説明

冷気循環式オープンショーケース

【課題】庫内の商品陳列状況に応じて高い節電,省エネ効果が発揮できる改良した多段形の冷気循環式オープンショーケースを提供する。
【解決手段】上下多段の商品陳列棚8を装備したケース本体1に対し、冷気循環ダクト2から冷気エアカーテン吹出口6,および背面パネル3に分散開口した冷気吹出穴3aを通じて庫内に冷気を循環送風する冷気循環式のショーケースにおいて、天井の格納部から繰出して空の商品陳列棚8の前端に掛け止めする遮蔽カバー10、各段の商品陳列棚8に対応して背面パネル3に分散開口した冷気吹出穴3aを個別に開閉するシャッター機構11、商品陳列棚8に掛けた遮蔽カバー10を検知するカバー検知センサ12を設け、遮蔽カバー10で空の商品陳列棚8の前面を覆った運転状態では、カバー検知センサ12の信号を受けて閉動作するシャッター機構11が該陳列棚向けて吹き出す冷気流を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庫内に上下段に並ぶ商品陳列棚を配備した前面開放形のケース本体に対し、その庫内前面に冷気エアカーテンを形成するとともに、庫内背面側からも各段の商品陳列棚の間に向け冷気を吹き出して陳列商品を保冷する冷気循環式のオープンショーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
頭記のオープンショーケースとして、前面を開放したケース本体の庫内前面に冷気エアカーテンを形成するとともに、上下段に並ぶ各段の商品陳列棚に向けて背面側からも冷気を吹き出して庫内を均一に保冷するようにした冷気循環式のオープンショーケースが知られており(例えば、特許文献1参照)、昨今ではこの冷気循環方式を採用したオープンショーケースの製品が市場に広く展開している。
【0003】
次に、前記ショーケースの従来構成を図6に示す。図において、1は断熱筐体になる前面開放形のケース本体、2はケース本体1の外箱と内箱との間に画成した冷気循環ダクト、3は内箱の背面パネル、4は冷却器(冷凍機のエバポレータ)、5はファン、6はケース本体1の天井前部に開口した冷気エアカーテン吹出口、7は吸込口(吸込グリル)、8は上下段に並べて庫内に配置した商品陳列棚、9は庫内底部に配したデッキパンであり、前記内箱の背面パネル3には上下各段の商品陳列棚8に対応して穿設した冷気吹出穴3a(例えば、パンチング穴)が開口している。
【0004】
上記ショーケースの保冷動作については特許文献1にも詳しく述べられており、保冷運転時には図6の点線矢印で表すように、ケース本体1の前面には天井側の吹出口6から底部側の吸込口7に向けて冷気エアカーテンAを形成する。また、上下段に並ぶ各商品陳列棚8に対応して背面パネル3に穿設した冷気吹出穴3aを通じて冷気循環ダクト2の途中から庫内に向けて冷気流Bを吹き出して庫内全域を保冷する。
【0005】
一方、店内にオープンショーケースを設置して商品を販売するスーパーマーケット,コンビニエンスストアなどでは、平日,休日の営業日、昼間,夜間,閉店間際などの営業時間帯によって商品の販売数量が異なることが多く、販売数量の少ない時間帯でも各段の商品陳列棚8に商品を満載して庫内全域を保冷することは電力消費の面から無駄が多い。
【0006】
そこで、オープンショーケースの節電,省エネ対策として、通常のオープンショーケースに標準装備されているナイトカバーとは別に、ケース本体の庫内天井部に巻取/引出自在なシート状のカバーを設けた、販売数量が少ない営業時間帯には陳列棚に載置する商品の数量を整理して庫内の下段側に並ぶ商品陳列棚へ集中的に並べ替えた上で、前記カバーを格納部から引き降ろして空になった商品陳列棚の上方空間の前面を覆うことにより、庫内の要保冷領域を縮小してショーケースの消費電力を節減できるようにした構成のオープンショーケースが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−125689号公報(図3)
【特許文献2】特許第3724613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ショーケースについて昨今では節電,省エネ化が重要テーマになっており、図6に示した冷気循環方式のオープンショーケースについても、特許文献2に開示されている省エネ方式の採用が検討されている。
【0009】
