出することができる。
【特許文献1】特開2001−124636号公報(段落番号「0024」〜「0027」及び図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の冷接点補償回路によれば、製品共通の順方向電圧温度特性(デフォルト特性)を使用し、図6に示すように冷接点補償用ダイオードの製品種別に応じて順方向電圧温度特性(デフォルト特性)のシフト量を校正し、このシフト量を校正した順方向電圧温度特性(シフト校正後推定特性)に基づき、冷接点補償用ダイオードの出力電圧に対応する温度を冷接点の現在温度として検出するようにしたが、冷接点補償用ダイオードの順方向電圧温度特性の傾きは、その製品種別はもちろんのこと、同一種別の製品でも製品毎に異なるため、傾き誤差が生じて冷接点補償用ダイオードの出力電圧に対応する温度にも誤差が生じ、その結果、正確な冷接点の現在温度を検出することができず、さらには、冷接点の現在温度に対応した正確な補償電圧をも取得することができないため、温度測定装置として熱電対の温接点の現在温度を正確に測定することができない。
【0008】
また、上記従来の冷接点補償回路によれば、冷接点補償用ダイオードの傾き誤差を解消して冷接点温度測定精度の向上を図るために、安価な冷接点補償用ダイオードの代わりに、高価な白金線の感熱抵抗器を使用することも考えられるが、製品コストの増大に繋がる。
【0009】
本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷接点補償用ダイオードの順方向電圧温度特性の傾き誤差を抑制して冷接点温度測定精度の向上を図り、その結果、温接点の温度測定精度の向上を図ることができる安価な冷接点補償回路、その冷接点補償回路の校正方法及び、その冷接点補償回路を備えた温度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の冷接点補償回路は、熱電対の冷接点の現在温度に応じて電圧を出力する冷接点補償用ダイオードと、同冷接点補償用ダイオードに関わる所定の順方向電圧温度特性に基づき、前記冷接点補償用ダイオードの出力電圧に対応する温度を前記冷接点の現在温度として検出する冷接点温度検出手段と、この冷接点温度検出手段にて検出した前記冷接点の現在温度に対応する補償電圧を生成する補償電圧生成手段とを有する冷接点補償回路であって、前記冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧と、前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とに基づき、前記所定の順方向電圧温度特性の傾きを校正する校正手段を有するようにした。
【0011】
従って、本発明の冷接点補償回路によれば、前記冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧が製品種別や製品自体が異なったとしても誤差が収束するポイントであることに着目し、前記冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧と、前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とに基づき、前記所定の順方向電圧温度特性の傾きを校正するようにしたので、安価な冷接点補償用ダイオードを使用したとしても、同冷接点補償用ダイオードの順方向電圧温度特性の傾き誤差を抑制した順方向電圧温度特性を使用することで、冷接点温度測定精度の向上を図って、冷接点の現在温度に対応した正確な補償電圧を生成することができ、その結果、この補償電圧を使用することで温度測定装置において温接点の温度測定精度の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明の冷接点補償回路の前記校正手段は、前記冷接点の現在温度に応じた前記冷接点補償用ダイオードの出力電圧を測定し、この測定結果を前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とするようにしても良い。
【0013】
従って、本発明の冷接点補償回路によれば、前記校正手段が、前記冷接点の現在温度に応じた前記冷接点補償用ダイオードの出力電圧を測定し、この測定結果を前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とするようにしたので、冷接点補償用ダイオードの製品種別に関係なく、実際に使用する冷接点補償用ダイオードを使用して任意温度に対応する出力電圧を取得するため、従来に比較して極めて傾き誤差の少ない、冷接点補償用ダイオードの順方向電圧温度特性を取得することができる。
【0014】
本発明の冷接点補償回路の前記任意温度は、前記冷接点補償回路の周囲環境温度に相当するようにしても良い。
