冷蔵庫
【課題】 野菜に電場を印加することで、野菜の呼吸を抑制し、鮮度を保持させる保存方法において、湿気浸入による高電圧印加部の絶縁破壊を防止する冷蔵庫を得る。
【解決手段】 電極板4と高電圧を発生する高圧電源2との接続部5および電極板4を絶縁物6で覆うようにした電極ユニット1を、冷蔵庫の野菜室14に一対に配設する。そして、制御部7により電極板4への電圧印加を制御することで電場処理を行うようにし、この電場環境で野菜16を保存することで、野菜16の呼吸を抑制して鮮度維持を図る。
【解決手段】 電極板4と高電圧を発生する高圧電源2との接続部5および電極板4を絶縁物6で覆うようにした電極ユニット1を、冷蔵庫の野菜室14に一対に配設する。そして、制御部7により電極板4への電圧印加を制御することで電場処理を行うようにし、この電場環境で野菜16を保存することで、野菜16の呼吸を抑制して鮮度維持を図る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、保存中の野菜などの貯蔵品質を向上させる保存方法並びのその保存方法を用いた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷蔵庫においては、肉や魚等の食品の冷凍貯蔵中の乾燥抑制と解凍時のドリップの流出を抑制し、生鮮食品、水産魚介類、野菜等の貯蔵品質を向上させるために、高電場処理を行っている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−323721号公報(第2−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冷蔵庫では、冷蔵室に設けた高圧電極が電場処理室内に露出して構成されているため、この高圧電極と貯蔵食品とが接触してしまう可能性があり、貯蔵食品(肉、魚、野菜等)は導電体であるため、冷蔵室内に食品を詰め込んだりして高圧電極に接触してしまうと食品中に大きな電流が流れてしまい、高圧電力の高電圧印加時の安全性の面で問題があった。さらに、電場処理を冷凍室内で行う場合、霜が付着してしまうため、この霜を介した絶縁破壊の可能性があるという問題点もあった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、高電圧が印加される活線部全体を絶縁処理することで、設置環境にかかわらず、貯蔵食品に電場処理を確実にかつ安全に行うことのできる冷蔵庫を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る冷蔵庫においては、電極板に高電圧を発生する高圧電源と、前記高圧電源と前記電極板との接続部と、前記電極板へ電圧印加を制御する制御部とを有し電場処理を行うもので、冷蔵庫の野菜室内と前記電極および接続部とを絶縁状態に保持する絶縁構造を有する電極ユニットを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、高電圧が印加される電極板及び活線部全体が絶縁処理されているため、高湿状態の野菜室などで野菜の電場処理を行っても、絶縁破壊が起こることがなく、また、制御部の故障により電極ユニットに高電圧が印加されたままとなっても、電極ユニット全体が絶縁処理されているため、安全に電場処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における冷蔵庫などに搭載する電極ユニットを示す概略構成図である。図1において、電極ユニット1は、高圧電源2に接続されたリード線3と、導電性のある材料からなる電極板4と、リード線3と電極板4との接続部である活線部5と、電極板4と活線部5とを覆うように設けられた絶縁物6とで構成されている。そして、高圧電源2は、制御部7からの信号によって制御され、電極ユニット1への電圧の印加は制御部7で行われる。
【0009】
そして、電極板4の形態は、平板(図2)やメッシュ板(図3)の形態を有している。まず、図2は平板状の電極板4からなる電極ユニット1の上面図で、平板の場合、例えば0.1〜1mm程度の板金でも良いが、例えばABSなどの樹脂に金属蒸着したり、インサート成型にて電極板4を形成する金属量を減らした箔状のものでも良い。このとき、リード線3と電極板4との接続部である活線部5は、丸端子を設けてハトメまたは電気溶着やネジや半田など、電極板4に大きな損傷を与えることなく確実に接続できる手段をとるものとする。
【0010】
また、図3はメッシュ状の電極板4からなる電極ユニット1の上面図で、平板の代わりに図3に示すようなメッシュ板にて電極板4を構成すれば、電極板4を構成する部材量を減らしコストを低減することができる。ただし、メッシュ板の場合には、電極板4の大きさに切り取ったとき、端から解れてこないようにするために端部処理加工が必要となる。そこで、図4に示すように、複数回折り曲げた金属線で電極板4を構成する。このような構成とすることで、メッシュ板同様、平板よりもコストを低減できるとともに、メッシュ板のように電極板4の大きさに切り取ったときの端部処理加工が不要となり、更なるコストダウンができる。
【0011】
さらに、上記電極板4は、導電性のある部材であれば何でも良いが、錆が発生すると電場形成の性能上は問題なくても絶縁物6を介して錆が使用者に見えることで意匠的に悪印象を与えるおそれがあるため、錆は発生しないことが望ましい。このため、電極板4の部材として防錆効果の高いステンレスを用いることが望ましいが、鉄や銅など、より安価な部材に防錆加工を施して用いることでコストダウンが図れる。さらに、アルミを同様に防錆加工して用いれば、軽量化を図ることもできる。
【0012】
このように構成された電極ユニットの動作について説明する。制御部7からの信号に基づいて、高電圧が電極ユニット1のリード線3、活線部5を介して、電極板4へ印加される。このとき、高電圧印加部は絶縁されているため、電場処理される野菜などから水滴が垂れたり、電場処理形成を行う庫内の環境が高湿度の環境であっても湿気が電極ユニット1内部に侵入することはなく、高電圧部での絶縁破壊は発生することがない。
つまり、絶縁物6は、平板の電極板4の全外面及び活線部5、つまり平板の外面全てを覆う構成とすることで、どのような設置方法、設置状態、設置場所であっても、絶縁性を確実に保てるようにする。
【0013】
具体的には、電極板4の外被は、絶縁体を兼ねる場合は0.8mm以上、絶縁体を兼ねない場合は0.3mm以上必要である。これを基礎絶縁とすると、絶縁体を兼ねない場合には、付加絶縁が必要となる。この付加絶縁は、それが電極板4の外被の最外側で外傷を受けるおそれのあるものでは1.0mm以上、外傷を受けるおそれのないものでは0.4mm以上必要である。または、それに相当する空間距離を置く必要があり、これは、線間電圧または対地電圧により定められており、例えば3〜7kVで30mm、7〜12kVでは40mm以上必要である。
また、上述した基礎絶縁と付加絶縁とからなる二重絶縁の代わりに、強化絶縁を施すようにしても良い。このとき、この強化絶縁が電極板4の外被の最外側でまたは外傷を受けるおそれのある場合は2mm以上、外傷を受けるおそれがない場合は0.8mm以上の厚みが必要である。また、それに相当する空間距離を置く必要があり、これは線間電圧または対地電圧により定められており、例えば3〜7kVで60mm、7〜12kVでは80mm以上必要である。
さらに、電場形成を行う静電極の電極板と負電極の電極板との間の沿面距離方向の絶縁も必要である。これは、線間電圧または対地電圧により定められており、例えば3〜7kVで30mm、例えば7〜12kVでは40mm以上必要である。
【0014】
したがって、電極板4は、上述のようにして基礎絶縁と付加絶縁を施し電場形成を行う庫内に設置することで、高湿度の環境でも湿気が電極ユニット1内部に侵入することがなく、絶縁破壊が起こることがなく、安全に電場処理を行うことができる。また、基礎絶縁を施した電極板4を電場形成を行う庫内の壁面外側に設置すれば、電場形成を行う庫内の壁部材が付加絶縁を兼ねることになり、より低コストで同様の効果が得ることができる。
【0015】
実施の形態2.
