説明

冷蔵食物の貯蔵期間を改善する方法

食物を容器内に密封するステップと、食物を密封容器内で所望温度に所望期間加熱して、食物中に存在する可能性がある望ましくない微生物を不活性化するステップと、加熱された食物を急冷して、食物中に存在する可能性がある望ましくない微生物胞子の発芽を実質的に防止するステップとを含み、食品が延長された冷蔵貯蔵期間を有するように、食物中に存在する望ましくない微生物が実質的に不活性化され、処理後にその他の微生物が食物を再汚染するのを防止する、延長された冷蔵貯蔵期間を有する食品を生産する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、冷蔵加工食品の延長された貯蔵期間をもたらす食品加工に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
棚で安定(shelf−stable)の低酸度缶詰食品の加工不足腐敗に関わる健康リスクは、タンパク分解性ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)胞子の生存に関連することが最も多い。対照的に冷蔵安定の最少加工低酸度食物では、注目点は(限定はされないが)より熱に弱い非タンパク分解性ボツリヌス菌(C.botulinum)胞子およびバシラス・セレウス(Bacillus cereus)胞子の生存および生育であることが多い。棚で安定な缶詰食品では、熱処理の目的は1個のボツリヌス菌(C.botulinum)胞子の生存確率を1兆分の1に低下させることである(ハーソン(Hersom),A.C.およびハランド(Hulland),E.D.著、「缶詰食品(Canned Foods)」第7版、Churchill Livingstone、London、118〜181頁、1980年)。これは1個のタンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)胞子が、熱処理を乗り切る確率が1012分の1であることを意味する。このアプローチは、初期汚染レベルが、容器の最遅加熱点(SHP)に置かれた製品1gあたり胞子1個であると控えめに想定する、いわゆる12Dの概念(スタンボ(Stumbo),CR、1973年、「食品加工の熱細菌学(Thermobacteriology in Food Processing)」第2版、Academic Press、New York)を産んだ。厳密に言えば、容器内のSHP以外の点におけるボツリヌス菌(C.botulinum)胞子生存の確率は、1012分の1未満である。しかし考察が容器全体であるか、またはSHPにある製品1グラムであるかに関わらず、消費者への健康リスクの点からは、2つの観点の間の実用的な差違はわずかである。
【0003】
中温性ボツリヌス菌(C.botulinum)以外の病原体による加工不足腐敗の防止は、低酸度の、棚で安定な食物のための熱処理をデザインする際の問題点と見なされてきた。この理由は、最少加工が、特に0.23分のD121.1値を有する中温性ボツリヌス菌(C.botulinum)の生存数の少なくとも12対数の低減を達成しなくてはならないことであり(バックル(Buckle),K.A.ら編、「公衆衛生的に重要な食物媒介微生物(Foodborne microorganisms of public health significance)」、第4版より、ハザード(Hazzard),A.W.およびマレル(Murrell),W.G.著、「ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)」、1989年、AIFST、Sydney,Australia、179〜208頁)、それは食物中に存在する可能性がある最も耐熱性の病原体と見なされる。これはいわゆる12D処理がまた、その他の耐熱性のより低い病原体の生存確率に、満足できる低減をもたらすのにも十分であることを意味する。したがってその他の病原微生物が低酸度缶詰食品に加工不足腐敗をもたらすかもしれない唯一の状況は、製品がレトルト処理されなかった場合に起きるかもしれないような、ひどい加工不足があった場合である。
【0004】
延長された耐久性のある冷蔵低温殺菌食物またはREPFEDとしても知られている冷蔵安定低酸度食物では、現行の熱処理は、棚で安定な食物とは異なる標的微生物の破壊に基づく。上述のように、これは典型的に、胞子形成性非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)を標的とすることを含む。さらに非胞子形成性リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)および/または胞子形成性バシラス・セレウス(Bacillus cereus)もまた、考察する必要があるかもしれない。典型的にREPFEDでは、優良製造規範(GMP)は、熱処理が、少なくとも標的微生物の6D処理(すなわち10分の1の低減)に相当することを必要とする。したがって食品の微生物学的安全性に関する諮問委員会(ACMSF、1992年)、ベッツ(Betts)1996年、欧州冷蔵食品協会(ECFF、1996年)、およびオーストラリア検疫検査局(AQIS、1992年)は全て、非タンパク分解ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の熱破壊に関して、最少熱処理が少なくとも90℃で10分間に相当すべきであると勧告するガイドラインを公布した。この「ガイドライン」熱処理は、食品の微生物学的安全性に関する諮問委員会(ACMSF、1992年)によって引用されたカムデン食品飲料研究協会(Campden Food and Drink Association)のゲイズ(Gaze)およびブラウン(Brown)(1990年)による研究に基づく。ゲイズ(Gaze)およびブラウン(Brown)(1991年)は、非タンパク分解ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)のD90値が1.1分であり、したがって6D処理が90℃で7(6.6)分に相当することを見いだした。しかし安全マージンを組み込むために、ACMSF(1992年)は耐冷性ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)のための6D処理が、90℃で10分に相当すべきであることを勧告した。したがって「安全マージン」の組み込みは、非タンパク分解ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の実際のD90値が、90℃で1.7分である可能性を暗示する。
【0005】
