説明

冷蔵庫

【課題】紫外線照射手段を使用しなくとも、冷却運転モードに応じた冷蔵用冷却器への可視光の照射によって冷蔵空間内の脱臭、除菌を効果的におこない、消費電力の低減を可能にした冷蔵庫を提供する。
【解決手段】冷蔵空間(6)と冷凍空間(7)とを有し、前記冷蔵空間をフィンアンドチューブ型の冷蔵用冷却器(23)とファン(24)による冷気循環で所定温度に保持し、前記冷蔵用冷却器の幅方向に亙って隣接するように多数配置したフィン表面に可視光応答型の光触媒皮膜を施し、前記フィン表面を照射可能な位置に可視光光源(32)を設けるとともに、冷蔵空間の冷却運転に対応して可視光光源の照射、停止を制御するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用の冷蔵庫に関し、特に冷蔵貯蔵空間を専用に冷却する冷却器を設けた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷蔵庫の冷却器として一般に用いられるフィンアンドチューブ型の熱交換器は、アルミニウムで形成したフィン表面に耐食性処理を施すとともに、冷却運転時に空気中の水分が表面に霜となって付着し氷塊に成長することで冷却器の通風量が減少し冷却力を低下させることを抑制するために、フィン表面に親水化処理を施している。
【0003】
一方、冷蔵庫内の臭気を除去し、且つ清浄に保持するために脱臭機能や浮遊菌の除菌機能を備えたものが供されており、前記脱臭装置としては、活性炭、ゼオライトなどの吸着剤で臭い分子を吸着し除去する方法、オゾンと脱臭触媒との組み合わせで酸化分解する方法、白金などの貴金属触媒によって分解する方法、光触媒に紫外線を照射することによって分解する方法などが実用化されている。
【0004】
このうち、前記光触媒を用いる方法のひとつとして、高電圧放電による放電光(紫外光)と酸化チタンなどの光触媒とを組み合わせたユニットにより、臭気物質やエチレンなどの老化ホルモンを分解するとともに浮遊菌を除菌することで、貯蔵室内を快適、且つ清浄に保持して食材の鮮度低下を抑制する装置を搭載した冷蔵庫が販売されている。
【0005】
そして、特許文献1には、酸化チタンなどの常温酸化光触媒とイオン交換した特定の合成ゼオライトの吸着剤から構成される脱臭層に、自然光などの室内光を導入して熱交換器の表面に照射する構成が記載されているが、通常の冷蔵庫構成では冷蔵用冷却器への自然光の導入は困難であるとともに、一般的な酸化チタン触媒では、自然光による所定の脱臭性能、すなわち臭気物質の分解性能を得ることはできないものであり、その請求項5に記載のごとく、現実的には、エネルギーの高い紫外線の照射が必要となる。
【0006】
また、特許文献2には、冷蔵庫の冷却器におけるフィンに酸化チタンなどの光触媒を直接塗布し、冷却器の下部に設けた紫外線発生手段からの紫外線を前記光触媒に照射することで脱臭、除菌をおこなう技術思想が示されており、特許文献3には、自動製氷装置における給水タンクの内面に、可視光応答型の光触媒塗料を塗布することによって、紫外線照射手段を使用せずとも製氷用の水の浄化をおこない消費電力の低減をはかった冷蔵庫が記載されている。
【特許文献1】特許第3093953号公報
【特許文献2】特開2002−257461号公報
【特許文献3】特開2005−308283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上記特許文献1記載の構成による光触媒は、光源として400nm以下の紫外線領域が必要であり、この光触媒を励起するための放電灯である紫外線ランプ(ブラックライト)は、寿命が短く高価であってサイズ的にも大きすぎる問題がある。また、特許文献2は、前記特許文献1と同様に、光触媒を励起する紫外線発生手段が必要であり、新たに紫外線照射手段の追加設置が必要になることから、コスト高に繋がるとともに紫外線の照射時間が長くなると消費電力が大きくなり、省エネルギー化に逆行するばかりか食品への悪影響も懸念される。