ところで、図6のように、上下各段の商品陳列棚8に対応して庫内の背面パネル3に分散開口した冷気吹出穴3aを通じて冷気循環ダクト2の途中から分流した冷気を各段の棚上方空間に向けて吹き出すようにしたオープンショーケースに対して、特許文献2と同様に庫内天井部に巻取/引出し可能なカバーを追加し、該カバーを格納部から繰出して陳列商品が無い空の商品陳列棚の前端に掛けて棚上方空間の前面を覆うようにした場合には、省エネの効果面で次記のような課題が残る。
【0010】
すなわち、先述のように閉店間際などの営業時間帯に庫内の陳列商品を並べ替えて空にした上段側の商品陳列棚に対し、庫内天井の格納部からシート状のカバーを繰出して空の商品陳列棚の前面を覆った状態にしても、該商品陳列棚の上方空間は背面パネル3に開口した冷気吹出穴3aを通じて冷気循環ダクト2に連通しており(図6参照)、しかも繰出したカバーの周縁とケース本体の内箱,商品陳列棚との間には隙間が残存している。このために、冷気循環ダクト2に通流する冷気の一部は背面パネル3の冷気吹出穴3aを通じてカバーで覆われた空の商品陳列棚の上方空間に吹き出すようになる。その結果、本来は保冷の必要が無い空の商品陳列棚の上方空間が保冷されることとなり、このままではカバーを覆って庫内の要保冷空間を縮小しても消費電力の節電,省エネ機能を十分に発揮できなくなる。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、上下段に並ぶ商品陳列棚に並べる商品の陳列状況に応じて高い節電,省エネ効果が発揮できるように改良した冷気循環式オープンショーケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明によれば、前面開放形ケース本体の庫内に上下段に並ぶ商品陳列棚を装備し、ケース本体の内箱/外箱間に画成して冷却器,ファンを配置した冷気循環ダクトを経て庫内に冷気を循環送風して陳列商品を保冷する冷気循環式のショーケースであって、前記ケース本体には天井前部から庫内前面域に向けて冷気を吹き出す冷気エアカーテン吹出口を開口するとともに、庫内の背面パネルには上下各段の商品陳列棚に対応して前記冷気循環ダクトの途中から庫内に向けて冷気を吹き出す冷気吹出穴を分散開口したものにおいて、
前記冷気エアカーテン吹出口の内側に並べて庫内天井に配した格納部から繰出して商品陳列棚の前端に掛け止めするシート状の遮蔽カバーに加えて、庫内の背面パネルに分散開口した前記冷気吹出穴を各段の商品陳列棚に対応して個別に開閉するシャッター機構を設けるものする(請求項1)。
【0013】
また、前記構成になる冷気循環式オープンショーケースの運転制御システムとして、本発明によれば、各段の商品陳列棚に遮蔽カバーの掛け止めを検知するカバー検知手段、および該カバー検知手段の検知信号を基に庫内の背面カバーに配した前記シャッター機構を開閉位置に駆動制御する制御手段を設けた上で、各段の商品陳列棚に並べる商品の陳列状況に応じて庫内天井の格納部から繰出した前記遮蔽カバーを空になった商品陳列棚の前縁に掛け止めした保冷運転状態では、前記カバー検知手段の検知信号を受けて閉動作するシャッター機構により遮蔽カバーで覆われた商品陳列棚の上方空間に向けて冷気循環ダクトの途中から吹き出す冷気流を停止するようにする(請求項2)。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によれば、次記のような節電,省エネ効果を奏することができる。
すなわち、稼働中のオープンショーケースについて、商品陳列棚に並べる商品を庫内の下段側に並ぶ商品陳列棚,あるいは庫内底部のデッキパンに移して集中的に陳列した運転状態で、庫内天井部の格納部から繰出した遮蔽カバーを空になった商品陳列棚に掛け止めしてその棚上方空間の前面をカバーで覆うと、同時にその商品陳列棚に配したカバー検知手段の検知信号を受けて庫内の背面パネルに配したシャッター機構が自動的に閉動作して空の商品陳列棚に対応する背面パネルの冷気吹出穴を閉塞する。
【0015】
これにより、冷気循環ダクトの途中から背面パネルの冷気吹出穴を通じて庫内に吹き出す冷気は、商品を陳列した下段側の商品陳列棚の領域に限定され、遮蔽カバーで覆った空の商品陳列棚の棚上空間には背面パネルの冷気吹出穴を通じて冷気が通流しなくなる。その結果として、ショーケースのトータル的な要保冷負荷が低下し、冷凍機の消費電力が低減して高い節電,省エネ効果を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例による冷気循環式オープンショーケースの内部を表す側視断面図である。
