説明

冷蔵庫

【課題】温度変動及び温度むらを良好に緩和することができるうえ、結露を速やかに除去できるとともに、冷却効率が高い貯蔵空間を有する冷蔵庫を提供する。
【解決手段】食品を収容する貯蔵空間と、前記貯蔵空間の上を手前から奥に向かって冷気を流す流路と、前記貯蔵空間と前記流路とを仕切る、手前が最頂部となり奥に向かって傾斜するように配置された奥行き方向に長尺な凹凸が形成された板状体と、前記流路に冷気を供給する冷却部と、前記板状体の前記貯蔵空間に対向する面上を手前から奥に向かって流れた結露を回収し排出するドレインと、を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜や果物、肉や魚等の生鮮食品を最適な状態で、鮮度良く保存するためには、氷温温度帯(0〜−3℃)で保存することが必要である。このため、従来、生鮮食品を氷温温度帯(0〜−3℃)で保存するための氷温室を備えた冷蔵庫が知られている。
【0003】
しかし、氷温温度帯は、食品中の氷結晶が成長するとされる最大氷結晶生成帯でもあるため、この氷温温度帯において温度変動が大きいと、食品が凍結・解凍を繰り返すことになり、食品は貯蔵中に氷結晶が再結晶化する等の影響により、細胞に損傷が与えられる。そのため、食品から水分が減少する、又は、ドリップが流出し旨味成分が減少する等の問題が発生する。
【0004】
よって、氷温室では通常の冷蔵室及び冷凍室よりも精密な温度制御が要求され、温度分布の変動幅は±0.5℃以内であることが望ましい。
【0005】
しかし、従来の冷蔵庫では、冷気は、冷蔵庫の奥側(扉の反対側)から供給されるため、扉の開閉により庫内の温度が上昇したり、庫内に温度むらができやすい。このような従来の冷蔵庫では、庫内の温度分布の変動幅は約±3℃であるので、食材を鮮度良く長期間保存することは困難である。
【0006】
また、野菜や果物の多くは、低湿度環境下で保存すると、水分が蒸発し、劣化が促進される。一方、肉や魚の保存においては、乾燥によって、食品表面に変色が生じたり、食品成分と酸素の接触面積が増加し、脂質の変敗や酸化促進したりする等の問題が生じることもある。このため、生鮮食品を鮮度良く長期に亘って保存する上で、高湿度を維持することは重要である。このため、氷温室には湿度が低下しにくい間接冷却式が採用されている。
【0007】
しかし、間接冷却式が採用された氷温室内は高湿度環境となるため、結露が発生しやすく、結露を排出しなければ、雑菌が繁殖する原因となる。一方、除霜のように温度を上昇させてしまうと、氷温条件である温度分布の変動幅が±0.5℃を超えてしまうため、不適当である。
【0008】
特許文献1には、引き出し式の野菜室を有する冷蔵庫が記載されており、当該野菜室の金属製天板を手前から奥へ傾斜させて結露を奥側へ誘導する構造が開示されている。しかし、特許文献1に記載されている冷蔵庫では、冷気は傾斜した天板上を奥から手前へ登ってくるように流れるので、開閉により温度が上昇しやすい野菜室の手前側を冷却しにくい構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−89201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みなされたものであって、温度変動及び温度むらを良好に緩和することができるうえ、結露を速やかに除去できるとともに、冷却効率が高い貯蔵空間を有する冷蔵庫を提供することをその主たる所期課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明に係る冷蔵庫は、食品を収容する貯蔵空間と、前記貯蔵空間の上を手前から奥に向かって冷気を流す流路と、前記貯蔵空間と前記流路とを仕切る、手前が最頂部となり奥に向かって傾斜するように配置された奥行き方向に長尺な凹凸が形成された板状体と、前記流路に冷気を供給する冷却部と、前記板状体の前記貯蔵空間に対向する面上を手前から奥に向かって流れた結露を回収し排出するドレインと、を備えていることを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、流路内の冷気は貯蔵空間の上を手前から奥に向かって流れ、当該冷気はまず貯蔵空間の手前側の空気と熱交換を行うので、貯蔵空間の手前側を冷却しやすいように構成されている。従って、本発明によれば、開閉による貯蔵空間内の温度変動及び温度むらを良好に緩和することができる。