【0008】
これに対して、特許文献3は、可視光応答型の光触媒塗料を使用することから紫外線照射手段を使用しなくても光触媒を励起させることができるものであるが、光触媒を塗布する対象は給水タンクであり、またこの給水タンクは光透過性材料を使用して、タンクの外方からの庫内灯の点灯により給水タンク内面の光触媒を励起して、給水タンク内の水を浄化するものであって、冷蔵空間に収納した多くの貯蔵食品から発生する臭気物質の脱臭や浮遊菌の除去を意図したものではない。
【0009】
本発明は上記点に着目してなされたものであり、紫外線照射手段を使用しなくとも、冷却運転モードに応じた冷蔵用冷却器への可視光の照射によって冷蔵空間内の脱臭、除菌を効果的におこない、消費電力の低減を可能にした冷蔵庫を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明の冷蔵庫は、冷蔵空間と冷凍空間とを有し、前記冷蔵空間をフィンアンドチューブ型の冷蔵用冷却器とファンによる冷気循環で所定温度に保持し、前記冷蔵用冷却器の幅方向に亙って隣接するように多数配置したフィン表面に可視光応答型の光触媒皮膜を施し、前記フィン表面を照射可能な位置に可視光光源を設けるとともに、冷蔵空間の冷却運転に対応して可視光光源の照射、停止を制御するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の冷蔵庫によれば、紫外線照射手段を設置せずとも冷蔵用冷却器へのタイミングのよい可視光の照射によって、小さいエネルギーで光触媒を励起して冷却器部を通過する貯蔵室内循環冷気の脱臭と除菌を効果的におこなうとともに、冷却器のフィン表面を親水化して付着する霜や融解水を平滑化することで光触媒作用を保持するとともに除霜効率を向上させ、フィン表面の水分の蒸発を促進することで冷蔵室内への冷気を高湿化し、食材の鮮度を長期に亙って保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の1実施形態につき図面を参照して説明する。図1に全体の縦断面図を示す冷蔵庫本体(1)は、外箱(2)と内箱(3)との間に発泡断熱材(4)を充填して断熱箱体を形成し、貯蔵室内部を断熱仕切壁(5)によって上部の冷蔵空間(6)と下部の冷凍空間(7)とに区画している。
【0013】
前記冷蔵空間(6)の前面開口部は観音開き式の左右の扉(8)によって閉塞するとともに、内部の上方部は複数段の載置棚(9)を設けた冷蔵室(10)とし、その下方を透明樹脂製の載置棚を兼ねたの天井仕切板(12)で仕切ることで独立空間を形成し、その内部に引き出し式の野菜容器(13)を配置することで野菜室(11)とし、さらに冷蔵空間(6)内の最下部には、同様に前記野菜室(11)の底面を形成する底面仕切板(14)を介して室内を0〜−3℃程度に冷却する低温容器を設けた低温室(15)を区画配設している。
【0014】
冷凍空間(7)については、前記断熱仕切壁(5)の直下に比較的小容積の冷却貯蔵室、例えば、−18℃や−9℃のソフト冷凍温度帯などの冷凍温度に冷却することができる温度切替室(16)と、図示しないが、同様に比較的小容積の自動製氷装置を備えた製氷室とを左右に区分し、各前面開口部に設けた扉とともに引き出し式で併置し、これら温度切替室(16)と製氷室の下部には、前面を横仕切板で上下に区画し、前記同様に引き出し扉式とした冷凍室(17)を本体の全幅に亙って設けている。
【0015】
冷凍室(17)は、その前面開口部を開閉自在に閉塞する扉(18)の内側に、左右一対の、図示しない支持枠を固着しており、この支持枠とともに冷凍室(17)内の両側壁面に前後方向に亙って配置したレール部材によって、冷凍食品を収納する収納容器(19)を保持し、前後に摺動可能な引き出し方式としている。
【0016】