次に、上記実施の形態1の電極ユニット1を実装した冷蔵庫について説明する。図5は、上記電極ユニット1を実装した冷蔵庫の一例であり、(a)冷蔵庫の正面図と(b)野菜室に電極ユニット1を搭載した場合の冷蔵庫の断面図である。図において、実施の形態1と同一の符号は同一とする。冷蔵庫10は、冷蔵室11、アイス室12、セレクト室13、野菜室14、冷凍室15の各室を有しており、野菜室14の庫内天面及び底面には、電極ユニット1a及び1bが配置されている。
なお、高圧電源2の設置場所は、結露や野菜室14内に保存される野菜16や他室で保存する発酵性食品などから発生する水分や硫黄系ガスなどの腐食性ガスに影響されないように樹脂モールド施して野菜室14内に設置しても良いが、冷蔵庫10の背面の制御基板上(図示せず)や圧縮機のある機械室(図示せず)などに設置するようにすれば、結露や野菜16や他室で保存する発酵性食品などから発生する水分や硫黄系ガスなどの腐食性ガスに影響を受けることがないため、このような信頼性が得られる場所に設置するようにすれば高価なモールドを施さなくてもすむ。
【0016】
このように構成された電極ユニットの動作について説明する。野菜室14の庫内天面及び底面に設置された1対の電極ユニット1a及び1bでは、制御部7からの信号に基づいて、高電圧がリード線3及び活線部5を介して、電極板4へ印加され、天面の上電極板4aと底面の下電極板4bとの間には電場が印加され、この上電極板4aと下電極板4bとの間に保存されている野菜16は電場処理を受ける。そして、電場処理された野菜16は電場印加に伴って、呼吸に影響を及ぼす酵素の活性が増加し、呼吸が抑制される。
【0017】
このようにして電場印加による呼吸抑制を行うことで、野菜16保有の栄養素の消費が減少するようになり、野菜室14内に保存される野菜16の鮮度が保持される。更に、野菜室14に野菜16を保存した状態で光合成を活性化する波長の光を照射することでビタミンCを増量することができる。
【0018】
ところで、冷蔵庫10の各室は、図5(b)に示すように、庫内入口をパッキンなどを介して、ドア17で閉じるようにして、庫内を密閉状態となるように設計されている。したがって、保存される野菜16などの青果物の蒸発作用により発生した水分で、野菜室14などの庫内は高湿度に保持されるようになる。このような高湿度の環境にて電極による電場処理を行うと、水滴が電極板4に付着してしまい、漏洩や短絡、ショートの原因となり、電場形成を行うことができなくなる。
そこで、本実施の形態では、高湿度となる野菜室14内でも確実に電場形成を行えるようにするために、実施の形態1に記したような高電圧印加部である電極板4と活線部5を絶縁物6により野菜室14の庫内と絶縁させる構造の電極ユニット1を用いているため、野菜室14内の湿気が電極ユニット1内部に侵入することがなく、高電圧印加部での絶縁破壊が発生することのない冷蔵庫を得ることができる。そしてさらに、野菜室14内に保存される野菜16から水滴がたれて、電極ユニット1bとの間に水が溜まるようなことがあっても、下電極板4bと活線部5の全外面が絶縁物6によって覆われているため漏洩や短絡、ショートの心配がなく、確実に電場処理を行うことができる。
【0019】
つまり、電極板4及び活線部5の全外面を絶縁物6で覆うようにしているため、冷蔵庫の各室庫内にどのような状態で設置されても、確実に絶縁状態を保持できるため、設置庫内の湿度に影響されずに電場処理を行うことができる。
【0020】
なお、電極板4による野菜16への電場処理は、制御部7により、例えば、野菜室14のドア17に連動したスイッチあるいは、別途設置したスイッチで開始し、連続または断続的に電場処理を行うよう制御したり、夜間のみ印加するように制御しても良い。
【0021】
また、高圧電源2からの出力は直流であっても、交流であってもよく、電圧的には野菜16の呼吸抑制効果、電源の大きさなどから判断すると10KV以下が好ましい。また、望ましい電場強度として、少なくとも0.05kV/cm以上を得るために、様々な部品ばらつきを考慮して、電極板4aと11b間の距離は約20〜40cmが望ましい。ここで、野菜16の呼吸抑制効果の一例を図6に示す。図6は、野菜室14に相当する温度として5℃設定としたデシケータ内の棚に、電極板4を上側が負電極で下側が正電極になるように設置し、正電極極側の電極板4の上面にキャベツを置き、電場強度0.54kV/cmの電場を約1時間キャベツに印加した後に、電源をオフして電場印加なしのままで3日間デシケータ内で保存したときのCO2濃度を示すものであり、3日後のデシケータ内のCO2濃度は、電場印加なしのときを100とした場合と比較すると、約75%の濃度にしか達しなかった。この結果からも電場印加により野菜の呼吸量が低減したことがわかる。
【0022】
なお、上述では、電極ユニット1を冷蔵庫10の野菜室14に搭載したもので説明したが、野菜室14以外の冷蔵室11、セレクト室13、冷凍室15などに電極ユニット1を設置することで、保存対象を野菜16以外の生鮮食品に拡大することもできる。冷蔵温度であれば、野菜や果物の呼吸抑制以外にも肉や魚の分解酵素活性を抑制して鮮度を保持することや、冷凍温度でも氷結晶の微細化や酵素活性抑制などにより質の良い冷凍ができることが考えられる。また、図5に示した野菜室14、セレクト室13、冷凍室15のドア17は引き戸だが、冷蔵庫本体10に設けられた軸を中心として回転開きするドアであってもよい。
【0023】
また、電極ユニット1a、1bの配置は、野菜室14の天面と底面に限定されるものでなく、前面と背面、左右の側面であってもかまわない。さらに、電極板4を対向させて配置せず、野菜室14の天面と背面のようにL字型になるように設置してもよい。この場合、野菜室14内庫内の正電極の電極板と負電極の電極板の電極間の距離に差が発生するので、野菜室14内の電場強度は場所によって異なってくる。そこで、電極同士が近接した場所すなわち電場強度が強い場所を野菜室14の手前にする。つまり、野菜室14の手前側は、ドア7の開閉時によって庫内温度が上がりやすく、野菜の呼吸量が増える可能性のある場所であるため、野菜室14の手前側を電場強度が強い場所とすることで、電場によるより大きな呼吸抑制作用が働くこととなり、野菜室14内のいずれの場所に野菜を置いても均一に呼吸を抑制することができる。
また、電極同士が近接するすなわち電場強度が強い場所を野菜室14の奥側にして、高品質な保存や長期間の保存を行うためのコーナーとしても良い。また、電場強度が強い場所にはアスパラガスやブロッコリーやカット野菜など呼吸量の多い野菜を保存し、電場強度が弱い場所にはキャベツやタマネギなど呼吸量の少ない野菜を保存するというコーナーとして、どの野菜にも均等な呼吸抑制効果が得られるようにしても良い。
【0024】
実施の形態3.
