説明

冷菓

【課題】口溶けの良い冷菓を提供する。
【解決手段】乳酸発酵卵白と、グアーガム及び/又はローカストビーンガムとを配合する冷菓。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵白を配合しているにも拘わらず口溶けの良い冷菓に関する。
【背景技術】
【0002】
卵白は、アミノ酸バランスに優れた良質の蛋白質を含有し、また牛乳に比べて低コレステロールである等栄養価に優れた蛋白質素材である。一方で、卵白は加熱又は冷凍処理等による蛋白質変性を生じ易いため、冷菓に配合すると、加熱殺菌工程や冷凍工程においてざらつきを生じ口溶けを損ねてしまう問題があった。
【0003】
上記問題を解決する方法として、例えば、特開平2−268648号公報(特許文献1)には、ゲル形成能の低下した卵白を使用した冷菓およびその製造方法が記載されており、ゲル形成能の低下した卵白の調製方法として、卵白に3倍量以上の清水と甘味料等の成分とを配合後生じた沈殿を除去する方法や、卵白に酸性プロテアーゼを作用させる方法が記載されている。しかしながら、上記方法の冷菓は、ゲル形成能の低下により工業的製造に必要な加熱殺菌処理を行うことはできるものの、ざらつきを生じており口溶けを損ね消費者の要望を十分に満足するものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平2−268648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、卵白を配合しているにも拘わらず、口溶けの良い冷菓を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成すべく卵白の加工方法について鋭意研究を重ねた。その結果、意外にも乳酸発酵卵白と、グアーガム及び/又はローカストビーンガムとを配合するならば、口溶けを改善できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)乳酸発酵卵白と、グアーガム及び/又はローカストビーンガムとを配合する冷菓、
(2)乳酸発酵卵白の配合量が0.2〜15%(固形分換算)であり、グアーガム及び/又はローカストビーンガムの合計配合量が0.05〜0.5%である(1)の冷菓、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、卵白を配合しているにも拘わらず、口溶けの良い冷菓を提供することが出来る。したがって、冷菓市場の更なる需要拡大が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
【0010】
本発明における冷菓とは、食品衛生法に基づく「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号)」で定めるアイスクリーム類(乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって、乳固形分を3%以上含むもので、アイスクリーム、アイスミルク又はラクトアイスに分類される)、公正競争規約(平成13年3月30日公正取引委員会告示第14号)で定める氷菓(糖液若しくはこれに他食品を混和した液体を凍結したもの又は食用氷を粉砕し、これに糖液若しくは他食品を混和し再凍結したもので、凍結状のまま食用に供するもの)又はフローズンヨーグルトのことを指す。
【0011】
本発明の冷菓は、乳酸発酵卵白と、グアーガム及び/又はローカストビーンガムとを配合することで、卵白を配合しているにも拘わらず加熱又は冷凍処理等を施したとしても口溶けの良い冷菓を得ることができる。
【0012】
ここで、本発明の冷菓に用いる乳酸発酵卵白とは、液状の卵白に乳酸菌を添加して発酵させることにより得られるものである。このような乳酸発酵は、一般的に栄養源として乳酸菌資化性糖類を用いて必要に応じ酵母エキス等の発酵促進物質を添加し、乳酸菌を1mLあたり好ましくは10〜10、さらに好ましくは10〜10供し発酵されており、本発明も同様な方法で得られたものを用いるとよい。
【0013】
本発明の冷菓に用いる乳酸発酵卵白の形態は、種々の形態(例えば、液状、粉末状、マイクロコロイド状、クリーム状、ペースト状、ゼリー状)を有することができる。すなわち、配合する食品の性状に応じて、適切な形態に加工し使用することができる。特に、粉末状にすることで、冷菓中に高濃度で配合することができ好適である。乾燥処理は、上記乳酸発酵卵白に必要に応じデキストリン等の賦形材や清水等の水系媒体を添加後、スプレードライ、フリーズドライ、パンドライ等、任意の方法を採用し乾燥させることが出来る。
【0014】
上記乳酸発酵卵白に用いる卵白としては、例えば、鶏等の鳥類の卵を割卵し卵黄を分離したものであり工業的に得られるもの、またこれを殺菌、凍結したもの、濃縮または希釈したもの、特定の成分(リゾチームやアビジン等)を除去したもの、乾燥させたものを水戻ししたもの等が挙げられる。また効果に影響を及ぼさない程度に卵黄やその他の卵由来の成分を含んでいても差し支えない。
【0015】
上記乳酸発酵卵白に用いる乳酸菌としては、一般的にヨーグルトやチーズの製造に利用される、例えば、ラクトバチルス属(Lactobacillus bulgaricus等)、ストレプトコッカス属(Streptococcus thermophilus、Streptococcus diacetylactis等)、ラクトコッカス属(Lactococcus lactis等)、ロイコノストック属(Leuconostoc cremoris等)、エンテロコッカス属(Enterococcus faecalis)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium Bbifidum等)等が挙げられる。