90℃で10分に相当する熱処理は、胞子を形成せず、鶏肉、牛肉、ニンジン、および戻した粉乳をはじめとする様々な媒質において0.3分未満の比較的低いD70値を有するL.モノサイトゲネス(monocytogenes)に必要な破壊度をもたらすのに十分すぎるほどである。エルシェナウィ(El−Shenawy),M.A.、ヨウセフ(Yousef),A.E.およびマース(Marth),E.H.著、「戻した脱脂粉乳中のリステリア・モノサイトゲネスの熱不活性化および損傷(Thermal inactivation and injury of Listeria monocytogenes in reconstituted non fat dry milk)」、Milchwissen 44(12):741〜5頁、1989年;マッケイ(Mackey),B.M.、プリチェット(Pritchet),C.、ノリス(Norris),A.およびミード(Mead),G.C.著、「リステリアの耐熱性:株の差違と肉のタイプおよび塩漬塩の効果(Heat resistance of Listeria:strain differences and effects of meat type and curing salts)」.Letters in Applied Microbiology 109:251〜5頁、1990年;ゲイズ(Gaze),J.E.、ブラウン(Brown),G.D.、ギャスケル(Gaskell),D.E.、およびバンクス(Banks),J.G.著、「鶏肉、牛ステーキ、およびニンジンホモジェネート中のリステリア・モノサイトゲネスの耐熱性(Heat resistance of Listeria monocytogenes in homogenates of chicken,beef steak and carrot)」.Food Microbiology 6:153〜6、1989年;およびボイル(Boyle),D.L.、ソフォス(Sofos),J.N.、およびシュミット(Schmidt),G.R.著、「肉スラリー中および牛挽肉中のリステリア・モノサイトゲネスの熱破壊(Thermal destruction of Listeria monocytogenes in a meat slurry and in ground beef)」、Journal of Food Science 55(2):327〜9頁、1990年。
【0006】
密封容器内のREPFEDに関わる食物安全性リスクは、加工不足によるリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)または非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)の生存、または冷却温度の管理不良によるタンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)の生育の結果として生じるものに限定されない。後者の胞子は、最少加工で典型的に使用される加工温度および加工時間では、いかなる顕著な破壊も被らないことが認められている。食物安全性リスクはまた、非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)よりも耐熱性であり得るバシラス・セレウス(Bacillus cereus)胞子によっても生じる。したがってバシラス・セレウス(Bacillus cereus)胞子はまた、90℃で10分の優良製造規範ガイドラインに相当するようにのみデザインされた、最少加工の潜在的病原性生存菌と見なされるべきである。
【0007】
上述の食物安全性リスクにもかかわらず、90℃で10分に相当する加工は、保存温度がタンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)の生育に必要な最低限に満たないREPFEDの基準点と見なされるようになった。これらの加工における熱処理の厳しさは定量化されているが(例えば90℃で10分、またはそれに相当する)、「延長された耐久性」という成句の意味は正確さが劣る。例えばACMSF(1992年)およびECFF(1996年)はそれぞれ10日未満と10日を超える貯蔵期間を区別するが、どちらも貯蔵期間の上限を特定していない。オーストラリアにおける商慣行の指針としては、製造日から6〜10週間の使用期限が≦4℃での冷蔵保存に勧告される最長である可能性が高い。REPFEDのいくつかの製造業者は、上限10週間の冷蔵貯蔵期間が、彼らの付加価値のある腐敗しやすい製品の流通および保存にとって、特にこれらが輸出市場向けである場合に不十分であると考える。この範疇に入る製品の例としては、アワビ丸ごと、殻付きムール貝、サケ丸ごとおよびサケ切り身、乳児食、スープ、ソース、レディミール、ペットフード、および選ばれたチーズが挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、このたび包装された食物を熱処理して冷却し、それらの冷蔵貯蔵期間を顕著に延長して、延長された保存中のそれらの品質を改善する方法を開発した。さらに技術は、冷蔵温度および「濫用」温度における標的胞子形成性細菌の生存、生長、および増殖、そして処理後漏れ汚染に起因する食物安全性リスクを定量化するための微生物学的および熱処理モデル化手順の使用を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の開示
第1の態様では、本発明は、
食物を容器内に密封するステップと、
食物を密封容器内で所望温度に所望期間加熱して、食物中に存在する可能性がある望ましくない微生物を不活性化するステップと、
加熱された食物を急冷して、食物中に存在する可能性がある望ましくない微生物胞子の発芽を実質的に防止するステップと
を含み、食品が延長された冷蔵貯蔵期間を有するように、食物中に存在する望ましくない微生物が実質的に不活性化され、処理後にその他の微生物が食物を再汚染するのを防止する、延長された冷蔵貯蔵期間を有する食品を生産する方法を提供する。
【0010】
第2の態様では、本発明は、
食物材料を容器に入れるステップと、
容器を密封するステップと、
食物材料を密封容器内で所望温度に所望期間加熱して、食物材料中に存在する可能性がある望ましくない微生物を不活性化するステップと、
加熱された食物を急冷して、食物材料中に存在する可能性がある望ましくない微生物胞子の発芽を実質的に防止して、少なくとも3ヶ月の冷蔵貯蔵期間を有する加工食品を得るステップと
を含む、加工冷蔵食品を得る方法を提供する。
【0011】
好ましくは、食物材料は、それらの消費に先だって加熱および/または調理を必要とするほとんどの食物タイプから選択される。例としてはレディミールと、湿状食品(wet dishes)と、乳児食と、青果物と、サラダと、ソースと、スープと、マグロ、サケまたはイワシをはじめとする付加価値のある海産食品と、軟体動物と、甲殻類と、米と、小麦と、豆と、パスタと、麺類と、愛玩動物(ペット)フードが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0012】