【図2】図1における遮蔽カバー,および商品陳列棚に配したカバー検知センサの配置を模式的に表した図であって、(a),(b)はそれぞれ前面から見た斜視図、および遮蔽カバーを棚前縁に掛け止めした状態の側視拡大図である。
【図3】図1におけるシャッター機構,およびその配置を模式的に表した図であって、(a),(b),(c)はそれぞれ側面図、正面から見た斜視図、およびシャッター機構の動作説明図である。
【図4】図1のショーケースに設けた運転制御システムのブロック図である。
【図5】図4に対応する運転制御システムのフロー図である。
【図6】従来における冷気循環式オープンショーケースの内部を表す側視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図6に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
すなわち、図示実施例のオープンショーケースは、図6で述べた従来方式の冷気循環式オープンショーケースをベースとして、その庫内の天井部には冷気エアカーテン吹出口6の内側に並べて巻取/引出し自在なシート状の遮蔽カバー10が配置されている。また、庫内の背面パネル3には各段の商品陳列棚8に対応して穿設した冷気吹出穴3aに対して背面パネルの庫内面側にシャッター機構11を新たに設置し、さらに加えて各段の商品陳列棚8の前端には前記遮蔽カバー10の掛け止め状態を検知するカバー検知センサ12を設けている。
【0018】
ここで、前記遮蔽カバー10は、ケース本体1のキャノピー部1aに設けた通常のナイトカバー13と同様であり、図2で示すようにカバー10の先端には掛け止め具10aを備え、天井部に設けた格納部(巻取枠)から繰出して商品陳列棚8の前端に設けたフック8aに前記掛け止め具10aを引っ掛けて棚上方空間の前面を覆うようにする。
【0019】
また、各段の商品陳列棚8の前端には、カバー検知センサ12として例えば反射型フォトセンサ(2個)が左右に振り分けて設置されており、この商品陳列棚8に前記の遮蔽カバー10を掛け止めると、カバー検知センサ12がカバーの掛け止め状態を検知してその信号を後記する運転制御システムに出力する。なお、10bは反射型フォトセンサに対向して遮蔽カバー10の下端部に張り付けた光反射板である。
【0020】
また、このカバー検知センサ12については、図1で示すように上下段に並ぶ4段の各商品陳列棚8に設置したカバー検知センサ12を、それぞれ上段側から順に#1,#2.#3,#4と呼称するものとする。
【0021】
一方、前記のシャッター機構11は、上下段に並ぶ商品陳列棚8(図1参照)に対応して背面パネル3に分散開口した冷気吹出穴3aに対し、各段の冷気吹出穴3aと個々に対応させて背面パネル3の庫内側に設置されている。また、このシャッター機構11の構造は、例えば図3で示すように背面パネル3と略同じ横幅の可撓性シートで作られたシャッター板11aをモータ駆動式の巻取枠11bに巻取り/繰出し可能に巻き付けた構造になり、先記したカバー検知センサ12の検知信号を基にして駆動モータに開閉指令を与えることにより、図3(c)で示すようにシャッター板11aが冷気吹出穴3aを開放,閉塞する位置に駆動するようにしている。なお、このシャッター機構11についても、前記カバー検知センサ12と同様に、上段側から順に#1,#2.#3,#4と呼称するものとする(図1参照)。
【0022】
次に、前記オープンショーケースに装備した運転制御システムを図4,図5に示すブロック図,フロー図を基に説明する。すなわち、電源を投入した平時の保冷運転状態では、シャッター機構11(#1〜#4)は全てシャッター板11a(図3(c)参照)を巻き上げたUPの状態に維持しており、図6で述べたように冷気循環ダクト2からエアカーテン吹出口6,および背面パネル3の冷気吹出穴3aを通じて冷気を流して庫内全域を保冷している。
【0023】