次に、図7は、電場処理を行う電極ユニットの他の実施の形態を説明する。なお、実装する冷蔵庫の構成は上記実施の形態2と同一であり、その説明は省略する。図7は、この発明を実施するための実施の形態3における冷蔵庫などに実装する電極ユニットを示す概略構成図である。図において、上記実施の形態1および2と同一のものは同一符号とし、その説明は省略する。電極ユニット21は、高圧電源(図示せず)に接続されたリード線3と、リード線3と電極板4との接続部である活線部5と、電極板4と活線部5とを覆う絶縁性を有する密封袋22とで構成される。
【0025】
本実施の形態3の電極ユニット21において、上記実施の形態1および2との相違点は、電極板4と活線部5の絶縁構造である密封袋22で、この密封袋22は、電極ユニット21を絶縁性を有する袋22に入れた後に、この袋22の口部をヒートシールで密封したり、接着剤で固着したりして形成する。さらに、パッキンなどを介してこの袋の口部を密封してもよい。また、密封袋22は、絶縁性を有するシートを貼り合わせて層をつくるラミネート加工によるものであってもよく、つまり、絶縁性を有するシートの端部を閉じて形成される袋であっても良い。この密封袋22の特徴は、絶縁性が高く、吸湿性がなく、機械強度が強いことであり、このような密封袋22で絶縁構造を形成することで、加工性が向上するとともに、上記実施の形態1および2と同様の効果を得ることができる。
【0026】
実施の形態4.
図8は、冷蔵庫などに実装する電場処理を行う電極ユニットのほかの実施の形態の概略構成図である。なお、実装する冷蔵庫の構成は、上記実施の形態2と同様であり、また図において、上記実施の形態1および2と同一のものは同一符号とし、その説明は省略する。電極ユニット31は、電極板4と活線部5の外面を絶縁性の樹脂32により隙間の無いように埋めたものである。
【0027】
このように構成された電極ユニット31を、高湿度の野菜室14に配設すると、高電圧印加部は絶縁性の樹脂32で覆われているため、野菜室14の湿気が電極ユニット31内部に浸入することはなく、高電圧印加部での絶縁破壊は発生せず、さらに、野菜16などから水滴がたれても安全に電場処理が行える。そして、絶縁構造である樹脂32は、例えば、シリコーン樹脂のような接着剤、充填剤などで形成され、吸湿性がなく、機械強度の強いものとなり、強度の優れた電極ユニットを得ることができる。
【0028】
実施の形態5.
図9は、冷蔵庫などに実装する電場処理を行う電極ユニットのほかの実施の形態の概略構成図である。なお、実装する冷蔵庫の構成は、上記実施の形態2と同様であり、また図において、上記実施の形態1および2と同一のものは同一符号とし、その説明は省略する。電極ユニット41は、電極板4、リード線3、活線部5を筐体A42、筐体B43の間に挿入し、筐体A42と筺体B43とをパッキン44を介して、締め付け、組み立てたものである。
【0029】
このように構成された電極ユニット41を高湿度の野菜室14に配設すると、高電圧印加部はパッキン44で密封した筐体A42とB43とで覆われているため、野菜室14の湿気が電極ユニット41内部に浸入することはなく、高電圧印加部での絶縁破壊は発生せず、さらに、野菜16などから水滴がたれても安全に電場処理が行えるものである。
【0030】
なお、パッキン44の代替として、絶縁性の接着剤などを用いて、筺体A42と筺体B43との接合部を密封してもよい。
【0031】
実施の形態6.
また、図10に示すように、上記実施の形態5の電極ユニット41の筺体A42と筺体B43の内部に吸湿剤45を設置するようにすれば、万が一、電極ユニット41内部に湿気が浸入しても、吸湿剤45の働きによって、電極ユニット41内部を常に低湿度状態に保つことができ、さらに、吸湿剤45と電極板4との間には、空間ギャップが存在するため、吸湿剤45の絶縁抵抗が吸湿にともなって低下したとしても、絶縁破壊は発生することがなく安全に電場処理を行うことができる。
【0032】
なお、吸湿剤45としては、無水塩化カルシウム、シリカゲルなどの一般的な乾燥剤で良く、性質として、吸湿能力が高く、即効性、能力持続性、安全性の高いものであれば良い。
【0033】
実施の形態7.