好ましい一形態では、食物材料は米、パスタ、麺類、および豆などのように乾燥していて、調理を必要とする。またはそれは肉、魚、軟体動物、甲殻類、家禽、乳製品、乳児食、スープ、ソース、湿状食品、および選ばれた青果物などのように、これもまた消費に先だって調理必要とする生の腐敗しやすい材料を含んでもよい。
【0013】
好ましくは容器は、硬質、半硬質または可撓性の容器である。例としては、金属缶、ガラス容器、プラスチックまたはアルミタブ型容器などの可撓性もしくは半可撓性容器、カップ、ボール、およびパウチとが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0014】
「延長された冷蔵貯蔵期間」という用語は、ここでは約4℃の保存温度で少なくとも約3ヶ月として使用される。好ましくは、延長された冷蔵貯蔵期間は少なくとも約6ヶ月である。冷蔵貯蔵期間は、本発明を使用して約12ヶ月まで延長することができる。本発明は、現行の加工技術によって製造される対応する製品と比較して、食品冷蔵貯蔵期間の少なくとも倍増を可能にする。
【0015】
好ましくは、所望加熱温度は、約80℃〜110℃の間である。典型的に所望温度は、約90℃〜100℃の間である。しかし所望温度は、出発原料、最終食品、加工される食物の質量、および汚染菌数とタイプおよびそれらの食物媒体中の耐熱性次第で変動してもよいことが理解される。加熱するステップは、出発未加熱食物成分中に存在することが予期される望ましくない微生物を死滅させるまたは不活性化するようにデザインされるが、加熱は出発未加熱食物成分中に存在するかもしれない全ての微生物の胞子を死滅させるのに十分である必要はない。
【0016】
好ましくは、急冷は、1分あたり少なくとも約2℃である。より好ましくは、急冷は、1分あたり約3℃〜5℃の間である。しかし冷却速度は、食品の性質および質量、微粒子の存在または不在、およびその中に製品が包含される包装材料の寸法と組成次第で変動することが理解される。
【0017】
好ましくは、急冷は、製品温度を約10℃以下に低下させる。より好ましくは、急冷は、製品温度を約5℃以下に低下させる。しかし冷却速度は、食品の性質および質量、微粒子の存在または不在、およびその中に製品が包含される包装材料の寸法と組成次第で変動することが理解される。急冷後に、製品は典型的に約4℃で保存、保持または冷蔵される。
【0018】
好ましくは、冷却は、直接接触冷媒として使用される、周囲温度の冷却水、冷水および/または液体窒素または二酸化炭素の組み合わせを使用して実施される。経過時間(製品がその最大温度からその最終コア温度に冷却する際の)は、製品および包装に固有であり、熱浸透試行後にモニターして規定できる。典型的に経過時間は、出発未加熱食物成分中に存在することが予期されて熱処理ステップを乗りきることができる中温性および好熱性胞子形成菌の発芽および生長には、不十分な時間であることを確実にするように選択される。急冷順序はまた、品質低下および収率損失に結びつく過剰調理(クックアウト(cook out))を最小化する。
【0019】
急冷ステップは、中温性および好熱性双方の微生物胞子が発芽するのを防止できる。
【0020】
加熱は、適切な容器またはレトルト内で過圧または陽圧を使用して実施できる。
【0021】
本発明者は、極低温冷却レトルトが特に本発明に適していることを見いだした。本発明のための適切な極低温冷却装置は、フランスのラガルド・オートクレーブ(Lagarde Autoclaves)によって製造される。
【0022】
本発明は、特に小売市場、施設、食品サービス部門、および仕出し業に供給する熱処理包装食品の製造業者などの食品加工産業に適する。
【0023】
出発原料の潜在的微生物負荷のタイプおよび特徴は、好ましくは未加熱食物材料の品質およびタイプによって判定される。しかし未加工品が典型的な商業品質であり、意図される目的に適すると見なすことができるならば、これが技術の使用を制限する可能性は低いことに留意すべきである。
【0024】
食物は、熱処理に先だって容器に充填されるまたは入れられる。充填後、容器は典型的に密封されて、加工中および加工後の汚染菌進入を防止する。
【0025】
出発食物は、低温、周囲温度または高温で充填密封されてもよく、その後、約80℃〜110℃の間で約1〜90分の間、好ましくは約5〜60分の間、より好ましくは約15〜40分の間の熱処理のために、処理容器(例えばレトルトまたは低温殺菌システム)内に入れられる。例えば食物は、過圧レトルト内において約95℃〜105℃で30〜40分まで加熱できる。しかし加熱温度および加熱持続時間は、加熱媒体の性質、加工容器内の包装食品の配置、および食物タイプとその質量と熱拡散率、および使用される包装材料の性質と形状大きさ次第で変動することが理解される。
【0026】
加熱された食物は、1分あたり約2℃以上の範囲の速度で急冷される。より好ましくは加熱された食物は、約3〜約5℃分の速度で急冷される。しかし冷却速度は、冷却媒体の性質、加工容器内の包装食品の配置、および食物タイプとその質量と熱拡散率、および使用される包装材料の性質と形状大きさ次第で変動することが理解される。
【0027】
本発明は、選択された包装材料次第で、熱処理された米、パスタ、麺類、および豆、そして肉、魚、軟体動物、甲殻類、家禽、乳製品、乳児食、スープ、ソース、湿状食品(すなわちレディミール)、愛玩動物(ペット)フード、および選ばれた青果物をはじめとする生で腐敗しやすい材料などの食物の約4℃未満での貯蔵期間を約1年以上に延長できる。ひとたび熱処理され冷却されると、密封容器内に包装された製品は、冷蔵温度に保持される間は微生物学的に安定になる。
【0028】
好ましくは本発明に従った処理は、食品中で使用される食物成分を汚染しているかもしれない様々な標的微生物の微生物負荷における12対数以上までの低減(それらの耐熱性次第で)を実現できる。
【0029】
第3の態様では、本発明は本発明の第1または第2の態様に従った方法によって製造される、延長された冷蔵貯蔵期間を有する食品を提供する。
【0030】
第4の態様では、本発明は、
(a)食品のために食物成分中の潜在的微生物負荷のタイプおよび耐熱性を判定するステップと、
(b)ステップ(a)において食物成分上で得られた微生物情報に基づいて、食品のための加熱および冷却過程を立案して、食物成分中に存在する可能性がある望ましくない微生物を不活性化して、加工食品中の微生物の生存確率を低下させるステップと
を含む、延長された冷蔵貯蔵期間を有する食品のための食品加工体制を開発する方法を提供する。
【0031】