【0013】
また、貯蔵空間と流路とを仕切る板状体は、奥行き方向に長尺な凹凸が形成されているとともに、手前が最頂部となり奥に向かって傾斜しているので、板状体に付着した結露は、板状体に形成された凹凸の谷部を通って手前から奥に向かって流れ、ドレインを介して速やかに排出される。
【0014】
更に、貯蔵空間と流路とを仕切る板状体に形成された凹凸により、貯蔵空間内の空気と流路内の冷気とに接触してこれらの熱交換を媒介する前記板状体の表面積を大きくすることができる。このため、貯蔵空間内の冷却効率を向上することができる。
【0015】
前記板状体としては、例えば、波状に折り曲げられた金属板が好適に用いられる。
【0016】
本発明に係る冷蔵庫が、前記流路内の冷気の流速を調整するファンや、前記流路内の冷気の流量を調整するダンパを備えていれば、流路内の冷気の流速・流量をコントロールすることにより、貯蔵空間内の温度の変動幅を±0.5℃に制御することが可能になる。
【0017】
前記凹凸のピッチが、3mm以下であると、板状体に付着した結露の水滴は直径3mm以上には成長しないので、自重により落下しにくい。
【0018】
前記板状体の傾斜角度が、5°以上であると、板状体に付着した結露を自然に流れ落とすことを可能としつつ、貯蔵空間の容積を最大限に確保することができる。
【0019】
前記貯蔵空間は、例えば、引き出し式の容器内に形成される。
【0020】
前記貯蔵空間は、0〜−3℃の温度に設定可能な氷温室であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
このような構成の本発明によれば、食品を収容する貯蔵空間の上を手前から奥に向かって冷気を流すことにより、貯蔵空間の手前側を冷却しやすくし、開閉による貯蔵空間内の温度変動及び温度むらを良好に緩和することができる。また、貯蔵空間と冷気が流れる流路との間に、奥行き方向に長尺な凹凸が形成された板状体を手前が最頂部となり奥に向かって傾斜するように設けるという簡便な手段により、板状体に付着した結露を凹凸に沿って迅速に排出することができると同時に、貯蔵空間内の空気と流路内の冷気との熱交換を媒介する前記板状体の表面積を増大して、冷却効率を向上することができる。このような本発明に係る冷蔵庫によれば、従来の冷蔵庫の2倍以上の期間、食品によっては1年以上の長期に亘る保存が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷蔵庫の氷温室の縦断面図。
【図2】同実施形態における氷温室の斜視図。
【図3】同実施形態における氷温室の天板の模式的横断面図。
【図4】同実施形態における氷温室の縦断面図。
【図5】同実施形態に係る冷蔵庫の部分縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係る冷蔵庫1は、図1〜5に示すように、野菜や果物、肉や魚等の生鮮食品を氷温温度帯(0〜−3℃)で保存するための氷温室2と、氷温室2の天板21上を手前から奥に向かって冷気を流すダクト3と、ダクト3に冷気を供給する冷却部(図示しない。)と、氷温室2の天板21の下面上を手前から奥に向かって流れた結露を回収し排出するドレイン4と、を備えたものである。
【0025】
冷蔵庫1は、図5に示すように、氷温室2に加えて、更に冷蔵室5と冷凍室6とを備えている。これらの各貯蔵室2、5、6の扉はそれぞれ独立して設けられており、冷却制御も独立している。このため、氷温室2は、他の貯蔵室5、6の除霜や扉の開閉による温度変動及び温度制御の影響を受けない。
【0026】
以下に各部を詳述する。
氷温室2は、室内の温度が氷温温度帯(0〜−3℃)に設定できる引き出し式の容器内に形成されている。氷温室2内には、図示しない温度センサが設置されている。
【0027】
氷温室2の天板21は、波状に折り曲げられた金属板からなり、当該金属板には長尺な凹凸が奥行き方向に沿って並ぶように形成されている。前記金属板は、例えば熱伝導率の高いアルミニウム製のものである。
【0028】
天板21の凹凸は、図3に示すように、ピッチLが3mm以下であり、また、角度αが70°以下のものである。また、天板21は、図4に示すように、手前を最頂部とし奥に向かって5°以上の角度βで傾斜している。