図11は、冷蔵庫などに実装する電場処理を行う電極ユニットの他の実施の形態の概略構成図である。なお、実装する冷蔵庫の構成は、上記実施の形態2と同様であり、また図において、上記実施の形態1および2と同一のものは同一符号とし、その説明は省略する。電極ユニット50は、電極板4、リード線3、活線部5を筐体A51、筐体B52の間に挿入するとともに、筐体B52に除湿膜53を取り付け、筐体A52と筺体B53とをパッキン54を介して組み立てたものである。
【0034】
このように構成された電極ユニット50を高湿度の野菜室14に配設すると、高電圧印加部はパッキン54で密封した筐体A51と筺体B52とで覆われているため、野菜室14の湿気が電極ユニット50内部に浸入することはない。たとえ湿気が浸入しても、除湿膜63を介して内部空間の湿気を外部に排気できるため、高電圧部での絶縁破壊は発生せず、安全に電場処理が行える。
【0035】
なお、除湿膜53としては、固体高分子電解膜と直流電圧との組み合わせたものなどが適しており、また他の手段を用いても良い。
【0036】
実施の形態8.
次に、電場処理を行う電極ユニットの他の実施の形態を説明する。図12は、この発明を実施するための実施の形態8における電極ユニット60を示す(a)概略構成図(b)概略断面図である。また、図13は前記電極ユニット60を実装した冷蔵庫の断面図である。図において、電極ユニット60は、導電性のある材料からなる正電極の電極板61aと負電極の電極板61bとが平面状に1対をなすように配置し、この電極板61aと61b全体を絶縁物62で覆うように形成する。そして、このようなに構成された電極ユニット60を、図13に示すように、野菜室14の庫内底面に配設する。
【0037】
この状態で、高圧電源2から高電圧が電極板61aと電極板61bとの間に印加されると、電極板61aから電極板61bに向かう電場が形成される。このようにして、庫内底面上に載置された野菜16は電場環境で保存されることになり、上記実施の形態1〜8と同様、野菜16の呼吸を抑制でき、野菜16の鮮度を保持することができる。
【0038】
したがって、野菜室14は高湿度であるが、高電圧印加部は絶縁物6で覆われているため、野菜室14の湿気が電極ユニット70内部に浸入することはない。そのため、絶縁破壊は発生せず、安全に電場処理を行うことができる。
【0039】
また、上記のような正電極と負電極の電極板を平面状に1対をなすように形成された電極ユニット60の場合、電極ユニットの設置が庫内の底面の一面のみで良くなるため、庫内のスペース的にも、電極ユニットの設置作業的にも有利である。さらに、電極板が平面的に設置されているため、実施の形態2の電極ユニットの印加電圧よりも低電圧で同一の電界強度を得ることができ、高圧電源のコストも安価なものとすることができる。
【0040】
また、電極ユニット60は、庫内の背面に設置するようにしても良く、庫内背面に設置するようにすることで冷蔵庫本体の制御基板からの電極ユニットの配線を短くすることができ、より低コストで実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態8のような電極ユニット60を用いると、庫内の底面に、例えばヒータなど電極ユニット以外の構造物が設けられるような場合でも、底面天面に電極ユニット60を設置することができるため、他の構造物によって電場処理構造が影響されることがなく、電場形成上の信頼性も向上させることができる。また、野菜室14の庫内の右または左いずれか一方の側面に電極ユニット60を設置した場合も同じく、風路など他の主要な構造物の配置に対し、お互いに影響を及ぼさず、設計が容易になる。
さらに、上記では、櫛形状の電極板4aと電極板4bとを交互に配置して平面状としたが、図14に示すように、電極板4aと電極板4bとを、例えば渦巻き形状にて平面状とすれば、正電極の電極板4aと負電極の電極板4bそれぞれの配線を一本の配線にて構成できるようになるので、作業工程を削除でき更なるコストダウンが見込める。このとき、絶縁物62は、基礎絶縁0.3mmと付加絶縁0.8mmまたは強化絶縁2.0mm以上を施しても良いが、基礎絶縁0.3mm電源が7〜12kVとした場合に、正電極となる配線と負電極となる配線の間の空間距離を40mm以上とるようにしてもよい。これにより、絶縁物62の付加絶縁分のコスト低減が図れる。
【0041】
また、本実施の形態8の電極構成の電極ユニットを野菜室14の複数面に配置して、より強力な効果を得るようにしてもよい。
【0042】
なお、本実施の形態8の電極ユニットでは、絶縁物62で電極板と活線部を覆うようにして絶縁を行っているが、上記実施の形態3〜7のような絶縁構造としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施の形態1における電極ユニットの概略構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における電極ユニットの上面図である。
【図3】この発明の実施の形態1における電極ユニットの上面図である。
【図4】この発明の実施の形態1における電極ユニットの上面図である。
【図5】(a)この発明の実施の形態2における電極ユニットを実装した冷蔵庫の正面図である。 (b)この発明の実施の形態2における電極ユニットを実装した冷蔵庫の断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2における野菜保存効果を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態3における電極ユニットの概略構成図である。
【図8】この発明の実施の形態4における電極ユニットの概略構成図である。
【図9】この発明の実施の形態5における電極ユニットの概略構成図である。
【図10】この発明の実施の形態6における電極ユニットの概略構成図である。
【図11】この発明の実施の形態7における電極ユニットの概略構成図である。
【図12】(a)この発明の実施の形態8における電極ユニットの概略構成図である。 (b)この発明の実施の形態8における電極ユニットの概略断面図である。
【図13】この発明の実施の形態8における電極ユニットを実装した冷蔵庫の断面図である。
【図14】この発明の実施の形態8における電極ユニットの上面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 電極ユニット、2 高圧電源、3 リード線、4 電極板、5 活線部、6 絶縁物、7 制御部、10 冷蔵庫、11 冷蔵室、12 アイス室、13 セレクト室、14 野菜室、15 冷凍室、16 野菜、17 ドア。
【技術分野】
【0001】