本発明は延長された貯蔵期間を提供するだけでなく、それはまた、延長された貯蔵期間を有さない比較できる食物の所望の官能的特徴および品質を有する食品の製造を可能にする。食物材料の潜在的微生物の存在および負荷を判定することで、望ましくない微生物を除去するだけでなく、より良い品質の食品をもたらし、加工中の損失を最少化し、長い冷蔵貯蔵期間を有する追加的利点がある優れた製品を提供することができる、潜在的により厳しくない加工条件の使用を可能にする、適切な加工体制(加熱および冷却)を立案することが可能になる。
【0032】
本明細書全体を通じて、特に断りのない限り「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」または「含む(comprising)」などのバリエーションは、既述の要素、整数またはステップ、または一群の要素、整数またはステップの包含を暗示するが、あらゆるその他の要素、整数またはステップ、または一群の要素、整数またはステップの排除を暗示しないものと理解される。
【0033】
本明細書に包含されるあらゆる文献、行為、材料、装置、物品などの考察は、本発明に文脈を提供することのみを目的とする。これらの事柄のいずれかまたは全てが先行技術の基礎の一部を形成すること、または本発明の開発に先だってオーストラリアに存在したような、本発明に関係した分野に一般的な知識であったことを認めるものではない。
【0034】
本発明をより良く理解するために、以下の実施例を参照して、好ましい実施態様について述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
発明の実施様式
本発明者によって、制御された加熱および冷却プロフィールの使用を通じて、非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)の生存確率に(勧告される6対数の低減でなく)12対数以上の低減を実現するのに十分な処理を採用でき、いわゆる「生鮮食品並」の品質が維持できることが分かった。非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)に関して、従来の6Dサイクルでなく12Dサイクルを使用することの利点は、熱処理がその室温安定対応物(すなわちタンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum))に類似していることである。1012分の1以下の非タンパク分解およびタンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)の生存確率では、冷蔵安定製品および棚で安定な製品は、(熱処理を乗り切るかもしれない好熱性胞子形成菌の発芽および生育を排除するために)保存温度が前者で10℃未満、後者でおよそ45℃未満であるという条件で、それぞれ「商業的に無菌」であると見なすことができる。これらの状況下では、冷蔵安定製品の貯蔵期間の限界は、もはや非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)の生育リスクによって決定されない。むしろ貯蔵期間の決定因子は、原料を汚染しているかもしれないB.セレウス(cereus)胞子罹患率と耐熱性、および長期冷蔵保存中の品質変化に対する製品の感受性の反映である可能性が高い。多くの場合、後者は密封時の容器内の真空(したがって酸素含有量)および/または包装材料の酸素透過度に影響される。
【0036】
病原性胞子形成菌B.セレウス(cereus)は、天然に広範に分布する(ICMSF.1996年、「食物中の微生物5.病原菌の特徴(Microorganisms in Foods 5.Characteristics of Microbial Pathogens)」)ので、調合物がミルク、米、穀物製品、野菜、ハーブ、香辛料、およびその他の乾物を含む場合に、それは冷蔵安定食物中の可能な汚染菌と見なされる。しかし「魚の中/上のその存在および出現率は良く確立されていない」(ICMSF、1996年)。これは特定の冷蔵安定食物の熱処理が、非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)よりも耐熱性が高い耐冷性B.セレウス(cereus)胞子の破壊にも、対処する必要があるかもしれないことを意味する。例えばクエン酸/リン酸緩衝液中でpH6.5およびa1.00において、B.セレウス(cereus)胞子は、温度105℃、95℃、および85℃で、それぞれ0.15、2.39、および63.39分のD値を示すことが示されている。比較として、非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)の控えめな(すなわち安全な)基準D90値は、90℃で1.7分とすることができることが知られており、それはこの微生物のおよそ0.54分のD95値に対応する。これはD95値が2.39分のB.セレウス(cereus)胞子が、非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)胞子のほぼ4倍程度以上(すなわち2.39/0.54または4.4)の耐熱性を有するかもしれないことを意味する。したがってB.セレウス(cereus)胞子を標的としてデザインされる熱処理は、非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)胞子の集団に比較できる低減をもたらすためにデザインされたものよりも、顕著に厳しくなくてはならないということになる。例えば非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)に関して、これらのデータは12D処理(すなわち90℃で20分に相当する)が、B.セレウス(cereus)の生存胞子に2〜3対数の低減のみをもたらす示すことを示す。一方、ACMSF、(1992年)、AQIS(1992年)、ベッツ(Betts)(1996年)、ECFF(1996年)、およびフェア・コンサーテッド・アクション(FAIR Concerted Action)(1999年)によって勧告されたREPFEDに対する6D処理(すなわち90℃で10分に相当する)は、B.セレウス(cereus)胞子数に1対数をわずかに超える低減しかもたらさない。
【0037】