【0029】
ダクト3は、内部に冷気が流れる流路が形成されているものであり、氷温室2の天板21がダクト3の底板31を兼ねている。ダクト3内の冷気は、氷温室2上を手前から奥に向かって流れる。ダクト3の内部を流れる冷気と氷温室2内の空気とは、氷温室2の天板21(ダクト3の底板31)を介して熱交換を行い、この結果、氷温室2内が間接的に冷却される。
【0030】
ダクト3内には、ファン32とダンパ33とが設けられている。氷温室2の手前側を冷やしたいときは、ファン32の回転速度を遅くして冷気がダクト3内をゆっくり流れるようにして、氷温室2の手前側の熱を吸収しやすいようにし、一方、氷温室2の奥側を冷やしたいときは、ファン32の回転速度を速くして冷気がダクト3内を速やかに流れるようにして、氷温室2の手前側では熱を吸収しにくいようにすればよい。
【0031】
ドレイン4は、氷温室2の天板21の凹凸の谷部Bを伝って手前から奥へ流れた結露を、氷温室2の天板21の奥側末端の下方に設けられた樋で受けて、排水するものである。
【0032】
次に本実施形態に係る冷蔵庫1の動作について説明する。
まず、氷温室2内に設置されている温度センサの指示により、ダクト3の上流側に設けられたファン32の回転数とダンパ33の開閉度が調整される。
【0033】
冷却部からの冷気は、ファン32によって流速が、ダンパ33によって流量が調整され、最適な状態でダクト3に流れ込み、氷温室2内を間接的に冷却する。ファン32の回転数は、ダクト3の断面積と幅に応じて、1000〜3000rpmの間で変動する。
【0034】
ダンパ33は、最も流路を塞ぐ状態を全閉とし、最も流路が解放された状態を全開としたとき、全閉〜全開の間で開度を自由に変動でき、ダンパ33を全閉付近まで絞ることで、ダクト3内を流れる冷気の流速が速くなり、氷温室2の奥側が冷え、一方、ダンパ33を全開付近まで開放することで、ダクト3内を流れる冷気の流速が遅くなり、氷温室2の手前側が冷える。
【0035】
そして、ファン32によって冷気の流速を、ダンパ33によって冷気の流量を調整することにより、以下の4通りの態様で氷温室2内を冷却することができる。
(1)(流速:大、流量:大)の場合、氷温室2内全体が冷えるが、特に奥側が冷える。
(2)(流速:大、流量:小)の場合、氷温室2内の奥側が冷えやすく、手前側が冷えにくい。
(3)(流速:小、流量:大)の場合、氷温室2内の手前側が冷える。
(4)(流速:小、流量:小)の場合、氷温室2内全体が均一に冷える。
【0036】
このように構成した本実施形態に係る冷蔵庫1によれば、以下のような作用・効果が得られる。
【0037】
氷温室2の手前側は、引き出し式容器の開閉により温度が上昇しやすく、氷温室2内の温度変動の原因となり、収容された食品の品質や保存期間に与える影響が大きい。これに対して、本実施形態では、冷却部からダクト3内へ供給された冷気は、まず氷温室2の手前側上部へ到達し、ダクト3の底板31の傾斜に従い手前から奥に向かって流れるので、氷温室2の手前側を冷却しやすいように構成されている。従って、本実施形態によれば、氷温室2内の温度変動及び温度むらを良好に緩和することができる。
【0038】
また、氷温室2の天板21は、手前が最頂部となり奥に向かって傾斜しており、また、奥行き方向に長尺な凹凸が形成されているので、天板21に付着した結露は、天板21に形成された凹凸の谷部Bを通って手前から奥に向かって流れ、ドレイン4を介して速やかに排出される。
【0039】
更に、一般的に、水滴は直径3mm以上になると自重により落下するとされている。しかし、本実施形態では氷温室2の天板21に形成された凹凸のピッチが3mm以下であるので、結露の水滴は直径3mm以上には成長せず、自重により落下しない。このため、氷温室2の開閉の衝撃等では、天板21に付着した結露の水滴は落下しにくく、かつ、結露の水滴は表面張力によって天板21に形成された凹凸の谷部Bにとどまる。結露の水滴が自重により落下すると、氷温室2内に水が溜まり、収容されている食品に影響が出るだけではなく、氷温室2内に微生物が繁殖する原因となるが、本実施形態によれば、このような事態を良好に防ぐことができる。
【0040】