この発明は、保存中の野菜などの貯蔵品質を向上させる保存方法並びのその保存方法を用いた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷蔵庫においては、肉や魚等の食品の冷凍貯蔵中の乾燥抑制と解凍時のドリップの流出を抑制し、生鮮食品、水産魚介類、野菜等の貯蔵品質を向上させるために、高電場処理を行っている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−323721号公報(第2−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冷蔵庫では、冷蔵室に設けた高圧電極が電場処理室内に露出して構成されているため、この高圧電極と貯蔵食品とが接触してしまう可能性があり、貯蔵食品(肉、魚、野菜等)は導電体であるため、冷蔵室内に食品を詰め込んだりして高圧電極に接触してしまうと食品中に大きな電流が流れてしまい、高圧電力の高電圧印加時の安全性の面で問題があった。さらに、電場処理を冷凍室内で行う場合、霜が付着してしまうため、この霜を介した絶縁破壊の可能性があるという問題点もあった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、高電圧が印加される活線部全体を絶縁処理することで、設置環境にかかわらず、貯蔵食品に電場処理を確実にかつ安全に行うことのできる冷蔵庫を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る冷蔵庫においては、電極板に高電圧を発生する高圧電源と、前記高圧電源と前記電極板との接続部と、前記電極板へ電圧印加を制御する制御部とを有し電場処理を行うもので、冷蔵庫の野菜室内と前記電極および接続部とを絶縁状態に保持する絶縁構造を有する電極ユニットを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、高電圧が印加される電極板及び活線部全体が絶縁処理されているため、高湿状態の野菜室などで野菜の電場処理を行っても、絶縁破壊が起こることがなく、また、制御部の故障により電極ユニットに高電圧が印加されたままとなっても、電極ユニット全体が絶縁処理されているため、安全に電場処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における冷蔵庫などに搭載する電極ユニットを示す概略構成図である。図1において、電極ユニット1は、高圧電源2に接続されたリード線3と、導電性のある材料からなる電極板4と、リード線3と電極板4との接続部である活線部5と、電極板4と活線部5とを覆うように設けられた絶縁物6とで構成されている。そして、高圧電源2は、制御部7からの信号によって制御され、電極ユニット1への電圧の印加は制御部7で行われる。
【0009】
そして、電極板4の形態は、平板(図2)やメッシュ板(図3)の形態を有している。まず、図2は平板状の電極板4からなる電極ユニット1の上面図で、平板の場合、例えば0.1〜1mm程度の板金でも良いが、例えばABSなどの樹脂に金属蒸着したり、インサート成型にて電極板4を形成する金属量を減らした箔状のものでも良い。このとき、リード線3と電極板4との接続部である活線部5は、丸端子を設けてハトメまたは電気溶着やネジや半田など、電極板4に大きな損傷を与えることなく確実に接続できる手段をとるものとする。
【0010】
また、図3はメッシュ状の電極板4からなる電極ユニット1の上面図で、平板の代わりに図3に示すようなメッシュ板にて電極板4を構成すれば、電極板4を構成する部材量を減らしコストを低減することができる。ただし、メッシュ板の場合には、電極板4の大きさに切り取ったとき、端から解れてこないようにするために端部処理加工が必要となる。そこで、図4に示すように、複数回折り曲げた金属線で電極板4を構成する。このような構成とすることで、メッシュ板同様、平板よりもコストを低減できるとともに、メッシュ板のように電極板4の大きさに切り取ったときの端部処理加工が不要となり、更なるコストダウンができる。
【0011】
さらに、上記電極板4は、導電性のある部材であれば何でも良いが、錆が発生すると電場形成の性能上は問題なくても絶縁物6を介して錆が使用者に見えることで意匠的に悪印象を与えるおそれがあるため、錆は発生しないことが望ましい。このため、電極板4の部材として防錆効果の高いステンレスを用いることが望ましいが、鉄や銅など、より安価な部材に防錆加工を施して用いることでコストダウンが図れる。さらに、アルミを同様に防錆加工して用いれば、軽量化を図ることもできる。
【0012】
このように構成された電極ユニットの動作について説明する。制御部7からの信号に基づいて、高電圧が電極ユニット1のリード線3、活線部5を介して、電極板4へ印加される。このとき、高電圧印加部は絶縁されているため、電場処理される野菜などから水滴が垂れたり、電場処理形成を行う庫内の環境が高湿度の環境であっても湿気が電極ユニット1内部に侵入することはなく、高電圧部での絶縁破壊は発生することがない。
つまり、絶縁物6は、平板の電極板4の全外面及び活線部5、つまり平板の外面全てを覆う構成とすることで、どのような設置方法、設置状態、設置場所であっても、絶縁性を確実に保てるようにする。
【0013】
具体的には、電極板4の外被は、絶縁体を兼ねる場合は0.8mm以上、絶縁体を兼ねない場合は0.3mm以上必要である。これを基礎絶縁とすると、絶縁体を兼ねない場合には、付加絶縁が必要となる。この付加絶縁は、それが電極板4の外被の最外側で外傷を受けるおそれのあるものでは1.0mm以上、外傷を受けるおそれのないものでは0.4mm以上必要である。または、それに相当する空間距離を置く必要があり、これは、線間電圧または対地電圧により定められており、例えば3〜7kVで30mm、7〜12kVでは40mm以上必要である。
また、上述した基礎絶縁と付加絶縁とからなる二重絶縁の代わりに、強化絶縁を施すようにしても良い。このとき、この強化絶縁が電極板4の外被の最外側でまたは外傷を受けるおそれのある場合は2mm以上、外傷を受けるおそれがない場合は0.8mm以上の厚みが必要である。また、それに相当する空間距離を置く必要があり、これは線間電圧または対地電圧により定められており、例えば3〜7kVで60mm、7〜12kVでは80mm以上必要である。
さらに、電場形成を行う静電極の電極板と負電極の電極板との間の沿面距離方向の絶縁も必要である。これは、線間電圧または対地電圧により定められており、例えば3〜7kVで30mm、例えば7〜12kVでは40mm以上必要である。
【0014】
したがって、電極板4は、上述のようにして基礎絶縁と付加絶縁を施し電場形成を行う庫内に設置することで、高湿度の環境でも湿気が電極ユニット1内部に侵入することがなく、絶縁破壊が起こることがなく、安全に電場処理を行うことができる。また、基礎絶縁を施した電極板4を電場形成を行う庫内の壁面外側に設置すれば、電場形成を行う庫内の壁部材が付加絶縁を兼ねることになり、より低コストで同様の効果が得ることができる。
【0015】
実施の形態2.