収納容器(19)は、上面を開口した底の深い箱状をなしており、その上面開口の周縁にはフランジ部を形成し、このフランジ部を利用して前記開口をほとんど覆うように、比較的底の浅い皿状の中段容器(20)を載置している。
【0017】
そして、冷凍室扉(18)を引き出した際には、レール部材によって収納容器(19)とともに中段容器(20)の後端が冷凍室(17)の前面開口部より前方に出るまでフルオープン状態で大きく引き出されるものであり、中段容器(20)は収納容器(19)のフランジ部上を前後方向に摺動可能として収納容器(19)の上面開口を開閉し、また中段容器(20)自体の引き出し収納ができるように設けている。前記収納容器(19)および中段容器(20)の上方には、これら容器(19)(20)および冷凍室扉(18)の開閉とは関連なく、独立して引き出し、また庫内に収納される上段容器(21)を設置している。
【0018】
前記冷蔵室(6)の背面部には、カバー体(22)を介して冷蔵用冷却器(23)およびこの冷却器に対応するファン(24)を配設し、冷蔵用冷却器(23)で生成された冷気をファン(24)により、ダクトを介して冷蔵空間(6)内に導入し各室内を冷却するようにしている。
【0019】
前記冷蔵用冷却器(23)は、図2に示すように、直線部と曲線部とで蛇行状に形成した銅管からなる冷媒パイプ(25)を保持する端板(26)間に、前記冷媒パイプ(25)と熱交換関係にその長手方向の直線部に亙って多数のアルミニウム製の小片のフィン(27)を隣接して固着した、いわゆるフィンアンドチューブ型の熱交換器である。冷凍空間(7)を冷却する冷凍用冷却器(28)についても基本的構成は前記冷蔵用冷却器(23)と同様にフィンアンドチューブ型であり、これは冷凍室(17)の背面部に設置されており、上方に設置したファン(29)により冷気を冷凍空間(7)に吹き出して冷却する。
【0020】
前記冷蔵用および冷凍用冷却器(23)(28)は、冷蔵庫本体(1)の下部に設けた冷凍サイクルの一環をなす圧縮機(30)の吐出側からの冷媒を、凝縮器や毛細管を介して交互に導き冷却されるように制御されており、冷蔵空間(6)の冷却をおこなう冷蔵運転モードの際には、熱交換により低温化された冷気を冷蔵用のファン(24)の運転で冷蔵室(10)内に吐出することによって、冷蔵室(10)と野菜室(11)を適温に冷却する。また、冷蔵用冷却器(23)から冷気の一部を低温室(15)内に直接導入してこれを上部の冷蔵室(6)内より低温に冷却する。
【0021】
冷蔵室(10)が設定温度まで冷却されると、冷媒流路が切り替えられて冷凍運転モードになり、冷媒は切替弁により冷凍用冷却器(28)に導入されて−30℃以下の低い蒸発温度で蒸発し、熱交換により低温となった冷気を冷凍用のファン(29)で冷凍空間(7)である冷凍室(17)や温度切替室(16)などに導入し、強制循環させることによって各室を−20℃以下の所定温度になるように冷却するものであり、この冷蔵運転モードと冷凍運転モードとを交互に運転するように制御されている。
【0022】
したがって、冷凍運転モードに切り替わった際には、冷蔵用冷却器(23)に冷媒は流れないが、冷蔵用のファン(24)はその回転を切り替わり時点から所定時間、例えば、40分程度継続させるようにしており、冷却運転後で着霜状態にあることからその表面温度が−3℃程度である冷蔵用冷却器(23)に、0℃以上である冷蔵空間(6)内の空気を流し、循環させることによって冷蔵用冷却器(23)に付着している霜を融かし、同時に霜の融解による水分を多く含んだ高湿低温の冷気を冷蔵室(10)から野菜室(11)内に流入させて室内の湿度を高くする加湿運転をおこなうようにしている。
【0023】
前記加湿運転が終了しても冷蔵室(10)の温度が設定された上限温度以上に上昇しない場合は冷蔵用のファン(24)も停止させる運転停止の状態になるが、この運転制御により、冷蔵空間(6)は、冷却運転停止後も温度上昇が抑制されて比較的低温度の雰囲気に冷却保持されるとともに、霜の昇華による加湿冷気が流入することで、冷蔵室(10)および野菜室(11)内の湿度は80%程度まで高くなるものであり、さらに収納されている野菜の蒸散作用によって湿度は90〜95%まで上昇することから、野菜容器(13)内の野菜が乾燥しない雰囲気を保持することができる。