REPFEDの安全性に関して、様々な著者ら(カーリン(Carlin)ら(2000年)、ICMSF(1996年)、およびタチニ(Tatini)テキサス州ダラスにおけるIFT年次総会(2000年))が、耐熱性、胞子発芽、および毒素産生能力は全て冷蔵温度で低下することを記述している。カーリン(Carlin)ら(2000年)は、単離物について、<5℃、5〜10℃、および>10℃の最小生育温度で、それぞれ0.8〜1.5、0.8〜3.2、および0.9〜5.9分の範囲にわたるB.セレウス(cereus)胞子の一連のD90値の範囲を引用する。これらのデータの外挿は、冷蔵安定食物に対する冷蔵温度の重要性を際立たせる。例えば保存温度が5℃〜10℃の間である場合、B.セレウス(cereus)胞子に6D低減をもたらすのに十分な処理は、90℃で19.2(6×3.2)分に相当する必要がある。しかし5℃未満の温度に保持することが可能であれば、90℃で9(6×1.5)分に相当する処理で十分である。これは非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)(標的F=10分)を標的とする6D処理が、B.セレウス(cereus)(標的F=9分)を標的とするのにも適するかもしれないことを意味する。この理由からカーリン(Carlin)ら(2000年)は、B.セレウス(cereus)胞子が存在するかもしれない冷蔵安定食物のための熱処理をレビューする上で、様々な食品系における危険性同定および特性解析、曝露アセスメント、および負荷試験を含む、微生物のリスクアセスメントを実施した。これらのような研究は、冷蔵安定食物の商業製造および発売に至るR & Dプログラムの中枢構成要素と見なされる。これらの演習の目的の1つは、熱処理を乗り切ったかもしれない胞子が生体内(in vivo)で発芽できるかどうか、そしてその後、見込まれる保存条件下で細胞生育および毒素製造が起きるかどうかを判定することである。しかしゴリス(Gorris)およびペック(Peck)(1998年)が、「真の安全性危害を及ぼすには多数のバシラス・セレウス(Bacillus cereus)細胞が必要である」と記述するように、細胞生育だけでは必ずしも健康リスクを表せない。
【0038】
本発明に従った加工技術開発の背後の基本原理は、冷蔵貯蔵期間がREPFED製品について引用されることが多い6〜10週間を超える製品を実現することであった。貯蔵期間延長(場合によっては1年までの)を求める理由は、製品が流通および保存網を移動する間に貯蔵期間が終了するために、さもなければ利用できなかった地方および輸出市場に、製造業者が彼らの付加価値製品を供給できるようにすることであった。
【0039】
本発明に従った加工技術を使用して製造されるREPFEDは、(ラベルは≦4℃での保存を勧告するが)3℃と10℃未満の間で延長された貯蔵期間を有する。これは、いくつかの製品が非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)の最小生育温度(すなわち3℃)を超えて、タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)の最小生育温度(すなわち10℃)未満で保存される可能性があることを意味する。しかし本発明で述べられる熱処理は≧20分のF値を有するので、非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)胞子は少なくとも12Dサイクルを被り、その後それらは排除されたと見なすことができる。
【0040】
したがってREPFEDに対して、一般に勧告される6Dサイクルの適用よりもむしろ、(本発明で述べられるように)12Dサイクル、または20分のF値を達成することは、(非タンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)に対する)殺菌効果において、食物産業全体を通じて室温安定低酸度缶詰食品でタンパク分解ボツリヌス菌(C.botulinum)を排除するのに使用される、≧2.8分のF値に相当する。したがって2つの処理は、ボツリヌス菌(C.botulinum)生存に起因する食物の安全性危害の排除に関して等価である。
【0041】
何が達成できるかという指針として、本発明をアワビ、ムール貝、愛玩動物(ペット)フード、ソース、スープおよびレディミール、およびサケをはじめとする多様な食品で試行し、これは場合によっては、技術の一部を形成するいくつかの追加的構成要素が満たされるという条件で、1年の冷蔵貯蔵期間が表記された品目の規制当局による製造および輸出許可をもたらした。総合加工システムの一部として使用できる追加的構成要素としては、次の1つ以上が挙げられる。
I.最終製品中の危険性同定および特性解析、曝露アセスメント、および負荷試験を組み込んだ微生物のリスクアセスメント
II.冷却媒体として液体窒素または二酸化炭素を使用した加速冷却
III.耐冷性病原体が存在しないこと、または生育の不在を実証する最終製品中の微生物学的負荷試験
IV.処理後漏れ汚染を誘発する高濃度の細菌培養に、密封した加工容器を浸漬する生物学的試験
V.温度濫用試験
VI.適切な食物安全性計画の適用による、加工全体を通じた全ての重要管理点におけるモニタリングおよび管理手順の履行
【0042】
特徴
伝統的に加工された冷蔵包装食品は、いくつかの理由で長期保存(延長された貯蔵期間)に適さない。熱処理は、標的微生物の生存確率を排除または許容可能なレベルに低下させるのに不十分である。これらの場合、充填および加工温度が低い(典型的に≦90℃)ために、熱処理は6〜7週間を超える貯蔵期間を可能にするのには不十分であり、貯蔵期間はより短いことが多い。
【0043】
冷蔵製品の貯蔵期間の延長を試みるために、いくつかの製造業者は過剰加工(すなわち長すぎるおよび/または高すぎる温度での加工)を選択する。過剰加工は、製品の品質劣化の可能性を増大させるので、製品は「生鮮食品並」ではなく、むしろ「加工食品並」になる。極端な例では製造業者は、冷蔵貯蔵期間の欠点に対抗するために、彼らの製品をチルドチェーンを通じて市販するのにもかかわらず、それらが室温安定であるような加工を選択する。これは彼らの製品が室温安定であり、典型的に「生鮮食品並」の品目と結びついた官能性品質を欠いているのにも関わらず、それらが冷蔵されたまたは腐敗しやすいまたは「生鮮食品並」であるかのように提示されることを意味する。
【0044】
密封シールが提供できずモニターできないことは、加工後漏れ汚染(PPLC)のリスクを高め、これは延長された貯蔵期間がある低酸度製品では許容できない。この点に関して冷蔵食品セクターは、密封シールの形成および保護に対して低酸度缶詰食品製造業者が払っている注意に及ぶことができない。したがって多くの商業製造されたREPFEDには、耐冷性微生物(そのいくつかは病原性)による加工後漏れ汚染のリスクがある。これは、どうしてこれらの製品の貯蔵期間が制限されているかという、唯一ではないが1つの理由である。これらの製造業者によって採用される基本原理は、これらの汚染菌がPPLCを通じて包装に進入し生育し、したがって公衆衛生を危険にさらすのを可能にする時間に制限されている。既述のように、伝統的に調製された冷蔵食品の貯蔵期間がどうして制限されるのかという別の理由は、これらの製品に対する熱処理が、全ての潜在的腐敗菌を排除するのに不十分であることである。
【0045】
アプローチ