【0016】
上記乳酸発酵卵白に用いる乳酸菌資化性糖類としては、例えば、単糖類(グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン等)、二糖類(ラクトース、マルトース、スクロース、セルビオース、トレハロース等)、オリゴ糖類(特に3〜5個の単糖類が結合しているもの)、ブドウ糖果糖液糖等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて液状の卵白に添加することができる。
【0017】
上記乳酸発酵卵白に用いる発酵促進物質としては、本発明の効果を損なわない範囲で発酵を促進するものであれば、特に限定するものではない。例えば、アミノ酸やペプチド等の蛋白質分解物、酵母エキス、ビタミン類、ミネラル類等が挙げられる。
【0018】
上記乳酸発酵卵白の代表的な製造方法を以下に示す。卵白蛋白質2〜8%、乳酸菌資化性糖類1〜15%、及び発酵促進物質0.5〜10%を水に加え、乳酸、塩酸等の酸材を用いてpH5〜7.5にpH調整し仕込み液を調製する。なお、酸材としては風味の面から乳酸を用いるのが好ましい。得られた仕込み液を60〜110℃で5〜120分間加熱した後、乳酸菌スターターを1mLあたり10〜10になるように添加する。25〜50℃で8〜48時間発酵し乳酸発酵卵白が得られる。また、必要に応じて上記乳酸発酵卵白を加熱殺菌し、高圧下で均質化処理を施してもよく、あるいは、フリーズドライ、スプレードライ等の乾燥処理を施して粉末状にしてもよい。
【0019】
本発明の冷菓に用いる乳酸発酵卵白の配合量は、特に限定されないが、固形分換算で0.2〜15%が好ましく、2〜15%がより好ましい。乳酸発酵卵白の配合量が前記範囲より少ない場合、卵白蛋白質の配合量が少なくなるため、口溶けの低下が問題になり難い。乳酸発酵卵白の配合量が前記範囲より多い場合、それ以上の効果が得られず経済的でない。
【0020】
本発明の冷菓に用いるグアーガムは、通常食品素材として利用されているものであれば特に限定されない。グアーガムは、一般にグアー豆の胚乳部を精製して得られる多糖類であり、直鎖状に結合したマンノース2分子に1分子のガラクトースの側鎖を持つガラクトマンナンガムの一種である。
【0021】
本発明の冷菓に用いるローカストビーンガムは、通常食品素材として利用されているものであれば特に限定されない。ローカストビーンガムは、一般にカロブ樹の種子の胚乳部分を精製して得られる多糖類であり、グアーガムと同様にマンノースを主鎖にガラクトースを側鎖に持つガラクトマンナンガムの一種である。D−マンノースとD−ガラクトースの含有比率は、原料種子や精製方法により変動するが、本発明の冷菓にはいずれのローカストビーンガムを用いても構わない。
【0022】
本発明の冷菓に用いるグアーガム及び/又はローカストビーンガムの合計配合量は、特に限定されないが、0.05〜0.5%が好ましく、0.1〜0.5%がより好ましい。グアーガム及び/又はローカストビーンガムの合計配合量が前記範囲より少ない場合、冷菓中に卵白を均一に分散することができず口溶けを損ねてしまう場合がある。グアーガム及び/又はローカストビーンガムの合計配合量が前記範囲より多い場合、糊状の食感を呈し口溶けを損ねてしまう場合がある。
【0023】
本発明の冷菓は、殺菌等の目的で高温加熱を施しても口溶けが良く、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。
【0024】
本発明における冷菓は、上述した以外の原料を本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて配合すればよい。具体的には、例えば、牛乳、生クリーム、バター、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、加糖粉乳、脱脂粉乳等の乳原料、グラニュ糖、上白糖、三温糖、ぶどう糖果糖液糖、果糖ぶどう糖液糖、澱粉、デキストリン、フルクトース、トレハロース、グルコース、乳糖、オリゴ糖及び糖アルコール等の糖類、全卵、卵黄、卵白、豆乳等の蛋白質類、卵黄油、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、米油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油等の油脂類、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、オクテニルコハク酸化澱粉等の乳化材、ペクチン、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、サイリュームシードガム、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、うるち米澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、ワキシコーンスターチ、もち米澱粉等の澱粉、湿熱処理澱粉、加工澱粉等の増粘材、難消化性デキストリン、結晶セルロース、アップルファイバー等の食物繊維、食塩、醤油、味噌、動植物由来のエキス類、アミノ酸、グルタミン酸ナトリウム等の調味料、各種ペプチド、リンゴ、イチゴ、メロン、オレンジ、レモン、レーズン、モモ、クリ等の果実又は果汁、チョコレート、ココア、コーヒー、抹茶、リキュール類、ナッツ類、クエン酸、酢酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸又はその塩、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ナイアシン等のビタミン類、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止材、色素、香料等を挙げることができる。
