説明

冷菓

【課題】−15℃以下の冷凍庫から取り出した直後でも、スプーン通りの良い冷菓を提供する。
【解決手段】寒天、ゼラチン、ジェランガム及びカラギーナンから選ばれる少なくとも1種と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とからなるゲル状物を配合することを特徴とする冷菓。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、−15℃以下の冷凍庫から取り出した直後でも、スプーン通りの良い冷菓に関する。
【背景技術】
【0002】
シャーベット、ソルベ、アイスクリーム等の冷菓は、夏の暑い日や風呂上がり等にその清涼感を求め多くの人に好まれている。しかしながら、冷菓は、冷菓の製造時の凍結硬化あるいはその後の保管温度によっては氷の粗大結晶が生じる等するため、冷凍庫から取り出してしばらくは硬すぎてスプーンで簡便に掬うことができない場合がある。そこで、製造から保管までの温度変化に拘わらず、冷凍庫から取り出した際にスプーン通りの良い冷菓が求められている。
【0003】
上記問題を解決する方法として、従来より種々の方法が検討されており、その1つとして、特開2002−315514号公報(特許文献1)には、起泡剤として特定量のショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有する冷菓の製造方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の冷菓の製造方法では、オーバーランを150%以上にまで高めた冷菓に限定されるため用途が限られてしまい、消費者の要望を十分に満足するものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−315514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
−15℃以下の冷凍庫から取り出した直後でも、スプーン通りの良い冷菓を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、冷菓に、特定のゲル化剤とヒアルロン酸及び/又はその塩とからなるゲル状物を配合するならば、意外にも、スプーン通りが良くすぐに喫食できる冷菓を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)寒天、ゼラチン、ジェランガム及びカラギーナンから選ばれる少なくとも1種と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とを含むゲル状物を配合する冷菓、
(2)寒天、ゼラチン、ジェランガム及びカラギーナンの合計含有量が0.5〜3%であり、かつ、ヒアルロン酸及び/又はその塩の合計含有量が0.01〜0.5%である前記ゲル状物を配合する(1)の冷菓、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スプーン通りが良くすぐに喫食できる冷菓を提供することができる。これにより、冷菓及びデザート市場の更なる拡大が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、特に規定しない限り、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0011】
冷菓とは、食品衛生法に基づく「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号)」で定めるアイスクリーム類(乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって、乳固形分を3%以上含むもので、アイスクリーム、アイスミルク又はラクトアイスに分類される)、公正競争規約(平成13年3月30日公正取引委員会告示第14号)で定めるシャーベットやソルベ等と呼ばれる氷菓(糖液若しくはこれに他食品を混和した液体を凍結したもの又は食用氷を粉砕し、これに糖液若しくは他食品を混和し再凍結したもので、凍結状のまま食用に供するもの)又はフローズンヨーグルトのことを指す。
【0012】
本発明の冷菓は、寒天、ゼラチン、ジェランガム及びカラギーナンから選ばれる少なくとも1種と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とからなるゲル状物を配合することにより、良好なスプーン通りを呈することができる。
【0013】
前記ゲル状物に用いるヒアルロン酸及び/又はその塩の合計含有量は、0.01〜0.5%が好ましく、0.02〜0.5%がより好ましく、0.05〜0.5%が特に好ましい。ヒアルロン酸及び/又はその塩の合計含有量が、前記範囲より少ない場合は良好なスプーン通りを呈することができない場合があり、前記範囲より多くしたとしても配合量に応じて前記効果が増し難く、ヒアルロン酸自体が高価なものであることから経済的でない。
【0014】
ヒアルロン酸とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの二糖からなる繰り返し構成単位を1以上有する多糖類をいう。本発明で使用する原料ヒアルロン酸及び/又はその塩は、特に限定されるものではないが、例えば鶏冠、臍の緒、眼球、皮膚、軟骨等の生体組織、あるいはストレプトコッカス属等のヒアルロン酸産生微生物を培養して得られる培養液等を原料として、抽出(更に必要に応じて精製)して得られるものである。
【0015】
前記ゲル状物に用いるヒアルロン酸及び/又はその塩は、特に限定されるものではなく、当該粗抽出物あるいは精製物の何れを用いても良いが、精製物、具体的にはヒアルロン酸及び/又はその塩の純度が90%以上のものが好ましい。純度が90%未満の場合は、保管中にヒアルロン酸及び/又はその塩が着色して、酸性ゲル状食品の外観を損なう恐れがあり好ましくない。