標的微生物の性質、数、および耐熱性(D値)の不十分な知識のために、本発明は、原料中に存在することが知られている(そして可能性が高い)微生物の耐熱性を一覧表にして判定する。ひとたび汚染菌のD値が判定されると、製品が冷蔵温度において安全で微生物学的に安定であるようにそれらの数を許容可能なレベルに低下させる、特定の食物タイプのための熱処理を開発することが可能である。冷蔵食品のための伝統的熱処理はこの特定性を欠いており、すなわちそれらは短か過ぎるか、または厳しすぎる。したがって多くの製品は加工不足であり提案される貯蔵期間全体を通じて安全でないか、またはそれらは過剰加工されて品質不良であるかのいずれかである。
【0046】
したがって本発明の開発に推進力を提供した好ましい構成要素の1つは、製品安全性の欠如、貯蔵期間の欠如、および製品品質の悪さの短所に対処することの探求であった。本発明に先だって、製造業者は、互いに矛盾するオプションに直面していた。
I.彼らは安全性を達成できる−しかしそれには製品品質を犠牲にするしかない(すなわち製品は過剰加工される)。
II.彼らは安全性を達成できる−ただし貯蔵期間は短かった。
III.彼らは品質を達成できるが貯蔵期間は短かった。
【0047】
本発明は、以下によってこれら3つのオプション全てに答えることを目的とする。
I.標的微生物の特徴およびGMPに関係する数量化できる食物安全性目的を達成することで安全性を実現する。
II.延長された冷蔵貯蔵期間を実現する。
III.その官能性品質が新鮮なまたは「生鮮食品並」の農産物によって達成されるのと比較できる製品を実現する。
【0048】
これらの成果は、原料の微生物学的状況、熱処理に続く流通および保存中に正常および濫用条件下に保持される間の汚染菌の耐熱性および生育特徴の知識を得ることなしには可能でなかった。
【0049】
延長された冷蔵貯蔵期間全体を通じて製品の安全性を確実にするために、本発明は、好ましくは冷水および/または液体窒素または二酸化炭素を使用して、急冷を組み込む。経過時間(製品が最大温度からその最終コア温度に冷却する際の)は、製品および包装に固有であり、熱浸透試行後にモニターして規定される。典型的に経過時間は、原料中に存在すると想定すべきである、実現される最低熱処理を乗りきる中温性および好熱性胞子形成菌の発芽および生長には、不十分な時間であることを確実にするように選択される。急冷順序はまた、品質低下および収率損失に結びつく過剰調理(クックアウト(cook out))を最小化する。
【0050】
密封シールの適切さは、商業運転条件下で確立されるべきである密封および熱処理および急冷体制に続いて、容器に負荷試験(生物学的試験)を行うことで実証できる。製造業者は、典型的に彼らの冷蔵製品上のヒートシールを微生物学的にチャレンジしない。密封シールの管理の欠如のために、多くの製造業者は、加工後漏れ汚染が起きるといけないので彼らの製品に延長された貯蔵期間を提供したがらない。本発明は試験を行い、手順を適所に置いてヒートシーラーの性能をモニターでき、≦4℃における実質的に無制限の貯蔵期間の提供を可能にする。
【0051】
本発明は、目下使用されている室温安定処理よりも高い収率を実現する。例えば室温安定缶詰アワビはレトルト中に18〜25%の重量低下を被り、およそUS$750/24缶の販売価格(各約212gの固形量)では、これは生産者が顕著な収入損失を被ることを意味する。本発明の処理は、これらの重量減少を約1%未満に低下させた。
【0052】
それらの室温安定対応物と比較して、本発明を使用して製造された品目は、典型的に熱処理後に色、香り、およびテクスチャが優れている。これらの優れた品質属性を示す製品としては、選ばれた乳製品、ムール貝、ソース、スープ、レディミール、およびペットフードが挙げられる。
【0053】
本発明で達成可能な貯蔵期間のために、製造業者は、さもなければそれから彼らが除外される輸出市場を標的にできる。
【0054】
加工の一部として、最終製品に負荷試験を組み込むことができ、貯蔵期間に対する模擬濫用条件の効果が確立できる、予言的モデル化によって支持される。
【実施例】
【0055】
材料および方法
装置
試行は、満載条件下で稼働するラガルド(Lagarde)、ステリフロー(Steriflow)、KMおよびFMC過圧レトルト内で成功裏に完了した。本発明で開発された加熱および冷却スケジュールは、急冷能力があるその他のタイプの過圧レトルト内で実現されてもよい。
【0056】
包装
それぞれ「最悪の場合」条件(すなわち商慣行で使用される製品の最大正味重量および/または最低充填温度)に相当する個々のパック重量および充填温度で、例えばアワビ、ムール貝、スープ、ソース、ペットフード、乳児食、およびレディミールなどの評価される原料を詰めた多様な高バリアプラスチックがラミネートされたパウチ、およびポリプロピレンプラスチックタブ、ボールおよびトレーを使用して、反復加工評価試行を行った。加工を試験するために、反復熱電対をそれらの先端が個々の「試験」パックの熱中心(すなわち最遅加熱点またはSHP)に位置するように、パウチ(または容器)側面を通して、製品の最も厚い部分中に取り付けた。
【0057】
処理
下で述べられる方法は、90℃〜105℃の間の傾斜温度、および0〜140kPaの間の傾斜過圧サイクルをそれぞれ使用して熱処理される一連の製品のために開発された。
【0058】
これらの加工および製品のために使用した技術は同様であったが、次に従って変動した。
I.加熱および冷却媒体の性質
II.加工容器内の包装食品の配置
III.食物タイプおよびその質量と熱拡散率
IV.使用される包装材料の性質と形状大きさ
【0059】
(上のI〜IVで)同定された違いのために、様々な熱処理サイクルで使用された温度、圧力、および加工時間は異なった。多様な「湿状」製品のために開発された典型的なサイクルを表1〜20に示す。
【0060】
例えばムール貝加工の試行において、500gのムール貝を単層に詰め、個々のムール貝重量が32〜39gの範囲である(すなわち「最悪の場合」または個々の殻付きムール貝の最大正味重量に相当する)各6個のパウチから成る反復評価を行った。熱電対をそれらの先端が個々の「試験」パックの熱中心(すなわち最遅加熱点またはSHP)に位置するように、パウチ側面を通して生の閉じたムール貝の最も厚い部分中に取り付けた。
【0061】
熱電対を取り付けた試験パウチをトレーの第2層に載せ、一方バスケットは温度流通試行において加工評価研究のための試験パックの好ましい位置とされるレトルトの前の位置にあった。全ての処理評価試行において、殻付きムール貝を充填したパウチを詰めた2個のバスケットを入れて、レトルトを満載条件下で稼働させた。さらにいくつかの熱電対(「フリー」と称される)を充填パウチに隣接して配置した。
【0062】
結果
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