また、本実施形態では氷温室2の天板21の凹凸の角度αが70°以下であるので、結露の水滴が一定の量に達すると天板21の凹凸を伝って手前から奥に自然に流れ落ちやすくなる。
【0041】
更に、本実施形態によれば、氷温室2の天板21の傾斜角度βを、通常のアルミ成形又はプラスチック成型の加工において、水の流れる最低角度とされる5°以上又はその近傍の角度とすることにより、天板21に付着した結露を自然に流れ落とすことができるうえ、氷温室2の内容積を最大限に確保することができる。
【0042】
また、氷温室2の天板21(ダクト3の底板31)には凹凸が形成されているので、氷温室2内の空気とダクト3内の冷気との熱交換を媒介する天板21(底板31)の表面積を大きくすることができ、その結果、氷温室2の冷却効率を向上することができる。このため、本実施形態によれば、ダクト3内の冷気の流速・流量をコントロールするだけで、氷温室2内の温度の変動幅を±0.5℃に制御することが可能になる。
【0043】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0044】
例えば、氷温室2の天板21の凹凸は、前記実施形態では、図3に示すように、V字状であるが、U字状であってもよい。また、氷温室2の凹凸のピッチは、図3に示すように、均等であってもよいが、不均等であってもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、氷温室2の天板21の凹凸のピッチは、3mm以下に設定されているが、結露の水滴の大きさは、氷温室2の天板21の表面粗さ・表面処理・コーティング等の条件により異なるので、氷温室2の天板21の凹凸のピッチは3mm以下に限定されず、前記の種々の条件に応じて適宜決定すればよい。
【0046】
その他、本発明は上記の各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、前述した種々の構成の一部又は全部を適宜組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1・・・冷蔵庫
2・・・氷温室
21・・・天板
3・・・ダクト
31・・・底板
4・・・ドレイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収容する貯蔵空間と、
前記貯蔵空間の上を手前から奥に向かって冷気を流す流路と、
前記貯蔵空間と前記流路とを仕切る、手前が最頂部となり奥に向かって傾斜するように配置された奥行き方向に長尺な凹凸が形成された板状体と、
前記流路に冷気を供給する冷却部と、
前記板状体の前記貯蔵空間に対向する面上を手前から奥に向かって流れた結露を回収し排出するドレインと、を備えていることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記板状体が、波状に折り曲げられた金属板である請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記流路内の冷気の流速を調整するファンを備えている請求項1又は2記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記流路内の冷気の流量を調整するダンパを備えている請求項1、2又は3記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記凹凸のピッチが、3mm以下である請求項1、2、3又は4記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記板状体の傾斜角度が、5°以上である請求項1、2、3、4又は5記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記貯蔵空間が、引き出し式の容器内に形成されている請求項1、2、3、4、5又は6記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記貯蔵空間が、0〜−3℃の温度に設定可能な氷温室である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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