【0025】
以下、本発明について、実施例、比較例に基き具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0026】
〔実施例1〕
液卵白50%(蛋白質6%)、グラニュ糖4%、酵母エキス0.05%、50%乳酸0.15%及び清水45.8%からなる卵白水溶液を攪拌、調製した。得られた卵白水溶液を70〜90℃で5分間加熱した後、乳酸菌スターター0.02%(Lactococcus lactis subsp. lactis、Leuconostoc mesenteroides subsp.cremoris、Streptococcus diacetylactis、Lactococcus lactis subsp.cremoris)を添加し、30℃で24時間発酵を行った後、70〜90℃で10分間加熱殺菌し、次いで高圧ホモゲナイザーを用いて10MPaの圧力で処理し、本発明の有効成分である乳酸発酵卵白(固形分換算10%)を製した。
続いて、攪拌機付きニーダーで、牛乳(無脂乳固形分8.3%、乳脂肪3.5%)59.2%、生クリーム(無脂乳固形分4.0%、乳脂肪50.0%)13.5%、脱脂粉乳(無脂乳固形分95%、乳脂肪1.5%)5%、乳酸発酵卵白(蛋白質6%)5%、液卵黄2%、上白糖15%、グアーガム0.3%を攪拌混合した後、85℃で加熱殺菌後に冷却し本発明のアイスクリームを調製した。
【0027】
〔実施例2〕
実施例1の乳酸発酵卵白を送風温度160℃、排風温度65℃の条件でスプレードライし粉末状(固形分換算95%)に調製した。乳酸発酵卵白(蛋白質6%)を調製した粉末状(固形分換算95%)に同量置換えする以外は実施例1に準じ本発明のアイスクリームを調製した。
【0028】
〔実施例3〕
乳酸発酵卵白(蛋白質6%)5%及び清水5%を、実施例2の乳酸発酵卵白(固形分換算95%)10%に置換え、さらにグアーガム0.3%をローカストビーンガム0.1%及び清水0.2%に置換えた以外は、実施例1に準じ本発明のアイスクリームを調製した。
【0029】
〔比較例1〕
乳酸発酵卵白(蛋白質6%)5%を液卵白(蛋白質12%)2.5%及び清水2.5%に置換えた以外は、実施例1に準じアイスクリームを調製した。
【0030】
〔比較例2〕
液卵白をクエン酸でpH4に調整後、ペプシン0.5%を添加し、25℃、6時間反応させることで卵白加水分解物を調製した。乳酸発酵卵白(蛋白質6%)5%を上記で得られた卵白加水分解物(蛋白質12%)2.5%及び清水2.5%に置換えた以外は、実施例1に準じアイスクリームを調製した。
【0031】
〔比較例3〕
グアーガム0.3%をキサンタンガム0.3%に置換えた以外は、実施例1に準じアイスクリームを調製した。
【0032】
[試験例1]
上記の実施例1〜3及び比較例1〜3のアイスクリームについて、−20℃の冷凍室で4週間保存後の口溶けについて官能評価を行った。結果を表1に示す。評価基準は、非常に口溶けが良かった場合をA、やや口溶けが良かった場合をB、口溶けが悪く品位を損ねた場合をCとした。
【0033】
【表1】

【0034】
表1の結果、乳酸発酵卵白と、グアーガム及び/又はローカストビーンガムとを配合した冷菓は、口溶けの改善効果がみられ好ましかった。特に、乳酸発酵卵白の配合量が0.2〜15%(固形分換算)であり、グアーガム及び/又はローカストビーンガムの合計配合量が0.05〜0.5%であれば好ましく、乳酸発酵卵白の配合量が2〜15%(固形分換算)であり、グアーガム及び/又はローカストビーンガムの合計配合量が0.1〜0.5%であれば非常に口溶けが良く好ましかった。一方、乳酸発酵卵白を配合しない場合、又は、グアーガム及び/又はローカストビーンガムのいずれも配合しない場合は、口溶けが悪く品位を損ねた。
【0035】
〔実施例4〕
攪拌機付きニーダーで、清水72.7%、乳酸発酵卵白(蛋白質6%)5%、グラニュ糖22%、ローカストビーンガム0.3%を攪拌混合した後、85℃で加熱殺菌後に冷却し本発明のシャーベットを調製した。
製したシャーベットを−20℃の冷凍室で4週間保存した結果、口溶けの良いシャーベットが得られた。なお、乳酸発酵卵白の配合量は0.5%(固形分換算)であり、グアーガム及び/又はローカストビーンガムの合計配合量は0.3%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸発酵卵白と、グアーガム及び/又はローカストビーンガムとを配合することを特徴とする冷菓。
【請求項2】
乳酸発酵卵白の配合量が0.2〜15%(固形分換算)であり、グアーガム及び/又はローカストビーンガムの合計配合量が0.05〜0.5%である請求項1記載の冷菓。

【公開番号】特開2011−30489(P2011−30489A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179304(P2009−179304)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】