【0069】
【表7】

【0070】
【表8】

【0071】
【表9】

【0072】
【表10】

【0073】
【表11】

【0074】
【表12】

【0075】
【表13】

【0076】
【表14】

【0077】
【表15】

【0078】
【表16】

【0079】
【表17】

【0080】
【表18】

【0081】
【表19】

【0082】
【表20】

【0083】
要約すれば、表1〜20に示す処理スケジュールを使用した試行からのデータは、選ばれた傾斜時間−温度の組み合わせが全て、ムール貝で20分を超え、本技術を使用して製造されたその他の製品で30〜100分の間である、最小F値を実現するのに十分であったことを確認する。これらのデータは全ての場合において、加工が非タンパク分解ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)のための12Dサイクルに等しいか、またはそれを超えたことを示唆し、これはそれらがこれらのカテゴリーの食物に対して様々な優良製造規範ガイドラインによって勧告されるものの少なくとも2倍であることを意味する。
【0084】
これらの加工はまた、B.セレウス(cereus)胞子が存在するかもしれない製品における製品安全性懸念を晴らすのに十分すぎるほどである。最大D90値が3.2分のB.セレウス(cereus)胞子(カーリン(Carlin)ら、2000年)に関しては、表1〜20で述べられる加工は、6D〜>30Dサイクルの間を達成する。最大D90値が6分(カーリン(Carlin)ら、2000年)のB.セレウス(cereus)胞子では、表1〜20で述べられる加工は3D〜>15Dサイクルの間を達成する。
【0085】
(「生鮮食品並」の特徴を維持しながら)冷蔵食品のために従来の熱処理に関して勧告されるものよりも厳しい熱処理を実現することが本発明の能力であり、それはこれらの製品の冷蔵貯蔵期間を以前達成されたものを超えて延長するのを可能にする。
【0086】
ここで述べられる試行において開発され実証された技術は、米、パスタ、麺類、および豆、ならび肉、魚、軟体動物、甲殻類、家禽、乳製品、乳児食、スープ、ソース、湿状食品(すなわちレディミール)、愛玩動物(ペット)フード、および選ばれた青果物などの生の腐敗しやすい材料をはじめとする一連の製品に応用できることが理解される。
【0087】
【表21】

【0088】
手順:
I.鶏の肉と骨(chicken frames)をミンチにする(3mm)
II.牛肉を角切りする(10mm〜15mm)
III.鶏および牛肉を蒸気ジャケット付きミキサーに入れる
IV.水を添加する
V.残りの成分を添加する
VI.混合を開始する
VII.5分後に蒸気のスイッチを入れる
VIII.85℃に加熱する
IX.充填して密封する
X.熱処理して冷却する
XI.≦4℃で冷蔵保存する
【0089】
【表22】

【0090】
手順:
I.キサンタンガムと砂糖を混ぜる
II.水を蒸気ジャケット付きバットに入れる
III.ミキサーを始動する
IV.ジャガイモ、コーン、鶏がらスープ、鶏肉、タマネギを添加する
V.蒸気のスイッチを入れる
VI.残りの成分を添加する
VII.砂糖/キサンタンガム混合物を添加する
VIII.混合物が92℃に達するまで加熱を継続する
IX.最低75℃に保持する
X.充填して密封する
XI.熱処理して冷却する
XII.≦4℃で冷蔵保存する
【0091】
【表23】

【0092】
手順:
I.水およびクスクスを蒸気ジャケット付きミキサーに入れる
II.60℃に過熱する。10分間放置してクスクスを水で戻す。
III.キサンタンと砂糖を混ぜる
IV.パンプキンピューレを混合バットに入れる
V.バターおよび残りの成分を添加する
VI.92℃に加熱する
VII.>65℃に保存する
VIII.充填して密封する
IX.熱処理して冷却する
X.<4℃で冷蔵保存する
【0093】
【表24】

【0094】
手順:
I.ガムと砂糖を混ぜる
II.水を蒸気ジャケット付きバットに入れる
III.ミキサーを始動する
IV.砂糖とガムを添加する
V.2分間混合する
VI.残りの成分を添加する
VII.92℃に加熱する
VIII.充填して密封する
IX.熱処理して冷却する
X.≦4℃で冷蔵保存する
【0095】
【表25】

【0096】
手順:
I.水を蒸気ジャケット付きミキサーに入れる
II.高剪断ミキサーを始動する
III.卵黄、ヒマワリ油、キサンタンガム、および軟化バターを緩慢に添加する
IV.5分間混合する
V.高剪断ミキサーを停止する
VI.撹拌機のスイッチを入れる
VII.砂糖、香辛料、マッシュルーム、塩、カシュー、デンプン、および着色剤を添加する
VIII.マルサラおよび食酢を添加する
IX.加熱を開始する
X.混合物が92℃になるまで加熱する
XI.充填して密封する
XII.熱処理して冷却する
XIII.≦4℃で冷蔵保存する
【0097】
【表26】

【0098】
手順:
I.200kgの水を蒸気ジャケット付きミキサーに入れる
II.水を沸騰させる
III.50kgの米を添加する
IV.炊きあがるまで加熱する(約15分)
V.過剰な水を排水する
Vl.充填して密封する
VII.熱処理して冷却する
VIII.≦4℃で冷蔵保存する
【0099】
表21は、様々な食物成分の潜在的汚染菌として同定された典型的な汚染レベルを示す。
【0100】
【表27】