【0024】
しかして、前記冷蔵用冷却器(23)の幅方向に亙ってそれぞれ隣接するように多数配置したフィン(27)の表面には、従来電食を防ぐための皮膜を設けているが、本発明においては、図3の概念図に示すように、さらにその表面に可視光応答型の光触媒皮膜(31)を形成している。
【0025】
前記可視光応答型の光触媒とは、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステンおよび炭化珪素からなる群より選択される少なくとも一種類に、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群より選択される少なくとも一種類の不純物元素をドーパントとして加えたものや、光触媒粒子の表面にハロゲン化白金化合物を含有させて光触媒としたものであって、1〜360nmである紫外線の波長で触媒活性を示す通常の光触媒、例えば、最も一般的な光触媒である酸化チタンは270nmの紫外線で活性化するのに対して、それより低エネルギーの360〜760nmの可視光量域の光でも活性化する光触媒であり、例えば、窒素ドープによる酸化チタン可視光応答型光触媒や、白金担持酸化チタンなどが知られている。
【0026】
また、臭気物質や浮遊菌との接触効率を上げ、反応の場を提供するため、適切な接着剤、例えば、ゼオライトとの併用が可能であり、これらは、冷蔵用冷却器(23)の冷媒パイプ(25)およびフィン(27)の表裏全面に亙って被覆されているものであって、後述する光源からの可視光の照射で活性化するものである。
【0027】
図4に示すように、前記冷蔵用冷却器(23)に多数配置したフィン(27)の上方には、前記フィン(27)の隣接する長手方向に沿って複数の可視光光源、例えば、6個の青色の発光ダイオード(以下、LEDという。)(32)を支持部材(33)により設置し、それぞれの照射方向をフィン(27)間に指向させるように配置することで、点灯した場合には、隣接するフィン(27)間に可視光が進入して冷蔵用冷却器(23)を全体に亙って広く照射できるようにしている。
【0028】
このとき、前記各LED(32)を、フィン(27)間を照射するように指向させるとともに、正面図である図5や側面図の図6に示すように、それぞれを相互に異なる照射角度を設けて取り付けるようにすれば、照射範囲を広くすることができ、光触媒を励起する充分な光量を確保してフィン(27)の表面を広くむらなく照射することができる。
【0029】
また、前記LED(32)は、特に図示しないが、冷蔵用冷却器(23)の上下方向のほぼ中央部に位置するフィン(27)の上下間隔を幅方向に亙って少し拡げ、この拡開部に沿う前面側にフィン端部から所定間隔を有して複数配設し、その照射方向を上下のフィン(27)間の相互に異なる方向に指向させ、且つ幅方向の照射角度を適宜変えるようにしてもよい。
【0030】
そしてまた、前記LED(32)の配設位置としては、前述のそれぞれの配置例のように、照射方向を冷蔵用冷却器(23)のフィン(27)間に指向させるとともに、モーターやプーリー、ベルトなどによる摺動装置によって、前記フィン(27)の隣接方向に沿って往復移動させるように構成し、照射しながら所定速度で移動させるようにしてもよい。このように構成すれば、少ないLED(32)の個数であってもフィン(27)への照射距離を短くして照射する光量をより多く確保することができ、フィン表面への照射効率を向上して、光触媒機能を充分に引き出すことができる。
【0031】
