説明

冷蔵庫

【課題】限られた設置スペースに効率的に基板を配置して、且つ誤操作を防止することができる操作部を備えた冷蔵庫を得ることを目的とする。
【解決手段】冷蔵庫本体に設けられた貯蔵室と、該貯蔵室の開口を開閉する貯蔵室扉と、該貯蔵室扉の前面に設けられた扉前面部材と、該扉前面部材に接触又は近接して設けられ静電容量の変化を検知する操作スイッチと、を備え、前記操作スイッチは複数配列され、両端に位置する該操作スイッチの周囲にL字状の誤操作防止用電極が夫々配置されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷蔵庫として、扉正面部に操作部(例えば押しボタン等)を備え、該操作部を操作することにより、貯蔵室温度の調整や、急冷凍,急冷蔵,自動製氷装置等の諸機能を動作させる構成が知られている。また、上記操作部として、マイクロスイッチ等のメカ式スイッチが知られている。
【0003】
さらに近年の家電製品では、静電容量式のタッチセンサを用いたものが知られている。タッチセンサの一例としては、特許文献1に記載のものがある。
【0004】
特許文献1に記載の構成は、使用者の意図しない操作を回避するために、通常操作用スイッチとしての電極の近傍に、ダミーの誤操作防止用電極を設け、通常操作用電極同士もしくは、通常操作用電極と誤操作防止用電極の同時接触時には、スイッチ反応させないものである。また、誤操作防止用電極を線形の形状として、通常操作電極の周囲を囲む構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−111996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冷蔵庫前面に設置された操作パネルに、タッチセンサを備えた場合、清掃時等にスイッチを誤って触れて意図しない操作を行ってしまうおそれがある。
【0007】
また、冷蔵庫前面の操作パネルは、機能とデザイン性とを両立させる必要がある。基板設置面積を充分に広く確保できる場合は、誤操作防止用電極を他の通常操作用電極と同形状とし、回路定数の設定もほぼ同様にすることができる。
【0008】
しかしながら、冷蔵庫扉の内部には断熱材が充填される。そのため、基板設置面積は制限され、誤操作防止用の電極を設置するスペースを確保することは困難となる、という課題があった。
【0009】
さらに、特許文献1に記載のように、誤操作防止用電極の形状を小さくすると、回路定数を通常操作用電極と比較して大きく変更する必要がある。すなわち、誤操作防止用電極と通常操作用電極の面積に大きな差があり、両者に同様の感度を持たせる事が難しく、それぞれ、回路定数の選定を行う必要がある、という課題があった。
【0010】
また、通常操作用電極の間隔が広いと、両端に誤操作防止用電極を設けても、電極の間隔よりも幅の狭いもので接触された場合、複数電極の同時押しとならないため、誤操作を回避できない、という課題があった。
【0011】
上記課題に鑑みて、本発明は、限られた設置スペースに効率的に基板を配置して、且つ誤操作を防止することができる操作部を備えた冷蔵庫を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、冷蔵庫本体に設けられた貯蔵室と、該貯蔵室の開口を開閉する貯蔵室扉と、該貯蔵室扉の前面に設けられた扉前面部材と、該扉前面部材に接触又は近接して設けられ静電容量の変化を検知する操作スイッチと、を備え、前記操作スイッチは複数配列され、両端に位置する該操作スイッチの周囲にL字状の誤操作防止用電極が夫々配置されたことを特徴とする。
【0013】
また、前記誤操作防止用電極は前記操作スイッチと異なる形状で且つ面積が等しくなるように設けられたことを特徴とする。
【0014】
また、前記操作スイッチは8mm以下の間隔で隣り合うように設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、限られた設置スペースに効率的に基板を配置して、且つ誤操作を防止することができる操作部を備えた冷蔵庫を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷蔵庫の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態における冷蔵庫の表示部の構成図である。
【図3】図2の表示部の詳細図である。
【図4】図2の基板部の詳細図である。
【図5】図1のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る冷蔵庫の正面図である。図1において、20は冷蔵庫本体である。冷蔵庫本体20は、上から順に冷蔵室22,下段冷凍室25,野菜室26等を有している。冷蔵室22と下段冷凍室25との間には、上段冷凍室24が設けられて、上段冷凍室24の隣に製氷室23が設けられている。
【0019】
また、各貯蔵室の前方開口には、該前方開口を開閉する扉が設けられている。すなわち、冷蔵室22の前方開口には、左冷蔵室扉22a及び右冷蔵室扉22bが設けられ、上段冷凍室24,下段冷凍室25,製氷室23及び野菜室26の夫々の前方開口には、上段冷凍室扉24a,下段冷凍室扉25a,製氷室扉23a及び野菜室扉26aが夫々設けられている。
【0020】
左冷蔵室扉22a及び右冷蔵室扉22bは、夫々冷蔵庫本体20の上部に設けられた上ヒンジ3(左ヒンジ3a,右ヒンジ3b)等によって、回転自在に軸支されている。すなわち、左右開き式に構成された、フレンチドアを構成している。