【0101】
表22は、本発明によって製造された冷蔵食品の典型的な貯蔵期間、および比較の目的で先行技術の方法を使用した市販される同様の食物の貯蔵期間を示す。
【0102】
【表28】

【0103】
要約
本発明を支持する技術には、次を組み込むことができる。
I.最終(商業)製品中の標的微生物の耐熱性(D値)の判定。
II.≦4℃で保存される際にこれらの製品を微生物学的に安定化し、これらの食物カテゴリーの適切な食品安全目標(FSO)を満たすのに十分である、密封容器に詰められる選ばれた低酸度および酸性食物のための熱処理および急冷スケジュールの開発。
III.熱浸透試行と微生物学的負荷試験とを通じた熱処理の検証。
IV.標準および「濫用」条件下の標的微生物の生育特徴のモデル化。
V.コールドチェーン全体を通じた温度−時間プロフィールのモニタリング。
VI.製造と流通をカバーするHACCP計画の開発と規格。
VII.パウチ、カップまたはトレー上の密封シールの完全性をモニターして管理するための微生物学的負荷(生物学的試験)の開発。
VIII.熱処理食品の製造中の重要管理点(CCP)のモニタリング中に生じる記録の定期監査(加工データの電子転送を通じた)。
IX.GMPガイドライン遵守を確実にするためのレトルト性能の毎年の検証、および必要に応じて、使用される新規レトルトの毎年の検証。
X.AQIS、FSANZ、USFDAなどへの製法提出。
XI.規制基準を満たすための技術支援と訓練。
【0104】
本発明に従った食品加工技術は、延長された冷蔵貯蔵期間がある熱処理食品を実現できる。技術の利点としては次が挙げられる。
高い品質の色、香り、およびテクスチャ(穏和な熱処理に起因する)。
製品は「新鮮」、「天然」「保存料なし」などとして宣伝できる。
冷蔵製品に典型的に見られる6〜8週間を超える冷蔵貯蔵期間。本発明を使用した現行の応用は、12ヶ月の貯蔵期間の表示を可能にする(包装材料のバリア特性次第で)。
1つの製造拠点から全国(および国際)流通を可能にする貯蔵期間。
【0105】
当業者は、概括的に述べられるように、本発明の精神または範囲を逸脱することなしに、特定の実施態様に示すように、本発明の多数のバリエーションおよび/または修正が可能であることを理解するであろう。したがって本実施態様は、あらゆる側面において例証的であり制限的でないと見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
延長された冷蔵貯蔵期間を有する食品を生産する方法であって、
食物を容器内に密封するステップと、
前記食物を前記密封容器内で所望温度に所望期間加熱して、前記食物中に存在する可能性がある望ましくない微生物を不活性化するステップと、
前記加熱された食物を急冷して、前記食物中に存在する可能性がある望ましくない微生物胞子の発芽を実質的に防止するステップと、を含み、
食品が延長された冷蔵貯蔵期間を有するように、前記食物中に存在する望ましくない微生物が実質的に不活性化され、処理後にその他の微生物が前記食物を再汚染するのを防止する方法。
【請求項2】
前記食品が、レディミール、湿状食品、乳児食、青果物、サラダ、ソース、スープ、マグロ、サケまたはイワシをはじめとする付加価値のある海産食品、軟体動物、甲殻類、米、小麦、豆、パスタ、麺類、およびペットフードからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器が硬質、半硬質または可撓性の容器である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記容器が、金属缶、ガラス容器、プラスチックまたはアルミタブ型容器などの可撓性もしくは半可撓性容器、カップ、ボール、およびパウチからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記延長された冷蔵貯蔵期間が約4℃の保存温度で少なくとも約3ヶ月である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記延長された冷蔵貯蔵期間が少なくとも約6ヶ月である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記延長された冷蔵貯蔵期間が約12ヶ月までである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記所望加熱温度が80℃〜110℃の間である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記所望温度が90℃〜100℃の間である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱処理が1〜90分の間で実施される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記熱処理が5〜60分の間で実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記熱処理が15〜40分の間で実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記急冷が1分あたり少なくとも約2℃である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記急冷が1分あたり3℃〜5℃の間である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記食物が約10℃以下に冷却される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記冷却が、直接接触冷媒として使用される、周囲温度の冷却水、冷水および/または液体窒素または二酸化炭素の組み合わせを使用して実施される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記急冷するステップが、中温性および好熱性双方の微生物の胞子が発芽するのを実質的に防止する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
適切な容器またはレトルト内で過圧または陽圧を使用して実施される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法によって生成される、延長された冷蔵貯蔵期間を有する食品。
【請求項20】
加工冷蔵食品を生産する方法であって、
食物材料を容器に入れるステップと、
前記容器を密封するステップと、
前記食物材料を前記密封容器内で所望温度に所望期間加熱して、前記食物材料中に存在する可能性がある望ましくない微生物を不活性化するステップと、
前記加熱された食物を急冷して、前記食物材料中に存在する可能性がある望ましくない微生物胞子の発芽を実質的に防止して、少なくとも3ヶ月の冷蔵貯蔵期間を有する加工食品を得るステップと、を含む方法。
【請求項21】
延長された冷蔵貯蔵期間を有する食品のための食品加工体制を開発する方法であって、
(a)食品のために食物成分中の潜在的微生物負荷のタイプおよび耐熱性を判定するステップと、
(b)ステップ(a)において前記食物成分上で得られた微生物情報に基づいて、食品のための加熱および冷却過程を立案して、前記食物成分中に存在する可能性がある望ましくない微生物を不活性化して、加工食品中の微生物の生存確率を低下させるステップと、を含む方法。

【公表番号】特表2008−546375(P2008−546375A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516066(P2008−516066)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000812
【国際公開番号】WO2006/133485
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507408970)ディーダブリューシー ハーメティカ ピーティーワイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】