前記冷蔵用冷却器(23)は、冷蔵室(10)、野菜室(11)、低温室(15)からなる冷蔵空間(6)を循環して導入した冷気をフィン(27)間を通過させることで冷却し、再びファン(24)によって冷蔵室(10)に吹き出すことで室内の冷却作用をおこなうが、−18℃以下の冷凍温度に冷却され、臭気や浮遊菌の発生が抑制される低温空気が循環する冷凍用冷却器(28)とは異なり、概ね0℃以上のプラス温度に保持される冷蔵空間(6)においては、室内に貯蔵された食品などの臭気物質や浮遊菌の量が多くなるものである。
【0032】
これに対し、上記構成によるLED(32)の可視光照射によって、フィン(27)表面に担持された可視光応答型光触媒(31)は励起され、循環冷気に含まれる脱臭すべき臭気物質や除菌すべき浮遊菌は必然的に冷蔵用冷却器のフィン(27)部分を通過することから、大きな表面積を有するフィン(27)に被覆された光触媒作用によってこれらを効果的に分解除去し、冷蔵空間(6)内を脱臭し、また除菌機能を作用させて衛生的環境を保持することができる。
【0033】
光触媒による脱臭、除菌効果は上記のとおりであるが、光触媒の別の機能として、被膜を施した表面の親水化がある。すなわち、前記LED(32)の照射による可視光応答型光触媒の励起によって、光触媒被膜(31)が施された冷蔵用冷却器(23)のフィン(27)は、循環冷気と接触して脱臭、除菌作用をおこなうのみでなく、その表面は親水化されることになる。
【0034】
冷蔵運転モードでの冷却運転により、前記冷蔵用冷却器(23)のフィン(27)表面が着霜あるいは氷結すると光が透過しないため光触媒効果は低下するが、前記親水化により、フィン(27)の表面は濡れやすくなり、フィン(27)に付着する循環冷気中の水分が滴状化することを抑制する。そして、着霜しても平滑な薄い膜状となるため、冷蔵用冷却器(23)の冷却運転が終了した場合には、温度上昇によりすみやかに着霜状態や氷結状態は融解し除去されるので、可視光による光触媒作用を効果的に再び実行することができる。
【0035】
また、霜は、前記フィン(27)表面の親水化によって薄膜状に付着することから、冷却運転終了時のファン(24)の運転による温度上昇ですみやかに融解して液膜状になる。そして、融解した水分は循環冷気に含まれて冷蔵室(10)内に戻ることになり、冷蔵空間(6)内の高湿度化に寄与させることができる。
【0036】
したがって、前記可視光応答型光触媒とすることで、高価で寿命が短い紫外線ランプを使用せずに、一般的な可視光光源、例えば、上記のように、小型で安価、且つ長寿命で消費電力量の少ない可視光LED(32)を使用することができ、これを冷蔵用冷却器(23)のフィン(27)近傍に配設して照射することで、フィン(27)の表面に被覆した光触媒皮膜(31)を励起し、効果的な脱臭、除菌作用を得ることができる。
【0037】
LED(32)としては、一般的な砲弾型、あるいは表面実装型のいずれも使用可能であり、循環風路に対して冷気流通を阻害しない形状や配設構造にするとよい。
【0038】
前記可視光光源であるLED(32)の照射制御は以下のようにおこなう。すなわち、前記冷蔵空間の運転モードとLED(32)のオンオフとの関係を示す図7のタイミングチャートから理解されるように、冷蔵用冷却器(23)による冷却運転中はLED(32)の照射は停止するように制御する。より詳細には、冷蔵運転モードでの冷却運転を開始して所定時間が経過した際にはLED(32)の照射を停止し、冷却運転が停止した時点でファン(24)の駆動のみによる加湿運転が開始した段階で照射を開始するように制御するものである。前記LED(32)の照射は、加湿運転中および運転停止中に亙っておこない、再び冷却運転が開始して所定の時間が経過した時点で停止する。
【0039】
上記により、加湿運転、あるいは運転停止中にLED(32)を点灯し、冷蔵用冷却器(23)のフィン(27)表面の光触媒皮膜(31)を照射することによって、冷蔵用冷却器(23)を通過する循環空気に含まれる臭気物質や浮遊菌を脱臭、除菌するものであり、その後、冷却運転が開始され冷蔵用冷却器(23)表面は低温化していく。