【0016】
前記ゲル状物に用いる寒天は、通常食品素材として利用されているものであれば特に限定されず、一般に紅藻類から抽出して得られるアガロースとアガロペクチンを含有する多糖類であればいずれを使用しても構わない。
【0017】
前記ゲル状物に用いるゼラチンは、通常食品素材として利用されているものであれば特に限定されず、例えば、アルカリ処理ゼラチンや酸処理ゼラチン等、製造方法や原料の由来によって各種のものがあるが、いずれを使用しても構わない。
【0018】
前記ゲル状物に用いるジェランガムは、通常食品素材として利用されているものであれば特に限定されず、例えば、グルコースのC−2位にグリセリル基1残基が結合しC−6位にアセチル基が平均1/2残基結合しているネイティブ型ジェランガムや、これを脱アセチル化して精製された脱アシル型ジェランガムがあるがいずれを使用しても構わない。
【0019】
前記ゲル状物に用いるカラギーナンは、通常食品素材として利用されているものであれば特に限定されず、一般に紅藻類から抽出して得られる硫酸基を持つガラクタンの一種であり、κ、λ、ιの3種があるが、いずれを使用しても構わない。
【0020】
前記ゲル状物に用いる寒天、ゼラチン、ジェランガム及びカラギーナンの合計含有量は、特に限定されないが、ゲル状物に対し0.5〜3%が好ましく、1〜3%がより好ましい。寒天、ゼラチン、ジェランガム及びカラギーナンの合計配合量が、前記範囲より少ないと、良好なスプーン通りを呈することができない場合があり、前記範囲より多いと、粘稠性が強くなり良好なスプーン通りを呈することができない場合がある。
【0021】
前記ゲル状物は、特に限定されないが、概均一に分散されることが好ましく、一片あたり0.01〜1cmになっていることが好ましく、0.02〜0.5cmがより好ましい。上記ゲル状物が、前記範囲より大きい又は小さいと、良好なスプーン通りを呈することができない場合がある。
【0022】
本発明の冷菓に配合する上記ゲル状物は、必須原料である寒天、ゼラチン、ジェランガム及びカラギーナンから選ばれる少なくとも1種と、ヒアルロン酸及び/又はその塩以外に、本発明の効果を損わない範囲で適宜選択し配合することができる。具体的には、例えば、キサンタンガム、タマリンドシードガム、グアガム、アラビアガム、サイリュームシードガム、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、うるち米澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、ワキシコーンスターチ、もち米澱粉等の澱粉、湿熱処理澱粉、加工澱粉、蒟蒻、ペクチン、プルラン、マンナン、ガラクトマンナン、キチン、キトサン、デキストリン等のゲル化剤、グルコース、ショ糖、乳糖、麦芽糖、オリゴ糖、ぶどう糖果糖液糖、トリモリン、水飴、はちみつ等の糖類、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、キシリトール、トレハロース、パラチノース等の甘味料、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、オリゴ糖アルコール、分岐オリゴ糖アルコール、デキストリンアルコール等の糖アルコール類、難消化性デキストリン、結晶セルロース、アップルファイバー等の食物繊維、セラミド、イソフラボン、コエンザイムQ10、コラーゲン等の美容原料、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、オクテニルコハク酸化澱粉等の乳化剤、食塩、アミノ酸、グルタミン酸ナトリウム等の調味料、各種ペプチド、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸等の有機酸塩、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ナイアシン等のビタミン類、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等のミネラル類又はその塩、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、香辛料、グレープフルーツフレーバー、オレンジフレーバー、りんごフレーバー、レモンフレーバー等の香料、色素等が挙げられる。
【0023】
本発明の冷菓に配合する上記ゲル状物は、pHを3〜4.6に調整することにより、レトルト処理等の高温高圧加熱処理を施さなくとも常温での流通、保存が可能となり、ゲル状物の物性の変化を最小限に留めることができる。
【0024】
本発明の冷菓に配合する上記ゲル状物に用いる酸剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、酢酸等の有機酸、リン酸等の無機酸を用いることができる。
【0025】
スプーン通りの評価は、−15℃で3時間以上保管後、冷凍庫から取り出し、30秒後の冷菓について、ペネトロメーター((有)中村医科理化機械店製、先端角40度、重さ12.0gのおもりを使用し、5秒間貫入した際の示度)を用いて測定した。本発明の冷菓のペネトロメーターの示度は、70以下が好ましく、65以下がより好ましい。示度が前記値より大きいと、スプーン通りが損なわれる場合がある。
【0026】
本発明の冷菓に配合する上記ゲル状物の水分含有量は、特に限定されないが、ヒアルロン酸及び/又がそれぞれ含水することから50%以上が好ましい。
【0027】