【0015】
従って、本発明の冷接点補償回路によれば、前記任意温度が、前記冷接点補償回路の周囲環境温度に相当するようにしたので、実際に使用する冷接点補償回路の周囲環境温度下の出力電圧を取得するため、冷接点補償回路の使用環境温度に沿った冷接点補償用ダイオードの順方向電圧温度特性を取得することができる。
【0016】
また、上記目的を達成するために本発明の冷接点補償回路の校正方法は、熱電対の冷接点の現在温度に応じて電圧を出力する冷接点補償用ダイオードと、同冷接点補償用ダイオードに関わる所定の順方向電圧温度特性に基づき、前記冷接点補償用ダイオードの出力電圧に対応する温度を前記冷接点の現在温度として検出する冷接点温度検出手段と、この冷接点温度検出手段にて検出した前記冷接点の現在温度に対応する補償電圧を生成する補償電圧生成手段とを有する冷接点補償回路の校正方法であって、前記冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧と、前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とに基づき、前記所定の順方向電圧温度特性の傾きを校正するようにした。
【0017】
従って、本発明の冷接点補償回路の校正方法によれば、前記冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧が製品種別や製品自体が異なったとしても誤差が収束するポイントであることに着目し、前記冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧と、前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とに基づき、前記所定の順方向電圧温度特性の傾きを校正するようにしたので、安価な冷接点補償用ダイオードを使用したとしても、同冷接点補償用ダイオードの順方向電圧温度特性の傾き誤差を抑制した順方向電圧温度特性を使用することで、冷接点温度測定精度の向上を図って、冷接点の現在温度に対応した正確な補償電圧を生成することができ、その結果、この補償電圧を使用することで温度測定装置において温接点の温度測定精度の向上を図ることができる。
【0018】
また、上記目的を達成するために本発明の温度測定装置は、熱電対の冷接点の現在温度に応じて電圧を出力する冷接点補償用ダイオードと、同冷接点補償用ダイオードに関わる所定の順方向電圧温度特性に基づき、前記冷接点補償用ダイオードの出力電圧に対応する温度を前記冷接点の現在温度として検出する冷接点温度検出手段と、この冷接点温度検出手段にて検出した前記冷接点の現在温度に対応する補償電圧を生成する補償電圧生成手段とを有する冷接点補償回路を有し、前記熱電対の温接点及び冷接点間の温度差に応じて発生した直流電圧に、前記冷接点補償回路で生成した前記冷接点の現在温度に対応する前記補償電圧を加算し、この加算結果の直流電圧に応じて前記温接点の現在温度を検出する温度測定装置であって、前記冷接点補償回路は、前記冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧と、前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とに基づき、前記所定の順方向電圧温度特性を校正する校正手段を有するようにした。
【0019】
従って、本発明の温度測定装置によれば、前記冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧が製品種別や製品自体が異なったとしても誤差が収束するポイントであることに着目し、前記冷接点補償回路側の冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧と、前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とに基づき、前記所定の順方向電圧温度特性の傾きを校正するようにしたので、安価な冷接点補償用ダイオードを利用したとしても、同冷接点補償用ダイオードの順方向電圧温度特性の傾き誤差を抑制した順方向電圧温度特性を使用することで、冷接点温度測定精度の向上を図って、冷接点の現在温度に対応した正確な補償電圧を生成し、その結果、この補償電圧を使用することで温接点の温度測定精度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