【0040】
前記冷却運転の開始当初には、冷却器のフィン(27)表面が低温化により結露状態となるが、この段階では、光触媒表面に可視光が到達するので光触媒を励起させることができ、脱臭、除菌作用がおこなわれる。同時に、親水化によりフィン(27)表面の結露を平滑にして液膜状にし、可視光の到達を助長するとともに、冷却時にフィン(27)表面に粒状の氷結を発生させないようにする。
【0041】
そして、2〜7分に設定した所定時間(t)が経過するとフィン(27)表面に着霜や氷結が生じることで可視光が光触媒皮膜(31)に到達できず、光触媒の励起作用が減少するため、この時点でLED(32)の照射を停止するように制御するものである。
【0042】
次いで、冷却運転が進み冷蔵空間(6)が所定温度まで冷却されたときには、冷凍運転モードとなって冷蔵用冷却器(23)への冷媒供給が停止され、冷蔵用のファン(24)の回転のみを継続させて冷蔵用冷却器(23)の除霜とその水分を冷蔵空間(6)内への流入させる空気循環による加湿運転を、例えば、40分程度おこなうが、このとき、フィン(27)の表面は、前述した親水化作用により、着霜や氷結の粒状化が抑制されているので、その融解も平準化され、すみやかに除霜作用を進行することができる。
【0043】
LED(32)は、前記加湿運転の開始に同期して点灯するように制御されており、フィン(27)表面に設けた可視光応答型光触媒被膜(31)への可視光の照射により、霜が融解し始めた時点から徐々に光触媒を励起させ、冷蔵用冷却器(23)部を通過する冷蔵空間(6)内の臭気物質や浮遊菌を吸着し分解除去する。
【0044】
LED(32)の照射は加湿運転後の運転停止中も継続させるものであり、前記運転停止中には、脱臭、除菌作用とともに、親水化により除霜後のフィン(27)表面の水滴を平滑化して薄い液膜状態、あるいはほぼ乾燥した状態にするので、光触媒皮膜(31)への光の透過を最大限にできる。したがって、上記のように、有効なタイミングで集中して照射することができるため、効率的な光触媒作用により省電力をはかることができる。
【0045】
その後、冷蔵空間(6)の温度が所定の上限温度まで上昇すればこれを検知して冷凍サイクルが駆動し、冷媒を冷蔵用冷却器(23)に供給する冷蔵運転モードとなったときには、冷却運転を開始した所定時間(t)後にLED(32)の照射を消勢するものである。
【0046】
なお、上記実施例においては、加湿運転の開始と同時にLED(32)を照射するようにしたが、図8のように、加湿運転を開始した後の所定時間(t´)が経過した時点でLED(32)を点灯し照射するようにしてもよい。
【0047】
すなわち、加湿運転の当初は、未だフィン(27)表面の霜が融解しておらず、LED(32)の可視光は光触媒皮膜(31)に到達しないので、光触媒作用を発揮できないことから、これを有効におこなうために、加湿運転を開始した後、ファン(24)の回転によってプラス温度の冷蔵空間(6)の空気が冷蔵用冷却器(23)を通って循環し、熱交換作用によりフィン(27)表面の霜が融けて液膜状となる所定時間、例えば、2〜10分後にLED(32)を点灯させ、可視光を照射するものであり、この方法により、さらに効率的に光触媒を励起させることができる。
【0048】
また、光触媒の光応答性はそれほど速くないことから、上記照射時間におけるLED(32)は、点灯と停止を短時間に繰り返す断続照射とすることで、より一層の省電力をはかることができる。前記点灯と停止のインターバルとしては、数10秒から1分間程度が適当である。
【0049】
そしてまた、前記LED(32)は、ユーザーが冷蔵庫を購入した後の運転開始当初、あるいは冷却運転停止後の再起動時には、前記冷蔵あるいは冷凍運転モードにかかわらず、冷却運転に同期して所定時間に亙り連続照射させるようにしてもよい。
【0050】