次に、上記実施の形態1の電極ユニット1を実装した冷蔵庫について説明する。図5は、上記電極ユニット1を実装した冷蔵庫の一例であり、(a)冷蔵庫の正面図と(b)野菜室に電極ユニット1を搭載した場合の冷蔵庫の断面図である。図において、実施の形態1と同一の符号は同一とする。冷蔵庫10は、冷蔵室11、アイス室12、セレクト室13、野菜室14、冷凍室15の各室を有しており、野菜室14の庫内天面及び底面には、電極ユニット1a及び1bが配置されている。
なお、高圧電源2の設置場所は、結露や野菜室14内に保存される野菜16や他室で保存する発酵性食品などから発生する水分や硫黄系ガスなどの腐食性ガスに影響されないように樹脂モールド施して野菜室14内に設置しても良いが、冷蔵庫10の背面の制御基板上(図示せず)や圧縮機のある機械室(図示せず)などに設置するようにすれば、結露や野菜16や他室で保存する発酵性食品などから発生する水分や硫黄系ガスなどの腐食性ガスに影響を受けることがないため、このような信頼性が得られる場所に設置するようにすれば高価なモールドを施さなくてもすむ。
【0016】
このように構成された電極ユニットの動作について説明する。野菜室14の庫内天面及び底面に設置された1対の電極ユニット1a及び1bでは、制御部7からの信号に基づいて、高電圧がリード線3及び活線部5を介して、電極板4へ印加され、天面の上電極板4aと底面の下電極板4bとの間には電場が印加され、この上電極板4aと下電極板4bとの間に保存されている野菜16は電場処理を受ける。そして、電場処理された野菜16は電場印加に伴って、呼吸に影響を及ぼす酵素の活性が増加し、呼吸が抑制される。
【0017】
このようにして電場印加による呼吸抑制を行うことで、野菜16保有の栄養素の消費が減少するようになり、野菜室14内に保存される野菜16の鮮度が保持される。更に、野菜室14に野菜16を保存した状態で光合成を活性化する波長の光を照射することでビタミンCを増量することができる。
【0018】
ところで、冷蔵庫10の各室は、図5(b)に示すように、庫内入口をパッキンなどを介して、ドア17で閉じるようにして、庫内を密閉状態となるように設計されている。したがって、保存される野菜16などの青果物の蒸発作用により発生した水分で、野菜室14などの庫内は高湿度に保持されるようになる。このような高湿度の環境にて電極による電場処理を行うと、水滴が電極板4に付着してしまい、漏洩や短絡、ショートの原因となり、電場形成を行うことができなくなる。
そこで、本実施の形態では、高湿度となる野菜室14内でも確実に電場形成を行えるようにするために、実施の形態1に記したような高電圧印加部である電極板4と活線部5を絶縁物6により野菜室14の庫内と絶縁させる構造の電極ユニット1を用いているため、野菜室14内の湿気が電極ユニット1内部に侵入することがなく、高電圧印加部での絶縁破壊が発生することのない冷蔵庫を得ることができる。そしてさらに、野菜室14内に保存される野菜16から水滴がたれて、電極ユニット1bとの間に水が溜まるようなことがあっても、下電極板4bと活線部5の全外面が絶縁物6によって覆われているため漏洩や短絡、ショートの心配がなく、確実に電場処理を行うことができる。
【0019】
つまり、電極板4及び活線部5の全外面を絶縁物6で覆うようにしているため、冷蔵庫の各室庫内にどのような状態で設置されても、確実に絶縁状態を保持できるため、設置庫内の湿度に影響されずに電場処理を行うことができる。
【0020】
なお、電極板4による野菜16への電場処理は、制御部7により、例えば、野菜室14のドア17に連動したスイッチあるいは、別途設置したスイッチで開始し、連続または断続的に電場処理を行うよう制御したり、夜間のみ印加するように制御しても良い。
【0021】
また、高圧電源2からの出力は直流であっても、交流であってもよく、電圧的には野菜16の呼吸抑制効果、電源の大きさなどから判断すると10KV以下が好ましい。また、望ましい電場強度として、少なくとも0.05kV/cm以上を得るために、様々な部品ばらつきを考慮して、電極板4aと11b間の距離は約20〜40cmが望ましい。ここで、野菜16の呼吸抑制効果の一例を図6に示す。図6は、野菜室14に相当する温度として5℃設定としたデシケータ内の棚に、電極板4を上側が負電極で下側が正電極になるように設置し、正電極極側の電極板4の上面にキャベツを置き、電場強度0.54kV/cmの電場を約1時間キャベツに印加した後に、電源をオフして電場印加なしのままで3日間デシケータ内で保存したときのCO2濃度を示すものであり、3日後のデシケータ内のCO2濃度は、電場印加なしのときを100とした場合と比較すると、約75%の濃度にしか達しなかった。この結果からも電場印加により野菜の呼吸量が低減したことがわかる。
【0022】
なお、上述では、電極ユニット1を冷蔵庫10の野菜室14に搭載したもので説明したが、野菜室14以外の冷蔵室11、セレクト室13、冷凍室15などに電極ユニット1を設置することで、保存対象を野菜16以外の生鮮食品に拡大することもできる。冷蔵温度であれば、野菜や果物の呼吸抑制以外にも肉や魚の分解酵素活性を抑制して鮮度を保持することや、冷凍温度でも氷結晶の微細化や酵素活性抑制などにより質の良い冷凍ができることが考えられる。また、図5に示した野菜室14、セレクト室13、冷凍室15のドア17は引き戸だが、冷蔵庫本体10に設けられた軸を中心として回転開きするドアであってもよい。
【0023】
また、電極ユニット1a、1bの配置は、野菜室14の天面と底面に限定されるものでなく、前面と背面、左右の側面であってもかまわない。さらに、電極板4を対向させて配置せず、野菜室14の天面と背面のようにL字型になるように設置してもよい。この場合、野菜室14内庫内の正電極の電極板と負電極の電極板の電極間の距離に差が発生するので、野菜室14内の電場強度は場所によって異なってくる。そこで、電極同士が近接した場所すなわち電場強度が強い場所を野菜室14の手前にする。つまり、野菜室14の手前側は、ドア7の開閉時によって庫内温度が上がりやすく、野菜の呼吸量が増える可能性のある場所であるため、野菜室14の手前側を電場強度が強い場所とすることで、電場によるより大きな呼吸抑制作用が働くこととなり、野菜室14内のいずれの場所に野菜を置いても均一に呼吸を抑制することができる。
また、電極同士が近接するすなわち電場強度が強い場所を野菜室14の奥側にして、高品質な保存や長期間の保存を行うためのコーナーとしても良い。また、電場強度が強い場所にはアスパラガスやブロッコリーやカット野菜など呼吸量の多い野菜を保存し、電場強度が弱い場所にはキャベツやタマネギなど呼吸量の少ない野菜を保存するというコーナーとして、どの野菜にも均等な呼吸抑制効果が得られるようにしても良い。
【0024】
実施の形態3.