上記のように構成された本発明の冷接点補償回路によれば、冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧が製品種別や製品自体が異なったとしても誤差が収束するポイントであることに着目し、前記冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧と、前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とに基づき、所定の順方向電圧温度特性の傾きを校正するようにしたので、安価な冷接点補償用ダイオードを利用したとしても、同冷接点補償用ダイオードの順方向電圧温度特性の傾き誤差を抑制した順方向電圧温度特性を使用することで、冷接点温度測定精度の向上を図って、冷接点の現在温度に対応した正確な補償電圧を生成することができ、その結果、この補償電圧を使用することで温度測定装置において温接点の温度測定精度の向上を図ることができる。
【0021】
また、本発明の冷接点補償回路の校正方法によれば、冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧が製品種別や製品自体が異なったとしても誤差が収束するポイントであることに着目し、前記冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧と、前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とに基づき、前記所定の順方向電圧温度特性の傾きを校正するようにしたので、安価な冷接点補償用ダイオードを利用したとしても、同冷接点補償用ダイオードの順方向電圧温度特性の傾き誤差を抑制した順方向電圧温度特性を使用することで、冷接点温度測定精度の向上を図って、冷接点の現在温度に対応した正確な補償電圧を生成することができ、その結果、この補償電圧を使用することで温度測定装置において温接点の温度測定精度の向上を図ることができる。
【0022】
また、本発明の温度測定装置によれば、冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧が製品種別や製品自体が異なったとしても誤差が収束するポイントであることに着目し、前記冷接点補償回路側の冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧と、前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とに基づき、前記所定の順方向電圧温度特性の傾きを校正するようにしたので、安価な冷接点補償用ダイオードを使用したとしても、同冷接点補償用ダイオードの順方向電圧温度特性の傾き誤差を抑制した順方向電圧温度特性を使用することで、冷接点温度測定精度の向上を図って、冷接点の現在温度に対応した正確な補償電圧を生成し、その結果、この補償電圧を使用することで温接点の温度測定精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の冷接点補償回路に関わる実施の形態を示す温度測定装置について説明する。図1は本実施の形態を示す温度測定装置内部の概略構成を示すブロック図である。
【0024】
図1に示す温度測定装置1は、熱電対2の温接点2A側の対象物の現在温度を測定すべく、熱電対2の冷接点2B側と接続する装置であって、温接点2A及び冷接点2B間の温度差に応じて直流電圧を発生する直流電圧発生回路11と、冷接点2Bの現在温度に対応した補償電圧を生成する冷接点補償回路12と、直流電圧発生回路11にて発生した直流電圧と冷接点補償回路12にて生成した補償電圧とを加算する直流電圧加算回路13と、直流電圧値毎に温接点2Aの温度を対応付けたテーブルを記憶管理した温接点側記憶部14と、直流電圧加算回路13の加算結果である直流電圧値に対応する温度を温接点側記憶部14内のテーブルから読み出し、この読み出した温度を温接点2Aの現在温度として検出し、この検出結果を出力する温接点温度測定回路15とを有している。
【0025】
温接点側記憶部14は、直流電圧値毎に温接点2Aの温度を対応付けたテーブル、すなわち熱電対2の材質に対応した基準熱起電力表を記憶管理しているものである。
【0026】
冷接点補償回路12は、冷接点2Bの現在温度を検出すべく、冷接点2B側の現在温度に応じて電圧を出力する冷接点補償用ダイオード21と、冷接点補償用ダイオード21の順方向電圧温度特性を記憶した順方向電圧温度特性記憶部22と、冷接点補償用ダイオード21の出力電圧値に対応する冷接点2Bの温度を、順方向電圧温度特性記憶部22に記憶中の順方向電圧温度特性から読み出し、この読み出した温度を冷接点2Bの現在温度として検出する冷接点温度検出部23と、冷接点2Bの温度毎に補償電圧値を対応付けて記憶管理した補償電圧記憶部24と、冷接点温度検出部23にて検出した冷接点2Bの温度に対応する補償電圧値を補償電圧記憶部24から読み出し、この読み出した補償電圧値に基づき補償電圧を生成する補償電圧生成部25と、順方向電圧温度特性記憶部22に記憶中の順方向電圧温度特性を校正する校正部26とを有し、補償電圧生成部25は、生成した補償電圧を直流電圧加算回路13に入力するものである。尚、冷接点補償用ダイオード21は、冷接点2Bとほぼ同一の温度環境下にあるものとする。