【0021】
また、下段冷凍室扉25a,上段凍室扉24a,製氷室扉23a及び野菜室扉25aは、夫々引き出し式の扉であって、夫々の貯蔵室の容器とともに引き出し自在である。
【0022】
そして、左冷蔵室扉22a及び右冷蔵室扉22b,下段冷凍室扉25a,上段凍室扉24a,製氷室扉23a並びに野菜室扉26aは、その外表面に扉前面部材6を備えている。扉前面部材6としては、透明度のあるガラス板6aを設ける。
【0023】
発泡断熱材(図示なし)は、ガラス板6aから成る扉前面部材6と扉後面部材(図示なし)との間に充填発泡される。扉前面部材6であるガラス板6aの板厚は、本実施例では2mmから3.5mmである。この板厚は、冷蔵庫組み立て時,冷蔵庫移送時、及び冷蔵庫使用時等に生じる衝撃によってガラス板6aが割れたり、亀裂が生じたりしない寸法である。
【0024】
また、さらに強度を確保する場合や板厚を薄くする場合等には、ガラス板6aに熱強化処理や化学強化処理等を施してもよい。なお、ガラス板6aは絶縁体である。
【0025】
次に、図1から図3において、10は表示部、11は操作部である。操作部11は、使用者が外部から操作することで、冷蔵室22及び下段冷凍室25等の各貯蔵室の室温を設定したり、冷蔵室22や上段冷凍室24を急速に冷却したり、製氷室23での製氷の大きさを設定したりする。また、冷蔵室22に設けられ、貯蔵空間を減圧或いは低酸素状態にして、貯蔵食品の鮮度維持や酸化劣化の抑制を図る貯蔵室(図示なし)の温度を調節したり、減圧或いは低酸素化の機能を切るように設定したりする。すなわち、操作部11を使用者が操作することで、冷蔵庫の諸機能の設定ができる。
【0026】
また、表示部10は、操作部11からの入力結果を冷蔵庫本体20の外部に表示する。これにより、使用者が操作部11で行った操作を確認したり、先に設定されている諸機能の状態を確認したりすることができる。
【0027】
操作部11及び表示部10は、特別なパネルを取り付けたものではなく、ガラス板6aに設けられている。すなわち、左冷蔵室扉22aに設けられたガラス板6aは、操作部11及び表示部10を含めて、該左冷蔵室扉22aの外表面全体に亘って平面になるように設けられている。
【0028】
換言すると、操作部11及び表示部10は、ガラス板6aである扉前面部材6に面状に設けられている。このため、従来の操作パネルは省略されている。
【0029】
また、ガラス板6aの裏面は、表示部10を除き、有色塗料が塗布されている。これにより、発泡断熱材が正面側より見えないように処理されて、かつ表示部10は明確に視認されるので、外観性の優れた扉を構成している。
【0030】
次に、図2及び図3を参照しながら、操作部9及び表示部10についてさらに詳細に説明する。
【0031】
図2及び図3において、操作部11に対応する文字部分(冷凍,冷蔵,製氷,急冷、及び真空チルドの各文字)の表示は、ガラス板6aの裏面に直接印刷等により表わされたものである。操作部11は、当該文字部分が印刷された裏面に対向する位置の前面(扉前面部材6であるガラス板6aの前面)のことを称する。なお、ガラス板6aの裏面に操作用表示(上記文字部分)を設ける手段としては、印刷の他、エッチングや象眼等が挙げられる。
【0032】
また、図3において、表示部10は、上述の操作部11の操作による入力に伴い、諸機能の設定状態を示すものである。そして、この文字表示(「強(低温),中,弱」,「強(チルド),中,弱」,「大きめ,標準,停止」,「急冷蔵,急冷凍」,「真空氷温,真空チルド,切(氷温)」)は、シート12表面に印刷等で表わされている。
【0033】
シート12は、扉前面部材6であるガラス板6aの裏面に、密着或いは隙間がごく僅かとなるよう取り付けられている。そのため、ガラス板6aを透過して、左冷蔵室扉22aの正面から、明確にその文字表示を確認することができる。すなわち、視認性が高く、かつ平面なガラス板6aで外表面が構成された、外観性の優れた扉を構成している。
【0034】
また、操作部11及び表示部10は、図2又は図3に示す如く、上下に併設して設けられている。表示部10には、冷蔵庫本体20の持つ機能として、急冷蔵や急冷凍が動作中である旨等が表示されるよう構成されている。
【0035】
更に、図4に示すように、表示部10の文字表示は、基板部13に設けられたLED15(発光ダイオード)等により照明されて、ガラス板6a前面まで投光して、浮き上がって見えるように構成されている。
【0036】
また、基板部13においては、操作部11の操作を行うための操作スイッチ14と、操作スイッチ14の入力やLED15の出力を制御するための制御部16が設けられている。
【0037】
本実施例において、操作スイッチ14は、基板部13のプリント基板の銅箔パターンをタッチパッド電極とし、静電容量の変化を検出・センシングする静電容量式のタッチセンサを用いる。
【0038】
基板部13の操作スイッチ14(タッチパッド電極によるタッチセンサ)と、シート12の操作部11は、前後方向に重なり合うように、且つ、扉前面部材6と接触或いは近接して配設される。換言すると、操作部11は、左冷蔵室扉22aへの組み込み時に扉前面部材6の裏面に接触或いは近接する。すなわち、絶縁体であるガラス板6a,シート12及び基板部13は、操作部11が表側に操作スイッチ14が裏側に重なるように設けられる。この構成で、ガラス板6aを介して操作部11を使用者が操作すると、操作スイッチ14により、制御部16で検出している静電容量が安定時と比較して変化する。この変化を検出することで、スイッチ操作が行われたことを認識する。