すなわち、前記における冷蔵庫の運転前の段階では、基本的に閉扉状態であることから光触媒に対して可視光が照射されることはなく、長期あるいは長時間に亙って脱臭や除菌作用はおこなわれていないとともに、その状態から冷却運転が開始されても、冷却運転中はLED(32)が点灯されないことから、運転当初は光触媒効果を得ることができないものである。したがって、運転モードにかかわらず、冷却運転を開始する当初は、LED(32)を所定時間、例えば、数時間から1日程度連続して点灯させることで光触媒効果を発現させるものであり、この制御によって、停止中に滞留している臭気物質や雑菌を早期の段階で集中的に分解除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の1実施形態を示す冷蔵庫の縦断面図である。
【図2】図1における冷蔵用冷却器の斜視図である。
【図3】図2におけるフィン部分の拡大断面図である。
【図4】図1の冷蔵用冷却器にLED光源を設けた斜視図である。
【図5】図4のフィンに対するLEDの照射状態の例を示す拡大正面図である。
【図6】図5に対してLED照射状態の他の例を示す拡大側面図である。
【図7】本発明の運転モードとLEDの点灯/停止とのタイミングを示すチャート図である。
【図8】図7の変形例を示すタイミングチャート図である。
【符号の説明】
【0052】
1 冷蔵庫本体 6 冷蔵空間 7 冷凍空間
10 冷蔵室 11 野菜室 13 野菜容器
15 低温室 16 温度切替室 17 冷凍室
23 冷蔵用冷却器 24、29 ファン 25 冷媒パイプ
26 端板 27 フィン 28 冷凍用冷却器
31 可視光応答型光触媒被膜 32 発光ダイオード(LED)
33 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵空間と冷凍空間とを有し、前記冷蔵空間をフィンアンドチューブ型の冷蔵用冷却器とファンによる冷気循環で所定温度に保持し、前記冷蔵用冷却器の幅方向に亙って隣接するように多数配置したフィン表面に可視光応答型の光触媒皮膜を施し、前記フィン表面を照射可能な位置に可視光光源を設けるとともに、冷蔵空間の冷却運転に対応して可視光光源の照射、停止を制御するようにしたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
可視光光源をフィンの隣接方向に沿わせるとともに前記フィンの端部から所定長離間して配置した複数の発光ダイオードとし、照射方向をフィン間に指向させたことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
冷蔵空間の冷却動作は、冷蔵用冷却器による冷却運転、冷却停止時のファン駆動による加湿運転、運転停止の運転モードを有し、可視光光源は、少なくとも前記加湿運転および運転停止時に照射するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の冷蔵庫。
【請求項4】
冷却運転を開始して所定時間経過した際に可視光光源の照射を停止し、冷却運転が終了した時点で可視光光源の照射を開始するようにしたことを特徴とする請求項3記載の冷蔵庫。
【請求項5】
冷却運転を開始して所定時間経過した際に可視光光源の照射を停止し、加湿運転を開始してから所定時間後に可視光光源の照射を開始するようにしたことを特徴とする請求項3記載の冷蔵庫。
【請求項6】
運転開始当初あるいは運転停止後の再起動時には、運転モードにかかわらず可視光光源を所定時間連続して照射することを特徴とする請求項3記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−127978(P2009−127978A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305880(P2007−305880)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】