【0027】
補償電圧記憶部24は、温度毎に直流電圧値(補償電圧値)を対応付けたテーブル、すなわち熱電対2の材質に対応した基準熱起電力表を記憶管理しているものである。
【0028】
順方向電圧温度特性記憶部22は、温度測定装置1の工場出荷前、すなわち校正前の状態においては、製品共通の順方向電圧温度特性(デフォルト特性)を記憶しているものである。
【0029】
また、校正部26は、冷接点補償用ダイオード21に使用する金属固有の絶対零度(例えば−273.15度)に対応した冷接点補償用ダイオード21の出力電圧値、すなわちバンドギャップ電圧値Vgを記憶管理しているものである。尚、冷接点補償用ダイオード21がシリコンダイオードの場合、そのバンドギャップ電圧値Vgは約1.2Vである。
【0030】
また、校正部26は、工場出荷時に順方向電圧温度特性記憶部22に記憶中のデフォルト特性を、図2に示すように同冷接点補償回路12で使用する冷接点補償用ダイオード21の製品種別に応じたシフト量に基づき校正してシフト校正後推定特性を作成し、このシフト校正後推定特性を順方向電圧温度特性記憶部22に記憶更新するものである。
【0031】
さらに、校正部26は、シフト校正後推定特性を順方向電圧温度特性記憶部22に記憶更新した後、冷接点温度検出部23を通じて冷接点補償用ダイオード21の出力電圧値Vp及び、同出力電圧値Vpに対応した任意温度(冷接点2Bの現在温度)を測定し、この任意温度に対応した出力電圧値Vpと、記憶中の絶対零度に対応したバンドギャップ電圧値Vgとを使用し、(任意温度の出力電圧Vp−バンドギャップ電圧Vg)/(任意温度−絶対零度)の式に基づき順方向電圧温度特性の校正用の傾きを算出するものである。
【0032】
そして、校正部26は、校正用の傾きを算出すると、この校正用の傾きに基づき、順方向電圧温度特性記憶部22に記憶中のシフト校正後推定特性の傾きを校正し、この傾き校正したシフト校正後推定特性を傾き校正後推定特性(図3参照)として、順方向電圧温度特性記憶部22に記憶更新するものである。
【0033】
その結果、冷接点補償回路12の冷接点温度検出部23は、運用時、順方向電圧温度特性記憶部22に記憶中の傾き校正後推定特性に基づき、冷接点補償用ダイオード21の出力電圧に応じて冷接点2B側の現在温度を検出するものである。
【0034】
尚、請求項記載の冷接点温度検出手段は冷接点温度検出部23及び順方向電圧温度特性記憶部22、補償電圧生成手段は補償電圧生成部25及び補償電圧記憶部24、校正手段は校正部26に相当するものである。
【0035】
次に本実施の形態を示す温度測定装置1の動作について説明する。
【0036】
まず、温度測定装置1の冷接点補償回路12内部の順方向電圧温度特性を校正する際の動作について説明する。図4は本実施の形態に関わる冷接点補償回路12の順方向電圧温度特性校正処理に関わる処理動作を示すフローチャートである。
【0037】
まず、温度測定装置1の工場出荷時において、冷接点補償回路12内部の校正部26は、冷接点補償用ダイオード21の製品種別に対応したシフト量に基づき、順方向電圧温度特性記憶部22に記憶中のデフォルト特性をシフト校正してシフト校正後推定特性を作成し(ステップS11)、この作成したシフト校正後推定特性を順方向電圧温度特性記憶部22に記憶更新する(ステップS12)。
【0038】
校正部26は、シフト校正後推定特性を記憶更新すると、このシフト校正後推定特性に基づき、冷接点温度検出部23を通じて冷接点補償用ダイオード21の現在の出力電圧値Vp及び、この出力電圧値Vpに対応する冷接点2Bの現在温度を取得する(ステップS13)。
【0039】
校正部26は、冷接点2Bの現在温度及び出力電圧値Vpを取得すると、これら冷接点2Bの現在温度及び出力電圧値Vpと、記憶中の絶対零度及びバンドギャップ電圧値Vgを使用して、(出力電圧値Vp−バンドギャップ電圧値Vg)/(現在温度−絶対零度)に基づき、校正用の傾きを算出する(ステップS14)。
【0040】
さらに、校正部26は、校正用の傾きを算出すると、この校正用の傾きに基づき、順方向電圧温度特性記憶部22に記憶中のシフト校正後推定特性を校正して傾き校正後推定特性を作成する(ステップS15)。
【0041】
そして、校正部26は、傾き校正後推定特性を作成すると、この傾き校正後推定特性を順方向電圧温度特性記憶部22に記憶更新し(ステップS16)、この処理動作を終了する。
【0042】
その結果、順方向電圧温度特性記憶部22に記憶中の順方向電圧温度特性(傾き校正後推定特性)は、冷接点補償用ダイオード21に関わる金属固有の絶対零度のバンドギャップ電圧Vgを使用しているため、従来のような傾き誤差を最小限に抑制することができ、冷接点補償用ダイオード21の温度測定精度が向上したことになる。