本発明の冷菓は、常法に則り製造すれば良い。また、上述した以外の原料を本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて配合してよく、具体的には、例えば、牛乳、生クリーム、バター、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、加糖粉乳、脱脂粉乳等の乳原料、グラニュ糖、上白糖、三温糖、ぶどう糖果糖液糖、果糖ぶどう糖液糖、澱粉、デキストリン、フルクトース、トレハロース、グルコース、乳糖、オリゴ糖及び糖アルコール等の糖類、全卵、卵黄、卵白、豆乳等の蛋白質類、卵黄油、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、米油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油等の油脂類、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、オクテニルコハク酸化澱粉等の乳化材、ペクチン、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、サイリュームシードガム、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、うるち米澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、ワキシコーンスターチ、もち米澱粉等の澱粉、湿熱処理澱粉、加工澱粉等の増粘材、難消化性デキストリン、結晶セルロース、アップルファイバー等の食物繊維、食塩、醤油、味噌、動植物由来のエキス類、アミノ酸、グルタミン酸ナトリウム等の調味料、各種ペプチド、リンゴ、イチゴ、メロン、オレンジ、レモン、レーズン、モモ、クリ等の果実又は果汁、チョコレート、ココア、コーヒー、抹茶、リキュール類、ナッツ類、クエン酸、酢酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸又はその塩、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ナイアシン等のビタミン類、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止材、色素、香料等を挙げることができる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明の冷菓を実施例及び試験例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0029】
〔実施例1〕
ゲル状物は、寒天0.7%、ジェランガム0.3%、カラギーナン0.3%、ヒアルロン酸及び/又はその塩0.05%、クエン酸(結晶)0.1%、グラニュ糖8%、清水90.55%をミキサーに入れて品温80℃で加熱混合撹拌後、品温5℃まで冷却することによりゲル化剤を増粘させゲル状物を調製した。また、別途、清水55%、グラニュ糖30%、水あめ15%を湯煎で溶解しシロップを調製した。続いて、苺ピューレ500g、一片あたり0.5cmの前記ゲル状物100g、前記シロップ400gを全体が概均一になるように撹拌混合後、バッチ式アイスクリームフリーザーにてフリージングを行い本発明の冷菓(氷菓)を得た。得られた冷菓を−15℃の冷凍庫から取り出し、直後に薄いプラスチック片のスプーンをさし入れ評価したところ、スプーン通りが良く非常に好ましかった。ペネトロメーターで貫入値を測定したところ示度は63であった。また、得られた冷菓に配合されたゲル状物の大きさは、大部分が一片あたり0.05〜0.2cmの範囲内であった。
【0030】
〔実施例2〕
ゲル状物は、実施例1の方法に準じ、寒天0.7%、ジェランガム0.3%、カラギーナン0.3%をゼラチン1.3%に、ヒアルロン酸及び/又はその塩0.05%をヒアルロン酸及び/又はその塩0.005%及び清水0.045%に置き換えて調製した。続いて、攪拌機付きニーダーで、牛乳60%、生クリーム17.7%、一片あたり0.1cmの前記ゲル状物5%、液卵黄2%、上白糖15%、グアーガム0.3%を全体が概均一になるように攪拌混合後、バッチ式アイスクリームフリーザーにてフリージングを行い本発明の冷菓(アイスクリーム類)を得た。得られた冷菓を−15℃の冷凍庫から取り出し、直後に薄いプラスチック片のスプーンをさし入れ評価したところ、スプーン通りが良く好ましかった。ペネトロメーターで貫入値を測定したところ示度は65であった。また、得られた冷菓に配合されたゲル状物の大きさは、大部分が一片あたり0.03〜0.1cmの範囲内であった。
【0031】
〔比較例1〕
ゲル状物100gを前記シロップに置換えた以外は、実施例1に準じて冷菓を得た。得られた冷菓を−15℃の冷凍庫から取り出し、直後に薄いプラスチック片のスプーンをさし入れ評価したところ、スプーン通りが悪く品位を損ねていた。ペネトロメーターで貫入値を測定したところ示度は78であった。
【0032】
〔実施例3〕
前記ゲル状物を一片あたり2〜6cmに置換えた以外は、実施例1に準じて冷菓を得た。得られた冷菓を−15℃の冷凍庫から取り出し、直後に薄いプラスチック片のスプーンをさし入れ評価したところ、スプーン通りは良かったものの、実施例1の方がよりスプーン通りに優れていた。ペネトロメーターで貫入値を測定したところ示度は70であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天、ゼラチン、ジェランガム及びカラギーナンから選ばれる少なくとも1種と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とを含むゲル状物を配合することを特徴とする冷菓。
【請求項2】
寒天、ゼラチン、ジェランガム及びカラギーナンの合計含有量が0.5〜3%であり、かつ、ヒアルロン酸及び/又はその塩の合計含有量が0.01〜0.5%である前記ゲル状物を配合する請求項1記載の冷菓。