次に、図7は、電場処理を行う電極ユニットの他の実施の形態を説明する。なお、実装する冷蔵庫の構成は上記実施の形態2と同一であり、その説明は省略する。図7は、この発明を実施するための実施の形態3における冷蔵庫などに実装する電極ユニットを示す概略構成図である。図において、上記実施の形態1および2と同一のものは同一符号とし、その説明は省略する。電極ユニット21は、高圧電源(図示せず)に接続されたリード線3と、リード線3と電極板4との接続部である活線部5と、電極板4と活線部5とを覆う絶縁性を有する密封袋22とで構成される。
【0025】
本実施の形態3の電極ユニット21において、上記実施の形態1および2との相違点は、電極板4と活線部5の絶縁構造である密封袋22で、この密封袋22は、電極ユニット21を絶縁性を有する袋22に入れた後に、この袋22の口部をヒートシールで密封したり、接着剤で固着したりして形成する。さらに、パッキンなどを介してこの袋の口部を密封してもよい。また、密封袋22は、絶縁性を有するシートを貼り合わせて層をつくるラミネート加工によるものであってもよく、つまり、絶縁性を有するシートの端部を閉じて形成される袋であっても良い。この密封袋22の特徴は、絶縁性が高く、吸湿性がなく、機械強度が強いことであり、このような密封袋22で絶縁構造を形成することで、加工性が向上するとともに、上記実施の形態1および2と同様の効果を得ることができる。
【0026】
実施の形態4.
図8は、冷蔵庫などに実装する電場処理を行う電極ユニットのほかの実施の形態の概略構成図である。なお、実装する冷蔵庫の構成は、上記実施の形態2と同様であり、また図において、上記実施の形態1および2と同一のものは同一符号とし、その説明は省略する。電極ユニット31は、電極板4と活線部5の外面を絶縁性の樹脂32により隙間の無いように埋めたものである。
【0027】
このように構成された電極ユニット31を、高湿度の野菜室14に配設すると、高電圧印加部は絶縁性の樹脂32で覆われているため、野菜室14の湿気が電極ユニット31内部に浸入することはなく、高電圧印加部での絶縁破壊は発生せず、さらに、野菜16などから水滴がたれても安全に電場処理が行える。そして、絶縁構造である樹脂32は、例えば、シリコーン樹脂のような接着剤、充填剤などで形成され、吸湿性がなく、機械強度の強いものとなり、強度の優れた電極ユニットを得ることができる。
【0028】
実施の形態5.
図9は、冷蔵庫などに実装する電場処理を行う電極ユニットのほかの実施の形態の概略構成図である。なお、実装する冷蔵庫の構成は、上記実施の形態2と同様であり、また図において、上記実施の形態1および2と同一のものは同一符号とし、その説明は省略する。電極ユニット41は、電極板4、リード線3、活線部5を筐体A42、筐体B43の間に挿入し、筐体A42と筺体B43とをパッキン44を介して、締め付け、組み立てたものである。
【0029】
このように構成された電極ユニット41を高湿度の野菜室14に配設すると、高電圧印加部はパッキン44で密封した筐体A42とB43とで覆われているため、野菜室14の湿気が電極ユニット41内部に浸入することはなく、高電圧印加部での絶縁破壊は発生せず、さらに、野菜16などから水滴がたれても安全に電場処理が行えるものである。
【0030】
なお、パッキン44の代替として、絶縁性の接着剤などを用いて、筺体A42と筺体B43との接合部を密封してもよい。
【0031】
実施の形態6.
また、図10に示すように、上記実施の形態5の電極ユニット41の筺体A42と筺体B43の内部に吸湿剤45を設置するようにすれば、万が一、電極ユニット41内部に湿気が浸入しても、吸湿剤45の働きによって、電極ユニット41内部を常に低湿度状態に保つことができ、さらに、吸湿剤45と電極板4との間には、空間ギャップが存在するため、吸湿剤45の絶縁抵抗が吸湿にともなって低下したとしても、絶縁破壊は発生することがなく安全に電場処理を行うことができる。
【0032】
なお、吸湿剤45としては、無水塩化カルシウム、シリカゲルなどの一般的な乾燥剤で良く、性質として、吸湿能力が高く、即効性、能力持続性、安全性の高いものであれば良い。
【0033】
実施の形態7.
図11は、冷蔵庫などに実装する電場処理を行う電極ユニットの他の実施の形態の概略構成図である。なお、実装する冷蔵庫の構成は、上記実施の形態2と同様であり、また図において、上記実施の形態1および2と同一のものは同一符号とし、その説明は省略する。電極ユニット50は、電極板4、リード線3、活線部5を筐体A51、筐体B52の間に挿入するとともに、筐体B52に除湿膜53を取り付け、筐体A52と筺体B53とをパッキン54を介して組み立てたものである。
【0034】
このように構成された電極ユニット50を高湿度の野菜室14に配設すると、高電圧印加部はパッキン54で密封した筐体A51と筺体B52とで覆われているため、野菜室14の湿気が電極ユニット50内部に浸入することはない。たとえ湿気が浸入しても、除湿膜63を介して内部空間の湿気を外部に排気できるため、高電圧部での絶縁破壊は発生せず、安全に電場処理が行える。
【0035】
なお、除湿膜53としては、固体高分子電解膜と直流電圧との組み合わせたものなどが適しており、また他の手段を用いても良い。
【0036】
実施の形態8.