【0043】
次に、このような順方向電圧温度特性の校正を実行した温度測定装置1の動作について説明する。
【0044】
温度測定装置1内部の直流電圧発生回路11は、熱電対2の温接点2A及び冷接点2B間の温度差に応じて直流電圧を発生し、この直流電圧を直流電圧加算回路13に供給する。
【0045】
冷接点補償回路12内部の冷接点温度検出部23は、冷接点2Bの現在温度に応じて冷接点補償用ダイオード21の出力電圧を検出し、順方向電圧温度特性記憶部22に記憶中の順方向電圧温度特性に基づき、この出力電圧値に対応した温度を冷接点2Bの現在温度として検出する。
【0046】
補償電圧生成部25は、冷接点温度検出部23にて検出した冷接点2Bの現在温度に対応する補償電圧値を補償電圧記憶部24から読み出し、この読み出した補償電圧値に基づき補償電圧を生成し、この生成した補償電圧を直流電圧加算回路13に供給する。
【0047】
直流電圧加算回路13は、直流電圧発生回路11にて発生した直流電圧と、補償電圧生成部25にて生成した補償電圧とを加算し、この加算結果である直流電圧を温接点温度測定回路15に供給する。
【0048】
温接点温度測定回路15は、直流電圧の直流電圧値に対応した温度を温接点側記憶部14から読み出し、この読み出した温度を温接点2Aの現在温度として測定出力することになる。
【0049】
その結果、温度測定装置1によれば、冷接点補償回路12に記憶中の順方向電圧温度特性(傾き校正後推定特性)がバンドギャップ電圧値Vgを利用した傾き誤差の少ない順方向電圧温度特性であるため、この順方向電圧温度特性(傾き校正後推定特性)を使用することで温度測定精度の大幅向上を図ることができる。
【0050】
本実施の形態によれば、冷接点補償用ダイオード21の絶対零度に対応したバンドギャップ電圧値Vgは製品種別や製品自体が異なったとしても誤差が収束するポイントであることに着目し、冷接点補償用ダイオード21の絶対零度に対応したバンドギャップ電圧値Vgと、例えば温度測定装置1の工場出荷時における冷接点補償用ダイオード21の周囲温度に対応した出力電圧値Vpとに基づき、所定の順方向電圧温度特性(シフト校正後順方向電圧温度特性)の傾きを校正するようにしたので、安価な冷接点補償用ダイオード21を使用したとしても、冷接点補償用ダイオード21の順方向電圧温度特性の傾き誤差を抑制した順方向電圧温度特性(傾き校正後推定特性)を使用することで、冷接点温度測定精度の向上を図って、冷接点2Bの現在温度に対応した正確な補償電圧を生成し、その結果、この補償電圧を使用することで、温度測定装置1として温接点の温度測定精度の向上を図ることができる。
【0051】
本実施の形態によれば、冷接点補償用ダイオード21の順方向電圧温度特性の傾きを算出する際に、冷接点2Bの現在温度に応じた冷接点補償用ダイオード21の出力電圧値Vpを測定するようにしたので、冷接点補償用ダイオード21の製品種別に関係なく、実際に使用する冷接点補償用ダイオード21を使用して現在温度の出力電圧値を取得するため、従来に比較して極めて誤差の少ない、冷接点補償用ダイオード21の順方向電圧温度特性を取得することができる。
【0052】
尚、上記実施の形態においては、冷接点補償用ダイオード21の順方向電圧温度特性の傾きを算出する際、工場出荷時の室温に相当する冷接点2Bの現在温度に応じた冷接点補償用ダイオード21の出力電圧値を測定するようにしたが、室温に限定するものではなく、様々な環境温度に対応可能であることは言うまでもない。
【0053】
また、上記実施の形態においては、工場出荷時に冷接点補償用ダイオード21の順方向電圧温度特性の傾きを校正する際に、デフォルト特性を製品種別に対応したシフト量に基づきシフト校正後推定特性を作成した後、このシフト校正後推定特性を校正用傾きに基づき傾き校正後推定特性を作成するようにしたが、デフォルト特性からではなく、製品種別に対応したシフト校正後推定特性を予め記憶しておくようにしても良く、この場合、シフト校正の処理動作は必要なくなる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、安価な冷接点補償用ダイオードを使用したとしても、同冷接点補償用ダイオードの順方向電圧温度特性の傾き誤差を抑制した順方向電圧温度特性を使用することで、冷接点温度測定精度の向上を図って、冷接点の現在温度に対応した正確な補償電圧を生成することができ、その結果、この補償電圧を使用することで温度測定装置において温接点の温度測定精度の向上を図ることができるため、例えば熱電対を利用した冷接点補償回路を使用する温度測定装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の冷接点補償回路に関わる実施の形態を示す温度測定装置内部の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態に関わる冷接点補償回路内部の順方向電圧温度特性の校正内容を端的に示す説明図である。