【0039】
表示部10は、冷蔵庫本体20前面の扉前面部材6に設置されている。扉前面部材6は、清掃性を考慮して平坦なガラス板6aとしており、基板部13は、ガラス板6aの内側に、操作スイッチ14の機能を示すシート12を介して、ケース29内に設置される(図5参照)。これにより、扉前面が平坦で外観上優れた操作パネルの機能を有している。基板部13は、ガラス板6a表面から操作部11を間接的に接触することにより操作する。
【0040】
基板部13には、矩形の通常電極である操作スイッチ14が複数個設けられている。操作スイッチ5は同様の形状を有しており、20mm以下、好ましくは8mm以下の等間隔で配置されている。また、操作スイッチ14の配置に合わせて、シート12に操作部11が設けられている。
【0041】
また、基板部13上には、操作スイッチ14の入力結果を示すLED15,操作スイッチ14の入力結果を音で報知する報知手段であるブザー28,各部品を制御するためのマイコンである制御手段16,基板部13に電源を供給するためのコネクタ27等を備えている。
【0042】
また、LED15,ブザー28,制御手段16を動作させるための抵抗やキャパシタ等は、基板部13に配置されている。特に、図4における基板部13の左部分に集約されており、横方向のスペースが限られている。
【0043】
そこで、誤操作防止用電極14aは、左右両端に配置された操作スイッチ14に夫々隣接して設置されている。誤操作防止用電極14aは、四角形状の操作スイッチ14の外周二辺に亘ってL字状に配置されている。
【0044】
具体的に、左端の操作スイッチ14の下辺と左辺,右端の操作スイッチ14の上辺と右辺を、それぞれ囲むように誤操作防止用電極14aが配置されている。すなわち、誤操作防止用電極14aはそれぞれL字に折れ曲がった形状をとっており、通常操作用電極である操作スイッチ14の4辺の半分を囲むように設置されている。これにより、通常操作用電極である操作スイッチ14と同じ面積が確保され、また、横方向からの意図しない接触に加え、上下方向からの誤操作も防止することができる。
【0045】
また、誤操作防止用電極14aが隣接した左右両端の操作スイッチ14以外では、配置間隔が20mm以下、好ましくは平均的な人の指の幅よりも狭い8mm以下である。そのため、拭き掃除などの際に、電極間を指で接触した場合でも、電極を2つ以上接触する事になるため、誤操作を防止できる。
【0046】
以上のように、限られたスペース内に誤操作防止用電極14aを設置し、更に、通常操作用電極の近傍に該通常操作用電極と同様の面積を確保して、同様の感度を持たせて配置したものである。
【0047】
また、誤操作防止用電極14aの連続したパターンが、通常操作用電極である操作スイッチ14の上下方向と左右方向の2方向に跨って配置したものである。これにより、上下左右両方向からの誤操作を防止することができる。
【0048】
また、誤操作防止用電極14aを隣に配置しない操作スイッチ14の配置間隔を、20mm以下、好ましくは一般的な人の指の幅である8mm以下とする。これにより、清掃時等に誤って指で電極間を触れた場合でも、複数の操作スイッチ14に入力がされて、誤操作を防止することができる。
【0049】
また、誤操作防止用電極14aが、通常操作用電極である操作スイッチ14の形状と異なるが、設置スペースに余裕のある部分の形状、及び誤操作の態様を考慮して、操作スイッチ14の外周にL字状に且つ面積を等しく配置している。このため、回路定数を誤操作防止用電極14aと通常操作用電極である操作スイッチ14とで大きく変更する必要がなく、回路定数の選定を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
6 扉前面部材
10 表示部
13 基板部
14 操作スイッチ(通常操作電極)
14a 誤操作防止用電極
20 冷蔵庫本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵庫本体に設けられた貯蔵室と、
該貯蔵室の開口を開閉する貯蔵室扉と、
該貯蔵室扉の前面に設けられた扉前面部材と、
該扉前面部材に接触又は近接して設けられ静電容量の変化を検知する操作スイッチと、を備え、
前記操作スイッチは複数配列され、両端に位置する該操作スイッチの周囲にL字状の誤操作防止用電極が夫々配置されたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記誤操作防止用電極は前記操作スイッチと異なる形状で且つ面積が等しくなるように設けられたことを特徴とする、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記操作スイッチは8mm以下の間隔で隣り合うように設けられたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−58696(P2011−58696A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207657(P2009−207657)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】