次に、電場処理を行う電極ユニットの他の実施の形態を説明する。図12は、この発明を実施するための実施の形態8における電極ユニット60を示す(a)概略構成図(b)概略断面図である。また、図13は前記電極ユニット60を実装した冷蔵庫の断面図である。図において、電極ユニット60は、導電性のある材料からなる正電極の電極板61aと負電極の電極板61bとが平面状に1対をなすように配置し、この電極板61aと61b全体を絶縁物62で覆うように形成する。そして、このようなに構成された電極ユニット60を、図13に示すように、野菜室14の庫内底面に配設する。
【0037】
この状態で、高圧電源2から高電圧が電極板61aと電極板61bとの間に印加されると、電極板61aから電極板61bに向かう電場が形成される。このようにして、庫内底面上に載置された野菜16は電場環境で保存されることになり、上記実施の形態1〜8と同様、野菜16の呼吸を抑制でき、野菜16の鮮度を保持することができる。
【0038】
したがって、野菜室14は高湿度であるが、高電圧印加部は絶縁物6で覆われているため、野菜室14の湿気が電極ユニット70内部に浸入することはない。そのため、絶縁破壊は発生せず、安全に電場処理を行うことができる。
【0039】
また、上記のような正電極と負電極の電極板を平面状に1対をなすように形成された電極ユニット60の場合、電極ユニットの設置が庫内の底面の一面のみで良くなるため、庫内のスペース的にも、電極ユニットの設置作業的にも有利である。さらに、電極板が平面的に設置されているため、実施の形態2の電極ユニットの印加電圧よりも低電圧で同一の電界強度を得ることができ、高圧電源のコストも安価なものとすることができる。
【0040】
また、電極ユニット60は、庫内の背面に設置するようにしても良く、庫内背面に設置するようにすることで冷蔵庫本体の制御基板からの電極ユニットの配線を短くすることができ、より低コストで実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態8のような電極ユニット60を用いると、庫内の底面に、例えばヒータなど電極ユニット以外の構造物が設けられるような場合でも、底面天面に電極ユニット60を設置することができるため、他の構造物によって電場処理構造が影響されることがなく、電場形成上の信頼性も向上させることができる。また、野菜室14の庫内の右または左いずれか一方の側面に電極ユニット60を設置した場合も同じく、風路など他の主要な構造物の配置に対し、お互いに影響を及ぼさず、設計が容易になる。
さらに、上記では、櫛形状の電極板4aと電極板4bとを交互に配置して平面状としたが、図14に示すように、電極板4aと電極板4bとを、例えば渦巻き形状にて平面状とすれば、正電極の電極板4aと負電極の電極板4bそれぞれの配線を一本の配線にて構成できるようになるので、作業工程を削除でき更なるコストダウンが見込める。このとき、絶縁物62は、基礎絶縁0.3mmと付加絶縁0.8mmまたは強化絶縁2.0mm以上を施しても良いが、基礎絶縁0.3mm電源が7〜12kVとした場合に、正電極となる配線と負電極となる配線の間の空間距離を40mm以上とるようにしてもよい。これにより、絶縁物62の付加絶縁分のコスト低減が図れる。
【0041】
また、本実施の形態8の電極構成の電極ユニットを野菜室14の複数面に配置して、より強力な効果を得るようにしてもよい。
【0042】
なお、本実施の形態8の電極ユニットでは、絶縁物62で電極板と活線部を覆うようにして絶縁を行っているが、上記実施の形態3〜7のような絶縁構造としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施の形態1における電極ユニットの概略構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における電極ユニットの上面図である。
【図3】この発明の実施の形態1における電極ユニットの上面図である。
【図4】この発明の実施の形態1における電極ユニットの上面図である。
【図5】(a)この発明の実施の形態2における電極ユニットを実装した冷蔵庫の正面図である。 (b)この発明の実施の形態2における電極ユニットを実装した冷蔵庫の断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2における野菜保存効果を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態3における電極ユニットの概略構成図である。
【図8】この発明の実施の形態4における電極ユニットの概略構成図である。
【図9】この発明の実施の形態5における電極ユニットの概略構成図である。
【図10】この発明の実施の形態6における電極ユニットの概略構成図である。
【図11】この発明の実施の形態7における電極ユニットの概略構成図である。
【図12】(a)この発明の実施の形態8における電極ユニットの概略構成図である。 (b)この発明の実施の形態8における電極ユニットの概略断面図である。
【図13】この発明の実施の形態8における電極ユニットを実装した冷蔵庫の断面図である。
【図14】この発明の実施の形態8における電極ユニットの上面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 電極ユニット、2 高圧電源、3 リード線、4 電極板、5 活線部、6 絶縁物、7 制御部、10 冷蔵庫、11 冷蔵室、12 アイス室、13 セレクト室、14 野菜室、15 冷凍室、16 野菜、17 ドア。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板に高電圧を発生する高圧電源と、前記高圧電源と前記電極板との接続部と、前記電極板へ電圧印加を制御する制御部とを有し電場処理を行うもので、冷蔵庫の野菜室内と前記電極および接続部とを絶縁状態に保持する絶縁構造を有する電極ユニットを備えたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記電極板は、前記冷蔵庫の野菜室の天面と底面または前面と背面または両側面いずれかの対向する壁面にそれぞれ配するようにした電極ユニットを備えたことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記電極板は、正極と負極の1対をなした電極を平面状に形成したものとし、前記庫内の底面に配するようにした電極ユニットを備えたことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記電極板と接続部を絶縁性を有する密封袋で封入したことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記電極板と接続部を絶縁性の樹脂で覆うようにしたことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記電極板と接続部を筐体で覆うとともに、前記筺体の勘合部はパッキンを介して組み立てることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記筐体の内部に吸湿剤を配したことを特徴とする請求項6記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記筐体の一部に除湿膜を配したことを特徴とする請求項6記載の冷蔵庫。
【請求項1】
電極板に高電圧を発生する高圧電源と、前記高圧電源と前記電極板との接続部と、前記電極板へ電圧印加を制御する制御部とを有し電場処理を行うもので、冷蔵庫の野菜室内と前記電極および接続部とを絶縁状態に保持する絶縁構造を有する電極ユニットを備えたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記電極板は、前記冷蔵庫の野菜室の天面と底面または前面と背面または両側面いずれかの対向する壁面にそれぞれ配するようにした電極ユニットを備えたことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記電極板は、正極と負極の1対をなした電極を平面状に形成したものとし、前記庫内の底面に配するようにした電極ユニットを備えたことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記電極板と接続部を絶縁性を有する密封袋で封入したことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記電極板と接続部を絶縁性の樹脂で覆うようにしたことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記電極板と接続部を筐体で覆うとともに、前記筺体の勘合部はパッキンを介して組み立てることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記筐体の内部に吸湿剤を配したことを特徴とする請求項6記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記筐体の一部に除湿膜を配したことを特徴とする請求項6記載の冷蔵庫。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−212046(P2007−212046A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32291(P2006−32291)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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