【図3】本実施の形態に関わる冷接点補償回路内部の順方向電圧温度特性(傾き校正後推定特性)を端的に示す説明図である。
【図4】本実施の形態に関わる冷接点補償回路の順方向電圧温度特性校正処理に関わる処理動作を示すフローチャートである。
【図5】従来の冷接点補償回路内部の順方向電圧温度特性(デフォルト特性)を端的に示す説明図である。
【図6】従来の冷接点補償回路内部の順方向電圧温度特性の校正内容及び同順方向電圧温度特性(シフト校正後推定特性)の傾き誤差を端的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 温度測定装置
2 熱電対
2A 温接点
2B 冷接点
11 直流電圧発生回路(温度測定装置)
12 冷接点補償回路
13 直流電圧加算回路(温度測定装置)
14 温接点側記憶部(温度測定装置)
15 温接点温度測定回路(温度測定装置)
21 冷接点補償用ダイオード
22 順方向電圧温度特性記憶部(冷接点温度検出手段)
23 冷接点温度検出部(冷接点温度検出手段)
24 補償電圧記憶部(補償電圧生成手段)
25 補償電圧生成部(補償電圧生成手段)
26 校正部(校正手段)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電対の冷接点の現在温度に応じて電圧を出力する冷接点補償用ダイオードと、この冷接点補償用ダイオードに関わる所定の順方向電圧温度特性に基づき、前記冷接点補償用ダイオードの出力電圧に対応する温度を前記冷接点の現在温度として検出する冷接点温度検出手段と、この冷接点温度検出手段にて検出した前記冷接点の現在温度に対応する補償電圧を生成する補償電圧生成手段とを有する冷接点補償回路であって、
前記冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧と、前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とに基づき、前記所定の順方向電圧温度特性の傾きを校正する校正手段を有することを特徴とする冷接点補償回路。
【請求項2】
前記校正手段は、
前記冷接点の現在温度に応じた前記冷接点補償用ダイオードの出力電圧を測定し、この測定結果を前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とすることを特徴とする請求項1記載の冷接点補償回路。
【請求項3】
前記任意温度は、
前記冷接点補償回路の周囲環境温度に相当することを特徴とする請求項1又は2記載の冷接点補償回路。
【請求項4】
熱電対の冷接点の現在温度に応じて電圧を出力する冷接点補償用ダイオードと、この冷接点補償用ダイオードに関わる所定の順方向電圧温度特性に基づき、前記冷接点補償用ダイオードの出力電圧に対応する温度を前記冷接点の現在温度として検出する冷接点温度検出手段と、この冷接点温度検出手段にて検出した前記冷接点の現在温度に対応する補償電圧を生成する補償電圧生成手段とを有する冷接点補償回路の校正方法であって、
前記冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧と、前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とに基づき、前記所定の順方向電圧温度特性の傾きを校正することを特徴とする冷接点補償回路の校正方法。
【請求項5】
熱電対の冷接点の現在温度に応じて電圧を出力する冷接点補償用ダイオードと、この冷接点補償用ダイオードに関わる所定の順方向電圧温度特性に基づき、前記冷接点補償用ダイオードの出力電圧に対応する温度を前記冷接点の現在温度として検出する冷接点温度検出手段と、この冷接点温度検出手段にて検出した前記冷接点の現在温度に対応する補償電圧を生成する補償電圧生成手段とを有する冷接点補償回路を有し、前記熱電対の温接点及び冷接点間の温度差に応じて発生した直流電圧に、前記冷接点補償回路で生成した前記冷接点の現在温度に対応する前記補償電圧を加算し、この加算結果の直流電圧に応じて前記温接点の現在温度を検出する温度測定装置であって、
前記冷接点補償回路は、
前記冷接点補償用ダイオードの絶対零度に対応したバンドギャップ電圧と、前記冷接点補償用ダイオードの任意温度に対応した出力電圧とに基づき、前記所定の順方向電圧温度特性の傾きを校正する校正手段を有することを特徴とする温度測定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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