この平時の保冷運転状態から、店舗の閉店間際などの時間帯に各段の商品陳列棚8に並べる商品を整理して上段の陳列商品を下段側の商品陳列棚,ないし庫内底部のデッキパンに移し替えた上で、庫内天井部に配した遮蔽カバー10を格納部から繰出して空になった上段の商品陳列棚8の前端に掛け止めしてその上方空間の前面を覆うと(図2参照)、空の商品陳列棚に装備したカバー検知センサ12が遮蔽カバー10の掛け止め状態を検知してそのON信号を制御システムの演算部に入力する。これにより、演算部からの出力指令を受けて、遮蔽カバー10で覆われた段の商品陳列棚8(空の状態)に対応するシャッター機構11が閉動作して格納部からシャッター板11a繰出し(DOWN)、背面パネル3に開口した冷気吹出穴3aを閉塞する(図3(c)参照)。その結果、遮蔽カバー10で前面が覆われた空の商品陳列棚8は、その上部空間に向けて背面パネル3の冷気吹出穴3aから吹き出す冷気流が停止する。なお、商品を陳列している他の段の商品陳列棚8(遮蔽カバー10で覆われて無い)については、シャッター機構11は開放(UP)しており、背面パネル3の冷気吹出穴3aを通じて棚上空間に向けて冷気を通風している。
【0024】
上記の説明で明らかなように、閉店間際などの時間帯にショーケースの陳列商品を庫内上段の商品陳列棚から下段側の商品陳列棚,あるいは庫内底部のデッキパンに移し替えた保冷運転状態で、庫内天井部の格納部から繰出した遮蔽カバーを空になった上段側の商品陳列棚に掛け止めしてその棚上方空間の前面をカバーで覆うと、同時にその商品陳列棚に対応する背面パネルに配したシャッター機構が自動的に閉動作して背面からの冷気吹き出しを停止するので、これにより高い節電,省エネ効果を発揮できる。
【0025】
なお、先記したシャッター機構11,およびカバー検知センサ12については、図示実施例のものに限定されるものではなく、シャッター機構については例えば電磁アクチュエータで駆動するスライド式のシャッター板を採用する、またカバー検知センサについては反射型フォトセンサの代わりにリミットスイッチを採用することも可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 ケース本体
2 冷気循環ダクト
3 背面パネル
3a 冷気吹出穴
4 冷却器
5 ファン
6 エアカーテン吹出口
8 商品陳列棚
10 遮蔽カバー
11 シャッター機構
12 カバー検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開放形ケース本体の庫内に上下段に並ぶ商品陳列棚を装備し、ケース本体の内箱/外箱間に画成して冷却器,ファンを配置した冷気循環ダクトを経て庫内に冷気を循環送風して陳列商品を保冷する冷気循環式のショーケースであって、前記ケース本体には天井前部から庫内前面域に向けて冷気を吹き出す冷気エアカーテン吹出口を開口するとともに、庫内の背面パネルには上下各段の商品陳列棚に対応して前記冷気循環ダクトの途中から庫内に向けて冷気を吹き出す冷気吹出穴を分散開口したものにおいて、
前記冷気エアカーテン吹出口の内側に並べて庫内天井に配した格納部から繰出して商品陳列棚の前端に掛け止めするシート状の遮蔽カバーに加えて、庫内の背面パネルに分散開口した前記冷気吹出穴を各段の商品陳列棚に対応して個別に開閉するシャッター機構を設けたことを特徴とする冷気循環式オープンショーケース。
【請求項2】
請求項1に記載の冷気循環式オープンショーケースにおいて、各段の商品陳列棚に遮蔽カバーの掛け止めを検知するカバー検知手段、および該カバー検知手段の検知信号を基に庫内の背面カバーに配した前記シャッター機構を開閉位置に駆動制御する制御手段を設けた上で、各段の商品陳列棚に並べる商品の陳列状況に応じて庫内天井の格納部から繰出した前記遮蔽カバーを空になった商品陳列棚の前縁に掛け止めした保冷運転状態では、前記カバー検知手段の検知信号を受けて閉動作するシャッター機構により遮蔽カバーで前面が覆われた商品陳列棚の上方空間に向けて冷気循環ダクトの途中から吹き出す冷気流を停止するようにしたことを特徴とする冷気循環式オープンショーケースの運転制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−13612(P2013−13612A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149285(P2011−149285)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】